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Finishers Kombat04 Kombat04 MMA MMAPLANET o YouTube 岩本健汰 海外 高橋SUBMISSION雄己

【ECI】エメラルドシティ招待。32人T出場の高橋Sub雄己に立ち塞がるOver Time制度に改めて着目!!

【写真】米国でも高橋の足関節が通用することはFinishers Kombat04で証明された。ワンマッチでなくトーナメントの勝ち抜き方という角度から、OTの難しさに着目(C)MMAPLANET

29日(土・現地時間)、ニューヨーク州シセロで開催されるEmerald City Invitational06のバンタム級トーナメントに、日本の高橋Submission雄己が出場する。
Text by Isamu Horiuchi

一昨年から活動を開始し、各階級の有力選手を集めて16人トーナメントを開催してきた本大会だが、今回は倍の32人のバンタム級選手を招聘、優勝するには5試合勝利しなくてはならないという厳しいものだ。


国内のグラップリング文化創出と市場拡大という大いなる野望を胸に、大会運営、指導、教則映像リリース、番組作り等様々な活動を行う高橋は、選手としても精力的に海外進出を実行している。

昨年6月には英国で行なわれたプログラップリング大会Polaris 20で判定勝利したのに続き、今年の2月26日にフィラデルフィアで行われたFinishers Kombat04でラミロ・ヒメネスから内ヒールで21秒勝利。この実績が評価されて本大会への出場権を得た。

試合時間は初戦から準決勝までは6分で、決勝のみ10分間。留意したいのはいわゆるEBI(エディ・ブラボー・インビテーショナル)形式のルールが採用されていることだ。つまり本戦はポイント一切なし、決着は一本のみの「サブミッションオンリー」システム。そこで決着がつかない場合には独自のオーバータイム(OT)戦が行われる。北米の各大会で採用されることが多いこのOTのルールについて、改めて詳しく見てみよう。

OTに突入すると、選手は攻撃側(先攻)と防御側(後攻)に分かれる。今大会では、その選択権は本戦でレフェリーが優勢と判断した側に与えられる(コイントスで決められる場合もある)。

バックポジション(C)DAVE MANDEL

そして攻撃(先攻)側が「バックポジション(※シートベルトポジション=両足フックを入れて、襷掛け)」。

もしくは「スパイダーウェブポジション(攻撃側が上から腕十字を狙い、守る側がグリップを組んだ状態」を選択し、レフェリーの合図とともに攻防が開始。

スパイダーウェブ(C)DAVE MANDEL

攻撃側がタップを奪うか防御側がエスケープを果たした場合。

あるいは2分が経過したら攻守交代となる。今度は後攻側がポジションを選択して攻撃に回る番だ。

最初に先攻側が一本を奪った場合は、後攻側はそれよりも短い時間で一本を取り返す必要がある。それができれば勝利、できなければ敗北だ。

先攻側が一本を奪えなかった時は、後攻側が自分の攻撃時に一本を奪えば勝利。(先攻側に続いて)後攻側も一本を奪えなかった場合は、試合は第2ターンに突入し、再び先攻側が攻撃体勢を選択して攻防が開始される。

もしターンが3回繰り返され、どちらも一度も一本を奪えなかった場合は、全3ターンでそれぞれがエスケープに要した時間を加算して、合計時間が短かった選手が勝利を宣告される。

当然ながらOTで勝つためのスキルは、通常のグラップリング戦のそれとはかなり異なったものとなる。極端な話、OTだけならパスガードやスイープの技量は一切必要なく、爆発的なエスケープや強烈な極め、ポジションのキープ力がものを言う。足関節やギロチンの攻防にいくら秀でていても勝てず、必要なのはもっぱらバックチョークと腕十字周りにおける攻守の技量だ。

OT戦をどれだけ経験、研究しているかも大きい。どういう場面でどちらのポジションを選択すべきか。いくらか選択の余地があるスタート時の手の位置は、どれが自分に一番適しているか。

素早い極めやエスケープを果たすため、あるいはポジションを長くキープするために、スタートの瞬間に自分の打つべき最善手はなにか。それらを知るのに、実戦による試行錯誤に勝る手段はないだろう。

このようなEBIルールでは、本戦(今大会は決勝10分以外は6分間)を防御に徹してやり過ごし、OTに勝負を賭けるという戦略も可能だ。実際、今大会よりさらに本戦タイムが5分と短いSubmission Undergroundでは2分を経過した辺りから、防御に徹するグラップラーも見られた。

結果、EBIやSUBにおいてグラップリングの総合力で明らかに優っていると思われる選手が、OTに持ち込まれて敗れることも珍しくない。

例えば昨年11月にロスで行われたSOS(サブミッション・オンリー・シリーズ)のミドル級トーナメント出場した岩本健汰は、決勝で自分より遥かに体格で勝る相手と対戦し、本戦はマウントを奪うなど圧倒するも極めきれずOTに持ち込まれてしまう。

ここでコイントスで先攻となった相手にチョークを極められてしまった岩本は、次に逆転を期してスパイダーウェブを選択するも逃げられて敗れた。

高橋の最大の武器は、言わずと知れた足関節技。昨年8月には最先端の足関節技術の発展を独自の視点から整理した教則DVD 「LEG LOCK 4.0」をリリースしており、この分野では日本屈指の知識と技術を誇る。無数のエントリーを持ち、上下どのポジションからでも一瞬で形に入るその卓越したスキルは、まさにサブミッションオンリールールに適していると言える。

が、それはあくまで6分間(決勝のみ10分)の本戦内の話。試合がOTに持ち込まれてしまうと、IREのように50/50とサドルからスタートでない以上、フットロッカーとしては厳しい状況に追い込まれる。

加えて他の多くの出場者と異なり、この形式の試合経験がない点も不利に働くだろう。できればどの試合も本戦内で相手を極めてしまいたいところだ。

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
4月30日(日・日本時間)
午前6時00分~Flo Grappling

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ABEMA BELLATOR Finishers Kombat04 Kombat04 MMA MMAPLANET o UFC YUKI アンドリュー・タケット エステヴァン・マルチネス ガブリエル・ソウザ ケネディ・マシエル ザック・エルファルナーニ ジアニ・グリッポ ジオゴ・ヘイス ジャンカルロ・ボドニ マニー・ヴァスケス ヴァラー・ボイヤー 高橋SUBMISSION雄己

【ECI06】高橋Sub雄己、EBIならぬECI=Emerald City Invitationalバンタム級Tに出場

【写真】10thPlanet効果が見られるか── (C)YUKI TAKAHASHI

4月29日(金・現地時間)、ニューヨーク州シセロで開催されるEmerald City Invitational06のバンタム級Tに高橋Submission雄己が出場する。

高橋は2月26日にフィラデルフィアで行われたFinishers Kombat04でラミロ・ヒメネスを内ヒールで21秒殺したばかり。同イベントのバンタム級王座挑戦が約束されたが、より規模の大きなグラップリング大会への出場権を得た。

エメラルドシティとは緑豊かの街を指す言葉で、ワシントン州シアトルがこの名で呼ばれることが多いが、NY州の中央部の商工業都市で冬は豪雪地帯のシラキュースもこの名を用いている。そのシラキュース郊外のシセロで開かれる同大会は、同市にあるエメラルドシティ柔術が母体となっている。


活動2年で5大会=ウェルター級、フェザー級、ミドル級、ライト級、無差別級の16人制Tを実施してきたECIだが、今回は男女バンタム級16人Tが行われ、高橋が出場することとなった。

過去にウェルター級TでPJ・バーチやアンドリュー・タケット、フェザー級ではケネディ・マシエル、エステヴァン・マルチネス、ガブリエル・ソウザ、ジアニ・グリッポ、ミドル級にはジャンカルロ・ボドニ、オリヴィエ・タザら錚々たるグラップラーが出場してきた。

EBIルールが採用され、1回戦から準決勝までは6分、決勝戦は10分というECIバンタム級T。まず注目したいのは2021年ノーギワールド黒帯ルースター級優勝のエステヴァン・マルチネスだ。

ADCC66キロ級世界王者のベイビーシャークことジオゴ・ヘイスとWNOで戦いレフ判定負け、階級的に北米では5キロや7キロ重い階級で戦うのが常で敗北も少なくないが、ECIではフェザー級Tにも出場経験があり、今大会の優勝候補筆頭であることは間違いない。

そのマルチネスにレフ判定で敗れたことがマニー・ヴァスケスも、ある意味注目したいファイターだ。ヴァスケスはキャリア12勝4敗のMMAファイターで、Bellatorやコンテンダーシリーズ出場経験もある。いわばMMAでは高橋より格上となる。

さらにジェイソン・カウチ属するデイジーフレッシュこと、ペディゴ・サブミッションファイティングの新星ザック・エルファルナーニ、2022年ヨーロピアン&パンノーギ茶帯ライトフェザー級優勝のヴァラー・ボイヤーらなどは、要注意が必要な相手といえる。

またFinishers Kombat04で高橋に敗れたラミロ・ヒメネスもエントリーしており、高橋はともかくヒメネスはリベンジの機会を虎視眈々と狙っているだろう。

女子バンタム級にはUFC女子フライ級ファイターのミランダ・メーヴェリックも参戦しており、今後はEBIだけでなくECIも動向を追う必要があるグラップリング大会の一つになるやまもしれない。

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Level-G MMA MMAPLANET o 世羅智茂 島村直希 高橋SUBMISSION雄己

【Level-G】グラップリング普及へ。高橋Sub P誕生。KROSS x OVERとプロ&アマ組み技大会Level-G発進

【写真】島村直希KROSS x OVER代表と高橋Submission 雄己Level-Gプロデューサー(C)KROSS X OVER

16日(日)に東京都新宿区の新宿FAVEで開催されたKROSS x OVER19内で高橋Submission 雄己がプロデューサーとしてKROSS x OVERと協力してグラップリング団体Level-Gを立ち上げることが発表された。

MMAでもなく柔術でもない。グラップリングという部門を日本に根付かせようと奮闘する高橋の次なる手は、Level-Gを旗揚げし英国のグラップリング大会=Polarisルールをベースとしたサブオンリーのプロマッチ及びアマチュアを整備していくことだった。


プロは10分1R、アマ上級はプロと同様のルールと試合時間、中級は5分1R、初級は3分1Rで中級以上はヒールフックもネック・クランクも有効となる。

まず11月17日の次回KROSS x OVER=GENスポーツパレス大会でプロ3~4試合とKROSS x OVERのアマチュア大会=NEXT.03でアママッチも実施される。

気になるプロマッチだが、まずは世羅智茂の出場が決まった。観賞スポーツとしてMMAの──、参加スポーツとして柔術の後を追う形のグラップリングだが、だからこそ様々な取り組みにトライできる良さがある。

引き続きLevel-Gプロマッチの対戦カードの発表を待ちたい。

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ADCC2022 MMA MMAPLANET o UFC   アンドレ・ガルバォン エドガー・クルーズ カイナン・デュアルチ ゲガール・ムサシ ゴードン・ライアン ニコラス・メレガリ ニック・ロドリゲス ラファエル・ロバトJr リョート・マチダ 堀内勇 平本蓮 高橋SUBMISSION雄己

【ADCC2022】高橋サブ&堀内勇がADCCを深掘り─04─。組み技界の平本蓮=ゴードン・ライアン

【写真】ゴードン・ライアンこそが、ミスター・グラップリングなのだる。ガルバォンとの物語も終幕を迎える(C)SATOSHI NARITA

いよいよ、スタート直前。17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターで開催される2022 ADCC World Championship。2年に1度のグラップリング界最大のトーナメントが、コロナの影響で3年振りに開催される。

グラップリング界においても特殊なポイント制が用いられながら、世界最高峰の組み技の祭典を高橋Submission雄己とMMAPLANETグラップリング・ライター堀内勇氏が、独断と偏見と愛情をもって深堀り。最終回は66キロ級と77キロ級以外の気になる選手について話を続けてもらうと、ゴードン・ライアンとグラップリングの今後という落としどころが見つかった。

<高橋Submission雄己&堀内勇、ADCC深堀対談Part.03はコチラから>


──66キロ級と77キロ級を相当に深く話していただきましたが、ここからは階級に関係なく気になる選手を挙げていただけますか。

高橋 僕は99キロ以下級のエドガー・クルーズが気になっています。

立ち技が強い、27歳で最近黒帯になった選手です。ニック・ロドリゲスに勝っているんですよね。レスリングで攻めて、良い場面を創って。寝技にはあまりならないで99キロ級の上位入賞候補のニック・ロッドに勝っていることと、ADCCルールというところを考えると、クルーズはダークホース的に上にくると見て良いのではないかと。

堀内 その99キロ級では最近、ノーギを始めたニコラス・メレガリがどこまでいけるのかというのは興味あります。

ダナハーのところで練習して、あえて立ち技の練習をずっとしているような。一番最近の試合では、ラファエル・ロバトJrにボディロックで2度テイクダウンを奪っています。いわゆるレスリングではなく、ADCCで取れるようなテイクダウンでした。道着柔術では世界最強の1人なので、ノーギも着実に成長しているので。カイナン・デュアルチもこの階級にますが、道着だとメレガリが少し上だと思います。ただし、ノーギだとまだカイナンの方が有利かなと。そこを踏まえて、メレガリがどれぐらいトップに肉薄できるか楽しみです。

──しかし、ラファエル・ロバトJrはノーギでリョート・マチダにテイクダウンされているじゃないですか。

堀内 アハハハハハ。2006年、LA SUB Xですね(笑)。もの凄い昔の話で嬉しいです。

リョートが空手でなく、相撲で勝ったという。いきなりグラップリングの試合に出て、ロバトJrに勝つって……でも凄いネタをぶち込んできましたね(笑)。でも、あのあとMMAをやってゲガール・ムサシからテイクダウンを取っているし(笑)。ロバトJrも進歩しています。

──当時カリフォルニア在住、歴史の証人がここにいるということで(笑)。ではロバトJrネタはこれぐらいにして、他に注目の選手は?

堀内 やっぱり、ここ数年北米的グラップリングという短いサークリングのなかを引っ張ってきたのはゴードン・ライアンなので、やっぱりゴードンは見たい選手です。SNSを駆使し、WNOでは試合前にフィニッシュの仕方を書いた紙を渡して実際にその技で勝ってしまうとか、色々と話題を提供してきました。

アンドレ・ガルバォンに張り手をかますとか。その集大成が今回のADCCだと思います。ゴードンはSNSでガルバォンを精神的に攻撃し続けてきました。ついに頭にきたガルバォンが直接文句を言うと、叩かれたという流れで。ガルバォンは最近、これまでの流れを振り返って「ゴードンのトラップにハマってしまっていた自分を認める。SNSでATOSの仲間も攻撃され、コロナもあって心がおかしくなっていた。結果、ゴードンの煽りにまんまとハマってしまい、神から心が離れてダークサイドに落ちてしまった。SNSから離れられなくなって、携帯を何時間も見て夜も眠れない日が続いた」って動画で発表しました。

「私はゴードンを許す。これからは皆でハッピーに生きよう」という締めから、なぜかATOSのプロダクトは全て50パーセントオフのセールだっていう商売に行き着いていましたよ(笑)。

──もうギャクじゃないですか(笑)。

堀内 いやいや。『もう戦うだけだ』って集中しているという話をしたかったので(笑)。対してゴードンは相変わらず「俺は精神的にヤツをコントロールしている。俺はSNSでふざけて遊んでいるけど、計算ずくなんだ。SNSから離れられなくなるのも、離れるのも術中にハマっているんだ。格闘技でも勝てるけど、格闘技を使わなくても相手をやっつけることができる」って言っているんですよね。

日本だと平本蓮選手なんかが駆使していますが、SNSも含めた具体的なストーリーラインをゴードンは創っていて。その彼とガルバォンとの物語を一つの区切りとして見てみたいです。

──しかし、ガルバォンが敬虔なキリスト教徒振りを発揮していますが、彼の信じる神はステロイドの使用を認めてくれるのですね。『そこは良いんだよ』って言ってくれる神様と。

堀内 アハハハハ。

──それにしてもゴードン・ライアンは、そこまで注目を集める活動もしているのですね。

堀内 ジョン・ダナハーが「なぜ、ゴードン・ライアンはSNSでこれほど大きな存在になったのか」ということを語っていて。「世の中の人はほとんど劣等感、あるいはそれに似たモノを持って生きている。そこでゴードンのように圧倒的に自信しかない人間を見ると、2つの反応が起こる。強烈に憧れを抱くか、あるいは凄く嫌悪感を持つか。どちらにしてもゴードンから離れられなくなる」と機械的な声で言っていました。

高橋 グラップリングが発展していく行き先とはどこにあるという点において、やっぱり柔術と同じで見るより、やって楽しむDo Sportsなんじゃないかという話になるのですが、ゴードンがプロスポーツ的な目線で売ろうとしているのは、凄く興味深いです。新しいビジネスモデルを持ちこんでいる気がします。それをやって何かが動く土壌がもう米国にはあるということだし。

──ところでゴードンのSNSには、ジェネラルも反応するものなのですか。平本選手はそういう層を転がしているわけじゃないですか。

堀内 そこはゴードンも向うのインタビューで尋ねられて「グラップリングはDo Sportsだ。UFCはジムで殴り蹴りをやっていない人間が視るけど、グラップリングの会場にいるのは実際にやっている人間とその家族だけだ。そういう人たちがどんどん増えるというところまでは持って行けるけど、そこは限界がある」と言っています。でも、SNSの活動だけでなく、絶対的な強さあって教則動画を販売して相当な額を稼いでいます。だから「メイウェザーとかマクレガーにはなれないけど、一般レベルでいえば断トツのお金持ちレベルにはなれる」とも言っていますね。

広めるには限界のあるなかで、すそ野を広げて、そのなかでコンペティションだけでなく、収入面でもトップを取るのがゴードン・ライアンですよね。

高橋 そのピラミッドのなかで、どれだけ盛り上げるのか。本質はDo Sportsとしての裾野をどれだけ広げることができるか──ということなのでしょうね。そして、米国はピラミッド自体が大きくなっているといことですね。

──押忍、最後はグラップリングの未来をゴードン・ライアンから学ぶという良い締めになりました。高橋選手と堀内さん、今日はありがとうございました。ADCC世界大会を楽しみましょう。

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ADCC2022 JT・トレス MMA MMAPLANET o ONE Road to ADCC   ケイド・ルオトロ ゲイリー・トノン コナー・マクレガー コール・アバテ ジョゼ・アルド タイナン・ダウプラ タイ・ルオトロ ニッキー・ライアン 堀内勇 高橋SUBMISSION雄己

【ADCC2022】高橋サブ&堀内勇がADCCを深掘り─02─。77キロ級、柔術の神の子とADCCルール王

【写真】巧さは強さなのか。そして強さは巧さにどう対抗するのか(C)CLAYTON JONES/FLOGRAPPLING& SATOSHI NARITA

17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターで開催される2022 ADCC World Championship。2年に1度のグラップリング界最大のトーナメントが、コロナの影響で3年振りに開催される。

グラップリング界においても特殊なポイント制が用いられながら、世界最高峰の組み技の祭典を高橋Submission雄己とMMAPLANETグラップリング・ライター堀内勇氏が、独断と偏見と愛情をもって深堀り。第2弾は66キロの米国勢から、77キロ級の2人の優勝候補の対照的なスタイルについて話を続けてもらった。

<高橋Submission雄己&堀内勇、ADCC深堀対談Part.01はコチラから>


──話を蒸し返すと、ONEでトップグラップラーのグラップリングが頻繁に視られるようになるのは嬉しいのですが、それでもADCC欠場はやはり勘弁してくださいと気持ちになります。

堀内 やっぱりマイキーは個性が際立っていますからね。最近も『僕はピザとパスタしか食べない』なんてことを言いだして。朝はアサイーを食べて、毎日同じピザを食べているという話で。毎日ピザを食べて世界一になるって、ダイエット界や栄養学界の常識を覆しているんじゃないかって。

高橋 アハハハハ。

堀内 そういう彼が抜けるのは残念ですが、今大会はファブシリオ・アンドレイとかベイビーシャークなど、新しい力を知るきっかけになりますね。

──きっと勝てないという意見もありますが、そうなると『ちゃんと負けろよ』と思ってしまうんですよね。バトンタッチしてくださいって。ただ、チャトリはADCCで優勝した人間全員とサインするぐらいのつもりでいるんじゃないかと思います。マイキー不出場はさておき、他に66キロで注目すべき選手は?

高橋 ONEへの恨み節に関しては、ルールが違うから良いじゃないかなって。そりゃあ見たかったですけど、別競技といって良いほど違う。まぁサブオンリーのレフ判も納得できるルールではあるし、ソレはソレ。コレはコレじゃないでしょうか。

──じゃあRoad to ADCCに出るなよって……ってまだ恨み節が続いてしまいます。

高橋 それは……確かに(笑)。でも、やった相手がジオですからね。66キロ級で注目したい他の選手は、ゲイリー・トノンですかね。なんか期待値が高いです。66キロ級に落としてきて体が大きいから、細かい技術はさておき、立ち技も強いだろうし、極め力でいえば抜けている気がします。

あとトノンと同様に米国勢だと、コール・アバテは注目ですね。

優勝候補とまでは言えないですが、若くてそれなりに66キロ級のなかではデカい。伸びしろの多さも期待して、コールがどんなもんなのか凄く気になりますね。

堀内 僕もコール・アバテは楽しみにしています。17歳で、最年少です。

ベイビーシャークは20歳なのに子供に見えて、コール・アバテは17歳なのにやたらと落ち着いていて。態度も凄く偉そうだし(笑)。ただ戦い方は兄弟子のタイナン・ダウプラを彷彿させるというか。もの凄く圧力がある戦い方で、極めも正確でガチッと入る。力強くて楽しみです。

なんかお父さんが結構熱心で、子供の頃からやっていたようですね。そのお父さんがガレージで、『我々は過去のADCCの66キロ級の試合は全て見た』とか言っているんですよ(笑)。そうとうにお父さんが賭けているというのが伝わってきました。

高橋 僕もコールは期待で。後は敢えて名前を出すなら、イーサン・クレリンステンですかね。

堀内 トライスタージムでフィラス・ザハビの下で学び、その後はザハビの師匠格といえるジョン・ダナハーの指導を受けた選手ですね。

高橋 結局、ブラジル✖米国の様相になっていて、ADCCルールにおいてはブラジルが育んできた柔術スタイルが優る。そう思います。

──では77キロに移らせていただきます。世界中の誰もが見たい選手と、試合は別に見たくないけど勝てる選手。そのどちらが強いのか。

高橋 その通りですね(笑)。

堀内 見たい選手がミカ・ガルバォンで。この対談を万が一、あまり柔術に興味がない人が読んでくださっているとしたら、ミカ・ガルバォンの凄さってどういう風に伝えることができるんだろうって考えました。

──ありがたい限りです。

堀内 そして思い出したのが、コナー・マクレガーの言ったことだったんです。マクレガーがジョゼ・アルドを倒した時、「精度とタイミングはパワーとスピードを打ち負かす」という素晴らしい言葉を残しています。つまり精度とタイミングを持っている人間は、パワーとスピードがない。でもミカ・ガルバォンはその4つの全てを持っている。

──おおっ!!

堀内 柔術家に良く見られる、問答無用の重厚な圧力。ベースが強くて、プレスがもの凄く強い。

1度体重を掛けられたら、対戦相手はもうどうにもならない。ああいうファンダメンタルの柔術の圧力がありながら、反応速度が素晴らしく良い。相手の体に一瞬に反応して、素晴らしい体捌きで技を決めます。精度もスバ抜けて高い。それを全て持っているのは、ズルいんじゃないかっていうぐらいで(笑)。

他の人にはない。ちょっと人間離れしたモノを見ることができる。そんな喜びをミカの試合からは感じます。

──反応の良さは、道着でモダン柔術の攻防になった時も際立つようにも感じます。

堀内 タイ・ルオトロとは2度試合をして、ノーギでは競り負けて、道着だとボコボコにしている。それを見ても分かるように、ミカが柔術の神の子たる所以、強さが最も出てくるのは道着の試合ですよね。道着があって滑ることなく、相手がなかなか逃げられないので。ノーギだとタイのようにバランスの良い選手は、そこを凌ぎ切って自分のペースに持ち込むこともできないことはない。そしてノーギのなかでもサブオンリーの方が、ADCCより適しているんじゃいかと思います。

──それは?

堀内 やはり圧倒的なレスリング力があるとは、言えないので。そうなった時に、同じノーギでもADCCルールの権化のJT・トレスと戦うとどうなるのか。試合は別に見たくないと言われたJTとミカは対照的な2人なので、本当に興味深いです。

高橋 そうですね、ミカはレスだとたまに転がされている場面を見ますよね。しかも77キロ級だと身体的な圧力は他の選手より劣るような気がします。本当に堀内さんの見立て通りだと思います。

──JTの強さはともかく、彼の試合のどこを楽しめば良いでしょうか。

高橋 トーナメント全体の見方として、誰がJTを倒すのか。それで良いと思います。ディフェンディング・チャンピオンだし、何が凄いってルールへの対応力。

組み技の質量、技量は皆が高いレベルで拮抗している。そこでJTが勝ち抜き続けているのは、勝負どころを見極め、自分だけでなく相手の特性を理解している試合運びの上手さがあるからで。ここは受けて、ここでは2Pを取るという判断と実行力がともに正確です。そこが絶対王者たる所以で。

対抗馬としてスタイル的にも対照的なのが、ミカですよね。ミカを筆頭に、誰がJTを打ち破るのか。JTはちょっと可哀そうですけどヒール的な見方をしてもらうのが楽しいのではないかと思います。JTを優勝させたら、つまらなくなるぞ──みたいな(笑)。

──JT・トレス=北の湖ですね。

堀内 アハハハハ。

──ルールもポイントも違いますが、ルールを研究し抜いて、ルールに合った技を駆使してギリギリで勝つ。それってフィロソフィーとしては、完全にIBJJF柔術の強い人のソレではないでしょうか。そうなると、JTとの競り合いに負けないのは、同じフィロソフィーの持ち主──IBJJFルールに強い柔術家なのかと。JTは柔術では準決勝ぐらいで勝ち切れなくなることが多い印象がありますし。

高橋 確かに、ホントにそうですね。

堀内 FLOGRAPPLINGが77キロ級出場の各選手の練習風景を追っているカウントダウン映像を流していたのですが、そこで主要メンバーがお互いの印象を話しているんです。だいたい皆がJTに関しては、高橋選手が言ったように隙の無さ、ルールを知り尽くした戦い方だと言っています。

そのなかでケイド・ルオトロはATOSの後輩で「JTのことは尊敬している。JTは隙が無くてペースを掴むのに長けている。でも俺はそのペースを乱すことができる手が、いくつかあるんだ」って話しているんです。ケイドは凄く動きますから、JTの不動のペースを乱すよう、色々と仕掛けてくるのかと。特にスタンドが注目です。あと、もう一人はニッキー……ニッキー・ライアンでねす。

<この項、続く>

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ADCC2022 MMA MMAPLANET o ONE WNO Championships   ガブリエル・ソウザ コナー・マクレガー ジオゴ・ヘイス ジオ・マルチネス ファブリシオ・アンドレイ マイキー・ムスメシ メイソン・ファウラー 堀内勇 高橋SUBMISSION雄己

【ADCC2022】ADCCを深掘り─01─/高橋Sub&堀内勇。66キロ級はレス&柔術力でファブシリオ&ジオゴ

【写真】22歳のファブシリオ・アンドレイと比較すると20歳のベイビーシャークの童顔ぶりが凄まじい(C)CLAYTON JONES/FLOGRAPPLING

17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターで開催される2022 ADCC World Championship。2年に1度のグラップリング界最大のトーナメントが、コロナの影響で3年振りに開催される。

グラップリング界においても特殊なポイント制が用いられながら、世界最高峰の組み技の祭典を高橋Submission雄己とMMAPLANETグラップリング・ライター堀内勇氏が、独断と偏見と愛情をもって深堀り。第1弾は天才2人を中心に66キロ級について語ってもらった。


――昨年のWNO Championshipsに続き、1年振りに高橋選手と堀内さんに、グラップリング大会の見所を語ってもらうことになりました。まずはADCC世界大会、、まずは66キロ級からお願いします。

堀内 自分は予習でFight&Lifeの高橋選手のADCC2022ガイドを読ませていただいて、さすがの見立てというか。ファブリシオ・アンドレイのことを分かっていなかったのですが、記事を読んでチェックしてみたら『これはレスリングが強いわ』と(笑)。ADCCのルールを考えた時に、ファブリシオが本命というのは反論のしようがないと思いました。

だからこそ、僕はファブシリオのチームメイトでもあるベイビーシャークことと、ジオゴ・ヘイスに注目したいと思います。

──体のバネが異様にありますよね。

堀内 そこを頭に入れてMMAPLANETの読者の方には、彼の動画でのインタビューを見て欲しいのですが、本当に童顔なんです。中学生ぐらいにしか見えなくて、声変わりもしていない(笑)。ミカ・ガルバォンも含め、ファブシリオとジオゴ・ヘイスは同門なんですが、ミカが「米国のファミレスで食事をした時に、ジオゴ・ヘイスにキッズ・メニューが渡された」と話していて。

高橋 アハハハハハ。

堀内 今回の66キロ級はマイキーがいなくなったことで、強い選手はブラジルの若い選手に集約されたような状態ですけど、ジオゴ・ヘイスの可愛らしいキャラを認知していただければと。試合に関していうと南米予選の1回目の方を視ましたが、準決勝の同門対決でファブリシオに足関節で勝っています。でも、アレはいつも取ったり、取られたりしている延長戦上にあるものかと思いました。

それより決勝のジエゴ・パト戦、世界最高のガードプレイヤーのパトを相手に後半の加点時間帯のレスリング合戦になると、体力とレスリングの圧力でベイビーシャークの方が上回ってきて。反応が悪くなったパトからバックを奪いかけて優勢勝ちしました。

あの試合を見て、パトは再戦が実現しても正直勝てないと思いました。コレをやられると防ぎようがない。ADCCに必要なレスリングの消耗戦での強さをこの子は持っていますね。ADCCのレスリングってテイクダウンをされても、亀になって3秒過ぎればテイクダウンが無効になります。だからなかなかテイクダウンポイントが入らず、永遠にレスリングが続きます。

そういう風な展開になると、ファブシリオとジオゴがもう1度戦うとファブリシオが勝つかなというのは、正直なところですけど。でも、この強豪揃いのなかで決勝を勝ち上がってくることを考えると、ひょっとしてジオゴの方が強いかも。そういう見立てをしました。

高橋 トーナメント表が出ていないなかで、ワンツートップはファブリシオとジオゴだと思います。

──ファブリシオも体のバネが尋常ではないですね。

高橋 ジオゴがファブシリオからヒールで勝ったものの、試合で極められたモノって凄く残るから、2度同じモノは食らわないだろうというところで──僕はファブシリオかと。ポラリスで66キロ級のファブシリオが、88キロ級のメイソン・ファウラーをレスリングで吹っ飛ばしているのを見て、その強さは絶対だという想いを持っています。

いずれにせよ、ファブリシオとジオゴが一番の注目株です。全然、関係ないんですけどポラリスの時、ジオゴが隣の部屋でした(笑)。部屋を出るときに十字を切っていて、敬虔なクリスチャンなんだと。

──ファブシリオ・アンドレイのレスリング、裸の柔道のような技もありますよね。小内刈りからシングルレッグとか、大腰で投げた試合を見ました。あの背中からドンと落とせる柔道技はテイクダウンポイントを取り辛いADCCでも有効でないかと思いました。

高橋 立ち技のポイントになると、シングルレッグで引き倒したり、ダブルレッグでガチッと入るよりも柔道的な投げのほうが抑え込みっぽくなるので、ポイントになりやすい。そうなるとさらにファブリシオの線が濃くなりますね。

──この2人以外に名前を挙げるなら、道着世界一のパトと言いたいのですが、南米予選の決勝後にムンジアルの準決勝でジオゴと戦った試合を見て、道着を有効利用して最後は50/50でパトが勝ちました。柔術だから何も間違っていないです。と同時に、あの勝ち方を見て、ADCCでパトがジオゴに勝つことはないと感じました。

高橋 そうですね。パトはガブリエル・ソウザとやった試合が印象的で。切って、倒れないところを見せていますが、それでもゴリゴリに立ち技が強いファブリシオやジオゴに勝つ手札はないと感じました。消耗戦のレスリングとなると、攻め手の少なさが原因となってギリギリのところで勝てないと思います。

堀内 下手をするとレスリングが強い選手と当たって、ベスト4前に敗退ということもあるかと。

──道着柔術の世界のトップで、そっちが本職という気持ちが少しでもあると、諦めて引き込んで負けという展開も有り得るかと。

堀内 南米予選の決勝で、パトがボロボロに疲れた状態でバックを許すと、ベイビーシャークが離れたんです。『最大のチャンスで離れた。何をやっているんだ』という意見があるなかで、ジオゴは『あの場面ではパトに背中をつけてガードをプレーさせたくなかった』と振り返っていました。先ほど言いましたが、ADCCルールだと亀でヒザをつき3秒が過ぎるとテイクダウンにならない。

──なるほど、スクランブルゲームでなく引き込み選択できるということですね。

堀内 ハイ。3秒間、パトが亀で耐えると彼は減点無しでガードを選択できるようになります。でも、ジオゴはそれをさせなかった。そこにはミカのお父さん、メルキ・ガルバォンの指示もあったかと思います。あんな風に最後の手段までそうやって周到に封じ込まれると、下派の選手は厳しいですね。

高橋 パトはソウザとの試合でも、なんだかんだと減点なしで下を取りました。下になるとガンガン攻めて、レフェリー判定で勝ちました。ジオゴ・ヘイスのようなトップゲームの強い選手が、パトにガードは取らせたくないというのは逆に幻想が膨らみますね。

──66キロの見所を話してもらううえで、最初に堀内さんが言われたマイキー・ムスメシの不出場。これはもう本音をいえば「ONE、要らんことするなよ」と。

高橋 アハハハハ。

堀内 盲腸の手術をするから欠場といっても、その翌週にONEでサブミッション・グラップリングの世界王座決定戦に出場するわけですよね……。

高橋 出場して欲しかったですけど、正直なところルール的に勝てないと僕は思っています。

──マイキーにすら、極め幻想は持てないですか。

高橋 それはWNOでソウザが打ち破った感はあるじゃないですか。マイキーのレスリングって、ジオ・マルチネスにぶん投げられているんで(笑)。

堀内 ただマイキーがジョー・ローガンのポッドキャストに出て『僕は3回、コロナで陽性になった(笑)』と言っていたんですよ。きっとソウザ戦の前はコロナだったんじゃないかなって(笑)。

高橋 病み上がりでガードのリテンションを仕切るスタミナがなくて、削り切られたと。

──いずれにせよ、マイキーは今回の欠場といい、ONEで5万ドルのボーナスで泣いている姿といい、ちょっとガッカリ感があります。5万ドルって、いうたら普通に働いていたら1年間で手にデキる額で。それで柔術世界一が泣くなよって。

高橋 マイキーともあろうお方が(笑)。コナー・マクレガーが飲み食いして一晩で使っちゃいそうな額ですからね。業界IQでいえば同じところにいる人間が、そこで泣くなと(笑)。

<この項、続く>

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【Polaris20】足関節を狙い続けた高橋Subが、イィプのバック狙いも察知して3-0の快勝

<61キロ契約/10分1R>
高橋Submission雄己(日本)
Def.3-0
トミー・イィプ(英国)

今成柔術所属選手として出場した高橋、対戦相手のイィプは一見してリーチが長い。まずイィプが座ると、高橋はデラヒーバを捌き立ち上がったイィプの足を取りに行く。これを抜いたイィプが座り、高橋はシン・トゥ・シンに距離を取る。互いに座り、下になった高橋は足首を掴まれ一瞬のニースライスに対し、逆側の足へ50/50のセットアップへ。ヒザを押したイィプだが、高橋は前転してストレートフットロックを仕掛ける。50/50を外せないイィプだが、外ヒールに移行されると立ち上がり防ぐ。

高橋は再びストレートフットロックのグリップをになるが、イィプは手を掴みバックへ狙いに。左足を取ってきたイィプの動きに、高橋はヒールに移行しつつ足の組み替えて逆のも取れるようエントリーしていく。イィプのバック狙いのカウンターに高橋は立ち上がって防御する。

イィプがシッティングを取る。高橋の外掛けに、カカトをホールドされる前にロールし始めたイィプ、内ヒール狙いに場外まで転がる。ここで試合はマット中央、スタンドの状態で再開される。Zハーフから立ち上がったイィプがすぐに座る。高橋の足狙いに再び背中にイィプがダイブする。ここもスタンドに戻って防いだ高橋は座っているイィプに対し、飛びこんで足を抱えに行くがイィプがしっかりと対応して立ち上がる。

座って体側をつけたイィプのZハーフが解かれた直後に高橋が足に取りに行くが、届かず立ち上がる。イィプはシングルレッグへ。その足を取られた状態でカニバサニ的にフリップしていった高橋。すぐにスクランブルとなり、両者が立ち上がるとすぐにイィプが下になりここでもZハーフを取る。

残り1分、脛を越えられない高橋。インヴァーテッドからイィプが足を取りにいくと、スペースを創った高橋が足からダイブしてインサイド・サンカク&外ヒール、さらに足を組み替えてストレートフットロックへ。イィプも足を取ろうとしたところで、タイムアップ。ジャッジは高橋の足へのトライを支持し、3-0で判定勝ちを手にした。


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【Polaris20】Leg Lock Never Die。イィプ戦 へ高橋Submission雄己─02─「レッグロックは終わってない」

【写真】NAGAのベルトとともに。自己アピールをするのも、現代格闘家の仕事の一つ(C)HIDEYA WADA

25日(土)、英国ウェールズのニューポートにあるウェールズ国際会議場で開催されるPolaris20でトミー・イィプと対戦する、高橋Submission雄己のインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike

5月上旬にグラップリングの本場である米国へ渡り、NAGAニューオリンズ大会でノーギ・エキスパートクラスのフライ級とフェザー級で優勝したという高橋。彼はなぜ米国に向かい、現地で何を見てきたのか。貴重な米国グラップリング事情を語ってくれた。

<高橋サブミッション雄己インタビューPart.01はコチラから>


――レッグロック4.0とは何ですか。

「定義としては、まず1.0がサドルロックからの内ヒールですね。

そのサドルロックに対して、カウンターのベリンボロなどでバックを奪うことにより、内ヒールが極まらなくなる。これがレッグロック2.0です。

この2.0に対して出てきたのが、50/50からヒールを取りに行く形です。自分が50/50の体勢だと、相手はベリンボロのようなバックテイクができなくなります。相手の内太ももを抑えるので、サドルロックにあった問題点を解消することができる。これがレッグロック3.0であり、マイキー・ムスメシとかがKガードを作って50/50からヒールを極めていました。

次は50/50とサドルロックを併用してヒールを極める時代が来ると予想しています。それがレッグロック4.0です」

――なるほど。ダナハー後の足関節の流れがそうなっていると。

「米国に行った時、ヘンゾの道場でスパーをした時、サドルロックを仕掛けられたんです。何の変哲もないサドルロックだと思って、エスケープして何ならバックを奪えるかと考えました。すると僕が横に1回転した時に内ヒールを極められたんです。

相手が完全にサドルロックの形にはならず、サドルロックにも50/50にも入れるような形にしていて、僕の対応によってフレキシブルに変えていく。自分の中では、それが衝撃だったんです。でも相手に聞いてみたら、それは何となくやっている感じだったんですね。

そこで技術の変遷を整理してみると、さきほど言ったような流れを経て、僕にとっては先が見えたといいますか。MMAPLANETで岩本(健汰)選手のインタビューを読ませていただいたんですが、『いかにして足関節をいなしてトップから作っていくか』と言っていましたよね。そんなレッグロック時代のドン詰まり感があるなかで、僕にとっては先が見えてきたと思っています。……まだ足関節時代は終わってないぞって」

――米国内では理論化されていなくても経験則や感覚でやっている……つまり日常の中で行われているわけで、それは日本の選手からすれば不安にならないですか。

「そうなんです。いま当たり前だと思われている、最先端の技術をどれだけインプットしていても、その何歩か先を進んでいる人が確実に存在しているんですよね。

ただ、それをやっていたのはヘンゾの道場の黒帯でも、1人か2人ぐらいでした。10thPlanetの人も理解してやっているわけではないでしょう。人それぞれ得意な方向に最先端のものがあって、それが海外と日本の差であると一概には言えません。海外から技術を持ち帰りながら、日本は日本で最先端を見つけていく方法もあると思います」

――そういう意味では、いろんな可能性が存在していますよね。ではご自身の試合についてお聞きしたいのですが、ポラリスに関するお話の前に、今回ADCCオセアニア&アジア予選にはエントリーしなかったのには何か理由があるのでしょうか。

「もともとADCC予選に参加するつもりがなかったです。全く興味がなかったわけではないのですが、ポラリス出場の話が決まった時点で、オセアニア&アジア予選はいつ行われるのか――という感じだったんですよね。それまで大会が延期されたりしていて、ポラリスが決まってからADCCオセアニア&アジア予選が発表されました。だから、そのどちらかで悩むということはなかったです。それと僕は体格が小さくて、ADCCには適正階級がないんですよ」

――ADCCは最も軽い階級でも66キロ級、高橋選手は今回ポラリスでは61.2キロ以下で試合をします。

「はい。当日計量の61.2キロでも、少し体重が足りていないかな、というぐらいなので。自分よりガッチリ体の大きい相手と立ちレスをやらないといけないADCCよりは、61.2キロでサブオンリーの試合ができるポラリスのほうが適していると思います。ADCCとポラリスの二択になれば、迷いなくポラリスを選びます」

――高橋選手にとって、ポラリスという大会はどのような価値を持っていますか。

「大きなチャンスだと考えています。これは世羅(智茂)さんもインタビューで言っていたのですが、世界で勝つかどうかが評価の分かれ目になりますよね。僕が試合をする意味というのは、世界で勝つことによって、自分の技術に関する学説みたいなものを主張することです。最先端の技術を持つ人たちの中で勝つことにより、自分の意見を放り込んでいきたいです」

――では、そのポラリスで対戦するトミー・イィプの印象を教えてください。

「動画を探しても、あまり出てこないですよね……。ギの試合があっても紫帯時代の映像で、参考にならないと思います。最近のグラップリングの試合を見ると、バックテイクで勝っていました。動きを見るとバックテイクが得意な感じですよね。

実際に試合で触ってみないと分かりませんが、極められるんじゃないかなと、ボンヤリ思っています。まぁ、僕は目の前にあるものを触って、その関節を壊すだけなんですけど(笑)」

――それがグラップリング、サブオンリーの本質ですよね。

「バックテイクするということは、足関節に対してバックテイクで切り返してRNCを極める技術体系ですよね。そういう正当な柔術をやってくるとは思いますが、そうなると自分の言っていることと噛み合うのかなと思います」

――バックを奪われずに足関節を極める、まさにレッグロック4.0です。

「言葉だけで複雑な話をしてしまって、すみません(苦笑)。レッグロックはまだ終わっていない。僕の中では次が見えている。皆さんには試合で、その可能性を見せたいと思います」


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【Polaris20】ポラリスへ、高橋サブミッション─01─「ビジネス的な役回りをする人が、業界に必要」

【写真】先人のいないことをサブミッションはやろうとしています。そして、彼の言っていることはMMAも同じかと思われます(C)SHOJIRO KAMEIKE

25日(土)、英国ウェールズのニューポートにあるウェールズ国際会議場で開催されるPolaris20に高橋Submission雄己が出場し、トミー・イィプと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

5月上旬にグラップリングの本場である米国へ渡り、NAGAニューオリンズ大会でノーギ・エキスパートクラスのフライ級とフェザー級で優勝したという高橋。彼はなぜ米国に向かい、現地で何を見てきたのか。貴重な米国グラップリング事情を語ってくれた。


――5月14日に米国で開催されたNAGAに飛び入りで出場し、2階級で優勝されたとのことですが、この飛び入りというのはどんな経緯があったのでしょうか。

「もともとNAGAには出ようと思っていたんです。これは話が前後するのですが――まずポラリス出場が決まった時点で、それまで海外で試合をしたことがなかったんですね。そこでポラリスの前哨戦としてNAGAに出ようと考えていて。その折にONEでルオトロ兄弟やマイキーとかが試合をし始めていました。

僕は去年からIREのプロデューサーとなって、ABEMA TVさんと懇意にさせていただいているんですね。そこでABEMA TVの北野雄司さんから『ONEのグラップリングの動きは無視できないのでは?』と言われたんです。ルオトロ兄弟やマイキーがONEで試合をするタイミングで、シンガポールでこうしたグラップラーたちの映像を撮らないかと。ちょうど僕は米国へ行こうという計画があって。米国に行けばONEの契約選手なり、他のグラップラーがいるので、彼らを撮影するのはどうですか? という話になり、ABEMA TVのお仕事絡みで米国へ行くことになりました」

――そうだったのですか。

「そうなると優先順位としては、青木さんの試合の煽りVを撮らないといけないので、まずルオトロ兄弟を取材しないといけない。取材へ行ったときに練習することもできれば、米国で練習するという目的も合致するので良かったです。

ただ、ルオトロ兄弟のスケジュールが……海外の選手って、そういう取材スケジュールが前後することって、よくあるじゃないですか。まずはルオトロ兄弟のスケジュールを抑えないといけない。そのために僕の都合は後回しにしなければいけない。そういった事情から、ギリギリまでNAGAに出られるかどうか分からなかったんです。結果、撮るものは撮れたのでNAGAに出場することができた、という経緯がありました」

――かつて日本人選手がブラジルへ練習に行くと、日本人からすれば現地の選手たちが時間にルーズで、伝えられた時間に選手たちが集まってこないというお話は聞きました。

「僕はそれほどルーズな海外事情の煽りを受けたことがないのですが、伊藤健一さんがジョン・ダナハーのジムへ行ったら、ダナハーが自分のクラスなのに1時間半ぐらい遅刻してきて、会員さんがみんな怒っていたという話は聞きました(笑)」

――アハハハ、現地では何が起こるか分からないので大変ですよね。しかし撮影、練習、試合と希望していたプランは全て叶えられたということですか。

「はい。いわゆる映像の撮れ高や編集の出来については僕も分からないのですが、僕自身の希望としてはルオトロなり、ジオ・マルチネスなり、ダナハーのところにいるジョナサンと組むことができました。エディにクラスにも参加できたし、NAGAにも出られたしで、僕の希望は叶えられたと思います」

――そのような米国の情報を聞くと、日本のグラップリングにも同様のビジネスが持ち込めるかもしれないですね。

「持ち込めるというより、持ち込まないといけないと思っています。日本のグラップリング界には、各ステークホルダーをつなぐプラットフォームのようなことをしている人が全くいません。つまりビジネス的な役回りをする人が、業界に必要です。そこで僕自身が、そういう役回りをするのも有りだなと考えています。たとえばプライベートレッスンの予約ができるような、グラップリング版ホットペッパーを創るとか」

――それは面白そうですね! 他にも米国での取材、練習、試合を通じて見えてきたものはありますか。

「まず米国と日本で、グラップリング界の構造自体が全く違う、というわけではないと思ったんです。もともと僕の中にも、日本と米国のグラップリングは全く違う世界だという気持ちがありましたが、米国に倣って日本も伸ばしていけばいいと思うところはあります。ただ、人口も業界の規模も違い、それなりに成熟していっている米国には、技術を売り買いするプラットフォームがありますよね。たとえばBJJ FANATICSとか。これから日本のグラップリング界が整備していかないといけない点などが、自分の中でもクリアになりました」

――BJJ FANATICSは、有名選手がオンラインで技術動画を販売するプラットフォームですよね。米国では、そのような仕組みが普及しているのですか。

「そう思います。たとえば今回ニューヨークで、ヘンゾ・グレイシーの道場のヘッドインストラクターと『英語圏の人なら、英語の技術動画のプラットフォームを観られるから良いですよね』という話をしていた時、こんなエピソードを教えてくれたんです。

昔、ダナハーの大ファンでヨーロッパの片田舎に住んでいる方が、出稽古に来た時のことです。そんな片田舎では柔術の練習相手が誰もいない。でもダナハーが大好きだから、動画でダナハーのサドルシステムを学んで、友達を相手に打ち込みをし続けていたそうなんです。ダナハーの言っていることは、動画から全てインプットしている。でも練習相手がいないから、旅行がてらグラップリングの本場に来てみた、と。それでダナハーのアカデミーに行き、ゲイリー・トノンとスパーをしてみたら、トノンと互角の実力を持っていたそうです(笑)」

――えっ!? 動画を見てゲイリー・トノンと互角レベルにまで……。

「やはり現代のグラップリングは情報戦だな、と思いました。これは極端な例ですけど、すごく面白い話ですよね。勤勉な人が勤勉に学び、インプットとアウトプットを繰り返していたら、理論上はそこまで伸びるわけです。あくまで理論上ではありますけど。

たとえ、そこまでのお話ではなくても、一部の最先端を行っている人たちがどんどん先に行って、地方は取り残されているという状況が、日本は多いので。今でいうとBJJ Laboとか、BJJ FANATICSの日本版のようなものが立ち上がっていて、精力的にやってくれています。それはすごく良い動きだなと思っています。そういったプラットフォームの規模がもっと大きくなり、いろんな技術が末端の人まで広まれば、業界の底辺拡大にも繋がりますよね。もちろん動画を販売しているトップ選手にもお金が入るシステムですから、日本の柔術&グラップリング界にも良い影響を及ぼすと思います」

――なるほど。技術面についてはいかがですか。

「おそらくコレはまだ米国の人たちも言語化できていないのだろうな、と思ったものがあります。実は僕が最先端を行っているんじゃないか、と思うものなんですけど(笑)」

――ぜひお願いします。

「レッグロックが流行り始めたじゃないですか。エディ・カミングスとか、ダナハー一派のゲイリー・トノンたちがサドルロックなどを使い始めて、内ヒールをバンバン極める時代がありました。これは宣伝っぽくなって申し訳ないんですけど……僕は先日『レッグロック4.0』という教則DVDを出したんです。実はレッグロックもアップデートされ続けていて、今はバージョン4.0まで来ているという意味なんですよ」


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【Gladiator018】プログレスFSGで河名マスト対戦、森戸新士が語る日本グラップリング界の分岐点

【写真】森戸新士の言には、信頼感が存在する(C)SHOJIRO KAMEIKE

26日(日)、大阪府豊中市の176Boxで開催されるGladiator018で、森戸新士と河名マストがPROGRESSフォークスタイルグラップリング戦で激突する。

森戸はこれまで、Gladiatorで組まれるPROGRESSフォークスタイルグラップリングで2連続一本勝ちを収めている。今回のインタビュー前編では、柔術で全日本選手権を制する一方でグラップリングを研究するようになったきっかけ――2019年ADCCオセアニア&アジア予選と、その舞台で感じた世界のグラップリングについて語ってくれた。


――プログレスの試合に関するお話の前に、19日に豪州で開催されるADCCオセアニア&アジア予選にエントリーしなかったのは、何か理由があるのでしょうか。

「タイミングが合えば出たかったです。エントリーしていないのは、日本開催ではなかったことが大きいですね。豪州へ行こうと思ったら、自分の道場を1週間ぐらい空けなければいけないのですが、そのための人繰りがつかず……。

それと予選の開催延期が続いていて、シンガポールで開催されると発表されてからチェックしていたんですけど、いつの間にか6月19日に豪州開催が決定していました。僕がそれに気づくのが遅くて、準備が間に合わないと思いました。岩国と広島で道場を運営していて、すぐに身動きが取れる状態ではないので」

――なるほど。

「正式決定も、それほど話題になっていなかったですよね。僕もチェックしていたつもりではあったのですが、ちょうど同じ日に自分の道場で、女性とキッズ向けの柔術大会を開催することになっているんです」

――えっ、レオス主催の大会ですか。

「レオスと藤田柔術、それから江木(一郎、NR柔術)さん主催という形です。大人の男性も含めると人数も多すぎるので、今回は女性とキッズの大会にしています。外部の方も参加していただくオープンの形で、60名ほど参加してくれることになりました。うち30名ほどはレオス柔術の会員さんたちですが、広島、岡山、福岡からも参加者があります」

――それだけの規模の大会を開催するとなれば、なかなか動きづらいのは確かですね。

「そうですね(苦笑)。ただ、急きょ開催を決めたので、ずっとこの日にやろうと思っていたわけではないです。あとは7月24日に岩国市内の体育館を借りて、大人の男性も含めた柔術大会を行います。

選手にとっても大会が行われれば目指すものがあって、成長できると思います。JBJJFも今年は広島で大会を開催するのかどうか分からない状態で。キッズの大会に至っては全然なく、ドゥマウやSBJJFの九州大会や大阪大会に遠征していました。そこは協力できるよう、エジソン籠原さんと話をしていますが、それ以外に自分たちでも大会を開催しようと。他の大会よりも参加費の面では敷居を低くして、それでも利益は出るように設定して大会を継続できるようにと考えています」

――練習会だけでなく、大会も中国地方では岩国が中心になっていきそうですね。ADCCの話に戻すと、2019年の予選で森戸選手は77キロ級で初戦敗退という結果でした。いま振り返って、当時はグラップリングに対してどのような印象を抱いていたのでしょうか。

「ラクラン・ジャイルスと対戦して、インサイド・ヒールフックを極められて負けました。そのままラクラン・ジャイルスは世界大会の無差別級でヒールフックを極めまくって、一気に有名になったじゃないですか。そのヒールフックを体感できたことは、良い経験になったと思っています。

あの時はラクラン・ジャイルスが豪州から強い選手をたくさん連れてきていて、世羅(智茂)選手も66キロ級で負けていましたよね(準々決勝でジェレミー・スキナーに一本負け)。でも同じ階級では岩本健汰選手が足関節をバンバン極めていて……。そうした足関節の流れを初めて感じたのが、前回のオセアニア&アジア予選でした。その最先端の流れが日本ではあまり見られていなくて、世界大会を目指す強い選手が集まり、最先端の攻防を繰り広げてくれたという印象です。

僕も当時はギばかりやっていて、グラップリングについては最先端の技術を研究しきれていませんでした。そこから僕も足関節とか、グラップリングを研究するようになりましたね」

――当時は森戸選手の中で、ギの練習をしていればグラップリングでも通用するという考えがあったのですか。

「通用するというか、グラップリングの大会自体が少なかったんですよね。そのあとに勝村(周一朗)さんがZSTのグラップリング大会を開催したり、グラップリングの大会も増えていったじゃないですか。その前に行われたのが前回のオセアニア&アジア予選で、僕もメインの練習はギでしたし、大会がないとグラップリングの練習も行わなくて。もちろん予選前はグラップリングの練習をしましたけど、それもギのクラスの後に藤田(善弘)先生と二人でやったり……というレベルだったので。力を入れた練習はできていなかったです。

そう考えると、2019年のADCCオセアニア&アジア予選が、日本グラップリング界にとっての分岐点になったのかもしれないですね。あの時点で岩本選手は体現していたと思います。もうグラップリングで行くと。日本にそういう選手が出始めて、高橋SUBMISSION雄己君のようなグラップリングに専念する選手もいたり。その前にグラップリング専門の選手はいなかったですし」

――その岩本選手も、MMAPLANETのインタビューで「もうサドルからエントリーする戦い方をしても勝てない」という発言をしています。

「カウンターのディフェンスの技術が上がっていますからね。サドルを取ったら裏に回ってベリンボロ、みたいなことをATOSの選手がやり始めて。今では、みんなその技術が高まっていて……。確かに足関節だけでバンバン極めるのは難しいでしょう」

――そのなかで、森戸選手はグラップリングの技術に関して、どのようにアップデートしているのでしょうか。

「やっぱり教材と試合動画ですね。今はWho’s Number Oneとか。ADCCは前回の世帯会を見たとしても、そこから結構変わっていると思います。それだけ技術の進化が速いです」

――教材とは、オンラインで視ることができるものですか。

「はい。ジョン・ダナハーやゴードン・ライアン、ラクラン・ジャイルスとかですね。試合だと、ミカ・ガウヴァオンはどんな動きをしているんだろうか、と思って見たり。

ただ、そういった動画を見ていると世界との差は感じます。しかも自分がその技術を身につけた時点で、教材を出している選手はその先に行っていて……難しいですよね。一番手っ取り早いのは、その現場に行くことなんですよ。だから今回、高橋君が米国に行っているのは良いなと思いました。僕も道場で大きな利益を出して、定期的に米国へ練習に行けるよう頑張ります(苦笑)」

<この項、続く>


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