【写真】2000年9月10日生まれ、23歳になったばかり(※取材時は22歳だった) (C)MMAPLANET
29日(土)、大阪府豊中市の176boxで開催されるGLADIATOR023の第1試合で、南友之輔が小松祐貴とプロ初陣を戦う。
Text by Manabu Takashima
中学~高校~大学とそれぞれのナショナルチームメンバーだった南は、パリ五輪に空手が正式種目でなくなったのを受け、MMAに転向を決めた。そして大阪を離れ、BRAVEジムでMMAファイター人生を歩み始めた。
実質MMA歴半年、類まれな打撃のセンスを生かし──UFCを目指すルーキー、グラジエイターをデビュー戦の舞台に選んだのか理由とは。1人のプロMMAファイター誕生直前に話を訊いた。
──南選手は伝統派空手出身で、大学を卒業してMMAに転向したと伺っています。
「ハイ、幼稚園の頃に空手を始めて大学の時までやっていました。3月に卒業して、こっちに来た形ですね」
──空手を始めたきっかけというのは?
「幼稚園の友達のお兄ちゃんがやっていて。その友達が始めたので、空手のことは何もわかっていなかったですけど『僕もやってみよう』という感じで始めました」
──流派は?
「剛柔流でした」
──剛柔流は組みがあり、下段蹴りもある流派です。
「あぁ、昔の流れで稽古では下段蹴りをやったり、金的を狙うこともありました。あと道着を掴んで投げることは中学生ぐらいまで、試合でも認められていました。道着を掴んで崩して、打撃ということもあったので大きい人が有利やとは思っていました。
ただ僕は剛柔流の空手を習っていたのですが、試合はずっと全空連、WKFのルールのトーナメントに出ていて。最後まで剛柔流の試合には出たことなかったです」
──部活動があるのが伝統派空手ですが、大学までは空手で進学をしたという形でしょうか。
「ハイ。中学から浪速中学に通っていました。浪速中学、浪速高校は空手では一番の中学と高校で。そこから大学は近畿大学に進学しました」
──南選手の空手での戦績というのは?
「日本代表には中学2年生の時になって、辞めるまでは中学、高校、大学と世代毎の日本代表ではいました」
──凄いではないですか!!
「でも、個人戦はほとんど日本一になっていなくて(苦笑)。中学の時、僕らは団体戦で全中四連覇をして、そのまま確か九連覇までしています。個人戦は中学の時にカデットの世界大会で3位になり、高校になってからは全国選抜で60キロ以下級で優勝しました。ジュニアの世界も3位、大学は3年と4年の時にスネをケガして個人戦はほとんど出ることができなかったです。コロナもあったんで。でも団体戦で日本一を目指して、4年の時に2位で終わったという形ですね」
──立派過ぎるほどの戦績ですし。そのまま空手を続けて行こうという気持ちはなかったのですか。
「東京五輪が終わり、パリ五輪から空手が種目から外れてしまったので、正直に言って目指すところがなくなりました。これ以上、空手を続けても……と思って。空手自体はめっっちゃ好きです。ただ、競技としてプレーする空手を楽しめなくなっていました」
──というのは?
「効くか、効いていないか。それが当てっているか、当たってないということになるのがMMAで。空手は審判次第、誤審も多いし。ポイントを取られても、『効いてないもんは、効いてないやろう』という風になってきたので、これはプレイヤーとして空手はできないと思うようになりました。同時にまだ仕事に就きたいという気持ちもなかったし、なら空手を生かせること。そして、より目立てることができんかなって思ってMMAをやろうと決めました」
──MMAには元々興味があったのですか。
「MMAだけでなくボクシング、キックもそうやし格闘技全般が好きで。それも空手に生かせるかなって思いながら見ていて、個人的には真似しながら練習もしていました。空手は空手だけっていう人が多いのですが、僕は何か生かしたいと思って格闘技を見ていました」
──生かせることはありましたか。
「助かったというわけではないですけど、大学3年の時にスネを折って。一番大きなインカレの団体戦のメンバーだったので、治ってはいないのに出ないといけない状況でした。でもステップも踏めなくて、ベタ足を踏んでいる状態で。あの時にカネロ・アルバレスの試合を視て、プレッシャーをかける戦いを取り入れました。あの時点ではそれが一番、生きましたね」
──では逆にMMAを戦ううえで、空手が生かせているのはどのような点ですか。
「やっぱりステップですね。僕のステップというか……空手って触られるとダメなルールなので。とにかく触られないための動きが、テイクダウンを狙われた際の動きに生きています。空手は駆け引きが多いので、その駆け引きが一番生きていますね」
J-MMA界の梁山泊と化しつつあるBRAVEジム
──なるほど。
では、なぜ大阪でなく関東にやってきてBRAVEジムでMMAファイター人生を送るようになったのですか。
「一番は大阪にいたら多分、実家に住んで。ちょっとアルバイトしながらMMAを習うっていう感じで、覚悟が決まらないというか。趣味っていうと言い過ぎですけど、ちょっと中途半端な形になっちゃうかなっていうのがあって。関東に出てきたら覚悟を持って、ゼロからできると思いました。どうせやるなら、レスラーの数が多くて、宮田(和幸)先生にもレスリングを教わることができるBRAVEジムがやると自分で決めて、空手繋がりで野村(駿介)先輩に連絡させてもらいました」
──レスリングが大切というのは、自分のMMAをある程度組み立ててBRAVEを選んだ形ですか。
「そうですね。レスリングができないと、何もできないと思っていました。UFC、RIZIN、DEEPとか何でも見ていて、コナー・マクレガーが最高に格好良かったです。でも、マクレガーもヌルマゴに負けました。それだけレスリングが大事なんやって思って」
──本当によくMMAを見ていたのですね。
「格闘技ですよね。K-1はバダ・ハリや魔裟斗選手の頃から視ていました」
──では、MMAファイターとしてゴールはどこを目指していますか。
「どうせやるなら、世界。空手でも世界を目指してやっていたので……でも世界一になれなかったです。だからMMAをやるなら、まずはUFCを目指します。目指すところから入って──ですね」
──その気持ちを持ってMMAを始めて、すんなり馴染めたのか。それとも戸惑いはありましたか。
「実は堀口恭司選手に対して、空手やったら絶対に自分の方が上やと思っていました。だから空手を生かしたMMAでもって。でも、今となっては空手を生かして、MMAに必要なことを融合させている凄さが分かりました。追いつくには何年も掛かりますね」
──とはいえ4月9日、アマMMA初戦でKO勝ちをしていますね。
「あの試合は練習を始めて1カ月ぐらいだったのですが、取りあえず出てみました」
──それで、あのKO勝ちですか。
「正直、あのタイミングで入って来てくれたら誰でも倒せる自信はあるんで。空手とはそこを振り抜くか、振り抜かないか。引くか、引かないかという違いだけなので。そこをアジャストできたなって」
──ノンコンタクトの技術、素晴らしくMMAに生かせると思います。ただし、試合に出てあの決めの声を挙げていると、それは競技内の技術になってしまうように感じていて。声勝負やんって思ってしまうのです。
「アハハハハハ。距離をとって、叫んでぇ。あそこから連打になるとかだったら、もっとMMAに生かすことができる技が空手の試合でも見ることができるようになるかとは思います。逆をいえば、空手の人もそれをMMAから学ぶことができると思うんですよね。MMAを戦ってみてシンプルに当てたら反則というなかで、振り抜いて良いのは──快感までいっていないけど楽しいです(笑)」
──そして、いよいよプロデビュー戦をグラジエイターで戦います。なぜ、グラジエイターでのデビュー戦なのでしょうか。
「大阪出身だったので、宮田先生が話をしてくれたようで。大阪で戦うことができるなら、応援してくれる人も多いですし、見に来てくださる人も多いと思うので『やります』って答えました。
それと今、グラジエイターには海外から選手が出場しているじゃないですか。Road to UFCに出たニャムジャルガル選手とかもグラジエイターが呼んでいて。海外に行きたいと思っている僕としては、チャンスが転がっている団体だと思っています」
──メインは同じバンタム級で、モンゴル人のテムーレン・アルギルマーがチャンピオンで防衛戦を行います。
「そうですね。実際、どこで戦うのか迷った時もありましたけど、外国人選手と戦えるチャンスがあるならグラジでタイトルマッチまで行って、海外へ行く。そういう風になりたいです」
──頼もしいです。そのためにも、どのようなMMAファイターになりたいと考えていますか。
「打撃主体で行くと思いますけど、組みもサブミッションもできる。それこそ堀口選手のようなファイターになりたいです。ただ組みの方はまだまだで。すぐに極められたりするんで。徹底して、組みはやらないといけないです。寝なかったら良い──というわけではなくて、絶対に寝かされる展開を創られてしまうので。そこはしっかりとやりたいです」
──そのための第一歩、小松祐貴選手との試合。どのような戦いをしたいと考えていますか。
「まだ組みを主体にはできないので。徹底的に打撃で。打撃で漬けるというか、ショーン・オマリーのようなきれいなカウンターを出したいと思います」
■視聴方法(予定)
9月30日(土)
午後12時30分~ THE 1 TV YouTubeチャンネル
■ Gladiator023対戦カード
<フライ級/5分2R>
宮川日向(日本)
坪内一将(日本)
<フライ級/5分2R>
陸虎(日本)
古賀珠楠(日本)
<ストロー級/5分2R>
澤田政輝(日本)
三輪勇気(日本)
<フェザー級/5分2R>
水野翔(日本)
野口蒼太(日本)
<ライト級/5分2R>
秋岡翔(日本)
磯嶋祥蔵(日本)
<Gladiatorバンタム級選手権試合/5分3R>
[王者]テムーレン・アルギルマー(モンゴル)
[挑戦者]竹本啓哉(日本)
<Gladiatorフェザー級王座決定T決勝/5分3R>
パン・ジェヒョク(韓国)
ダギースレン・チャグナードルジ(モンゴル)
<Progressフォークスタイルグラップリング・ウェルター級暫定王座決定T決勝/5分3R>
森戸新士(日本)
世羅智茂(日本)
<フェザー級/5分3R>
河名マスト(日本)
ユン・ダウォン(韓国)
<フェザー級/5分3R>
チハヤフル・ズッキーニョス(日本)
ハンセン玲雄(日本)
<ミドル級/5分3R>
藤井章太(日本)
イ・イサク(韓国)
<ライト級/5分3R>
八木敬志(日本)
エフェヴィガ雄志(日本)
<Progressフォークスタイルグラップリング60キロ契約/5分2R>
NavE(日本)
前田吉朗(日本)
<バンタム級/5分3R>
藤原克也(日本)
川北晏生(日本)
<フライ級/5分2R>
和田教良(日本)
梅川毒一郎(日本)
<フェザー級/5分2R>
桑本征希(日本)
高木亮(日本)
<ウェルター級/5分2R>
森井翼(日本)
阿部光太(日本)
<バンタム級/5分2R>
エダ塾長こうすけ(日本)
宮口龍鳳(日本)
<バンタム級/5分2R>
吉田開威(日本)
空(日本)
<バンタム級/5分2R>
南友之輔(日本)
小松祐貴(日本)
<アマ・フライ級/3分2R>
向井琉綺弥(日本)
伊藤琥大郎(日本)
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