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【Pancrase347】ホン・イェリン戦前のアトム級QOP SARAMI「塩漬けです。もう、ああいう勝ち方はない」

【写真】有終の美ではないかもしれないが、終わりを見て現役生活を全うしている (C)MMAPLANET

本日29日(日)、東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase347で、アトム級QOPのSARAMIがホン・イェリンとノンタイトル戦で戦う。
Text by Shojiro Kameike

3月に同王座決定トーナメント決勝で沙弥子を48秒で下したSARAMIにとって、あの右ストレートで一発の勝利は何を意味したのか。その後、パンクラスイズム横浜を離れ、毎日のように違う場所でトレーニングの日々を送る。

「この生活も長くは続けられない」というSARAMIに3月のKO劇と今、そして──これからについて尋ねた。


――もう次の日曜日にホン・イェリン戦を控えているSARAMI選手ですが、今一度3月のアトム級王座奪取について話をきかせてください。見事過ぎる右ストレート一発のKO劇。格闘技生活で、一番の喜びようだったのではないかと。

リモート取材を行った24日の時点では、藤野恵実につけられた傷が残っていた

「あの瞬間は『嘘でしょ!!』っていう感じでした」

──そこから笑顔の時間が、凄く長かったです。

「アハハハハハハ。北岡(悟)さんや、矢澤(諒)君は『パンチで倒す』と思っていたらしいです。いつか、パンチで倒すと。北岡さんにはずっと前から言われていました。でも、私はできないだろうって思っていたんです。女子で一発KOなんて、ないじゃないですか。まさか自分がするなんて思っていなくて(笑)。打撃に自信があるわけじゃないので」

──ただ、あのパンチです。練習をしてきて、成長しているという風に自分で感じることはなかったですか。

「自分の右のパンチが凄く強いという実感はありました。打ち方とかも、凄く考えてきたので。それは分かっていたけど、試合でソレを出せるとは思っていなかったです」

──あの勝ち方をこれからも続けたいという想いは?

「ないです」

──本当ですか。それを想って戦えないかもしれないですが、どこか少しでも残っていないですか。

「えぇぇ……。また、したい気持ちはありますけど。アレを狙うと、絶対にできないです。自分の攻めをしているなかで、ああいう偶然が起これば良いかなって。あのパンチを狙うと、自分のスタイルが崩れてしまいます。私の試合はドロドロで、勝つ時も負ける時も。殴り合いって誰でもできるので、それは余り格好良いとは思えないんです」

──練習仲間、女子選手たちの反応はどうでしたか。

「びっくりしていました。練習では私は打撃が上手くはないので。男子も女子も当てっこゲームが上手な人が、練習では打撃は上手です。思い切り打てないから、試合とは違うと思っています」

──ぶっちゃけてKO勝ちとタイトル奪取、どちらの方が嬉しかったですか。

「一発KOです」

──ずっと練習を続けてきて、あのKO劇があって良かったと本当に思います。

「私の人生にこんなことがあるんだって。本当に。私、格闘技の試合で勝って、お客さんが盛り上がる瞬間──あの気持ち良さって多分、結婚式をする時の気持ち良さよりも上だと思うんです。なのに、あんなKO勝ちしちゃうと、もう最高ですよ」

──そんなタイトル奪取後、所属先が整体北西に変わりました。

「もともとトーナメント中もパンクラスイズムで練習するのは1度か2度で。ジムの面子も変わっていく中で、私が格闘技をやる場所はイズムではなくなってきたように思えたんです」

──練習場所が所属名になったわけではないですよね。

「ハイ。私がずっと体を見てもらってきた整体です。北西(英司)さんはパンクラスができた頃から、選手の体を診ていて、格闘技の試合も物凄く見ている人で。フォースタンス理論に出会えたから、こっちに出てきて少し結果を残せたと思っています」

──イズムを離れる時、どこかジムの所属になろうと考えることはなかったですか。

「それは今も迷っています。決まった練習場所があることは大切だと思うので。ただ試合がもう決まっていたから、そこままという感じできました」

──今、練習場所はどういう風になっているのでしょうか。

「なかなか、色々なところに行っています。行動範囲は相当に広いですよ(笑)。女子選手がいるところに、練習に行かせてもらっていて」

──では万智選手ばりに1週間のルーティンをお願いします。

「月曜日は朝から仕事をして、夜は坂口道場に行きます。火曜日は昼ぐらいにKRAZY BEEに行き、夕方は元町にあるクロスフィットでパーソナルトレーニング。夜はカルペディウム三田のレスリングクラスに参加したり、しなかったり。水曜日は1日仕事をして、行けたらファイトベースに。木曜日も1日仕事して夜に東中野のトイカツ道場。金曜日は昼にマスタージャパンでグラップリング、夕方は国立に体の使い方のコンディショニング・トレーニングに行って、夜に整体をして帰って来ます。

土曜日は朝から仕事をして、夕方に千葉の市川市にあるトランセンド・ジムでロッキー川村さんにミットを持ってもらっています。で日曜日の朝にJTTに女子練習ですね(笑)」

──仕事をしながら……ですよね。1週間で7位置の練習を。

「やばいですよね(笑)」

──その原動力は何なのでしょうか。

「不安だから。やらないと不安なんです。もちろん毎週 、完璧にやっているわけじゃないですけど、この生活と練習を維持するには心もお金も、体力も大変です」

──そうですよね。

「だから、これをずっとやっていられないなって。引退も近いのかなって思っています」

──それでも結婚式よりも嬉しいモノがMMAでの勝利なわけですよね。

「結婚式をしたことないんですけどね(笑)。私は結婚して子供も欲しい。だからずっとできない」

──そうなると限られた試合のなかで、今回はタイトルマッチでないですが、その辺りはどのように思っているのですか。

「ホン・イェリン戦が用意されたことに、全く不満はないです。ちゃんと強い相手ですし、国際戦が戦いたかったので。用意してもらった相手に、今の全てをぶつけます。対戦相手の格とか関係なく、準備したことを全て出します」

──それは右ストレートですね(笑)。

「違います(笑)。塩漬けです。もう、ああいう勝ち方はないし、一度したから思い切り漬けにいけます(笑)」

──女子は比較的行き来ができていますが、これからのキャリアをどのように考えていますか。

「目標がなんなのかよくわからない状況ではあるんですけど、海外でやりたいです。もう日本人は皆やったし、今さら新しい子とやる必要はないかなって。めちゃくちゃ強い外国人にメチャクチャにやられたら、辞めることができるかなって」

──刹那的ですね。

「もう私、敵わないんだっていう経験をしたら辞められるかなって」

──その将来を望むとしても、メチャクチャ強い外国人を戦うためには次の試合でしっかりと勝つ必要があるかと思います。どのような試合にしたいですか。

「…………(じっくりと考えて)、攻め続ける。とにかく攻め続けます」

■視聴方法(予定)
9月29日(日)
午後12時40分~U-NEXT

■Pancrase347 計量結果

<ライト級KOP選手権試合/5分5R>
[王者] 雑賀ヤン坊達也:70.15キロ
[挑戦者] 久米鷹介:70.3キロ

<ストロー級QOP選手権試合/5分5R>
[王者] ソルト:51.95キロ
[挑戦者] 藤野恵実:52.1キロ

<ウェルター級KOP選手権試合/5分5R>
[王者] 押忍マン洸太:76.95キロ
[挑戦者] 佐藤生虎:77.1キロ

<ライト級次期挑戦者決定/5分3ラウンド
葛西和希:70.55キロ
天弥:70.65キロ

<女子アトム級/5分3R>
SARAMI:48.05キロ
ホン・イェリン:47.75キロ

<バンタム級/5分3R>
井村塁:61.4キロ
カリベク・アルジクル・ウルル:61.65キロ

<ライト級/5分3R>
粕谷優介:70.7キロ
ホン・ソンチャン:70.5キロ

<女子フライ級/5分3R>
端貴代:56.65キロ
渡邉史佳:56.8キロ

<女子ストロー級/5分3R>
KAREN:52.1キロ
エジナ・トラキナス:51.9キロ

<フェザー級/5分3R>
糸川義人:65.9キロ
栁川唯人:65.95キロ

<ストロー級/5分3R>
野田遼介:52.5キロ
船田侃志:52.55キロ

<バンタム級/5分3R>
安藤武尊:61.45キロ
ギレルメ・ナカガワ:61.55キロ

<2024年ネオブラッドTフライ級決勝/5分3R>
岸田宙大:56.7キロ
山﨑蒼空:57.1キロ

<フライ級/5分3R>
時田隆成:56.95キロ
齋藤楼貴:56.95キロ
 
<バンタム級/5分3R>
友寄龍太:61.1キロ
渡邉泰斗:61.5キロ

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【Pancrase347】修斗王者=藤野の挑戦を受けるクイーン=ソルト「まぁ…何か嫌だな。防衛して次は修斗で」

【写真】この服は32歳の時に購入したそうだ…… (C)MMAPLANET

29日(日)、東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase347で、ストロー級QOPのソルトが修斗世界女子ストロー級王者・藤野恵実の挑戦を受ける。
Text by Shojiro Kameike

2023年4月にKARENを下して獲得した、ストロー級QOPの初防衛戦を迎えるソルト。その後はRIZINと修斗で試合を行い、1年半振りにパンクラスのケージに入る。そんな初防衛戦の相手は、元パンクラス王者で昨年には修斗王者になった藤野だ。昨年から急展開を見せる国内女子MMAを象徴するような戦いに向け、ソルトが大きな変化について語る。


――パンクラスのベルトを巻いたあと、修斗で2試合を戦っています。まずは修斗で試合をした感想を教えてください。

「2022年に修斗でプロデビューして、戦績は1勝2敗でした。正直、良い戦績ではなかったです。でも『ベルトを巻いて修斗に帰ってきた』というふうにプロモーションしてもらえて。だから『ちゃんとした試合をしなきゃいけない』ってプレッシャーを感じながら、常に焦っている状態でした」

――おぉ、「だから嬉しかった」という話かと思えば、焦っていたのですね。

「その時だけじゃなく、今も常に焦って、常に追い込まれながら練習しています。自分では『こんなに弱いチャンピオンはいない』と思っていて。せっかく巻いたベルトを絶対に手放したくないです」

――とはいえ、KAREN選手との2連戦を通じて徐々に、自身の体格を生かしたMMAが確立されてきたように思います。

「そう言っていただけると嬉しいですけど、そのあとRIZINで大島沙緒里選手に、何もできずに負けたじゃないですか。『もう二度と何もできずに負けるような試合をしたくない』という気持ちが強くて、修斗の2試合はガンガン前に出てしまいました。

もっと自分の身長やリーチを生かして戦わないといけないことは分かっています。でもガンガン前に出て、気づいたら近い距離で戦っていました。でも次の防衛戦では、もっと自分を生かした試合ができると思っています」

――ソルト選手と対戦する場合、身長差やリーチ差を逆手に取って低い体勢から潜りこんでくる選手は多いでしょう。

「ボクシングよりはキックのほうが得意なので、蹴りで距離を取っていきたいとは常に思っています。でも周囲からも『これから先は打撃に付き合ってくれる相手はいないよ』と言われていて。だから壁際の練習を多めにやっています。今は飯田建夫(現たてお)さんが東京から北海道に戻ってきて、ずっと壁レスの練習をやってくれているんですよ」

――前蹴りで自分の距離をつくるというスタイルは、修斗のホ・ジュギョン戦で見せることができていたと思います。前蹴りがあるから、ストレートを効かせることができる。さらに至近距離でヒザを突き刺すことができる。しかし続くハイライ・ウーシャアモー戦は……。

「私自身は相手の分析とか全然できなくて、チームでハイライ選手の過去の試合映像をチェックしてくれた時に『結構強い相手を呼んできたな』と言われていました。

ハイライ選手は壁際よりもケージ中央でテイクダウンして、そのあとは漬けてくる。だから私としては倒されたあとの練習をしていました。あんなにずっとバックをキープされ続ける展開は想像できていなかったです。そこまで自分も相手のことをイメージできていなかったし、技術も足りていなくて。だから、あの試合以降は自分でもすごくMMAの映像を視るようになりました」

――なるほど。

「それまでも試合映像は視ていましたけど、どちらかというと技ばかりに注目していて。でもハイライ戦以降は一歩離れて――試合全体というか、流れや組み立て方を考えながら視るようになりました」

――その中で一番影響を受けたのは、どの試合ですか。

「ずっと好きなのはスタンプ・フェアテックス選手なんですよ。やっぱり立ち技をメインとしたMMAを考えると、スタンプ選手みたいな試合をしたくて。もう一つはハイライ戦の前日に、ABEMA TVの『格闘代理戦争』で中村京一郎選手の試合を視たんですよ。相手がブラジルの柔術家の方で……」

――ギレルメ・ナカガワ選手か、トミー矢野選手ですね。

「はい。あの時の中村選手は、ストライカーがグラップラーに勝つ試合として、ひとつの理想だと思いました。だから今までずっと何度も、あの試合を繰り返し視ています。ああいう試合をしたいんです! もちろん難しいんですけど(苦笑)」

――そのためには壁レスはもちろん、ケージ中央のレスリングとスクランブルは重要になってきますね。

「あと中村選手はグラウンドで柔術の動きもあって――確かYAWARAという柔術アカデミーで練習しているんですよね」

――中村選手について完璧にチェックしていますね(笑)。では次の試合、藤野選手の相撲MMAへの対応は、どのように考えていますか。

「ハイライ戦で反省したのは、まず壁際に持ち込ませないことですね。藤野選手がパンチをガンガン振りながら前に出て来たら、それをいなしたいです。ただ、あれだけ真っ直ぐ最短距離で詰めてくるような相手と対戦したことがないので、そこは試合になってみないと分からない部分です。前蹴りでいなすには、まずある程度の距離は必要になってくるので」

――結果、組みの攻防に持ち込まれてしまうことも考えられます。

「いなすのが難しかった場合は、壁際の攻防で自分が押し込んでいきたいです。それを出すことができたら、今までの試合とは違うものを見せられると思います。藤野選手って不器用だと言われるじゃないですか。でも試合を視れば視るほど、全然そんなことはなくて……」

――藤野選手の場合はキャラづけもあるとは思いますが、相手を追う足捌きはケージを器用に使う戦いですよね。

「そうなんです。だから今もずっと壁レスの練習は、しっかりやってきています」

――その藤野選手は修斗でベルトを巻き、パンクラスに戻ってきました。パンクラスのベルトを獲得して修斗で戦ったソルト選手とは、逆のパターンです。

「藤野選手が修斗で試合をすることが発表された時はビックリしました。『あぁ、藤野選手とは縁がないんだろうな。このまま試合をすることはないのかなぁ』と思って」

――しかし、まさか修斗のベルトを巻いて戻ってくるという。

「アハハハ。私は自分で追い込まれないと強くなれない人間なんですよ。パンクラスでベルトを獲得して、それがプレッシャーにもなりました。だけど周りが『こんなに弱いチャンピオンはいない』と追い込んでくれたからこそ、成長できていると思っていて。それで初防衛戦が修斗のチャンピオンというのは――今も気持ちが追い込まれ続けています(笑)」

――追い込まれた時のソルト選手に期待ですね。今回はダブルタイトルマッチではないので藤野選手が勝てば2冠王ですが、ソルト選手が勝っても防衛だけで。

「まぁ……何か嫌だな、とは思いますよ(笑)。自分の中でも今回は、パンクラス王者として修斗のチャンピオンと戦うという意識はあります。今回は私が防衛して、次は修斗で藤野選手と戦わせてほしいです」

■視聴方法(予定)
9月29日(日)
午後12時40分~U-NEXT

■Pancrase347 対戦カード

<ライト級KOP選手権試合/5分5R>
[王者] 雑賀ヤン坊達也(日本)
[挑戦者] 久米鷹介(日本)

<ストロー級QOP選手権試合/5分5R>
[王者] ソルト(日本)
[挑戦者] 藤野恵実(日本)

<ウェルター級KOP選手権試合/5分5R>
[王者] 押忍マン洸太(日本)
[挑戦者] 佐藤生虎(日本)

<ライト級次期挑戦者決定/5分3ラウンド
葛西和希(日本)
天弥(日本)

<女子アトム級/5分3R>
SARAMI(日本)
ホン・イェリン(韓国)

<バンタム級/5分3R>
井村塁(日本)
カリベク・アルジクル ウルル(キルギス)

<ライト級/5分3R>
粕谷優介(日本)
ホン・ソンチャン(韓国)

<女子フライ級/5分3R>
端貴代(日本)
渡邉史佳(日本)

<女子ストロー級/5分3R>
KAREN(日本)
エジナ・トラキナス(ブラジル)

<フェザー級/5分3R>
糸川義人(日本)
栁川唯人(日本)

<ストロー級/5分3R>
野田遼介(日本)
船田侃志(日本)

<バンタム級/5分3R>
安藤武尊(日本)
ギレルメ・ナカガワ(ブラジル)

<2024年ネオブラッドTフライ級決勝/5分3R>
岸田宙大(日本)
山﨑蒼空(日本)

<フライ級/5分3R>
時田隆成(日本)
齋藤楼貴(日本)
 
<バンタム級/5分3R>
友寄龍太(日本)
渡邉泰斗(日本)

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【Pancrase347】修斗&パンクラス二冠へ、「UFC史上最年長契約目指す」藤野恵実&盟友・杉山しずか対談

【写真】J-MMA界、最強の女子タッグチーム (C)SHOJIRO KAMEIKE

29日(日)、東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase347で、藤野恵実がソルトの持つストロー級QOPに挑戦する。
Text by Shojiro Kameike

2023年から国内女子MMAが急展開を見せている。そんな状況を象徴するのが藤野と杉山しずかの存在だろう。プロデビュー当時からジュエルス~DEEPを主戦場としていた杉山が、今年からパンクラスに参戦し、7月には重田ホノカをニンジャチョークで下して初めてベルトを巻いている。

藤野はパンクラスのベルトを失ったあと、昨年まさかの修斗参戦を果たす。インフィニティリーグから修斗世界女子ストロー級のベルトを獲得し、戴冠後の初戦がパンクラス王座挑戦に――。練習を共にし、互いにセコンドにもつく藤野と杉山に激動の展開を語ってもらった。


「ベルトを獲って当たり前というふうに見ていました」(杉山)

――本日はJTTでの練習前に、リモートでインタビューとなりました。まずはお二人とも戴冠おめでとうございます。

杉山 ありがとうございます!

藤野 私はだいぶ前ですけどね、アハハハ。

――これまでのキャリアを考えると藤野選手が修斗で、杉山選手がパンクラスのベルトを獲りに行くというのは意外でした。

杉山 そういえばそうですね。

藤野 確かに。まず修斗からオファーを頂いたのが意外でした。私としては、たくさん試合がしたかったんですよ。コロナ禍が明けてからも試合数が制限されたり、海外選手と試合を組んでもらってもキャンセルが続いたりしていて。そんな状態の時に、修斗インフィニティリーグ出場のオファーが来ました。

私もずっと『強い選手と試合がしたい』とは言っていたけど、津田(勝憲氏)とも『いっぱい試合がしたいよね』という話もしていて。インフィニティは2カ月に1回絶対に試合できるし、さらに勝てばベルトに到達できる。こんなチャンスないかな、と思ってインフィニティ出場を決めたんです。

――杉山選手は藤野選手が修斗のベルトを巻いた時は、どのように見ていましたか。

杉山 私はずっと藤野さんのセコンドについていて、ベルトを獲って当たり前というふうに見ていました。もちろん嬉しいですけど、驚くとか、凄く感情が動くというよりは、流れの中の通過点というか。「達成した!」という感覚はなかったですよね。

藤野 うん。

杉山 藤野さんが初めてパンクラスでチャンピオンになった時は、一緒に練習させてもらい始めてから時期も近い試合だったんですよ。だから凄く緊張感はありました。『絶対に獲ってほしい!』という気持ちは強かったし、みんなで獲りたいという想いがありました。

でも今回は、藤野さんも凄く緊張していたでしょうけど、自分でも『勝って当たり前』と言い聞かせていたはずで。あくまで通過点だから、達成した感じはないと思いますよ。

藤野 そんなことはないよ(苦笑)。

杉山 アハハハ。次はもう一度パンクラスのベルトを獲りに行きますけど……、もともとパンクラスに戻ることは決まっていたんですか。

藤野 いや、決まっていなかったのよ。だから修斗のベルトを獲ったあとにパンクラスからオファーが来たのが意外で。だって私はエジナ・トラキナスにもKAREN選手にも負けているから、王座挑戦の資格はなくなっていると思っていて。

――それでも藤野選手の中では、パンクラスのベルトを獲り返したいという気持ちは強かったのですか。

藤野 強かったですね。でもエジナに負けて『ベルトが遠ざかっちゃったなぁ』と思って。そこでチャンスを頂いたから修斗で試合をしたあとに、まさかパンクラスでタイトルマッチをやらせてくれるとは……面白い展開ですね。

――急展開すぎて、こちらも驚いています。最初はどのような経緯で、お二人が一緒に練習するようになったのでしょうか。

藤野 練習を始めてから、だいぶ経ちますね。最初はJTTの前にあったマーシャルアーツジムで、しぃやんが働き始めた頃です。『じゃあ一緒に練習しようよ』という話になって。たぶん最初は私の顔を立てて、練習でも受けに回ってくれていたと思うんですよ。だけど、どんどん強くなっていきましたね。

杉山 いやいや、そんな……。

藤野 しぃやんは成長スピードが凄い。だからここ数年は「杉山はメチャクチャ強い」という評価もされているのに、試合中にポカしちゃったり、なぜか攻め切れないところがあって。

パンクラスでも重田選手には勝って当たり前だと思っていたんですよ。ただ、試合だから何が起きるか分からない。でもメンタルとかで攻め切れないとかがなければ、普通にやれば絶対に勝つ。試合ではいつもどおりの強さを見せて勝ってくれたから嬉しかったですね。「これが杉山しずかだよ!」って。パンクラスに出始めてからは安定していて、「この強さが当たり前だよね」って見ています。

杉山 ……藤野さんの、その言葉を信じてやってきたような気がします。

藤野 普段から「強い、強い、もっとできるよ」と言っていますもん。

杉山 そうやってマインドコントロールしてもらっています(笑)。

藤野 私は思ったことを言っているだけよ。

杉山 そう、藤野さんは嘘をつかないから。自分が「こうだよ」と思ったことは絶対に言ってくれるし、「こうじゃないよ」と言ってくれることは絶対に嘘じゃないから。

――藤野選手が嘘をつけるタイプなら、インタビュー中に「下はパンツ一丁ですから」とは言わないでしょうね。

杉山 それはセクハラですよ。

藤野 アハハハ!! リモートだから下半身は見えないし。「カメラを下に向けないでくださいよ」という意味でね。

杉山 リモートならカメラを下に向けるのは自分でしょ(笑)。

――アハハハ! 杉山選手の試合は、フィニッシュはスイープからニンジャチョークを極めています。試合後、藤野選手がSNSで「いつもやられている技」と投稿していました。以前から練習では極めていた技だったのですか。

杉山 結構やっていました!

藤野 何回も打ち込みとか練習台になっていたので、昔から知っていました。食らったことがないと、完全にセットされるまで警戒しないかもしれないです。「あぁ首の下に手を回されているな。まさかコレは極まらないよな」ぐらいで。最初は上を取っているし、「ヤバッ」という感じがしないから。

――最後のニンジャは起き上がった瞬間に腕が入っていました。重要なのは、その前のリバーサルですよね。

藤野 そう、リバーサルがメッチャ巧かった。

杉山 練習では1千万回ぐらいやっているんですよ(笑)。でも試合では、ああいう展開になったことがなくて。今までは一方的にやることも多かったし、一方的にやられることも多かったですからね。

私がやったのはファンクロールという、レスリングの技で。自分でもスクランブルは強いと思うんですよ。最後まで取り取れるかどうかは分からないけど、スクランブルの面はやっている人と、やっていない人の差が凄く出ると思います。

――練習では藤野選手もコロコロと転がされていたわけですか。

藤野 私は下になるので、スイープの態勢にならないですね。

――ということは組むと、藤野さんが下になることが多いのですね。

藤野 多いどころか、全部テイクダウン取られますよ。

杉山 藤野さんはテイクダウンには来ないから。

藤野 行っても取れないんだもん(苦笑)。押し込むとニンジャを仕掛けて来るし。

「修斗もパンクラスも、よくやらせてくれるなぁと思って。本当に感謝しています」(藤野)

――なるほど。その杉山選手が巻いたベルトを見て、ご自身も改めてパンクラスのベルトを獲り返したいと思いましたか。

藤野 しぃやんのベルトもそうだし、やっぱり最初にベルトを巻いたのがパンクラスだったので、思い入れがあります。ずっと獲り返したいと思っていましたね。

――勝てば修斗とパンクラスの同時2冠王で、これは史上初ではないでしょうか。

藤野 そうですよね。修斗もパンクラスも、よくやらせてくれるなぁと思って。本当に感謝しています。

――では杉山選手から藤野選手への応援メッセージをお願いします。

杉山 今回のベルト挑戦って、本当に得るものしかないと思うんですよね。藤野さんの試合内容で修斗のベルトの価値も上がるし、パンクラスのベルトの価値も上がる。藤野さんとしても、女子のベルトの価値を上げたいと思っているでしょうし。そのために力になれることがあれば、どんな形でも私を使ってほしいです。

藤野 すでに試合もないのに毎週5Rのスパーリングをやってくれていますからね。

杉山 だって、それは私がやってもらっていたから。

――ということは、お互いに何カ月も5Rのタイトルマッチに向けたスパーをし続けているのですか。

藤野 私は重田選手とタイプが違いすぎるから、他の選手にも入ってもらっていました。しぃやんは器用で何でもできるので、付き合ってくれるんです。

――同時2冠王者となれば、交互に防衛戦を行うことになるかもしれません。

藤野 それは凄いなぁ。ただ、私は海外で戦いたい気持ちもあります。今でもUFCとの史上最年長契約を目指していますから。そのためにも、まず次の試合で勝ちます。

■視聴方法(予定)
9月29日(日)
午後12時40分~U-NEXT

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【Colors03】パク・ボヒョン戦へ、失明覚悟のMMAファイター人生=渡辺彩華「なぜこの試合なんだろう?」

【写真】愛犬のエルモちゃんと。犬種は分からないのですが、マルチーズかマルプーからマルポメでしょうか(C)SHOJIRO KAMEIKE

8月3日(土)、東京都新宿区の新宿FACEで開催されるColors03で、修斗女子世界スーパーアトム級王者の渡辺彩華が、韓国のパク・ポヒョンと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

渡辺にとっては昨年10月、RIZIN LANDMARKで万智に敗れて以来10カ月振りの復帰戦となる。万智戦で負った眼窩底骨折の治療のために戦線を離脱していた渡辺は、その間の国内女子MMAをどのように見ていたのか。その中で本野美樹に帯同し、現地で見たRoad to UFC——海外での戦いについても語った。


失明する可能性が高くなる。格闘技を続けるなら、そのリスクは分かっておいてほしいと

――万智戦後に眼窩底骨折で入院、手術したあと、いつ頃から練習を再開できたのですか。

「手術して1カ月後に有酸素運動はOKが出ました。格闘技の練習ができるようになったのは手術から3カ月後ぐらいで、スパーのOKが出たのは半年後でしたね」

――スパーを始める時、手術した箇所を打たれることに対し、恐怖はなかったでしょうか。

「怖さはなかったです。でも、まぁ失明寸前だったと言われましたからね。病院では『運が良かった。今後も格闘技を続けるかどうか、一度しっかり考えてほしい』と言われて」

――それは「格闘技を続けてはいけない」という意味ですよね。

「それもあるし、格闘技を続ける場合は術式も違うらしくて。いずれにしても自分の場合は、手術をしても普通の人より失明する可能性が高くなる。格闘技を続けるなら、そのリスクは分かっておいてほしいということでした。

このままMMAを続けていたら、別に強い相手じゃなく誰と対戦しても――それこそ練習しているだけでも失明のリスクがある。そのことは頭の片隅に置きながら練習しています。ただ、自分が失明することよりも、それで家族やチームの皆に迷惑をかけるほうが嫌だという気持ちはあって。だけど今のままじゃ終われない。ずっとその葛藤があります」

――『今のままじゃ終われない』というのは……。

「ファイターって皆、応援してくれる人がいるじゃないですか。その数が多い、少ないは関係なく。それだけ背負っているものがある。自分も愛知から東京に出てきた無名時代から支えてくれている人たちがいます。スポンサーさんや、AACCの人たちとか。そういう人たちに対して、ここで辞めるのは失礼だなと思ったんです」

――……以前と比べて話し方も考え方も大人になりましたね。

「アハハハ!!」

――以前、あれだけ暴言を吐いていたファイターとは思えません(笑)。

「落ち着いたかもしれないですね、アハハハ。この10カ月の間、ジムの先輩がいろんな試合に出ていて。それを自分がファイターとして見るのと、戦線離脱した状態で見るのとでは違うと思うんですよ。もちろん自分が戦線離脱していることに対して焦りはあります。だけど……、それこそ本野美樹さんは待って、待ち続けてRoad to UFCが決まったじゃないですか。そういうチームメイトを見ていると、自分も頑張らなきゃいけないって思うんです」

――チームメイトとしては本野選手のRTU、大島選手のInvicta FC、杉本選手の修斗世界タイトルマッチ、そしてRENA選手のRIZIN復帰などもありました。その中でご自身の意識、目標が変わって面はありますか。

(C)AYAKA WATANABE

「あぁ~。

タイに行って『世界はヤバいな』と思いました」

――7月にタイガームエタイへ行っていたそうですね。

「本野さんがRTU準決勝の前にまたタイへ行くということで、自分も気持ちを挙げるために付いていったんですよ。その時タイガームエタイにいたストロー級の女子選手が、その選手がヤバいぐらい打撃が凄くて。『日本にこれだけ打撃が凄い女子ファイターいる?』と思うぐらいでした。自分はMMAでもテイクダウンさせず、打撃で攻めるタイプじゃないですか。だけど、その選手と練習する時は私のほうがテイクダウンを狙ってばかりで」

――その選手の名前は?

(C)AYAKA WATANABE

「ファラ、ですね(※注)。

寝技できないけど、とにかく打撃が強い。同じ日にオクタゴンという大会で試合をするそうです」

※ファリダ・アブドゥエバ。ファラは愛称。キルギスのMMAファイターで、昨年11月のRIZINアゼルバイジャン大会ではアナスタシア・スヴェッキスカと対戦している(腕十字で一本負け)。現在MMA戦績4勝1敗。

「自分よりも打撃ができる選手と向かい合ったのが初めてで、衝撃を受けました。あとONEに出ているモン・ボー選手もいて、メチャクチャ打撃が強かったです。自分も『このままじゃ世界に出られない』と思いましたね」

――その経験を楽しそうに語れるのが、ファイターとしての本質なのだと思います。

「いやぁ、直後はナイーブになりましたよ。タイにいる間、本野さんに『大丈夫! 大丈夫だから』と慰めてもらっていました(苦笑)」

――アハハハ。

「もう毎週、ボディでKO寸前まで追い込まれて……。日本の女子MMAって、グラップラーが多いじゃないですか。その中で自分は打撃で勝っていた。でも本当に全部できないと世界じゃ勝てないんだなって痛感しましたね。7月上旬から3週間行っていて、先週日本に戻ってきたんですよ。そこから日本の選手と練習しても圧力は感じなくて。それを試合前に経験できたのは、本当に良かったです。なんだか安心しました(笑)」

アイツ、いつも良いところで負けていますよね

――一方、10カ月の間、日本の女子MMAは大きく動いていました。

「……万智、負けるなよ。アイツ、いつも良いところで負けていますよね。松田戦は万智が勝っていたとは思ったし、Xでもそう投稿しましたけど」

――万智選手に勝利した松田亜莉紗選手の印象はいかがですか。

「トータルバランスは良いけど、長けているものはないっていうイメージです。飛び抜けているものがない。悪くいえば、特徴がない」

――悪く言うのですね(笑)。

「アハハハ。パク・シウ選手だったら打撃、万智なら寝技っていうイメージじゃないですか。松田選手は怖さを感じないですね」

――ではパク・シウ×万智の試合については?

「凄い試合でしたね。MMAとして2人とも完成度が高いと思いました」

――ちなみに万智選手とは、直接対決の後も仲良くはなっていないのですか。

「全然! 今でも万智のことは嫌いですよ。仲良くなることはないし、一緒に練習することもないです。対戦直後にSNSで『IGLOOで待っています』とか投稿していたけど、行くわけないだろって(笑)。他のAACCの選手がよく一緒に練習しているみたいで、その選手のSNSを見て『あぁ生きているんだな』と知るぐらいです。アハハハ」

RIZIN、ROAD TO UFC、その前に万智はコテンパンにして泣かしますよ(笑)

――なるほど。修斗では藤野恵実選手がベルトを巻き、続いてパンクラス王座に挑みます。SARAMI選手もパンクラスのベルトを巻きました。

「自分もそこに絡んでいきたかったです。だから今回の対戦相手は、自分もあまり乗り気じゃなくて……」

――対戦するパク・ポヒョンも韓国Double-Gのベルトを獲得しているとはいえ、これまでのキャリアを考えれば、渡辺選手の有利は動きません。前戦では古賀愛蘭選手に敗れていますし。

「う~ん‥…、そういうことじゃないんですよ。『普通にやれば負けることはないでしょう』とか言われます。でも勝負事に絶対はない。まず自分自身がアップセットを起こし続けてベルトを獲りましたからね。ファイターって相性があるし、今回はケージではなくリングという違いもある。そんななかで次の試合は足元をすくわれず、フィニッシュします。

それとは別に、私は今までずっと強い相手と試合させてもらってきたじゃないですか。でもこの10カ月の間に、松田選手が万智に勝ってベルトを巻いた。万智とパク・シウ選手の試合も視ていて刺激になったし、藤野さんは修斗のチャンピオンになっていて。そこで『なぜ自分はこの試合なんだろう?』と思ってしまったんです。それだけ動きがあるなかで、自分だけ取り残されてしまっているというか」

――10カ月間、負傷で試合から離れていたことも大きいと思いますが……。

「それはそうなんですよ。でも今は、いつ失明するか分からないから後悔しないMMA人生を送りたい――もともと強い相手と試合がしたいとは思っていたけど、手術以降はよりその気持ちが強くなっていて。この人との試合、あるいはその試合のために練習しているなかで失明しても、納得できるような相手と試合をしたいんです。

よくレコードを綺麗にしたい選手がいるじゃないですか。私はそこに一切こだわりはなくて。『その相手、誰?』と思うような選手とばかり試合をして、レコードは綺麗だけどベルトは巻いていないとか。そんな選手にはなりたくない。限りある中で、どれだけ自分が満足するMMA人生を送ることができるか」

――……。

「まぁ綺麗なレコードを求めていたら、2戦目で藤野さんと試合していないですよ(笑)」

――確かに綺麗なレコードを求めるなら3戦目で黒部三奈選手、4戦目でSARAMI選手、そして5戦目で一階級上の万智選手とは対戦していないでしょう。

「そうそう(笑)。おかげさまで濃い、怒涛の日々を過ごさせてもらっています」

――今後はストロー級で戦っていくのでしょうか。

「そうですね。スーパーアトムは対戦相手がいないですし。今は通常体重を増やしています。万智の試合では、やっぱりストロー級との差は感じたので。修斗ならストロー級で、リベンジも賭けて藤野さんのベルトに挑みたいです。初戦の時より自信はあります」

――本野選手に帯同して、現地で目撃したRTUに挑みたいとは思いますか。

「周りから見て、『やってみたほうがいいんじゃない?』という声が挙がれば、挑戦してみたいです」

――というと?

「現時点で自分の体格や、タイで経験した打撃の圧力とかを考えたら、あの舞台で戦える自信はないです。でも、いつかはあの舞台で戦えるような――格闘技を見ている人たちに、それぐらい期待を持ってもらえる結果を残していきたいですね。

第三者から見て、期待できるかどうかがファイターとしての需要だと思っています。RIZINなら伊澤星花との対戦が期待されるかどうか。RTUは『渡辺なら優勝して、UFCでも勝てる』と期待してくれるかどうか。まぁ、その前に万智はコテンパンにして泣かしますよ(笑)」

■視聴方法(予定)
8月3日(土)
午後6時00分~ABEMA格闘チャンネル

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45 AB ARAMI DEEP DEEP JEWELS DEEP JEWELS45 DEEP Tokyo Impact DEEP Tokyo Impact2024#03 MMA MMAPLANET o ONE SARAMI YouTube   ジヒン・ラズワン パク・シウ パンクラス ライカ 万智 修斗 弥益ドミネーター聡志 本田良介 松田亜莉紗 澤田千優 藤野恵実 野田遼介 鈴木千裕

【DEEP JEWELS45】パク・シウと暫定王座&再起戦、万智「過去最強!! 勝って星花ちゃんと統一戦!!!!」

【写真】相変わらず、ド天然な元気っぷりを見せていた万智。悪霊に憑りつかれると思うほど、前回の敗戦は精神的にダメージがあったという(C)MMAPLANET

26日(日)に東京都港区のニューピアホールで開催されるDEEP JEWELS45でDEEP JEWELS暫定ストロー級王座決定戦=パク・シウ✖万智が行われる。
Text by Manabu Takashima

コロナ期より日本をターゲットにトップファイターを目指してきたパク・シウに対し、昨年11月にキャリア1年で同王座決定戦に出場し松田亜莉紗に敗れた万智。

あれから半年を経て万智はさらに天然振りを発揮し、天賦の才を磨いてきたのか。その言葉では、想像もつかない今の万智──だが、とにかくインタビューでは絶好調さとハードな練習振りが伝わってきた。


――日曜日にパク・シウ選手と暫定ストロー王座決定戦です。その前に昨年11月の松田亜莉紗選手とのタイトル戦、スプリット負けという結果に関してですが……コールを受けた時、どのように思いましたか。

「勝ったと思いましけど……もう、ねぇ……」

──口が曲がっていますよ。

「アレは勝っていました、万智が。だから、ポカーンと夢みたいですよね。ドミさん(弥益ドミネーター聡志)も試合後、コーナーで凄く喜んでくれていて。梅田(恒介)さんは微妙な顔をしていました。でも、試合後に映像をチェックして『勝っていた』と……。『角度の問題だ』って。万智のヒジが当たったのと、相手のストレートが当たったのと。相手のセコンドも万智が勝ったと思っていたように見えました」

──万智選手が勝っていたという意見は少なくないですが、勝った松田選手には何も非はなく。松田選手陣営は、勝ったことを否定する必要はないですし。

「そうですね。まぁ向うはラッキーで、こっちはラッキーじゃなかったということですよね(笑)」

──その敗北をすぐに消化できたのでしょうか。

「あのう……皆には『落ち込んでいない』って言っていましたけど、結構引きずっていました……。練習にいっても、やる気を失って続けていた感じで。あの試合に集中して、その後のことも何も考えないぐらいだったので。でも、皆だって万智が勝ったと言っていましたよ……」

──勝ったと思った試合を落としたことで、何か学んだことはありましたか。

「もっと攻めないといけないな、と。あれだけコントロールしていたけど、判定負けするってことは。フィニッシュを目指さないといけないと思うようになりました」

──まだ不満そうですね(苦笑)。

「でも、今回タイトルを掛けてまた戦うことができるので」

──この試合が決まったのはいつぐらいだったのでしょうか。

「実は3月大会にもオファーがあったんです。あの時は古傷の具合が良くなくて、パクちゃんと戦うには……。なので5月にしてもらったんです。ただ3月の時は、タイトルは掛かっていなくて日韓戦のような感じで組まれていたんだと思います。結果、ラッキーだなって(笑)」

──その辺りで吹っ切れたようですね。

「もう、やる気満々になりました。タイトル戦の前から、次にやるのはパクちゃんだっていう空気だったので。でも、試合が正式に決まった時から、気持ちが入りました。なんか、呪われているなって思っていたんです。練習は好きだから続けていても、やる気がでない。身が入らないから、悪霊に憑かれている。絶対に何かがいるって」

──そろそろホラー系になってきましたね(笑)。

「真剣にそう思って、お祓いにも行きました!!」

──えっ……。絶句です。

「でも、何も変わらないから(笑)。呪いじゃなかったです。アハハハハ、試合が決まったらめっちゃやる気が出て」

──いや……。

「そうなんです。試合がないから、目標を見つけることができなくてやる気が起こらなかっただけで(笑)。もう、決まってからはやる気満々です」

──パク・シウ選手とは練習仲間でもあったので、練習環境を変えないといけなかったのではないですか。

「そこはパクちゃんが、52キロ級に上げたことで練習をしなくなっていました。マスタージャパンの金曜日の練習に行くのも止めて。JTTに行くようにしたのですが、(伊澤)星花ちゃんが所属になったので、JTTにも気まずくて行けなくなって。金曜日の朝は急いで宇都宮に帰って、正午からZEROでムエタイの練習をするようになりました」

──急いで、というのは?

「木曜日は東中野のトイカツ道場で練習をしてから、中野の友達の所に泊まっていたんです。次の日はマスタージャパンの練習があったので。でも、パクちゃんが韓国に戻ったので、またマスタージャパンでの練習を再開しました」

──とはいえ、マスタージャパンの女子練習で一緒の藤野恵実選手も同じストロー級ですよね。

「ハイ。試合をするとなったら……。藤野さんが修斗のチャンピオンになったことはめっちゃ嬉しいです。ヤバいぐらい嬉しかったです。でも、戦うとなったら調整が必要になるかと思います」

──現状の練習のルーチンは、どのようになっているのですか。

火曜日のアライアンスの練習メンバーと。野田遼介は、1週間後のONE FFで本田良介とリョースケ対決がある──とか、ないかと……という話も

「月曜日は佐野のグロリアMMAでグラップリングとムエタイ。

火曜日はここ(アライアンス)。水曜日が手塚(裕之)さんのところと、那須のクロウフォレスト。もうクロウフォレストの練習大っ嫌いです。みなにボコボコにされて……」

──そこも、つまりは……。

「ハイッ!! それだけ良い練習をさせてもらっていることなんですけどね(笑)」

──押忍。そして木曜日は?

「八丁堀で津田(勝憲)さんのパーソナルでミットを持ってもらっています。それから東中野ですね。金曜日が今はマスタージャパンと、土曜日がパラエストラ松戸、IGLOOからゼロです。そして日曜日がマスタージャパンの女子練習です」

──休息日は無しですか!!

「若いんで(笑)。ヤングですから」

──ヤング……。

「アハハハハ。でも一部練習の日もあるので、休めてはいます」

──なるほど……なのか……。これだけ色々なところで練習をしていて、対策などを立ててくれるのは梅田さんなのですか。

「ハイ、そうです。あとドミさんもセコンドに就いてくれるので。手塚さんも……手塚さんは声出し係ですけど(笑)」

──アハハハハ。ともあれパク・シウ選手は大変な相手です。

「私も大変だと思っています」

──?

「私もパクちゃんからすれば、大変だと思います。差はないです。過去一番強いです。でも、皆が『パクちゃんは大変な相手』と思っていることは分かります。昔、練習でボコボコにされていたし。

でも、パクちゃんも警戒していると思います。女だから、差はそんなにない。同じ性別だし、男の人と試合をするわけじゃないので」

──女子練習以外は男の選手との練習が、今も主なのですね。

「ハイ。多いです。あとはマスタージャパンでチィちゃん(澤田千優)と。チィちゃんがジヒン・ラズワンとやるまでは水曜日はパンクラスイズムで一緒にやっていて。移籍したので、マスタージャパンでやるようになって……今、一番の練習パートナーです。チィちゃんとは打撃有りで、マ~ジでガチスパーをやっていて。マジでヤバいです。力は凄くあるし、凄く良い練習になっています」

──とはいえパク・シウ対策という面では、ストライカーとの練習も大切になってくるかと思うのですが……。

「対策練習はやっていないです。自分のやることをやっているので。それをいくつかのパターン持っていて、得意なことを伸ばしているのですが、打撃の練習も頑張っているので。コンビネーションも皆に褒めてもらっています。

MMAの打撃が上手くなっているっていわれます。ゼロでムエタイをしたこともいきて、津田さんのミットでMMAの打撃が伸びている。だから組みばっかりパクちゃんが警戒してきたら、打撃だけで戦っちゃうかもしれないですよ(笑)。テイクダウン前もテイクダウン後も、めっちゃくちゃ考えるようになっているので。組みのパターンも増えて、際を頑張れるように。

その部分ではIGLOOでの練習も凄くタメになっています。(山田)海南江さんには、メチャクチャにやられて。自分が何も考えられないぐらい、やられているんですけどね(笑)。クルクル回されて──その技を、教えてくれるんです。寝技では一番の練習をしてくれています」

──今日の練習では足関節もかなりトライしていました。

「足関節は得意です。MMAでは使ってこなかっただけで(笑)。足関はメッチャ得意ですっ!!」

──すごいドヤ顔ですね。過去最強バージョン、期待が高まってきます。

「そうなると思います。練習でやっていることを、試合で出すことができれば」

──そのために必要なことは何になると思っていますか。

「気合い」

──体言止めですか(笑)。

「気合いです。根性、気持ちです。そこがあればデキる。パクちゃんは10年振りのタイトルマッチらしくて……あんなに強いのにチャンスがなかったから、ここに掛けてくる想いが強いと思います。

でも私はタイトルマッチを前の試合で経験して、しかも負けているから失うモノがないチャレンジャーの気持ちで戦えます。思い切りいくだけ。だから気合いと気持ちで頑張ります」

──勢いがそのまま言葉になっているように感じます。

「実は『稲妻メンタル』を読んで、メンタルを鍛えてきました!!」

──鈴木千裕選手の?

「ハイ。書いていることは当然のように参考になります。同時に元気過ぎて、一気に読めない(笑)。元気過ぎて、こっちがやられてくるので、精神面のスタミナ強化になっています(笑)。でも、練習で疲れて元気がない時に読むと鈴木選手の『気合いッス』っていう言葉で元気になれるんです。で、気合いが入って来る。鈴木選手はもうこれだけ実績を残した。私は何もない。こんなままじゃヤバい。だから気合いッス!!」

──浜口京子さんに見えてきました。

「似ているって言われています(笑)」

──元気な万智選手であることは間違いないようです。では、最後に改めてパク・シウ戦について意気込みの方をお願いします。

「色々な場所で、色々な人達にサポートをしてもらっているので、皆に感謝している気持ちを持ってパクちゃんと戦います!!

SARAMIさんがパンクラスを獲った。藤野さんが修斗を獲った。次は万智がDEEPを獲ります。パクちゃんが勝っても、もう星花ちゃんが戦いたいってならないから、タイトルを返上しちゃうと思うんです。だから万智が暫定チャンピオンになって、星花ちゃんと統一戦をします」

■DEEP Tokyo Impact2024#03視聴方法(予定)
5月26日(日)
午後5時20分~U-NEXT、YouTube DEEP/DEEP JEWELSメンバーシップ、サムライTV

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45 MMA MMAPLANET o Shooto Shooto2024#04 修斗 杉本恵 藤野恵実

【Shooto2024#04】藤野恵実がマウントパンチでTKO勝利。デビュー20年目・30勝目の修斗王座戴冠

<修斗女子ストロー級王座決定戦/5分5R>
藤野恵実(日本)
Def.3R3分43秒 by TKO
杉本恵(日本)

杉本がジャブと左右のロー、藤野も右を振って前に出る。杉本は細かくフェイントを入れてジャブを伸ばし、右ストレートのカウンターを狙う。組みつく藤野だが、ここは両者が離れる。杉本はジャブで距離を測ってワンツー、藤野が前進するところを上手く崩して組む。

ここも両者はすぐに離れた。距離を詰めたい藤野に対し、杉本はジャブとワンツー。藤野も顔とボディに振って左フックを狙う。藤野が左フックを打つと、杉本がシングルレッグに入り、藤野がギロチンチョークへ。杉本が頭を抜いたところでラウンド終了となった。

2R、杉本がジャブとインロー。藤野は前に出て左右のパンチを当てる。杉本はしっかり距離を取ってジャブを当て、藤野は思い切り左で飛び込む。杉本がジャブを突き、藤野が右をかぶせて前に出ていくと、杉本は右ストレートを狙う。藤野は細かい打撃をもらっても前に出て右ストレート。これで杉本をケージまで下がらせ、組みついてボディにヒザ蹴りを入れる。

離れた杉本は距離をとってジャブを打つが、藤野はジャブに合わせて組みついてケージへ押し込む。杉本の顔を突き放してパンチを打ち込んだ。離れた杉本はスピニングバックフィストを立て続けに放つ。藤野はこれに合わせて組みついてバックへ。ハーフガードでトップキープしてヒジを落とし、杉本が体を起こすとがぶってパンチを入れる。

3R、杉本がジャブ。藤野がワンツーを当てると、杉本が右目を気にする素振りを見せる。杉本はダブルレッグに入るがテイクダウンできない。距離が離れると再び杉本がシングルレッグに入ると、藤野がそれを潰してマウントポジションを取る。

ここから藤野がパンチを落とし、足を一本戻されても鉄槌とヒジを連打する。杉本も亀になって立ち上がろうとするが、藤野はポジションをキープして殴り続ける。最後は藤野がマウントパンチの連打でレフェリーが試合をストップした。

試合後、藤野は「プロ20年目、30勝目で修斗のベルトを獲りました。私は運動神経がなくて、センスもなくて。でもずっとみんなが支えてくれるし、応援に来てくれて、練習もしてくれて。いつも諦めずに続けてよかったと思わせてもらっています。格闘技が大好きで、仲間たちが大好きで、いい格闘技人生を送っています。まだ続けます。もっと強くなりたいんで」と語った。


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【Shooto2024#04】杉本恵とストロー級王座決定戦、藤野恵実「諦めたくないです、色んなことを」

【写真】1980年11月17日生まれ、キャリア30勝まであと一つ(C)TAKUMI NAKAMURA

19日(日)、東京都港区のニューピアホールで昼夜興行として開催されるShooto2024#04では、第1部(昼興行)のメインで藤野恵実が杉本恵と修斗世界女子ストロー級王座を賭けて戦う。
Text by Takumi Nakamura

昨年のインフィニティリーグで優勝を果たし、王座決定戦に駒を進めた藤野。ベルトを争う相手=準優勝者はリーグ戦で唯一引き分けた杉本となった。リーグ戦を戦う中で練習環境がJAPAN TOP TEAMとして整備され、コンスタントに試合をこなすことでMMAファイターとして成長を遂げた。自身2本目のベルトへの想い、そしてMMAファイターとしての夢=UFCへの想いも語ってくれた。


――インフィニティリーグ2023を経て、今大会では杉本恵選手と王座決定戦が決まりました。リーグ最終戦(吉成はるかにKO勝ち)から今回の試合に向けて、どんなことを意識して練習してきましたか。

「基本は変えてないんですけど、JAPAN TOP TEAM(JTT)で体制が徐々に出来上がってきたので、いい練習ができていると思いますね」

――練習環境がJTTになって一番変化したところはどこですか。

「以前はチーム自体、それぞれみんな練習をやっている感じで、私も結構外部に出ることの方が多かったんです。特に女子は選手も少ないので、引き続き外部練習は続けているのですが、チームとして一体感が出てきたと思います」

――専門のトレーナーが増えたイメージですが、その辺りが変わったところですか。

「ヘッドコーチがしっかりいることが大きいです。今までヘッドコーチ不在で外部トレーナーだけだったのですが、エリー(・ケーリッシュ)がヘッドコーチとして来てくれて、きちんと(練習を)締めてくれるという形が出来上がりました。エリーは全体に目を配って、選手ひとりひとりのこともすごく見てくれていて、そういうヘッドコーチのもとで練習できているなっていうのはありますね」

――選手それぞれがやっていることをエリー・コーチがまとめるイメージですか。

「練習そのものというよりも、例えばエリーはスパーリングを全部見ていて、これができていたから次はここが課題だとか、試合が決まったら対戦相手を見て、こうしてこうとか、そういうことを提案してくれますね」

――スパーを見てアドバイスするコーチがいると練習の意識もかなり変わるのではないですか。

「今までは自分でやりながら津田(勝憲)に見てもらう形で、トレーナーが常駐しているわけではなかったので、そういうトレーナーがいることは大きいですね」

――言える範囲で気づいたこと・指摘されたことが何か教えてもらえますか。

「結局言っていることは津田と一緒と言えば一緒なんです。でも同じことを違う人から指摘されるということは、自分の課題が明確で分かりやすい。分かりやすいからこそ、その課題をもっと意識して直していかなきゃいけないんだろうなと思いますね」

――新しいことを取り入れるよりも、引き続き継続して直すべきところに着手している形ですか。

「はい。時期的に新しいことをやるというより、課題を直す形です」

――そういった意味では、リーグ戦に出場して、何が経験・プラスになりましたか。

「リーグ戦が始まった頃はまだJTTの体制が整っていなくて、津田のもとでずっと練習していた形だったんですね。リーグ戦出場を決めた理由が、試合数が多いというところで。今まで強い選手と試合したいと言い続けてきたんですけど、コロナなどの理由で試合間隔がものすごく空いちゃって。キャリア的にも、いつまで試合できるかも分からないなか、できるだけたくさん試合をしたいと思っていました。ちょうどそのときに修斗さんがリーグ戦の話をくれて、2カ月に1試合ペースで試合ができると。なかなかそういう経験はできないので、コンディショニングを含めて自分をどう作っていくか。そう思って参戦させていただきました」

――2023年4月~2024年1月までの約9カ月間で5試合を戦い、過去最多と言ってもいいくらい試合をしていますよね。

「MMAとキックを並行してやっていたときは両方合わせて年間5試合くらいやっていたんですけど、ある程度キャリアを重ねてからは一番やっていますね。周りからも体調的に体が持つのか、最初はちょっと心配もされたんですけど、意外と調子よく上げていけたんで、結果よかったなと」

――スパンが空くよりも試合が続く方が体は作りやすいですか。

「そうですね。基本的に練習をずっと続けているので、だらけずにすぐに気持ちを切り替えやすくて。なんか良かったですね」

――練習環境が変わり、試合をコンスタントにこなすなかで自分の中の変化は何か感じましたか。

「リーグ戦は2R制だったんですけど、最近は2R制の試合をやっていなくて。私は最初のラウンドをなかなか行けなくて様子を見ちゃうことも多くて、2R制だから最初から出し切ることは意識してやるようにしていました。スロースターターだった部分は少しずつ改善できたかなと思います」

――2R制の試合をやったことで戦い方の幅は広がりましたか。

「あとはインフィニティリーグだからというわけじゃないんですけど、より早いフィニッシュをしないと勝っても点数が伸びない・優勝できないかもしれないというのがあったので、そこは意識して早いフィニッシュをしたい、しようと心がけていました」

――藤野選手はMMAで40戦以上キャリアを重ねていますがまだまだ自分が変わるきっかけやポイントはありますか。

「まだできないこととかやるべきことが多いですし、現状維持で良いレベルではないので、どんどんやっていきたいなとは思っています」

――今大会ではリーグ戦で引き分けている杉本選手と5Rのタイトルマッチで対戦します。杉本選手にはどんな印象を持っていますか。

「戦績的に負けが少ない選手なので、手堅い印象がすごくありますね」

――試合をした時も手堅い印象でしたか。

「あのときはドローになっちゃったのですが、自分が1Rを取れたなと思っちゃったのが本当にダメで。それで(2Rは)多分いけたなと思って試合を終わらせてしまって、結果ドローになってしまったんです。そういう慢心じゃないけど、確実にちゃんと仕留めるとか明確なものを作らなければいけないと思いました」

――ジャッジペーパーを見直すと、1Rはジャッジ3名とも10-9で藤野選手を支持。2Rは2名が10-9で杉本選手、1名が10-9で藤野選手と票が割れる形でドローに終わりました。試合直後はどんな心境でしたか。

「私は『えっ!?』となったのですが、津田は2R取られたかもって言っていたんですよ。1Rは明確に取っているけど、2Rはどちらにつくか分からない、と」

――セコンドの判断はそうだったのですね。

「だから津田は2Rの最後に『行け!』と言って怒っていたんです。逆に私はもう大丈夫だと思って、明確な差をつけずに終わらせてしまったことがダメでした」

――次は5Rの王座決定戦で、微妙なラウンドでどちらにポイントが入るかで勝敗が分かれると思います。そのうえで明確にポイントを取る・優勢に見せるところもテーマになってきますか

「パンクラスでやっていた頃はオープンジャッジだったんで、正直やりやすかったんですよね。でもオープンジャッジじゃないと、どちらにポイントが付いたかは本当に判断が難しい。もちろんフィニッシュはしなければいけないんですけど、誰が見ても自分がしっかり取ったと思わせる試合をしないと、前回みたいなことが起こりうる。そう思ってやります」

――今回は修斗のベルトがかかった試合です。タイトルマッチという部分での想いはいかがでしょうか。

「まさかこんなに色々ベルトに挑戦させていただけるとは思ってなかったし、パンクラスでタイトルに絡んだあと、もうベルトに絡むことはないかなと思っていたので。ラッキーと言ったらあれですけど、ありがたい話だなと思いますね」

――今の藤野選手の年齢・キャリアで修斗のベルトを巻くことには、どのような意味があると思いますか。

「何回もタイトルマッチを経験しましたけど、ベルトが取れたのは1回だけなんです。今年でプロデビューして20年経って、私は元々何か格闘技のベースもあるわけでもないし、何かが上手いということもない。最近は若い選手もすごく勢いがあります。でも一生懸命、格闘技を続けていたら、形になるということを自分で証明したいと思います」

――20224年最初の試合ですが、2024年はどのような1年にしたいと思っていますか。

「UFCにいきたい! Road to UFCはなんで年齢制限あるんだよってずっと文句もあるんで(苦笑)。格闘技始めた時からの夢がベルトを取ること、あとはUFCに行くことなんです。それをずっと言い続けているけど、そこには行けないまま来てしまって。だからこれからも現役を続けられる限りは諦めたくないです、色んなことを」

■視聴方法(予定)
5月19日(日)
午後12時30分~ ABEMA格闘チャンネル

■対戦カード

<修斗女子ストロー級王座決定戦/5分5R>
藤野恵実(日本)
杉本恵(日本)

<ストロー級/5分3R>
旭那拳(日本)
田上こゆる(日本)

<フライ級/5分3R>
関口祐冬(日本)
石井逸人(日本)

<インフィニティリーグ2024フライ級/5分2R>
ヤックル真吾(日本)
須藤晃大(日本)

<2024年度新人王Tフライ級1回戦/5分2R>
前田壮吉(日本)
シモン・スズキ(日本)

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【Shooto2024#04】藤野恵実と修斗女子世界ストロー級王座決定戦、杉本恵「藤野選手の圧力は感じなくて」

【写真】初戦の経験が、どう生きるか。楽しみな、25分間(C)SHOJIRO KAMAIKE

19日(日)、東京都港区のニューピアホールで昼夜興行として開催されるShooto2024#04では、第1部(昼興行)のメインで杉本恵が藤野恵実と修斗世界女子ストロー級王座を賭けて戦う。
Text by Shojiro Kameike

両者は昨年のインフィニティリーグで対戦し、結果は2Rドローに。しかしリーグ戦で優勝した藤野と準優勝の杉本が、ベルトを賭けたリマッチに臨むこととなった。杉本にとっては2度目のインフィニティリーグ挑戦で、初のベルト挑戦に辿り着いた。今回の試合に向けてタイはプーケットのタイガームエタイで練習していたという杉本に自身の成長と改善点、そしてベルトへの想いを訊いた。


――タイガームエタイで練習しているとお聞きしましたが、今もバンコクにいらっしゃるのですか。

「昨日帰国しました! 5月3日から10日間ほど、RENAと一緒にタイガームエタイで行かせてもらっていました」

――本野美樹選手もそうですし、RENA選手をキッカケにAACCからもタイガームエタイへ出稽古に行く選手が増えているのですね。

「そうですね。またRENAがタイガームエタイに行くと聞いて、私も試合前の追い込み練習で行きたいと思いました」

ソン・ヤードン、RENA、本田良介と(C)MEGUMI SUGIMOTO

――タイガームエタイではどのような練習をしてきたのですか。

「ボクシング、キックボクシング、寝技とMMAの全てですね。タイガームエタイにはいろんなクラスがあって、全てのクラスに参加できるので。おかげで1日3部練をやってきました。今までも阿部さんやAACCのメンバーと一緒に海外へ行ったことはありましたけど、これだけ長い期間、しかもガッツリと練習したことはなかったです」

――RIZIN神戸大会の前にタイで練習しているRENA選手にリモートでインタビューしたところ、ものすごく明るかったです。日本にいるとそうではない、ということではないと思いますが、タイの雰囲気がより人を明るくさせるのでしょうか。

「気候もあるし、タイガームエタイは練習環境も整っているので、すごく良い感じで練習することができました。私の場合は日本にいると、どうしても子供もいるし家庭のことも考えないといけなくて。今回はタイで集中して練習することができたので良かったです」

――杉本選手がタイで練習している間は、ご主人である阿部裕幸AACC代表がお子さんと一緒に……。

「ウチの場合は子供が二人ともAACCで練習していますからね。お父さんと一緒に練習へ行っていました」

――杉本選手は2013年に一度プロデビューし、お子さん二人の出産を経て2019年に復帰しました。小さいお子さんが二人いながら現役生活を送ることに難しさはないですか。

「周りの選手と比べても、どうしても練習時間は削られてしまいますよね。『いつまで現役を続けられるのかな……』とは考えたりします。でもそこは自分次第で、時間を見つけて強くなるしかないんだろうと思います」

――6年のブランクの間も、ずっと復帰したいという想いを抱えていたのですか。

「もともと小学校から大学までレスリングをやっていて、大学の後は就職してレスリングは辞めていました。その頃に阿部さんと出会い、最初はキッズレスリングの練習を手伝っていて――AACCでMMAの練習を見た時に、私もMMAをやりたいと思って。でもプロデビューして1年ぐらいで出産と子育てに入ったから、自分の中でやり切れていないという気持ちがあったんです」

――2019年に復帰するまでの6年間で、MMAも大きく変化していたと思います。分かりやすいところでは、国内でもリングよりケージが使用される興行が増えていました。その6年間のギャップは感じませんでしたか。

「確かにいろいろ変化していましたけど、その場に復帰することに対して怖さとかはなかったです。それよりも自分がまた皆の中に戻りたいという気持ちのほうが強くて」

――その気持ちに体は追いつきましたか。

「大丈夫でした。練習に復帰した時、思っていたよりも動けましたね」

――復帰後の2020年、黒部三奈選手とSARAMI選手に2連敗を喫して以降は無敗です。この2試合を境に杉本選手の中で何か変化があったのでしょうか。女子選手の中でも杉本選手は11勝3敗2分と勝率が高い。しかしトップどころには勝てないのか……という印象がありました。しかし次に対戦する藤野恵実選手との初戦(昨年11月)は2Rドローで、成長も見えた試合だったと思います。

「とにかく『負けたくない』という気持ちですね。私は負けず嫌いなので(笑)。AACCのメンバーがベルトを巻くなかで、早く私も追いつきたいと思って練習してきました」

――負けず嫌い、ですか。そう聞くと分かります。杉本選手は負けず嫌いの性格が強すぎませんか。

「アハハハ! そうですね」

――もともとレスリングのベースがあるのに、なぜそのベースを生かして戦わないのだろうかと思っていました。たとえば1Rは打撃戦で、2Rになるとテイクダウンからコントロールするという展開が多く……。

「それ、みんなに言われます(苦笑)。私は打撃がヘタクソなので、1Rはどれだけできるか試したくなってしまうんですよ。でもパンチが強くないこともあって、2Rはテイクダウンするという。本当は1Rからレスリングで勝負したほうが良いことは分かっているんです。でも、どうしても殴り合ってしまって」

――杉本選手の場合、気持ちが強すぎて前に行きすぎているように感じます。

「それはありますね(笑)。私は不器用で、一つのことしかできないんですよ。打撃は打撃、レスリングはレスリングと、どっちかになってしまいます。それも以前よりはバランスも良くなっているのかなぁ、とは思っているんですけど」

――藤野選手との初戦では、その成果が出たと思いますか。

「あの試合は思っていたよりも藤野選手の圧力は感じなくて、『これはいけるんじゃないか』と。相手の力強さも警戒はしていたものの、その点も対応できて。意外と冷静に戦えていたと思います」

――序盤にフラッシュダウンがありながら、テイクダウンを奪ってドローに持ち込めたのも冷静さがあったからこそですね。

「あぁ、あれはフラッシュダウンじゃないんですよ。体当たりというか、押されて転んじゃったんですよね(苦笑)」

――体当たりが強く転んでしまった……それはそれで、相撲MMAの真骨頂です。

「でもパンチを出していたので、あれはフラッシュダウンに見えても仕方ないです。あの時だけは、すごい圧力を感じました」

――冷静に戦うことができていた、というのは続く宝珠山桃花戦で証明されたのでしょうか。相手を打ち合いに引きずりこむことがある宝珠山選手に対して、杉本選手は打ち合いを挑まなかったです。

「相手が打撃の選手だったので、テイクダウンから優勢なポジションを押さえて勝つことは決めていて。いつも『相手が打ってきたら、こちらも……』という感じで試合をしてきましたけど、宝珠山戦はその気持ちを我慢しました(笑)」

――アハハハ。前回のインフィニティリーグと今回とでは気持ちも違いましたか。

「前回は復帰という意味で、『できる範囲で頑張れたら』と思っていました。でも2回目となると『絶対に勝ちたい』という気持ちは強かったです。その中で、藤野選手との試合はドローでしたけど手応えはあって。自分の気持ちと試合内容が、ようやく形になってきて――2回目のインフィニティリーグ挑戦で、ようやくベルトが懸かった試合にたどり着くことができました。次は絶対にベルトを獲りたいですね」

――初戦は2R戦で、次は5R戦です。その違いは意識しますか。

「2Rと5Rでは全然違いますよね。私自身やってみないと、どうなるかは分からないです。でも自分がやるべきことを全て出すというのは変わらないですね。5Rフルで戦うことになるかどうかは分からないけど、ラウンド一つずつ自分のレスリングを生かして全力で勝ちに行きます」

■視聴方法(予定)
5月19日(土)
午後12時30分~ABEMA格闘チャンネル

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【Shooto2024#04】藤野と杉本が世界女子ストロー級王座決定戦でリマッチ。関口×石井、旭那×田上が決定

【写真】リーグ戦でドローに終わっている2人が王座決定戦で再戦(C)SATOSHI NARITA

5月19日(日)、東京都港区のニューピアホールで開催されるプロフェッショナル修斗公式戦。この日は昼夜大会として開催され、第1部=PROFESSIONAL SHOOTO 2024 Vol.4の主要カードが発表された。
Text by Takumi Nakamura


今大会のタイトルマッチとして、世界女子ストロー級チャンピオン決定戦=藤野恵実×杉本恵が決定した。藤野と杉本はともに昨年のインフィニティリーグに出場。

1位と2位が世界王座決定戦で対戦するというレギュレーションのなか、ともに3勝1分の成績だったが、2つの一本勝ちを収めた藤野が勝ち点で杉本を上回り、藤野が優勝、杉本が準優勝という結果に。リーグ戦でドローに終わっている2人がベルトをかけたリマッチに臨むことになる。

前回=昨年11月の対戦は1Rに藤野が左右のフックでフラッシュダウンを奪い、バックキープするなど優勢に試合を進め、2Rは杉本が1度テイクダウンを奪ったものの、トップキープを許さなかった藤野が打撃で前に出る展開で終了。

ジャッジ1名が20-18で藤野を支持、残り2名が19-19というポイントでのドローで、1Rを明確に藤野が取り、2Rは票が割れる形だったため、藤野優勢の印象が残る内容だった。

この時はリーグ戦のため5分2Rの短期勝負だったが、今回は王座決定戦=5分5Rの長期戦となる。約半年というインターバルでの再戦、藤野としては前回の試合運びを継続すれば勝ちが見えてくる。杉本がどんな準備と戦略を用意してケージに立つかがポイントの王座決定戦だ。

昨年12月にフライ級で内藤頌貴に一本勝ちした石井逸人がランキング1位の関口祐冬と対戦。また旭那拳の負傷により、3月大会から延期となっていた田上こゆるとの一戦が今大会にスライドで実施される。

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【ONE FN20】ONE本戦デビュー、ラズワン戦へ。澤田千優「残りあと何年という計画があって……」

【写真】戦場が変わると同時に、所属ジムの変更も公言した (C)SHOJIRO KAMEIKE

9日(土・現地時間)、タイのバンコクにあるルンピニー・スタジアムで開催されるONE Fight Night20で、修斗女子アトム級王者の澤田千優がジヒン・ラズワンと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

澤田は昨年2月にONEフライデーファイトでサナーズ・ファイアズマネシュを下して以来のONE出場となる。しかも念願の本戦契約だ。さらに所属もAACCからキックボクシングジムのteam AKATSUKIへ変更となった。昨年12月に中村未来を下して修斗王座を防衛してから約3カ月間、そしてONE本戦での試合について澤田が語って。


――2月末にONEとの本戦契約と初戦が発表されました。今回の本戦契約は、いつ頃から話が進んでいたのでしょうか。

「正式発表の1カ月前ぐらいからです。私は修斗のインフィニティリーグに出ていた頃から『海外で試合をするならONEのアトム級を目指したい』と言っていて。フライデーファイトに出た時も、ABEMA TVの方がONEに私の本戦出場について話をしてくださったり、今年1月の日本大会も私が出場できるように動いてくださっていたそうなんです」

――そうだったのですね。残念ながら日本大会への出場はなりませんでした。

「そのあとONE JAPANの方から連絡を頂いて、今回の本戦契約に至りました。私も全ての事情を知っているわけではないので、正確なことは分かりませんが……」

――澤田選手はABEMA TVの海外武者修行プロジェクトに参加し、コンバテ・グローバルでアナ・パラシコスを判定で下しました。そして修斗の防衛戦を経てONE本戦契約を勝ち取るという、海外武者修行プロジェクトの成功例とも言えます。

「私が海外で試合をしたい、ONEアトム級で戦いたいという希望があって。ABEMAの方からも『ここで試合をしておくと、ONE本戦契約への良いアピールになるから』と、コンバテで試合をさせてもらいました。その経験はMMAをやっていくうえで、良かったです。ただ本戦契約して初戦がABEMAではなくU-NEXTで中継されるというのは――最初にONE JAPANから聞いた時は驚きましたし、少し不安というか気になることもあって」

――気になることとは?

「ABEMAの方にどう思われるんだろうな、と」

――えっ!? それはONEと中継サイドのお話であり、澤田選手が心配することではないと思いますが……。

「でも海外武者修行プロジェクトは、全てABEMAがサポートしてくれたもので。やっぱり筋というか――これまで私に関わってくれた方を裏切るようなことはしたくない。でも私自身が目指しているもののために、ONEの本戦には出たい。そう考えていた時に、ABEMA TVの北野(雄司プロデューサー)さんから連絡を頂きました。

『おめでとうございます。今後ABEMAがONE中継に関わることはないけれど、何かサポートが必要であれば、いつでも言ってください』と言われて、ホッとしたんですよ」

――それは素敵なお話です。同時に所属がAACCからAKATSUKIに変わることも発表されました。ONE本戦契約と同じタイミングとなったのは偶然だったのでしょうか。

「偶然ではないですね。でも、ONE本戦契約があったからAACCを離れた、というわけではないです。もともとMMAを続けるのは、残りあと何年という計画があって……」

――現在の年齢とキャリアで、現役生活の最後を見据えているのですか!?

「そうなんです。私の性格上、『ここまでにコレをやりきる』という目標を決めないと、頑張れないところがあって(苦笑)。ズルズルと格闘技を続けたくはないんですよ。レスリングを始めてから今のMMAに至るまで、常に自分の中で目標は定めています。

自分としては30歳ぐらいがピークで強い時期だと思っています。今26歳なので、残り5年の間にONEのチャンピオンになりたい。そのためには、もっともっと強くならないといけない、というビジョンをAACC代表の阿部(裕幸)さんとすり合わせて。結果、環境を変えて、いろんな方から刺激をもらいながら練習をしていくほうが良いんじゃないかと考えたのが、ジム移籍のポイントなんです」

――その移籍先としてAKATSUKIを選んだ理由を教えてください。

「AKATSUKI代表の良太郎さんはキックボクサーで、もともと良太郎さんから打撃を教わっていました。キックボクシングだけでなく、いろんな格闘技を見ていて、私のベースであるレスリングを生かせるような打撃を教えてくれる方です。他にも良太郎さんに打撃を教わっているMMAファイターがいます。私の弱い部分である打撃を本当に基礎から教わることで、これから海外の試合に向けてステップアップできるんじゃないかと。

フリーとしてAKATSUKIで練習させていただくこともできますが、私自身はどこか所属して、腰を落ち着けないと頑張るは難しいタイプでもありますし(苦笑)。それでAKATSUKI所属として活動させていただくことになりました。

去年の12月、修斗のタイトルマッチ前からお話を進めていて。防衛戦が決まった段階では阿部さんにも『年内いっぱいで……』というお話をしていました。ただ、もしかしたら1月のONE日本大会出場があるかもしれない。そこで移籍も発表しようと考えていて。本戦契約と初戦が3月になり、移籍の発表もこのタイミングなったという流れです」

――なるほど。修斗王座の防衛戦では、中村未来選手を相手に明確な差を見せつけて勝利しました。もう修斗の女子アトム級では対戦相手がいない……と思われるなか、ますますONEで戦う気持ちが強くなっていたのではないですか。

「はい。もともとファイトナイトに出場した時点で、本戦契約に本戦契約に手が掛かっているか掛かっていないか――という状況だったと思います。もし本戦契約がなければ、もう一度ファイトナイトに出るという話もありました。一方で、修斗女子アトム級の選手とは、みんな対戦していたじゃないですか」

――中村選手とはインフィニティリーグで対戦し、判定勝ちを収めていました。とはいえ、これは結果論ではありますが、個人的にはあの防衛戦があって良かったと思います。圧倒的な差を見せつけることによって、周囲にも『もう海外しかない』と思わせることができたのではないかと。

「それは私も試合前から考えていました。国内で試合をするかぎりは、絶対にそう思わせるような内容を見せなければいけない。実は、セコンドからは『タイトルマッチは5分5Rだから、5R戦うことを考えて』と言われていたんです。私も試合前は緊張しながら『ハイ! ハイ!』と答えていましたが、試合が始まったらチャンスがあれば極め切るという気持ちで臨みました。その気持ちが試合に出たと思っています」

――プロデビュー当時は、その気持ちがありながら試合中にプラン変更を余儀なくされたこともあったと思います。しかし最近は、その強い気持ちを貫いている印象があります。

「私はそれほど試合数をこなしているわけではなくて。でも練習しているなかで、MMAとしてレスリングはもちろん寝技や打撃など、MMAの選手としてMMAらしく戦うイメージを持って試合をしてきました。他の人の試合を視るだけでなく、他の選手から試合のつくり方について聞いているんですよ。そこで聞く意見が凄く勉強になります」

――今はAKATSUKIと、マスタージャパンが主な練習場所なのでしょうか。

「ここ1~2カ月は、マスタージャパンでは金曜日と日曜日の選手練に参加させていただいています。いろいろ練習している内容を、マスタージャパンですり合わせさせてもらっている感じで。『この打撃は通用する』、『まだ壁際はヘタクソだな』とか。そういう練習ができることは、とてもありがたいです。あとは万智ちゃんと週1回は必ずスパーする日をつくっています。あの子も本当に強くて。

それと今は追い込みの時期なので、柔術とグラップリングの練習のために、今成柔術に行かせていただいています。朝早くからグルグルとロールしているだけなんですけど(笑)。体の使い方を確認しながら、『これは違うかな』と思ったり。自分が極めるための体の動かし方だけでなく、極められないための体の動かし方が必要で」

――ONEアトム級はユニファイドであればストロー級です。澤田選手の場合、どうしても相手との体格差は課題となるでしょう。今日のマスタージャパン練習には、黒部選手とライカ選手が参加していました。万智選手も含めて階級が違う相手との練習が多いのですか。

「体格差については……ここ数カ月で鍛えたパワーだけでは到底敵わないと思います。海外の選手とはインナーマッスルや、地の力が違うので。力を力で制圧するよりも、距離で外したり組んだ時に抜くことは意識しています。だから自分よりも大きな相手との練習が重要で。黒部さんや藤野恵実さん、万智ちゃんと組ませてもらうと、自分より体重が10キロ以上は重くて力が強い選手の感覚が分かるというか。ここは抑え込める、ここは外したほうが良いという肌感覚を身につけたいと思っています」

――ジヒン・ラズワンはONE女子アトム級の中でも体格が大きく、組みも強い選手です。

「力は強そうですよね。お尻が大きいし、足も太くて。腰も強くて、なかなか壁際でも崩れない。打撃も出すし、MMAファイターとしてのバランスも良い選手だと思います」

――2022年9月のスタンプ戦(判定負け)でも、序盤はトップをキープしていました。ただ、アグレッシブすぎることでサブミッションが外れたり、敗北を招くこともあります。

「スタンプ戦でも最後は前に出たところに、ガチンとヒジを合わされていましたね。私との試合でも、まず出てきてくれるかなと思っています。でも真正面からぶつかると勝てないと思います。私も突っ込むタイプではありますけど、そこは我慢して相手もジレてくるような戦い方をする。そして相手がパンチを振ってきたところにカウンターで組むとか。今、上の階級の方たちと練習していることが生きる試合だと思います」

――ラズワンは過去にV.V Mei選手、平田樹選手に勝利しています。日本女子アトム級の敵という状態でもあります。

「その点は、あまり意識していないです。ただ、これまで日本人選手に勝っているからこそ、ONEから『サワダ、どうなんだ?』と試されているマッチメイクなんじゃないかと思っています。私にとっても大きなチャンスだから、絶対にモノにしないといけないですね」

■放送予定
3月9日(土・日本時間)
午後9時30分~U-NEXT

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