【写真】ヴィジョンを持ち、目標を達成するための手段をしっかりと選ぶことができているイメージだ(C)TAKUMI NAKAMURA
28日(日)、さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで行われる超RIZIN03で、新居すぐるが摩嶋一整と対戦する。
Text by Takumi Nakamura
昨年は3戦3勝、パンクラスでの王座獲得や大晦日RIZINでの勝利など、大活躍の1年となった新居。怪我の影響で試合から遠ざかることになったが、超RIZINでは摩嶋とのフェザー級屈指の──タイプが違う──グラップラー対決が決まった。
2025年のRIZIN王座奪取というゴールへ向けて、新居は「7月に摩嶋選手に勝って、大晦日に外国人選手に勝って、自分の強さを認めてもらう」という青写真を描いている。
――昨年大晦日の弥益ドミネーター聡志戦以来の試合が決まりました。右拳の怪我もあって試合間隔が空く形になりましたが、年明け以降はどう過ごしていたのですか(※取材は5日に行われた)。
「最後に殴った右拳とカーフを蹴られた左ヒザを怪我してしまって、医者からは全治2~3カ月と言われていたんです。ただ再発するのが嫌だったので5カ月ほど空けて、本格的な練習を再開したのは比較的最近ですね」
――改めて弥益戦を振り返っていただけますか。
「僕は前足重心でカットしないスタイルなので、飯田健夫戦もそうなんですけど、ローとかカーフを蹴られやすいんですね。だから絶対にドミネーター選手もカーフは蹴ってくるだろうなと思っていました。ただ僕がカーフを蹴られて何発かパンチを返した時に、いつものドミネーター選手だったらカウンターでパンチを打ち返してくるんですけど、それがなかったんですね。だから相当僕のパンチを警戒しているんだなと思ったし、それで最後は一発合わせることができました。だから展開的に想定外だったことはないです」
――カーフを蹴られる前提でパンチを合わせる練習をしていたんですね。
「唯一びっくりしたのはカーフが痛すぎたことですね(苦笑)。飯田戦はローキック気味だったんで、そこまで効かなかったんですけど、カーフは2~3発で効きました」
――前足を効かされたことで、パンチの踏み込みに不安はなかったですか。
「自分もそういうイメージだったんですけど、遠心力を使ってパンチをぶん回せば倒せるんだなと。あとはMMAグローブの形状的に、例えばパンクラスのMMAグローブはかなり薄いので高木(凌)選手みたいにキレがあるパンチをピンポイントで当てないと倒すのが難しいのですが、RIZINグローブは拳のところが少し厚い作りなので僕みたいなぶん回し系でも効かせられるんですよね。そこがあの試合では出たかなと思います」
――打撃のパーソナルトレーニングの成果が出ましたか。
「僕、去年は一回も打撃のガチスパーはやってないんですよ。ダメージが残るのが嫌だから、打撃はマススパーしかやらないようにしていて。で、打撃をコツコツ当てて削るタイプじゃないから、一発を当てるための練習だけをやっていたんです。それが試合で出たと思うし、どれだけ劣勢になっても一発で倒す練習をしているからビビることはないです」
――新居選手の良い部分を伸ばすような指導なのですね。
「打撃を教わるときに、他の選手も参加するクラスに出ると『基本はこうだから、こういうことをやってください』という指導だと思うんですけど、今のトレーナーは僕が弱点だと思っていたところ・ここを直さなきゃいけないと思っていたところを良さに変えてくれるような教え方をしてくれるんです。僕を否定することがなくて、僕のこうしたいですというリクエストも受けて、そのための指導をやってくれるのでやりやすいですね」
――MMAPLANETでは昨年9月にパンクラスでベルトを獲ったあとにインタビューさせてもらい、その時に新居選手は年末のRIZIN出ることが目標だと話していました。その目標も実現して、練習の成果を出して勝つことができた。まさにこの1年間でやってきたことが形になった大晦日でしたよね。
「そうですね。僕は一昨年に練習環境をがらりと変えて、ちょうど1年くらい経ったタイミングで、去年は試合を続けていたんですね。それで去年は3戦3勝という結果を残せて、これから改良することもあると思いますが、今自分がやっている練習方法が間違っていないなと思えることが出来ました」
――前回のインタビューでも話されていましたが、新居選手は各ジャンルでパーソナルトレーナーをつけて練習するという形を取っていますよね。
「しかもそれぞれのトレーナーさんたちの連携が取れているというか、みんなでコミュニケーションが取れる関係なので、それぞれの練習状況が共有できているんですね。だからトレーナーは個別にいるけど、一つのチームとして取り組んでいることが出来ると思います」
――勝つために必要な環境を自分で整えている、と。
「前回のインタビューでも話した通り、本当に僕は毎日遊んでいるから(笑)、他の選手に迷惑をかけられないじゃないですか。それで各分野の専門家からパーソナルトレーニングを受けているんですけど、みなさん僕がどういうスタイルなのかを理解してくれているんですよね。
普段の生活も含めて。それは応援してくれる方たちも同じで、僕ってSNSでも遊んでいるところをバンバン公開するじゃないですか。普通は『もっと真面目に練習しろ!』と思われるかもしれませんが、これが僕のスタイルだし、それをみんな分かってくれているんですよね。実際に結果を残すことが出来ているし、今は自由に自分がやりたいことをやらせてもらっています」
――ただそういう状況で、怪我で試合ができなかったことはストレスにはならなかったですか。
「でも怪我でもしないと休めないので。僕、去年は3試合やったんですけど、6月から12月までで3試合やっているんですね。だからドミネーター戦が終わったらゆっくりしようと思っていたので、ちょうどよかったですね。この5カ月間は遊びまくって、また格闘技をやりたいという気持ちになってきたので、いい時間でした」
――5月にカンボジアで行われたチャリティ関連のイベントでグラップリングの試合に出場されましたが、あれはどういった経緯で決まったのですか。
「もともと僕は毎年茨城のTEAM STが主催しているイベントに参加していて、それはイベント収益の全額を茨城の児童施設に寄付するという趣旨のものなんですね。そのスタッフとカンボジアの方がつながっていて、カンボジアで開催するイベントに参加しませんか?という話をいただきました。だからあのイベントもカンボジアの児童施設の子供たちを招待して試合を見せて、試合で使ったリングを寄付するというイベントだったんです。
カンボジアは格闘技イコール打撃・立ち技らしく、グラップリングの試合は珍しかったらしく、控室で他の選手たちに『なんでお前はグローブもバンテージも巻かないんだ?』と驚かれました(笑)。見に来てくれた子供たちはすごく喜んでくれて。色んな刺激を受けました」
――そして超RIZIN3での摩嶋一整戦が決定しました。超RIZINには出場したいと思っていましたか。
「はい。ずっと今年の超RIZINには出たいと思っていて(朝倉)未来君と平本(蓮)選手の試合はタイトルマッチよりも注目されて、本当にたくさんの人が見る大会だと思うんですよ。しかも会場もさいたまスーパーアリーナのスタジアムバージョンで、日本でMMAをやっている選手だったら誰もが出たい舞台だと思うので、試合が決まった時はうれしかったです」
――対戦相手が摩嶋選手に決まったことはどう捉えていますか。
「僕の希望としては外国人選手と戦いたかったんですよ。今RIZINで日本人選手が外国人選手になかなか勝てない状況があって、そこで日本人同士で潰し合うよりも、日本人みんなで外国人選手に立ち向かっていきたくて、それこそ僕と摩嶋選手で外国人選手と戦うのもいいかなと思っていました。
ただマッチメイクは主催者が決めるものだし、僕と摩嶋選手の試合を見たいという声も多かったので、望まれる試合であればそれをやってから、VS外国人をアピールしたいと思います」
――摩嶋選手のファイトスタイルはどう見ていますか。
「めっちゃ苦手なタイプです(苦笑)。RIZINの戦績は負け越していますけど、対戦相手はほとんどチャンピオンクラスだし、試合に負けても評価が落ちていない選手だと思うので、大晦日と同じようにフィニッシュして勝って、自分の強さをアピールしたいです。僕は来年RIZINのベルトを巻きたいと思っているので、絶対にここは落とせないですね」
――ただ勝つだけじゃなくてフィニッシュしたいですか。
「自然にそうなると思います。僕も摩嶋選手もスタミナがないから、3Rまでいったらグダグダの試合になる気がします(笑)。だから2Rまでには終わらせたいです。というか僕は2Rすら延長戦みたいなものだと思っているんですよ」
――発想が5分1本勝負なのですね。1R=本戦、2R=延長戦、3R=再延長のような感覚で。
「そうです。だから再延長なんて絶対に嫌です(笑)」
――昨年はパンクラスのベルトを獲って、大晦日RIZINに出るという目標があり、それを達成しました。今の新居選手の目標を教えてください。
「僕としては7月に摩嶋選手に勝って、大晦日に外国人選手に勝って、自分の強さを認めてもらって、来年RIZINのベルトを巻きたいです。あとはベルトとは別の部分でクレベル・コイケ選手とは戦いたいと思っています」
――クレベル戦と戦い理由とは?
「純粋にどれだけ寝技が強いのかを体感したいし、クレベル選手って絶対にタップしなさそうじゃないですか。そういう相手を絞め落とすか関節を壊すかすれば、会場がめちゃくちゃ盛り上がると思うんですよね。そういう意味でやってみたいです。ちなみに僕がもしクレベル選手にがっちり三角を極められたら必ずタップします(笑)」
――その目標のために新しく取り入れたい練習はありますか。
「去年のパンクラスのタイトルマッチ前からなんですけど、安楽(龍馬)にレスリングを教わっているので、そこを継続して強化していきたいですし、外国人選手とやるにはパワーをつける必要があるのでフィジカルトレーニングも再開しました。ここ2年くらいは(日本人相手に)パワー負けすることがなかったのでフィジカルはやらなくてもいいと思ったんですけど、外国人選手に勝つためには絶対に(フィジカル強化は)必要ですね。筋力をつけるトレーニング、格闘技的なトレーニング、それぞれパーソナルトレーナーに見てもらっています」
――前回インタビューしたときにも思ったのですが、新居選手は明確にゴールや目標を決めて、そこから逆算して自分が何をすべきかを考える。そのためには投資を惜しまない。そんなタイプですよね。
「ああ…確かにそうかもしれないです。例えば僕は一週間練習したら日曜日にそれをおさらい・復習して、月曜日からの練習内容を考えるんですね。それでそれぞれのトレーナーさんに連絡を取るので、ただ目的なく練習するということがないかもしれないです。どの練習も一つ一つ全部に目的がある感じです」
――超RIZINという大舞台でどのような自分を見せたいですか。
「今回はチケットも売れ方も半端なかったし、新居すぐるの強さを認めてもらって有名になりたいです。ただ強いだけでもダメだし、知名度だけ選考していてもダメだし、強くて有名になる。それが出来る舞台が超RIZINであり、摩嶋選手という相手だと思うので、ここから人生を変えたいです」
■視聴方法(予定)
7月28日(日)
午後2時00分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!