#超RIZIN #超RIZIN3 #クレベル #シェイドゥラエフ #ケラモフ #ノジモフ #ダウトベック #コレスニック #平本蓮 #朝倉未来 #ヤーマン #鈴木博昭 #怪物くん #RIZIN #UFC #PFL #Bellator #ACA #KSW #GLORY #K1 #RISE #ボクシング #ハビブ #ハイブラエフ #ベニシェフ #エフロエフ #ラフモノフ #ケレホフ #シャミル #ウマル #ウスマン #モラレス #エブレン #トプリア #バルトス #平良達郎 #ホロウェイ #ピネド #クレベル #鈴木千裕 #金原正徳 #朝倉未来 #UFC #PFL #Bellator #ACA #RIZIN #PRIDE #K1NEXT #RISE #BreakingDown #ボクシング #MMA #Boxing #K1 #KickBoxing #KOK #GLORY #格闘技 #MikeTyson #RicksonGracie #Karelin #Fedor #Ngannou #TysonFury #KO #Mayweather #ガヌー #メイウェザー
#天心 #武尊 #朝倉未来 #3150ファイトクラブ #井上尚弥 #空手
#キックボクシング #ブレイキングダウン
カテゴリー: GLORY
【写真】この試合を観戦していたアレックス・ポアタンが、ダナ・ホワイトに「ぜひ契約を」という言葉を掛けたという(C)Zuffa/UFC
<ヘビー級/5分3R>
アルテム・ヴァキトフ(ロシア)
Def.1R4分23秒by TKO
イスラム・マサハフ(フランス)
プロで23勝6敗の戦績を残すヴァキトフはアマでもロシア選手権、欧州選手権、世界選手権を制した強豪キックボクサーだ。Gloryで世界ライトヘビー級王座につき、アレックス・ポアタン・ペレイラと1勝1敗の互角の星を残している。そんなヴァキトフはMMA戦績は2勝1敗。対して、3勝0敗のマサハフが思い切り左右のロングフックを振るって前に出るが、クリンチでケージに押し込めれる。ボディロックのヴァキトフは、体を入れ替えられバランスを崩す。下になったヴァキトフは、マサハフのパンチねらいで立ちあがって組んでボディロックへ。マサハフはケージレスリングのなかでエルボーを放つ。押し返して離れたマサハフがシングルレッグからアンクルピック。耐えるヴァキトフは右腕を差してケージに追い込む。
両腕を差したヴァキトフは崩してテイクダウンを奪うと、背中を見せて立ち上がろうとしたマサハフを後方から殴る。さらに組まれてもヒザをボディに入れたヴァキトフは、間合いを取り直すとボディから右フックを決める。と、ガシャっという音が館内に響き、動きを止めたマサハフにパンチをまとめたヴァキトフがTKO負けを決めた。
「今日、アレックスがいたよね。こないだの試合は素晴らしかった。チームと彼にお祝いの言葉を贈りたい。戦いたい? もちろん、次の次の次、すぐだよ」とヴァキトフは話した。
毎週のようにダナ・ホワイトの口からは前口上が聞かれたが、今週はいきなり合否の発表へ。そして、ショーン・ガウシーは将来性は買われても、「今夜じゃない」と落選。イスラム・ドゥラトフ、マリオ・ピント、コディ・スティール、ヴァキトフの4人がUFCへのステップアップを決めた。
【写真】ムエタイを世界へ――。そんな想いを持って戦い続けてきたのがペットパノムルンだ(C)TAKUMI NAKAMURA
12月21日(土)千葉県千葉市の幕張メッセイベントホールにて行われるRISE WORLD SERIES 2024 FINAL。この大会はGLORY協力のもと、RISE・GLORY両団体から選手が出場する65kg以下・8名参加のワンデートーナメント=GLORY RISE FEATHER WEIGHT GRAND PRIXが開催される。
text by Takumi Nakamura
このトーナメントに初代RISE世界スーパーライト級(65kg)王者、そして現GLORY世界フェザー級(65kg)王者として参戦するのがペットパノムルン・キャットムーカオだ。2016年からGLORYに参戦し、世界を相手にムエタイファイターとしての強さを証明し続けているペットパノムルン。トーナメント参戦、そしてリングに向かうモチベーションにはムエタイ、そして恩師たちへの感謝と特別な想いがあった。
――ペットパノムルン選手、今日はよろしくお願いします。タイの選手はインタビューや記者会見などに慣れていない選手も多いですが、ペットパノムルン選手はとてもコメントが上手ですよね。
「ありがとうございます。私も海外で試合をするようになって、取材を受けることも多いので、かなり慣れてきました」
――ペットパノムルン選手は2016年からGLORYで試合をしていますが、昔から海外で試合をしたいという考えはあったのですか。
「タイで試合をしていた時は海外で試合することを考えたことはなかったのです。『海外でキックボクシングの試合に出てみないか?』と声をかけられて、それから海外で試合をやるようになって、GLORYに出ることになりました。GLORYのおかげで今があると思っていますし、GLORYには本当に感謝しています」
――今でこそペットパノムルン選手はGLORYを代表するチャンピオンですが、参戦当初は敵地に乗り込むような気持ちもあったのですか。
「確かに周りはヨーロッパの選手ばかりで、私はタイから試合をしに行っていたので、周りとの違いは感じていました。でもそれでアウェー感を感じたことはなく、むしろタイからGLORYに出ている数少ない選手として、タイを代表するつもりで戦っていました」
――ペットパノムルン選手はGLORYのベルトを8度防衛していて、この階級で世界最強の選手だと思います。今はどこに戦うモチベーションがあるのですか。
「自分に求められている役割を果たすために勝ち続けることが私のモチベーションです。自分に求められていることが何かと言われれば、それはタイを代表して世界の舞台で戦って勝つこと。そして今私がいる地位を守り続けることです」
――今回は1日3試合のワンデートーナメントに出場することになりました。ワンマッチではなくトーナメントでも強さを証明したいという想いはありますか。
「トーナメントは1日3試合戦うので、難しいものだと思います。だからこそ緊張もするし、ワクワクしています。難しいからこそ自分の実力を証明できると思っているので、このトーナメントで勝つことで、私の強さを証明するつもりです」
――組み合わせは未定ですが、戦いたい相手はいますか。
「どの選手も素晴らしいし、全員と戦いたいと思っていますが、まだ戦ったことがない相手と試合をしてみたいのでミゲール選手やぺポシ選手と戦ってみたいですね」
――ペットパノムルン選手は現在カナダに活動の拠点を置いているんですよね。
「もともと私の通訳をしてくれていたスタッフがカナダ出身だったんですね。私自身、65kgで試合をするうえで外国人選手と練習する機会を増やしたいと思っていて、カナダのジムを紹介してもらって、2年前からカナダジムを拠点に練習しています」
――長年ムエタイはタイでギャンブルとして行われ、試合や選手もギャンブルの対象として見られてきました。それがペットパノムルン選手をはじめ、タイの選手たちがGLORYやONEで活躍することで、スポーツや競技として認められるようになり、よりグローバルなものになってきたと思います。そのことは率直にどう感じていますか。
「それは本当にうれしいことで、私も光栄に思っています。世界中の人たちがムエタイをやりたいと思ってくれたり、ムエタイのことを知りたいと思ってくれることは、ずっとムエタイをやってきた人間として誇らしいです。ムエタイは護身にも役立つし、エクササイズとしても効果があるので、もっともっとたくさんの人にムエタイを知ってもらいたいです」
――ONEで活躍するタイの選手に取材すると、どの選手も「今のムエタイはギャンブルのことを気にしなくてよくなった」と言います。ペットパノムルン選手も同じ考えですか。
「おっしゃる通りです。ギャンブルとしてのムエタイでは、常にギャンブラーや賭けのことを考えて試合をしなければいけませんでした。でも海外で試合をする時には、そういったことを考える必要がありません。私が本来やりたいと思っている戦い方、私が持っているムエタイのテクニック、攻撃の強さや正確性、そういったものを存分に見せることが出来ます。純粋にファイターとして評価してもらえるので、私は海外で試合をする方が好きです」
――ペットパノムルン選手もムエタイをスポーツ・競技として世界的に発展させたいですか。
「ムエタイがあったから今の自分がいて、ムエタイの経験があるからこそ、私はGLORYのチャンピオンでいることが出来ます。今は海外の試合が主になっていますが、私がタイでやってきたムエタイのことは本当に大切に思っています。だからこそ私がタイのために、ムエタイのために、ムエタイがもっと発展する力になれるように戦っていきたいです」
――例えばタイにいる若い選手たちに、自分の試合を通じて夢を見せたいですか。
「そうですね。今タイで戦っている若い選手たちには夢を見せたいですし、ムエタイでその夢が叶うことを伝えていきたいです」
――ペットパノムルン選手はONEで活躍しているスーパーレック選手とは同じジム=キャットムーカオの同門ですよね。
「スーパーレックとは同じ地域で生まれ育って、実は血がつながっている親戚なんです。僕の方が少しだけ年上ですが兄弟のような関係……というか兄弟ですね(笑)。私がカナダに行ってからは会う時間が減ってしまいましたが、子供の頃からいつも一緒にいましたよ」(※正確にはペットパノムルンは1995年5月26日生まれ、スーパーレックは1995年11月6日生まれ)
――同門以上の関係だったんですね。スーパーレック選手の活躍は刺激になりますか。
「もちろんです。彼は兄弟であり、友達であり、そして仲間です。戦う舞台は違いますが、彼が世界的に活躍している姿を誇らしく思うし、自分も彼の活躍には刺激をもらっています」
――同じ地域・ジムで育った2人が世界的な格闘家になって不思議な感覚はないですか。
「それはすごくラッキーで幸運なことだと思いますし、そのチャンスを掴むことが出来た2人だと思います」
――キャットムーカオはジムが閉鎖してしまい、以前、スーパーレック選手が試合後に「ジムの人たち恩返ししたい」とコメントしていましたが、ペットパノムルン選手も同じ気持ちですか。
「そうですね。今でも私やスーパーレックはジムの先生たちを支援する活動を続けています」
――またムエタイではジムや所属が変わるとリングネームを変えますが、ペットパノムルン選手は今でもキャットムーカオのままですが、自分が育ったジムへのリスペクトやプライドがあるのですか。
「ジムはなくなってしまいましたが、私はキャットムーカオで生まれ、育ててもらった選手です。今でもキャットムーカオへの感謝と尊敬の気持ちは変わりません。私とスーパーレックはこれからもキャットムーカオの選手として、この名前を背負って戦い続けます」
The post 【GLORY×RISE】ペットパノムルン、世界T制覇へ「タイの若い選手にムエタイで夢が叶うことを伝える」 first appeared on MMAPLANET.12月21日(土)千葉県千葉市の幕張メッセイベントホールにて行われるRISE WORLD SERIES 2024 FINAL。この大会ではGLORY協力のもと、RISE・GLORY両団体から選手が出場する65kg以下・8名参加のワンデートーナメント=GLORY RISE FEATHER WEIGHT GRAND PRIXが開催される。
text by Takumi Nakamura
2022年1月にRISEはGLORYとの提携を正式発表。同年8月にGLORY世界フェザー級王者ペットパノムルン・キャットムーカオがRISEの世界王座を獲得し、12月にはRISEのイベント内でGLORYのRIVALSシリーズとしてRISE×GLORYの対抗戦も行われた。今年に入ってからは7月に原口健飛がオランダに乗り込んでペットパノムルンが保持するGLORY王座に挑戦するなど交流が続いていた。
RISEとGLORYによる取り組みによる一大イベントがGLORY RISE FEATHER WEIGHT GRAND PRIXだ。これはGLORYフェザー級=65kgを対象とした8選手参加のワンデートーナメントで、GLORY・RISEからそれぞれ4選手が出場し、優勝賞金10万ドルと65kg世界最強の座を争う。2024年はRISE・GLORYの両イベント内で出場選手の選考試合が組まれ、9月9日のRISE横浜BUNTAI大会翌日の記者会見にて出場選手8名が正式に発表された。
ペットパノムルン・キャットムーカオ(タイ/GLORY)
ミゲール・トリンダーデ(ポルトガル/GLORY)
エイブラハム・ヴィダレス(メキシコ/GLORY)
ベルジャン・ぺポシ(アルバニア/GLORY)
チャド・コリンズ(オーストラリア/RISE)
原口健飛(日本/RISE)
イ・ソンヒョン(韓国/RISE)
白鳥大珠(日本/RISE)
GLORYからは世界王者のペットパノムルンを筆頭に、1位・ミゲール、2位・ヴィダレス、4位・ぺポシと上位ランカーがずらり。RISEからも世界王者のコリンズ、日本の2大エース=原口・白鳥、そして査定試合を2連勝したソンヒョンとトップ選手が並んだ。出場選手の出身国を見てもタイ、ポルトガル、メキシコ、アルバニア、オーストラリア、日本、韓国と世界各国・各地域から選手が集まり、まさに世界規模のトーナメント開催となる。
しかもこのトーナメントが面白いのは各選手の過去の対戦成績が複雑に絡み合っていることが興味深い。
〇ペットパノムルン‐原口×(24.7.20)
〇トリンダーデ‐ヴィダレス×(24.7.20)
〇トリンダーデ‐コリンズ×(24.3.17)
〇ソンヒョン‐白鳥(24.3.17)
〇コリンズ‐ペットパノムルン×(23.12.16)
〇ぺポシ‐トリンダーデ×(23.12.23)
〇原口‐ヴィダレス×(23.12.16)
〇ペットパノムルン‐ヴィダレス×(22.10.8)
〇ペットパノムルン‐原口×(22.8.21)
〇ペットパノムルン‐原口×(21.11.14)
会見ではペットパノムルンが「一回戦でミゲール、準決勝でぺポシ、決勝でチャドと戦いたい」、コリンズが「一回戦はヴィダレス、準決勝は原口か白鳥、決勝はペッチ(ペットパノムルン)」、原口が「一回戦でミゲール、決勝はペッチ(ペットパノムルン)」、白鳥が「1回戦はチャドかペッチ、決勝は日本人対決」、ソンヒョンが「ヨーロッパの選手とやりたい」と、それぞれ希望する対戦相手の名前を挙げていた。
トーナメントの組み合わせはこれから発表する予定だが、どの組み合わせになっても見所が多いものになるだろう。RISEとGLORY、日本とヨーロッパの立ち技格闘技イベントが協力して開催する世界トーナメントに注目したい。
The post 【GLORY×RISE】12.21幕張で65kgの世界トーナメントを開催!両団体のトップ選手たちが集結 first appeared on MMAPLANET.【写真】渡米後のインタビューに、いつもの大河スマイル(C)SHOJIRO KAMEIKE
11日(水・日本時間)、米国ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されるDWCS S08 Ep05で、岩﨑大河がユースリ・ベルガウイと対戦する。
Text by Shojiro Kameike
岩﨑にとっては昨年9月のキム・ウンス戦以来、1年振りの試合がUFCとの契約を賭けたDWCS出場となった。対戦相手のベルガウイはキックボクサー時代、2017年にはGLORYのミドル級トーナメントを制している。さらにGLORYでは現UFC世界ライトヘビー級王者のアレックス・ポアタン・シウバにも勝利したキャリアを持つ。今回2度目のDWCSチャレンジとなるベルガウイと、ABEMA TVの武者修行プロジェクトを経て成長したという岩﨑が戦う。UFC2から30年――あの浪漫を求めて。
ちょうどCMMAで同じようなタイプの選手と練習していた
——昨年9月以来、1年振りの試合を控えている岩﨑選手です。この期間は、UFCとの契約あるいはDWCS出場を調整していたのでしょうか。
「いえ、そういうわけではないんです。ABEMA TVさんの武者修行プロジェクトに参加させてもらったり、修斗さんから何度もオファーを頂いていましたけど、いろいろ重なって——試合が決まらずに1年経ってしまいました」
——岩﨑選手の中で、1年も試合間隔が空いたことに対して、それほど特別に捉えているわけではないのですね。
「知らない間に1年経っちゃった、という感じです(苦笑)」
——なるほど。ではまずABEMA TVの武者修行プロジェクトの感想から教えてください。
「日本と米国ではMMAのロジックが違うというか。そのロジックを学ぶために、以前から米国で練習してみたいと思っていました。ABEMA TVさんのおかげで、ビクター・ヘンリーがいるカリフォルニアのCMMAというジムに行かせてもらえて良かったです」
——日本と米国でMMAのロジックが違うというのは、何が一番大きく違いましたか。
「自分も言葉で説明するのは難しいけど、根本の考え方が違いますよね。米国では皆が、MMAで一番主にしているところが、どこにあるか。そこに重きを置いている感じで。まず全員レスリングができるのはマストで、テイクダウンできることがベスト。そのための壁際の練習をやっていると思います。
たとえば日本でストライカーなら倒されない、あるいは倒されてからの展開からスタートする部分があります。しかも練習中に抽象的な言葉が飛びがちで。米国では一つひとつの要素がチェーンとして繋がっているというか。『米国の選手は、こうやってMMAの構造を考えているんだな』って知りましたね。ちゃんとMMAを勉強しながらMMAをやっているんだと思います」
——キリクリフFCで練習している木下憂朔選手も仰っていますが、どのようなスタイルで戦おうとも、まずはレスリングが根本にあるわけですね。
「第一にレスリングで、レスリングに合わせた打撃を学ぶ。レスリングができれば打撃も生きる、という考えですよね」
——全てレスリングありきで各技術が構築されていくわけですか。
「自分がレスリング出身でなくても、とにかくジムでレスリングの練習をやりますから。日本だと20歳を越えたり大学を卒業すると、なかなかレスリングをイチから学べる環境がないんですよ。それが米国では、MMAのジムで一からレスリングを学ぶことができる。腕の取り方、テイクダウンの入り方から、すごく細かい技術まで教えてもらえたのは良かったです」
——その武者修行プロジェクトを経て、今回のDWCS出場は急きょ決まった話だったのでしょうか。
「まず武者修行プロジェクトに行かせてもらった時、現地のコーチに米国のマネジメント会社を紹介してもらったんです。そこで『UFCを目指している』と言ったら、『じゃあDWCSに出られるよう交渉しよう』という話になって。
だけど8月に入ってDWCSが始まり、カードも埋まっているから諦めます——と伝えた1週間後に、マネジメント会社から『DWCSに欠員が出た!』と連絡が来ました。そういった経緯で自分を代役に選んでもらえたのが、今から1カ月ぐらい前です」
——DWCSを諦めると決めた時点では、もう今後の試合スケジュールを考えていたのですか。
「そろそろ試合しないと、もう1年経っちゃうなという感じで。そうなると自分の仕事は何なのか、って話になってしまいますからね。だからDWCS以外で交渉しようと思っていたところで。個人的には3月から5月まで米国で練習させてもらい、海外勢のフィジカルやMMAのスタイルを肌で感じました。そこから帰国して日本で練習しながら、いつでもDWCSに挑戦できるように準備はしていました。
それと対戦相手の映像を視ると、ちょうどCMMAで同じようなタイプの選手と練習していたんです。スパーリングではその選手に勝っていたと思うし、これは行けるかなと。実際に試合をしてみないと分からないですけど、いろんな伏線が繋がって準備はできていました。おかげで気持ちにも余裕はできていますね」
出場を躊躇していると、ずっと足踏みし続けるMMA人生になってしまう
——CMMAで一緒に練習していた選手というのは?
「ルイス・フランシスコネリというブラジルのウェルター級ファイターで、LFAで4戦4勝——全て1R KO勝ちしていますね。LFA側からも期待されていて、次はメインカードに出るかもしれないと言っていました。今回も自分は早めに渡米して、ルイスと調整しています。身長が198センチ、リーチは235センチぐらいあって」
——ベルガウイ対策としてはピッタリの練習相手ですね! 現在UFCと契約するにはRoad to UFCかDWCSから、という形が多くなっています。日本人選手でも、いきなりUFC本戦出場となった平良達郎選手と朝倉海選手は例外で。
「最初はRTUでワンマッチを組んでもらえるかどうか交渉してみようか、という話もあったんです。でもアジアのRTUは重い階級の試合はやらない、という方向性みたいで。だったらDWCSに狙いを絞ろうということになりました」
——今年のRTUはライト級もワンマッチのみでしたし、ウェルター級以上はワンマッチを組むことすら無さそうですね。とはいえ、RTUとDWCSでは仕組みが大きく異なります。どんな内容でもトーナメントで優勝すればUFCと契約できるRTUに対して、DWCSでは勝利だけでなく試合内容のインパクトも求められる傾向にあります。
「それは分かります。もちろんフィニッシュしたほうが契約してもらいやすい。でも相手は去年のDWCSにも出ていて、組みで負けているじゃないですか。今回は2度目のチャレンジで――もともとベルガウイと対戦する予定だったという選手の試合映像を視たら、僕と同じストライカーでした。だからUFCとしては、今回ベルガウイと契約したいのではないかと思ったんですよ(笑)。
その印象を周りの人たちに伝えたら、みんな『たぶんそうなんだろうね』と言っていて。だから僕がベルガウイにサブミッションで勝っても、UFCとは契約できないんじゃないか。KOでないと契約できない、というぐらいに考えていますね」
——ベルガウイはGLORY時代に対戦しているポアタンとアデサニャに続く、第3のキックボクシング出身ファイターとして期待されているかもしれません。この2選手と同じように身長が高く、リーチが長くてKOも多い。
「しかもGLORYでポアタンに勝ったことがありますからね。その実績だけでも、プロモーター側からすれば欲しい選手だというのも分かるんです」
——昨年のDWCSでマルコ・トゥーリオはベルガウイに判定勝ちを収めたもののUFCと契約できませんでした。しかし今年8月、2度目のチャレンジでKO勝ちして契約に至っています。ということは、昨年のトゥーリオのような勝ち方では契約できない可能性が高いです。
「本当に分かりやすいです。でも個人的には、勝ちに徹しようと思っています。たとえば序盤にバックを奪って、ボディクラッチで相手は動けない。だったら残りの時間はずっとその状態でいたいですね。
正直言うと、自分はどんな試合内容でも今回は契約してくれないと思っています。でも勝てば来年もDWCSに出場できる可能性がある。その場合は、自分と契約したいためのカードになっているかもしれないですよね。その試合のために、また1年頑張れば良い。
僕としては今回、このレベルの相手に対して自分がどれぐらい通用するのか。それが分かれば良いと考えているんですよ」
――なるほど。考えてみれば北米MMAと自分の現在のレベルを比較できる相手といえば、IGFで対戦したハファエル・ロバトJrのみでした。
「しかも海外でMMAの試合に出るのは今回が初で。だからって出場を躊躇していると、ずっと足踏みし続けるMMA人生になってしまうと思うんです。ここで一回ステップアップできるなら挑戦したい、という気持ちでいます」
——翌週にはパンクラスのミドル級KOP、内藤由良選手もDWCSに臨みます。同じ階級の日本人ファイターとして意識するようなこともないですか。
「ないです。同じ日本人ファイターである、というだけで。今回UFCは内藤選手と契約したいマッチアップなのかな、とも思っています。それだけ立場が違うなかで比べても仕方ないですよね。自分は自分であって」
UFC2から30年の時を経て、再び大道塾の選手がオクタゴンに入る
——DWCSの試合を目前に控えて、それだけ自分自身のことを客観視できていることも凄いですね。
「いえいえ(苦笑)。いわばUFCはプロモーターとしてプロフェッショナルであり、こちらもプロのファイターとして自分に何がもとめられているかは理解しないといけないと思うんですよ。今回、自分の立場は相手を立てるための脇役だと考えています。そこで僕が勝ったりすると、視ている側としても面白いでしょうし。
もちろん自分が一番欲しいものは、UFCとの契約です。UFC2から30年の時を経て、再び大道塾の選手がオクタゴンに入るということを大切にしたかったです」
——UFC2から30年! その言葉を聴くと、格闘技ファンの気持ちが蘇ってきます。以前、オクタゴンのスポンサーバナーに「KUDO」という文字が見えた時は興奮しました。「KUDO」が何の会社かは分かりませんが……。
「自分も視ていて気になりました! 調べてみると飲食関連の会社みたいですね。詳しいことは分からないのですが」
——そうだったのですね(笑)。では対戦するベルガウイの印象を教えてください。
「好き嫌いがハッキリしている選手ですよね。距離を取って打撃で戦うのは好きだけど、距離を詰められるのは嫌い。自分にとって気持ち良いことを続けたい選手だと思います。それはキック時代から今のMMAに至るまで変わっていなくて――。僕も20年、格闘技をやっているから分かるんです。長い期間をかけて染みついたものは消えない。なかなか新しいスタイルに変えるのは難しいですよね」
——昨年のトゥーリオ戦でも、打撃の圧をかけられたら極端に手数が減っていました。
「たぶん打撃面がしっかりしているからこそ分かる部分ってあるんですよ。打撃を知らない人のほうが、プレッシャーをかけられても無視して打ち返してきたりとか。でも——自分もそうですけど、打撃の間合いが大切だと分かるからこそ、間合いを保とうとしてしまうところがある。そういう意味ではメチャクチャ分かりやすいです。それとグラップリングは何もやっていないんじゃないか、というレベルで。ただフレームが大きいので、そこは気にしないといけないです」
——そのベルガウイを相手に、遠い間合いで待つのはリスクがあります。となると至近距離で戦うことになるのでしょうか。
「自分もリーチが長いわけではないし、かといってパンチをよく使うタイプではないので、近い距離で組むチャンスを探すことにはなると思います。また日本人選手がUFCと契約することが増えてきたなかで、まだ中量級の選手は少ないです。そんななかで自分がUFCとの契約を目指して頑張ります」
■視聴方法(予定)
9月11日(水・日本時間)
午前9時00分~UFC FIGHT PASS
ミドル級キング・オブ・パンクラシスト内藤由良が『Dana White’s Contender Series』シーズン8に出場(2024年07月19日)
続報・ミドル級キング・オブ・パンクラシスト内藤由良、『Dana White’s Contender Series』シーズン8の対戦相手が判明(2024年08月05日)
こちらの続報。
【DWCS】空道世界王者・岩﨑大河がコンテンダーシリーズで、ペレイラに勝った元GLORY戦士と対戦「いつ来ても良いように準備してきた」、内藤由良に続きミドル級日本人2人目の出場 #DWCS #岩﨑大河 https://t.co/jnrARPP9VX
— ゴング格闘技 (@GONG_KAKUTOGI) August 27, 2024
2024年9月10日(日本時間11日)『Dana White's Contender Series 2024』(DWCS)の第5週に、空道王者でMMA9勝1敗の岩﨑大河(空道大道塾/パラエストラ東京)が出場することが分かった。
ミドル級(83.9kg)の日本人参戦は、9月17日(日本時間18日)の第6週に出場するPANCRASE同級王者・内藤由良(リバーサルジム横浜グランドスラム)に続く2人目。岩﨑は元GLORY戦士でMMA7勝3敗のユースリ・ベルガウイ(フランス)と対戦する。ベルガウイはGLORYで現UFC王者のアレックス・ペレイラに勝利したことがあり、現在ペレイラのトレーニングパートナーでもある。
岩﨑と対戦するユースリ・ベルガウイは、GLORY時代に現UFC世界ライトヘビー級&元ミドル級王者のアレックス・ペレイラと3度対戦し、1勝2敗。2017年4月の初戦で“ポーアタン”ペレイラに判定5-0で勝利し、トーナメント優勝。2017年12月と2018年7月に2度、ペレイラが持つGLORY世界ミドル級王座に挑戦も、KO・TKO負けで戴冠ならず。また、イズラエル・アデサニヤには2度判定負けしている。
2021年1月からキックと並行してMMAでもプロデビュー。UAE Warriorsを経て、2023年8月のコンテンダーシリーズに初参戦。アレックス・ペレイラの元スパーリング・パートナーのマルコ・トゥーリオ(※現在はシュートボクセで練習)のMMAボクシングからのテイクダウンに下になり判定負け。このときは両者ともにUFCとの契約はならず、ともに今シーズンの『Contender Series 2024』に出場の機会を得ている(※トゥーリオは8月28日の第3週でHXMMAミドル級暫定王者のマチュー・リトーと対戦し、2R KO勝ち)
Yousri Belgaroui(Sherdog)
Taiga Iwasaki(Sherdog)
ユースリ・ベルガウイと岩﨑大河の戦績はこちらを参照。内藤由良より1週先に岩﨑大河がDWCSに出場することになりました。続きを読む・・・
<フェザー級/5分3R>
久保優太(日本)
Def.2R4分19秒 by TKO
斎藤裕(日本)
サウスポーに構えた久保が左ミドルハイを蹴る。その後ろ足の大きく動かしフェイクで見せると、ミドルハイを狙う。スイッチした斎藤に対し、左ローを蹴った久保が続いてミドルを蹴る。近づくと左ストレートを出す素振りも見せるなど、久保が空間をコントロールすて高いミドルを放つ。右ストレートが届かなかった斎藤は飛び込んでシングルレッグ。コーナーに押し込む。コーナーバックルを利して倒れなかった久保は、小さないヒザを見せダブルレッグも右腕を差して防ぐ。
斎藤はボディロックを外して、右のパンチを放つ。そのまま胸を合わせたコーナーレスリング 左ミドルに右を合わせた斎藤だが、直後に右のカウンターを被弾してしまう。ステップインに左ミドルを入れた久保は、やや口が開き気味になってきたか。最後の10秒、斎藤の前蹴りに対し久保は2度ミドルハイを放った。
2R、久保の左ミドルと斎藤の左が交錯する。遠目の距離からテイクダウンを見せ、直後に同じ動き出して右を伸ばす。斎藤は左ジャブ、久保はかわして左ミドルを蹴る。斎藤は左ロー、久保は左ミドルハイを肩口に入れる。軌道を変えて三日月を蹴った久保は、右ボディストレートにミドルを蹴っていく。ノーガードで誘う久保は、ミドルより高いハイを蹴る。残り2分、ステップをやや増やした久保は左ミドルを蹴り、ダブルレッグを切るとパンチをスウェイして左を打ち込む。斎藤は手数が減り、入れない展開が続いている。
三日月を2発入れた久保は、テイクダウンを切って圧を掛ける。斎藤は真っすぐ下がってから仕掛けたテイクダウンを切れら、ボディにヒザを受ける。直後にコーナーで三日月を蹴られた斎藤はしゃがみこむ。久保が左から右ヒザを放った刹那、レフェリーが試合を止めた。
「途中まで考えていたんですけど、飛んでしまいました。あぁ、思い出しました。例の名前を出しちゃいけないYouTuberさんと大変なことをしてしまって……K-1王者、Glory王者の名を下げてしまいました。でもRIZINで4連勝して、元チャンピオンに勝ちました。僕って立ち技が天才だったんで、MMAでもこんなに強くなっちゃって。今、RIZINフェザー級ランキングで5位ぐらいになったでしょうか。僕はRIZINフェザー級でチャンピオンになりたいです。近々、タイトルマッチを組んでほしいです。榊原社長、最悪、挑戦者決定戦で良いです。サラちゃん、豪州から戻ってきてくれて。YA-MAN選手もそうだけど、愛の力は強いですね。なんちゃって(笑)」と敗者が救われないマイクを終えた。
【写真】ファイトIQが高い。技術論が、ずば抜けて楽しかったです (C)MMAPLANET
明後日28日(日)に、さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで行われる超RIZIN03で、久保優太が斎藤裕に挑む。日本人で唯一旧K-1、GLORY、新K-1でベルトを巻いた天才は、MMAに転じて色物と思われかねない言動で注目を集めていたが、3月の高橋遼伍戦で全てをひっくり返す勝利を手にした。
Text by Manabu Takashima
その結果、早くも斎藤裕という長くRIZINフェザー級のトップで戦う元修斗世界王者と相まみえることとなった。ムエタイ、K-1、オフェンシブ&ディフェンシブと自らの戦いを使い分けることができる久保は、防御力の高さも一流のなかの一流だ。とはいえ組み技歴はまだまだ短い。足を狙ったテイクダウンに対して、防御力と一体化したカウンターを射抜くことができるのか。
卓越した打撃力を支えるファイトIQの高さは、MMAでも絶対に活かされるであろう久保。秒殺一本負け、コントールされ続けての判定負けとなる可能性がいくらでもある斎藤戦とはいえ、久保の話に耳を傾けると一か八かでないKO勝ちの可能性も同様にあるように思えてきた(※取材は5月24日の超RIZIN03の会見終了後に行われた)。
打撃に関しても、伸びしろがある。そこがMMAの面白いところ
──MMAPLANETでは中村拓己氏のインタビューを受けて頂いたことがあるのですが、個人的には初めて話を聞かせていただくことになります。宜しくお願いします。
「アッ、ハイ。宜しくお願いします」
──正直に申し上げて、久保選手が真剣にMMAに取り組んでいることを高橋遼伍選手との試合まで理解していなかったです。色物かと勝手に思っており、申し訳ありませんでした。
「いえ、それはもう皆さんが思っていたことだと思います。K-1の時から、RIZINになっても色々と炎上騒ぎも起こしてきましたので。エンタメ寄りだったのも事実ですし、そのように思われて然りだと思っています」
──とはいえ中村氏もそうですが、MMAPLANETで執筆している亀池聖二朗氏からも「誤解していますよ。格闘技に対して、あれだけ真剣に向き合う選手はあまりいない。リング外のやり取りで、久保優太をそのように思っているなら、まさに乗らせているということです」と以前から忠告を受けていました。
「アッ、ハイ。ありがとうございます。人って誰しもが二面性を持っていて、そっちの方がフォーカスされるのは自分としても、格闘技は話題にして貰わないといけないので……。格闘技って色々な種類や団体があるじゃないですか。自分のパフォーマンスや実力をどこで証明するのかと言ったら、やっぱり横並びに一線にあるよりも、注目される試合だったり、団体で戦うことだと思っています」
──そういう風に注目をされ、MMAでも実力を示す時が来るという想いだったのでしょうか。
「いえ、そういうことよりも、僕はとにかく格闘技が大好きなんです。格闘技をやるのも勿論ですけど、見るのも大好きで。K-1を引退した時には30歳ぐらいですかね。13年ぐらいプロで立ち技をやっていたので、やっぱり飽きてしまっていたんです。こういう言い方もアレなんですけど、立ち技は究めたと思っているので」
──究めたからこそ、MMAは立ち技より大変という言葉を発しているのでしょうか。
「旧K-1、GLORY、新K-1の全てでチャンピオンになったのは僕だけなんです。その実績を客観的に、俯瞰して見た時に『この競技は究めた』と思えました。だから新しい競技を求め、MMAでまた学ぶことがたくさんありました。きっかけは朝倉未来選手や矢地祐介選手とYouTubeをやらせてもらったことなんですけど、寝技になると同じ格闘技でもこんなに自分は何もできないんだと思い知らされて。
MMAっていうと何でも有りに凄く近いじゃないですか。ということはMMAファイターは、キックボクサーは寝たら雑魚なんだろうって思いますよね。リスペクトはしていても、腹の中ではそういう気持ちでいるんじゃいかと。そのコンプレックスが根底にありました。だからボクシングに行こうとも考えたのですが、MMAをやろうと思ったんです」
──ボクシングにいけば持っているモノをより深く、先鋭化していく作業が必要だったかと思います。対して、MMAだと一旦は持っているモノを忘れて、組みの技術を万遍なく学び直す必要があったのではないかと。それでもMMAに転向することに躊躇することはなかったですか。
「躊躇というか、太田忍選手に負けてから甘くないなと気づきました。アハハハハ。正直、当てれば勝てるだろうと思っていたんです」
──あぁ、キックの人はそういう風に思うのは当然かと。ただし、その当てるのがキックとは違いますし。
「開始直後に自分の前蹴りが顔面に入って、太田選手が倒れました。でも、投げられて足が折れました。全くテイクダウン狙いも切れなかったですし、寝技ではスイープもできずに太田選手の攻撃を凌ぐこと、それを体に叩き込むことしか準備できず、それがあの時点での限界でした。でも、あの敗北があったからMMAにより興味を持つようになったんです。僕はこう見えて、メチャクチャ練習するんですよ」
──こう見えても……(笑)。
「僕世間では投資家だとか、ビジネス面だったり、今では戸籍が外れているので元妻なのですが、2人のやり取りとか見て本当に格闘技をやっているのかと思われることがあると思います。でも、格闘技が好きなんです。応援してくれる人の期待にも応えたいですけど、何よりも自分は本当に格闘技が好きなんです。
練習をすることが、凄く好きで。学ぶことがメチャクチャ楽しくて。MMAがどんどん好きになってきたし、成長過程のなかでRIZINのチャンピオンになるという目標があります。その目標を達成するために日々努力をする形です」
──組み技はゼロから学ぶ。対して、打撃は究めているのにアジャストが必要になったかと。そして、打撃の強さを見事に生かせるようになったのが、高橋戦だったと思います。
「自分の打撃に修正が必要なことに対しては、もう日々戦っています。K-1時代の打撃が10だとすると、MMAで出せる打撃は半分ぐらいです。なおかつ、その半分のなかで今の僕では10パーセントや20パーセントしか出せていないです。
それを日々のトレーニングで、どんどんアップデートしていってなるべく5割に近づける。その知識だけは、僕の頭の中にあります」
『打撃で何が得意ですか』と尋ねられると、苦手なモノがないんです。全部が得意
──究めているから、5割を捨てることができるのですね。
「そうですね。残りの5割を練習だけでなく、試合で出すことが重要になってきます。正直、前回の試合でも練習の半分ぐらいしか出せていません。やはり、想像と違うところが多かったです。
だからこそ『もっと出せる』、『もっとできる』という気持ちがあります。そう思えるということは打撃に関しても、伸びしろがある。そこがMMAの面白いところですよね」
──高橋戦後に初めてキック時代の動画をチェックさせてもらったのですが、左ミドルと左ストレートが印象に残りました。その左からの攻撃を高橋戦ではほぼ見せていないです。
「左ミドルと左ストレート……距離を取って戦うようになったのはK-1時代の後半からなんです。初期はムエタイスタイルで、左ミドルと首相撲&ヒザ蹴りでパンチは一切できなかった。20代になってボクシングを学んで、日本ランカーの人達ともスパーリングができるレベルになると、パンチでガンガンいくように変わりました。
ただガンガンいくと初回にダウンを奪っても、3Rに逆転KO負けをすることがありました。そういうことが3度あったので、そこから判定でも勝てるスタイルになりました。K-1時代の最後の3年間は、ディフェンシブなスタイルでした。
その3つのスタイルで、どれを使うかという選択はある程度できます。旧K-1とGloryではワンキャッチが許されていました。新生K-1になるとキャッチが禁止になったことで、低いミドルが有効になりました。ただ、その蹴りはMMAでは使えません。簡単にキャッチされて、テイクダウンを取られてしまいます。だから、そうなると高いミドルになります。
そういう風に使える技、使えない技というのは自分自身で取捨選択しています。ただ、自分は『打撃で何が得意ですか』と尋ねられると、苦手なモノがないんです。全部が得意、8歳の時から立ち技格闘技をやっているので、苦手なモノがない。攻撃もそうだし、ディフェンスもそうなんです。ディフェンスが得意なんです」
──トップレベルで安定した成績を残すために高度な防御力は欠かせない要素ですね。
「ハイ。ただし、ディフェンスが得意な選手はあまりいなくて。だから僕の防御力は、評価されているんだと思います」
根っから格闘技が好きなので、何かに常に挑戦したい夢追い人なんです
──高橋戦でも2R以降は、ほぼ貰っていなかったです。とはいえ組みが加わったMMAにおいて──特に次の斎藤裕選手との試合でも、その防衛システムは機能するのでしょうか。
「確かに高橋遼伍選手と試合をした時も、1Rには貰っています。そこから修正をしたので、2Rと3Rは貰わなかったです。ただ斎藤選手との試合では、プランを変えて修正をしないと自分の防衛システムは働かないと思います。
斎藤選手は高橋選手より、テイクダウンを狙ってくるでしょうし。ニュー防衛システムが必要になってきます。立ち技の場合はテイクダウンがないじゃないですが、MMAは攻撃側の選択肢が増えて、ディフェンスをする方にも当てはまります。だから気を付けないといけないことが、増えます。
同時にそうなると、複雑なフェイントは必要なくなります。K-1の時はもっと騙し合いが多かったです。3、4、5段階で罠を仕掛けないといけないのが、MMAだと1と2。それだけ省略した攻撃を駆使し、ディフェンスの準備をするだけです。MMAは攻撃手段が多いので、何段階も網を張っていては先にやられてしまいます」
──いやぁ、凄く興味深いです。例えば昨年4月の斎藤×平本蓮戦ですが、平本選手はテイクダウン防御に成長の跡が感じられる一方で、TD防御が念頭にあって打撃の威力は本来持つモノと比較すると落ちていたと思います。
「テイクダウンを警戒することで、斎藤選手のパンチを被弾もしました。それは自分にも有り得ます。ただ、その解決策はもうあって練習ではできています。でも本番と練習はやはり別モノで。高橋戦で初回に効かされて、そこから修正したように、あとは本番で使えるようになるまで、練習で落としこむことができるかです」
──試合まで2カ月、打撃を斎藤選手に当てる自信はどれほどありますか。
「自信ですか? 今は正直、ないです。ないですけど、これだけ応援してくださる人達がいるので。僕をサポートしてくれるファンの皆さんやスポンサーの方たちって、僕と一緒に夢を追ってくれているんです。
僕は言ったら、夢追い人なんですよ。正直、K-1で3年間防衛戦を戦っている間に、いくらでも引退を選ぶことはできました。でも自分は根っから格闘技が好きなので、何かに常に挑戦したい夢追い人なんです。だから、この夢に一緒に乗っかって応援してくださる人の期待に応えたい。この2カ月で、自信をどんどん積み上げていくという作業に入ります。
高橋選手が2Rと3Rに組みを見せなかったことを疑問視する声もありました。僕としても、低く足をとりにくるテイクダウンを待っていました。ヒザを合わせようと思っていたので。でも高橋選手は仕掛けてこなかった。ストレートやヒザという僕のカウンターは、向き合った人にしか分からない恐怖を与えることができると思っています。
それだけ僕のカウンターは殺傷能力がありますし、『これを貰ったらヤバい』というプレッシャーを与えることができると思っています。その打撃には自信があります。会見で扇久保(博正)選手や斎藤選手も仰っていましたよね──『MMAをずっと続けてきたから負けられない』と」
──ハイ。
「僕はこの打撃を──8歳から立ち技格闘技でずっとやってきました。そういう身としては、打撃力で絶対に負けちゃいけないんです。負けないという自信もあります。それを生かして、そこを見せて当日はノックアウトしたいなと思っています」
■視聴方法(予定)
7月28日(日)
午後2時00分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!
【写真】部屋に飾られてる「獲」は、原口が今年の書初めで書いたものだ(C)MMAPLANET
7月20日(土・現地時間)、オランダはロッテルダムのトップスポーツセントラムで開催されるGLORY93にて、原口健飛がペットパノムルン・キャットムーカオが保持するGLORYフェザー級(65kg)タイトルに挑戦する。
Text by Takumi Nakamura
原口とペットパノムルンは2021年11月と2022年8月にRISEのリングで対戦し、いずれもペットパノムルンが勝利している。2度目の対戦以降、原口はRISEのリングでGLORYのファイターたちを次々と撃破し、2023年12月のRISE両国大会ではGLORYフェザー級1位(当時)のエイブラハム・ヴィダレスにKO勝ちし、ペットパノムルンとの3度目の対戦=GLORY王座への挑戦につなげた。
ペットパノムルン超え、そして日本人初のGLORY王座獲得に向けて、オランダ入りする直前の原口に話を訊いた。(取材日は7月9日)
――ペットパノムルンとの3度目の対戦、GLORYフェザー級タイトルマッチが決まりました。試合としては昨年12月のエイブラハム・ヴィダレス戦以来となりましたが、次はペットパノムルンと戦いたいと想いが強かったのですか。
「そうですね。ヴィダレスのときも、これに勝ったらペッチ(ペットパノムルン)とやれると言われてヴィダレスに決まったので、そこ(ペットパノムルンとの対戦)しか見てなかったですね。だからオファーが来た時も、ようやく来たかという感じでした」
――ではヴィダレス戦以降はペットパノムルン戦に集中していたわけですね。
「はじめは4月にやるかもということやったんで、ずっとペッチ対策をやっていたし、それを変えるという考えはなかったです。どれだけ試合間隔が空いても次はペッチとやりたいとRISEサイドにも伝えていたし、自分自身もそのつもりで2年間やってきたんで」
――ヴィダレス戦以降はペットパノムルンに勝つためだけに時間を過ごしていた、と。
「はい。ペッチと再戦(2022年8月)に負けてからジェレミー(・モンテーリョ)、アンバー(・ボイナザロフ)、(セルゲイ・)アダムチャックに勝って、ランキング1位のヴィダレスがラスボスやと思っていたんで。ヴィダレスに勝てば、みんな僕が挑戦することに納得するだろうと思ったし、しかもペッチが判定までいったヴィダレスにKO勝ちできたので、これ以上(ペットパノムルン以外に)やる相手はいないやろうっていう気持ちもありました」
――ペットパノムルンは過去に2度対戦して2度敗れている相手ですが、原口選手にとってはどんな存在ですか。
「2回負けているというのももちろんあるんですけど、1戦目(2021年11月)は選手生命が終わるぐらいにコテンパンにされたんですよ。それがすごい悔しかったし、情けないという感じで。2戦目は1戦目に比べて上手く戦えたんですけど、勝つことを意識しすぎて、本来の自分を出せなかったんですよね」
――ペットパノムルンを倒すというよりも判定でもいいから勝つという考えだったのですか。
「そうですね。(2戦目は)ルールをしっかり利用して、ペッチに勝つためだけに動いたんですよ、本能を捨てて。それが結果的に勝ちに行きすぎたというか、倒す気もないし、とにかく攻撃を当てるだけみたいな。そこまで自分を殺してやったのに結果を出せなくて、1戦目・2戦目どちらも後悔しか残らなかったです。だから諦めるにも諦めなきれない気持ちがあって。今回はオランダまで乗り込むことになって、全身全霊をかけて戦って、勝つか負けるか分からへんけど、絶対に後悔は残したくないという気持ちがあります。勝ちたいも気持ちももちろんあるけど、自分自身へのリベンジもあるし、ペッチに対してはそういう感情もありますね」
――例えば最初の対戦のときは「どうやったらこの相手に勝てるんだろう?」という気持ちになっていたのですか。
「ほんまそうでしね。あの時は正直やる前から負けていたんですよね。なんか戦う前からちょっと勝たれへんわと思っちゃって。ペッチはほんまに強い選手やし、GLORYの現役チャンピオンやしっていう。画面越し映像の強さに負けてしまって、とにかく倒されないようにしようという頭で戦ったんですよ。極端な話、勝つのは無理やから、倒されんように戦おうみたいな」
――あの時はそこまで追い込まれていたんですね。それだけペッチにはインパクトがあったのですか。
「僕も外国人とやったことはあるけど、日本在住の外国人というレベルやったんです。それがいきなりGLORYの現役チャンピオンと戦うことになって、自分自身、世界最強と戦いたかったところもあるけど、いざそういう相手が目の前にいるとめちゃくちゃオーラがあるし、なんかもう……なんなんやろ、こいつみたいな。これホンマ戦われへんわっていう思いになっていました」
――そういった試合だったからこそ、2022年8月のリマッチでは、悪い意味で勝ちに徹してしまったのでしょうか。
「まさにそれですね。どうせ倒されへんし、効かされへんから、とにかく自分が攻撃を当てるところだけをレフェリーに見せて、うまいこと(ポイントを)取ってくれんかなっていう感じで戦ったんですよね。それで延長まで行ってよかったんですけど、延長も本戦と同じ気持ちで戦ったから、やっぱり最後は押し切れなかったですね」
――試合後にはレフェリングやジャッジに対して批判的コメントを残していましたが、あの時は感情的に言葉が出てしまったのでしょうか。
「あの時はあの試合にかけて必死でやってたし、6月に『THE MATCH 2022』でヒデさん(山崎秀晃)と戦って、ヒデさんの思いも背負ったつもりで戦ったんですよ。僕はヒデさんに勝てたおかげで自信がついたし、ヒデさんに勝ったからこそ、RISEから『ペッチと再戦いけるか?』と言われて『今ならペッチいけます』と答えて、再戦を組んでもらったんですね。自分としてはゴールデンフィストを宿して、RISEを背負って戦ったつもりだったんですけど、レフェリーに判定を委ねる試合をしてしまって、そのレフェリーに裏切られたという気持ちにもなって。
だからあの時は思っていたことも言ったし、ホンマは思ってないようなことも言ってしまって……すごく失礼な言い方してしまったと思うし、今となっては申し訳ないことをしたという気持ちもあります。でも今はそれが自分の弱かった部分だということも認めているし、そんな自分へのリベンジを込めてもう一度ペッチとやりたいという想いがあります」
――2度目のペットパノムルン戦以降、原口選手の相手を一撃で仕留めるスタイル・戦い方が、より洗練されて磨かれた印象があります。あの試合を経て自分の技術レベルが上がったと感じていますか。
「僕は気持ちで戦い方が変わると思っていて、もともと自分は倒せる威力もスピードもテクニックもあって、倒しに行くかどうかは自分で決めて動けるタイプなんですね。それで2度目のペッチ戦ははじめから『倒すのは無理』『倒せないから倒しに行かない』と思って、ああいう試合をしちゃいました。だからあれ以降、そういう気持ちを捨てて、勝てるかどうかは分からへんけど、とりあえず自分が思ってることを全部やろうと思って戦うようになって、それがペッチ戦以降のファイトスタイルになっていて、結果的にKO勝ちが続いています。だから戦い方を変えたというよりも、気持ちの面を変えた感じですね」
――今回のペットパノムルン戦は対戦相手の対策と自分のパフォーマンスを見せること、どんなバランスで練習してきたのですか。
「対策は4割ぐらいで、6割ぐらいは自分自身を出す、持ってる技術を全部出すという練習ですね。それができたら絶対に勝てると思っているし、倒せたら倒せたでいいですし、あらゆることを想定して練習をしてきました」
――試合時間も3分5Rで、対策が試される部分もあるでしょうし、素の強さが求められる部分もあると思います。
「しかもラウンドマストで延長がないので、楽と言えば楽やし、やばいと言えばやばい。1・2・3Rを取ったら、4・5Rはダウンを取られなければ勝ちやし、逆に1・2・3Rを取られたら、ダウンを取ってもドローになりかねない。そういうこともイメージして練習は続けてきました。試合をコントロールする力も求められれば、一発逆転や一瞬の隙をつく技も求められる。ラウンドマストのことを考えると、最後に自分が攻めて攻勢を印象付けることも必要やし、あらゆることを利用して勝ちたいと思っています」
――まさに総力戦ですね。
「ペッチってリズムが最初から最後まで変わらなくて、それがペッチの強いところなんですよ。何が起きてもずっと一緒、自分のリズムでやる。だから落ち着いて見えるし、そこを上手いこと利用したいなと思ってますね」
――そういう意味では昨年12月にチャド・コリンズがペットパノムルンに勝った試合は参考になりましたか。
「そうですね。元々ペッチがチャドとやる前から、次戦うときはチャドっぽい動きで行こうと思ってたんですよ。それで実際にペッチに勝ったチャドを見て、自分の考えは間違っていないんだなという気持ちになりました」
――チャドの戦い方を参考にしつつ、原口選手ならではのテイストも入れていく、と。
「はい。ペッチができないような攻撃も使って、フルに痛めつけられるところは痛めつけたいと思います」
――3度目の対戦はペットパノムルンが持つGLORYのベルトに挑む形です。RISEは原口選手とペットパノムルンの3度目の対戦が実現できるように、原口選手とGLORYのランカーの試合を組んで、原口選手がそれに勝ち続けたことで今回の対戦が決まったという経緯もあります。そういった周りの想いを背負って戦うという心境もありますか。
「今回はオランダで試合ということで、試合の約1週間前にオランダに入って、現地で調整することになったんですね。本来ならあり得ないスケジュールなんですけど、RISEがこちらのリクエストを形にしてくれて。(RISEが)全面的に全身全霊でサポートしてくれるおかげで、最高の形で試合当日を迎えられると思います。それだけRISEも懸けてくれていると思うし、一緒に戦ってくれていると思います。自分自身のためにはもちろん、自分がGLORYでベルトを獲れば、格闘技の歴史に名を残すことになると思っているんですよ。
日本のキックボクサーが誰も成し遂げたことがないことやし(※2013年に久保優太がGLORYの世界トーナメントで優勝したことはあるが、ワンマッチ形式でGLORYのタイトルを獲った日本人はいない)、日本人初の偉業をRISEファイターが達成したとなれば、RISEとしても誇りになると思っています。そういう意味も込めて、RISEには恩返しいたいです。本来なら3度目の対戦を組むのもなかなか難しいと思うし、きっと色々な意見もあると思うんですよ。僕も実力でここまで勝ち上がってきましたけど『何回やらすねん!』とか『もう見たくないよ』と思う人もいると思います。それでも僕を信じてくれている人がいるし、RISEも僕に期待をしてくれている。自分を信じてくれている人のために勝つこと。それが団体のエースとしての仕事だと思っているので、何が何でも勝って、RISEをホンマに世界一の団体にしたいと思っています」
――2024年は立ち技格闘技が変わる1年になると思っていて、武尊選手や野杁正明選手がONE Championshipに参戦し、海人選手はGLORYのベルトを目指している。日本のトップ選手が海外のタイトルを狙う・挑戦する流れが出来つつあります。そのなかで原口選手がGLORYのベルトに挑むことになって、原口選手・RISEファン以外の日本の格闘技ファンが原口選手のことを応援していると思います。
「ONEでは武尊選手と野杁君が負けて、過去にGLORYのタイトルマッチで海人君や小林愛三さんも負けている。僕もペッチには2回負けているんですけど、初めてペッチと戦ったのが2021年で、他の選手よりも早くVS世界の戦いを始めたと思っているんですよ。誰よりも早く世界の壁にぶち当たっているからこそ、一番早くそこで勝てると思ってるし、勝たなあかんと思ってるし、誰よりも責任感は強いです。失礼な言い方になるかもしれませんが、誰よりも自分が世界で勝ちたいという気持ちはあるし、みんなの応援を力に変えて、ぶちかましてこようと思います」
――今日は出発直前のインタビューありがとうございます。後ろの壁に飾っている「獲る」という文字はいつ書いたものなですか。
「これは今年の書初めで書いたものです」
――まさに2024年はペッチに勝ってGLORYのベルトを獲るという想いを込めたものですね。
「そうですね。しかも(年末に)RISEとGLORYで65kgのトーナメントがあるということを聞いていたので、そのトーナメントも獲るという意味もあります。だから今年は自分が獲れるものをすべて獲りたい。強さ、地位、名誉、お金……全部含めて獲ったろうって感じです」
■視聴方法(予定)
7月20日(土)
深夜25時15分~U-NEXT
【写真】世界最高峰の戦いに、先進科学以外の精神性が加わる。ある意味、目の前に見られる超常現象だ(C)Zuffa/UFC & MMAPLANET
29日(土・現地時間)、ラスベガス近郊パラダイスのTモバイルアリーナにて、UFC 303大会が行われる。メインイベントは現王者アレックス・ポアタン・ペレイラに元王者イリー・プロハースカが挑むライトヘビー級タイトルマッチだ。
Text by Isamu Horiuchi
もともと本大会のメインには、3年ぶりの復帰となるコナー・マクレガーとマイケル・チャンドラーのレジェンド戦が予定されていた。しかしマクレガーの負傷により延期が決定。大会僅か16日前である今月13日、このタイトル戦が急遽発表された。
ポアタンことペレイラは、昨年11月のUFC 295にて前王者プロハースカとライトヘビー級王座決定戦に臨み、2RTKO勝利。キック団体GloryとUFCの両方で世界二階級制覇の偉業を達成した。さらに今年4月の記念大会UFC 300のメインイベントでは、前王者ジャマール・ヒルと初防衛戦を行い、試合前に右足の小指を骨折して主武器の右カーフが使えない状況下にもかかわらず、瞬時に距離を詰めて必殺の左フック一閃。目を剥いて倒れたヒルに追撃を浴びせて仕留めて見せた。
ニックネームのポアタンは、南米の先住民語であるトゥピ語で「石の如き手」を意味するという。その名に相応しい凄まじき威力の拳で観客を魅了する、現在のUFC最大の(つまり現在MMA界最大の)スーパースターだ。
対するBJP(こちらはBomby jak pičaの略だそうで、UFC.comによると「爆弾をぶっ放せ」的な意味らしい)ことプロハースカは、日本のRIZINにおける活躍でもお馴染みの選手。UFC転出後3連勝を飾りライトヘビー級王座に輝くも、肩の負傷により王座返上を余儀なくされた。復帰して臨んだ11月のポアタンとの王座決定戦には敗れてしまったが、上述のUFC 300のプレリムのメインにてランキング5位のアレクサンダー・ラキッチと対戦。いつものように被弾上等で前進し攻撃を仕掛け続け、初回は失ったものの2Rに強烈な右をヒットさせるや、強引に嵐に巻き込むが如きラッシュをかけて薙ぎ倒し、TKO勝利を収めている。
大会後プロハースカはポアタンへの挑戦の意志を表明し、王者も次の防衛戦はプロハースカとの再戦になるだろうと語った。両者ともに8月の対戦を念頭に置いていたようだが、マクレガーの負傷欠場により事態が急展開。ともに前戦から僅か2ヶ月半ほどでの再登場となった。
もっともプロハースカは先月の段階で「もしUFC 303でタイトル戦が組まれるのなら喜んで」と発言しており、急遽のオファーを受けることに迷いはなかった模様だ。侍の哲学に傾倒する彼らしく「ウォリアーにとって大切なのは、自分の周りに起きる物事や状況の変化にその場で対応することだ。今回のようなショートノーティスの試合は、まさにそれだよ」と、むしろこの展開を歓迎している。
一方のポアタンも、豪州でのプロモーションツアー中だったにもかかわらずオファーを快諾。移動中の車中にて、マネジャーから諸条件の確認の連絡を受けた際「Chama or no Chama!(やるかやらないかだ!)」と笑顔で試合を受けるシーンを自ら動画でアップしている。
ちなみに「Chama(シャーマ)」というのはポルトガル語で「炎」を意味するポアタン愛用のキャッチフレーズだ。
「もともと彼と戦うつもりだったし、この豪州アでのツアー中も毎日トレーニングをしていた。僕はもうすぐ37歳になり、いつまで戦えるかは分からない。こういう機会を逃す選択肢はないよ」と、団体側から見るとこの上なく有り難いメンタリティを持つ王者はさらに
「ずっと世界中で試合してきた。1カ月で2回中国に行ったこともある。1度目は取材等をこなし、2度目は試合に向けての減量中に3度もトランジットを重ねて中国入りして試合した。僕の心は強い。今回の減量も問題ない。これから10キロ減らすだけだ、試合まで15日あれば十分食事で調整できるさ」と語っている。
Gloryにてキック世界王者として君臨するだけでなくKunlun FightやGlory of Heroes等で中国、欧州で&北米を転戦した経験は、この男に桁外れの破壊力を秘めた石の拳だけでなく、常人には測り知れない鉄の精神力をもたらしているようだ。ちなみにプロハースカもそんなポアタンのことを「彼流のウォリアーの道を生きている、真の戦士だ」と評価している。
と同時に、ポアタンが出自である先住民族パタシャオ族の儀礼に参加したり、その民族衣装やフェイスペイントを纏って会見に参加することを受けて「彼はいつも地元のシャーマンからスピリチュアルな力を得ているね。おそらくそれなしでは戦えないのだろう。私もスピリチュアルな力の存在は信じているけど、ああいう『魔術』は使わず、人間のピュアなパフォーマンスを信じているんだ」ときわめてユニークな見解を披露している。
そんなプロハースカも最近、光を遮断した場所に数日間食事も摂らずに籠り自らの魂と向き合う試みを敢行し、また前戦の前夜には会場の前に一人で佇み、場の力を吸収しようとする姿が目撃されている。現代MMAの最先端で極限の強さを競う選手たちが、科学的合理性とは一線を画した方法で精神的追求を行っている事実は興味深い。
ちなみにポアタンのように祖先の魂に触れて力を得ることの効用は、宿命のライバルのイズラエル・アデサニャも認めている。ポアタンに敗れてミドル級タイトルを失ったアデサニャは、再戦の前にポアタンに倣って自分も祖先の文化に立ち返る必要があると考え、幻覚剤のシロサイビン(マジック・マッシュルームをマイクロドーズ(微量使用)することで自己探求の旅を試み──。
「彼(ポアタン)はいつもそうやって力を得ている。俺もそこからインスピレーションを受けた。自分の祖先に触れ、自分は何者かを見つけなければと思ってね。その経験(=マイクロドーズによる自己探求の旅)は本当にあの(リベンジを達成した)試合で役に立ったよ」と語っている。
閑話休題。
チェコ出身のプロハースカが日本の侍文化を独自の形で吸収し、ポアタンは南米先住民族の伝統への回帰を通して精神的・霊的な力を求める。こうした精神世界における世界規模の過去と現在の交錯もまた、21世紀のグローバルスポーツとしてのMMAの一側面だ。
さて、あまり間を置かずに再戦となるこの試合だが、きわめて対照的な戦いで観る者を魅了する両雄による頂上決戦なだけに、興味は尽きない。むしろ前回の試合を経て見所が深まっていると言える。
プロハースカの最大の特徴は、その変則的にして超攻撃的な戦闘スタイルだ。軽やかにステップを踏み、スイッチを繰り返してはフリッカージャブ、アッパー、オーバーハンド、前蹴り、縦肘、飛び膝等を奔放に放ってゆく姿は、侍文化に傾倒する本人が大切にする「常に現在に住まう(always live in the present moment)」という言葉を具現化しているかのようだ。
何より型破りなのは、対戦相手全てが一撃必殺の攻撃力を持つUFCライトヘビー級トップ戦線にて、両腕を下げアゴを上げた姿勢で躊躇なく危険な距離に踏み込んで攻撃を仕掛けてゆくことだ。実際UFC転出以降の5試合全てにおいて、プロハースカは自分から強引に距離を詰めていき、結果相手の強烈なカウンターを何度も顔面に被弾している。
それでも持ち前の目の良さと打たれ強さで持ち堪えては前に出続け、最後は強打の嵐に相手を巻き込んでしまうという常識外れの戦い方で、UFC参戦後僅か3戦にして世界に頂点に立った。試合は常にエキサイティングなものとなり、ほぼ毎回何らかの形でボーナスを獲得している。たどたどしい英語で生真面目に侍の精神性を強調する、ユニークな個性と髪型もファンの好感を呼ぶビッグスターだ。
そんな破天荒な戦い方が仇となってしまったのが、前回11月のポアタン戦だ。2Rに強烈な右を当てることに成功したプロハースカだが、下がったポアタンを追いかけて距離を詰めていったところで、カウンターの左右フックを被弾してしまう。膝から崩れ落ちたところに肘を連打で落とされ、万事休す。
他の相手には驚くべき耐久力を発揮したプロハースカの強靭なアゴだが、至近距離でも恐るべき破壊力を発揮するポアタンの拳と肘を耐えられるはずもなかった。お互いのパンチが当たる距離のことを英語で「イン・ザ・ポケット」と呼ぶが、高い精度と桁外れの威力を兼ね備えた拳を持つポアタンと戦う者にとって、そこは誇張なしに「世界一危険なポケット」と化す。
そこで今回の再戦の鍵は、プロハースカがいかに前回の教訓を踏まえ、ポアタンとの間の危険極まりないポケットに切り込んでゆくかとなるだろう。
実際プロハースカは11月の前戦にて、ポアタンの拳を掻い潜って有効な攻撃を仕掛ける場面を幾度か作っている。一つ目は1R中盤に奪ったテイクダウンだ。組みと打撃を織り交ぜたフェイントを駆使するプロハースカは、ポアタンの右ストレートをかわしざま見事なタイミングで懐に入り、片足を抱えることに成功。やがてテイクダウンを奪いラウンドを先取してみせた。
もう一つの場面は2Rに見られた。ギアを上げたプロハースカは、体を振りながら前に出てポアタンを下がらせ、さらに距離を詰めると見せかけてカウンターの左右フックを誘い出し、目の前で空振りさせることに成功。次の瞬間得意の右オーバーハンドをクリーンヒットさせたのだった。
前進しながらも冷静に相手のカウンターを見切る動き自体は、プロハースカがいつも使っているものだ。が、ポアタン戦で見せたそれは今までで最も見事で、本人が憧れる古(いにしえ)の剣豪の如き、とさえ言えるものだった。
臨機応変にして変幻自在の動きを持つプロハースカ。今回はMMAのいかなる要素を組み合わせて「世界一危険なポケット」に侵入そして突破し、ポアタン最大の課題である寝技の領域に試合を持ち込むのか。
それともさらに洗練された見切りを駆使し、ポケットの境界スレスレの位置に留まり「後の先」を取りにゆくのか。最高度にスリリングな攻防となるに違いない。
さらに付け加えるべきは──ポアタンと戦う者にとって、ポケットの外にいさえすれば安全などということは全くないということだ。強烈な左フックを始め、KOパワーを秘めたパンチ力は当然として、ポアタンにはもう一つの主武器がある。それが、パンチを警戒する相手への右カーフキックだ。恐るべき左拳から遠ざかりたい対戦相手が動いた瞬間、逆側からノーモーションでこれが飛んでくるのだから防ぐのは困難だ。
そしてその破壊力がまた尋常ではない。実際11月の試合の初回、プロハースカはオーソに構えるたびに前足に強烈なカーフを被弾し、派手にバランスを崩されている。2Rに強引に攻め込み返り討ちに遭った遠因が、初回に足を壊されかけたことで勝負を急いでしまったことにあるという見方もできるだろう。
危険な拳の射程距離に容易に近づくことすら許さない、まるで城門への接近を試みる敵に向かって放たれる強力な矢の如きポアタンのカーフキック。今回もプロハースカは、前回同様の大きな犠牲を払っての強行突破を試みるのか、それとも新たな対処法を用意しているのかもまた見どころだ。
ネット上の真のMMAファンを自認する皮肉屋たちからは「コナー、怪我してくれてありがとう! おかげで僕らはこんな最高のカードをすぐにまた観ることができるよ!!」などという声まで少なからず聞こえてくるこの再戦。生命活動のほぼ全てを戦いに注ぎ込む真のウォリアー2 人による戦いが、一瞬たりとも目が離せないものとなることは間違いない。
■視聴方法(予定)
6 月30日(日)
午前7時00分~ UFC Fight Pass
午前6時30分~ U-NEXT