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Interview Special  ソン・ソンウォン ブログ 石原夜叉坊 祖根寿麻 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:1月─その参─祖根寿麻✖石原夜叉坊「堕落に任せている」

【写真】勢いでなく、覚悟を決めて戦った祖根 (C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

2021年1月の一番、第三弾は31日に行われたShooto2021#01から祖根寿麻✖石原夜叉坊戦について語らおう。


────青木真也が選ぶ2021年1月の一番、3試合目をお願いします。

「祖根✖夜叉坊です。あの試合、正直どう見ていましたか?」

──試合前に、どちらが勝つと思っていたということですか。

「ハイ」

──それは正直、夜叉坊です。と同時、個人的には祖根選手に何か見せてほしいと思っていました。意地のようなモノを。

「夜叉坊ですよね。僕もそう思っていました。やっぱ、そうですよね。なんか、そう考えると2年間試合をしていないというのは大きいですね」

──そこでいえるのは2年間試合をしていないという部分とともに、2年間の過ごし方はどうだったのかということかと。

「そうっスね。試合勘と別に、日々の練習でどれだけ創ってきたのか。そこの部分は関係してくるでしょうね。夜叉坊は打撃の選手なので、打撃の切り返しとかそういうことはしていたと思うんです。でも組んだり、鎬を削る練習をどこまで日常に採り入れてきたのかとは感じました」

──結果論で突っ込むのは反則かもしれないですが、最後の局面にテイクダウンへ行った。夜叉坊という選手は本当に気持ちがストレートに表れる。だから、負ける時はやってはいけないことがそのまま出ることが多いです。今回も最後に祖根選手の跳びヒザに対して、テイクダウンへ行った。いやポイントメイクでなく、倒す意志が必要な場面でしょうと。

「その前にもテイクダウンを狙って、がぶられて押し込まれる途中で崩れてバックに取られました。

テイクダウンに行った時のギロチンの取られ方も……良くなかった。ああいう組みの脆さを見ると、日々が出るのかなとは感じましたね」

──と同時に祖根選手が昨年4月に後藤丈治選手と戦った時と比較すると、コンディションが体も気持ちも違っているように感じました。

「祖根選手は去年の4月は動けていなかったけど、今回は気合が入っていました。要は不利なマッチアップで、皆が夜叉坊の勝利を願っている──祖根陣営以外は。

そういう試合で1Rが終わってから、祖根選手がガードを固めてゆっくり、ゆっくりと距離を詰めていきました。バッと行くんじゃなくて。あの試合をするってことは、頑張っている証拠です。

アレはなかなかできることじゃないし、今回の祖根選手は格闘家が評価する格闘家のソレだったと思います」

──最高の誉め言葉ですね。

「ほんと竹中大地選手とか、祖根さんとはタイプは違いますけど、アベレージが高くて格闘家が評価する格闘家だと思うんです。そういうのが、祖根選手にありました」

──対して夜叉坊は……個人的に夜叉坊と安藤達也選手は才能の塊だと思うんです。

「……あのう、それ……その2人で括るの止めてくださいよ(笑)。それ言っちゃいけない2人ですよ。肉体的にも精神的にもピークにいられる年齢です。でも肉体的に落ちていたり、気持ちで対戦相手に負けるって」

──練習していない、という結論を用いてしまいそうです。

「いや、でも練習しないほうが本来は体は消耗しないんですよ。ケガもしないし。だから、なんでなんだろうって。堕落に任せているのかなって。

でも、それでも通用しちゃうところがあるので。それが問題なんですよね。ヤバイと思います。この間の修斗は、色々とレベル的には感じ入るモノはありました。西川大和選手が絶賛されていたけど、それはヤバイですよ。18歳、北海道っていうバイアスをかけていると」

──ケージにそのようなバックグラウンドは関係ないですしね。我々、メディアはそこで盛り上げていきますけど。

「それはそこで、分かってやっていることだし。だからこそ団体やジム関係者はしっかりと見極めないといけない。そういう点においても、今回は祖根選手が頑張って、堕落せずに逆風のなかで戦って結果を残した。気持ちというモノは難しいですけど……そこをどう評価するのかは。ただし祖根選手は確かに気合が入っていました」

──気持ちは一定でないから難しいですね……確かに。次の祖根選手が、青木選手のいう格闘家が評価する格闘家でいられるのか……。

「今回はSNSでの賑やかしもなかったですよね。そこまで入っていたし、これが正念場だったのでしょうね。だからこそ、次にチャンスが回ってくると同じことができるとは思わない。と同時に祖根選手は世界一になるとか、そういうことでやっているわけではなくて、気持ちの良い格闘技を見せてくれていますよね」

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J-CAGE Report Shooto2021#01 ブログ 石原夜叉坊 祖根寿麻

【Shooto2021#01】互いがグラつく打撃戦は祖根が判定勝ち。夜叉坊は2年ぶりのMMAを勝利で飾れず

<65.8キロ契約/5分3R>
祖根寿麻(日本)
Def.3-0:29-28.29-28.29-28
石原夜叉坊(日本)

サウスポースタンスの夜叉坊が、左ストレートで先制。さらに左ローを当てる。祖根が間合いを詰めようとすると、バックステップで自分の距離を保つ夜叉坊。左ハイでけん制しつつ、左ローを当てていく夜叉坊は、さらに左テンカオを効かせる。左右のローで祖根を中に入れさせない夜叉坊に対して、右フックを振りながらダブルを仕掛ける祖根。これをカットした夜叉坊は、首相撲からパンチを当てて離れる。ケージ中央に戻り、ジャブとローを放つ夜叉坊、前に出てきた祖根に左ストレートを合わせると、祖根の動きが一瞬止まった。打撃を交錯するなか、ダブルを仕掛けた祖根だが、テイクダウンを奪うことができない。プレッシャーをかけて相手にケージを背負わせる夜叉坊だったが、祖根はケージを背にしながら右ミドルと右ストレートをクリーンヒット。夜叉坊も一瞬動きが止まり、両者打ち合いで1Rを終えた。

2R、右ジャブから入る夜叉坊。祖根もローを返す。祖根の右ミドルをカットした夜叉坊が、ダブルでテイクダウンを奪う。祖根は相手の首を抱えながら立ち上がり、首相撲から右ヒジをヒット。腰を落とした夜叉坊はダブルを仕掛けるも、祖根はカットする。スタンドに戻り、夜叉坊は左ロー。さらに左テンカオを狙うが、祖根の足払いで尻もちをついてしまう。両者がローを放つなか、祖根の右ミドルがヒット。夜叉坊の手数が減るが、左ハイから左ストレートを当てていく。受けた祖根も打ち返して、夜叉坊をケージ際に詰める。祖根がプレッシャーを詰めて、夜叉坊の右足を狙ってシングルを仕掛けるも、これは夜叉坊が足を抜いて倒れることはなかった。

最終R、開始直後、両者がローを放つ。夜叉坊のローが急所に入ったと祖根がアピールし、一旦試合が中断される。再開後、夜叉坊が左ローを放っていくも、中に入ろうとしたところに左ジャブを合わせられてしまう。祖根は右ローから右ハイ。それをかわした夜叉坊がダブルを狙うも、祖根はカット。夜叉坊は右からテイクダウンを狙うが、祖根はこれをカットしてバックマウントを奪い、RNCへ。夜叉坊はすぐさまディフェンスして立ち上がる。スタンドに戻り、夜叉坊が左ハイを繰り出したあと、前に出した手の指がアイポークになったとして試合が中断される。

ドクターチェック後、残り2分のところから試合再開。再開直後、夜叉坊の左がヒットして祖根がグラつく。互いにローで距離を測りながらパンチを狙う展開のなか、祖根の右がクリーンヒットし、夜叉坊が下がる。試合時間残り1分で、夜叉坊が左ハイ。これをブロックした祖根がパンチのフェイントを見せる。祖根の蹴りをバックステップでかわす夜叉坊。右ジャブを当てて祖根を下がらせる。試合時間残り15秒で、祖根が前に出るが夜叉坊も打ち返して、最終Rが終了した。

判定は、ジャッジ3者が1ポイントで祖根の勝利を支持。祖根は試合後、岡田涼や大塚隆史の名前を挙げ、挑発した。

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J-CAGE News Shooto2021#01 ブログ 石原夜叉坊 祖根寿麻

【Shooto2021#01】2年振りの実戦=石原夜叉坊の対戦相手は、後がない祖根寿麻に決定

【写真】覚悟のファイトであろう、祖根寿麻 (C)MMAPLANET

18日(水)、Sustainより東京都港区のニューピア・ホールで開催されるShooto2021#01に出場する石原夜叉坊の対戦相手が祖根寿麻になることが発表された。の出場が発表された。


2年振りに実戦復帰の夜叉坊の相手は、元環太平洋王者の祖根に決まった。祖根は昨年4月のRoad to ONE02の後藤丈治戦以来、9カ月振りのファイトとなる。夜叉坊にとっては「後藤ちゃんが北海道に帰っていて、試合ができないっていうから……ここで祖根ちゃんに勝って、後藤ちゃんとかチャンピオンとやっていかないといけないから」と言うように、これから先に進むために負けられない試合である。その一方で、祖根にとってはMMAを続ける上で落とすことができない試合となる。

過去2年、白星から遠ざかりRIZINや修斗でトップクラスとのマッチアップが続いたとはいえ5連敗中だ。ここで夜叉坊に勝利すれば、オセロにようにこの黒星がなくなるわけではないが、戦う居場所、位置を確保することには役立つはず。

ともに豪快な勝利が欲しいだろうが、それゆえに一足飛びのない戦いが見たい。夜叉坊✖祖根が行われる昼夜2部制となる大会、その他のカードは環太平洋フェザー級選手権試合=王者SASUKE✖チャレンジャー内藤太尊を筆頭に、藤井伸樹✖加藤ケンジ、西川大和✖マックス・ザ・ボディ、山田崇太郎✖グンダー・カルンダと粒ぞろいのカードが揃っている。

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Bu et Sports de combat Interview J-CAGE ONE Road to ONE02 ブログ 岩﨑達也 後藤丈治 祖根寿麻

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。後藤丈治✖祖根寿麻─弐─「コロナがチャンス」

Goto vs Sone【写真】MMA故に選択肢は多く、必死で練習してきたスクランブルMMA故に選択が限定されてやすい。これもMMAの妙(C)MMAPLANET

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──後藤丈治✖祖根寿麻とは?!──後編では、質量の高い後藤に対し、祖根が取るべき手段について尋ねた。

<武術的観点に立って見た──後藤丈治✖祖根寿麻Part.01はコチラから>

──祖根選手は一度は背中をつけて対処しましたが、またシングルにいってタップしました。

「そのシングルに行くのが失敗だとしたら、祖根選手はそれも分かっていたはずです。でも、トータルでMMAを経験値として覚えているから、試合ではあのようにハマるパターンの勝敗というのが起こると思います。

だからこそ、今、コロナの時期はチャンスなんです。自分が普段しないことをやる。日々に追われるとこなす稽古になってしまいがちです。強くなるためにブレない人が今だからでこそきることをする。それは対人練習でなくても、いくらでもあるはずです。

MMAファイターの人たち、試合がない今こそ──という気持ちでいてほしいです。例え1人でも強くなれる練習に没頭できます」

──ここまで話を聞いてなおですが、試合の立ち上がりというのはやはり大切ではないでしょうか。構え、間、質量、全てが後藤選手だった試合で、打で祖根選手が対応した。

「まあ、これも結果論ですが、結果論から学べることとして、いきなり前へ出るのではなく、先ずは距離を取って後藤選手に打たせそこに組みの圧力をかける、そしてパンチ、またはテイクダウン狙いからスクランブルなど、そういう手があれば祖根選手も自分の武器を使えたのかというのはあります。

何度も言っていますが、後藤選手の左のパンチはカウンターです。そこに打ちに行けば貰う確率は高くなる。ただ後藤選手の攻撃が、後の先を取れているかどうかは分からないです。後の先が取れていないのなら、祖根選手が先の先を取れれば後藤選手のカウンターを後手にさせることができ、自分のペースで試合を作ることも可能だったと思います」

──カウンターと後の先が違う、そこを今一度説明していただけますか。

「カウンターとはタイミングが取れた結果、起こる事象です。後の先とは、先が取れているという条件下でできることなんです。仮に後藤選手が後の先が取れていなかったとします。その場合、先の先を取られるとやられます。それは待ちの姿勢が後手に回るようになるからです」

──確かにカウンター狙いで、後手後手となる事例は少ないですね。

「逆に質問なのですが……祖根選手のシングルも、打からシングルでなく、MMAなのでシングルから打ということもありなわけですよね?」

──ハイ、デメトリウス・ジョンソンはそのパターンをMMAに持ち込みました。

「なるほど。では、それができなかった祖根選手はシングル狙いで居ついた(※一方向に意思が偏っている状態)ということですね。シングルに入って解除してパンチ、またシングルとか、祖根選手にも戦うパターンはあるはずですから」

──構え、間、質量で上回っている後藤選手を相手に、今言われたような攻撃が可能なのでしょうか。

Goto vs Sone02「後藤選手はしっかりと打とうして、足が決まることがあります。これは武術的にいえば、居ついている状態でもあります。それでも祖根選手が闇雲に突っ込んでいくと、あの左が待っていたでしょうね。だから前後の動きですかね。下がることができれば、後藤選手の戦力を低下させることができた可能性は高いです。逆に祖根選手は前に出ることで、後藤選手の戦力を上昇させてしまいました。

それが試合ってことなんです。アスリートは作品への完成度に拘ることを忘れて、ノルマをこなすようになります。青木選手がよく試合だけでなく、大会を通して自分のやることを作品と呼んでいるじゃないですか。あれがあるから、青木選手はパターン化しない。そして、強くなるために貪欲で、新しいモノを追い求めているのはMMAPLANETのインタビューを読んでいても分かります。

それが今、彼が良く口にしている岩本(健汰)選手とのグラップリングなんでしょう。そういう自分が強くなるために、斬新な『おっ!』となるモノがある選手は強いです。その時期は、かなり強くなれると私は思います」

──岩﨑さんも現役時代にそういう経験があったのでしょうか。

「まぁ自分ごとになりますが、極真をやっている時代に意拳に出会った時がそうでした。その時の全日本空手道選手権で数見肇に再延長で敗れたのですが、あの時が最後じゃないでしょうかね……」

──1997年の全日本ですね。準々決勝で優勝した数見選手に敗れたのですが、数見選手は準決勝が本戦判定、決勝は延長で一本勝ちでした。

「武術というモチーフが、私にキーワードを与えてくれたんです」

──そういうキーワードをMMA選手は今、この時期に手にするチャンスだと?

「ハイ。キーワードなのか、パズルのピースなのか。ただし、歴史から学ぶと──必ず大混乱の後に大成功を収める者がいます。それは大混乱の時に絶対にブレずに、没頭できるモノがある者です。そういう人間は強い。今、強くなるにはチャンスなんです。虎視眈々としている人間のコロナ後は楽しみですよ。

五輪アスリートなんて、4年に一度を人生の最大の目標にしていたから、今はもうパニックですよ。そういう彼らには今回の新型コロナウィルス感染拡大は非常に気の毒ですが、ここで一発逆転できる人間も出てくるはずです」

──それが祖根選手にも当てはまると。

「勿論です。祖根選手だけでなく、今、ブレることなく何かに取り組む選手は皆チャンスがあると自分は思っています」

──では逆に勝った後藤選手には何を期待したいですか。

「この強さを、どこまで見せてくれるのか。殴る実感が拳(ケン)にあるロシア人やブラジル人にも、アレができる選手になってほしいですね。その前に国内レベルでも組みが強い選手に、どう対応できるのか。パンチから組む選手、どっちも使って組める選手、パンチはダメだけど蹴りから組める選手、そういう組みの強い選手と後藤選手がどういう風に戦えるのか……特に蹴りもパンチもデキて、組んでくる選手との試合が見てみたいです。それを今回のように戦えると、後藤選手──凄く楽しみですね」

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Bu et Sports de combat Interview J-CAGE ONE Road to ONE02 ブログ 岩﨑達也 後藤丈治 祖根寿麻

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。後藤丈治✖祖根寿麻─壱─「質量に差」

Goto vs Sone【写真】試合開始直後からキャリアも各も関係なく、構え、間、質量ともに後藤が祖根を上回っていた(C)MMAPLANET

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──後藤丈治✖祖根寿麻とは?!


──この試合はパンクラスではプレリミ中心でキャリアを積んできた4連勝中の後藤選手が、修斗で環太平洋王者になるもRIZINと修斗で4連敗中の祖根選手とのマッチアップでした。

「キャリア的には祖根選手が格上ということですね。この試合だけで見ると後藤選手の方が評価は上の選手と思うくらい、質量に差がありました。構えた時点で、完全に後藤選手の間でした」

──サウスポーの後藤選手が、前に出てくる祖根選手にパンチを当てる。序盤からそのような流れでした。

Goto vs Sone 02「後藤選手は構え、間、内面の質量と全て良かったです。あの場で見える質量の違いは、

明白でしたね。こうなるとキャリアとか、関係なくなってしまいます。それにあの左のパンチは一発でKOできます。それを後藤選手は打ち合いのなかで出せる。強かったです」

──途中、頭突きがあり再開後のみ祖根選手のパンチに真っすぐ下がり、組まれてケージに押し込まれました。不可抗力とはいえ反則です。それにより、受けた方の質量が下がるということはあるのでしょうか。

Goto vs Sone 03「頭突きでダメージがあったかどうかは画面では判別できなかったですが、後藤選手は決して下がったわけじゃないです。あれは祖根選手が入れたんです。下がると、入るはまた違うんです。

そういう風になったのは、あの直後だけ後藤選手の質量は下がったからです。金的にしても頭突きにしてもダメージのあるなしを抜きにして、された方が再開後は不利に動いてしまうことが多いです」

──そういうものですか。

「もらった側がリスタート後は、不利に動いてしまう。ここは選手やチームの人達も頭に入れて戦うべきだと思います」

──では祖根選手はあの場面ではケージに押し込むよりも、殴りに行った方が良かったのですか。

「ハイ、その通りです。正論を言えばその通りです。祖根選手の間だったのは、あの試合ではあの局面だけでしたから。とはいっても、殴りにいっても打撃は完全に後藤選手の方が上でした。だからテイクダウンに行くなら、テイクダウンを取り切る。そこは後藤選手の寝技や、祖根選手の寝技の技量によってくるのですが、あの試合を見る限りはそこに拘るべきではなかったのかと思います。

ただし、あの場面で組みに行って押し込んで、テイクダウンを狙うというのは、キャリアのある選手がパッケージでMMAを体に馴染ませ、パターンで攻めてしまうようなことかと。それってどの競技にもあることで。結果、組まれてケージを背負っている時に頭突きのダメージがあったとしても、後藤選手は休めたと思います。

Goto vs Sone 05それでも祖根選手はワンテイクがとれた。あそこのワンテイクは、祖根選手にとって非常に大切だった。

でも、MMAの王道のようにスクランブルの展開を疑いもせず受けいれた。倒してから、技術面はともかく絶対に抑えるという意識は見られなかったです。そして後藤選手が立ってアームロックから離れて、打撃の間合いに戻った。この時には、両者の関係は試合開始直後と同じになっていました」

──ここからは後藤選手は左だけでなく、右、そしてボディや前蹴りも入っていました。

「3月のプロ修斗で行われた内藤頌貴選手と渡辺健太郎選手の試合は、最後に渡辺選手の間になったのですが、今回の祖根選手にはそういうこともなかったです。パンチだけでなく、腹への右の前蹴りが効いていましたね。

Goto vs Sone 06後藤選手は蹴りもパンチも使える。ただし、蹴れる状態であっても強く蹴る気はなかった。それでも足も手も使える人間は、両方使えるようになります。そのなかで右の前蹴りは、祖根選手は見えていなかったですね。

左を当てて、右も当てていた。後藤選手は躍起になることなく、そのまま戦っていると左が当たって勝てるのが分かっていたと思います。

Goto vs Sone 07出て打つのか、その場で打つのか、下がって打つのか。

相手が来る時に、その場で打てば良い。相手が来る時に出ようとして、先の先を取られやられることは多いです。だけど後藤選手は前に出ない。その場で当てて倒せると分かっていた。

セコンドの長南さんも「打ち合うな」という指示も出していましたし、後藤選手もその場で打っていました。祖根選手が前に出てこうとしていたので、その場で打てば良かったので」

──祖根選手としては、間合を外すとかそういうことが必要だったのでしょうか。

「下がって逃げるのではなく、下がって打てば間を取れることはあったかもしれないです。それも、後藤選手が追いかけるようなことがある場合ですね。でも、後藤選手はその場で打っていたでしょう。あれは理想的です。

Goto vs Sone 09そして、祖根選手は前に出て打たれた。あの質量で前に出ると、やられます。そして後藤選手の間なのに、シングルレッグを仕掛けて、組み技のことは詳しく分からないですが、ニンジャチョークでやられてしまいましたね。

あそこでシングルレッグというのも、殴られてダメージがある状況でMMAのパターンですよね。もう後藤選手は準備できていました」

<この項、続く>

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Interview Road to ONE02 Special ブログ 後藤丈治 祖根寿麻 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:4月─その壱─後藤丈治✖祖根寿麻「ビックアップセットですよ」

Goto vs Sone【写真】格闘技は勝敗の結果が、勝っても負けても将来に影響することが大切だ (C) MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年4月──格闘技が、この惑星から消えかけた1カ月──の一番、第一弾は17日に行われたRoad to ONE02から後藤丈治✖祖根寿麻の一戦を語らおう。


──2020年4月度、世界中から格闘技が消えた1カ月。選択肢が限りなく少ない状況で青木真也が選ぶ、この一番。最初の試合は?

「後藤丈治✖祖根寿麻ですね。なんか僕、祖根って強いと思っていたんですけど、レコードを見るとこれで5連敗なんですよね。元谷(友貴)、岡田(遼)、根津(優太)、ジャスティン・スコッギンス、そして今回で。

まぁ、強い相手とやってきたというのはありますが、それにしてもコンディションが良くないのかと正直、思いました」

──それは自粛、非常事態宣言でどれだけの準備ができたのかということも影響してこないでしょうか。

「それを言えば、お互い様なんで。バンタム級だし、30歳を越えていると、中量級や重量級とは違って消耗しやすいのかというのも感じています」

──スタイルにもよるかと思いますが。

「まぁ、僕とはスタイルも違いますが……にしても消耗していないかと。ファイターのコンディションとして、ビジネスをしていたり、ジム経営と指導もあってプレーイング・マネージャーだから落ちてきているのか。

野村克也が南海ホークスで(※ダイエー・ホークスを経て福岡ソフトバンク・ホークス)プレーイング・マネージャーをやっていて凄く難しかったと言っていて」

──いや、青木選手はその時代に生まれていないじゃないですか!!(笑)。どちらかといえばヤクルト・スワローズの古田敦也さんの時代では? 自分なんて子供の頃、「なんで野村が4番で門田(博光)が3番なんだ。監督だからって、4番打つなよ」とか言っていましたよ(笑)。

「まるで分からないですよ(笑)。僕は野村監督の書いた本を読んで知った方です(笑)。選手兼監督は凄く大変で、優秀なヘッドコーチがいないとやらないって言ったとか。だから、祖根も難しいんだと思います」

──勝った後藤選手に関しては?

「一緒に練習しているんですけど、打撃の子ですね。でも祖根が有利だと試合前は思っていました」

──パンクラスでプレリミに出ていた選手が、修斗の前環太平洋王者でRIZINに出場している選手との対戦でしたからね。

「そう思いますよね。だからビックアップセットなんですよ。祖根のコンディションが悪かったとしても、この負けをこれから取り返すのは難しくなった。下手すると3年ぐらいかかるので、32歳とかっていう年齢でそこにもう一度向かい合えるのか。そうでない選択もできる状況がありますからね。

彼はそういう意味で優秀だと思うので。ただ後藤もレコードは決して良くない。最後の負けは米山(千隼)選手で、そこからはこれで5連勝なんですけどね。それまではパンクラスの札幌大会とかでも負けもある」

──だからこそ、この勝利が大きくないでしょうか。

「大きいですが、今回はRoad to ONEだから主戦場としているパンクラスでどういう風に評価されるのか。彼が修斗でやっているなら、元王者に勝ったから次は良いカードが来ますよね。修斗公式戦ではなくても、そのヒエラルキーを潰したので。『なら魚井(フルスイング)とやらせてみようか。いや手塚(基伸)かな?』ってなるのですが、パンクラスでも誰かとやらせてみるかってなるのか……分からないですよね」

──大会が再開されるとして、修斗の元王者にこの状況で試合をして勝った。そこはパンクラスも留意してほしいですね。きっと後藤選手がパンクラスで戦っていた試合よりも、今回の大会の方がABEMAで試合を視聴したファンが多いと思いますし。

「そこはありますよね。今回はパンクラスのプレリミよりも、視てもらっているだろうし。そこで結果も残しているし、すぐにアップして使われてほしいです。パンクラスにソレがないなら、修斗でも良い。とにかく次は、より上の選手と組んでもらいたいですね。彼は結果を残したので」

──確かにその通りですね。

「この試合で大きなチャンスを得る資格を得た。なら彼の言葉でメディアに対する発言が欲しいです。そうでないと、彼の人となりが見えてこないので。『誰とやりたい』、『どこでやっていきたい』とか。あの試合後は控室で取材をする状態ではなかったから、後追いで後藤丈治という選手を知りたいです」

──分かりました。それは青木選手からMMAPLANETへの宿題として捉えさせてもらいます。

「宜しくお願いします(笑)」

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J-CAGE ONE Report Road to ONE02 ブログ 後藤丈治 祖根寿麻

【Road to ONE02】左を効かせた後藤がフロントチョークで祖根からタップを奪う

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
後藤丈治(日本)
Def.1R by フロントチョーク
祖根寿麻(日本)

サウスポーの後藤に対し、オーソドックスの祖根。祖根は左右のフックで前に出て、後藤は距離を取ってハイキックで迎え撃つ。ここで祖根の頭が後藤のあごに当たり、試合は一時中断となる。再開後、祖根がパンチで後藤を金網まで押し込み、テイクダウンを奪う。一度は倒された後藤だが亀になって立ち上がり、アームロックを狙いながら正対する。ジャブ・左ストレートで前に出る後藤。パンチの打ち合いで右フックを効かせると、返しの左フックで祖根からダウンを奪う。祖根もタックルでテイクダウンを狙うが、後藤は首だけに手を回す形のフロントチョークへ。これががっちりと極まり、後藤が一本勝ちを収めた。

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J-CAGE News ONE Road to ONE02 ブログ 世羅智茂 宮田和幸 工藤諒司 後藤丈治 椿飛鳥 田中路教 祖根寿麻 青木真也

【Road to ONE02】Road to ONEはさらなるクローズドへ、メディアの現地取材もNG

Road to ONE【写真】メディアにも取材規制の通達があったRoad to ONE。UFCの無観客試合もメディアはクローズド、ONEは極一部(2名)のみ取材が許可されていた (C)MMAPLANET

14日(火)、サステインよりRoad to Japan実行委員会主催のRoad to ONE02に関して、メディアもクローズドアウトされるという発表があった。

昨日の対戦カード発表時に会場も公としないことや、「会場を専門業者により1日複数回の消毒を実施、サーモグラフィー・体温計のよる検温、うがい、アルコール消毒を徹底し、3密の状況を極力避け、大会関係者にはマスク着用を義務付ける」などコロナウィルス感染予防の姿勢がリリースで伝えられていたが、メディアにも安全性の確保と3密を避けるために会場での取材ができないことが通達された。

また一部選手の話を聞くと、今大会の出場選手の移動などにも通常にはない配慮がなされているとのこと。この時期に大会を開く、そのためには可能な限りの努力をする意思がメディアの取材規制やこの辺りにも表れている。

※MMAPLANETからMMAファン、格闘技ファンの皆さんへ。「仮にABEMAの中継で、開催場所に思い当たったという方がいらしても、SNSでの拡散及び、目星をつけた会場に足を運ばないこと」を強くお願いしたいです。


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【Road to ONE02】会場はシークレットに。ABEMA中継のTVマッチの体で大会は行われる方向に

Road to ONE02【写真】会場も公とされない、実質シークレットTVマッチとして大会は行われる (C)MMAPLANET

13 日(月・現地時間)、サステインよりRoad to Japan実行委員会主催のRoad to ONE02、全6試合の決定カードが発表された。

本来であれば昨日に港区のニューピアホールで開催予定だった同大会は、新型コロナウィルス(COVID-19)感染拡大を受け17日(金)にスライドされ無観客で行われることが決まっていた。

この時期での開催ということもあり、主催者からはウィルス対策として、「会場を専門業者により1日複数回の消毒を実施、サーモグラフィー・体温計のよる検温、うがい、アルコール消毒を徹底し、3密の状況を極力避け、大会関係者にはマスク着用を義務付ける」などリリースには明記されている。

また対戦相手の欠場が決まっていたSARAMIは新たな相手が見つからず女子戦は行われないこととなった。さらにキックにも変更が見られ、今大会は以下のように6試合が組まれ、その模様はABEMAでライブ中継される。


■Rod to ONE02対戦カード

<グラップリング・ライト級(※77.1キロ)/10分1R>
青木真也(日本)
世羅智茂(日本)

<ムエタイ72.5キロ契約/3分3R>
緑川創(日本)
西川大和(日本)

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
祖根寿麻(日本)
後藤丈治(日本)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
工藤諒司(日本)
椿飛鳥(日本)

<グラップリング・フェザー級(※70.3キロ)/10分1R>
宮田和幸(日本)
田中路教(日本)

<ムエタイ・ストロー級(※56.7キロ)/3分3R>
HIROYUKI(日本)
ポン・ピットジム(タイ)

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Road to ONE02 (4月17日) 対戦カード──SARAMIの試合は流れる……

Goto【写真】紆余曲折が見られた後藤✖祖根の一戦も組まれる。それでも、大会はこのまま行われるのか──何が起こるか分からないのが、我々の過ごす「今」だ(C)KEISUKE TAKAZAWA/MMAPLANET

2020年4月17日(金)
Road to ONE02

■視聴方法(予定)
4月17日(金・日本時間)
午後7時~ ABEma格闘チャンネル

※プレスリリースにある予防対策など詳細の後程アップします。

■対戦カード

<グラップリング・ライト級(※77.1キロ)/10分1R>
青木真也(日本)
世羅智茂(日本)

<ムエタイ72.5キロ契約/3分3R>
緑川創(日本)
西川大和(日本)

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
祖根寿麻(日本)
後藤丈治(日本)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
工藤諒司(日本)
椿飛鳥(日本)

<グラップリング・フェザー級(※70.3キロ)/10分1R>
宮田和幸(日本)
田中路教(日本)

<ムエタイ・ストロー級(※56.7キロ)/3分3R>
HIROYUKI(日本)
ポン・ピットジム(タイ)