【写真】 LA、車の中からインタビューに応対してくれたランガカー──感謝です(C)MMAPLANET
10日(土・現地時間)にタイはバンコクのルンピニースタジアムで開催されるONE Fight Night11でONEサブミッショングラップリング世界ライト級王者ケイド・ルオトロにトミー・ランガカーが挑戦する。
北欧ノルウェーから世界を舞台に戦う柔術家ランガカーは、IBJJF柔術の最高峰ムンジアルに挑み続けてきたが、今年は王座挑戦の1週間前ということで回避した。メダル獲得、世界最強の誉れを目指し出場料、遠征費を自ら捻出して戦う競技柔術の最高峰と、プロとしてファイトマネーを手にする戦いに臨む際、彼の内面にはどのような変化があるのか。
ケイド戦を前にアマ柔術とプロ柔術の立ち位置の違いをランガカーは、非常に丁寧に話し、北欧柔術界及びMMA界のレジェンドの今に言及した。
――トミー、ONEサブミッショングラップリング世界王座挑戦を1週間後に控え、今LAにいるということですが──ムンジアルには出場していないですよね(※取材は6月3日に行われた)。
「生徒やガールフレンドがムンジアルに出場していて、僕もLA近辺の柔術アカデミーでトレーニングを続けているんだ。LAの前には10日間、テキサス州オースチンのB-Teamで練習してきたよ」
──ムンジアルは柔術家にとって最大のトーナメントです。トミーも常にピラミッドで戦ってきました。ただし、今回はONEの世界戦を優先したということでしょうか。
「その通りだよ。黒帯になってから、ずっとムンジアルで戦ってきた。今回はONEから世界戦のオファーがあって、最初は両方で戦えないかと考えた。でも、ベルト奪取の機会を優先してムンジアル優勝は来年狙うことにしたんだ」
──ONEのベルトはムンジアル参加を見送る価値があるモノなのでしょうか。
「そういうことじゃないよ。ムンジアル優勝もONEのベルト奪取も、凄く意味のある事だ。ムンジアルで勝つことは、柔術を始めてからずっと僕の夢だった。と同時に、その夢は来年でも達成できる自信があるからね。ここはONE述べるとを獲りに行こうと決めたんだ」
──柔術家がプロアスリートとしてファイトマネーを手にして戦うステージが得られるようになった今、メダルの獲得を目指して戦う場合と、お客さんを納得させるパフォーマンスが必要なプロ興行で試合に挑む時と心持ちの違いはありますか。
「ONEは柔術をプロステージに引き上げようとしてくれている。その場に、最初の世代として出場するのはとても光栄なことだよ。ピュア柔術がプロショーで組まれる機会は、とても重要だ。もちろん、試合に出て収入を得られるようになったことを含めてね。競技者として試合に出て、生活できる環境が柔術家にはなかったから。こういう機会が増えれば、柔術家も自分のトレーニングに集中できるようになる」
──ところでトミーは過去1年、道着柔術、ADCCのポイントのノーギ、さらにONEのサブオンリーの試合に出ています。普段のトレーニングでコアとなるのは、どのルールを想定しての練習になるのでしょうか。
「そこが少し難しい点ではあるけど、柔術家として重きを置いているのはしっかりとポジションをとってサブミッションを狙うこと。ただし、出場する試合のルールに合わせた練習は当然のように必要になってくる。そして、常にルールに対応できているかといえば、ここが簡単なことじゃない。
だから、ルールに合わせて頭も整理して戦う必要があるんだけど、それもこれも柔術は競技としての歴史は決して長くないことが要因になっているからだよね。エキサイティングさと公平さをどの大会運営陣が求めていることには、違いないと理解している。その結果として、競技が進化することは大歓迎だよ」
──ノーギ柔術も柔術という考えもありましたが、今やIBJJF柔術とノーギ&サブオンリーはもう別モノにしか思えないです。トミーはどのように考えていますか。
「ノーギもまだ柔術の一部だという想いは、僕にはある。IBJJFはスコア柔術を追求してきた。それはポジションを奪ってドミネイトすることを重視しているからだ。テイクダウンポイントがあるのも、その表れだろう。ただし、ポイントがあることでゲームに徹する競技者がいることは絶対的に否定できない。
だから技術的に最高の柔術家が、最高のゲームプランを忠実に実行した柔術家に敗れることもある。それでも、根っこの部分で柔術とグラップリングは繋がっているし、ここもまだ競技の歴史が少ないからハッキリしないんじゃないかな」
──IBJJF柔術がコンバットスポーツとして画期的だったのは、ポイントはなくともディフェンス能力の高さを評価していることかと。その一方でONEのサブミッショングラップリングはレフェリーがアクションを求め、試合に介入することが非常に多いです。
「柔術はアート・オブ・マーシャルアーツ。サバイブすることが、主目的にある。ただ、プロスポーツとして試合が組まれるなら、試合を見ている人のことを考えないといけない。そういう人たちはアクション、アタック、何かしらの動き、そしてスピーディーさを求めている。皆が柔術の練習をしているわけじゃないからね。柔術の奥深さ、ディティールを理解していない人が興味を持つ試合をプロのステージで求められるのも、当然だしね。だからハイペースで、ハイリスクな試合を提供しようとする。護身を基本としたトラディショナルな柔術競技と、プロフェッショナル柔術はそれだけ大きな違いがあるんだよ」
──下からの仕掛けが、柔術のダイナミズムでもあるのに。すぐに立たせると立ちレスの時間が増えてしまって……「どうなの?」と正直思います。
「対戦相手に触らないでガードを取ることは認められない。すぐにアクションを起こさないと、ブレイクが掛かる。実は僕も前の試合で、そういうことがあった。ガードをとっても、相手がグラウンドに応じないとスタンドに戻ることになる。
正直、もう少しガードワークを創る余裕を与えてほしいとは思うよ。レスリングじゃないという意見も分かるよ。と同時にテイクダウンのダイナミズムも求めているんだろうね。まぁ、これからどうなっていくのか。今は試行錯誤の時期でもあるはずだ。そういう疑問の声が聞かれることが、ONEのサブミッショングラップリングの成長に繋がるに違いない」
──素晴らしくポジティブな意見、ありがとうございます。とはいえ今回の世界戦。ケイドとトミーの試合は寝技で勝負できる者同士、どちらが上になろうがブレイク無用かと。
「凄く楽しみだよ。ケイドと僕のマッチアップは、凄く手が合うだろう。何より、世界一の選手と戦うのだからワクワクしている。ケイドはONEの世界王者というだけでなく、ADCCウィナーだからね。77キロの世界最強の選手がケイドで、しかも僕は彼のスタイルが大好きなんだ。だから二重の喜びだよ。僕らの試合は思い切りぶつかり合う、真っ向勝負でファンにも喜んでもらえるはずだ」
──ケイドはスクランブルが多いですね。彼の動きに付き合うのか、自分のペースで戦うのか。
「確かにケイドは爆発力があって、アクションが多い。それは彼が相手のリアクションを確かめているからでもあるんだ。そして相手が待って戦うようだと、より動きが増えてフィニッシュに近づく。そんなケイドと戦うと、僕の経験が大きくモノをいうだろう。この世界のベストファイターと戦い続けてきたことで、僕にはレジメが存在する。
彼はこれまでになく我慢を強いられることになる。そんな彼を仕留めるんだ。ケイドとの試合で、僕はノルウェーの柔術の強さを示したい。北の果てには、僕らが磨いてきた柔術が存在する。そしてベルトをノルウェーに持ち帰るよ」
──日本では柔術界の人々よりも、MMA界の人間はノルウェーといえばユノラフ・エイネモ、ヨアキム・ハンセンを思い浮かべることが多いと思います。ですからIBJJFのシーンでトミーとエスペン・マティエセンが台頭してきた時には我々の世代はワクワクしました。
「おお、日本のファンにとってもそうなんだ!! 2人はレジェンドだよ。僕の柔術キャリアは、彼らを追いかけることから始まった。ノルウェーの柔術界のロールモデルだよ」
──よりストリートファイターでしたが……(笑)。
「アハハハハ。ヨアキムはそうでもないけど、ユノラフはノルウェーの柔術界と繋がりも持っていた。でも、2年前に漁船を購入してオスロから北の街に引っ越してしまったんだ」
──えぇ!! ユノラフは漁師になったのですか。
「そうなんだ(笑)。でも、それまで釣りもしたことがなかったはずだよ(笑)。ユノラフとは時々、話すことがあったけど──レジェンドなのに、本当に面白い人で(笑)。今は毎日、魚を獲って相当に儲けているって聞くよ。ヨアキムとは会ったことはないけど、あの2人は僕らのヒーローだった。僕やエスペンはヨアキムやユノラフのようになりたくて、努力してきたんだ。でも、日本の人から2人の名前が聞かれるなんて、凄くファンタスティックなことだよ」
──こちらこそ、ユノラフの近況が聞けて嬉しかったです。では最後に日本のファンにメッセージをお願いします。
「何だろう……。そうだ、日本の柔術家の皆にノルウェーに来て練習をしてほしい。いつだって大歓迎するよ。そして日本にいつか行ってみたい。イゴール・タナベにPolarisで負けたリベンジをしないといけないしね(笑)」
■放送予定
6月10日(土・日本時間)
午前9時00分~ABEMA格闘チャンネル
■対戦カード
<ONEムエタイ世界ライト級選手権試合/3分5R>
[王者]レギン・アーセル(オランダ)
[挑戦者] ドミトリー・メンシコフ(ロシア)
<ONEサブミッショングラップリング世界ライト級(※77.1キロ)王座決定戦/12分1R>
[王者]ケイド・ルオトロ(米国)
[挑戦者] トミー・ランガカー(ノルウェー)
<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
イリャ・フレイマノフ(ロシア)
シネチャグタガ・ゾルツェツェグ(モンゴル)
<キック・フェザー級選手権試合/3分3R>
スーパーボン・シンハマウィーン(タイ)
タイフン・オズカン(オランダ)
<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
ジャレミー・ミアド(フィリピン)
マンスール・マラチェフ(ロシア)
<キック・ライト級/3分3R>
ニキー・ホルツケン(オランダ)
アリアン・サディコビッチ(ドイツ)
<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
アルテム・ビュラク(ロシア)
クォン・ウォンイル(韓国)
<ムエタイ女子ストロー級/3分3R>
アンバー・キッチン(英国
マルティニ・ミケレット(イタリア)
<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
フー・ヤン(中国)
ウ・ソンフン(韓国)
<キック・ヘビー級/3分3R>
ラーデ・オバチッチ(セルビア)
グト・イノセンチ(ブラジル)
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【ONE FN11】ケイド・ルオトロに挑戦、バイキング柔術Gen.2代表トミー・ランガカー「二重の喜び」 first appeared on
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