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【Eternal MMA85】バンタム級王者コスタと対戦、伊藤空也「海外で結果を出すことへの挑戦」

【写真】オーストラリア入り後の伊藤。キャリア2度目の海外挑戦でEternal MMAのベルトに挑む。 (C)KUYA ITO

8日(土・現地時間)オーストラリアはパースのHBFスタジアムで開催される「ETERNAL85」にて、伊藤空也がロッド・コスタの持つEternal MMAバンタム級王座に挑む。
Text by Takumi Nakamura

昨年12月の「GRACHAN66」で田中智也を下し、Grachanバンタム級王座への挑戦が内定している伊藤に思わぬチャンスが舞い込んできた。Grachanと協力体制にあるEternal MMAでのタイトル挑戦だ。

デビュー当初から海外での試合、ユニファイドルールで戦うことにこだわりを持っていたという伊藤にとっては、今後のキャリアを左右するであろう重要な一戦だ。オーストラリアに出発する前日(6アg津)に伊藤に話を訊いた。


――Eternal MMAでバンタム級王座挑戦が決まった伊藤選手です。オファーが来たのはいつ頃だったのですか。

「2カ月前くらいですね。最初に話が来たときはびっくりしました。Eternal MMAはUFCファイトパスでも視聴できる大会で、BRAVEジムのみんなも知っているような大会なので、断る理由がないですよね。本当にチャンスだし、ぜひやらせていただきます、という感じでした」

――伊藤選手は昨年12月の「GRACHAN66」で田中智也選手に勝利し、TSUNE選手が保持するGrachanバンタム級王座に挑む流れもあるなかで今回の試合が決まりました。タイトル戦の前に試合をしたいという希望もあったのですか。

「そうですね。タイトルマッチがだいぶ先(2024年12月)になるという話を聞いたので、それまでに試合をしたいと思っていました。今回の試合はGrachanとEternal MMAが協力関係にあって、岩﨑(ヒロユキ)代表経由でいただいたオファーだったので、そこは調整してもらった感じですね。ただタイトルマッチになるとは思っていなかったので、そこはびっくりしました」

――思わぬ形で舞い込んだチャンスだと思います。海外で試合をするという部分もモチベーションになっていますか。

「はい。そういう喜びもあったし、あとはもう本当に集大成というか。今自分がやっていることを試すいい機会かなと思っています」

――伊藤選手にとっては2020年のBrawl以来の海外遠征です。当時と今のキャリアでは海外に出ることの意味合いも変わると思います。海外の大会に出る、海外で実績を残すことは伊藤選手の中のずっと目標にはあったのですか。

「僕がMMAをプロでやり始めたときは、まだRIZINもなかった時代で。UFC、ONE Championshipが盛り上がったときだったので、どうしても世界標準というものを見て、そこを目指していたんですよね。それもあってユニファイドルール、ケージでの試合にずっとこだわってきました」

――海外挑戦は伊藤選手にとって原点でもあるんですね。

「今回タイトルマッチということもあって、自分がどれだけ世界に通用するのかを試せる試合で、その部分でも僕にとっては意味のある試合です。しかもUFCファイトパスで中継される大会のメインイベントをやらせてもらうということで、今まで以上に注目されるだろうし、その中で自分の試合を見せられればなと思います」

――対戦相手のロッド・コスタにはどんな印象を持っていますか。

「一通りファイトパスで試合を見て、これぞ柔術家と言える正統派の落ち着いた戦い方をする選手だと思います。基本的には組んで寝かしたいんでしょうけど、全然下になっても苦にしないとタイプですよね」

――決してきれいな打撃ではないですが、積極的に手数も出すイメージです。

「僕の見た感じの印象なんですけど、それも作戦でやってるんだろうな、と。多少打撃はもらってもかまわないという感覚で戦っている気がします。最終的に組めればいいというか。柔術黒帯でMMAのチャンピオンという部分もあるだろうし、5分5Rにも慣れているでしょうね。最終的に組めば絶対に勝てるという自信を持っているように思います」

――勝ちパターンがはっきりしている選手ではあると思います。

「そうですね。だからそこを凌げばチャンスが来るだろうし、穴はスタンド(打撃)だと思います」

――レコード的にも比較的敗戦も多いキャリアだと思います。

「もともと一階級上のフェザー級でやっていて、その時の負けが多いんだと思います。あとは負けていてもフィニッシュさせないというか、柔術家らしい粘り強さはありそうです」

――サブミッション対策と打撃でどう組み立てるかがポイントだと思うのですが。どのような準備をしてきましたか。

「今回はユニファイドルールなので、RIZINとは全く違いますよね。極論5分5Rのうち3つ取れば勝てるわけで。当然コスタの穴は打撃で、そこに対する対策は練ってきました」

――言える範囲でどういった対策を練ってきましたか。

「BRAVEのタイ人トレーナーからムエタイの細かい打撃を教わったり、ボクシングもやったり、クリンチ際の攻防も練習してきました。あとは今回の試合で言えば柔術とノーギのグラップリングにも力を入れて、トライフォース池袋さんに練習に行かせてもらって、徹底的に柔術家の寝技がどういう流れ・動きなのかをやってきました」

――寝技が強いMMAファイターと純柔術家では質が違いますか。

「全然違いますね。レスラーがやるグラップリングはやっぱり多少フィジカルや身体能力で持って行っちゃう部分があって、逆に柔術家はピュアな寝技のスキルが高くて強い。そこを肌感覚で触れておくことは十分にやってきました」

――5分5Rという部分はいかがでしょうか。

「相手を変えながら階級が上の選手と5R用の練習をやってきたし、コスタに似たタイプの選手とも練習してきたので、実戦的な練習はしっかりできたと思います。あとはそれをそのまま本番でやればいいのかなって感じです。長丁場の難しさはあると思いますが、試合が進めばダメージや打撃の蓄積もあると思うし、後半に倒すチャンスが来る。前半にポイントをリードされても逆転する可能性があると思います。5分5Rは初ですが、シュートボクシングの3分3R延長無制限Rの方がきついですよ」

――Eternal MMAでベルトを巻くことになったら今後のキャリアアップにもつながると思います。そこは意識していますか。

「僕のキャリアとしても箔がつく試合だと思うので、しっかり勝って、次に繋げられるように。そういう試合になればと思ってますね。正直あまりベルトは意識していなくて、ユニファイドルールの5分5Rでコスタ選手に勝つことにフォーカスしています」

――今後も海外では試合を続けていきたいですか。

「僕がチャンピオンになったら当然防衛戦もあるわけで、そうなるとオーストラリアに行くことも増える。オーストラリアの選手やそれ以外の国の選手と戦っていくことになると思います。そこで勝ち続けてUFCとの契約が繋がればいいですよね」

――やはりMMAファイターとしてUFCにはチャレンジしたいですか。

「はい。UFCはもちろん、今はいろんな海外の団体があるので、どれだけ自分が海外で結果を出していけるのか。そういう挑戦でもあると思うし、今回がその第一歩になると思います」

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DEEP Grachan Grachan66 MMA MMAPLANET o ブログ

【Grachan67】2024年は大阪大会からスタート! 手塚×TSUNEの再戦&松場×御代川のダブルタイトル戦決定

【写真】運命の再戦(C)GRACHAN

2024年2月4日(日)、大阪府豊中市の176BOXで開催されるGrachan67で、バンタム級王者の手塚基伸がTSUNEの挑戦を受けることが発表された。両者は今年10月にノンタイトル戦で激突し、TSUNEが判定勝利を収めている。
Text by Shojiro Kameike

2023年最終興行となった12月17日(日)のGrachan66が終わったのも束の間、早くも2024年第1弾興行の対戦カードが発表された。手塚×TSUNEのバンタム級タイトルマッチに加え、松場貴志が御代川敏志を相手にフライ級王座防衛戦を行う。また、Grachan66でライト級暫定王者となった林RICE陽太の出場も予定されている。


手塚とTSUNEは前回の対戦前に掲載されたインタビューで、もともと「師弟」の関係であったことが明らかとなっている。TSUNEが岡山県倉敷市で社会人野球から離れたあと、藤田大和の家族が経営していた格闘技ジムに入会。そこでMMAクラスの指導を担当していたのが手塚であった。

年齢はTSUNEのほうが2歳上だが、手塚は当時すでにパンクラスで活躍しているプロファイターだった。その後、手塚はベルトコレクターとして様々な団体の王座に就き、一方のTSUNEは上京してプロMMAデビューを果たしている。

(C)GRACHAN

そんな両者が運命に引き寄せられるように対戦したのが、今年10月のグラチャン10周年記念興行だった。サブミッションの手塚と、グラウンドコントロールのTSUNE——両者のやるべきことは決まっている。結果、TSUNEがテイクダウンからゲームを支配。手塚もバックに回るもののTSUNEにトップを奪われる展開が続き、判定負けを喫した。

試合後すぐにTSUNEは、ベルトを賭けた再戦をアピールしている。手塚は何とも微妙な表情を浮かべながらケージを後にしたが、初戦から4カ月後の大阪大会で再戦が実現することとなった。両者のファイトスタイルから考えると、互いにやるべきことは変わらないだろう。やはり大きなポイントとなるのは、前戦と違い今回はタイトルマッチ=3Rとなる点か。

(C)GRACHAN

初戦は序盤こそTSUNEがハーフガードから潜ってくる手塚の動きを潰していたが、終盤はクルスフィックスの応酬から手塚がバックをキープする場面も見られた。もちろんTSUNEも2R戦であるからこそ初回からフルスロットルで攻め込んだと思われるが、やはりボトムから粘りポジションとサブミッションを狙い続ける手塚の後半は怖い。反対にタイトルとリベンジを賭けた再戦だけに、手塚が伊藤空也と同様、一気に極めに来ることも考えられる。このあたりは両者の1Rの動きから注目だ。

(C)SHOJIRO KAMEIKE / GRACHAN

フライ級タイトルマッチは、昨年8月に児玉勇也との挑戦者決定戦(フライ級トーナメント決勝)をKOで制した御代川が、2019年12月以来のGRACHAN参戦となる松場に挑む。右カーフからの右ストレートで児玉を仕留めている御代川を、DEEPでもレスリングMMAの強さを発揮している松場が組み潰すかどうか。

さらに今大会では、今年プロデビュー後グラジエイターで2連勝中の南友之輔がグラチャン初参戦。同じくこの試合がプロ3戦目となる徳弘拓馬と対戦する。伝統派空手の日本代表からMMAに転向した南は、デビュー戦を右クロス一発で勝利。続く12月の健汰エスペランサ戦はKOを逃し悔しそうな表情を浮かべたが、その悔しさをグラチャンのケージで吹き飛ばすことができるか。

■Grachan67 決定対戦カード

<バンタム級選手権試合/5分3R>
手塚基伸(日本)
TSUNE(日本)

<フライ級選手権試合/5分3R>
松場貴志(日本)
御代川敏志(日本)

<バンタム級/5分2R+Ex1R>
徳弘拓馬(日本)
南友之輔(日本)

<バンタム級/5分2R+Ex1R>
今村豊(日本)
堀之内蒼斗(日本)

<バンタム級/5分2R+Ex1R>
有田一貴(日本)
秋田良隆(日本)

<フェザー級/5分2R+Ex1R>
八木匠(日本)
櫻庭泰裕(日本)

<出場予定選手>
林RICE陽太(日本)

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Grachan Grachan66 MMA MMAPLANET o キック 岸本篤史 林RICE陽太

【Grachan66】岸本からダウン&バックを奪った林が暫定ライト級王座獲得「今年以降の僕は全然違う」

<GRACHANライト級暫定王者決定戦/5分3R>
林RICE陽太(日本)
Def.2-1:30-27.29-28.28-29.
岸本篤史(日本)

ともにサウスポー。岸本がプレスをかけて右ジャブを突く。岸本の右ローが当たり、さらに右ジャブが林の顔面を捉える。岸本の左ストレートにカウンターで組んだ林が、ボディロックからドライブした。岸本をケージに押し込みながらボディロックでテイクダウンを奪った林がバックへ。四の字フックで組み、パンチで削る。

林の左手首を抑えた岸本が正対しようとしたが、林がバックをキープする。立ち上がる岸本のバックに回ったままの林は、スタンドでRNCを狙う。左右の腕を切り替えながら絞め上げる林に対し、岸本は次第に苦しい表情に変わっていく。林は右腕でアゴを絞めるが、岸本が耐えた。そのままバックにつく林をケージに預けたまま初回を終えた。

この試合はオープンスコアリングシステムが採用されており、ジャッジ3者とも10-9で林についけている。

2R、岸本が一気に距離を詰める。林は右ジャブをかわして組み付くも、すぐに岸本が離れた。ここから岸本が左右ストレート林の顔面を跳ね上げたが、林も組みつく。岸本は左ヒザをボディに突き刺し、林を下がらせる。林はパンチをもらいながらも、自身も右を当ててダウンを奪った。すぐさまトップに回り、パウンドを落とす林を抱える岸本。下からパンチを打ち込むが、後頭部に入っているためレフェリーから注意を受ける。

ハーフガードからケージに背中をつけ、立ち上がろうとする岸本のバックに回った林は、1Rと同様にスタンドのままバックへ。ここは四の字フックを組むことができず、右足を差し入れてハーフネルソンで岸本の動きを止める。バックをキープしながらグラウンドに引きずりこんだ林が、四の字フックで組もうとしたところで岸本が正対した。岸本がパウンドの連打を浴びせると、林はガードを固めてラウンド終了まで耐えた。

このラウンドはジャッジ2名が林、1名が岸本に10-9をつけた。

最終回、岸本が右ジャブを上下に散らして距離を詰めていく。疲労が見える林の手数が少なくなっているが、右フックが岸本の顔面をとらえた。岸本は左カーフキックを当て、林のダブルレッグをかわしてからパンチを打ち込む。林にケージを背負わせた岸本が、左ストレートをボディに突き刺す。林の右フックをかわして左ボディで攻める岸本は、さらに左ストレートを顔面へ。

林は首相撲からヒザを突き上げるが当たらず。林のパンチをパーリングでかわす岸本だが、またも林の右を受けて尻もちを着いてしまう。すぐにシングルレッグで組んだ岸本は、そのままケージ際で林に尻もちを着かせる。スクランブルから林がバックに回り、ボディロックでグラウンドに引きずり込んでバックマウントへ。さらに四の字フック→オタツロックをで組む。岸本はケージキックを狙うも返せない。林もRNCを狙い続けるが、試合は判定に持ち込まれた。

打撃では押されているように見えて、ダウンを奪っていたのは林だった。さらにグラウンドでもバックを制していた林が最終回も取ったかと思われたが、意外にもジャッジは割れて林の勝利となった。

暫定ライト級王座を獲得した林は「これから自分も挑戦していきたいし、グラチャンもチャンスをくれると思います。まず今まで僕に勝った皆さん、今年以降の僕は全然違うので、リベンジさせてください」と語った。


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Grachan Grachan66 MMA MMAPLANET o TSUNE キック 伊藤空也 田中智也

【Grachan66】伊藤が田中を下して5連勝。バンタム級王座返り咲き&手塚へのリベンジをアピール

<バンタム級/5分2R+Ex1R>
伊藤空也(日本)
Def.3-0
田中智也(日本)

伊藤が左ミドルから右カーフキック。田中も右ストレートを返し、伊藤は右のカーフキックを蹴る。田中が前に出て伊藤にケージを背負わせると、左腕を差してケージに押し込む。

田中は足をかけてテイクダウンし、伊藤の膝上で両足を組んでマウントポジションを奪う。田中は腰の上まで移動し、伊藤がケージを蹴ってポジションを返すと三角絞めへ。伊藤は背筋を伸ばしてディフェンスし、立ち上がってパンチを落とす。田中が起きてくるところでバックへ回り、この態勢でラウンドを終えた。

2R、ここも伊藤が左ミドルで先制。田中の前足にローを集め、距離を詰めると左フックを打つ。組みの攻防になると、田中が背中を見せつつアームロックを狙う。そのままグラウンドに持ち込む田中は、足関節を仕掛けて上になってバックへ。伊藤も正対し、最終的インサイドガードで上になる。

伊藤はしっかりベース作って立ち上がってパンチを落とす。田中は再び足関節を狙うが、伊藤はそれを潰してトップキープ。田中もしつこく足関節を狙い、最後は田中が伊藤をケージに押し込む形で試合終了となった。

判定は3-0で伊藤の勝利。試合後、伊藤は「田中選手は実力者で、自分の立ち位置が分かる試合だったので勝ってよかったです。これで5連勝なんですけど、来年またベルトを獲りに行きたいです。手塚基伸選手とTSUNE選手の勝った方とやりたいし、手塚選手にリベンジしてケジメをつけたいです」と王座返り咲きと手塚へのリベンジを誓った。


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Grachan Grachan66 MMA MMAPLANET o ブログ 中村京一郎 村田俊

【Grachan66】中村が4試合連続1R KO勝利。村田に左を効かせ、レフェリーストップを呼び込む

<フェザー級/5分2R+Ex1R>
中村京一郎(日本)
Def.1R3分51秒 by TKO
村田俊(日本)

サウスポーの中村が左右に回る。左ストレートを伸ばし、体勢を低く構える。中村の左前蹴りに、村田が右インローを返した。その直後、中村の左ストレートが直撃し、村田が腰を落とす。中村は抑え込みきれず、立ち上がった村田をケージまで詰めて連打を浴びせる。またも腰を落とす村田だが、離れてプレスをかけ直す。しかしケージ中央での打撃戦は、幾度となく中村の左ストレートが村田の顔面に突き刺さる。

村田はダブルレッグからドライブするもテイクダウンすることはできず。中村の左ストレートをボディにもらった村田が下がる。左ストレートで距離を測る中村は、左インローから左ミドルハイへ。右アッパーを効かせたあと、ダウンを奪った中村は立ち上がる村田に連打を浴びせてレフェリーストップを呼び込んだ。

マイクを握った中村は「4試合連続1R KOの中村京一郎です。僕の名前を知らないと時代遅れですよ。俺はバックボーンなんか無くても、日本でベルトを獲って世界で戦うと決めているので」とアピールした。


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DEEP Grachan Grachan66 MMA MMAPLANET o TSUNE ハシモト・ブランドン 伊藤空也 田中智也

【Grachan66】伊藤空也と対戦、田中智也─02─「相手が立ち上がらないかぎり三角絞めは極まる」

【写真】職人の佇まい(C)SHOJIRO KAMEIKE

17日(日)、東京都江東区のTFTホール500で開催されるGRACHAN66で、伊藤空也と対戦する田中智也のインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike

田中は北海道MMAを代表する存在でありながら、怪我に悩まされ続けた。さらに減量失敗もあり――もう自分に後がないことは自覚している。そんななかでのバンタム級に転向する田中が、次の伊藤戦で真価を見せつけることはできるか。


――2016年5月にDEEP東京大会で島袋チカラ選手と対戦した時も、ローを蹴った時に足を負傷しTKO負け。そのあと1年もの間、試合から遠ざかっています。これまで試合ができないほどの怪我は、何回経験しているのでしょうか。

「手術は5回ほどしていると思います。吉野戦のあとも、ずっとヒジに水が溜まっていて。その時も靭帯再建手術をしました。これまで試合間隔が空いている時は、だいたい怪我が原因です。そうなると脊椎損傷の時以外は、どの怪我も捻挫と同じような(笑)」

――いやいや、凄い精神力です。

「あとは2020年に再度、アマチュア修斗に出ました。北日本選手権で優勝したことで、修斗もプロライセンスを取得しています。その後2022年の修斗札幌大会に出ていますが、おそらく推薦でライセンスを得ることはできなかったと思うので良かったです」

――これまでの1年に1回試合に出場し、1Rでフィニッシュしているからこそ「隠れた北海道の実力者」というイメージはあったかと思います。しかし、これから……という時に怪我やコロナ禍に阻まれている。そんななかで田中選手ご自身としては、今の立ち位置に関してどう感じていますか。

「今回の試合で、現在の立ち位置を確認したいです。今まで試合をしてきた相手の方々には失礼かもしれませんが、僕はまだ日本トップレベルの選手に勝ったことがありません。次の伊藤空也戦が、自分にとって本当の勝負だと思っています」

――なるほど。ちなみに今回、一つひとつ丁寧に答えてくださっている姿が、弘田颯志戦後のマイクアピールとギャップがありすぎて驚いています。

「あれはもう……MMAPLANETさんのインタビューを読んで『あぁ、自分のことを踏み台にしようとしているんだなぁ』と(笑)」

――アハハハ。やはりプロデビュー2戦目の選手と試合で、「舐めるなよ」という気持ちはあったわけですか。

「もちろん弘田選手も空手時代の実績から、自信を持っていたと思います。しかも福田龍彌選手など強いファイターたちとも練習している。でもこれはMMAなので――違うんだぞ、という気持ちはありましたね。たとえアウェイでも、とにかく僕は試合がしたくて。相手が2戦目だろうと何だろうと、自分はギュッと仕留めて北海道に帰ることしか考えていませんでした」

――結果、ご自身としては会心の出来だったのでしょうか。

「自分の仕事はできたんじゃないかと思います」

――まさに職人の雰囲気ですね。弘田戦はフライ級での試合でしたが、今回から正式にバンタム級へ転向するのですか。

「はい。今まで何度かフライ級での計量失敗がありました。怪我がある状態で体重を落としていくので、どうしても失敗する時があり……。今はマルスジムの平大門さんや、相談できる方がいます。しかし当初は我流で減量していました。そのために試合が無くなったり、あるいは計量オーバーでも試合を受けてくださったりと、対戦相手の方々にご迷惑をおかけしてしまいました。計量オーバーした試合で僕が勝ったとしても、誰にとっても何のためにもならない。対戦相手の方も、ただダメージを負うだけで――」

――……。

「さすがにまた減量に失敗すれば、このMMA業界に僕の居場所はありません。これまでもバンタム級で戦うこともあって、自分にとっては一番動ける階級だと思っています。減量も楽になり、今回は過去最高のコンディションですね」

――バンタム級に転向するうえで、ノンタイトル戦で現王者の手塚基伸選手がTSUNE選手に敗れたことはどう思いますか。

「ノンタイトル戦でチャンピオンが負けたので、次はベルトを賭けた再戦があると思います。僕は、その再戦で勝ったほうと対戦したいです」

――そのベルト挑戦のために落とせない一戦になります。対戦相手の伊藤選手の印象を教えてください。

「やはり打撃とレスリングがしっかりしている選手ですよね。前回、高須将大選手をKOした試合も、倒されずにコツコツとダメージを与えていました。僕はあの展開に持ち込ませず、テイクダウンしたいと思います」

――田中選手は体格のバランスも良く、リーチとコンパスも長いです。しかし打撃でやり合う気はないですか。

「その気持ちは全くないです。僕はずっと寝技をやってきたので」

――対してそのリーチとコンパスだと、三角絞めは取りやすいでしょうか。

「……はい(笑)」

――満面の笑みを浮かべましたね。

「アハハハ。まずバンタム級でも骨格は大きいほうだと思います。三角絞めは、相手が完全に立ち上がらないかぎり――頭を起こしている程度なら、それでも極めることができますね」

――最後に、今後の目標を教えていただけますか。

「もう10年もMMAをやっていて、そろそろベルトに絡む試合をしたいと考えています。まずはグラチャンのベルトを獲ること。そして海外での試合も見据えていきたいです」

■視聴方法(予定)
12月17日(日)
午後1時30分~Grachan放送局

■Grachn66対戦カード

<GRACHANライト級暫定王者決定戦/5分3R>
岸本篤史(日本)
林”RICE”陽太(日本)

<バンタム級/5分2R+Ex1R>
伊藤空也(日本)
田中智也(日本)

<無差別級/5分2R+Ex1R>
ハシモト・ブランドン(ペルー)
MAC(サモア)

<フェザー級/5分2R+Ex1R>
松田征也(日本)
伊藤類(日本)

<フェザー級/5分2R+Ex1R>
中村京一郎(日本)
村田俊(日本)

<フライ級/5分2R+Ex1R>
金井一将(日本)
長野将大(日本)

<無差別級/5分2R+Ex1R>
ダンカン・ヒロ(台湾)
ステファン・スマッシュ(フランス)

<無差別級/5分2R+Ex1R>
ラデック・ヘルボーイ(チェコ)
瓜田幸造(日本)

<ライト級/5分2R+Ex1R>
草訳駿介(日本)
水杉泰誠(日本)

<フライ級/5分2R+Ex1R>
後藤浩希(日本)
平野紘希(日本)

<GRACHANchallenge 63㎏以下契約/3分2R>
西嶋珀(日本)
天坂匡孝(日本)

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【GRACHAN66】田中智也戦へ、伊藤空也「強くなるために何かを変えることに怖さはない」

【写真】5連勝として来年に繋げることができるか(C)BRAVE CF

17日(日)に東京都江東区にあるTFTホール500で開催されるGRACHAN 66で、伊藤空也が田中智也と対戦する。
Text by Takumi Nakamura

10月の15周年大会では高須将大にKO勝ちし、4連勝を飾った伊藤。そのレコードもさることながら、シュートボクシングへのチャレンジや練習環境をマイナーチェンジして、進化と変化を遂げながら結果を残してきた。2023年を締める田中戦、そしてその先に見据える目標を伊藤に訊いた。


──今大会では田中智也選手と対戦が決まりました。この試合が決まった時の心境はいかがでしたか。

「10月の15周年大会で田中選手とやるかもしれないという話があって、そこで田中選手のことは意識しました。色々と調整があって改めて今回決まった感じなんですけど、田中選手とやる覚悟はしていたし、いつかは絶対にやるだろうなと思っていたので、そんなに驚くこともなく冷静でした」

──ファイトスタイルを含めて、田中選手の印象は?

「完全に寝技師ですよね。ウェルラウンダーとは聞いているんですけど、打撃の展開はほぼほぼなく、徹底的に1Rから寝技でガンガン来る、しっかり極めに来る選手だと思います。ストライカーはみんな嫌がる、今成(正和)さん的な感じですね」

──特徴がはっきりしている分、対策も立てやすいタイプだと思うのですが、どういったことを意識して練習してきましたか。

「前の試合はボクシングジムにも行って、打撃を中心にやっていたんですけど、今回は相手が相手なのであまり打撃をガツガツやってもしょうがないなと。レスリングよりも柔術やピュアグラップリングに力を入れてきました」

──Braveには色んなタイプの選手がいるので、スパーリング相手も含めて寝技対策は順調ですか。

「そうですね。今はMMAで下から狙う技術、下から潜る技術や足関を狙うという技術はタブーではないですけど、そこに特化した選手は少ないじゃないですか。だからこそピュア柔術家の方とも練習したり、僕らの師匠の宮田(和幸)代表もガードからの技術がすごいので、そういう人たちと練習させてもらっています」

──なるほど。ちなみに柔術の道場で練習しているのですか。

「BRAVEジムはJTT(トライフォース赤坂)と連携していて、トライフォース赤坂から柔術の先生が週2でBraveに練習に来てくれているんですよ。それで僕も1年半~2年前から柔術クラスに出ていて、そこで培ったものを活かすような練習もしていますし、なおさら今回は組み技に比重をおいて練習させてもらっているので、練習環境的には助かっています」

──伊藤選手は4連勝中ですが、ご自身で連勝の要因はなんだと思っていますか。

「Braveで基礎的な部分を創って、Brave以外の練習にも力に入れるようになったことが大きいと思います。例えば今までだったらBraveのプロ練に出てレスリングを軸にやっていたんですけど、試合によっては今回のように柔術に力を入れたり、ボクシングのワタナベボクシングジムに行ったり、RIZIN初出場の際にはウィラサクレックジムでムエタイを習ったり。そういうところで自分の戦い方に深みが出てきたんだと思います。自分はもともと空手出身なんですけど、それ以外にも色々と技が増えたというか、そういうところが連勝の要因だと思います」

──色々なエッセンスを取り入れて、どんな変化がありましたか。

「例えばムエタイだったら、体に軸ができるんで、打撃の見合いの中で余裕ができるというか、ディフェンス力が高くなりました。あとは首相撲も前回の試合で出せた部分です。ボクシングだったら、しっかり足を使って当てること。とにかくボクシングは足を使うんで、パンチにしっかりと回転がついたし、不思議とボクシングをやることによって、パウンドを打つ時の点で当てる力がつくんで、そういう面ではどの競技もMMに共通していると思いました」

──6月にはSBにも挑戦して、そこでも得たものもありますよね。

「はい。芦田崇宏さんと2人で出たんですけど、MMAグローブの立ち技ルールだったので、キックボクシングとは全く違う距離で。そういう打撃に特化した練習と試合をやって、自分を試すこともできたし『なるほど!』とい分かったこともたくさんありました、当然、勝てればよかったのですが、SBに出たことは大きな経験でした」

──練習環境の変化や新しいルールへのチャレンジでMMAファイターとしての幅が広がっているようですね。

「自分では意識してないんですけど、周りからは落ち着いて試合できるようになったと言われます。20代前半の頃なんかは、若さと勢いだけじゃないですけど、勢いでバッチバチの試合をやっていたんですけど、キャリアも中盤になってきて、わりと落ち着いてやるべきことをやるというか、自分がこうすれば絶対に勝てるというプランも冷静に考えることができています」

──とりあえず全力&フルパワーで行って、スタミナが切れるまで頑張るという試合は卒業だ、と。

「いわゆるゾンビファイトだけではトップどころや外国人選手には通用しない部分もありますし、2年前に手塚基伸選手に一本負けした時はスタミナ勝負に持っていく作戦だったんですけど、それだけでは勝つことができなくて。それできっかけで柔術に力を入れたんですよね」

──なるほど。そういった弱点や苦手な部分から逃げずに向き合ってきたわけですね。頭では分かっていても出来ない選手が多いと思いますが、伊藤選手はそこにちゃんと向き合ってきたわけですね。

「自分がやってきたことを信じている人は新しいことに取り組むのは辛いだろうし、行動に移すことも難しくなると思います。でも自分の場合は元々地方で格闘技をやっていて、その環境を捨ててBraveに来て、そういうプライドも捨てているというか。強くなるために何かを変えることに怖さはないです」

──Grachan公式サイトではこの一戦について「このふたりの戦いは、バンタム級のパワーバランスに新しい動きをもたらす」というコメントもありました。伊藤選手がこの試合の先に見据えているモノは?

「今回勝てば自分がベルト挑戦に絡む形になると思うので、やっぱり手塚選手にリベンジを果たしたいですよね。そうじゃないと自分の中でも示しがつかないというか、片付けておかなきゃいけないことなので、田中選手に勝って、手塚選手にタイトルマッチでリベンジする。そしてベルトを防衛するなり、強い名のある選手と試合をして、勝ち星を獲りたいと思います」

――1年を締める試合で、どのようなファイトを見せたいと思っていますか。

「本当に自分の印象が変わるんじゃないかというような試合になると思うので、まずそこを見てもらいたいです。それを見せつつ、応援してくれる人たちには僕を信じて良かった、応援していて良かったと思ってもらえる試合を見せたいです」

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【Grachan66】北海道の猛者がバンタム級戦線へ、田中智也─01─「格闘技を辞めるべきかどうか――」

【写真】これまで14勝のうち5勝は三角絞めによるもの。他にも腕十字、キムラ、ヒールフックを極めているサブミッションファイターだ(C)SHOJIRO KAMEIKE

17日(日)、東京都江東区のTFTホール500で開催されるGRACHAN66で、田中智也が伊藤空也と対戦する
Text by Shojiro Kameike

北海道出身の田中は2013年にPFCでプロデビュー以降、パンクラス札幌大会、グラチャン札幌大会、そして修斗札幌大会で戦ってきた。それはまさに北海道MMAの歴史の一つでもある。もともとフライ級を主戦場としていた田中は、今回から正式にバンタム級へ転向し、伊藤というベルトに絡む試合を迎えることに。北海道で生まれ育ち、北海道で戦ってきた男が、怪我に悩まされながらも王座戦線に辿り着くまでのストーリーを語る。


――MMAPLANETでは1年半振りのインタビューとなる田中智也選手です。リモート画面の背景にも映っていますが、田中選手の所属先である「fit」というのは田中選手が運営されている鍼灸整骨院のお名前なのですか。

「はい。鍼灸整骨院がメインで、パーソナルトレーニングの指導も行っています」

――今回は田中選手のMMAキャリアについてお聞きします。もともと柔道がベースで、MMAを始めたのは地下格闘技がキッカケだったのですよね。

「小学校の頃から柔道をやっていて、鍼灸整骨の専門学校に入った頃が地下格闘技がブームだったんです。格闘技の練習をしている知人から『良かったら練習に参加してみなよ』と誘われ、MMAにのめり込んでいきました。それが12年前ぐらいのことですね。ただ、僕自身はそのチームから試合に出ることはなく、個人でキックボクシングや柔術のジムに通い、次第に試合に出るようになっていきました。地下格闘技は一度出たぐらいで、最初はアマチュア修斗に出ることが多かったです」

――アマチュア修斗に出場していたということは、プロのファイターを目指していたということですね。

「はい。せっかくMMAを始めたからには、プロの舞台で戦いたいと思いました」

――12年前の北海道MMA事情といえば、MMAの練習ができるジムは増えていたものの、まだ他の地域と比べて試合の機会は圧倒的に少なかったと思います。アマチュア修斗のワンマッチ大会も、1日7試合というケースがあるほどで。MMAの経験を積むためには、他都府県に出ていくことが多かったのではないですか。

「当時は北海道でMMAをやりながら、アマチュア修斗から全国に出ていこうと考えていました。北海道内でアマ修斗が行われるのも年1回ぐらいで。でも北海道から全国へ進む――アマチュアからプロになるためには、当時はアマ修斗しか手段がなかったと思います」

――そんななかで2013年8月、札幌で行われたPFC02でプロデビューしています。どのような経緯でPFCに出場することになったのですか。

「第1回目のPFCが行われたあと、山本喧一さんのパワー・オブ・ドリームに通っている方に大会のことを教えてもらったことがキッカケで出るようになりました。MMAだけでなくグラップリングの試合もあって、毎月のように試合に出させてもらっていました」

――その後PFCからパンクラス札幌大会、グラチャン札幌大会、そして修斗札幌大会まで出場するなど北海道MMAを網羅していますね。

「アハハハ、そうかもしれないです。だんだん北海道でMMAを戦う環境も整ってきていると思います。自分としては『どこまで行けるか』という感じで、ただただ戦っていただけではありましたけど……」

――デビュー当時から三角絞めによるフィニッシュが多かったのは、柔道時代のスタイルでMMAを戦っていたのでしょうか。

「そうですね。柔道の経験に柔術の練習が加わったような感じです。柔道時代から寝技のほうが好きでした。もしかしたら学校によっては『試合で寝技の時間はないから立ち技を練習する』というところもあったかもしれません。でも僕の学校は、立ち技も寝技も同じくらい練習していました」

――その柔道スタイルのMMAが、現在のスタイルに変化し始めたのは、いつ頃だったのですか。

「デビューしてから暫くは、キックボクシングのジムに通っていたものの、柔道+柔術のスタイルでした。やはりMMAを練習する場がなく、うまくアジャストすることができなかったですね。ずっと『立ち技は立ち技のジム、寝技は寝技のジムで』という練習環境で。それが次第に他のジムの方々との練習——特に4~5年ぐらい前からマルスジムさんへ出稽古に行かせてもらって、自分のスタイルも変わってきたと思います」

――4~5年前といえば、2019年から現在に至る5連勝が始まった頃でしょうか。MMAの練習ができるようになった影響が、如実に表れているわけですね。

「2018年9月、PFCで吉野光選手にKOされたことで大きく変わりました。それまでは勝っていても、常に単調な攻めばかりだったんです。要は打撃もなく、ただ寝技に持って行くために組むだけで――まさにMMAの試合で柔道をやっていただけですよね。今考えると、それでよく勝てていたなって思います(苦笑)」

――吉野戦以降は5試合連続、1Rでフィニッシュしています。ご自身としてはKOや一本で勝つことにこだわりを持っているのでしょうか。

「これも柔道時代の影響ですね。柔道時代から一本で勝つことを目標にしていました。やはり柔道部だと――相手にもよりますが、先生から『なぜあんな相手に一本で勝てないんだ!』と言われることもあって(笑)」

――現在は年に一度という試合ペースが続いていますが、年に一度試合に出て1Rで仕留めて勝っていく。職人的な雰囲気を漂わせていますね。

「いやぁ、それは……。自分としては『とにかく試合を早く終わらせたい。一本で勝ちたい』と思っているだけで(苦笑)。試合ペースが年に1回というのは、怪我が多かったんです。MMAを始めてから柔道時代の負傷の影響が出て来て、何度か手術もしています。実は今年7月にグラチャンで試合をした時(弘田颯志に三角絞めで一本勝ち)も、ヒジの状態が悪くて。これは柔道時代から慢性的なもので、握力も10キロほどしかない状態でした」

――えぇっ!? 負傷といえば、今年2月からスタートしたグラチャンのフライ級トーナメントを、中心性脊髄損傷のために欠場しています。脊髄の負傷というのは……。

「まぁ、ヤバいですよね(苦笑)。試合の2週間前ぐらいに、体重も順調に落ちていて『今回は調子が良いなぁ』と思っていたところで――練習中に首にビリッという痛みが走りました。そのあと打撃のマスで軽くパンチが顔に当たった瞬間に、腕が上がらなくなったんです。ペットボトルやスマホも持ち上げられない状態になり、病院へ行ったあと申し訳ないですがトーナメント出場を辞退することにしました」

――……。

「今は回復していますし、もし痛みがあれば休むようにはしています。ただ、あの時は格闘技どころか日常生活もどうなるのか――という状態でした。正直、格闘技を辞めるべきかどうかも考えました。今まで怪我をするたびに、同じように考えることがありました。でも、まだ試合で自分の力を出し切れていない。ここで辞めて後悔したくない。その気持ちでMMAを続けています」

<この項、続く>

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