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【EUG01】アンディ・ムラサキ、金字塔レビュー─02─EUG160lbsT優勝「千$分リッチになった気分」

【写真】EUG160ポンド級のベルトと賞金1万ドルをてにしたアンディ・ムラサキ (C)EUG

3日(土・現地時間)、ラスベガスにて新興プロ柔術団体EUG (EVOLVE UR GAME)プロモーションズの旗揚げ大会レポート後編。

1万ドル争奪・道着着用160パウンド以下級の8人トーナメントで快進撃を続けたアンディ・ムラサキとマテウス・ガブリエルの一戦の模様をお伝えしたい。
Text by Isamu Horiuchi

<アンディ・ムラサキの初戦&準決勝の模様はコチラから>


決勝でムラサキを待っていたのは、2019年の世界柔術フェザー級王者マテウス・ガブリエルだ。1回戦で階級上のジョナタ・アウヴェスと対戦したガブリエルは、必殺のベリンボロで上を取って試合をリード。最後は抜群のバランスでトップキープして4-2で勝利した。

続く準決勝でガブリエルは、マーシオ・アンドレと2019年世界大会フェザー級決勝の再戦を迎える。ここでも鋭いベリンボロでアンドレの強靭なベースを崩して大きな見せ場を作り、ポイントこそないもののレフェリー判定で快勝。ムラサキとの決勝戦を迎えたのだった。

<決勝戦/1R7分>
アンディ・ムラサキ(ブラジル)
Def. Ref Decision
マテウス・ガブリエル(ブラジル)

早々に座り込んだガブリエルは、ムラサキの右足に絡んでデラヒーバを作る。するとムラサキはガブリエルの右足を瞬時に流しての迅速のレッグドラッグ。が、ガブリエルも素早く対応して距離を取る。開始早々、火花が散るがごとき両者の攻防だ。

右腕を伸ばして襟を取るガブリエルに対し、ムラサキは低い体勢でプレッシャーをかけてゆく。下のガブリエルは右足に深く絡んでのデラヒーバで崩しにかかるが、強靭なベースを誇るムラサキがバランスを保つ。ガブリエルはムラサキのラペルを引き出して膝裏を通して掴むが、ムラサキはその足を抜き、レッドグラッグで逆襲。これも防ぐガブリエル。

再びデラヒーバを作ったガブリエルはムラサキの帯を取るが、ムラサキはガブリエルの左足を押し下げてから右足を跨いで抜く。改めて低くプレッシャーをかけたムラサキは、ガブリエルの両ズボンを掴んで左右に動いてから、一気に左にトレアナ・パス。一瞬胸を合わせかけるが、ガブリエルは両腕と両足を利かせて体勢を戻してみせた。

ガブリエルの切れ味抜群のオープンガードと、それに劣らぬ鋭さと重さを併せ持つムラサキのトップゲーム。両者の強みが正面からぶつかり合う凄まじい展開だ。

その後ガブリエルは左側でラッソーを作るが、ムラサキは体勢を低くし右ヒザを当てガブリエルの左の動きを殺す。さらに左腕で襟を掴んでガブリエルの動きを制したいムラサキと、それを防いで逆に手首をコントロールせんとするガブリエル。緊張感溢れるグリップファイティングが行われている。

残り1分。プレッシャーを強めるムラサキだが、ガブリエルは両手両足でその進行を止める。やがてムラサキは絡んでくるガブリエルの右足を力強く押し下げ、右ヒザで潰してからステップバック。段階を踏んで自らの右足を自由にしたムラサキは、左に回ってのパスへ。が。ガブリエルはインヴァーテッドの体勢を作ってここも防御し、逆にムラサキの左足にデラヒーバで絡んでみせた。

残り20秒。フックを深く入れて攻撃体勢を作ったガブリエルは、一気にベリンボロへ。両足を交差させられながらも、なんとか上を保つムラサキ。が、ガブリエルはそのズボンの尻を掴むことに成功。そのまませり上がってバックを狙うが、ムラサキは前転してスクランブルして立つ。が、ガブリエルもその動きに付いてゆき、背後から足をかけてゆく。バックを取られまいとムラサキがもう一度自ら倒れ込んでスクランブルを仕掛けたところで、両者の身体が場外に出て、残り試合タイム4秒の時点でブレイク。

ポイントこそ宣告されなかったものの、通常のIBJJFルールならば間違いなくアドバンテージは獲得できると思われるこの攻撃。世界王者ガブリエルが、最後の最後で大きな見せ場を作ってみせたのだった。

果たして、4秒間のリスタート。時間のないムラサキが前進するが、それを低い体勢で受け止めたガブリエルが逆にムラサキの左足を抱えて押してゆく。再び両者の体が場外に出たところで、試合終了した。

両者の持ち味が存分に発揮された一進一退の大熱闘。あえて勝者を選ぶなら、最後スイープ成功に限りなく近い場面を作ったガブリエルかと思われたが、レフェリーはムラサキを支持。常にトップからプレッシャーをかけ、鋭いレッグドラッグやトレアナ・パスで何度かサイドに回りかけるシーンを作ったことが評価されたか。

とまれムラサキはこの黒帯デビュー戦において、ケネディ・マシエル、ジアニ・グリッポ、マテウス・ガブリエルという世界の超一流選手を三タテ。しかも準決勝のグリッポ戦に至っては、相手を完全制圧した上での一本勝ちという驚愕の戦いぶりだった。

勝利者インタビューで今の心境を聞かれ「10000ドル分リッチになった気分さ!」と答えたムラサキは、次回同団体で行われる予定の170パウンドトーナメントへの参加も表明した。

一瞬で相手を制圧するスピードと爆発力、着実に手順を踏む動きの精度と多彩さ、そして強烈無比なプレッシャー。全てを兼ね備えたトップゲームをもってフェザー級の世界的強豪たちを連破したムラサキが、ライト級の世界トップ相手にどう戦うのか。興味は尽きない。

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【EUG01】アンディ・ムラサキ、金字塔レビュー─01─ケネディ・マシエル&ジアニ・グリッポを連破

【写真】衝撃の黒帯デビューとなったアンディ・ムラサキ(C)EUG

3日(土・現地時間)、ラスベガスにて新興プロ柔術団体EUG (EVOLVE UR GAME)プロモーションズの旗揚げ大会が開催された。記念すべき第1回大会の目玉は、優勝賞金1万ドルを賭けた道着着用160パウンド以下級の8人トーナメントだ。

世界的強豪がズラリと顔を揃えたこのトーナメントの模様を、黒帯デビュー戦にして驚愕の戦いを見せたアンディ・ムラサキの活躍を中心にお伝えしたい。
Text by Isamu Horiuchi

豪華極まりない今回のトーナメントの顔ぶれ&初戦の組み合わせは以下の通りだ。

マテウス・ガブリエル(ブラジル・2019年世界柔術フェザー級優勝)
ジョナタ・アウヴェス(ブラジル・2020年パン大会ライト級優勝)

マーシオ・アンドレ(ブラジル・2019年世界柔術フェザー級準優勝)
アイザック・ドーダーライン(米国・2019年ブラジレイロフェザー級優勝)

ケネティ・マシエル(ブラジル・2019年ADCC世界大会66キロ以下級準優勝)
アンディ・ムラサキ(ブラジル・2020年パン大会茶帯ライト級&無差別級優勝)

ジアニ・グリッポ(米国・2018年パン大会フェザー級王者)
ジョニー・タマ(エクアドル・2019年ノーギワールズライト級優勝)


体重リミットの160パウンドは、IBJJFの階級でいうとフェザー級とライト級の中間あたり。普段ライト級で戦っているアウヴェス、ムラサキ、タマあたりはフェザー級を主戦場とする他の選手たちより少々体格では有利と思われた。それもあって事前の優勝予想でトップを走っていたのは、2019年に黒帯を取得して以来ライト級で快進撃を続けるジョナタ・アウヴェスだった。

この世界的強豪ひしめくトーナメントにて、今回黒帯デビューを迎えたのが日系ブラジル人の両親を持つアンディ・ムラサキだ。インパクトジャパンBJJに所属し日本でティーン時代を過ごし、その無類の強さで当時から将来の世界王者候補と呼ばれていたムラサキは、その後渡米してカイオ・テハの教えを受け、やがてアトスへ。

2019年の世界柔術紫帯ライト級3位、2020年にはヨーロピアン大会茶帯ライト級優勝、さらに同年のパン大会では茶帯ライト級と無差別級の完全優勝を果たしたムラサキは、年末にアンドレ・ガルバォンから黒帯を授けられた。ちなみに上記のパン大会無差別級決勝の相手は、現在SUGで旋風を巻き起こしているメイソン・ファウラーで、同大会スーパーヘビー級茶帯の部を制したSUG無差別級王者相手に、ムラサキはスイープ、パス、マウントを奪って完勝してみせた。

さて今大会。ムラサキは1回戦でコブリーニャの息子ケネディ・マシエルと対戦。今年2月のF2W 163においてディエゴ・パト・オリヴェイラに完勝して道着ライト級王座を防衛したマシエルのオープンガードを、ムラサキは低い体勢からの強烈なプレッシャーで封じ込め、優位に試合を進めてゆく。

途中、ハーフガード上で脇を差して足を抜きかけるニアパスの場面を作ったムラサキは、ポイント0-0ながら文句なしのレフェリー判定勝利。黒帯初戦にして、横綱相撲と形容したくなるような戦いぶりで世界トップクラスの相手に快勝した。

準決勝のムラサキの相手は、 1回戦でジョニー・タマの股間をくぐって上を取り制したジアニ・グリッポ。引き込んだグリッポのラッソーガードを、ムラサキは初戦同様の重い重いプレッシャーで潰してゆく。

ならばとグリッポが仕掛けたデラヒーバからのスイープを堪えたムラサキは、右膝でニースライスを仕掛けつつ、瞬時にグリッポの左脇を差す。さらに完全に胸を合わせてから左腕で枕を作り、グリッポの首を圧迫したムラサキ。世界トップレベルのガードゲームを誇るグリッポを全く動けない状態に追い込んだ上で最後に右足を抜きみ、まさに完全制圧の形でパスガードを決めたのだった。

が、衝撃はこれに留まらなかった。そのまま抑えこみ続けたムラサキは、さらにステップオーバーしてマウント、と思いきやグリッポの左腕を超えて三角絞めをロックオン。グリッポの右腕を流すまでもなく、きわめてタイトな形で締め上げてタップを奪った。

長年世界トップで戦い続けるグリッポからの完全勝利──これ以上はないほどの強烈なインパクトとともに、ムラサキは決勝進出を決めた。

<この項、続く

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