【写真】体格差は歴然。そのなかでレスリングだけでない原口伸を見ることができるか (C)SHOJIRO KAMEIKE
12日(日)、東京都江東区のTFTホールで開催される『GRACHAN59×BRAVE FIGHT27』で、Grachanライト級王者の原口伸が小谷直之を相手にベルトの初防衛戦を行う。
Text by Shojiro Kameike
2019年にレスリング全日本選手権フリー70キロ級で優勝した原口は、2021年にMMAでプロデビュー。翌2022年には植田豊を判定で下し、グラチャンのベルトを獲得している。ここまでMMA無敗の原口だが、レスリングの展開ではめっぽう強いものの、昨年の大宮優戦や植田戦では相手の打撃をもらってしまう場面も――そんな原口の打撃が向上し、MMAファイターとしてレベルアップして小谷戦に臨む。体重が減る要因は、打撃の練習。原口の身の内に何が起こったのか!?。
――2023年の初戦を4日後に控える原口選手です(※取材は2月8日に行われた)。2022年は、原口選手にとってどんな1年だったのでしょうか。
「やはりグランチャンのベルトを獲得した1年ということですね。ベルトを巻いてからチャンピオンの自覚が芽生えました。たとえばブレイブジムでの練習だと、普段は武田光司さんの胸を借りています。チャンピオンになってからは、『いつまでも練習でやられてばっかりじゃダメだな』と考えるようになって。ジムの先輩方を『追い越さないといけない存在』として見ることができるようになったと思います」
――いつまでも若手のままではいけないということですね。とはいえ、原口選手にとって2022年はプロデビュー2年目でした。その年にベルトを獲得したのは、ご本人にとっては早いと感じますか。それとも当然だと思いますか。
「思った以上に早かったですね。自分が考えている以上に、事が早く進んでいる感があって(笑)。ベルトを獲った直後は、まだ地に足が着いていませんでした。そこから試合期間も空いたので、ちょっとずつチャンピオンとしての自覚が芽生えてきた感じです」
――ベルトを獲得したのが昨年の5月で、次の試合は半年後にグアムのBrawlインターナショナル2022で、元Double G FCフェザー級王者のキム・サンウォンに判定勝ちを収めています。それだけ試合期間が空いたのは、何か理由があったのでしょうか。
「実は体重がどんどん軽くなっているんです。これまでライト級で試合をしていましたけど、フェザー級に落とせるぐらいの通常体重になっていて」
――今は通常体重が何キロなのですか。
「だいたい73~75キロぐらいです。グアムの試合も、68キロのキャッチウェイトでやらせていただきました。グラチャンのベルトを獲得した時に、防衛戦を行うことも契約に入っているので、次はまた体をつくり直してライト級で試合をします」
――普段の体重が軽くなったのは、何かあったのかと心配になってしまいますが……。
「通常体重は6キロぐらい軽くなりました。もともとレスリング出身なんですけど、打撃の練習を取り入れると、どんどん体重が落ちていきましたね」
――なるほど。昨年はそれだけ打撃の練習に取り組んだということですか。
「はい。全体的にバランス良く練習しているほうだとは思いますが、自分の場合は打撃に不安や課題がありました。去年は重点的に打撃を練習している期間が長かったです」
――それを聞いて納得できました。グアムでのキム・サンウォン戦は以前よりも打撃の幅が広くなり、それによってスタンドレスリングやケージレスリングもレベルアップしているように感じました。
「本当ですか、ありがとうございます。もともとあの試合は宮田(和幸)先生からお話を頂いた時に、『海外で外国人選手と試合してみたい』という好奇心から受けました。ただ、相手がDouble GFCのチャンピオンだったことを知ったのは試合後で……」
――えっ!? 宮田代表からお話があった時に調べたりしないのですか。
「とりあえず戦績と映像は見ていました(苦笑)。あとは兄弟子の伊藤空也さんが、2年前に左フックでKOされていることは知っていました(2020年3月、同じイベントでKO負けを喫している)。ただ、Double GFCのチャンピオンだったことだけ知らなかったです」
――キム・サンウォンがDouble Gのチャンピオンになったのは伊藤戦の後ですし、原口選手が対戦した時はベルトを返上していたようですが……それでも(笑)。
「まず韓国人選手って強いじゃないですか。加えてキム・サンウォン選手は打撃が強いので、対戦したいと思いました。実際に試合したら、寝技も強かったですね。僕がテイクダウンしても、下から三角やオモプラッタを仕掛けてきて。全部ソツなくできる選手なんだなぁと思いました」
――そのなかで原口選手がケージ際は首相撲で対応し、至近距離で細かい連打を入れて、打撃を散らしながらテイクダウンしている姿が印象的でした。
「試合では初めて、あの細かい連打を出しました(笑)。去年の8月ぐらいから、ブレイブジムにタイ人のトレーナーさんが来られたんです。ガオさんといって……下の名前は分からないんですけど(笑)、元ラジャダムナンのウェルター級王者だった方です。ずっとガオさんから首相撲を教わっていたので、試合でも自然と首相撲の展開になりました」
――ガオトレーナーに教わるまでは、打撃の練習はどのように行っていたのですか。
「ジムでキックボクシングを教わりながら、自分なりにレスリングと混ぜてやっていたような感じでした。組み際の打撃、至近距離での打撃はそこまでやっていなかったです。いま考えると打撃は打撃、レスリングはレスリングって分けてしまっていたと思いますね」
――MMAでヒジを打てる至近距離での打撃は、ガオトレーナーからムエタイを学んでからということですね。
「そうです。首相撲で組みながらの打撃をやっていると、レスリング出身の自分にとっては『これがやりたかった!』と思うぐらいで。組みついてテイクダウンできなくても、そのまま首相撲に持ち込むという展開をつくれるようになりました。そのおかげで、テイクダウンだけに固執しなくなったんです」
――ベルトを獲得した植田豊戦とは大きく変わっていますね。
「あの頃まではテイクダウン、テイクダウン、テイクダウン――そんな試合でした(笑)。その前の試合(昨年3月、大宮優にTKO勝ち)は、打撃を見せようと思って反対に危ない場面もあって。1試合1試合、勉強させてもらっています。まず自分のレスリングという軸はブレずに、キム・サンウォン戦もレスリングからつくっていって、打撃につなげられれば良いと思っていました。実際に韓国のチャンピオンを相手にレスリングから削って、相手の心を折って勝つことができたのは自信になっています。削り合いなら負けないですね」
<この項、続く>
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