【写真】中割れから虎口への動きは沖縄空手と中国拳法が、繋がっ…
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カテゴリー: 武術空手
【写真】質量以前に存在する意識レベル……(C)LFAMMAと…
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【写真】肉体的な資質、そこを基にする技も持っているアウベスだ…
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【写真】生き方がとして気合が入っているから、ケージの中でも質量は高い。それをいかに使えるのか、否結果として出ているのかが勝負となる (C)LFA
MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。
武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは間、質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑氏とともに見てみたい。
武術的観点に立って見た──LFA015におけるLFA女子ストロー級選手権試合=ピエラ・ロドリゲスストヴェトラ・ゴツサイクとは?!
──ベネズエラ人のロドリゲス、ウクライナ人のゴツサイクがそれぞれ米国のジムに所属している女子選手が、UFCやコンテンダーシリーズの登竜門であるLFA王座を賭けて戦いました。
「基本姿勢として両選手とも素晴らしいです。試合からも気持ちが伝わってきました。気迫、体力、意志力は最後まで見えました。ただし、戦略が見えないです。パンチを打って終わってしまう、殴り合って終わる。組んで倒す、立たされて立つ。そこで終わってしまって、試合全体でどこを目指しているのかが見えなかったです。
特にゴツサイクは引き込んで腕十字を執拗に狙っていたのですが、あれを防がれた時のプランは普通はどういうものなのでしょうか」
──ガードからの腕十字は防がれると担がれてパス、あるいは殴られる。だから外されるとスクランブルに持ち込むことを考えるべきではないかと思います。ただし、ゴツサイクはあの形で7つの一本勝ちとかしている選手なので、本当に極めてやろうとしていたと思います。というのも、過去の試合を見るとロドリゲスの組みはなかなかのザルだったんです。
「なるほど、そういうことですか。今回はテイクダウンディフェンスもしているし、成長していたのですね。質量はロドリゲスが高かったです。ガツサイクはパンチ力はあるのに、質量が低い。せっかくある質量をみすみす垂れ流して無駄にしてしまっています」
──それはどういうことでしょうか。
「動くからです。基本は動かないこと。以前に、クリス・グティエレスとアンドレ・イーウェルの試合で、定置で養ったエネルギーと距離を使ってエネルギーは伝える違いを述べさせてもらいましたが、動くとエネルギーを運べなくなることが往々にあります。それでも、前に思い切り踏み込んでパンチを打つ。それならまだ運べるのですが、ゴツサイクはそうでない。パンチに繋げることなく、無駄に動く。せっかくコップの中にいっぱい入っている水を無駄な動きでどんどんこぼしている。そんな戦い方でした。コップの中の水を質量とすれば、そのままこぼさずにぶつけないといけないのに。
動いてバシャッと水をぶっかけるなら良いのですが、そうでなく無駄に動いてこぼしているだけなので、自分の動きでエネルギーを喪失しています。動いた先に殴る、蹴る、テイクダウンする。そういうビジョンがあれば大丈夫ですが、動くということは難しいです。
頭を左に振って返しの左フックを振って戻ったり、右のクロスを打つために頭を振る。そうすると頭を振っただけで相手がつられる。私も現役時代に頭を左に振って左ボディを打つと、次に頭を動かすだけで相手が反応するので右ハイが入るということをやっていました。それは打撃だけをやっている人間は普通にやっていることかと思いますけど、そこには何かをしようとする『意』があるわけです」
──意拳の「意」ですね。そうやってエネルギーの無駄使いが打撃にあったのと同様に、引き込み十字が極まらないとなると、しっかりとテイクダウンを取れている。なぜ、それをもっと早くからしないのかというのはありました。
「引き込んで十字が得意な選手には見えなかったです。だから、どういう戦略をもって、そこに向けて創り込んできたのか。そこが見えなかったですが、そういう選手は多くなっていますね。そうやって動いていることで、ジャッジがつけるということですよね。ああいう動きが多くなっているということは。
つまり強さ、弱さでいえば競技のなかでは弱い方が工夫して勝つことは十分にある。特にMMAはその傾向が強く競技です。そこがMMAの面白さなのでしょうね」
──その通りだと思います。ただし、この試合は両者から強さが感じられました。
「それは質量はロドリゲスが上ですが、姿勢が悪かったことも関係しているかと思います。スタンドで姿勢が悪いから、間がゴツサイクになってしまう。ここは稽古をすれば修正できます。
ただし、ロドリゲスに驚かされたのは、前進した時に質量がいきなり上がったことです。
前に出て質量が上がるということは、エネルギーが出ている移動です。それがなくて、前に出るとパンチを被弾するだけですから。
あの前への出方は、凄く参考になりましたね。前進してエネルギーを伝えるのではなくて、エネルギーで前進していたので。去年の3月頃から、MMAの試合を武術的に解析させてもらってきましたが、このタイプの選手は初めてでした」
──なるほど、それは非常に興味深いです。特にロドリゲスは打撃に関しても、過去映像で両足が揃い気味で振りまわして不細工でしたので。
「喧嘩に強いタイプなんでしょうね。でも、ロドリゲスはずっと声を出して打っていましたね。これは武術的にはダメです、絶対になんです。迫力も音も凄いけど、声を出すので息継ぎの時に息を吸う必要があります。そうなると、武術的にイチのパンチにならないんです。イ・チになってしまって。それだと動きが止まり、相手にも見えます。だから、あんなにパワフルに見えても、KOにはならない。
卵をといている時、バスケットのドリブルをしている時、呼吸は止まっていないんです。中国武術でいう不空不断、切れ間の無いシームレスということですね。私がMMAにおいて追及しているワンツーやコンビネーションも不空不断なんです。不空不断でないとイチにならない、イチの動きを続けるのが武術空手のコンビネーションです。それをセイサンの型で学びます。
呼吸が一つひとつ止まる動きを日本人がしていると、きっと欧米の人間には勝てないです。それは逆説的な見方で欧米人は呼吸が止まった状態で技が出せる。ロドリゲスもそうです。でも、アレを日本人が真似をしてしまうと打ち合いになって負けてしまいますね。
私が知る限り、最速の突きであの声は出ない。だいたい日本人は打つときに声を出す選手はいないですよね。反則にしているところもありますし。つまり呼吸で引っ張ってくるような動作をしているようだと、ロドリゲスのような選手に勝つことは難しいということです。そのためには、打たせない設定が必要になってきます」
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【写真】唯一といって良い、危険だった場面はなぜ生まれたのか──と武術的に検証する (C)ONE
MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。
武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは間、質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑氏とともに見てみたい。
武術的観点に立って見た──ONE TNT04における青木真也エドゥアルド・フォラヤンとは?!
──青木選手がフォラヤンに腕十字で一本勝ちをしました。そしてスタンドでは左ミドル、左ハイという攻撃を見せて組みつくという流れでした。
「腹が据わっていました。剛毅會の道場訓はマナーやスローガンではありません。そんなモノは生きていく上で何の役にも立ちません。その一つに『肚を据え浩然の気を養うこと』とあります。ある意味、武道とは腹が据わるために稽古をしているといって過言でないです。
体の調子がおかしい、癌の検査にいかないといけない。怖いですよ。怖気づきます。でも、もう腹が据わるしかないでしょ」
──そうですね。現状を把握することが、家族と生きていくことですから。
「そこです。そこなんです。それって若い人間には出ないエネルギーなんです。背負っているモノがないと出ない。それが浩然の気なんです。我が身可愛いではなくて、我が身よりも大切なモノがあるというエネルギーは凄まじいものあります。その浩然の気が、青木選手は出ていました。
そうすると時間だったり、空間が変わってきます。だから立ち合った瞬間に、空気が変わりました。間は完全に青木選手で、フォラヤンは殴れない。空気がそうさせないんです。恐れ入りました。質量が圧倒的に高かったです」
──そこまでだったのですね。青木選手からも実は試合後に『少し上手くなってきています。これは実感あります』と連絡があったんです。
「あぁ、なるほど……だからですね。いや、腹が据わることが良いんです。ただし、それも余裕がありすぎるとまた危ない。青木選手が恐怖感をいつものように持っていないのが、実は逆に怖かったというのもあります。不安のなかで戦うから、緻密にグラップリングに持ち込むことできるのも、青木選手の良さでもあるので」
──いやぁ難しいものですね。でもフォラヤンの左フックをほぼよけていましたし、全般的に凄く良い戦いに見えました。
「そこに関しては、今日の青木選手はPFLのバッハ・ジェンキンスと同じでした」
──う~ん、どういうことでしょうか。
「また道場訓の話になりますが、『姿に勢いを持ち至誠真鋭の道を歩むこと』というのもあります。姿に勢い、姿勢とは形のことではないです。そこにある種のエネルギーがあって、初めて姿勢になります。相手がぶん殴ってくることができる姿勢は、姿勢じゃありません。型でそこを創っていきます。
今日の青木選手はジェンキンスと同じで、質量は高いけど、姿勢は悪かったです」
──青木選手が、ですか?
「ハイ。質量が低いのにフォラヤンはあの勢いのある左フックを振るうことが出来ました。もちろん試合だから、殴られることもあるでしょうが、あのパンチは出させない方が良いに決まっています。あのパンチは本当に危ない一発でした」
──それは青木選手の姿勢が悪いからだと。
「ハイ、あくまでも武術的な見方ですが。青木選手の姿勢が悪くて、間がフォラヤンになりかけた瞬間がありました。完全にはならなかったのですが、フォラヤンがあの左フックを出せる原因を青木選手が創ってしまったんです。
青木選手は左ミドルを蹴りたい。ミドルを蹴ることは良いのですが、その前の姿勢で頭の位置が良くなくて、フォラヤンが殴れる状況を創っていました。
具体的にいえば、ミドルを蹴る前の姿勢で、頭の位置が後ろ過ぎたんです。青木選手が飯村(健一)さんとのミットをしているとき、頭の位置はあそこじゃないですよね」
──もう少し前かと……。
「ムエタイのミットは空手のミットのように踏み込んでガンガン蹴るのではなくて、頭の位置と前足の位置関係が一直線につながっています。後ろ足の上に頭がある構えは、ムエタイの型を創るようなミット打ちでは見られないです。逆にフルコン系では顔面殴打がないから、頭が後ろになって蹴っている人がいて、そういう人がグローブをつけた試合に出ると殴られてしまう。そこは嫌というほど見てきました。
青木選手もその状態で左ミドルを蹴るから、あの姿勢は危なかったです。結果論として当たらなかったけど、当たっているとどうなったか。だから、あのパンチを出させない頭の位置の方が良いということになります。間がまだ青木選手だったので、パンチは当たらなかったですが、非常に危ないと感じました。
ただし、フォラヤンが試合後に『テイクダウン対策はしてきたんだけど』というようなことを言っていましたが、もうその時点で青木選手に先を取られていたということですね。あの後の動きも、技を極めようとか──そういうのではなく、探っているように見えました。何か宝探しをしているような」
──宝探しですか……。
「普通はできないですよ、ああいう試合は。それに今日の青木選手の試合後の笑顔は……あれは子供の頃、ああいう顔をして笑っていたんだろうなって想えました。凄く素敵でした。秋山選手の名前を出すまで、完全に素の良さが出ていて。でも、あそこからちゃんと仕事を始めて、そこも踏まえてさすがです(爆)。
格闘技を格闘技で終わらせない。もう青木道ですね。それは彼にしかできないことです。先日Fight & Lifeで対談をさせていただいたときに、青木選手が尊敬と感謝ということに非常に関心を持たれていて。
尊敬と感謝って、自分を信じていない奴にはできないことなんです。自分を信じられていない奴の尊敬と感謝って、『謙虚で良い人だな』って思われるかもしれないけど、それは違う。自分という軸がなくて、人様に尊敬も感謝もできない。そういう人の感謝、敬意を払う言葉は『だから、何とかしてください』っていう代償を求める言葉でしかないんです」
──あぁ……分かります。〇〇〇さんだ(笑)。
「アハハハハ。自信が持てるから相手に敬意を払えるし、尊重できるんです。そこで感じた敬意はホンモノなんです。自分に自信が持てれば、相手を尊重できます。他尊自信ですね。これも剛毅會の道場訓に『他を尊び自己を信じること』とあるんです。この言葉の意味は相手を尊重しなさいと言っているのではないんです。自分を信じることができる人間が相手を尊重できると言う意味なんです。尊敬と感謝されるには、尊敬と感謝をしていないといけない。
その点において、青木選手のこのところの言動を見ていると、自分を信じていることができるようになっていて、尊敬し感謝しているように感じられます。最初にいった腹が据わるというのと、尊敬と感謝は繋がっているんです。自分のことを信じられる人間は尊敬と感謝ができて、腹が据わってくる。次の世代の人間にとって道標になる人間とは、次の世代への責任が果たせる人。青木選手はそういう存在になっていますね」
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【写真】レスラー同士、「レスリングとMMAは違う」というパーマーの言い分は通らなかった…… (C)PFL
MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。
武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは間、質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑氏とともに見てみたい。
武術的観点に立って見た──PFL2021#01におけるバッバ・ジェンキンスランス・パーマーとは?!
──NCAA時代にレスリングではジェンキンスに負け越していたパーマー。しかし、MMAの実績では上で「これはMMA、レスリングとは違う」と言っていたのですが、そのレスリングで遅れをとるとMMAとしての強さは全く見せることができなかったです。
「そういうつもりで、パーマーはレスリング勝負とは考えていなかったのかもしれないですね。対して、ジェンキンスは完全に重心がテイクダウン狙いで、かつパンチも出せるというモノでした。
組んでからバックに回り、そこからのパンチはピンポイントで素晴らしいものでした。フォークスタイルのクラッチをしてはいけない部分が、そのまま生きて自由になっている片手で殴りつける──教科書のようなパンチでした。
ジェンキンスはレスリングだけでなく、スタンドのパンチも強かったし蹴りも良かったです。とはいえ上と下が繋がるという我々が理想としている攻撃ではなかったのですが、レスリングでイニチアチブを取っているから、パンチと蹴りがバラバラでも構わない。青木選手のミドルやパンチが、サブミッションがあることで先が取れているように、ジェンキンスは迂闊な蹴りがあっても、パーマーがそれをキャッチしてもレスリング勝負で負けないという戦いができているので、パーマーが先を取ったことにならない。
正直、ジェンキンスはパンチ、組み、蹴りのトランジッションの部分で隙はあります。
パンチはパンチ、組みは組み、蹴りは蹴りという風にバラバラで。あのバラバラの戦いを日本人選手が、外国人を相手にやっても絶対に通用しません。それでも、あの蹴りを一方的に使えるというのは、絶対の自信がジェンキンスにはあったのでしょうね。それがレスリングで」
──「これはMMAです。キックではない」とか、「この試合はレスリングでなくMMA」という意見、MMAをある程度以上に消化している選手同士の戦いで通用しないで、得意分野同士で強い方がMMAでも強いということになるのでしょうか。
「これはMMAで、〇〇ではないという理屈は、MMAファイター同士では信憑性はないと考えます。MMAを知らない相手に、MMAファイターが言うのは通ります。そもそも、もう10年も前にMMAファイターはK-1のリングでK-1ファイターとやり合えていたし、ベン・アスクレンは今でもレスリングが強いでしょう。柔術がベースのMMAファイターが、今もノーギや柔術でも強いように。
そうしたら、これはMMAだっていう理屈は通りますか? それにどの競技にもマネージャーという選手がいます」
──マネージャー……ですか?
「ハイ。マネージメントで勝つ。打撃の試合もKOじゃない、マネージメントで勝つ。グラップラーでも極めなくて、マネージメントで勝つ。3Rや10分の戦いをマネージメントして勝つ。その競技でマネージメントで勝ってきた選手は、MMAに転向してマネージメントができなくて勝てなくなるということもあります。
パーマーはレスリング軸で、MMAでマネージメントができていたから、これまで勝ってきたけど……レスリングで上回るジェンキンスに対し、MMAのマネージメントができていなかった。どこで差をつけるのか、それはMMAという競技のなかに引きずり込むこと。そしてマネージメントでゴチャゴチャにする。それがパーマーのやるべきことだったのですが、何もできなかった。
その原因は試合だけでは分からないです。体調かもしれないし、精神的な問題かもしれない。ただビビっているのは明白でした。レスリングというか、パンチにビビっていた。過去の実績に関係なく、あの試合で起こった現象面でみれば、パーマーがそれだけ強い選手だということすら分からないぐらい──開始早々からバッバ・ジェンキンスの間でした。質量でジェンキンスが上で、間もジェンキンスだった」
──レスリングで遅れをとっても、MMAなのだから打撃で上回って間を取り、質量で上回ることができるかと思うのですが。
「あのオーバーハンドですね。あれは勢いが良かった。空振りでも、当たったら凄いモノだと思います。武術的にMMAを見るということは、戦術的に見るのと近いものがあります。ただし、戦術と戦略は違います。パーマーはこの試合に関しては、戦略はなかった。何かやろうと相手の動きを見せ、戦術は変えようとしていましたが。
私は武術家であると同時に、ストラテジスト(戦略、方針を立案する専門家)でありたいと思っています。ストラテジーを考えるうえで、一番大切なことは何だと思いますか」
──自分が不利なところを想定することでしょうか。思い通りにいかないときに、どうするのか腹積もりをし、打開策を描いておく。
「つまり、一番大切なことはザックリいって予想なんです。それも具体的な。相手の質量が強いか弱いかで、立てる戦略は違ってきます。そこをパーマーは立てていなかった。もしくは立てそこなった。相手の方が質量が高い時の戦いができていなかったです。『こんなに圧力が高いと思わなかった』と試合後に言う選手がいます。つまり、自分の質量が小さきの戦いの準備ができていないということです。
しっかりと局面を考えて、有利・不利のどちらの場面でもクリアにして、試合に臨んでいたのなと思いました。それができていなかったから、ここまで3年間負け知らずのパーマーでも一方的に負けてしまった──そう結論づけることができます」
■視聴方法(予定)
4月30日(金・日本時間)
午前6時30分~Official Facebook
■ PFL2021#02 対戦カード
<ウェルター級/5分3R>
ローリー・マクドナルド(カナダ)
カーティス・ミランダ―(米国)
<ウェルター級/5分3R>
レイ・クーパー3世(米国)
ジェイゾン・ポネ(フランス)
<ウェルター級/5分3R>
ジョアォン・セフェリーノ(ブラジル)
グレイソン・チバウ(ブラジル)
<ライトヘビー級/5分3R>
エミリアーノ・ソルディ(アルゼンチン)
クリス・カモージ(米国)
<ライトヘビー級/5分3R>
アントニオ・カーロス・ジュニオール(ブラジル)
トム・ローラー(米国)
<ウェルター級/5分3R>
マゴメド・マゴメドケリモフ(ロシア)
ジョアォン・セフェリーノ(ブラジル)
<ライトヘビー級/5分3R>
ヴィニー・マガリャエス(ブラジル)
ジョーダン・ヤング(米国)
<ライトヘビー級/5分3R>
セザー・フェレイラ(ブラジル)
ニック・ローリック(米国)
<ウェルター級/5分3R>
サディボウ・シ(スウェーデン)
ニコライ・アレクサヒン(ロシア)
<ライトヘビー級/5分3R>
ダン・スポーン(米国)
マールシン・ハムレット(ノルウェー)
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【写真】現在発売中のFight&Lifeで、青木真也が武術空手の中割れを体感している(C)t.sakuma
武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型を使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせないモノであって、その形で戦うことではない。
サンチン、ナイファンチ、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。5種類の型稽古にあって、唯一サンチンのみが意味を吸いて吐くという意味での呼吸を学ぶことができる。
全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンの解析、第11回は前回に続き中割れを通して、型が伝える意味を解析したい。
<サンチン解析第10回はコチラから>
この動作を使える空手家はごくごく限られている。何より、この動作を使うという観点ではなく、なぜ中割れが必要がという点を考えることが重要になる。つまり型が伝えることを理解するということ。少ない型から無限の技を想像する武術空手の最大の特徴でもある。
このような特徴を知ることで、空手は動きのある基本稽古と型稽古が一致していることが理解できる。とはいえ空手は本来は型稽古しか存在しなかった。型稽古から局部的に抜き出し、型をより理解するために基本稽古が行われるようになった。よって基本と型は循環しなければならず、基本稽古だけでは空手が本来持つ本質を理解することはできない。だからこそ、型稽古が必要になってくる。
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【写真】サンチン/中割れの教えから、無限に技術論は広がる。それが型稽古を循環させるということになる(C)MMAPLANET
武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型を使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせないモノであって、その形で戦うことではない。
サンチン、ナイファンチ、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。5種類の型稽古にあって、唯一サンチンのみが意味を吸いて吐くという意味での呼吸を学ぶことができる。
全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンの解析、第10回は中割れを通して、型が伝える意味を前後編で解析したい。
<サンチン解析第9回はコチラから>
試合では余り見られないが、実戦で効果的なワキ腹を狙った諸手突きに対して、中割れの状態である両手を受け、右腕受けから、上がってきた拳が裏拳となる。
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【写真】MMAに正解はない。対して武術空手は答え合わせができるという妙(C)Zuffa/UFC
MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。
武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは間、質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑氏とともに見てみたい。
武術的観点に立って見た──UFC ESPN21におけるエイドリアン・ヤネツグスタボ・ロペスとは?!
──エイドリアン・ヤネツが、コンテンダーシリーズから数えて3試合連続でKO勝ちを収めました。
「ただ、この試合はグスタボ・ロペスが何をすべきだったのか、何が欠けていたのかということに焦点を当てた方が良いかと思います。武術的にこの試合を考察するには。もう、力の差があり過ぎました」
──ロペスにしてもCombate Americasのバンタム級王者ですし、あそこまで力の差がるファイターではなかったと思います。本来は、もっとテイクダウンにもいけたでしょうし。
「それができなかった。出せなかった、それはヤネツのパンチが素晴らしかったというのではなくて、ロペスがダメ過ぎたからです。実は間はロペスの間だった時もありました。でも本気で相手を痛めつける打撃の練習をどれだけ積んできたのか。仮にそれができていたとしても、どれだけ自分の拳に自信を持てるようになっていたのか。
昔、剣士がなぜ木刀をずっと振っていたのか。殺し合いになった時に、一発で真剣でぶった斬れるという確信を得るためなんです。それ以上でも、それ以下でもない。自分が真っ二つにされるか分からない状況で、相手をぶっ殺すしかないんです。
それを考えると、このロペス君。どれだけ練習でヤネツをぶっ倒す気でいたのか。空振りには勢いがありました。スイッチも繰り返して、それらしいこともしていました。ただ、ヤネツをぶっ倒せると自分を信じている打撃ではなかったです。ロペスは色々と仕掛けていましたが、自分を信じていない。自分を信じているか、信じていないかで距離、時空が変わってきます。実はヤネツは立ち方が悪いから、ロペスの間になることも数多くあったんです」
──それなのにロペスは、ほぼほぼ完封されていたのはなぜなのでしょうか。
「痛い想いをせずに入ろうとしているからです。痛い想いをしたくないまま試合をしていました。いつ入るんだって。突きにしても、蹴りにしても精神的にも肉体的にもヤネツにダメージを与えるものではなかったです」
──立ち方が悪いヤネツが当てる。少なくとも3試合連続で、圧倒的にパンチも蹴りも精度が良く、破壊力もありました。あのスタンスでも、テイクダウンを許さないですし。
「それは彼の中に答があるのでしょうね。こういう人は時々います」
──今のMMAに多い、ガチャガチャとは違う打撃のリズムを持っています。
「それも答があるからです。ノーモーションですし。最近の流行をやって失敗したのがロペスで。ヤネツは信じたモノが正解でした」
──ロペスは間違っていた?
「ということになります。そこに空手の型の存在意義が出てきます。型って、一つの物差しなんです。この幅ならこうなるよ、この位置ならこうなるよ──ということに、全員に等しく答があります。だからロペスに関しても、こうすれば殴れる、こうやれば入ることができるという指導もできます。
何より正確に物差しで測り直した結果、正解に導かれるとロペスも自信を持ってヤネツを倒しに行けた。練習をすることに対して、全て説明がつくので」
──型の稽古は、理を説くことができるということですね。
「ヤネツは今回は、それが出来ていました。問題もありますが、彼のなかで正解があるからパンチしか出していない。前蹴りやハイキックは使っても、後ろに体重が乗っているから足が上がって、重心も浮いています。あれができるのは、パンチで間を制しているから。ぶん殴ってくる相手に、あの蹴りを使うとやられるのは自分になります。
そうですね……ヤネツは重心でいうと後ろに行きます。重心が後ろにあると、相手が踏み込んでくる。そこでアッパーが打てます。あの入り込ませて打つ感覚が、養われていないとできない攻撃ですね。質量が自分の方が上だった時は、もの凄く効果的です。
フィニッシュにしても、ワンツーをイチの動作で打っています。ワン・ツーではなく。右で仕留めましたが、動きはワンツーをイチの動作で打っていた。それがノーモーションという言い方もできるのですが、無駄なエネルギーの分散がない。なのでテイクダウンでもイチで動くのと、イチ・ニで動くのとでは当たりが全く違ってきます」
──ヤネツが自分を信じているという部分、彼は亡くなったお父さんに、子供の頃からボクシングを習っていました。父の教えでUFCで戦いたい、トヨタセンターで戦う。それを誓って戦っている選手なんです。
「そして信じたモノが正解でした。間違っていると、ああいう試合にならないですしね。今回はそういう点でも差がありすぎましたね。一つのことに徹しきって深めていったヤネツと、色々できるんだろうけど効果がなかったロペス。ただし、ロペスのケースは多くの選手に当てはまることなんです」
──なるほど、です。同時にヤネツが信じているモノは、彼だけに通用する信じたモノということになります。
「そこです。対して、空手の型は全ての人に当てはまる原理原則が存在しているということなんです。
と同時にヤネツが見ているのは、ロペスに勝つことではなかったと思います。彼はUFCの世界バンタム級王者になるために戦っている。そして、アルジャメイン・ステーリングと戦うとなった時には、自分の信じているモノは正しいのかと考える局面も出てくるでしょう。穴はあるので。
だからヤネツは次の試合で、どうなるのか。UFCにはヤネツよりパンチが強い選手がいます。ショーン・オマリーだとかコリー・サンドハーゲンと戦った時に、ヤネツがどう出るのか──ぜひとも見てみたいです」
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【写真】5分5Rの長丁場、マネージメント力に優れた岡田の視線の先は? (C)MMAPLANET
MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。
武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは間、質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑氏とともに見てみたい。
武術的観点に立って見た──Shooto2021#02における修斗世界バンタム級選手権試合=岡田遼大塚隆史とは?! 格闘技を戦うことが本来は自然の摂理に逆らっているなかで、武術がマネージメント力に左右される5分5Rで役立つことはあるのか。
<武術的な観点で見る岡田遼大塚隆史Part.01はコチラから>
──年を重ねると若い選手に勝てる要素がなくなる。それは身も蓋もない意見ではないですか。
「生物としての根本的な話として、人間以外に格闘技をする動物は存在しないですよね」
──ハイ、その場限りの勝ち負けを争うというのは他の動物ではないかもしれないです。
「つまり生物学的に不自然なことをやっているということになるんです。若くてガンガン……それも生きていくうえで関係のない闘争をするという意味では、生物学上では必要以上にガンガンやっている若い相手と、年を重ねた人間が戦う。勝ち負けまでは保証できないですけど、ある程度まで試合を取り組むために良い状態を創るには、意識が外でなく内に向くことは非常に前向きなんです。ただ、勝てるとまでは言えないです。
原理原則でいえば、それがなければ若くて元気の良い人に勝てるわけがない。では、その無理難題に立ち向かうにはどうするのか。それは人間が動物として、一番自然なことを突き進むしかない。そこが武術に通じるんです。
ハッキリ言えばウェイトトレーニングも、息上げも生物学的には──してはいけない。生き抜くうえで反対のことをやっています。でも、それをやらないとスポーツ、格闘技では勝てない。そういう状態で選手が不自然から脱却するのが、超自然というヤツです。大塚は試合後、5Rを戦っても疲れなかったと言っています。彼が外でなく、自分を見る──試合に向けては無心の状態になったのは想定外でした」
──う~ん、ただ疲れても勝つのが格闘技の真理ですし。
「そこは技術的な話になってきます。自然体から不自然の極みである勝利にどのように持っていくのか。ここに関しては矛盾しているところなので、整合性を持たせるのは別問題になるんです。
要求した技術的な部分に関しては蹴り、突き、スクランブルにおいて、練習してきたことの3割も試合では出せなかったです。そういう部分でも岡田選手は5分5Rをマネージメントしてくることは予想できていたので、私も攻防云々よりも時計ばかり見ていましたね」
──試合をしている当人も、常に時間を気にしていたと思います。5分5Rは序盤から大前提として疲れない、そこから試合に入る必要があるので、何かの拍子で試合が動かないと5分3Rとは別物の試合になります。
「それですよね。高島さんもゴン格で『MMAでは5分5Rは無理、5分3Rに戻そう』ということを書かれていましたよね。それが極真時代の話で、国内でマネージメントで勝っていても国際戦では勝てないという所に通じてくるんです。国内で5分5Rが上手な選手は、UFCでは1Rで負ける。それが現実だと思います」
──国内MMA総フィーダーショーになった今、チャンピオンシップだから5分5Rというのはナンセンスだと感じているんです。UFCの世界選手権ですら、ペース計算で5分3Rの積み上げではなく、試合内容になっています。よしんばUFCで戦うことができたとしても、まず5分3Rでバケモノに勝たないといけない。だからこそ、国内でMMAだけで食っていけるなら、それ以上を目指す戦いは必要ないのですが、海外に行ってMMAだけで食べるようにしたいなら──海外の5分3Rで勝てるための日本での試合にならなくては……と。
「バンタム級でいえばコリー・サンドハーゲンや、ショーン・オマリー、エイドリアン・ヤネツのような選手と戦うには、どうすれば良いのかということを考えた戦いをするということですね。
現状はそうでない。そして、5分5Rはマネージメントいうことなので、配分になってしまいます。そうなると何をされると嫌なかのか、その対処をまず考えて嫌にならない試合をしないといけなくなります。それには良いイメージを創ること、そのためのペース配分です。
この感覚を岡田選手は身につけて、MMAを戦ってきたと思います。大塚がこうしてくれば、自分はこうしよう。次はこうなれば、今度はこうだ。2Rでは、3Rではと組み立ててマネージメントできている」
──マネージメントMMAは、岡田選手が「MMAは5教科7科目」と言ってきたことに通じているのですね。
「ハイ、受験勉強です。学問と受験勉強とは違います。5分5Rは間違いなく、受験勉強なんです。今、危惧しているのは日本の受験勉強をしていてハーバードやイェール大学に入学できるのか──ということなんですよね?」
──ハイ、その通りです。東大、早慶に入ってもMMAで食っていけないのが日本の実状なので。
「ちなみにイェール大学は入試にエッセー(作文)があります。そして入学試験の点数ではなく、重視されるのは高校での成績です。米国の名門大学が求めるのはセンター試験ではなく、『勉学に励む』ことで社会や国家、ひいては世界にどのように貢献できるのか。そのために『芸術に親しみ』感性を磨き、『スポーツに勤しみ』体力創りを欠かさない。そして『リーダーシップ』を発揮することだそうです。あと、推薦状も重視されているようです。
それはそうと、岡田選手は修斗で勝つための5分5Rをしっかりとマネージメントできていた」
──大切なことなんです。今の日本のMMAがそうあるので。なので岡田選手はやるべきことをやり抜き、大塚選手は負けた。
「だから私は北岡さんにセコンドをお願いしたいんです。北岡さんはマネージメントに優れています。北岡さんは強くなることと、試合に勝つことをしっかりと別々に考えることができる人です」
──そんな日本の現状があり、選手は国内でも5分5Rを戦う必要があるなかで武術は役立つのでしょうか。
「年齢がいけば超自然体……選手が年を重ねても戦える特性に武術は有効です。しかし、勝ち負けは別のところにある。ですので、武術の原理原則を知ったうえでMMAで勝つ術、時と場所によって求められている試合形式で、勝てる方法を身に着けていくよう努力するしかないです」
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