【写真】不器用な選手が要領が良くなるのではなく、手順を覚えると強くなる(C)SHOJIRO KAMEIKE
12日(土)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP110で、COROが石司晃一を挑戦者に迎えてDEEPバンタム級暫定王座の初防衛戦を行う。
Text by Shojiro Kameike
2011年のプロデビューから11年、今年5月にDJ.taikiを下してベルトを巻いたCOROだが、その11年は決して平坦なものではなかった。勝っては負け、勝っては負け――さらに2017年までは連敗も繰り返してきた。しかし現在所属するK-Clannの横田一則代表との出会いから、遂に王座を掴んだCORO。その11年の苦労と、対戦相手である石司との意外なエピソードを語ってくれた。
――今年5月にDEEPバンタム級暫定王者となって半年が経ちました。まずベルトを巻いた感想はいかがですか。
「十何年やってきて、やっとベルトを獲れたので嬉しいですよね」
――現在の日本MMAを見渡しても、屈指の苦労人かと思います。修斗では新井丈選手が9連敗から王者にまで昇りつめて注目を集めました。CORO選手も、何度も勝利から連敗を繰り返した末の王座奪取です。
「メチャクチャ苦しい時期もありました。でもMMAが好きだから続けてきたので。そうですね……キツかった、としか言いようがなくて(苦笑)」
――どの時期が一番キツかったのでしょうか。
「パンクラスで3連勝したあと、瀧澤謙太選手と上田将勝選手、それとハワイの試合(エドワード・トムズ戦)で3連敗したんですよ。次の試合で神田T-800周一選手に勝ったあと、また連敗しました。その時期が一番キツかったです」
――2015年から2017年にかけてのことですね。
「いま思うと、無駄に試合をしすぎたなって思います。とにかく早く上に行きたくて、どんなオファーでも受けていました。スクランブル発進でも。それが良くなかったです。ちゃんと技術が追いついていないのに、試合だけしていて。それで連敗を重ねてしまったので」
――たとえば2015年は10月4日に瀧澤戦、11月1日に上田戦があり、その月末……11月28日にハワイで試合をしています。特に瀧澤戦はKO負けしているだけに、競技面でも以降は行うべき試合はなかったように感じます。
「アハハハ、そうですよね(苦笑)。どれも怪我があるのに直前のオファーを受けて、メチャクチャだったと思います。マネージメントも自分でやっていて、オファーが来たらすぐ、やりますと」
――この時に、自分のキャリアに対して限界を感じることはなかったのでしょうか。
「格闘技が好きだったので、辞めようとは思わなかったです。会場へ観に来てくれる人は、だいぶ減りましたけど(笑)。でも練習は好きだし、練習していたら試合したくなって。観に来る人がゼロになっても、好きだから続けようっていう感じでした」
――会場へ観に来てくれる人が減ったというのは、どれくらい減ったのですか。
「プロデビュー当時と比べたら、半分ぐらいに減りました」
――残り半分の方も、それだけ試合をして怪我もあり、さらに連敗していると心配していませんでしたか。
「はい、つまらなくても良いから勝ってくれと(笑)」
――アハハハ、応援してくれる方も勝っている姿を見たいですよね。試合内容でいえば、当時は何が課題だったと思いますか。
「試合中は自分を客観的に見ることができていなかったのかな、と思います。いつも焦って試合をしていて。自分が得意なところも分かっていなかったし、そこが重要でした。今は試合中に焦ることはないので。昔から練習では自信があったんですよ」
――練習でやっている内容を試合で出すことができない。それは致しかたないことですが、程度にもよるかと。
「やっぱり試合は怖いし、焦って自分から行ってしまう。見合う時間が嫌に感じて、バーッと前に出てしまう。そういうところを克服できたのは、横田(一則K-Clann代表)さんと出会ってからですね。
6~7年前……2017年の藤井伸樹戦(判定負け)あたりですね。当時は出会ったばかりで、まだ結果は出ていなかったんですけど、DEEPに出始めてから少しずつ結果が出て来るようになりました」
――そうですね。2107年12月からDEEPに参戦して2連敗、次に2引き分けから2連勝となりました。
「横田さんと話し合って、ちゃんと勝ち星を重ねて上に行けるように、練ってもらいました。そこから実戦を考えた練習ができるようになったんですよ。もともと和術慧舟會TLIVEで練習していて、当時は牛久(牛久絢太郎)とガチスパーばかりやっていて。そこからMe,Weで“横田練”が始まり、いろんなタイプの選手と練習することで視野も広がりました。その成果が出始めたのは、DEEPで連勝するようになった頃だと思います」
――ということは、2019年10月の清水俊一戦(判定勝ち)からでしょうか。
「そうです。実は白川“Dark”陸斗戦(2018年8月にドロー)のあと、首のヘルニアで練習できなくなって。そこで、ただガムシャラにやっているだけではダメだなって、いろいろ考えるようになりました。それと当時、自分で仕事を始めたんですよ。おかげで以前のようにガッと格闘技に集中しているだけじゃなく、気持ちにも余裕が持てたのが大きかったです」
――2018~2019年といえば、1988年生まれのCORO選手にとっては30歳を超えたあたりですね。格闘技を続けていくにしても、30歳を超えたところで生活面を考えたのですか。
「メチャクチャ考えました。それまでバイトしながら格闘技を続けていて、どうしようって焦りもありましたし。だから早く勝って上に行きたい――そう思って、どんな試合でも受けていたんだと思います」
――……。
「あとはヘルニアになって、格闘技を続けることもできないんじゃないかと思ったんですよね。すると、どうやって生きていくのか。そのために自分で開業して。そうしているとヘルニアも良くなってきたので、また試合に出ようと」
――それだけ好きで続けてきた格闘技です。ヘルニアを発症し、格闘技を続けられないのでは……と思った時の心境はいかがでしたか。
「いや、もうヘルニアが痛すぎて、格闘技のことは考えられなかったです(笑)」
――アハハハ! それはそうですよね。
「とにかく痛くて。早く治ってくれ、としか考えられませんでした。それで1年ぐらい練習していなくて、清水戦の直前から少しずつ体を動かし始めた状態でしたね。ただ、少し焦りはありましたけど、もう他と比べても仕方ないし、自分ができることをやろうと」
――なるほど。そうして復帰したなか、2021年6月には今回ベルトを賭けて戦う石司選手に判定負けを喫しています。
「昔、石司選手と一緒に練習していたことがあるんですよ。週2~3ぐらいのペースで」
<この項、続く>
■視聴方法(予定)
11月12日(日)
午後5時50分~SPWN PPV
午後5時50分~ニコニコ生放送
■ DEEP110対戦カード
<DEEPバンタム級選手権試合/5分3R>
[王者] CORO(日本)
[挑戦者] 石司晃一(日本)
<DEEP暫定メガトン級王座決定戦/5分3R>
酒井リョウ(日本)
赤沢幸典(日本)
<DEEP女子ミクロ級選手権試合/5分3R>
大島沙緒里(日本)
古瀬美月(韓国)
<ライト級/5分3R>
北岡悟(日本)
江藤公洋(日本)
<フェザー級/5分3R>
中村大介(日本)
神田コウヤ(日本)
<ライト級/5分3R>
川名TENCHO雄生(日本)
高橋“Bancho”良明(日本)
<バンタム級/5分2R>
雅駿介(日本)
鹿志村仁之助(日本)
<フェザー級/5分2R>
TATSUMI(日本)
五明宏人(日本)
<バンタム級/5分2R>
KENTA(日本)
朝比奈龍希(日本)