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【Black Combat12】大原樹理の挑戦を受けるイ・ソンハ「うんざり。大原選手はDEEPに戻って欲しい」

【写真】涼しい顔で、まま攻撃的な発言がきかれたイ・ソンハ(C)MMAPLANET

29日(土・現地時間)に韓国はソウルのソンブク区にある高麗大学校(コリョ・テハッキョ)ファジョン体育館(チェユックァン)で開催される Black Combat12「The Return of the King」でBlack Combatライト級王者イ・ソンハが大原樹理の挑戦を受ける。
Text by Manabu Takashima

昨年9月に日本で戦っている両者。その時はイ・ソンハが2Rにスロエフ・ストレッチを極めて一本勝ちし、DEEPライト級王座を手にした。同王座は3月に江藤公洋に譲ったイ・ソンハが、今回はもう一つのベルトを賭けて大原と戦うことになった。

イ・ソンハは大原を返り討ちにする自信に満ち溢れ、インタビュー中も余裕の勝利宣言が訊かれた。


──土曜日に防衛戦が控えているイ・ソンハ選手です。調子はいかがですか。

「昨日までしっかりとハードトレーニングをし、今日は軽くミット打ちをした程度で、体重もしっかりと落とせています。過去最高のパフォーマンスを見せることができると思います」

──今回の試合に向けて、特別な練習をするようなことはありましたか。

「キャンプ期間を長くし、その分だけパワーをつけるためのコンディショニング・トレーニングに力を入れてきました。それとエポ柔術の黒帯柔術家ヤン・ジュヨン選手を始め、強い選手が集まっている場所で、バックを取ると逃げられないようにするための練習を強化してきました。厳しいメニューを課され、そこを乗り越えてきたので自信がついています」

──ライト級で185センチの長身を誇るイ・ソンハ選手がパワーをつけるということは、減量が厳しくなることはないでしょうか。

「筋肉をつけるわけでなく2カ所ほど負傷している箇所があったので、その周囲を強化してきた感じです。だから減量は問題ないです」

──そのケガは、前回の試合で江藤公洋選手に敗れDEEPライト級王座を奪われたことに関係していますか。

「そこは関係ないです。あの試合は実力で負けました。ただ1Rの1分過ぎに右手の拳、中指の拳頭部の筋が切れてしまって、そこは手術をしました。それがあってケージに押し込まれると防御できなかったことはありましたが、そこも含めて力不足でした。完敗です。

それでお江藤選手はONEでも戦っていた世界レベルの選手ですし、そんな選手と初回は互角に戦えたので自信がつきました。DEEPのベルトは失いましたが、あれから自信を手にすることができて練習も楽しくなりました」

──今回はBlack Combat王座の防衛戦ですが、大原選手はこの1年DEEPで戦わず、ずっと韓国で戦ってきました。それだけリベンジに執念を持っていることは明らかです。

「うんざりです(笑)。でも、今回の試合では前回の試合よりも圧倒的な勝ち方をするので、大原選手はもうDEEPに戻って欲しいです。アハハハハ。

正直、大原選手は自分と戦うまで彼より背の低い選手と戦うことが多かったと思います。その状況で自分が彼の倒し方を見せたので、他の選手も同じように戦いをするようになりました。韓国のライト級ファイターの身長は180センチある選手が多いですし、その結果としてBlack Combatでは苦戦を強いられていると思います」

──それでも気持ちは折れていない。大原選手の精神力をどのように感じていますか。

「正直、大原選手の勝利に対する執念は凄いと思います。ただMMAは気持ちだけでは勝てないです。大原選手は前回の自分の試合で色々と学べたはずですが、今回はもっと多くのことを教えてやろうと思います。そうですね、今回の試合では左足でなく右足を壊してあげます」

──絶対的な自信を持っていることが伝わってきます。では江藤選手から野村駿太選手に持ち主が変わったDEEPライト級王座に関しては、どのような想いでいますか。

「DEEPのベルトは気に入っていました。手放して淋しかったです。ただ江藤選手と比べると、スタイル的に野村選手は自分にとっては戦いやすい相手です。自分は打撃を無効化させる方法を心得ています。なので、野村選手には機会を見て挑戦したいです。それにはDEEPに認められる必要がありますが……」

──ところでRoad to UFCで日本は準決勝で全員が敗退。韓国人選手はユ・スヨン選手とチェ・ドンフン選手が決勝に残りましたが、中国勢は5人ものファイナリストを輩出しています。この中国の成長をどのように捉えていますか。

「7月にBlack Combatは中国のWLFと対抗戦を行いましたが、2人の中国人選手がドーピングテストで陽性になりました。自分も色々と噂を聞きますが、中国のUFC選手の強さはそこと関係していると思います。自分は上手くやっているだろうという疑い目で見ています。アンフェアです」

──なんとも力強い言葉でした。では最後に日本のファンに一言お願いします。

「DEEPとの対抗戦後、今も日本のファンからメッセージが届きます。自分はその日本の大舞台、RIZINで戦うことを目標としているので──今回の試合も皆さん、応援してください」

■Black Combat12視聴方法(予定)
9月28 日(日)
メインカード=午後6時30分~ Black CombatオフィシャルYoutubeチャンネル

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【DEEP121】DEEPライト級王座奪取直後の野村駿太「ジャブで右が当たる距離が創ることができた」

【写真】 右の突きが何度も江藤の顔面を襲った(C)MMAPLANET

16日(月・祝)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されたDEEP121 Impactで野村駿太が江藤公洋を破りDEEPライト級チャンピオンの座についた
Text by Manabu Takashima

昨年7月にテイクダウン&コントロールで江藤に敗れた野村は、所属するBRAVE Gymや出稽古先のロータス世田谷で組みを磨き、組まれても構わないという自信を持ってMMAファイターとしてタイトル戦に挑んだ。

結果、江藤を入らせずに打撃を入れる。その打撃も伝統派空手のエッセンスを生かしつつ、MMAに昇華させた野村ならではの打撃となっていた。将来に関して、UFCという言葉も訊かれた試合後の合同インタビューから、MMAPLANETの問いへの返答を抜粋してお届けしたい。


──ベルト奪取、おめでとうございます。

「ありがとうございますっ!!」

──極端にいえば殴られるのが嫌な江藤選手と、組まれても構わない野村選手。その差が如実に出た試合になったかと感じました。

「完成度が高いという江藤選手の評価に、自分は疑問を抱いていました。去年戦った時はそういう風に思っていましたけど、ここのところは『そんなに完成度が高いかな?』って自分のなかで思うようになっていて。

自分が足りないと指摘されている組みの部分に関しても、かなり練習をしていますし。組みのトップの選手と、ずっとやりあえているんで。でも、江藤選手は打撃のトップの選手と打撃をやり合えるわけじゃないということが、自分の心のなかで余裕になってきていました。

自分は組みのトップの選手とずっと練習をしてきたことが心の支えになっていたので、落ち着いて戦えました」

──江藤選手が自分の距離とタイミングでないところから、組みつかないといけないほど圧をしっかりと掛けることができていました。

「イメージで言えばマクレガーとか、昨日、負けてしまったのですがショーン・オマリーのような戦い方が自分のなかでデキましたし、ジムの宮田先生だったり、指導をしてもらっている石渡さんからも、そこを創ることができれば今回はいけると言ってもらっていて。自分の意見も含め、全員の総意でした。チームと、自分の『これをやったら行けるんじゃないか』という意見が合致していたので、そこを淡々とやるだけっていう感じでした」

──上段回し蹴りも様子見ではなく、拳の攻撃と連動がありそうな雰囲気がして、これまで以上に有効に見えました。

「ローを警戒しているのが伝わってきたので。ローに対しては反応がメチャクチャ早かったです。そうですね、ローとストレートを気にしているなかで、天の声じゃないですけど『ハイを蹴ったら良いんじゃない?』って頭に浮かんだ形です。

セコンドが『下から』という風に声を出してくれていたので、江藤選手は下を凄く警戒していたのだと思います。だから、自分が何もしなくてもセコンドの声がフェイントになっていました」

──テイクダウンを何度目かに切った時に、ニヤッとかなり悪い笑顔を浮かべていました。

「していましたか?(笑)」

──ハイ。ただし、この勝利が100点満点にならないのは最終回です。テイクダウンされバックを取られた。あそこが守れなかったのは、どのようなことが原因だと思われますか。

「ただただ自分の弱さだと思います。動けたはずです。でも『このまま耐えておけば』と考えてしまって。1Rはアレで1分ぐらい過ごせたという気持ちが残っていて、このまま耐えたらエェかなっていう感じになっていました」

──つまり江藤選手が組んでくること有りきの受け方になってしまった?

「そうですね。そこまでにやってきたことが、最後に崩れて。それがまだ自分っぽいところなのですが、その当たりを修正できればもっと強くなれると思います。あの場面の自分に対しては『何してんねん!』という気持ちと、『もっと強くなれるな』という気持ちがあります」

──今後に向けて、世界へ行くという言葉も聞かれました。とはいえ、その道に明確な道筋は存在していないのが実情です。

「ハイ。目標はやっぱりUFCです。昨日(※UFC306)を視ていても『ここで戦えると、格闘家として最高やな』という気持ちになりました。そのなかで世界を代表するストライカーのショーン・オマリーがああいう形で負けたりして、自分もああなるのかっていう迷いも少し生じたのですが、この勝利で『俺も世界に行けるな』って気持ちがしています」

──空手家がグローブをつけると、拳の届く距離でボクシングやキックになることが多いと思います。今夜の野村選手は、右の突きが伝統派空手の動きながらしっかりと当たり、ダメージを与える突きになっていたように思いました。パンチがフック系になることはなかったかと。

「ジャブで自分の拳を伸ばしたところで、相手に当てることができ距離を創ることができたのが大きかったです。接近戦や頭を下げる場所で戦うという選択もったのですが、伸ばしたところで殴る距離が創れたことで右が当たり、だからこそテイクダウンが切れたということもあります。

あの距離を創ることができれば、自分の時間をずっと続けることができます。制空圏を創ることができた。これまでは打ち気になって浮き気味になっていたのに対して、ジャブが有効だったからストレートが生きました。

Road to UFCを視ていても倒せるかどうかが、問われていて。DEEPに来てから4試合、5試合前から他の選手にはないミッションを自分に課してきました。今回のミッションはケガをしても良いから、勝つということ。その気持ちがあったのでリラックスして戦えることができました」

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【DEEP121】組みがデキるストライカー、倒されずに打つ野村が江藤をユナニマス判定で下しベルトを巻く

<DEEPライト級選手権試合/5分3R>
野村駿太(日本)
Def.3-0:30-27.29-27.29-28.29-28.29-28.
江藤公洋(日本)

スイッチする江藤に対し、野村が左ジャブを突く。江藤がスイッチする瞬間に、野村の左ジャブが顔面をとらえた。さらに右を当てる野村。江藤が組もうとしたところに、野村が右を合わせる。江藤がテイクダウンの構えを見せると、野村がバックステップ後に左を当てた。江藤の低空テイクダウンをかわし、野村が立ち上がり際を狙う。江藤がシングルレッグからドライブする。

左腕を差し上げた江藤は頭をおっつけるが、野村がリストコントロールを制している。展開がなくレフェリーがブレイクをかけた。再開後、野村がプレスをかける。野村のフェイントに反応を見せる江藤。江藤の低空シングルレッグを切った野村がパンチで襲いかかる。残り30秒で野村はサークリングへ。残り10秒で一気に距離を詰め、幾度も右をヒットさせた。

2R、野村がワンツーを見せる。江藤はサウスポースタンスから左ストレートを伸ばすも、ブロックされてしまう。江藤のテイクダウン失敗後にパンチを打ち込む野村。左フック、さらに右ストレートを効かせる。江藤のテイクダウンを切り続ける野村は右ストレート、右カーフを当てていく。江藤にケージを背負わせて左ジャブを突く。野村が距離を詰めると、江藤がケージづたいに下がる。ケージ中央でサークリングする野村。江藤も潜り込んでアッパーを突き上げる。

江藤のシングルレッグを切った野村が右を突き刺す。江藤も左ローを返した。しかし打ち合いでは野村のパンチが明確に江藤の顔面を捉えている。野村のフェイントに対して大きく反応する江藤は、距離を詰めていくが野村の右ハイ、ワンツーを受けてしまった。江藤はシングルレッグからドライブし、ケージ際でハイクロッチに切り替えた。野村はケージにピッタリと背中をつけてディフェンスすると、レフェリーがブレイクをかけた。再開後、頭を下げた江藤の顔面に右ヒザを叩き込む野村。真っ直ぐ下がる江藤にパンチに連打を浴びせた。

最終回、江藤がガードを固め、頭を下げて距離を詰める。バックステップで距離をつくる野村はサークリングへ。距離が近くなると右ストレートを伸ばす。江藤のダブルレッグをスプロールした野村が、スタンドでは左ジャブを当て続ける。組めない江藤。野村の右が江藤の顔面を跳ね上げた。力、スピードともに落ちた江藤のテイクダウンを、野村がステップワークでかわす。しかし江藤が野村の右ストレートをかわし、ニータップで遂に尻もちを着かせた。

江藤はケージに背中を着けている野村を、ボディロックで抱える。立ち上がろうとする野村に肩固めを狙いながら、江藤がバックに回る。左足を差し込んだ江藤はパンチで削るが、野村にリストを抑えられてしまう。右手を離した江藤が、バックマウントからパンチを連打するも、野村が耐えて試合終了を迎えた。

裁定はジャッジ5名が全ての野村の勝利を支持。ベルトを巻いた野村は「最後は江藤選手の気迫に押された部分もありましたが、未完成でも勝つことができたので、もっと伸びしろがあると思います。これからもっと上に行くので、皆さん付いてきてください!」と語った。


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【DEEP121】江藤公洋に挑戦、空手家・野村駿太「裁定基準がこうだからというようなMMAはしたくない」

【写真】凄く凡庸な表現かもしれねいが、目力があって面構えが良い (C)MMAPLANET

本日16日(月・祝)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP121 Impactで、野村駿太がDEEPライト級チャンピオン江藤公洋に挑む。
Text by Manabu Takashima

全日本空手道選手権5位の実績を持ち、MMAに転じた野村は昨年7月に江藤と対戦し、テイクダウン&コントロールの前に判定負けを喫している。

あれから1年2カ月、MMAファイターのとして成長した野村にタイトル戦に向けて話を訊くと、MMAを戦うことで空手の本質を考えるようになったという興味深い言葉が訊かれた。(※取材は6日に行われた)


──試合まで約10日、タイトル挑戦に向けてどのような練習を行ってきていますか。

「所属するBRAVE、ロータス世田谷、あとは石渡(伸太郎)さんに週に1度で教わっています」

──石渡さんの指導も受けているのですね。

「もう3年ぐらいになります」

──そうだったのですか。石渡さんに指導を受けるようになったのは、どういうところからだったのでしょうか。

「もともと石渡さんのお父さんが、帝京大学空手部の初代に当たる大先輩なんです」

──ええっ!!

「そういう縁もあり、石渡さんも自分の大学の流派に空手を習いに来たりすることもあって。ちょうど石渡さんが指導に専念するタイミングで、教えていただくことになりました。BRAVEでは僕が入った時から、打撃の選手が増えてきた感じでレスリングは徹底して鍛えることができても、打撃を教えてもらう環境が整っていなかったので。

自分の空手をMMAに落とし込むことが、困難に感じていました。キックボクシングやムエタイの先生はいても、打撃のなかでも僕らのスタイルを理解しているという選手はほぼいないじゃないですか。僕自身、皆と同じルートを歩くのではなくて、僕には僕のルートがあると思っていて。打撃になると苦言を呈してくれる人もあまりないので、凄く有難い存在です」

──最近、MMAの判定基準がテイクダウンの評価が以前よりも低くなっている。そのようななかで、江藤選手との再戦となります。そこは何か影響はありますか。

「判定に関しては、(原口)伸があの試合で負けた。それがMMAの現実だと捉えるようにしています。ただ試合になるとポイントを意識することはあるかと思いますが、だからといって簡単に組まれたり、下になってはいけない。それは変わりないです。江藤選手には1年前に現実を見せつけられましたし、判定基準が変わったことで組みを軽視するようならここ(ロータス世田谷)では練習をさせてもらっていないです。何より今の裁定基準がこうだから、こういう試合をするというようなMMAはしたくないです」

──おぉ!!

「そんな勝ち方をしても嬉しくない。明白に勝ったと思われる試合をすることしか考えていないです。判定基準がストライカーに有利だと思うのでなくて、組みがデキるストライカーにならないといけないです」

──良いですねぇ。そのグラップリング面はロータスとBRAVEで積んできたわけですね。

「僕のなかで以前は壁レスとレスリングを分断していたのですが、そういうことじゃないと気づきました。MMAは流れのなかに色々な要素が組み合わさっているのに、そこを別モノと考えること自体が間違っていたと思います。

壁を使って守る。壁に押し込まれて休む。そんな意識だったことが、試合でも顕著に表れていました。今も技術として完全ではないですけど、意識としては繋がっています」

──そのような意識の変化があるなかで、今年はRoad to UFCを当初は狙っていると伺っていました。

「ハイ。最初はトーナメントがあると思っていましたし。去年の12月にDEEPの試合が終わって、3月に次の試合という話もあったのですが、それだと5月か6月のRoad to UFCに間に合わない。だからお断りして、Road to UFCからの返答を待っていました。

でも3月にトーナメントはないと分かりました。でも、これからどうなるか分からないし、それなら日本でDEEPのチャンピオンになることが大切だと。まぁRoad to UFCに限らず、海外からのチャンスが巡って来た時のためにもベルトを獲っておきたいです」

──と同時に、この再戦はこの間のMMAファイターとして成長度合が問われる試合になるかと思います。

「その通りだと思っています。ロータスで練習をさせてもらうようになったのも、前回の試合の時期からでした。僕の判断が間違っていなかったと証明したいです。あの時も勝つために戦っていましたが、こういう形になると負けてしまうという風に穴もありました。当時と比較すると、MMAとしてスタイルが固まってきたと思っています」

──組ませずに戦うことがベストだと思いますが、前回の対戦時と比べて組まれた時の対応力の差はどれほどだと感じていますか。

「前回の試合の時は局面によって相手の時間、俺の時間という意識がありました。でも、それも違う。どの局面でも自分のやるべきことをやる。例え組まれても、自分の時間。今回はそう思って戦います」

──MMAPLANETのインタビューで、江藤選手は前回対戦した時の野村選手は思った通りだったと言っていました。

「今もそう思い続けていてくれて、試合中にビックリしてくれた方が自分には都合が良いです。自分としては組ませずに勝つのが一番ですが、組まれても戦える。全ての面で、自分が勝ったと思われる試合をして勝ちます」

──2年前にゴン格の取材で空手時代とMMAに転向してからの打撃の違いを説明してもらいましたが、あの時に「MMAと空手は違うけど、空手の良さはある」というようなことを話されていました。これだけMMAファイターとして成長してきた野村選手ですが、その考えを今も持っていますか。

「あの時の打撃と、今の自分の打撃は全然違います。言うと……あの頃は空手を表面でしか理解できていなかったと感じています」

──おぉ。というのは?

「自分が思う空手は結局、競技面でしか見ることができていなかったです。空手の先輩に永木伸児さんという方がいて、世界空手道選手権で3位を2度、世界王者に1度なっている凄い人なんです。その先輩の凄さは、口で説明できないぐらいで(笑)。体に感じる凄さがあって。世界大会だと67キロや70キロで試合に出ているのに、無差別の全日本でも優勝しています。

永木先輩が南柏で道場(永木道場)をやっていて、月曜日と木曜日に子供達に組手を指導させてもらって、水曜日と土曜日に基本稽古と型をやっています。永木先輩と話す機会も増え、自分がMMAを戦うようになって気付いた空手を競技空手のなかでやってきていたことが分かったんです。そこに気付いた時、MMAと空手を分ける必要はないっていう発見ができました。

空手ではこうだっていう以前の自分の考えは、競技に寄り過ぎていただけで。競技空手は審判の判断ですから、良く見えるように戦う傾向があります」

──ハイ。同門の南友之輔選手も言っていました。

「でも永木先輩は『相手に分からないように突けば、良いんだよ』と根本が違っていて。僕はポイントを取るために、空手の基本を疎かにしていました。五輪に採用されたり、競技化が進むことで──部活動で勝つための空手になっていたんです。でもボクシングを習った時に、直突きでも共通点も凄く多くて。

そういう空手本来の突きを競技用に、自分のなかで変えてしまっていたんです。巻き藁を突く時と、競技で使う突きが違う。自分のなかで、そういう本質的なことを疎かにしていました」

──空手の理、原理原則、本質を忘れてはならないと。

「ハイ。強い突きをつくためにも、筋力でなく体の使い方。そういうことを学ぼうとするようになりました。何が大切なのかは、皆それぞれがあると思います。でも、皆と僕にはズレがあって。

空手は凄く深くて、まだ入り口に立ったぐらいですけど色々と変化はあります。そこを遠ざけているのが、これまでの自分でした。競技の空手では基本稽古は必要ないという意見もありましたし。でも、MMAをやるようになって基本稽古の体の使い方ができれば強くなれる──そう思うようになりました」

──いや鳥肌モノの言葉だと思います。実は今日、ここに来るまで他の選手の取材をしていました。その選手はフルコンタクト空手出身です。そして『試合は空手から遠ざかる。空手は基本稽古にある』というようなことを口にしていました。

「そうなのですか。いや空手は空手なのなかって思います。別に基本稽古の動きを試合でするわけでなく、そうなると流派で代わって来るじゃないですか。その奥、深いところに空手はある。当てれば良い、倒せば良いってことでもなくて……使い方というのか。

凄く言葉にするのは難しいんですけど、僕は子供への指導でも、ポイントを取るためっていう空手は絶対に教えたくないです。スミマセン、何を言っているのか……自分でも……」

──いや、凄く興味深いです。

「触れれば勝てるというモノではなく、見やすさでもなくて、相手にバレずに先に突けば良い。何よりも、そこに入るまでのことが重要で。そういう風に考えています。それは組み技や寝技で自分が倒されるために逃げるんじゃなくて、そこで戦うことに共通していて。相手本位で戦っていては勝てないということなんですよね」

──そうなると、居着いてしまっているわけですね。

「そう、そういうことです。MMAを戦うことになって、僕は空手への気づきが増えました。コイツと戦うのは嫌だと思わせることが、格闘技の本質として存在していますし。とにかく強い人って嫌じゃないですか。

それは打撃だけでなくて、組み力もそうで。相手に嫌がれるようになりたいですし、なれると思っています。まだまだ分かっていないですけど、考えて、自分が思ったことがそうだったと感じられることが嬉しくて。

それに永木先輩が言われているバレずに突く。相手が分からない攻撃ができる距離やタイミングってあると思うんです。虚をつくというか。ボクシングのなかでも、MMAのなかにも虚ってある。なぜか当たる選手って、それがあるからだと思うんです。スミマセン、タイトルマッチのことに全然ならなくて」

──いや、この考えを聞けたことが大収穫です。その野村選手の空手の理が最大限に発揮されるのは、実は次の試合ではない。筋肉と捻り効果でKO勝ちを狙う海外勢との一番だと勝手ながら期待させていただきます。

「ハイ。自分より力が強いヤツ。デカいヤツ。速いヤツはいます。それを分かっていて、同じようにやって一番になろうとはしない。でも、その場で戦っている。それが永木先輩だと思います。見て分かってもらえることじゃないかもしれないけど、そういうことを試合間隔が空いた時に考えて、自分と向き合える時間が多かった。それは、この試合でも生きると思っています」

■DEEP121 視聴方法(予定)
9月16日(月・祝)
午後5時35分~U-NEXT、YouTube DEEP/DEEP JEWELSメンバーシップ、サムライTV

■DEEP121 対戦カード

<DEEPバンタム級王座決定戦/5分3R>
福田龍彌(日本)
瀧澤謙太(日本)

<DEEPライト級選手権試合/5分3R>
[王者] 江藤公洋(日本)
[挑戦者] 野村駿太(日本)

<メガトン級/5分3R>
水野竜也(日本)
大成(日本)

<フライ級/5分2R>
KENTA(日本)
渡部修斗(日本)

<フライ級/5分2R>
関原翔(日本)
杉山廣平(日本)

<フェザー級/5分2R>
五明宏人(日本)
相本宗輝(日本)

<バンタム級/5分2R>
雅駿介(日本)
谷岡祐樹(日本)

<バンタム級/5分2R>
力也(日本)
鹿志村仁之介(日本)

<ストロー級/5分2R>
多湖力翔(日本)
中務修良(日本)

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【DEEP121】バンタム級王座を賭けた福田龍彌戦へ、瀧澤謙太「理想のスタイルは固まってきました」

【写真】幼少期の学んだことは残る。そして生かされる(C)SHOJIRO KAMEIKE

16日(月・祝)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP121で、瀧澤謙太が福田龍彌と空位の同バンタム級王座を争う。
Text by Shojiro Kameike

DEEP初参戦となった今年7月のCORO戦で判定勝ちを収めた瀧澤は、2戦めでベルトに挑むこととなった。連敗を脱したものの、本人としてはCOROとのタフファイトは「苦戦だった」と振り返る。しかし、そんな苦戦の中で見せた自身が理想とするスタイルとは。


フィジカルとスタミナの2つが伴ったことで、メンタルも良くなった

——前戦から2カ月後の試合となります。これだけ早いペースで試合をすることは瀧澤選手からの希望だったのですか。

「たくさん試合したいと思っていたので、良いペースです。今回勝てば年内にもう1試合やりたいという気持ちではいます」

——そしてDEEP2戦目がタイトルマッチとなりました。

「ベルトを巻くのは早いに越したことはないですが、2戦目というのはラッキーな巡り合わせですね」

——結果的にタイトル前哨戦となったCORO戦の感想を教えてください。

「1戦目よりも苦戦してしまった——倒し切れなかったです。1戦目は1~2Rと完全に支配して最後に倒すという、自分のやりたいことしかしていなかった試合で。今回は1Rにダウンを取り、2Rに相手が盛り返してきて、最終回に僕が手数で勝ったという感じでした。もうちょっと綺麗に勝ちたかったですね」

——なるほど。同時に、タフな試合で削り勝つことができた。それは今までの瀧澤選手の試合にはなかった、良い面だったのではないかと思います。

「ありがとうございます。実は試合の1週間前に、綺麗に風邪や喘息が治ったんですよ。もともと小児喘息があり、今も風邪をひいたら症状が出てしまう時があって。一度出ると、咳が治まるまで1カ月ほど掛かってしまうこともありました。そうなると練習にも支障が出たり、インターバル中にも咳が出てしまうこともあって」

——それはキツい……。

「今回もスタミナがヤバいかなと思っていたら、1週間前に風邪と喘息が止まったので、メチャクチャ自信ができました。ずっとフィジカルトレーニングとスタミナのトレーニングはやっていて、数値的には自分の最高記録を更新することができていたんです。そのフィジカルとスタミナの2つが伴ったことで、メンタルも良くなって。

CORO戦では最初のインターバルが終わって2Rが始まる時、次のインターバルから最終回に臨む時に『これは動ける!』と思いました。セコンドからも『ガンガン前に出て、確実に最終ラウンドを取れ!』とも言われていましたし、しっかり動くことができましたね」

——それは直近の試合で味わったことのない感覚でしたか。

「そうですね。まず井上直樹戦(2022年大晦日に一本負け)はあまり体調が良くなくて、さらに削られてスタミナもキツかったです。太田忍戦(2023年7月にTKO負け)は1Rで終わってしまいましたし、野瀬翔平戦もスタミナはキツかったですね。そこから集中してスタミナとフィジカルに取り組んで、CORO戦ではその2つが挙がったことを実感できました。

でもCORO戦より今回のほうが、スタミナもパワーも自信があります。試合まで残り1週間——今すごく体の調子が良くて、このまま自信を持って臨むことができます」

——今挙げた試合と比較して、CORO戦は自身が先手をとって試合をつくることができていました。

「やはりスタミナとフィジカルが伴うと、試合も自信を持って臨めますよね」

——もう一つ、試合中はずっとスイッチし続けていましたね。あれはテイクダウンディフェンスであり、CORO選手対策だったのでしょうか。

「あれは僕がずっとやりたかったことなんです。やっと試合で出すことができました。今までも練習仲間の対戦相手がサウスポーなら、僕もサウスポーで構えたりとか、対策練習でサウスポーになることはあって。だけど、いずれ試合でも実際に出したいとは考えていたんですよ。でもサウスポーになるとオフェンスはできても、オフェンスが甘くなったりすることもあって。オフェンスもディフェンスもできるようになったら試合で出そう、とはずっと考えていました。今後はオーソドックス、サウスポー両方出していきたいです」

福田選手が持っている戦いのメカニズムが分かってきました

——すり足でスタンスを変えるのは、スイッチというよりも空手の足捌きですよね。

「そうなんです! 僕はフルコンタクト空手をやっていて、相手との距離が近いフルコン空手では、オーソドックスかサウスポーかという概念が無いというか――流れの構えが入れ替わる、足が交差する場面は多くて。だから昔からオーソドックスでもサウスポーでも、攻めることはできていました。でもMMAだと顔面打撃とテイクダウンがあるので、そのディフェンスが試合でも出せるようになったということなんです」

——高校時代はレスリング部に所属していたとのことですが、空手のあとにレスリングを経験してスタンスに影響を及ぼしたのでしょうか。

「そういうわけではないですね。MMAを見越してレスリングを始めたので、打撃でいえばオーソドックス——左足前でレスリングもやっていました。オーソドックスのままテイクダウンに入れたほうが良いかなと思っていて」

——今回タイトルを賭けて戦う福田選手はサウスポーです。サウスポーに対しても、同じような足捌きで戦うことはできるのですか。

「もちろんです。自分の中で理想のスタイルは固まってきました。福田選手の場合は、どの展開で何が理に適っているか、理解して戦っている。試合映像を視ていると、福田選手が持っている戦いのメカニズムが分かってきました。分かっている技は掛からないとは思っていますね。福田選手のメカニズムにハマらないよう、自分から早く仕掛けていきたいです」

——瀧澤選手の視点が、まるで武術家のようです。

「あぁ、どうなんですかね。あまり人の試合は視ないんですよ。どちらかといえば練習で自分の攻撃が良い感じで当たった時、なぜそうなったのかを見直したりするほうが多いです。当たるパンチ、倒せるパンチって何かしら理由がある。そのパンチを分析して自分のモノにしたりするのが好きなんですよ。それこそが自分にとっての格闘技の楽しさであって。あとは試合が決まったら対戦相手の映像を視て、自分の技術を適応させていきます」

——その点では福田選手も同じタイプのファイターだと思います。今回の対戦が楽しみですね。

「そうですね。福田選手との試合は、いろんな展開を考えています。エキサイティングな試合をする選手だと分かっていますけど、漬けてくる場面もあるかもしれない。特に打撃勝負をして、分が悪いと感じたら——そういう展開も想定していますね。僕はKOを狙いますが、実は今までプロの試合で一度も自分からテイクダウンに行ったことがないんですよ」

——えぇっ!? そうだったのですね。

「アハハハ。自分からテイクダウンに行くことなく、ベルトを獲得できるのかどうか検証したいです」

——次の福田戦で初めてテイクダウンを狙おうとは思っていないのですか。

「いずれテイクダウンを混ぜていきたいとは思っていますが、いつにするのかは分からないです。自分の場合は寝技と打撃であれば、打撃のほうが勝つ確率は高い。でもテイクダウンに行くのはリスクも生まれるじゃないですか。もしかしたら今回テイクダウンを狙うかもしれないし、テイクダウン無しでベルトを獲るかもしれません。まだ見せていない部分は、メチャクチャあります。僕の試合を楽しみにしていてください。全て見せた時は、みんな驚くと思いますよ」

■DEEP121 視聴方法(予定)
9月16日(月・祝)
午後5時35分~U-NEXT、YouTube DEEP/DEEP JEWELSメンバーシップ、サムライTV

■DEEP121 対戦カード

<DEEPバンタム級王座決定戦/5分3R>
福田龍彌(日本)
瀧澤謙太(日本)

<DEEPライト級選手権試合/5分3R>
[王者] 江藤公洋(日本)
[挑戦者] 野村駿太(日本)

<メガトン級/5分3R>
水野竜也(日本)
大成(日本)

<フライ級/5分2R>
KENTA(日本)
渡部修斗(日本)

<フライ級/5分2R>
関原翔(日本)
杉山廣平(日本)

<フェザー級/5分2R>
五明宏人(日本)
相本宗輝(日本)

<バンタム級/5分2R>
雅駿介(日本)
谷岡祐樹(日本)

<バンタム級/5分2R>
力也(日本)
鹿志村仁之介(日本)

<ストロー級/5分2R>
多湖力翔(日本)
中務修良(日本)

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45 DEEP DEEP118 DEEP121 MMA MMAPLANET o ONE イ・ソンハ パンクラス 中村K太郎 修斗 大原樹理 天弥 江藤公洋 海外 野村駿太

【DEEP121】野村駿太の挑戦を受ける──江藤公洋「自分が積み上げてきたものをしっかりと出す」

【写真】落ち着き払っている江藤(C)TAKUMI NAKAMURA

16日(月・祝)に東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP121 Impactにて、ライト級王者の江藤公洋が初防衛戦で野村駿太の挑戦を受ける。
Text by Takumi Nakamura

3月のDEEP118 Impactでイ・ソンハに一本勝ちし、キャリア初のタイトル=DEEPライト級のベルトを巻いた江藤。戦績的にもこれで6連勝となり、30代半ばにして最盛期を迎えているといっても過言ではない。

好調の理由は「自分がやるべきことを淡々とやる」こと。今回の防衛戦でもそのスタンスは変わらない。そして「格闘家としてやり残しをなくしたい」と強豪外国人選手との対戦実現に向けて、静かに闘志を燃やしている。


過去に勝っている相手と再戦ということで『またこの相手か…』という気持ちはどうしても出てきちゃいます

――3月にイ・ソンハ選手をRNCで下して、DEEPライト級王座に就いた江藤選手です。ベルトを巻いた時の心境から聞かせていただけますか。

「シンプルにずっと1番試合に出ているのがDEEPだったので、そこでベルトを獲れたことが嬉しかったというのと、海外に流出したベルトを取り戻すことでDEEPに恩返しできたことが良かったなと思います。また格闘技をやってきた中でベルトという1つの形を作ることができてよかったなという気持ちもありますね」

――江藤選手にとっては初のベルトだったのですよね。

「そうなんですよ。自分は一度DEEPを離れて、ONEの方に行ったので、その関係でベルトに絡めなかったというところがありました。それからONEの契約が終わって日本に戻ってきて、またDEEPで試合をやらせてもらったことで、ベルトに絡めたというのはうれしいです」

――日本でベルトを巻くならDEEPで、という想いはありましたか。

「そうですね。日本の大会でDEEP、修斗、パンクラスで言ったら、やっぱり自分はDEEPにずっと出ていたのでベルトを取るんだったらDEEPかなと思っていました」

――冒頭にもあったように海外に流出したベルトを取り戻すこともモチベーションになっていましたか。

「日本から韓国にベルトが流出したことによって、逆にこんな強い選手いるんだと思って、この選手とやれたら面白いだろうなというドキドキ感が強かったですね。日本でも負けが少ない大原樹理選手がああいう形で1本負けして、ソンハ選手はそれだけの力がある選手ですし、やっぱり自分には海外の強豪とやりたいという気持ちがあります。だから✖日本人ではなく、海外の強豪とやれるという状況が面白かったし、これでベルトを獲り返せたら、面白いだろうなと思っていました」

――タイトルマッチのチャンスは何度も巡ってくるものではないです。このチャンスで絶対にベルトを巻くんだという気持ちもありましたか。

「自分的は年齢的にも、ここでチャンスを逃したら、次にチャンスが来るまでどのぐらい時間がかかるか分からなかったですし、 ここで負けてベルトを獲れなくて終わりでもいいのかなくらいの気持ちはありました。その中でしっかり結果としてベルトを獲れたというのは、今までやってきたことがちゃんと実って成果として出たと思うので、そこは良かったのかなと思っています」

――ソンハ戦の勝利を含めて6連勝となりましたが。好調の要因はなんだと思いますか。

「昔は『いい試合をしよう』や『派手なことをしよう』じゃないですけど、変に気合いが入りすぎていたんですよね。それで試合中に迷ったり、うまくいかないなと思ったり。アップの段階で動きが悪いなと思ったら、疑心暗鬼になって普段通りの動きができないことがありました。今はそういうことは考えず、今までやってきたことを淡々とやる。

試合は日常の練習でやってきたことの切り取りなので、そこで負けたら日常の取り組みで何かが足りなかったということだし、たまたまドカン!と1発いいのをもらって倒されたら、それは運がなかったんだと思うようになりました。そうなってからは淡々と自分がやるべきことをやる──そこに意識を置いて迷いなく戦えていることに繋がってるのかなと思います」

――例えば過去の試合では試合直前に気持ちがぐらついたまま、試合していたこともあったのですか。

「ONEに出ていた頃がそうでしたね、試合でインパクトを残さなきゃいけないということに囚われすぎていて。でもそういう経験をしたからこそ、今はそうならないように心がけているところもあるし、もしかしたらまたそれが試合で出てしまう可能性もあるので、そうならないようにしっかり意識して、気を緩ませないようにしようと思っています」

――今はもうこれで負けたらしょうがないという、いい意味で開き直って試合が出来ていますか。

「そうですね。あとはやっぱりこの年齢になってくると、キャリアの執着点をどこにするのか?だと思うんですよ。20代前半から半ばの選手だったら無限大の可能性がありますが、今年36歳になる自分はそうじゃない。じゃあそのなかで自分の終着点はどこなんだろう?と思うことは多々あります」

――2020年にONEでの試合に区切りをつけて、2022年11月以降はDEEPを主戦場に戦ってきました。まずはDEEPでベルトを巻くことが目標だったのですか。

「最低限DEEPのベルトは獲ることは意識としてあって、あとは海外の強豪とやって、やり尽くして、自分の可能性を食いつぶしたいと思う部分もあります。だから前回ベルトを獲って、初防衛戦で過去に勝っている相手と再戦ということで『またこの相手か…』という気持ちはどうしても出てきちゃいますね。

ここで勝った後もそういう(海外勢と戦う)チャンスが巡ってこないんだったらどうしようという。僕自身、ダラダラ(現役を)続けても仕方ないという部分もあるので、 色々と考えてしまいます」

――江藤選手の年齢・キャリアを考えると、どこにモチベーションを置いて、そこに向けて自分のネジを巻くかが重要ですよね。

「僕も年齢とキャリアを重ねて、どうしてもそこを工夫しないといけなくなったなとは思います。前回の試合は、相手も実績を残していて、ベルトも2本持っているというところでモチベーションが上がったんですけど、今回の相手はそうじゃない。だから対戦相手に対してではなく、自分に目を向けて淡々とやってきたことをやることに意識を置く感じですね。これまでの試合もそれをやり続けて結果を出してきたので、今回もそれと同じように勝ちに行きたいと思います」

ちゃんと組みにも対応してくると思うし、その先の展開も全然あると思っています

――野村選手とは昨年7月に対戦して判定勝ちしていますが、どんな印象を持っていますか。

「対戦相手は伝統派空手出身で飛び込みの一発がある。打撃の出入りでやってくる選手というのは分かっていたんですけど、その通りの選手だったかなと思います。前回は1発をもらわないように気を付けながらやっていて、今回もそれと同じ感じになるのかなと予想しつつ、向こうが1発いいのを当てるか。それとも自分が組み伏せるのか。そういう試合になるのかなと思います」

――前回の試合も踏まえつつ、試合中に起きたことに対応していくイメージですか。

「前回は相手が組みに対応できていなかったですが、今回はちゃんと組みにも対応してくると思うし、その先の展開も全然あると思っています。僕も仮にテイクダウンを切られたとしても、そこで終わりじゃないし、僕は打撃の攻防もできるので。トータルで上回った方が勝つことになるでしょうね」

――江藤選手としては野村選手にしっかり勝って。希望する外国人選手との試合を実現させる状況を作っていきたいですよね。

「はい。ただそこまで理想通りにいくのかな………って感じですね。試合前ではあるんですけど、この試合に勝った先に何かあるのかなと思ったりもしますし。ただ勝ち続けないと先の未来も見えないし、という感じですね」

――今現在練習ではどんなことを意識して取り組んでいるのですか。

「そこはもう本当に淡々とやるべきことをやる、みたいな。それが1番で、シャドーだったり打ち込みだったり、基本的な動きを体に染み込ませる作業が多いですね。スパーリングをガンガンやるというよりは、スパーリンももちろんやるんですけど、シャドーや打ち込みで何回も練り込んで染み込ませた動きが自然とスパーリングでも出るようにする。そしてそれが試合でもしっかり出るようにする。そういった作業が多いのかなと思います。

技術的なものを新たに覚えないといけないのかなと言うと、そうでもなくなっていて。それよりも1個1個の技の精度を上げるとか、それが自然と出るようにするとか。そういった部分を意識しています。どうしても年齢的に知らない間に落ちているものや劣化するものもあるわけで、そこにいち早く気づいて修正することもやっていかなければいけないなと思っています」

――自分の衰えに目を向けているからこそ、年齢を重ねてもいいパフォーマンスを継続して、結果を出せているのかなと思いました。

「やっぱり昔と同じやり方をしていると、この年齢になれば絶対に何かしらの変化が起こるわけで、自分はそういうところにも敏感に反応して、そこをちゃんとカバーリングしていくことを意識しています」

――スパーリングよりも一つの前の段階、シャドーや打ち込みは重要ですか。

「一周回ってそこが1番大切なのかなと自分は思っています。動画を見たりして、新しい技術も覚えて使えるようにはするんですけど、それよりも基礎的なものを練り上げる。その結果として、新しい技術が付属品としてあるというイメージですね。

新しい技術を覚えて、変にそういう技を使おうとすると、自分が軸にしているものが崩れちゃうので、 自分の軸をしっかりと保ちながら、チャンスが来たら(新しい技を)仕掛ける──ぐらいの感じです」

格闘家としてやり残しをなくしたい

――練習としてはHEARTSが主になっているのですか。

「HEARTS中心で、安藤晃司さんのNEVER QUIT、中村K太郎さんのユナイテッドジム東京に出稽古に行っています。HEARTSでは先ほど話した基礎的な練習とフィジカル、あとは同門で同じ階級で天弥くんもちゃんと成長してきてるので、彼らとスパーリングしていますね」

――天弥選手を始め若い選手たちと練習することは刺激になりますか。

「そうですね、天弥くんは自分とは全然違うタイプで(笑)。僕が選手を続けている間にどれだけ何かを伝えられるのか、ちゃんと練習相手になってあげられるのかという部分もあるので、ちゃんと彼が今後自分の思い描く未来に行けるように協力してあげれたらなと思います」

――ジムでは江藤選手が一番上の世代になるのですか。

「今はそうなりますね。現役でコンスタントに試合をしているとなると、自分がHEARTS所属では古い方ですね」

――そういった部分で格闘技に対する取り組み方も変わってきましたか。

「それはあります。昔は自分が強くなることだけだったものが、今はHEARTSのプロも指導するようになって。下の選手もちゃんと勝って、 チーム自体が盛り上がればいいなと思いますし、チームとして下の選手たちを育てていきたいです」

――改めて次の野村戦ではどのような試合を見せたいですか。

「繰り返しになりますが、やっぱり自分が積み上げてきたものをしっかりと出すこと。そこになるのかなと思います。彼が自分とやったときよりも成長していて、自分の組みにある程度対応できるようになっていたら、僕としてもその先の展開も見せれると思うので、そういうところも含めて、楽しんでもらえればなと思います」

――初めて江藤選手を取材させていただきましたが、試合前でもすごく落ち着いているのが印象的でした。

「そうなんです。そんなにギラギラしていなくて、本当に淡々とやってきたことをやる、積み上げてきたことをやるという感じなので。ファイターらしくないと言えばファイターらしくないかもしれないです(笑)」

――これから江藤選手が望む試合を実現させる・キャリアを積むためにも勝利が絶対条件ですね。

「はい。これからも淡々とやり続けて結果を出して、あとは格闘家としてモチベーションの大きな部分をしっかりと作っていきたいです」

――海外の強豪と戦いたいという気持ちはずっと変わらないのですか。

「やっぱりこう…やるなら強い相手とやりたいじゃないですか。自分の技術が通用するのか、しないのか。そういう相手と戦う!!』と心の底から思えるし、周りも喜んでくれるじゃないですか。あとは自分の可能性を使い切りたい、格闘家としてやり残しをなくしたいと思っているので、そういう試合をやっていきたいです」

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45 AB CORO DEEP DEEP120 DEEP121 Gladiator MMA MMAPLANET o RIZIN Wardog YouTube イ・ソンハ キック 中務修良 五明宏人 修斗 元谷友貴 力也 南友之輔 多湖力翔 大成 杉山廣平 水野竜也 江藤公洋 泉武志 海外 渡部修斗 瀧澤謙太 相本宗輝 福田龍彌 谷岡祐樹 野村駿太 関原翔 雅駿介 鹿志村仁之介

【DEEP121】福田龍彌✖瀧澤謙太、江藤公洋✖野村駿太。2階級のタイトル戦と、粒ぞろいすぎる2回戦!!

【写真】RIZIN枠を考慮し、旬を逃さないカードが組まれているDEEPだ(C)MMAPLANET

23日(火)、DEEPより9月16日(月・祝)に東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP121 Impactの対戦カードが、タイトルマッチ2試合を含み、11試合が発表されている。
Text by Manabu Takashima

ベルトが懸かった試合は、バンタム級王座決定戦=福田龍彌×瀧澤謙太、そしてライト級チャンピオン江藤公洋に野村駿太が挑戦する2試合だ。


フライ級王者でもある福田は、5月に元谷友貴とバンタム王座決定戦に出場予定だったが、タイでの練習中に肩鎖関節脱臼で欠場となっていた。

対する瀧澤は14日の後楽園ホール大会でDEEP初出場を果たし、COROに判定勝ちを収めている。試合後のマイクでは「DEEPのベルトを獲ってRIZINにリベンジしにいく」と宣言していた。超RIZIN後、9月以降のRIZIN参戦を目指し、ベルトを切符代わりとしたい瀧澤だが、CORO戦はテイクダウンを警戒して慎重なファイトに終始していた。

福田はいわば、命のやり取りをする覚悟で日々の練習をし、ケージに上がっている。そんな福田を凌駕するには、同じ戦意を持ち福田のフィールドに足を踏み入れる必要がある。それができれば、瀧澤の天賦の才といえる当て勘が活きてくるはずだ。

対して、福田としてはやはり負傷の復調具合が気になるところ。筋や腱に傷が及んでいれば、完治までそれ相応の期間は必要となる。それでも福田の性分からして、五体満足になることを欲して、試合機会を減らす選択はしないはず。つまりは完治しなくとも、瀧澤と斬り合い──セッションを求めるのであれば、このタイトル戦は福田にとってリスクが高いファイトとなる。

ライト級戦タイトル挑戦者の野村はDEEP120で泉武志から逆転TKO勝ちを収め、江藤へのリベンジと挑戦をアピールしていた。昨年7月に江藤のテイクダウン&コントロールに屈した野村は、泉のテイクダウン&コントロールを跳ね返したことで、自信を確信に変えてベルト獲りに挑む。

チャンピオン江藤は3月にイ・ソンハをRNCで下して以来、半年ぶりの実戦となる。RIZIN、海外再進出を模索する江藤はとにかく強さを見せての防衛が必要となってくる。

そんな江藤への挑戦に向け、泉を下した直後の取材で野村は以下のように話していた。

「来てくれる方が、ぶっ飛ばせます」(野村駿太)

──2日前のGladiator Challenger Seriesに出場したジムの後輩、南友之輔選手が右ストレートから左フックで強烈なKO勝ちを収めました。あのKOを見て、先輩としてやらないといけないという気持ちになったのでは?

「バリバリなっていました。『コイツ、やってくれるなぁ』みたいな(笑)。『野村さん、繋ぎました』とか言ってくれて。試合の流れも逆転勝ちで、変なところまで同じでしたね。友之輔がBRAVEに加わってくれたところで、自分がやって行くべきことのなかで、空手の良さも再発見することができました。

友之輔がやろうとしていることも、僕のなかで刺激になっています。木村(柊也)や南を見て、自分も『コイツらに負けていらない』という風になりますし。あの2人が、自分を手本にしたくなるような選手に、自分はなっていかないといけないです」

──泉選手を返り討ちしたことで、江藤選手への挑戦権を手にしたかと思います。同じテイクダウン&コントロールにしても、江藤選手のソレはより柔軟に包み込んでくるようなイメージがあります。

「そこは1度、触れているので。自分のなかで江藤選手と戦うなら、どうすべきが分かっている部分はあります。今日みたいにやられないように戦ってしまうと、また去年と同じになってしまうので、自分から仕掛けていっても良いと思っています。そこをタイトル戦で見て欲しいです」

──一発、右アッパーを被弾して下がらされました。

「攻め気でいた時に、自分の流れに持ちこみ過ぎようとして……余りない形のアッパーを貰いました。打撃が上手な人と練習をしていると、あのパンチはなくて。でも、喧嘩のような動きのパンチを貰ったのは反省材料です。変に自分のなかで貰わないという自信があって、それが慢心になってしまっていたかと思います」

──以前よりも、そして泉選手と比較しても、江藤選手は貰っても怯まないようになってきたようにも感じます。

「そっちの方が戦いやすいです。気持ちを強く持ってくれているほうが、向かい合ってくれるでしょうし。ビビッて距離を取られる方が面倒くさくなるので。変に自信を持ってくれている方が、術中にハメやすいです。来てくれる方が、ぶっ飛ばせます」

──打撃でなく、テイクダウンでも出てくる方が戦いやすいですか。

「逆にソレしかしてこないと思っています。泉選手には失礼な言い方になってしまいますが、あのスタイルでさらに強化されているのが江藤選手です。なので、今日は攻め込まれる場面があって良かったです。今日の経験を生かして、煮詰めていけばさらに成長できると思っています」

なお今回の発表ではメガトン級の水野竜也×大成が3回戦で組まれることが明らかとなっている。また関原翔×杉山廣平のフライ級戦、涙の引退から約1年で復帰の渡部修斗もフライ級でKENATと知りなおしの一戦。五明宏人✖相本宗輝のフェザー級戦。バンタム級ではルーツは立ち技同士、ムエタイ=雅駿介×キック=谷岡祐樹、同じくバンタム級で力也×禊の鹿志村仁之介。WardogからRIZIN、GRALDIATOR、HEX FSを経てDEEPストロー級戦線に辿り着いた中務修良✖Blackcombatでの勝利で6連勝中の多湖力翔のマッチアップ──と、粒が揃い過ぎている2回戦6試合も決定している。

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45 DEEP DEEP120 J-CAGE Report ブログ 泉武志 野村駿太

【DEEP120】野村の右がさく裂!泉に3RTKO勝利でタイトル戦をアピール、王者・江藤もそれを承諾

<ライト級/5分3R>
野村駿太(日本)
Def.3R0分32秒 by TKO
泉武志(日本)

野村がワンツー、四つ組みになると泉がテイクダウンを奪う。野村は右手をマットについて身体を起こして立ち上がる。泉はそのままスタンドでバックについて、野村の左足に自分の左足をフックする。泉は野村の動きに合わせて足のフックを変えて、自分の右足を野村の右足に深くフックしてクラッチ。さらに左手で脇の下から野村の左手を持つ。

この態勢から泉が右のパンチを下から入れて、持ち上げるようにテイクダウンを狙うが、野村は倒れない。野村は右のバックヒジを入れ、イズミは左腕を深く入れてRNCを狙う。ここで野村が正対して、ボディにヒザ蹴り。距離が離れると野村がプレッシャーをかけてジャブから右アッパー、右フック。組みの攻防になると野村が泉をケージに押し込む。

2R、野村が左フックから右、飛び込むような右ストレート、ワンツー。泉がダブルレッグに入って組みつくと、野村がケージに押し込んでヒザ蹴り。離れると野村が右カーフと左ハイキック。泉が右フックから組みつくが、野村が離れる。野村が右ストレートと右カーフ。泉は組みのフェイントを入れて右アッパー、そのまま組みついてシングルレッグからテイクダウンする。

野村も足をクラッチさせずにスイッチを使って逃げようとするが、泉は組み続けてバックについて右足をフックする。泉は1Rと同じように対角線の左手を取ってポジションキープして細かくパンチを入れる。残り1分で泉が左手を入れてRNCを狙うが、野村も腕を外す。終了間際に再び泉が左腕でRNCを狙うが極まらない。

3R、プレッシャーをかける野村が右ハイキック。さらに野村はジャブから左手で泉の左手をひっかけ、泉のガードを下げさせたところに右ストレートを叩き込む。これで泉の動きを止めると、野村はすぐに左フックを打ち込み、これで泉が前のめりに倒れる。すぐに立つ泉だが野村がそのまま後ろについて泉にパンチを連打し、レフェリーが試合を止めた。

試合後、野村は「心が折れそうな時にみんなが声を出してくれて頑張れました。今日倒し切れたのは僕が上に行くべき存在だからだと思います。江藤選手、次タイトルマッチお願いします」とライト級王者の江藤公洋に対戦アピール。ベルトを持った江藤がケージに上がると「試合見てました。見事な逆転劇だったと思います。タイトルマッチ受けます。それまでにしっかり自分も準備するので楽しみにしていてください」と野村の挑戦を受けると宣言した。

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45 AB CORO DEEP DEEP JEWELS DEEP120 K-1 MMA MMAPLANET o RIZIN UFC YouTube   カルシャガ・ダウトベック サンチン パンクラス ボクシング ユン・チャンミン リョート・マチダ 中村大介 久保優太 五明宏人 佐藤洋一郎 修斗 嶋田伊吹 平田直樹 斎藤 朝太 木下カラテ 梶本保希 泉武志 海外 瀧澤謙太 石塚雄馬 神田コウヤ 竹原魁晟 誠悟 野村駿太 鈴木槙吾 阿部大治

【DEEP120】体重超過の神田コウヤと対戦する木下カラテが語っていた──ハマるパンチと空手論

【写真】これが加藤丈博流ハマったパンチ。この湾曲に注目 。そしてゴツイ拳だ(C)MMAPLANET

本日14日(日)に東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP120 IMPACTで木下カラテが神田コウヤと対戦する。しかし、昨日の計量の結果、再計量でも1.9キロオーバーだった神田のイエロー2枚からスタートし、木下が勝利したケースのみ公式結果として認められるという変則マッチとなってしまった。
Text by Manabu Takashima

(C)TAKUMI NAKAMURA

格闘代理戦争のワンマッチで、ユン・チャンミンから見事なKO勝ちを収めたことでデビュー前から注目を集めていた木下。

だが修斗では打撃の強さを警戒されることとなり、厳しい状態が続いた。4年間で戦績は5勝6敗1分──しかし、2023年5月にからDEEPに戦場を変えると、RIZINでの久保優太戦こそ黒星を喫したが、DEEPフェザー級戦線では3連勝、3試合連続でフィニッシュ勝利と、結果だけでなくパフォーマンスそのものも変化している。

畠山祐輔、梶本保希に続き、タイトルコンテンダーの五明宏人を倒し、タイトル挑戦が見えてきた木下に変化、進歩について尋ねた(※取材は10日に行われた)。

すると空手家時代、そして今も師であり続ける武心塾・加藤丈博師範の「ハメる」論理を掴み、空手への理解を深めたことが好調の裏にあることが分かった。


──MMAPLANET初インタビューとなります。いきなりですが、DEEPで戦うようになってからの勢い。どのような変化が木下選手のなかであったのでしょうか。

「修斗で児山(佳宏)選手と戦って1RTKO勝ちができて、良い勝ち方ができたと思ったら、次の竹原魁晟戦(2022年10月)で酷い負け方をして。あの時に大沢(ケンジ)さんから、『層の厚いDEEPで戦って、より厳しい状況においてしっかりとやっていかないか』というようなことを言われたんです。

それから練習でも細かい部分を意識していくようにして、練習以外でも自分を変えよるようになりました。そうですね、ケージって戦う人間の人となりが出ると思うんですよ。今でも(江藤)公洋さんや大沢さんから『後片付けができない』って指摘されるんですけど(苦笑)、そういう部分ですね。やることは早く済ます……とか」

──つまり普段の自分を律するようにしたと。

「そこまでじゃないんですけど、普通のことを普通にできるように……ですね(苦笑)」

──普段の自分を変えることで、ここまで戦績も良くなった?

「人となりを気にすることで、練習への集中力が変わりました。打撃も組みも細かいところまで気にするようになって。何より練習の時から、本番に挑むイメージを持つようになったんです。やっぱり試合と練習は気持ち的にも違うので、そのズレを少なくするようにしました。

あと打撃の方では、自分の打撃の基礎は武心塾の加藤丈博(1991年、全日本ウエイト制中量級準優勝、第5回全世界空手道選手権日本代表。ボクシングでも活躍し、空手家としてMMA=パンクラスにも挑む)先生なんですけど、DEEP初戦だった畠山(祐輔)戦の頃になって、ようやく先生の言っていることが分かるようになったんです。

先生って技術が独特なんですよ。本人は謙遜されているんですけど、天才なんです。で、天才の言うことって全然分からなくて(笑)」

──アハハハハハ。凄く分かります。リョート・マチダが前蹴りでヴィトー・ベウフォートをKOをして、観空大の前蹴りだと言われても誰が真似ができるのかと。グレイシーがRNCや三角絞めで勝って、皆が影響を受けたのとは違うかと思います。

「そうなんですよ(笑)。空手の人たちってセミナーを開けないです。多くの人にいっぺんに教えるって、彼ては本来はできないものだと思うんです」

──確かに沖縄の手、唐手(トウディ)は、もとは1対1で指導をしていたもので。それが体育の授業に用いられ、集団に指導するようになって武道から運動に代わりました。

「僕は加藤先生から型も1人でやるものだと教わりました。直接の指導になると、ずっと基本稽古をやっていて。そこに先生は自己流でボクシングなんかを融合しているんですけど、その説明の仕方が奇抜すぎて(笑)。ずっと『何、言っているんだ』と思っていたんです。大体、第5回世界大会の日本代表なんて天才だらけですよね」

──緑健児、増田章、黒澤浩樹、八巻健志、七戸康博、岩崎達也、加藤丈博……。

「天才ですよ。天才の言うことは分からない(笑)。先生はパンチが巧い人で、その表現がハマるというモノだったんです」

──ハマる……。

「ハイ。もともと僕は蹴りの選手で、パンチは下手で分からないなりにやっているんですけど、『ハマんねぇな』と。でも、ハマるってなんだよって(笑)。そのハマるというのが、畠山戦前からようやく理解できるようになったんです」

──つまり、ハマるとは?

「それが……いざ、分かるようになってくるとハマるとしか表現のしようがなくて(苦笑)」

──ダハハハハハ。最高です。

「あれだけちゃんと説明してくれよって思っていたのに、いざ自分ができるようになると加藤先生と同じことを言っているんですよ(笑)」

──ハハハ。では畠山戦の左フックは?

「完全にハマったヤツです。手首でキュッと持っていくと、肩甲骨がキュッとハマって」

──自然とヒジが湾曲を描く?

「そうそうそう、それです!! そこでハメるんですよ。ヒジを下に向けると、肩甲骨がちょっと立つ。結果、サンチン立ちと一緒なんですよ」

──いや、木下選手からサンチンについて、そのような意見が聞かれるということは──木下選手のサンチンは極真のサンチンではなかったのですね。

「極真とは違って、ガニ股でも内股でもない。ヒザが内側を見ているようで違うんですよね。内も外も向いていない」

──だから内側からも、外側からも蹴られて強い、と。いやぁ、木下選手……面白いです。フルコンタクト空手家でなく、空手家ですね。

「そういうサンチンの構えの強さに気付いたのは、レスリングの練習をしていた時なんです。

時田(隆成。中央大学時代の2021年に全日本大学選手権フリースタイル61キロ級3位。アマパン=東関東選手権Sクラス・バンタム級Tで優勝)さんとトライフォース東中野で、平田直樹選手なんかと一緒に練習をしていて。

いうと、僕がほぼイジメを受けているような練習なんですけど(笑)。そこでテイクダウンを切るときにケツを入れると、親指はどうしても外に開くじゃないですか。そうなると、生物として弱い。簡単に倒されるし。『これはおかしい』って思うようになったんです。ガニ股のサンチンは違うって。

その時にK-1に出ている山口翔太選手に連絡をとって尋ねたんですよ。『ガニ股のサンチン立ちは、弱くないですか』って」

──スミマセン、立ち技格闘技は全く疎くて……。

「山口選手は、もともとは白蓮会館の空手家で白蓮の全日本は当然として正道会館やJFKOでも全日本で何度も優勝しています。今はK-1で活躍していて。そんな山口選手が山城(美智)先生の沖縄空手研究会に参加されていることを知っていたので……」

──「ガニ股のサンチンは違うだろう」と相談した?

「ハイ。山口選手と話して、僕も『親指を思い切り踏んで固定し、ヒザを外に向けてガニ股ということでなく、ケツを入れてヒザを崩れないようにする』ということだと気づいたんです」

──強いからブレず、でも柔軟に動くことできる本来……というのはおかしいかもしれないですが、空手の理ですね。

「そうッスよね。きっと、空手が沖縄から本土に渡って来た時に普及するために分かりやすさが大切になり、そのヒザの固定がガニ股とか流派によっては内股とかに変わってしまったんじゃないかと」

──MMAの試合を控えたMMAファイターとのインタビューから逸脱していますが、非常に面白いです(笑)。

「アハハハハ。でも、それって生き物として強いことだと思うんです。だから別に空手をやっていなくても、生き物として強い選手の姿勢ってそうなっている。

このテイクダウン防御で強い体って、加藤選手が言おうとしてくださっていた強いパンチを打つときの体の構造と同じだったんです。『あぁ、こうして。こうやるんだ』って言われていたことと(笑)。

加藤先生の特別なところは、武道の動きは直線的じゃないですか。そこにフックを加えたことなんですよね。ただ、それがフックじゃない。振っているけど、出し方は真っ直ぐで。

ヒジがやや湾曲している縦から横への拳の動きで。そこに加藤先生は手首を入れることを加えたんですよ。足からヒザ、腰、肩、ヒジと固めてフレームから、手首を振って」

──つまりは、それが加藤丈博師範のハメる理論なのでは……。 

「あっ、そうですね。これが一つ掴めると、他のことも分かって来る。幹ができたから、神経が枝葉にも行き渡るというか。こういう風にちょっとずつ理解を深めている際中ですね。

接近戦でも、決してボクシングではないんですよ。ただディフェンスは加藤先生も完全にボクシングで。防御という部分での空手は僕はまだ分かっていないです。同時にパンチの質は誰が見ても分かってもらえるぐらい変わりました。デカいグローブでミットをやっても、皆が痛いと言っています。

それをいうと加藤先生は試合用の小さなグローブでやっていて、中指と人差し指のところはグローブが破けるんですよ」

──えぇ、凄まじいですね。

「それを見せてくれていたので。説明は何を言っているか分からないですけど(笑)」

──アハハハ。そんななか神田選手との試合に向けて、組みに打撃戦を加えて神田選手のスタイルに、木下選手はハメることができるのか。

「打撃の時間を多く創れたら、神田選手はおっかなくてしょうがなくなると思います。組みは……木下カラテって言っていても、MMAの門を叩いてずっとやってきた部分です。HEARTSでこれだけやってきたので、そんなに簡単にやられない自信はあります。それでやられればしょうがない。でも、そんな緩くないですよ。僕がここでやってきたことは」

──今回の試合でDEEP4連勝となると、タイトル挑戦も見えてくるかと。そこから先はどこを目指しているのでしょうか。

「やっぱり、海外。ベストはUFCです。現役でやる以上、そこを意識しないと。でも僕はレコードが汚いんで、現実的かどうかといわれと、まぁ非現実的ですよね。だったらMMAを続けている限り、少しでも強いヤツと戦っていきたいです。

RIZINのフェザー級で中央アジアとか強いし、チャンスがもらえるならどんどん戦っていきたい。それに僕みたいに強くなるためにUFCを意識している人間と、本気でUFC一本でという選手ってキャリアの積み方も違うと思うんです。

UFC一本の選手は、やっぱりキレーなレコードでいないといけないから、強い相手に触れないで進むことも必要で。対して僕の場合はカルシャガ・ダウトベック選手然り、ラジャブアリ・シェイドゥラフ選手然り、ヤバい連中に触れて負けても損はない。

UFCが現実的でないから、そういう相手を望んでいける。それでもUFCへの想いを完全に消すことはできないのですが、強いヤツと戦うことができるなら場所は問わないです」

──では世界の猛者と戦うために、越えないといけない神田コウヤ戦。どのような戦をしたいと思っていますか。

「やることは決まっています。レスリング×空手、グッといって、そこでガガァとやってからドンと仕留めます」

──完全に加藤イズムを継承していますね(笑)。

「アハハハハ」

■視聴方法(予定)
7月14日(日)
午後5時45分~U-NEXT, サムライTV, YouTube DEEP/DEEP JEWELSメンバーシップ

■DEEP120計量結果

<DEEPウェルター級選手権試合/5分3R>
[王者]鈴木槙吾:76.95キロ
[挑戦者]佐藤洋一郎:77.05キロ

<バンタム級/5分3R>
CORO:61.45キロ
瀧澤謙太:61.50キロ

<フェザー級/5分3R>
中村大介:66.20キロ
白川Dark陸斗:66.20キロ

<ウェルター級/5分3R>
阿部大治:77.40キロ
嶋田伊吹:77.30キロ

<フェザー級/5分3R>
神田コウヤ:68.05キロ
木下カラテ:66.05キロ

<ライト級/5分3R>
野村駿太:70.75キロ
泉武志:70.70キロ

<メガトン級/5分2R>
誠悟:119.30キロ
朝太:103.90キロ

<ライト級/5分2R>
石塚雄馬:70.75キロ
佐々木大:70.75キロ

<68キロ契約/5分2R>
太田将吾:67.75キロ
相本宗輝:67.95キロ

<フライ級/5分2R>
木村琉音:57.10キロ
斎藤璃貴:57.00キロ

<アマ・フェザー級/3分2R>
菅涼星:66.15キロ
平石光一:65.90キロ

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【DEEP120】計量よもやま話。前売り完売の後楽園、佐伯代表と好調の理由を立ち話。計量後の握手率は……

13日(土)、東京都新宿区ホテルローズガーデンのオークルームで明日13日(日)に文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP120 IMPACTの計量が行われた。
Text by Takumi Nakamura

メインのDEEPウェルター級選手権試合をはじめ出場選手が続々と計量をクリアしていくなか、神田コウヤが68.05キロでフェザー級のリミットを約2キロと大幅にオーバー。対戦相手の木下カラテは66.05キロで計量をクリアしており、16時に行われる神田の再計量の結果によって、この試合がどういう形になるか公式アナウンスされる。


今大会は7月6日時点で前売りチケットが完売し、当日券5,000円を残すのみ。後楽園ホールもステージを作らないフルバージョン仕様で、まさに超満員の大会だ。瀧澤謙太、白川Dark陸斗、阿部大治といったRIZINを主戦場にするファイターが並びつつ、メインの鈴木×佐藤、神田×木下、野村駿太×泉武志などDEEP内で組まれた好カードが散りばめられている。

前回の後楽園大会=5月のDEEP119も前売りチケット完売だったが、元谷友貴と対戦予定だった福田龍彌の欠場で払い戻しがあったためフルハウスとはならなかったが、最近のDEEPの好調ぶりがうかがえる。計量後に佐伯繁代表にDEEP好調の理由を聞いてみた。

「ここ最近はRIZINにおけるDEEPの立ち位置が分かりやすくなってきたかもね。RIZINで試合のチャンスがないけど、試合をしたいという選手がうち(DEEP)に出るようになって。うちはRIZINを目指す選手、Road to UFCを目指す選手…色んな目標を持った選手が出てもいいと思っているから。

あとはRIZINの選手だけじゃなくて、うちで温めてきたものが、いい形になっているという実感もあります。DEEPの選手たちもファンに知ってもらえるようになって注目度が上がっているし、相本宗輝選手とか木村琉音選手とか新鋭も出てきている。CORO×瀧澤と中村大介×白川だって、瀧澤・白川にとって簡単な試合じゃないから。RIZINから来た選手とDEEPで上がってきた選手がやる図式も面白いし、DEEPで温めてきたカードも面白い。今はすごくわかりやすいイベントが作れてますよ」

佐伯代表によれば、正式発表こそまだではあるものの、秋までの主要マッチメイクもほぼほぼ決まりつつあるということ。正式アナウンスを待ちたい。

ちなみにDEEPでは計量→写真撮影→選手挨拶という順で計量が行われるのだが、選手挨拶を終えてそのままステージから降りる選手もいれば、双方のコメントが終わって握手を交わしてリングを降りる選手もいる。この日はアマチュアルールも合わせて全11試合中6試合で握手が交わされ、握手率は54.5%だった。

■視聴方法(予定)
7月14日(日)
午後5時45分~U-NEXT, サムライTV, YouTube DEEP/DEEP JEWELSメンバーシップ

■DEEP120 対戦カード

<DEEPウェルター級選手権試合/5分3R>
[王者]鈴木槙吾:76.95キロ
[挑戦者]佐藤洋一郎:77.05キロ

<バンタム級/5分3R>
CORO:61.45キロ
瀧澤謙太:61.50キロ

<フェザー級/5分3R>
中村大介:66.20キロ
白川Dark陸斗:66.20キロ

<ウェルター級/5分3R>
阿部大治:77.40キロ
嶋田伊吹:77.30キロ

<フェザー級/5分3R>
神田コウヤ:68.05キロ
木下カラテ:66.05キロ

<ライト級/5分3R>
野村駿太:70.75キロ
泉武志:70.70キロ

<メガトン級/5分2R>
誠悟:119.30キロ
朝太:103.90キロ

<ライト級/5分2R>
石塚雄馬:70.75キロ
佐々木大:70.75キロ

<68キロ契約/5分2R>
太田将吾:67.75キロ
相本宗輝:67.95キロ

<フライ級/5分2R>
木村琉音:57.10キロ
斎藤璃貴:57.00キロ

<アマチュアルール フェザー級/3分2R>
菅涼星:66.15キロ
平石光一:65.90キロ

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