18日(日・現地時間)、豪州はパースのRACアリーナでUFC 305「Du Plessis vs Adesanya」が開催され、コメインでスティーブ・アーセグがカイ・カラフランスと対戦する。
Text by Manabu Takashima
Beatdown Promotionで北野一声を破ったスチュアート・ニコルが、第1試合でヘスウ・アギラーと戦うフライ級も組まれている今大会。日本からの遠征も増え、日本人フライ級ファイターがその視界に豪州勢を入れないといけなくなっている現状で、オーストララシア最強のフライ級を決める一戦が組まれた。
ニュージーランド&豪州の軽量級をリードしてきたカラフランスの対戦を控えたアーセグをインタビュー。昨年6月のスクランブル発進オクタゴン初陣から1年未満で世界王座挑戦を実現させた──ある意味、シンデレラボーイは、オクタゴンの中と同じで、現状の把握と修正が人生でもできるスマートなファイターだ。
カイはボクシングが好きで、接近戦で打撃の攻防がしたいだろう
――カイ・カラフランスと地元パースのファンの前で戦います。今の気持ちを教えてください(※取材は14日に行われた)。
「ホームタウンのファンの前で戦うことはワクワクすると同時に、少しプレッシャーも増えるかな。でも、自分がどれだけ成長できたかを皆に見てもらえる機会でもあるし、色々な気持ちが交錯しているよ」
──PPV大会のコメインでもあります。
「数多くのファイターがUFCとサインをしているけど、訪れる順番としては『試合に出る』、『PPVショーで戦う』、『PPVショーのコメインに出る』という風になるはずだ。地元でPPVがあってコメインで戦う機会が訪れる選手なんてほとんどいない。なにかの間違いないじゃないかという状況をUFCが与えてくれた。その期待に応えないといけない」
──とはいえスティーブは既にMSGで戦い、ブラジルというアウェイの地で世界王座に挑戦するなど僅か14カ月間で他のUFCファイターにはない経験をしているかと思います。特に敗れたとはいえ、オクタゴン4戦目でのタイトル挑戦は得難い経験だったのではないでしょうか。
「色々なことを学ぶことができた。そのなかでも一番良かったことは、自分に自信が持てたということかな。世界のベストとやり合う。ずっと夢見てきたことが、現実になった。初めての5Rの試合で、世界王者とやりあえたことは大きな自信になっている。特にラウンドが進むと、僕と同じようにパントージャにも疲れが見て取れるようになったしね。
序盤からハイペースで戦った。そうしたら世界チャンピオンも疲れ始めたんだ。3Rのファイトなら、そういうことは言うと簡単にトライできる。それを5回戦でやれたのは、大きいよ。次の機会には、フィニッシュを考えて戦うことができるはずだ」
──スティーブは素晴らしいキックボクシングをケージの中で披露しています。構えも蹴りとパンチを出しやすい姿勢で。それでいて相手のテイクダウンを返す力も持っています。しかし、パントージャにはラウンドに1度というぐらいの確立でテイクダウンを許しました。他の選手とパントージャの違いはどこにあったのでしょうか。
「まずパントージャ―にはダブルやシングルでなく、ボディロックでテイクダウンを奪われた。ここが違う。特に左フックに組まれて、ボディロックを許した。足への組みには自信を持って対処できたけど、上半身に組みつかれたことが大きな要因だ」
──ボディロックに入るための、スラッピーな打撃がパントージャにはありました。それを可能にしたのは、パントージャがスティーブの打撃を怖がらないで戦えたからかと。ビビッて下がるとボディロックを取ることはできなかったと思います。
「確かにパントージャの打撃は粗い。そして、それは組むための打撃だったのも絶対だ。あの試合以降、ボディロックテイクダウンの対処は徹底的にやってきた。カイが同じようにしようと思っても、もう違う。足だけでなく、どの箇所でもテイクダウン・ディフェンス力は上達している。
カイはボクシングが好きで、接近戦で打撃の攻防がしたいだろう。でも近距離になると、僕にはエルボーやヒザ蹴りもある。テイクダウンに関しても、倒されることもあるかもしれないけど、倒された後もカイとパントージャは違う。パントージャのトップキープ力、その体の重みはカイにはない。つまり、寝技の攻防は続かずにすぐに立ち上がることができる」
──当然、この試合に勝ってタイトル戦線に戻ることが目的だと思いますが、一度敗れているとすぐに機会は訪れないかもしれないです。そのためにインパクトのある勝ち方が必要になってきますが、日曜日の朝はどのような試合をしたいと考えていますか。
「まず、この試合で僕が勝ってもすぐにタイトル挑戦はできないと思っている。もちろん、そうなれば嬉しいけど──この試合でカイをフィニッシュしても、あと2試合は必要になってくるだろう。フライ級のトップ選手を2人倒すと、またタイトルショットの権利が得られるぐらいの気持ちでいる。
と同時にカイという豪州やニュージーランドの軽量級をリードし、僕らに世界で戦うドアを開いてくれたファイターのことを凄く尊敬している。もし、戦う必要がないのなら試合をしないでおきたい相手だった。でも、決められた試合にNoというつもりはない。
何よりもクラス最強のファイターと戦いたいし、僕の現状ではそれがカイ・カラフランスになる。彼ももう一度世界のベルトに挑戦したいはずだ。僕もそうだ。なら、戦うよ。彼へのリスペクトは一旦、置いてオクタゴンに上がって勝利を手にするだけだよ」
Eternal王者とHEX王者の対戦は凄く興味深い
──そんなカイ・カラフランスとの試合に集中しないといけないことは承知しているのですが、豪州MMA界について一つ質問させてもらっても構わないですか。
「もちろんだよ」
──今、豪州MMA界ではEternal MMAとHEX Fight Seriesが選手を引き抜いたり、ドメスティック・シーンがシビルウォーの様相を呈しています。この現状は豪州MMAにとって、どのような影響を及ぼすと考えていますか。
「なるほど(笑)。僕はEternal MMAの王者からUFCにステップアップしたけど、HEX FSでも戦った経験がある。単独のプロモーションが独走するよりも、複数のプロモーションが競合している状況の方がMMAが発展すると思う。団体運営も良くなっていくし、選手の環境も良くなるだろうからね。一方がベストで、もう一つが大きく水を空けられるという状況に陥らない程度なら、競争は良い効果があると思う」
──その余波がDWCSでも見られて、Eternal MMAフライ級王者だったアンソニー・ドリリッチとHEX FCフライ級王者ショーン・ガウシーの一戦が組まれました。
「Eternal王者とHEX王者の対戦は凄く興味深いよ。でもアンソニーとは一緒に練習をしているので、彼の勝利を願っている」
■視聴方法(予定)
8月13日(日・日本時間)
午前7時30分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前7時00分~U-NEXT
■対戦カード
<UFC世界ミドル級選手権試合/5分5R>
[王者] ドリキュス・デュプレッシー(南アフリカ)
[挑戦者] イスラエス・アデサニャ(ニュージーランド)
<フライ級/5分3R>
カイ・カラフランス(ニュージーランド)
スティーブ・アーセグ(豪州)
<ライト級/5分3R>
マテウス・ガムロ(ポーランド)
ダン・フッカー(ニュージーランド)
<ヘビー級/5分3R>
タイ・ツイバサ(豪州)
ジャイルジーニョ・ホーゼンストライク(スリナム)
<ウェルター級/5分3R>
リー・ジンリャン(中国)
カルロス・プラチス(ブラジル)
<ヘビー級/5分3R
ジュニオール・タファ(豪州)
ヴァルテル・ウォウケル(ブラジル)
<フェザー級/5分3R>
ジョシュ・クリバオ(豪州)
ヒカルド・ラモス(ブラジル)
<女子フライ級/5分3R>
ケイシー・オニール(英国)
ルアナ・サントス(ブラジル)
<フェザー級/5分3R>
ジャック・ジェンキンス(豪州)
エウベルチ・バーンズ(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
トム・ノーラン(豪州)
アレックス・レイエス(米国)
<ウェルター級/5分3R>
ソン・ケナン(中国)
リッキー・グレン(米国)
<フライ級/5分3R>
スチュアート・ニコル(豪州)
ヘスウ・アギラー(メキシコ)