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【ONE FN16】正念場、三浦彩佳─01─「少しずつ普通の人と同じことができるようになってきているんです」

【写真】インタビューの一番下にあるABEMAのバナーとも、全く違います。三浦選手は長南さんだけでなく、ABEMAの担当の人にも文句を言って良いでしょう(笑)(C)SHOJIRO KAMEIKE

4日(土・現地時間)にタイはバンコクのルンピニー・スタジアムで開催されるONE Fight Night16で、三浦彩佳がモン・ボーと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

現在はグラップリングマッチを含めて、ONEで3連敗中の三浦が1年8カ月振りにMMAを戦う。相手はストライカーで、ベルト挑戦も近いであろうモン・ボーだ。そんな強豪との試合を控える三浦が日本を経つ前日、現在の練習環境と自身の成長について語ってくれた。


――リモート画面が繋がった瞬間、髪の色とコーンロウのために別人かと思いました(笑)。

「アハハハ。前回のMMAが去年の4月で、その時は試合の2週間前に練習で頭をカットしてしまいコーンロウが編めなかったんです(苦笑)」

――そうだったのですね。よく長南亮TRIBE代表のSNSに登場する姿と違うので驚きました。

「長南さんのSNSは、もうちょっとカワイイ姿を乗せてほしいですよね(苦笑)。いつもブッサイクな姿ばっかり……。もう10年もTRIBEにいるからか、そんなところばかり狙っていて」

――もうTRIBEに入って10年になるのですか。長南さんが現役を引退してから、ちょうど10年になります。

「おそらく男女含めて――コンスタントに試合に出ている選手の中では私が一番、TRIBE歴が長いと思います。それにしても、もう長南さんが引退されてから10年も経つんですね……。その頃にTRIBEが出来て入会し、長南さんの引退試合の2週間後に私がグラップリングの試合でデビューしていて」

――10年もの年月を過ごしてきたTRIBEとは三浦選手にとって、どういう存在ですか。

「もう自分の家に近いというか……。自宅は帰って寝るだけのもので、家よりもTRIBEにいる時間が長いかもしれないです」

――女子選手が多いMMAジムも増えてきました。特にTRIBEはあれだけ屈強な男子選手が集まる中で、三浦選手がTRIBEそして長南代表についてきた一番のポイントは何ですか。

「長南さんって、男女の区別がないんです。男だろうと女だろうとファイターとして、やるべきことをやっていないと注意される。練習も動けていないと檄が飛ぶ。今は他のジムへ出稽古に行くようにもなりましたけど、やっぱり自分が強くなるためには長南さんが指導してもらうことが一番なんだろうと思っています。長南さんも自分に厳しく接してくれるし、私も自分自身に対して厳しくできるといいますか」

――なるほど。出稽古といえば、現在は渡辺華奈選手とも練習しているのですね。

「はい。YouTubeでのコラボがキッカケですね」

――YouTubeでのコラボとは……。

「YouTubeの企画で渡辺華奈さんは柔道の乱取り稽古をお願いしたんです。そのあとTRIBEへ行ったら長南さんから『渡辺華奈さんとの企画どうだった? 勝てたのか?』と聞かれて。私が『いやぁ、勝てなかったです』と答えたら、『じゃあ勝てるまで渡辺華奈さんのところに行って来い』って(笑)」

――アハハハ、勝てるまで(笑)。

「強い女子選手と練習できる機会は少ないから、お願いしよう――と。それがキッカケで今は華奈さんとスパーリングはもちろん、フィジカルトレーニングも一緒にやらせてもらっています」

――そうしたなかで、最近ご自身の中で伸びていると感じられる部分はありますか。

「えっと……10年も格闘技をやっていると、なかなか伸びているところってパッと目に見えにくいと思うんです。もともと私はすごく運動神経が悪くて、他の人が当たり前にできることが、私はできないということも多かったんですよ。それがTRIBEの堀江登志幸さんというトレーナーさんのおかげで、すごく足が速くなりました」

――……足が速くなった!?

「800メートル走で20秒ぐらい縮まりました。あとは球技も全然できなかったのに、ちゃんとボールを投げられるようになって。するとシィオン・ヂィンナン戦で少しパンチが当たるようになったりとか。少しずつ普通の人と同じことができるようになってきているんです」

――それだけバランスや体の使い方が向上してきたということですね。

「そうです、そうです! ボールの投げ方なんて、いつも他の人に笑われるレベルでした。『お前には他の人のフォームが、どういうふうに見えているんだ?』って(苦笑)。でも堀江さんは『彼女の頭の中では、こう見えている。だから、こう修正すれば正しく投げられるようになる』と、しっかり教えてくれて。それが少しずつMMAにも生きてきていると思います」

――シィオン・ヂィンナン戦でパンチが当たったこと以外に、トレーニングの効果を感じた時はありますか。

「できることが増えてきて、一つのことに固執しなくなりました。もちろん最終的には、やることを一つに絞ることもあるとは思います。でもその時にパニクることなく、考えることができるようになったんですよ」

――一つのこと……それは「あやかロック」、首投げから袈裟固め→アームロックという極め技のことですね。これまでの試合では、あやかロックが極まらない場合に焦ることも多かったのですか。

「必死すぎてパニクっていることにすら気づいていなかったのですが、周りから見ると十分にパニクっていたそうです(苦笑)。それが今は他の動きもできるし、セコンドの声も聞こえるようになる――試合中にパニクると長南さんの声すら聞こえなくなっていて」

――その状態で6連勝してONE世界王座に挑戦していたわけですよね。素質で戦っていた部分のほうが大きかったのでしょうか。

「はい、そういうことかもしれません。今の私は違うと信じたいです。でもそれは結果で示すしかなくて。ダニエル・ケリーとのグラップリングマッチも、周りから『良い試合だったね』と言われることが多いんですよ。そう言ってくれるのは嬉しいけど、私としては勝っていないので……。今はMMAとグラップリングマッチで3連敗中という状況ですから、とにかく次の試合は勝って落ち着きたいです」

■放送予定
11月4日(土・日本時間)
午前9時00分~ ABEMA格闘チャンネル

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【Pancrase337】新居すぐるが振り返る、KOPT&シザースチョーク「川尻さんが『突き詰めた方が良い』と」

【写真】考えて、努力する。そのイメージを持たせないところが、格好良い(C)MMAPLANET

9月24日、東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されたPANCRASE337のメインイベントで亀井晨佑に一本勝ちしてフェザー級KOPを戴冠した新居すぐる。
Text by Takumi Nakamura

ロングリーチと打撃力を誇る亀井と果敢に打ち合い、右ヒジ・右ストレート効かされながらも、最後は得意のアームロックからのシザースチョークで亀井を絞め落とした。どれだけ対策されていても極まる必殺技=アームロック+シザースチョークはどのようにして磨かれたのか。またパーソナルトレーニング中心で整えたという練習環境についても訊いた。


――Pancrase337で亀井選手にシザースチョークで一本勝ちし、フェザー級KOPとなった新居選手です。試合から約1カ月が経ちましたが、どんな変化がありましたか。

「チャンピオンになれたことは純粋に嬉しいですけど、僕はもう33歳で、ここでずっと喜んでいたら時間がもったいないというか。このベルトを手土産に強い選手を倒したいと思っているので、すぐ次に向けて動き出そうと思いました」

――それでは試合についても聞かせてください。試合全体としては打撃の打ち合いもありつつ、最後は一本勝ちという展開でした。

「試合が終わって、もっと寝技の展開を増やしていたら、あんなにダメージを受けることなかったなと思いました。率直に寝技だけだったら、僕とは差があったと思います。ただ今後のことを考えたときに、今までやらなかった殴り合いをやったり、倒れそうなところで踏ん張って一本勝ちできたことはいい経験になりました」

――スタンドでは亀井選手の182センチという長身&ロングリーチとジャブをどう攻略するかが一つの鍵だったと思います。どんな準備をしていたのですか。

「今までやった選手の中で一番背がデカかったんですけど僕はK-1、Krushで試合をしている大沢文也やブハリ亜輝留と練習していて、亜輝留は亀井選手と身長が同じで、文也はジャブがきれいで上手い。2人と練習してリーチとジャブに慣れて当日びっくりしないように準備していました。

実際1Rの終盤まで想定通りだったんで、全く焦らず試合ができていたんですよ。でもそこでヒジをもらって、焦っちゃったんです。そしたら今度は右ストレートをもらって鼻が折れて。そこから距離感をミスって、ビビらなくてもいい距離でビビってパンチをもらって…という展開になっちゃいました」

――2Rはどのようなことを考えて試合に入ったのですか。

「正直、亀井選手のパンチをもらって記憶が飛び飛びなんですけど、パンクラスのMMAグローブってRIZINと比べるとちょっと薄いんですよ。薄いグローブの方が痛いけど脳が揺れる感覚はなかったので、これだったらなんとか耐えられるなと思いました。でも耐えられちゃう分、痛いパンチを何発ももらったんで、それはそれで最悪でした(苦笑)」

――フィニッシュはシングルレッグ→バックテイク→スナップバック→アームロック→シザースチョークという流れるような動きでした。一連の流れは得意な動きですか。

「あれは練習したものがそのまま出ました。前回RIZINで飯田健夫とやったあとに、仲間から『すぐるはスクランブルになったら強いけど、そこにいくまでのレスリングがないから、レスリングを覚えたほうがいいんじゃない?』と言われて。

僕も同じことを思っていたんですよ。それで早稲田出身で、レスリングでオリンピックを目指している安楽龍馬のパーソナルトレーニングを受けるようになって、シングルレッグからバックを取る動きはずっと練習していました」

――レスリングを課題にしていたのですか。

「僕は柔道出身で、柔道的な組手はできるんですけど、あれは密着しないといかせないし、そこに行くまでに打撃をもらっちゃうんですよね。でもレスリングが出来たら遠い間合いからでも組みつけるので、レスリングを覚えたことで打撃をもらわずに組めるようになりました」

――マンツーマンでレスリングを指導してもらう形なのですか。

「僕が受け手を用意して、安楽に教えてもらう形です。安楽の指導がいいのはMMAにアジャストしたレスリング技術で、今の僕に必要なものだけを教えてくれるんですよ。例えば僕がレスリングを強化したいと思った時に、一からレスリングの基礎を覚えようと思ったら時間がない。安楽はいい意味で端折るところは端折って、本当に大事な技術だけを指導してくれるんです。しかも安楽は現役バリバリのトップレスラーなんで、レスリング技術そのものも最先端なんですよ。僕はテイクダウンして寝技になったら絶対極める自信があるんで、レスリングを覚えて自分のMMA全体がレベルアップしたと思っています」

――シザースチョークは1Rにも狙っていた技ですよね。

「はい。基本的にアームロックとシザースチョークをセットで使って。

相手がアームロックを警戒したらシザースチョーク、シザースチョークを警戒したらアームロックを極めるイメージです」

――アームロック&シザースチョークは新居選手の必殺技になっていますが、いつ頃から使い始めた技なのですか。

「MMAを始めた頃は寝技とか関節技をちゃんと教えてくれる人がいなくて。僕がアウトサイダーに出ていた時期に佐野哲也さんのジムに練習に行かせてもらったことがあったんです。

そのときにパンクラスで試合をしていたABさんにボコボコにされて、ABさんに『僕、技を知らないんで何か教えてもらえますか?』と聞いた時に教えてもらった技がアームロックとシザースチョークだったんです」

――AB選手からのアドバイスが原点だったんですね。

「それからアームロックとシザースチョークを練習していたのですが、それしか技を知らないわけですよ。その頃に川尻(達也)さんと練習することがあって、ABさんの時と同じように『僕、アームロックとシザースチョークしか知らないから、何か技を教えてもらえますか?』と聞いたら『お前のどこからでもアームロックを取りにいくスタイルはめちゃくちゃいい。必殺技は警戒されても極まるものだから、それを突き詰めた方がいいよ』と言ってもらったんです。

そのアドバイス通りにアームロックの練習を続けていて、2015年にあったVTJ GRAPPLERS CROWN 2ndという組み技の大会で柔術の世羅智茂選手にシザースチョークで一本勝ちしたんです。僕、組み技の試合に出たのが初めてだったから世羅選手のことを知らなかったんですけど、あとで色々と世羅選手のことを知って、アームロックとシザースチョークに自信を持てるようになりました」

――一つの技にそこまでの歴史があったんですね。

YAWARA柔術アカデミー村田良蔵代表。SJJJF代表理事でもあり、3月19日にはグラップリング大会=KIWAMIをGRACHANと併催している

「ただ、そうはいっても我流で練習を続けていたのでMMAの試合では対策されて、なかなか極められなくなったんです。

そうやって伸び悩んでいる時期にYAWARA柔術アカデミーを紹介してもらって(村田)良蔵先生と出会い、寝技の細かい基礎を教えてもらって、寝技のレベルがぐっと上がったんです。そこでアームロック&シザースチョークが“得意”技から“必殺”技に変わりました」

KIWAMIで新居は小見川道大をシザースチョークで破っている

――まさに紆余曲折を経て磨かれた技なんですね。例えば他の選手のアームロックを見ていて「こうすれば極まるのに…」と思うことはありますか。

「単純に同階級の選手に力負けしたことが一回もないんで、基本的に(アームロックを)取れないわけがないと思ってやってます(笑)。実際に2年前から筋トレはやめて、その分の時間を技術練習に当てています」

――格闘技を始めた頃からパワーには自信があったのですか。

「もともと柔道出身なんですけど、高校時代の柔道部のメンバーがみんな身体が小さかったんです。それで先生がデカいやつらに力負けしないようにむちゃくちゃ筋トレをやらせてたんです。それで力が強くなりました」

――昨年7月のハンセン玲雄戦から4連勝を収めていますが、レスリングや寝技以外で変えたことはありますか。

「その年の2月にRIZINで山本空良に負けて、そこから仕事を辞めて格闘技に専念しようと思ったんです。それまで自分は本当に練習が嫌いで、技術練習なしでスパーリングだけ参加するみたいな感じだったんです。でも山本戦のあとに各ジャンルにパーソナルトレーナーをつけて、格闘技のノウハウを学ぼうと思いました。それこそ柔道で培ったフィジカルとアームロック&シザースチョークだけで、ある程度やれていたわけだから、今の自分には伸びしろしかないし、ちゃんと練習すれば絶対に強くなれると思いました」

――打撃は誰の指導を受けているのですか。

「RISEで活躍して森本”狂犬”義久たちを指導していた青木利康さんですね。週2回、青木さんにミットを持ってもらっています。練習環境としては打撃は青木さん、レスリングは安楽、寝技は良蔵先生に教わって、出稽古でMMAのスパーリングをやるという感じです」

――今日新居選手を取材していて、ジムに所属せずにパーソナルトレーニングで練習環境を整えるという考え方が面白いと思いました。

「本当は僕もどこかジムに入りたいんですけど、僕みたいに週6日遊んでいる選手は行きづらいじゃないですか(笑)。二日酔いのまま練習にいくと迷惑かけちゃうし、周りの選手の目も気になるし。それを考えるとパーソナルトレーニングを受ける方が楽なんですよね」

――そういう理由でしたか(笑)。でも必要なものを教えてもらえる、短期間で結果を出すという意味では新居選手に合った練習環境ですよね。

「今日の取材でも分かってもらえると思うんですけど、僕ってものすごく特殊な選手じゃないですか。ずっと我流でやってきて、使う技も偏っていて。パーソナルだと、それを修正するんじゃなくて、長所として伸ばしてくれたうえで、足りない部分を補ってもらえるんですよね。結果的に今のパーソナルを受けて、それを自分の頭で組み立てるという練習方法が合っていると思います」

――ちなみに新居選手はタイトルマッチの記者会見でも「飲んで遊んでいてもチャンピオンになれる。それが若い選手に夢を与える」とコメントしていましたが、パフォーマンスではなく本当にそのくらい遊んでいるのですか。

ノーネクタイ&襟を立てる。いわゆる遊び人スタイルで調印式に出席していた

「はい(笑)。

いつも試合の一カ月前から禁酒するんですけど、減量に入るとどんどん調子が良くなっていきますね」

――新居選手はTiktok・YouTubeの「クラブセキュリティあるある」動画でも人気ですが、格闘技で結果を出すことへのこだわりは?

「今まで生きてきて、自分の意思でやろうと思ったことがクラブセキュリティとMMAだけなんです。柔道は先輩が怖くて辞められなかっただけだし、どんなスポーツもバイトも長続きしなかったんで、その2つは絶対に続けようと思ったんです。もともと僕は欲がない性格で、後輩の阿部大治とか武田光司がチャンピオンになって活躍しているのを見ても、心のどこかで自分には無理だと思っていて。

でもRIZINで負けた時に『最後に思いっきり格闘技を頑張ってみよう』と思って、仕事も辞めて格闘技に専念したら結果が出るようになって、もっと上を目指そうと思いました。それで格闘家としての発言権が欲しくてパンクラスでベルトを巻くという結果を残したかったんです」

――失礼ながら自分も初めて新居選手を取材させてもらい、イメージや印象が変わりました。

「去年自分のなかで3年プランというものを立てていて、2022年はSNSを頑張って知名度を上げる。2023年は格闘技で結果を出して知名度に追いつく。2024年はその2つでもっと結果を出して稼ぐ& 成功する、なんです。だから今年はほとんどSNS用の動画を撮ってないし、格闘技に全振りしようと思ってやってきました」

――そういった人生プランがあったうえでの、SNS活動だったんですね。ではこれからの格闘家としての目標を教えてください。

「パンクラスのチャンピオンとして、パンクラスを代表して試合をしていきたいですし、今年の格闘技の目標が3つあって、RIZINにリベンジする(RIZINで初勝利する)こと、パンクラスでベルトを巻くこと、RIZINの大晦日で試合をして勝つことなんです。最初の2つは達成することが出来たので、あとはチャンスを待つだけですが、RIZIN大晦日に出るという目標を実現したいです」

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