谷川貞治が仕掛ける巌流島の新機軸「巌流島バーチャルファイト」の初回大会が5月3日からYouTubeでの配信がスタートしました。試合はグリーンバックで行われ、様々な背景を投影して配信する無観客イベント。異種格闘技の要素が強い巌流島の世界観にはマッチしそうな演出じゃありませんか。対戦カードもセネガル相撲、カルチョ・ストーリコ、ラウェイ、テコンドーなどの異色のジャンルの選手を起用するという、既存のイベントとは一線を画す大会。果たしてどうなりますか。遅ればせながら、配信を見ての感想を綴ります。
【 無差別級 オープンフィンガー・キックボクシングルール】
○江畑秀範(フリー/テコンドー)
(2R TKO)
×クリスティアン・エスクリグ(スペイン/怪力王)
1R、リーチ差を活かして回転系の多彩な蹴りを放つ江畑。エスクリグは間合いを詰めて左右のパンチを振り回す。しかし組み付いてからの展望がなくブレイク。身体が離れると江畑の後ろ回し蹴りがエスクリグのボディにヒット。明らかに効いた。それでも突進してくるエスクリグにハイキック。これでエスクリグはダウン。しかし立ち上がってくる打たれ強さ。その後も間合いを潰して一発を狙うが江畑は上手くいなしてラウンドを終えた。
2R、距離を詰めるエスクリグと突き放す江畑。エスクリグは組み付いてショートフックを狙うと徐々にヒットし始める。2度目のトライでクリーンヒット。江畑はダウン。何とか立ち上がる。突進してくるエスクリグに対して細かいパンチ。これでエスクリグは右の目じりをカット。出血が酷くドクターストップ。江畑が逃げ切った。
【49.5kg契約 キックボクシングルール】
×ぱんちゃん璃奈(フリー/キックボクシング)
(判定0-3)
○ルシア・アプデルガリム(アルゼンチン/キックボクシング)
1R、開始直後から至近距離での激しい打撃戦。ぱんちゃんはカーフを軸に組み立てるとアプデルガリムはボディにテンカオを交えてしっかりと打ち返す。ぱんちゃんも強烈なフックを打ち込むがアプデルガリムは打たれ強い。止まる事なく打ち返してラウンドを終えた。
2R、アプデルガリムがギアを上げる。ボディ中心だった1Rに比べて左右のフックを振り回す。ハンドスピードの速い事。序盤にパンチを当ててぱんちゃんの鼻から出血。さらに打撃の交差では回転の速い左右の連打でぱんちゃんは一瞬腰が落ちる場面も。最後までアプデルガリムの手数は衰えずラウンド終了。
3R、開始直後からアプデルガリムの連打がぱんちゃんの顔面を捕える。それでも引かないぱんちゃんは遠距離から前蹴り、ミドルでペースを作る。だがアプデルガリムの突進は衰えない。至近距離の打ち合いに持ち込むとぱんちゃんの画面を揺らして反撃して試合終了。判定はアプデルガリムに軍配。これまで無敗だったばんちゃんはなんと巌流島で初敗北を喫しました。
【巌流島ルール】
○渡慶次幸平(クロスポイント吉祥寺/ミャンマーラウェイ)
(判定0-3)
×ミケーレ・ベルギネリ(イタリア/カルチョ・ストーリコ)
1R、渡慶次は様々なフェイントからミドル、三日月狙い。逆にベルギネリは構わず左右のフックを振り回す。打撃の交差から組み付いたベルギネリがテイクダウンに成功。パウンドからフロントチョークを狙うが渡慶次はスタンドに脱出。すると渡慶次は三日月蹴りから右フックを当てるとベルギネリはダウン。パウンドを落としたところでタイムアップ。
2R、渡慶次は引き続き三日月蹴りを中心に試合を組み立てる。ベルギネリのパンチに右フックを合わせて攻勢。スタンドで劣勢のベルギネリは蹴りを掴んでテイクダウンするが動きがなくブレイク。スタンドに戻ると渡慶次が的確に打撃をヒットさせてラウンドを終えた。
3R、渡慶次は三日月蹴り、ローキックで手数を稼ぐ。ベルギネリはスタミナ切れか打ち返すもののスタミナの消耗は明らか。事態を打開出来ないまま試合終了。判定は渡慶次に軍配。
【無差別級 ボクシング特別ルール】
〇木村“フィリップ”ミノル(Battle-Box/キックボクシング)
(1R KO)
×アマドゥ・ディア(セネガル/セネガル相撲)
1R、ディアがパンチを振るって前に出てきたところに木村は左フックをヒット。これでディアはダウン。立ち上がってくるも、間合いを詰めたところで木村が再び左フック。これでディアはまたもダウン。木村が圧勝です。
終わってみると巌流島らしさがあったのは、江畑×エスクリグ、渡慶次×ベルギネリかな。どちらも既存のMMAやキックに染まり切っていない異種格闘技の雰囲気がありました。これぞ巌流島。こういうジャンルを背負った選手が出場して、ファイトスタイルが際立った個性があると、他の大会にはない巌流島の世界観が出来るのではないかなと。
一方でぱんちゃんとアプデルガリムは一番噛み合っていたし、試合としてのレベルも高かったですが、良くも悪くもキックの試合。何も巌流島でやる必然性はないし、KNOCK OUTでもK-1でもRISEでも良かったように思います。
そして木村とディアの試合はキックルールで行うには実力差があり過ぎ。もちろん体重差、体格差というハンデはあったにせよ、あまりにもあっけなく終わってしまったのはちょっと残念でした。次回のマッチメイクで巻き返しに期待かな。
でもイベント全体を見ると、バーチャルだった背景も思った以上に違和感がなかったし、ナレーションも含めてテレビゲームの中の試合を見ているような感覚に陥ったのは私だけではないでしょう。海外のファンにも響きそうだし、TikTokやインスタ、YouTubeのショート動画で切り抜かれて拡散しそうな予感がひしひしとしてきます。谷川貞治の次の一手に注目です。