【写真】国際戦2試合を含む、ハードな5試合でヅッキーニョスが手にした武器とは── (C)SHOJIRO KAMEIKE
もう既にオープニングファイトが開始しているGLADIATOR028。フェザー級王座挑戦者決定トーナメント準決勝でチハヤフル・ヅッキーニョスが、リベンジに挑む。
Text by Manabu Takashima
昨年6月に同王座決定トーナメント準決勝でダギースレンに敗れたヅッキーニョスは、15カ月で5試合を戦う打撃で戦える気持ちを創ってきた。一足飛びなど考えす、一歩一歩確かな成長を遂げたヅッキーニョスがこの間に経験と成長を訊いた。
――挑戦者決定トーナメント準決勝に臨むヅッキーニョス選手ですが、チャンピオン河名マスト選手のRoad to UFC準決勝敗退をどのように捉えていますか。
「残念な気持ちではありますが、最初にダウンを取ったの河名選手で。何もできなくて負けたわけでないです。現実は厳しいと思うのと、もう戦えないと思っていたので再戦のチャンスがあるかもということはポジティブにも捉えることができるという感じですね。
本音は勝ち続けてUFCに行ってくれていたら、ニャムジャルガルに続いてGladiatorのチャンピオンがUFCに行くことになっていればGladiatorの存在も明確になったのかとは思います。同時にここでチャンピオンになるとRoad to UFCに出られるという認識を僕は持っています。Gladiatorで色々な外国人選手と戦って、上を目指す。そこに他の日本人選手が来てくれたら、もっと盛り上がるでしょうし」
──押忍。そのように国際戦を繰り返すことで、力をつけていたヅッキーニョス選手。そういう戦いの序章だった時にダギースレンに判定負け、そして再び肌を合わすこととなりました。
「前回のダギースレン戦は大きかったです。実際にあの試合に負けて……通用した部分もあったけど、全体的に押し切られた試合でした。あの負けで、会社を辞めようと決めて。翌日に上司に伝えたんですよ」
──えっ!!
「実際に退社したのは、今年の2月なんですけど。あそこから気持ちも切り替わりいつか再戦したいと思っていたので、それが1年と3カ月……短いといえば短いですが、ブランクを空けずに試合をしてきて確実に成長しているという気持ちがあります。なのでリベンジのチャンスが来たというのは、凄く嬉しいです。
前職と同じでも、フリーになって自分でスケジュールを管理し今は格闘技に集中した生活ができているので。正直、サラリーマン時代は連日の残業と出張が多くて、今からすると『よう、やっていたな』って思うほどで。あの時と比べると、今は格闘技としっかり向き合えています」
──ダギースレンに負けて仕事を辞める決意をした。その時は、どのようにファイターとして強化していきたいと考えていたのでしょうか。
「一番はスタンド、打撃です。もともと打撃が苦手で、試合でも自分から打撃で前に出るってほとんどなくて。サークリングから隙を見て組みつくスタイルでしたが、それでは厳しくなってきたので。打撃が普通にできて、レスリングを強化する。柔術タイプだったので、テイクダウンをしないと自分の強味を発揮できないと考えました。それとフィジカルですね。ダギースレンと戦って、彼を体感して『なるほど』って思いました(笑)。何となく勝っていたことから、打撃だろうが組みだろうが自分から試合を創って勝つという風に変わりました」
──ダギースレン戦後、まず9月にハンセン怜雄選手との再起戦が組まれました。
「ハイ。打撃で倒してやろうと思っていました。ハンセン選手は打撃の選手で、戦績だけ見ると苦戦をしている。なので通用しないことはない。この試合で、自分の殻を破らないと成長できないという気持ちで臨んだ試合でした。実際に殴り合って、削られましたけどパンチでKOできたので良い経験になりました。技術云々でなく、気持ちでいけたのが大きかったです」
──続く12月大会では河名マスト選手に逆に打撃で敗れました。
「あの試合はやはり河名選手のレスリング力ですね。並大抵でないことは覚悟していました。MIBUROで大きな外国人がきてやられちゃうこともありますが、通用しないということはなかったです。だから河名選手と戦っても、打撃で上回って組んでも勝負できると思っていました。そうしたら……圧倒的なレスリング力の差がありました。
飛ばしすぎないで戦おうと思ったら、組みで圧倒されて。勝つには打撃しかないと打ち合ったらKOされました。感覚的な話になりますが、それでもトップレスラーのフィジカルを体験できたのは大きかったです。打撃が中途半端、未完成な打撃で勝負をしたことも敗因の一つだと思っています。組みだけでなく、打撃も反省できた試合でした」
──では今年3月の石田拓穂戦、ある意味絶対に負けられない状況だったかと思います。
「実力的には絶対に勝てるとは言わないですが、少なくとも普通に勝負ができると踏んでいました。リーチ差を生かして、打撃が勝負しようと。でも、その打撃が未完成でした」
──打撃で押し込まれて、逆転の一発という試合でした。
「KOしたパンチは正直、狙っていたものではないです。でも練習をし続けていたパンチでした。近距離でのパンチ、一発で意識を飛ばせたのも初めてで……結果的に打撃の練習の成果が出た試合で。自分のなかでは自信にはなりました」
──5月のパク・サンウォン戦はアドニス・セビジェーノが来日できず、急遽の対戦となりました。そしてストライカーを相手に、一つのテイクダウンからコントロールして腕十字で一本勝ちでした。
「打撃が得意なのは分かっていました。なのでKOをしようとかはなかったですが、打撃戦でどれだけできるのか試そうと思っていました。打撃を出させていなす。見切ったうえでテイクダウン。組んでからはいつも通り戦えばいける。そういう作戦通りの試合でしたね。打撃の向上と、作戦通りに動けることが確認できました」
──打撃を向上させても、打撃戦を一部と考えている。まさにMMAとして打撃と捉えることができていますね。その打撃、どこかで特別に練習をすることはあるのですか。
「ムエタイのプライベートを受けたり、ムエタイの選手と練習する機会を設けました。あとは福田龍彌さんから、アドバイスを良く貰います。そこを実践する。昔から教えてもらってはいたのですが、なんせ打撃が分からなくて。レベルが違い過ぎるから仰っていることが分からなかったのが、ようやく少し分かって来て。龍彌さんのいうことを信じて戦う。それが最近になって、できるようになりつつあると思います。そこは大きいです」
──そして迎えた7月のトーナメント準々決勝、中川晧貴選手に総力戦で競り勝ちました。
「中川選手はグラップラーで、リーチ差があるので打撃で行こうと思っていました。テイクダウンをさせずに、戦う。スタンドでプレッシャーをかけて相手を下がらせる。そこはデキてしっくりとは来ています。ただ僕も被弾してしまいました。前に行く気持ちが強くて。
打撃に拘るより組みの方が強みですし、打撃を混ぜて戦うことが身についてきたというのはあります。ただ、その組みの部分でポジションを返されたり、逆に得意なところで課題が残った形です」
──そして、いよいよダギースレンとの再戦です。以前との違い、改めてお願いします。
「打撃を使って戦えるようになったこと。もちろん、狙い過ぎると自分が貰ってしまうこともあるのですが『できるぞ』というところが違います。前回はスタンドでも、ほぼほぼ僕が逃げ回ってグラップリング勝負をしてたのが、そこも打撃を使って……。綺麗に入るとまではいえないけど、グチャグチャにはならないで戦えるかと思います。少し洗練されたMMAになる。そういうところを見て欲しいです」
──結果オーライかもしれないですが、石田戦で打撃で下がった時に組まずに打撃で勝った。それがあることで、絶対的に組むだけじゃない。その気持ちがあると相手に分かることは、大きいのかと思います。
「人一番ビビりだったんです。スパーリングでもパンチが飛んで来たら背中を向けてうずくまるぐらいの感じで避けていました。今の後輩、一般会員さんは凄いなって思うぐらい僕よりできていました。本当に僕は顔に来るものへの恐怖心が凄くあって。結局、勝ちたいってよりは単純にそういう自分が嫌だった。
恐怖心に打ち克ことは、戦ううえで必要な能力で。逃げ回る自分は嫌だし、逃げ回るスタイルじゃ通用しない。だから、やるしかないと思って取り組んで来たら段々、少しずつですけど向き合えるようになって。目を開けたままでパンチを貰えるようにはなりました」
──その気持ちが創ることができてのダギースレン戦です。
「去年のトーナメントはGladiatorで戦ってきた選手の出場は、僕しかいないような状況だったから出ることができたと思います。それで負けました。今回は、この1年で強さと成長する能力を見せたことで、トーナメント出場が認められたと思っています。あれからの5試合、間を空けずに戦ってきたことで得られた自信があります。ダギースレンも凄く成長しているので、全く違ったMMAを見せることができると思います」
──ところで、今もMMAは東京中心です。グラジでキャリアを重ね、力もつけてきた。首都圏で戦いたいという気持ちは?
「そういう気持ちは、強くは持っていないです。どこでも一緒です。今は配信があるので。昔は東京、後楽園ホールで戦いたいということはありましたが、今は場所に拘りはないです」
■視聴方法(予定)
10月6日(日)
午後12時30分~ THE 1 TV YouTubeチャンネル
■Gladitator028対戦カード
<Gladiatorフェザー級挑戦者決定T準決勝/5分3R>
チハヤフル・ヅッキーニョス(日本)
ダギースレン・チャグナードルジ(モンゴル)
<Gladiatorフェザー級挑戦者決定T準決勝/5分3R>
水野翔(日本)
パン・ジェヒョク(韓国)
<フェザー級/5分3R>
木村柊也(日本)
キム・ウィジョン(韓国)
<バンタム級/5分3R>
吉田開威(日本)
上田祐起(日本)
<ウェルター級/5分2R>
森井翼(日本)
チョモランマ1/2(日本)
<フライ級/5分2R>
宮川日向(日本)
今井健斗(日本)
<フェザー級/5分2R>
野口蒼太(日本)
福田泰暉(日本)
<バンタム級/5分2R>
ルキヤ(日本)
しゅんすけ(日本)
<フライ級/5分2R>
澤田政輝(日本)
荒木凌(日本)
<フェザー級/5分2R>
田口翔太(日本)
藤井丈虎(日本)
<ウェルター級/5分2R>
後藤丈季(日本)
趙大貴(日本)
<ライト級/5分2R>
磯嶋祥蔵(日本)
キンコンカンコンケンチャンマン(日本)
<フライ級/5分2R>
古賀珠楠(日本)
藤原浩太(日本)
<フライ級/5分2R>
田中義基(日本)
村田和生(日本)