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【ONE Empower】落選からの復活、モン・ボーと対戦、リトゥ・フォーガット「どの試合も一番大切」

【写真】インドで知らぬ者がいない、姉を持つリトゥ。インド女子MMAのパイオニアだ(C)MMAPLANET

本日3日(金・現地時間)、シンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムで開催されるONE「Empower」。同大会で開幕する女子アトム級ワールドGP1回戦でリトゥ・フォーガットがモン・ボーと対戦する。

4月29日に収録され5月15日に中継されたONE DangalでGP出場を1カ月後に控えながら、インド一有名なレスリング一家で育ったレスラーのリトゥは、打撃のスキルを確かめるために出場しビー・ニューイェンにキャリア初黒星を喫した。結果、GP出場権を失ったものの、大会の延期を経てで再び出場権を得ることとなった。

の延期期間、リトゥは今大会の1カ月強前──7月30日に開催されたONE Battle Groundにまたも強行出場するとリン・ホーチンを破り、GP出場を再び手繰り寄せた。この仕切り直しの一戦を経て、彼女が何となく掴んでいた自信は確信に変わったという。


──前回、インタビューをさせていただいた時はダンガル大会の直前でした。そしてビー・ニューイェンに敗れ、一度はGPメンバーから外れましたが、7月のBattle Ground大会でリン・ホーチンを下しGPメンバー返り咲きました。今の心境を教えてください。

「今は凄くワクワクしているわ。いよいよGPが始まるわけだし。ニューイェン戦の敗北……あの裁定には、ビックリして。信じられなかったし、残念というよりショックという表現の方が的を射ていたわね」

──打撃を効かされ、テイクダウンで疲れたリトゥでしたが、最後まで勝負を諦めていなかったです。特に最終回の魂のテイクダウンは素晴らしかったです。

「ありがとう。勝ち負けはどのスポーツでもつきもので、勝利から学べることよりも、敗北が学べることの方が大きいわ。そういう意味でも凄く勉強になった試合だった。戦いは少しでも早く、フィニッシュしなくちゃいけない。そういう気持ちで戦うことが必要だと、あの試合で学んだの。

それでも私は負けていなかったと思っているけど。できればスコアは皆が一目瞭然で分かるオープンスコアにしてほしいわ。確かに……試合中に少しミスもしたわ。GPのメンバーから外されたから、とんでもないぐらい動揺しちゃって。でも、私がONE女子アトム級で最強の1人だということを証明して、GPに戻るんだっていう気持ちでリン・ホーチン戦に臨んだの。あの試合ではGPで戦える力を証明できたと思っている」

──積極的に打撃を使っていましたね。

「毎試合、打撃は良くなっている。それでも自信をもって使うまでには至っていなかった。でも、この前の試合で確信をもって打撃を使えたわ。結果的にGPで戦うことができたので、この自信が上手く作用するはずよ。これから一つ一つ勝っていって、必ずタイトルを手にするわ」

──リン・ホーチン戦の前から、あの試合で勝てばGPに戻れるという確約があったのですか。

「皆、私がビー・ニューイェンに負けていなかったことは分かっていたはず。ジャッジがあんな風に裁定しただけで。だから私は自分の力を示そうと思って戦ったの。もう1度、自分の価値を上げないといけないから。ただ試合前に、勝てばGPに戻れるということは聞かされていなかった。でも私はその気でいたの」

──ではGP初戦の相手であるモン・ボーの印象を教えてください。

「タフな競技者で、私より経験が豊富ね。でも経験が全てじゃない。次の試合でファンはこれまでの私とは違う一面を見ることになるでしょうね。モン・ボーのようなタフな相手だからこそ、インドの虎はこのチャレンジに燃えているのよ」

──モン・ボーはGP参加者でも、特に体格に恵まれた選手だと思います。彼女のフィジカルをどのように感じていますか。

「このGPに出場する選手は、皆が揃って高い能力を誇っている。ただ、彼女がベストかどうかは戦ってみたら分かることよ」

──シンガポールは5月以降ロックダウンもあり、7月には再びジムがクローズされた期間もあったかと思います。

「練習に関しては少し難しい面もあったから、神経質になっていた時期もあったわ。でも、試合前だけ練習をしてきたわけじゃないし。ずっと練習してきたことが、この試合に生きることになると信じているわ」

──キャリアで最重要な試合になるかと思います。

「確かに、とても大切な試合ね。でも、それはこの試合がということではなくて、どの試合もとても大切な試合という意味で。この試合が重要で、他の試合がそうじゃないなんてことはないし。どの試合も一番大切な試合で、全力でチャレンジするモノよ。

何より私は、ONEにとって初めてのオール女子大会のGPで戦えることを誇りに思っているの。この大会がONEの未来に強い影響を与えることは間違いないでしょうね」

──リトゥのお父さん、お姉さんが題材になった映画「ダンガル きっと、つよくなる」では、ある女性が『インドの娘はただ子供を生むだけの道具。でも、あなたたちは違う。愛されている証拠』と話すシーンがありました。現状のインドがどうなのか、私は分かっていませんが、仮にそのような境遇にある女性たちに、今回の大会を通して伝えたいことはありますか。

「インドもあの映画の上映後、随分と変わったわ。それでも全てのインドの女性……インドの自身のことを顧みることができない女の子に対して、『揺ぎ無いに信念があれば、どんな逆境だって打開できないことは決してない』って伝えたいの。これ以上、言葉にすることは難しいけど、それは私の姉がやってのけたことだから」

■視聴方法(予定)
9月3日(金・日本時間)
午後8時30分~ ABEMA格闘チャンネル
午後8時30分~ONE Super App

■ONE Empower 対戦カード

<ONE世界女子ストロー級(※56.7キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]シィオン・ヂィンナン(中国)
[挑戦者] ミッシェル・ニコリニ(ブラジル)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
ハム・ソヒ(韓国)
デニス・ザンボアンガ(フィリピン)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
アリョーナ・ラソヒーナ(ウクライナ)
スタンプ・フェアテックス(タイ)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
モン・ボー(中国)
リトゥ・フォーガット(インド)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
平田樹(日本)
アリス・アンダーソン(米国)

<キックボクシング女子アトム級/3分3R>
アニッサ・メクセン(フランス)
クリスティーナ・モラレス(スペイン)

<ムエタイ女子ストロー級/3分3R>
ジャッキー・ブンタン(米国)
ダニエラ・ロペス(アルゼンチン)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP補欠戦/5分3R>
VV.Mei(日本)
ジュリー・メザバルバ(ブラジル)

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【ONE Empower】過去最強の相手=アンダーソン戦へ、平田樹─02─「気持ちは大事だけど、丁寧に戦う」

【写真】とにかく表情がイキイキとしていた(C)MMAPLANET

3日(金・現地時間)、シンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムで開催されるONE「Empower」。同大会で開幕する女子アトム級ワールドGP1回戦でアリス・アンダーソンと戦う平田樹インタビュー後編。

キャリア最強、これまでの相手とは違うことを理解しているという平田は、気持ちで負けないうえで、動きは雑にならないことを念頭に戦う。周囲の経験不足という声を「それを言われてもしょうがない。勝てば良いでしょ」と跳ね返すつもりで。

<平田樹インタビューPart.01はコチラから>


──踏ん張るところ、自制するところ。ほんと塩梅ですね。

「そうですね、ダラダラするより集中してパッとやるのも良いと思います。MMAは練習しないといけないこと多いけど、短時間で集中するのも有りですよね。今、そういうことを自分で考えている。そこに関しては、親からも『練習環境にしても、自分で考えるようになったことは良いことだと思うよ。自分に足りないモノを見つけるのも、自己判断は大切だから。人との関わり方も、これまで周囲の人がお膳立てしてくれて、スムーズにモノゴトが運んでたけど、自分でやるようになって、回りへの感謝という気持ちが生まれてきたでしょ』って言われていて。本当にそうだと思います」

──だからって勝てる保証にならないのが、格闘技の難しいところです。改めてアンダーソンのことをどのように思っていますか。

「そんなに重いパンチはなさそうですけど、分からないです。組みの方が強いと思います」

──テイクダウン防御をしつつ、下になっても手はありそうですね。さきほど言われたように、組ませないためにリーチを生かした攻撃もあるでしょうし。

「一番嫌なのは、距離を取られてそのまま終わることです。どれだけ詰めて組めるのか。倒してからの寝技勝負にはしたいです。でも、本当に分からないです」

──今朝、アンダーソンをインタビューしたのですが、とにかく経験が違うと。倒させないし、寝技になっても大丈夫という風でした。『穴がある』と言っていましたね。とはいえ、それも今年の2月までの平田樹の試合を見て言っていることです。だからこそ、問われるのは3月からどれだけ成長しているのか。

「雑さはなくなったんじゃないかと思います。ただ、寝技ができる相手がこれまでいなかったのでどうなるのか」

──リカ・イシゲはデキたと思います。ただし、フィジカルがない。

「柔術の動きはしていたけど、フィジカルはメッチャ弱かったです。ホントに(笑)。ポンってやったら倒れちゃうみたいな。でもアメリカ人はデカいし、フィジカルも強いと思う……けど、どうですかね。シンプルに勝てると思っています。そんなに深く考えることなくて。

キャリア不足、経験がないっていうのは、もう試合をするたびに言われることなんで。それを言われても、どうしようもないから。『そんなこと拘ってんの』って。まだ3戦でしょとか、4試合しかやっていないとか言われても、『勝てば良いでしょ』って思ってやっています。『そんなこと言っていて負けたら、そっちがヤバいよ』──みたいな。そう毎回思っています。

自分のMMAがどういうモノかも、全然分からないですし。だからこそ色々なタイプの選手と試合がしたい。自分が負ける時は、どういうタイプの選手に負けるのかも気なるんです。ホント、まだまだ全然なんで」

──そういうなかで、初めて自身より背の高い相手と戦う上で、何かトライしてみたいですか。

「う~ん、なんだろうなぁ。出せるモノは全部出したいです。できる限り、全てを出したい。何をしたいのかより、しちゃいけないということでは雑になっちゃいけないことだと思っています。気持ちは大事だけど、丁寧に戦う。熱くなって、突っ走らない」

──KRAZYBEEの若い選手、気持ちが前に出て雑になることが多くないですか。

「そうなんですよね。スパーリングも、そうで。パンチでいって、グラウンドでやられてとか。丁寧にいかないといけないのに、力任せになったり。ほんと、どれだけ冷静に試合を進めることができるのか。それこそ今回の相手はこれまでとは違うのも分かっていますし。

だから気持ちだけでは、どうにもできない。だけど気持ちで負けず、雑にならないようにいかないと。ここはホントに難しいです。何も考えずに前に出たくないし、気持ちがひけるのも嫌で。加減じゃないけど、熱くなりながら考えるって本当に難しくて。それができるようになれば、自分の成長は間違いないと思います。そこだけが課題かなって」

──そこだけ!?

「いや、取りあえずはそこを……そこだけはしっかりとやりたいなって(笑)。熱く、気持ちで前に出て、そこに冷静に技術がだせればもっと強くなれるから」

──ただ2月の中村選手との試合は、思うようにいかないからフラストレーションを感じて、バァ~と前に出ていったようにも見えましたが……。

「アハハハハ。2月の試合は、そういうところもありました。『もう、イイッ』って」

──ホント、試合では真っ新な……まんまの平田選手が出ると思います。だからこそ、この間にやってきたことを本人が言われているように、ケージで出して欲しいです。

パンチがイチ・ニのリズムだけでなく、イチで打つパターンも採り入れていた平田

「そうですね、自分でも楽しみにしています。回りに試されているっていう感じがしていますし。どれだけ自分がやれるのか。ここで勝って、やっぱりスタンプに上がってきてほしい。スタンプと戦いたいですね」

──当初の予定では5月末にスタートして、11月にはアンジェラ・リーが復帰してGPウィナーと防衛戦という超過密日程でしたが。

「このあとのことはまだ決まっていないです。2カ月後っていうのは、もうなくて年内に次があるのか、年明けか。でもリザーバーがいるからケガをすると代えられるとか気にしていましたけど、次の日程が出ていないから思い切りやります。日程を聞かされていないから、ワンマッチのつもりじゃないけど、ケガをしようが勝ちます。

ようやくです。ちゃんと始まるし。凄く楽しみです」

■視聴方法(予定)
9月3日(金・日本時間)
午後8時30分~ ABEMA格闘チャンネル
午後8時30分~ONE Super App

■ONE Empower 対戦カード

<ONE世界女子ストロー級(※56.7キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]シィオン・ヂィンナン(中国)
[挑戦者] ミッシェル・ニコリニ(ブラジル)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
ハム・ソヒ(韓国)
デニス・ザンボアンガ(フィリピン)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
アリョーナ・ラソヒーナ(ウクライナ)
スタンプ・フェアテックス(タイ)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
モン・ボー(中国)
リトゥ・フォーガット(インド)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
平田樹(日本)
アリス・アンダーソン(米国)

<キックボクシング女子アトム級/3分3R>
アニッサ・メクセン(フランス)
クリスティーナ・モラレス(スペイン)

<ムエタイ女子ストロー級/3分3R>
ジャッキー・ブンタン(米国)
ダニエラ・ロペス(アルゼンチン)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP補欠戦/5分3R>
VV.Mei(日本)
ジュリー・メザバルバ(ブラジル)

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【ONE Empower】アトム級GP、アンダーソン戦前の平田樹─01─「常に練習して動ける体でいるのが当然」

【写真】心身ともに充実した空気感があった平田樹(C)MMAPLANET

9月3日(金・現地時間)、シンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムONE「Empower」が開催され、平田樹が女子アトム級ワールドGP1回戦でアリス・アンダーソンと戦う。

デビュー1年目を3連勝で終え、パンデミックが起こり1年振りのファイトとなったRoad to ONEの中村未来戦では、TKO勝ちしながらも試合内容に納得できず、涙した。直後に決まったGP出場もコロナ禍で大会が延期され、3カ月を経てようやくシンガポールに向かうことができた。

フリーになり、練習環境を自ら意志と責任で選択して挑むアンダーソン戦に向け、平田の現状をKrazy Beeで尋ねた。


──あとどれぐらいでシンガポールへ?

「5日後ですね(※取材は8月24日に行われた)。ようやくですね」

──ようやく試合が、しかも海外でできます。待望の時ではないでしょうか。

「海外で試合ができることは凄く嬉しいです。ただ会場にお客さんがいないことは、寂しいですね」

──ファンと共に盛り上がることが、ファイトの一部になっているのですか。

「どうなんだろう。無観客で戦ったことがないので、どういう心境になるのか分からないです。でも、ファンと一緒に盛り上がりたいという気持ちはあります。Road to ONEの時も、お客さんを入れることができた大会だったのですが、『うわぁ少ないなぁ』って思ったんです。でも、次はあの大きな会場にお客がいないので……寂しいですよね。どうなるか分からないのですが、お客さんがいないことは何か自分のなかに影響することがあるかもしれないです」

──昨年2月のシンガポール大会、現地にいるのに会場に行けなかった。平田樹すら入れないということを考えると、今の情勢では客入りはないと考えて良いですよね。

「あの時、ホテルにいて携帯でABEMAを視たんですよ(笑)」

──私自身、1万人収容の会場にファンがいない。どれだけパウンドで殴る音や、選手の息吹が聞こえるのかと思って撮影に挑んだことが思い出されます。

「どうでした?」

──3人いるオフィシャルカメラマンのシャッター連射の音が、館内に響き渡っていました(笑)。

「そうなんだぁ!! 選手も、それって聞こえますよね。寂しいなぁ……ジャカルタがめっちゃ凄かったじゃないですか。あのイメージがあって……無音は全く、想像がつかないです。やっぱりお客さんと一体化した方が気持ちも盛り上がるので」

──では、2月の試合はお客さんが少ないからパフォーマンスが落ちた?

「そうですね(笑)。いえ、そんなことないです。あの試合は本当にダメでした。でも、アレを経験して拘り過ぎないこととか、勉強できました。研究される分、その上の技術を身につけないといけないと感じましたし。自分、MMAだけど近距離の方が好きなんです。

でも青木さんが自分の出したい技を出すには、その距離を創ることが大切だと言ってくれたことや、神村エリカさんのところでも色々と教わりましたし……相手のリーチを考えると、どう得意な距離にいけるのか。得意でないところで、どう戦うのか。今回はよく考えてきました。そうやって考えていると、立ち技だけって難しいって実感して。組むまでが大変になる、そんな試合になることは覚悟しています。

でもエリカさんと練習させてもらうと、打撃の人の指導って凄く参考になって。毎週金曜日に練習に行って、アンダーソンのことも凄く研究してくれて、対策練習をしてくれましたし」

──参考になりましたか。練習を取材させてもらった時に、神村さんが平田選手を見る空気が良くて。良い練習になっているなと感じました。神村さんは勝つ論理を持っていますよね。

「ハイ。今回はとにかく前手を出して、前蹴りとかの距離に気を付ける。『そうしたら組んでいけるよ』って。打撃を習いに行っているのですが、『打撃の練習をしているから、試合で使えるってもんじゃないから。打撃に拘らないで良い』って言っていただいて。内山さんにも『打撃やって自信がついても、組みや寝技の方が得意だということを忘れないこと』というのは言ってもらっていました。試合前はあまり内山さんのところはいけなかったのですが」

──真理ですね。本当に。

「こないだの試合もあったし(苦笑)。でも打撃使いたいんですよね」

──結局、そこですか!!

「組むまでの立ち技、そこだとは思うようになりましたけど」

──では試合前の練習は神村さんのところが週1で、あとはKRAZYBEEですか。

「ハイ。男子の細くて背の高い相手や、プロになる前の選手と練習をしていて。時々女子と組むと、パワーの差があるから『軽っ』って思えるよになりました。フィジカルもやってきたので、変わったかなという気はしています。でも自分より、背の高い相手と戦うのは初めてで、どういう試合になるのか興味があります」

──やってきたことが出せるのかという不安と、出したいという期待。どちらが大きいですか。

「期待です。不安はこれまで通りないです。どうあろうが、トーナメントだし勝てば良いので」

──練習環境を変え、その選択が正解だったと周囲に分かってもらうにも勝利が絶対ですが、そのプレッシャーっていうのは?

「負けたら、何か言われますよね。でも、それが今の自分の実力であって環境のせいではないです。負けるのは、自分の責任です。自分を貫いた結果の練習環境ですし、とにかく試合をするまでは練習だけじゃないって実感しています。

──練習だけじゃない……どういうことでしょうか。

「フリーになって自分でやることも増えたので、試合に向けては練習だけでなく、やってきた全てのことが関係してくるって今は思っています。これまで、そういう部分を助けてもらっていたこともよく分かりました」

──このシェイプの良さげ感じは、その責任感の表れでしょうか。

「もうリミットまで1キロです。フリーになった時から、自分で全てをやらないといけないっていう覚悟のようなモノを持てるようになって。誰かに任せることができないということは、誰かの責任にデキるわけじゃない。自分が変わらないといけないという気持ちにはなったかと思います。

ただ体重に関しては2月の終わりに試合が終わって、次は5月の終わり、そこが延期になって早くて7月の終わりと言われていたのが、ここまで来て。その間、ずっと試合を睨んで練習してきたので、体重が増える時間がなかったというのもあります」

──太る暇もないと(笑)。

「またぁ、太るって……太らないです(笑)。でも、今年1年ずっと試合があると思ってきたのでホント、太る時間なんてなかったです。2月の試合前から、ずっと減量状態で。でも、これが普通なんだなって。MMAファイターなんだから、ずっと練習するのが当たり前だし。試合が終わったから練習休んで、体重が増えるとかホントは違うって思えます」

──普段通りでしぼれているから、肌の艶も良いのですね。

「試合が決まった、気合入れる──みたいな気持ちになるっていうことを青木さんに話すと、『そんなこと考えたことない』って言われて。『試合が決まったからやるって、それはないでしょ』みたいに。これまでの自分はそうでした。

でも、常に練習して動ける体でいるのが当然で。そうでないと集中力も切れて、ケガをしてしまうので。同じことの繰り返しだけど、気を抜くとケガをする。そういう気持ちでやっていると、精神的に強化されたように感じます。結果、ここまでケガなくやってこられたので、自分のなかでは成長できたかなって思います」

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
9月3日(金・日本時間)
午後8時30分~ ABEMA格闘チャンネル
午後8時30分~ONE Super App

■ONE Empower 対戦カード

<ONE世界女子ストロー級(※56.7キロ)選手権試合/5分5R>
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<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
ハム・ソヒ(韓国)
デニス・ザンボアンガ(フィリピン)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
アリョーナ・ラソヒーナ(ウクライナ)
スタンプ・フェアテックス(タイ)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
モン・ボー(中国)
リトゥ・フォーガット(インド)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
平田樹(日本)
アリス・アンダーソン(米国)

<キックボクシング女子アトム級/3分3R>
アニッサ・メクセン(フランス)
クリスティーナ・モラレス(スペイン)

<ムエタイ女子ストロー級/3分3R>
ジャッキー・ブンタン(米国)
ダニエラ・ロペス(アルゼンチン)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP補欠戦/5分3R>
VV.Mei(日本)
ジュリー・メザバルバ(ブラジル)

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【ONE Empower】平田樹と対戦、アンダーソン─02─「彼女はチェーンレスリングができないでしょ?」

【写真】どのような穴を見つけたのか。その答は3日後にハッキリする(C)ONE

9月3日(金・現地時間)、シンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムONE「Empower」が開催される。同大会で開幕する女子アトム級ワールドGPで、平田樹と対戦アリス・アンダーソン・インタビュー後編。

MMA戦績は5勝1敗だが、アンダーソンは平田との違いを経験の差だと明言する。そして平田の投げ技について、3月の時点でバックを取れると話していたアンダーソンは、延期された3カ月の間にさらに研究が進み、勝利への道筋が見えているようにも感じられた。

<アリス・アンダーソン・インタビューPart.01はコチラから>

──より成熟しているということですが、平田選手はプロMMAで4勝0敗。アリスは5勝1敗。この2試合の差が大きいということですか。

「私が21歳のとき、もっと厳しい試合をして危ない場面を切り抜けている。彼女のように楽しんで試合はしてこなかった。この経験の差が、私たちがケージに向き合った時に違いとなって表れるわ。

立ち技、グラウンドで違うレベルの技術を持つファイターと戦う時に、それまでの自分が何をやってきたのか。どういうことに費やしてきたのかが問われることになるから。経験の差というのは、この試合で鍵になってくるはずよ」

──前回に話を聞かせて頂いた時、平田選手が柔道の投げ技を使ってきたらバックを取る絶好の機会になると言われていました。

「彼女の投げを狙った時にはワキを差した方とは逆の手を使って、頭を抱えてくる。バックに回らせないようにね。でも、そこにも穴はあるの。そして、その体勢に入るために前腕を伸ばしてくるのよ。でも彼女は、チェーンレスリング(連動したレスリング)ができない。そうでしょ?」

──……。

「グラウンドと連動性がないのよね、彼女の投げやテイクダウンには。それでも狙いは柔道スローだから、まずはそこを防いでフレストレーションを感じてもらうわ。でも、最終的にはラウンドが進むと、彼女は投げに成功しているのよね」

──随分と研究し、対策も練っていることが伝わってきます。ところでフロリダはもうパンデミック前のように、変わらぬ日常生活を送ることができているようですが、シンガポールでは再び隔離措置が待っています。

「フロリダはもうマスクもしないし、隔離もないわ。今回はシンガポールで試合をするということで、シンガポール政府が軍隊生活のようなことをまだ求めていることに関しては……少しナーバスになっているわ(笑)。ホテルの部屋に籠りっきりで、セキュリティが見張っていて……電話でしか外部と連絡が取れない。でも、なんのためにシンガポールへ行くのか。試合をするためだし、自分の仕事を全うするにはどんな状況も乗り越えるだけよ」

──米国以外での試合は初めてで、時差や移動距離を考えるとその辺りは平田選手の方がアジアの地の利が生きてきます。

「これまで海外って飛行機に乗って2時間で着く、メキシコにしか行ったことがなくて。30時間の飛行機の旅って想像もつかないわ。ただ時差に関して言うと、私はONEと契約するまで5年間、病院でナースとして働いていて。それも夜勤で夜の7時から朝の7時っていう時間帯だったの。ちょうどシンガポールとは昼夜がさかさまだけど、私はその時間帯でずっと生活してきたから。この体はその時のこと覚えていて、自然とアジャストできるんじゃないかと思っていて。

ただ飛行機のなかで水分を絶やさないようにして、ハイドレーションのことを常に頭においていることは必要ね。それも新しい経験だし、神経質になるよりも楽しみの方が大きいわ」

──ところで今大会はONEにとって初めての女子だけのイベントになります。歴史的なショーの一員になることに、どのような想いでいますか。

「嬉しいわ。ただ女子だけの大会はInvicta FCで経験してきたから。でもONEにとって初めてというのは、ワクワクしてくるわよね。しかもONEの女子選手もなかでも最高の面子が揃うわけだし、そこはファンも楽しめるはず」

──では日本でこの試合を視聴するファンにメッセージをお願いします。

「イツキと戦えることを光栄に思っているわ。良い試合が2人でできると思っているから、できれば、グランプリのウィナーになれるよう2人を応援してね」

■視聴方法(予定)
9月3日(金・日本時間)
午後8時30分~ ABEMA格闘チャンネル
午後8時30分~ONE Super App

■ONE Empower 対戦カード

<ONE世界女子ストロー級(※56.7キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]シィオン・ヂィンナン(中国)
[挑戦者] ミッシェル・ニコリニ(ブラジル)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
ハム・ソヒ(韓国)
デニス・ザンボアンガ(フィリピン)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
アリョーナ・ラソヒーナ(ウクライナ)
スタンプ・フェアテックス(タイ)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
モン・ボー(中国)
リトゥ・フォーガット(インド)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
平田樹(日本)
アリス・アンダーソン(米国)

<キックボクシング女子アトム級/3分3R>
アニッサ・メクセン(フランス)
クリスティーナ・モラレス(スペイン)

<ムエタイ女子ストロー級/3分3R>
ジャッキー・ブンタン(米国)
ダニエラ・ロペス(アルゼンチン)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP補欠戦/5分3R>
VV.Mei(日本)
ジュリー・メザバルバ(ブラジル)

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【ONE Empower】平田樹と対戦、アリス・アンダーソン─01─「ケージの中では勝つことに集中しないと」

【写真】キャリア5勝1敗、アマでは6勝0敗だったアンダーソン。年齢も25歳で、十分に若くてこれからの選手なのだが……。Zoom取材の場合、PCを使う選手はピンが顔より後ろに来る──あるある(C)MMAPLANET

9月3日(金・現地時間)、シンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムでONE「Empower」が開催される。同大会で開幕する女子アトム級ワールドGPで、アリス・アンダーソンが平田樹と対戦する。

Invicta FCで2勝1敗、北米MMAで育ったアンダーソンがONEで戦うことを決めた理由とは。そして平田樹との対戦について、どのように考えているのか。当初の予定では5月末に戦う予定だったが、コロナの影響で3カ月試合が延びた──ことが、アンダーソンにより自信を与えていた。


──本来5月28日に開幕する予定だったONE女子アトム級ワールドGPの平田樹選手との試合が発表された直後、3月に1度インタビューしていたのですが、大会が延期されお蔵入りとなってしまっていました。同じことは再び聞くこともあるかと思いますが、宜しくお願いします。

「こちらこそ」

──では、改めて9月3日に平田選手と戦うことになりました。

「練習時間が取れて良かったと思っているわ。2月の終わりに試合が決まった時、準備期間は8週間しかなかったから。この夏の間、ずっと彼女の研究ができたし、5月に戦うよりずっと準備できたから。

大会の延期が決まる前後は、情報が錯そうしていて……。延期なる──と連絡が来たと思ったら、次の日はやっぱりやるって話になったり。あの期間はナーバスにはなっていたけど、最終的に延期が決まってからは、ただ練習するだけだって頭もクリアになったし、すぐにキャンプに戻ったわ」

──米国で生まれ育ち、米国のMMAでキャリアを積んできたアリスが、アジアベースのONEで戦おうと決めた理由は何だったのでしょうか。

「ONEというプロモーションが選手の尊厳と名誉を大切にしているということが、まずあったわ。私が育った米国のMMAとは文化が違うと感じたの。それにアトム級の試合が盛んに行われているのも大きかった。

米国では私にはゴールがなかったの。だから以前から、アトム級の試合が行われているアジアで戦うことは視野に入れていたし。なかでもONEはアトム級が一番盛んだったから、ONEでベストになることが、アトム級では世界でベストになることになる。そう思ってONEで戦っていくことを決めたの」

──とはいえ、いきなりGP出場というのは躊躇することはなかったですか。

「こんな素晴らしい機会を逃す手はないわよ。これほどのまでの大きなトーナメントで、米国代表として戦うことができるんだし。こんな光栄なことはないわ。それにタイトルに直結しているトーナメントでしょ? 1試合戦って、次はいつ誰と戦うのか分からないなんてヤキモキすることもないわけだから。これ以上のチャンスはないと思っているわ」

──そのONEのアトム級は115ポンドでハイドレーションテストがあり、ルールもグラウンドでのヒザ蹴りが認められています。この相違点についてはどう考えていますか。

「まだ経験していないから計量に関しては、何ともいえないけど長身の私にとって105ポンドまで落とすことは本当に大変だった。ハイドレーションに関しては、チームの皆も含めてほとんど経験がないことだから、きちんと勉強して準備しないといけないと思ってやってきたわ。

ルールの違いは、大きいわね。普段から練習仲間もグラウンドでヒザを使うことはないから、そこは大きな違いだと認識できているわ。ジムの皆にとっては反則攻撃だから、頭にも入っていない攻撃だしね。だからこそ、大会が延期されて助かったと言えるわね。このルールの違いに、私自身が慣れる時間ができた。夏の間、新しいルールで戦うことを前提に、練習に取り組むことができたから」

──つまり3月に話を聞いた時よりも、平田樹選手と戦うことに自信を持っているということですね。

「その通りね。彼女は短いキャリアで、瞬く間に成功を収めた。パンチも強いし、絶対的に柔道が強いわね。柔道があるから、彼女はトップゲームが可能になっている。とは言っても3月の時点で、彼女の試合をチェックしていたら、既に穴は見つけていた。でも、この3カ月でより彼女のことが理解できたと言って良いでしょうね。

もともと強いグラップラーとも、強いストライカーとも戦っていないし。若くて、経験の少ない選手が、無敗であれだけのゲームをすることは理解いているけど、私もチームも彼女のことは十分に研究してきたから……大丈夫よ」

──そういえば前回のインタビューの時、アリスは平田選手がインターバルの間に対戦相手の前で踊ることに良い感情を持っていなかったですね。

「そういうことじゃないのよ。彼女がダンスをしようが、何をしようが構わない。個人の問題だし。でも、私はああいうことはしたくないってこと。楽しんでいるのよね、試合を。それはそれで良いじゃない。

私はプロとして、自分のやるべきことを落ち着いてやりきる。あんな風に興奮していると、自分のすべきことを全うできないと思っているの。それが私なりのプロフェッショナルとしての在り方ね。

それに私は自分の家族、チームを代表して戦っている。だから戦いの間にダンスなんてせずに、もっと目の前の相手に勝つことをシリアスに考えている。彼女はああいう風に振る舞える方が戦いやすいんだってことは理解しているわ。私は個人的に、ああいうことはできないというだけで。仕事だから、戦うことは。だから、ケージのなかでは戦うことにフォーカスするだけなの」

──平田選手がああやって踊るということは、自分をコントロールできていないというネガティブうなことなのか。それともゾーンに入っているポジティブなことなのか、私には分からないです。ただし、只者じゃないなとは素直に思いました。

「だから、人それぞれなのよね。私があれをやると、ダメだし。でも彼女にとっては良いことなのでしょうね。あの子は若いから。私は彼女より、少し成熟しているということよね。ONEは彼女のことをライジングスターとしてプッシュしているから、彼女はいつでも人に注目されている。

そういうなかでやっていけるのだから、彼女はダンスをしたり、目立つことが平気で心地良いのでしょうね。でもケージの中では、正しいとは言えないわよね。対戦相手に勝つことに集中しないと」

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
9月3日(金・日本時間)
午後8時00分~ ABEMA格闘チャンネル
午後8時00分~ONE Super App

■ONE Empower 対戦カード

<ONE世界女子ストロー級(※56.7キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]シィオン・ヂィンナン(中国)
[挑戦者] ミッシェル・ニコリニ(ブラジル)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
ハム・ソヒ(韓国)
デニス・ザンボアンガ(フィリピン)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
アリョーナ・ラソヒーナ(ウクライナ)
スタンプ・フェアテックス(タイ)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
モン・ボー(中国)
リトゥ・フォーガット(インド)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
平田樹(日本)
アリス・アンダーソン(米国)

<キックボクシング女子アトム級/3分3R>
アニッサ・メクセン(フランス)
クリスティーナ・モラレス(スペイン)

<ムエタイ女子ストロー級/3分3R>
ジャッキー・ブンタン(米国)
ダニエラ・ロペス(アルゼンチン)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP補欠戦/5分3R>
VV.Mei(日本)
ジュリー・メザバルバ(ブラジル)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP補欠戦/5分3R>
ビー・ニューイェン(米国)✖ジェネリン・オルシム(フィリピン)の勝者
グレース・クリーブランド(ブラジル)

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Interview ONE ONE Empower ジュリー・メザバルバ ブログ 山口VV芽生

【ONE Empower】急成長する世界の女子MMA、山口V.V芽生─02─「日本に役立つものを持って帰りたい」

【写真】自分の役割、立ち位置についてはずっと理解してMMAを戦ってきたように思える(C)MMAPLANET

9月3日(金・現地時間)、シンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムONE「Empower」が開催される。同大会で開幕する女子アトム級ワールドGPの補欠戦でジュリー・メザバルバと対戦する山口V.V芽生インタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike

地域の特性をもって、急速に進化する女子MMA。自らの置かれた状況を鑑み、日本のファイターが生き残るためには、何が必要なのか。国内でベルトを巻き、そしてONEで戦い続けているV.V Meiだからこそ発することができる言葉が大切な一戦を前にして、聞かれた。

<山口V.V芽生インタビューPart.01はコチラから>


――「そのぶん、実力プラス個性が求められるところもあるという理解」というヴィー選手自身も、独自の個性を押し出していた時期がありました。

「それ、随分と前の話ですよね(笑)」

――もともと空手、柔術、そしてMMAに対して武道の観点で語れる選手なのに、トラッシュトークでもなく、なんだか方向性の読めない言動があって……。

「アハハ。ONEで同じような発言をしていると、『そういうのはいらない』と言われました(笑)。ONEにはONEの求めているファイター像というのがあるのでしょうね」

――なるほど。GPに話を戻すと、リザーバーというポジションについては、どう受け止めているのでしょうか。

「私の中では割り切っています。同じようなトーナメントで、リザーバーから優勝したケースもありますし。あるいは、GP後の展開に向けて自分を作り直していくとか。いずれにしても、GP本戦に出られなかったから全てが終わる、ということではないので」

――GP優勝者が現アトム級世界王者アンジェラ・リーに挑戦することになります。その試合の勝者への挑戦者を決める戦いが展開されるでしょう。

「それに、まだGP自体どうなるか分からないですからね」

――というと?

「当日体重を落とせていない選手がいたり、あるいはコロナの影響で試合ができなくなったら、私が急遽GP本戦に出ることになったりすると思いますし。この状況下では何が起こるか分からないじゃないですか。もともと私の試合も、コロコロ変わりましたから」

――えっ、どういうことですか。

「いろいろ国ごとに事情が違うから、仕方ないとは思うんですけど……。リザーブマッチに出場するという話から、『出られるかどうか分からない』と言われて、その後また『リザーブマッチに』という連絡が来て。だから当日も何が起こるか分からないですよね」

――それだけ状況が変わるのは、選手としては不安ではないかと……。

「昔から日本の女子MMAでやってきているので、そういった部分を考えすぎることはなくなりましたね(笑)。それもキャリアのおかげです」

――そこでお聞きしたいのは、ヴィー選手のようなキャリアを積んできた選手にとって、今回GP本戦に出場する平田樹選手については、どのように思われているのでしょうか。

「……いいんじゃないですかね」

――微妙な回答ですね(笑)。

「いやっ、そういうことじゃないです(苦笑)。分からない、と言ったほうが正しいですかね。今までの対戦相手では査定できないというか。だから、今回のトーナメントで分かると思うんです」

――確かに、そのとおりです。

「ONEとしても彼女のような若いキャラクターが欲しいのでしょうし、今回のGPでは勝っても負けても未来がある。私も、良い選手になって日本の女子MMAを引っ張っていく存在になってほしいと思っていますよ」

――平田選手をはじめとする新しい世代の選手に対し、ライバル心などは無いのですか。

「……無いですね。それよりも、早く私たちの世代を超えてくれ、って(苦笑)」

――その考えは意外です。

「ここ数年、海外選手の成長が著しいじゃないですか。フィジカルが強いし、少々テクニックが荒くても、フィジカルでカバーしたり、あるいは気持ちが見える試合をする。それがONEに出ている女子選手だと思うんですよ。

UFCだと、みんな効率よく技術を学んで、レベルの高い試合を繰り広げるのが当たり前になってきていて。日本人選手も、そういうところで戦って、負けても新しいことを学んで強くなればいいと思います。日本はココが足りない、という点が分かることも大切なので」

――今は厳しい状況にありますよね。日本人選手が海外で戦う機会も少なくなりましたし、コロナ禍で海外から選手を呼ぶこともできない。

「そうなんです。でも米国は選手も多いし、UFCは開催されていて――そうなると、これからもっと海外との差が開いていくと思うんですよ」

――……。

「私自身はこれからもONEに出て、新しい技術を身につけながら、もう少し続けていきたいです。でも、そんなに長く現役を続けられるわけではない。そこで新しい選手のために……『育成』と言えるほどではないですけど、私は英語を生かして海外で試合したり練習したりして、日本の格闘技界に役立つものを持って帰りたいと考えています」

――ヴィー選手の世代も、そう考えるような立場になっているのですね。

「今、私たちが戦っているのも、諸先輩方が頑張ってくれたおかげですから。それを私たちが引き継ぎながら、世界で活躍する選手がもっと増えてほしいです」

――日本も選手層は確実に増えています。

「これから強くなりそうな、新しい世代の選手が増えているじゃないですか。そういった選手たちを応援していきたいですね。もう国内だけで争っていくのではなく、世界を視野に入れて全体的に頑張っていかないと」

――分かりました。そのためにも、次のメザバルバ戦は重要な試合となりますね。

「はい。でも対戦相手の情報が本当に少なくて……」

――これまでブラジル国内の大会で7勝2敗1分、次の試合がONE初戦となって、未知数の部分が多いです。

「試合映像を見るとガンガン打ってくる選手だから、私も取り組んでいる打撃を確かめるには、良い相手だと思います。相手が打ってきても下がらずに、しっかり打撃の展開から組んで、寝かせて勝ちたいですね」

■視聴方法(予定)
9月3日(金・日本時間)
午後8時00分~ ABEMA格闘チャンネル
午後8時00分~ONE Super App

■ONE Empower 対戦カード

<ONE世界女子ストロー級(※56.7キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]シィオン・ヂィンナン(中国)
[挑戦者] ミッシェル・ニコリニ(ブラジル)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
ハム・ソヒ(韓国)
デニス・ザンボアンガ(フィリピン)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
アリョーナ・ラソヒーナ(ウクライナ)
スタンプ・フェアテックス(タイ)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
モン・ボー(中国)
リトゥ・フォーガット(インド)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
平田樹(日本)
アリス・アンダーソン(米国)

<キックボクシング女子アトム級/3分3R>
アニッサ・メクセン(フランス)
クリスティーナ・モラレス(スペイン)

<ムエタイ女子ストロー級/3分3R>
ジャッキー・ブンタン(米国)
ダニエラ・ロペス(アルゼンチン)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP補欠戦/5分3R>
VV.Mei(日本)
ジュリー・メザバルバ(ブラジル)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP補欠戦/5分3R>
ビー・ニューイェン(米国)✖ジェネリン・オルシム(フィリピン)の勝者
グレース・クリーブランド(ブラジル)

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ABEMA DEEP MMA ONE ONE Championship ONE Empower ブログ 山口VV芽生

【ONE Empower】アトム級ワールドGP、リザーブ戦出場。山口V.V芽生─01─「ここまで外されるもの」

【写真】MMAファイターはケージに入って、結果を残すのみ(C)MMAPLANET

9月3日(金・現地時間)、シンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムONE「Empower」が開催される。ONE Championship 、10年の歴史で初となる女子ファイターのみの大会では、ONE世界女子ストロー級選手権試合の他、女子アトム級ワールドGPが開幕する。
Text by Shojiro Kameike

このGP、日本からは本戦に平田樹、リザーバーに山口V.V 芽生が出場する。2020年2月、デニス・ザンボアンガ戦以来の試合となる山口は、ザンボアンガ戦の敗北、そしてGPのリザーバーというポジションに対して、どのように考えているのか。

怒りや焦りといった感情は出てこなかった──MMAキャリア14年を経て、達観したベテランらしいV.V Meiの言葉に耳を傾けてほしい。


――ONE女子アトム級グランプリのリザーブマッチで、ジェリー・メザバルバと対戦するV.V Mei選手です。前回の試合は2020年2月のデニス・ザンボアンガ戦、つまり1年半ぶりにMMAを戦うことになりました。

「1年半ですか。試合間隔に関しては気にしていないですね。試合してみて『おやっ?』と感じることはあるかもしれないですけど、他の人が思っているほど気にしてはいないです」

――試合間隔を気にしないのは、以前からですか。

「はい。昔も1年ぐらい試合がなかったことはありましたから(苦笑)。DEEP JEWELSでベルトを獲った後とか」

――2015年5月に、フェザー級(当時:現アトム級)GPで優勝してベルトを巻きましたが、翌年5月のONE女子世界アトム級王座決定戦、アンジェラ・リーとの試合まで1年のブランクがありました。

「自分と同世代の選手は試合がしたい気持ちはあっても大会が少ない、という時代のほうが長かったじゃないですか」

――ヴィー選手の場合、同階級の選手は一通り対戦していましたからね。

「だから今、コンスタントに試合ができるようになったのが、ありがたいぐらいです」

――今は国内でもDEEP JEWELSをはじめ、さまざまなプロモーションで定期的に試合が組まれるようになりました。女子の場合は選手層の問題もあり、なかなか試合が組まれなかった。そのような時代を経験しているのは、もうヴィー選手の世代が最後なのかもしれないです。

「そうだと思います。おかげで、今も一緒に練習している同じ世代の選手は、コロナ禍で試合ができなくても焦ってはいないですよ。日々、淡々と練習しています。今も昔も、淡々と練習していると、気づいたら時間が過ぎていて」

――この1年半も同じように、淡々と練習していたということですか。

「どちらかというと、自分に足りないことに取り組んでいましたね」

――自分に足りないものとは?

「打撃です。グラウンドに持ち込むための打撃もそうですし、打撃だけで相手を制することができるような自信をつけられるよう、打撃の練習に取り組んでいました」

――ヴィー選手の打撃といえば、幼少期から学んでいた空手がベースでした。今は空手以外の打撃に取り組んでいるのですか。

「どれだけ空手のベースがあっても、やはりMMAとは競技が違うので、うまく活かせていない部分もありました。だから打撃の展開になると、100パーセントの自信を持って臨むことができない時もあって。そこで打撃の展開も確実なものにしたいと思って、最近はキックボクシングもボクシングも取り入れています」

――なるほど。

「打撃については、ずっと前から毎試合、改善していきたいと思っていたんですよ。でも何か取り入れても形にならなかったり……。どうしたらいいのか、試行錯誤していました。今は練習していて手応えがあります。この1年半で、できることも増えました」

――現在、打撃はどのような練習を?

「今年2月から、野木トレーナーにボクシングを教えていただいています」

――野木丈司さんですか。これまで女子MMAでも藤井惠さんや浜崎朱加選手をはじめ、数多くにボクシングの指導を行っていました。

「そうです。野木さんは、これまで多くの選手を指導されていただけあって、引き出しも多いし、私に合ったものを教えてくれるのは大きいです」

――そうして打撃の改善に取り組むようになったのは、前回ザンボアンガに敗れたことも影響しているのでしょうか。

「いえ、特にザンボアンガ戦がどう……ということはないですね。ずっと前から取り組んでいたことなので」

――では、ザンボアンガ戦の敗北は、どのように捉えていますか。

「……もともとザンボアンガについては、あまり情報がなくて、その強さがよく分かっていませんでした。試合映像を見ても、『なぜ相手がここまで動けないのだろう?』と疑問で。それが実際に試合をしてみると、今までの対戦相手とはパワーが違いましたね。『おやっ?』と思うような、不思議な力強さがあったんです」

――確かに、ヴィー選手の組みも打撃も「跳ね返される」という印象は強かったですね。

「試合って、誰しも何かしらの恐怖というか、緊張感を持っていると思うんですよ。相手としては試合前に、その緊張感を掴みに行くんですが、ザンボアンガの場合は緊張感を掴むことができませんでした。今後ONEで戦っていくかぎり、同じタイプの選手も出てくるでしょうから、自分はどうするべきなのか。とにかく技術を上げていくしかないと思っています」

――そのザンボアンガ戦まで、ONEで4連勝し、3度目の王座挑戦も目前だったかと思います。しかしザンボアンガに敗れたことで、タイトル戦線から外れてしまいました。

「最近は、それほどベルトに固執しているわけではないんですよ。もちろんONEのベルト戦線に絡めたら素晴らしいことですし、ベルトを獲れたら最高です。でも、現状を考えると、自分にできることを精一杯やる。そう考えて試合に臨むほうが、精神的にも健康だなって。だから、ザンボアンガに負けたことで、タイトル戦線から外れたのも仕方ないなって思うようになっています。ただ……」

――ただ……何でしょう?

「それでも、ここまで外されるものなのかな、って(苦笑)」

――ザンボアンガに勝っていれば、今回のGPもリザーバーではなく本戦に出られていた可能性は高いと思います。

「そうですね……正直、今回の出場メンバーを見ても、ONEが超実力主義であれば本戦に入っていたと思うんですよ。でも、いろんな局面からファンに対して訴えていくのがONEの特徴でもあるので、『あぁ、そういう方向で行くのね』と理解はしています」

――そうやって割り切ることはできているのですか。

「プロの興行ですから。これがオリンピックであれば、また違うんですけど。ただ、私もそういうONEの方向性に賛同しているから、ずっとONEに出場しているわけで。アジアの人たちに希望を持ってもらうこと、ONEからヒーローを生み出すこと。それはそれで、すごく良いことだと思います。そのぶん、実力プラス個性が求められるところもあるという理解です」

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
9月3日(金・日本時間)
午後8時00分~ ABEMA格闘チャンネル
午後8時00分~ONE Super App

■ONE Empower 対戦カード

<ONE世界女子ストロー級(※56.7キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]シィオン・ヂィンナン(中国)
[挑戦者] ミッシェル・ニコリニ(ブラジル)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
ハム・ソヒ(韓国)
デニス・ザンボアンガ(フィリピン)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
アリョーナ・ラソヒーナ(ウクライナ)
スタンプ・フェアテックス(タイ)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
モン・ボー(中国)
リトゥ・フォーガット(インド)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
平田樹(日本)
アリス・アンダーソン(米国)

<キックボクシング女子アトム級/3分3R>
アニッサ・メクセン(フランス)
クリスティーナ・モラレス(スペイン)

<ムエタイ女子ストロー級/3分3R>
ジャッキー・ブンタン(米国)
ダニエラ・ロペス(アルゼンチン)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP補欠戦/5分3R>
VV.Mei(日本)
ジュリー・メザバルバ(ブラジル)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP補欠戦/5分3R>
ビー・ニューイェン(米国)✖ジェネリン・オルシム(フィリピン)の勝者
グレース・クリーブランド(ブラジル)

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【ONE Empower】シンガポールのロックダウンにより、女子アトム級ワールドGP開幕が延期に……

【写真】延期を知らせるオフィシャルのCGにリトゥ・フォーガットでなく、ブラジルのジュリー・メサバルバがモン・ボーの横に確認できる (C)ONE

21日(金・現地時間)、ONE Championshipが5月28日(金・同)にシンガポール開催予定だったONE120「EMPOWER」を延期することをオフィシャルSNSを通して発表した。

ONE世界女子ストロー級選手権試合=王者シィォン・ヂィンナン✖ミッシェル・ニコリニで、日本から平田樹が出場するアトム級女子ワールドGPの開幕戦が準々決勝が予定されていたが、シンガポールのロックダウンにより延期が決まった。

シンガポール政府では14日(金・同)に16日(日・同)から6月13日(火・同)まで4週間のロックダウン措置を取ることを発表しており、既にレストランでの外食は禁止、家庭外での人と人が対面することは2人までに制限されている。

近々の7日間での1日の新規感染者が平均32人、それでも増加傾向にあるということでこのような厳格な措置が取れるということは、いかにシンガポールではコロナを制御してきたのか。そのなかで国際大会を完全バブルを創った上でONEが開いてきたのかということに驚かされる。

とはいえロックダウンの発動宣言から、今大会の開催が危ぶまれていたことは明らかで本来では同大会に出場する日本勢は19日(水)に離日予定だったが、日曜日に21日(金)に変更されることが伝えられていた。

またPCR検査も事前でなく空港で受けるよう指示があったことで、大会が行えないことは選手も薄々感じ取っていたに違いない。それでもONE首脳はシンガポール以外で急遽イベント開催できないか協議に入っていたという情報も聞き伝わってきたが、もちろん時間も渡航条件も厳し過ぎることは明白だった。

ONEから今後については言及されていないが、来月16日にロックダウンが解けたとしても隔離措置などを考えると、18日は難しいことが予想され、早くとも仕切り直しは25日を睨むことになるか。

また今回の延期発表でONEが用いたグラフィックでは、モン・ボーの相手が先日のONE Dangalでビー・ニューイェンに敗れたリトゥ・フォーガットでなく、ジュリー・メサバルバが写っていることが確認できる。


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