【写真】口下手かもしれないが、一言一言から気持ちが伝わってくる野尻(C)SHOJIRO KAMEIKE
26日(日)、福岡県福岡市中央区のアクロス福岡で開催されるTORAO32で、野尻定由が磯城嶋一真と対戦する。
Text by Shojiro Kameike
野尻は2019年に修斗でプロデビュー。コロナ禍から2021年と2022年は各年間4戦と試合出場の機会も多かったが、なかなか結果に結びつかなかった。常に「やるかやられるか」という戦いを見せてきた野尻のこだわりと苦悩――福岡で立ち上がったBloom FCでの勝利を経て臨む修斗公式戦で見せる、野尻にとっての新しい自分とは。
――今回は福岡在住ファイター同士が戦うメインイベントとなりました。
「珍しいですよね。今まで自分がTORAOを見てきて、そういうのはなかったと思います」
――首都圏あるいは大阪、名古屋を除けば修斗公式戦で、地元ファイター同士でメインイベントが成立するのは稀でした。TORAOにしても漢字の「闘裸男」時代に中国・四国エリアの選手同士でメインを組むことは一つの目標ではあったでしょう。
「福岡の選手同士でメインが組めるぐらい、福岡に良い選手が増えてきたということですよね。もともと福岡でプロになる選手はいたけど、プロになってから東京に行く人も多かったし……。だから『ここまで来たか』って感じです」
――今回対戦する磯城嶋選手は、過去に練習したことはないのですか。
「一回もないですね」
――それも福岡の選手層が厚くなってきた証かと思います。プロ選手が少ないと、どうしても出稽古で一緒になることが多くなりますし。
「あぁ、なるほど。試合したあとに一緒に練習し始めるという逆のケースはあるんですよ(笑)。今はチームメイトになっている野瀬翔平君はアマチュア時代に一度試合をしていて。藤谷敦史さんはアマチュアで3回ぐらい試合していると思います」
――そんななか、今年3月にはBloom FCで上田祐起選手に判定勝ちしています。これまで修斗で戦ってきた野尻選手にとって、新しいBloom FCという大会はどのように見えていたのでしょうか。
「福岡から世界へ、というコンセプトは響きましたよね。自分も同じ気持ちでMMAをやっているので、良い大会が出来たなって思いました。それと、これまで以上に福岡で試合が組まれるなら良いことですし」
――そのBloom FCで約1年半ぶりの勝利を味わいました。
「今まで勝つ時は全てフィニッシュしてきたけど、この時初めて判定で勝ったんです。自分らしい試合ではなかったとは思います。でも、それ以上に勝つと負けるとでは全然違うなって感じました」
――上田戦で終始展開していたテイクダウンとトップキープは、勝つためにと最初から決めていた作戦だったのですか。
「はい。弘中(邦佳マスタージャパン代表)さんからも『打ち合うな』と言われていて。自分も打ち合うことに恐怖心が出ていたんですよ。だから組みで、リスクを少なくして勝とうと考えていました」
――野尻選手といえば常に「やるかやられるか」という試合を見せてきました。それも野尻選手のこだわりだったと思います。
「いつも激しい試合をしたいと思っていました。血だらけになる試合に憧れていたんですよ。それで弘中さんから『打ち合うな』と言われていても、まず練習でその気持ちが出てしまって、よく注意されていました(苦笑)」
――スパーの中で「ここで打ち合うのではなく抑え込めよ!」とか。
「アハハハ、そうです」
――2021年と2022年は計8戦と、今のMMAでは試合数が多いほうです。しかし、その一方でダメージの面も含めて、もう少し少し試合間隔を空けたほうが良いのではないかという印象は持っていました。
「そうですね……。とにかく試合がしたかったんです。試合の負けは試合の勝ちで取り返したいし、あとは休んでいても何にもならないという焦りがありました」
――しかし、なかなか結果に結びつかない時期でもありました。
「……、……シンプルに悔しかったですね。試合が終わるごとに良くなかった点を見つけて、改善しても結果に結びつかなくて。当時は頭を抱えていました」
――頭を抱えていた?
「あの時は、ちょっともう……勝ち方が分からなくなっていたんですよ」
――……。
「どうしたら良いのか分からなくなっていたから、環境を変えてみようかと思って。いつも出稽古で行っていたマスタージャパン福岡にお世話になろうかと思いました」
――環境を変えてみて、新しい道は開けましたか。
「そうですね。まだ完成はしていないかもしれないけど、目指す戦いというのは、なんとなく分かってきた気がします。近くに野瀬君っていう、強くてお手本になる選手がいるので」
――「福岡から世界へ」という気持ちでMMAを戦っている野尻選手にとって、Road to UFCにも出場している野瀬選手は、どのような存在なのでしょうか。
「凄いと思います。だから憧れている部分もある反面、『先を行かれたなぁ』っていう悔しさもありますよね。でもそんな彼に近づけるようにやっていけば、自分も――という道しるべになっています」
――なるほど。次の対戦相手、磯城嶋選手にはどのような印象を持っていますか。
「特別何かひとつ突き抜けた武器はないけど、ずっと攻める気持ちがある。そういう気が強い選手だと思います。それと体も柔軟で、倒されても柔軟性を生かして立ってくるじゃないですか。組みのディフェンスも柔軟な選手ですよね」
――それだけスクランブルの展開で柔軟性を見せる磯城嶋選手に対し、野尻選手がテイクダウンやスクランブルの展開に持ち込むことが有利になるのかどうか。
「そういう相手だからこそ、新しい自分を見せたいですよね。今は週2~3回、柔術の練習をやっています。柔術にはポイントがあって、ポイントを意識しながら戦えばMMAでも不利にはならない。その意識は強くなりました。
今まで試合でもそうだし、練習でもいっぱい悔しい想いをしてきました。ここまで組みも磨いてきたので、次の試合も相手を組み伏せる自信はあります。もし組み伏せることができなかったとしても、違うパターンで勝つ自信もあるので」
――今回の試合で勝った先の目標を教えてください。
「まずは修斗でベルトを獲りたいです。ベルトを巻いて、もっと大きな舞台で試合をしたいですね。あまり先のことを考えても仕方ないですけど――とにかく強い選手に勝って、自分の強さを証明していきたいです」
■TORAO32視聴方法(予定)
5月26日(日)
午後2時45分~Twit Casting LIVE
■TORAO32 対戦カード
<バンタム級/5分3R>
野尻由定(日本)
磯城嶋一真(日本)
<女子ストロー級/5分2R>
宝珠山桃花(日本)
吉成はるか(日本)
<フェザー級/5分2R>
諸石一砂(日本)
ネイン・デイネッシュ(インド)
<ストロー級/5分2R>
石原愼之介(日本)
泰斗(日本)
<フライ級/5分2R>
若宮龍斗(日本)
杉本静弥(日本)
<ストロー級/5分2R>
大城正也(日本)
梅木勇徳(日本)
<フライ級/5分2R>
古賀優平(日本)
永留惇平(日本)
<フライ級/5分2R>
高宮諒(日本)
下田洋介(日本)
<2024年度新人王フェザー級1回戦/5分2R>
ヒカル(日本)
清水洸志(日本)
<2024年度新人王ライト級1回戦/5分2R>
ムクロック(日本)
シヴァエフ(日本)
<バンタム級/5分2R>
藤谷敦(日本)
アサシン秋雄(日本)
<ライト級/5分2R>
深見弦汰(日本)
グラップラー脇(日本)
The post
【TORAO32】メインで福岡ファイター対決。磯城嶋一真戦へ、野尻定由「相手を組み伏せる自信はあります」 first appeared on
MMAPLANET.