【写真】2023年の3連勝で一気にベルト挑戦まで駆け上がった雅が、MMA&ムエタイ談義をじっくりと話してくれた (C)TAKUMI NAKAMURA
9日(土)に東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP118 Impactにて、雅駿介が福田龍彌と対戦する。
Text by Takumi Nakamura
これまでの相手の中で最も完成度が高いMMAができる福田との一戦を「格闘技の能力で競うだけではなく、スタミナや体力面のキツさだけではなく頭も使う試合」と予想している。またABEMA時代のONE Championshipの解説では高い分析力を見せていた雅がMMAにおけるムエタイ論、そしてDEEPという団体への想いも語った。
――今大会ではDEEPフライ級暫定王者&DEEPフライ級グランプリ優勝の福田龍彌選手と試合が決まりました。
「もしかしたユ・スヨンとタイトルマッチをやる可能性もあると思っていたのですが、自分的には福田選手とやりたかったんです。福田選手は日本での知名度があるし、いきなりチャンピオンとやるより福田選手に勝って、挑戦者は雅しかいないだろうという状態でタイトルマッチをやりたかったので。だから福田選手と試合が決まって、よかったなというのが最初の感想でしたね」
──選手によっては早くタイトルに挑戦したい選手もいると思いますが、雅選手はちゃんと段階を踏んで挑戦したかった、と。
「そうですね。だから結果的には自分が望む形になりました」
──福田選手は元々フライ級の選手ですが、いつ頃から対戦を意識していたのですか。
「ビクター・ヘンリーが王座を返上して石司晃一選手が正規王者になるという発表があった時、福田選手が『来年はこっちのベルトも狙ってもいいでしょうか』みたいなことをTwitter(X)に書いていたんですよ。自分が出ている団体の、自分の階級のベルトのことだったので、自分も何か言った方がいいかなと思っていたら、DEEPバンタム級の他の選手は誰もそれに触れていなくて。
なんで他の選手は自分の団体の自分の階級のことを盛り上げないんだろう?という気持ちもあり『(福田が)階級を上げてくるなら一発目の相手に立候補します』と絡んだことがあったんです。その時、いずれやるかもしれないなというのはなんとなく思っていました」
──ファイターとしての福田選手の評価はいかがでしょうか。
「強いと思います。自分の強さを分かっていて、それを活かすための戦いを徹底している選手という印象です」
──以前、MMAPLANETで取材した時、福田選手本人はその場の即興でどう戦うかを考えると話していましたが、相手に合わせて戦い方を変えて自分の強さをぶつけるスタイルだと思います。
「ですよね。自分もそういったクレバーなイメージがあります」
――短い時間で試合を終わらせるのではなく、しっかり時間をかけて相手を攻略するというか。
「そこはキャリア豊富なベテランらしいというか、焦って攻めないというか。色んな餌を撒いておいて、自分の強いところに相手が喰いついてきたら勝負する。そういう部分はあるかもしれないです」
──戦う身としては試合のシミュレーションが難しいタイプでもあると思うのですが、雅選手はどんな試合をイメージしていますか。
「逆に言うと相手によって戦い方を変えるというよりは、自分の得意な戦い方があって、そこに相手がハマっていくように戦っているように見えるんです。だからゲームプランそのものは難しくないのかなって思いましたね」
──技術戦になることはもちろん、戦術的にお互いどういうカードを切っていくかという試合にもなると思います。
「単純に格闘技の能力だけで競うだけじゃなく、スタミナや体力面のキツさだけじゃなく頭も使う試合というか。今回は5分3Rたっぷりと戦えるので、総力戦になると思います。相手もクレバーに戦ってくると思いますが、そこは自分もムエタイで散々やってきたところなんで自信はあります」
──雅選手のなかで勝つイメージはできていますか。
「そうですね。あとは石渡(伸太郎)さん、今はロータス世田谷にも行っているので八隅(孝平)さん。そういったセコンドに入ってもらうチーム陣の考えも僕は信頼しているので、対策は自信持ってできているっていう感じです」
──今の主な練習場所はどこになるのですか。
「CAVE、ロータス世田谷、石渡さんが最近出したALMA FIGHT GYM PUGNUS、打撃と朝練はPOWER OF DREAM。基本的にこの4つでやっていますね」
──雅選手自身は最近の試合を振り返って、どこが伸びていると思いますか。
「もともとMMAでの自分の戦い方の方向性はある程度見えていたんですけど、練習で出来ることをいざ試合でやってみると出来ないことがあったんです。それが試合でもしっかり出来るようになってきたっていうところですね」
──雅選手はムエタイからMMAに転向する際、それまでのムエタイを活かしつつMMAをやろうとしたのか。それともムエタイをリセットして一からMMAをやろうとしたのか。どちらだったのですか。
「僕は本当にゼロからやるイメージでした。やっぱりムエタイとMMAは距離感が全然違うし、むしろ自分をリセットしてゼロからやりたい気持ちがありました。僕が最初に指導をお願いしたのが石渡さんで、石渡さんも同じ思考というか、MMAはゼロからやるという考えの人なので、それが上手くマッチして。もちろん自分の強みを活かそうとは思いましたけど、最初は本当にそれがなく、まっさらなところから作り上げた感じです」
──組み技は一からのスタートだったと思うのですが、打撃もリセットしたのですか。
「はい。打撃も立ち方・構えから始めました。それがある程度形になってきてから、こういうこともできるよねと自分の(ムエタイの)強みを足していくイメージでしたね」
──ムエタイからMMAに転向するうえで、雅選手はどこが一番難しかったですか。
「デビューして最初の3戦は1勝2敗と負け越して、上手く行かない部分が出ちゃったのかなと思います。で、それがだんだん良くなってはいくんですけど、今度は逆に小さくまとまっていた部分もあるんです。MMAファイターとしてムエタイが活きていない、普通のMMAをやる選手になっちゃっているなって。最初はゼロからMMAをやるイメージでしたが、逆に今はムエタイの強みを取り入れて、自分らしさを出していく方向にシフトしています。これからは自分らしさを出していくことが大事なので」
──例えば打撃の間合いやプレッシャーのかけ方など、試合をやるごとに少しずつ変わってきた印象があるのですが、雅選手自身もそこは意識していましたか。
「やっぱり距離感が一番難しかったですね。ムエタイでは何かしら手を出せば攻撃が当たる位置で戦うのが基本で、首相撲もあるからより距離が近づくこともあるんですけど、MMAでその距離で戦うと被弾するリスクが増えて、簡単に組まれてしまう。僕はMMAは踏み込んで打撃を当てる競技だと思っているので、そのMMAの距離感の設定に一番苦しみましたね。石渡さんにも口酸っぱく言われ続けました」
――距離設定がムエタイからMMAに変わってきた、と。
「しかもその距離設定が打撃の一手であり、組みの一手だと思うんですよ。打撃でも組みでも自分が有利な状態でスタートさせるという意味で距離設定は重要なので、そこが上手くなってきたから、試合が上手く回るようになったというのはありますね。だからMMAの距離感を守れるようになった感じです。昔はどうしても相手に触れる距離=ジャブやローキックを出せば当たる距離で戦いたくて、そこまで勝手に行きがちだったのですが、そこの距離設定がちゃんと合うようになってきました」
――攻防の受け返しができる位置で戦うのがキック・ムエタイで、攻防しなくていい位置で戦うのがMMAでもありますよね。
「そうですね。受け返しがあるキック・ムエタイと、受け返しがない&自分の戦いを押し付ければいいMMA。そこの競技性は確かに違うかもしれないです。あと言い方は難しいですけど、いい意味で臆病になるというか、打撃に自信を持っているけど打撃を怖がる。その感覚も大事だと思っています。やっぱりMMAグローブはガードの隙間を抜けてくるし、ボクシンググローブで出来ていたディフェンスが出来ないうえに、一発で効かされてしまう。今はより相手の攻撃に対して敏感に戦っています。ONEのムエタイルールの試合を見ていると、MMAグローブでよくあの近距離で打ち合うなと思うし、今は感覚的にそっちになっていますね」
──一度過去のキャリアをリセットしてMMAにチャレンジした今だからこそ、MMAに活かせるムエタイの技術もあるのではないですか。
「むちゃくちゃありますね。最初は手探り状態だったんですけど、自分のMMAの基礎が出来るようになってくると『こういうことが出来るな』とか『MMAグローブだったらこういうことが出来るな』とか、寝技・組技でも首相撲が活きてくることもあるので、今はいろんなことが活かせるようになってきました」
──寝技での首相撲とは具体的にどういうものですか。
「結局組む競技において、どの局面でも基礎的なこと・一番大事なことは一緒だと思うんですよ。内側をとりましょうとか。だから寝技でも首相撲が活きるところがあるんですよね」
──首相撲が使えればパウンドやグラウンドのヒジも出しやすくなるのですか。
「そうですね。組み手の作り方で殴りやすいポジションやヒジを当てやすいポイントがあって、そこはムエタイの首相撲でさんざん組んできたんで、活きてくることばかりですね。ただヒジのアイデアや打ち方は色々と浮かぶんですけど、練習だと本気で打ち込めないじゃないですか。試合でどう出すかがポイントだと思うんですけど、それもだんだんと試合で使えるようになってきたので、もっとその部分を出していこうと思います」
──そういった意味では雅選手のMMAがどう進化していくのか、非常に楽しみです。
「そうだと思います。やっぱりそこ(ムエタイの技術)で勝負を決めることだったり、それが試合で出てきたらいいなと思いますね。“出てきたらいいな”で終わらせず、それを目指す練習を意識してやっています」
──去年の大晦日は立ち技から多くの選手がMMAに挑戦しました。雅選手はこのことをどう感じていますか。
「いいことだと思いますね。PRIDE時代もそうだったと思うんですけど、ミルコ・クロコップがK-1でめちゃくちゃ強くてMMAに流れてきたように、考え方は人それぞれあると思うんですけど、一番を目指していたら何でも出来て強い、MMAにくると思うので。ただ、自分もMMAの壁にはぶつかったかなと思うこともあったし、鈴木千裕くんとか怪物くん(鈴木博昭)のように立ち技の技術を生かす戦い方ができるようになるとMMAでも強さを見せられますよね。平本(蓮)君も色んなチャレンジをして失敗して、自分の強さを出せるようになってきている。選手それぞれ色んな形があっていいですよね」
──まさにMMAを経験することで、どう自分のスタイルを創っていくかですよね。
「ただ自分と同じにしてほしくない気持ちはあります。自分はちゃんとDEEPでキャリアと実績を積んでベルトを獲ってから、大きな舞台に出ていこうと思っているので。僕は立ち技の選手がMMAに挑戦するのではなく、MMA選手として完成した状態で色んな舞台に出ていきたいです」
──今回の福田戦はベルトにつながる試合だと思いますが、先ほどは「DEEPバンタム級の他の選手の反応を見たら、福田選手以外は誰もそれに触れていなくて。なんで他の選手は自分の団体の自分の階級のことを盛り上げないんだろう?という気持ちもあった」という言葉もありました。雅選手は自分が強くなることはもちろん、自分が戦う団体を盛り上げたいという気持ちもあるのですか。
「僕の感覚的にMMAよりキックボクサーの方がSNSで色々と発信して、大会を盛り上げようとする選手が多いのかなと思います。いざ自分がKNOCKOUTからDEEPに出た時に、DEEPの選手たちは自分の試合のことは書くけど、あまり団体やイベントのことは書かないんだなと思ったんです。特に自分の階級のベルトの行方に対しても誰も何も言わないのはビックリしましたね」
──それと同時に「自分たちが目指しているものに興味がないの?」という想いもありますよね。
「そうですね。もちろんSNSで発信しなくても、ベルトに強い想いを持っている選手はたくさんいて、俺がベルトを獲ってやると思っている選手はいると思います。でも自分はその部分でも負けたくないと思ったから発信したし、今でこそ自分は連勝してタイトルにも絡めるようになってきましたが、DEEPに出始めた頃は誰も自分がそうなるとは思っていないから、自分で勝手に『1年以内にタイトルマッチをやります』とか言っていたんですよ。
周りから『大きく出たね』と言われるくらい(苦笑)。でもそういう状況から自分の想いは言い続けてきたし、言った以上は有言実行しなきゃいけないじゃないですか。だから僕は言うこと・発信することも大事だと思います」
――雅選手はDEEPに対する愛着も強いのですか。
「デビュー当初は結構負けちゃったんですけど、2022年には5試合も組んでもらいましたし、DEEPに自分を強くしてもらったと思っているので、愛着は湧きますよね。DEEPでこれだけキャリアを積ませてもらって、そのDEEPに対する想いが凄く出てきているし、元谷(友貴)さんがDEEP最高傑作と呼ばれているのもカッコいいなと思いますし、自分もDEEPの顔になっていけたらいいなと思います」
──そんな雅選手がDEEPのベルトを獲れば、さらにDEEPが面白くなるでしょうね。
「それと同時に今年こそベルトを獲らないとな、という焦りもあります。僕は2024年に上がっていかなきゃいけないと思っているので。その1発目で本当にいい相手を持ってきてもらえたので、ここをクリアして、今年は勢いに乗って上にいきたいと思います」
■視聴方法(予定)
3月9日(土)
午後5時45分~YouTube DEEP/DEEP JEWELSメンバーシップ、U-NEXT、サムライTV
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【DEEP118】福田龍彌と暫定フライ級王座決定戦へ、雅駿介「寝技でも首相撲が活きる」 first appeared on
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