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【The Shooto Okinawa09】再起戦、旭那拳─01─「『ゆっくり休めばいい』と言われたのがショックで」

【写真】首都圏で戦うために、地元での勝利が不可欠。それが地方大会のある地域の選手の宿命でもある(C)MMAPLANET

12日(日)、沖縄県沖縄市のミュージックタウン音市場で開催されるThe Shooto Okinawa09で、旭那拳が泰斗と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

9回目を迎えるプロ修斗沖縄大会のメインを務めるのは、現在ストロー級ランキング1位の旭那拳だ。旭那にとっては2大会連続のメイン出場となるが、前回はザ・タイガー石井に判定負けを喫してしまった。本来のストロー級ではなく54キロのキャッチウェイト戦ではあったが、ここで12年振りの修斗参戦となる石井に、世界ランカーの旭那が敗れたという結果は衝撃を与えた。

勝利した石井からも「修斗ってコレで良いんですか?」と言われてしまうことに……。そんななか9カ月振りの復帰戦を控える旭那に石井戦後のこと、さらに王者の新井丈を中心に変動し続ける修斗ストロー級戦線について訊いた。


――試合4日前のインタビューとなりますが(※取材は11月8日に行われた)、すでに体もしっかり絞れているようですね。

「はい。ストロー級のリミットまで、あと4キロぐらいです。いつも60キロぐらいから落とすのですが、すごく順調に来ています。ファイトキャンプは昨日で終えて、あとはコンディションを維持しながら最後に水抜きで落とします」

――今回のファイトキャンプでは、どのような点にフォーカスしていたのでしょうか。

「今回はスタミナ強化と、レスリング強化ですね。相手がレスリングベースの選手なので、とにかくスクランブルの展開が多くなると思っています」

――スクランブルの展開になっても良いのか、あるいはスクランブルに持ち込ませたくないか。それはどちらでしょうか。

「できるだけスクランブルには持ち込ませたくないです。でも正直言うと、相手の寝技の能力はそれほどでもないと思っていて。たとえテイクダウンされても問題ないかなとは考えています」

――泰斗選手は前回、旭那選手と同門の畠山隆弥選手と対戦(今年5月に引き分け)しています。その点は泰斗選手の力を測るうえで大きいですね。

「そう思います。チームメイトとの試合でテイクダウンしたあとに展開できていなかったのを見ているので、よく分かりますね」

――旭那選手ご自身は、今年4月にザ・タイガー石井選手に敗れて以来、7カ月振りの試合となります。試合間隔が空いた理由は何だったのでしょうか。

「一番はオファーがなかったことです。もしオファーがあれば、夏にでも1試合したかったですね。ただ立ち位置を考えると、僕がランキング1位だから試合の組み方も難しかったかもしれないですけど……」

――立ち位置、ですか。ここは包み隠さずに言えば、旭那選手はランキング1位ではありながら、ランキングに影響を及ぼさないキャッチウェイト戦で敗れています。しかもランキング外のザ・タイガー石井選手に――その点は引っかかるかもしれません。

「それは自分でも分かっています。あの敗戦は、僕にとっても大きな痛手でした。あの試合で勝っていれば、自分がトントンと上に行けたかもしれないのに……。次が新井丈選手のベルトに挑むか、あるいはもう1試合挟んでチャンピオンシップか。どちらにしても、夏の後楽園ホール大会に出ていたと思うんです」

――はい。

「試合後はしばらく、自分の中でも『やっちまったなぁ……』という気持ちでいっぱいでした。でも今は気持ちも落ち着いてきたし、自分としても『取り戻していくしかない』という意識で次の試合に臨むことができます。

泰斗選手もランキングに入ってきて(現在ストロー級9位)、興行としてもランカー対決という形になって良かったと思っています」

――旭那選手に勝った石井選手は後のインタビューで「12年振りに修斗で試合をした人間が、世界ランカーに勝った。修斗ってコレで良いんですか?」と仰っていました。他にも同じように考えていた人はいたでしょう。

「……直接言われたわけではないけれど、そういう声があったことは知っています。自分もそういう意見を受け止めるしかないです。でも落ちたままでいたら、そこで終わりじゃないですか。あとは自分が、どう食らいついていけるかであって」

――その通りだと思います。

「試合後1カ月ぐらいは、かなり落ち込んでいました。でもパラエストラ沖縄のインストラクターもやっているので、練習しなくても仕事をしにジムには行かないといけないじゃないですか。するとジムの会員さんが、すごく気を遣ってくれて……微妙な距離感になってしまうんです。自分としても『あぁ、この距離感はキツイ』と思って(苦笑)」

――会員さんも優しいがゆえだと思いますが、そういった優しさが身に応えてしまうこともありますよね。

「あとは松根(良太Theパラエストラ沖縄代表)さんから『ゆっくり休めばいいよ』と言われたのがショックで。『あぁ、無理して練習しろよ』とか言われないんだ、って……(苦笑)。でも結局は自分自身の問題ですし、自分がやらないといけないんですよね。だから、すぐに練習を再開しようと思いました」

――では旭那選手が試合をしていない間、最近の修斗ストロー級の動きはどのように見ていましたか。2023年末は、さらにストロー級の動きが活発化しています。

■2023年修斗ストロー級 現ランカーの主な試合
【試合結果】
3月19日 
安芸柊斗 def 澤田龍人 by 1R TKO

4月16日
ザ・タイガー石井 def. 旭那拳 by 2-0
当真佳直 def. 大城正也 by 3-0

5月22日
阿部マサトシ def. 木内SKINNY ZOMBIE崇雅 by 2-0

5月28日
畠山隆弥 draw 泰斗 by 1-0

6月18日
田上こゆるdef. ザ・タイガー石井 by 2R TKO

7月23日 
新井丈 安芸柊斗 by 1R TKO ※新井が王座防衛

【試合予定】
11月12日 
旭那拳(1位)× 泰斗(9位)
当真佳直(5位)× マッチョ・ザ・バタフライ(7位)

11月19日 山内渉 × 新井丈(王者) ※新井がフライ級王座決定戦に出場

12月2日 安芸柊斗(3位)× 猿丸ジュンジ(4位)

「田上こゆる選手がザ・タイガー石井選手と対戦するのは、予想していました。なかなか田上選手の相手が決まっていないなかで、『おそらく自分に勝ったタイガー選手と対戦するんだろうなぁ』って。チャンピオンシップについては、僕は安芸選手が勝つと思っていたんですよ。でも新井選手がパンチで仕留めるなんて、やっぱり強いなって思います。そういう試合を見せつけられると、自分もやらないといけないという気持ちになれましたね。僕は次の試合に勝って、その次は田上選手と対戦したいです」

――次に対戦する泰斗選手を飛び越えて……。

「あっ、決して泰斗選手のことをナメているわけではないですよ。強い選手だと思っています。でも泰斗選手だからどうこうではなく、自分はもうここで踏みとどまっているわけにはいかなくて」

――なるほど。

「自分もプロデビューしてから6年が経ちました。そろそろ次のステップに進まないといけないのに、前回は石井選手に負けてしまって――。今のままじゃ自分に発言権はないんです。ランク1位だけど、そのランキングに甘えていてはいけないと分かっています。だから自分が次へ進むために泰斗選手、田上選手と強い選手に勝っていくしかないんですよ」

<この項、続く>

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MMA MMAPLANET NEXUS o PFC30 RIZIN UFC YouTube ザ・タイガー石井 スティーブ・アーセグ タイガー石井 亀松寛都 修斗 堺龍平 山本喧一 平井総一朗 旭那拳

【PFC30】北のケージMMA=PFC。亀松が返上したフライ級王座を狙い、平井総一朗が初参戦

【写真】アーセグに触れた。それだけも今の平井は違うはず(C)MMAPLANET

明日23日(日)、札幌市北区のPOD アリーナでPFC30が行われる。北のケージMMAは3月12日以来、4カ月振りの開催となる。

前回大会ではフライ級王座を5Rに渡る激闘の末、亀松寛都に譲ったザ・タイガー石井が、4月のプロ修斗沖縄大会で旭那拳を破り、さらには7月の大阪大会でサステイン興行に出場するなど、いわば主流とされるMMA界の流れに影響を与えるようになりつつあるPFC。

その亀松はフライ級王座を返上し、今大会ではバンタム級で大高幸平と対戦する。6月24日のRIZIN札幌大会における同郷ファイターの活躍に刺激を受けた亀松は「ここから無敗でRIZINに出たい」と明日の試合への意気込みをプレスリリースに寄せている。


亀松の返上したフライ級王座を目指し、平井総一朗がPFC初参戦しランク1位の黒石大資と相対する。平井はNEXUSフライ級王座を取り逃した後に、豪州#01フィーダーショーといっても過言でないEternal MMAに参戦──も、現UFCファイターのスティーブ・アーセグに完敗を喫した。

キャリアの仕切り直しは北の大地から。「所(英男)会長の下で格闘技を始めた僕がPFCで戦うことに何か運命を感じています。ジムから最初のPFC参戦ということで使命感と責任感を背負って戦いに挑みます」という平井。

所は──UWF風の表現を使えば、Power of DreamではPFC山本喧一代表の弟子にあたる。いってみればこの一戦、PFCからすると孫弟子が本丸に乗り込んで王座奪取に乗り出すという見方ができる。

PFCウェルター級チャンピオンの新名正啓がコロナ禍以降、初ケージイン=ノンタイトル戦で成田佑希をメインで戦う同大会では福岡のRanger Gymからkoki、堺龍平、柿原RR昇汰の3選手が列島縦断参戦を果たすなど、充実のラインナップとなった。北の動きが再び日本のMMAに影響を及ぼすか、バリューアップに大切なイベントとなる。

■視聴方法(予定)
7月23日(日)
第一部=アマチュア:正午~ PFC YouTube Channel
第二部=プロ:午後5時~PFC YouTube Channel

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【Shooto2023#04】ザ・タイガー石井戦へ、田上こゆる─01─「12年前を知らないし、舐められてたまるか」

【写真】いつも通り、清涼感タップリの田上だったが……(C)SHOJIRO KAMEIKE

18日(日)、大阪市淀川区のメルパルクホール大阪で開催されるShooto2023#04で、田上こゆるがザ・タイガー石井と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

昨年12月に田上は泰斗を判定で下し、2021年末から続いた連敗を脱することに成功した。その勝利にはABEMAの武者修行プログラムに参加したことも影響しているという。そして迎える半年ぶりの試合——今年4月に沖縄で世界ランカーの旭那拳に勝ったベテランの石井を地元で迎え撃つことに。連敗脱出でホッとしたのも束の間、石井のインタビュー記事を読んだ田上のハートに火がついた。


——試合直前のインタビューとなりましたが、随分とリラックスしているように見えます。まだ本格的な減量を始めていない時期なのでしょうか。

「そんなことはないですよ。今回は54キロ契約のキャッチウェイトなので、いつものような減量ではなく、今週から少しずつ落としている感じです」

——もともとストロー級でも過酷な減量はないとお聞きしていました。一方で、キャリアを重ねるにつれて通常体重は増えていないのですか。

「去年12月の試合から、そんなには変わっていないですね。やっぱり体が大きくならなくて。自分でも食べるようにしているんですけど(苦笑)。プロデビューした時は通常体重が54キロぐらいで、その頃に比べたら3キロぐらい増えましたが、まだ——今はそういう身体づくりにも気を遣うようにしています」

——では54キロ契約のキャッチウェイトというのは、田上選手にとって良い方向に働くのでしょうか。

「勝ってランキングも上げたいので、できればストロー級のリミットで試合をしたいです。でも54キロ契約の試合だからって、それで試合に影響が出るとかはないですね」

——昨年12月の泰斗戦は、ABEMAの企画でルーファスポートでの武者修行プラグラムを終えてからの試合でした。米国武者修行の成果は出せましたか。

「完全に出し切れた内容ではなかったです。練習だったら、もっといろんなことができるのにって、試合後も話をしていて。でもテイクダウンされても背中まではつかされなかったのは、修行の成果を見せることができた場面だったじゃないかと思います」

——一方、出し切れなかった点を教えてください。

「今まで自分は打撃で攻めていましたけど、その良さは変えずに、もっと自分から組みに行く展開を見せたかったですね。見合う時間が長くなったところで、打撃から入るのではなくテイクダウンも混ぜるとか。それが練習ではできるようになっていて」

——なぜそれを出し切れなかったのでしょうか。

「3Rを通じて『このラウンドは絶対に取った』と思えるような打撃を当てていたわけではなかったんですよね。そこで新しいことを試せるような試合展開ではなくて。だから打撃でジワジワ攻めていく――それは今の自分にとって『守り』というか。もっと出せるのに、出し切れない。そういう自分の良くない面が出てしまったと思います」

——とはいえ、昨年の新人王を相手に勝って、3連敗から脱したのはホッとしたのではないですか。

「それはもう、ホッとしました(笑)。もちろん勝ち方にもこだわっていかなきゃいけないけど、連敗から脱出したかったので。とにかく勝つことができたのは良かったです」

——正直なところ、2敗目を喫した2021年12月のマッチョ・ザ・バタフライ戦の直後は、師匠の中蔵隆志BLOWS代表も「どうすべきか……」と悩んでいた様子でした。そして昨年4月、沖縄で当真佳直選手に敗れたあとは、中蔵代表も「ここまで負けたのだから、まだ若いし、イチからやらせるしかない」と決意を固めたと受け取れる言葉がありました。

「そうだったんですね。僕としても『また負けてしまった。どうしよう……』となるのではなく、ずっと自分がダメだと考えていたものが、3連敗を通して確信に変わりました。自分のやるべきことがハッキリとしたんです。その部分では、ABEMAの企画で武者修行に行かせてもらい、米国で気持ちを切り替えることができましたね」

——ただ、武者修行後のインタビューでも「とにかく試合がしたい」と仰っていました。しかし今回のザ・タイガー石井戦まで半年もの間、試合がなかったことについては……。

「実は今年に入ってからも試合のオファーを頂いていて、それをお断りさせてもらっていました」

——えっ!? それはなぜですか。

「今年の初めに中蔵さんと話をしたんです。この半年間は、しっかり体をつくり、技術面も上げていくための準備期間にしようと」

——今年に入ってONE Friday Fightからのオファーもあったと聞いています。

「はい。ONE FFからお話は頂いていました。2月の大会で、対戦相手も提示されていました。でも半年間を準備期間にしたくて、お断りさせていただいたんです。ONE側からも『これでONE FF出場の話がなくなるわけじゃないから』ということで。いずれタイミングが合った時に出られるよう、スライドしてくれるようなことを言ってもらえました。自分としても焦らず、しっかりと準備して、最高の状態に仕上げてONEに出たいと思っています」

——そうだったのですね。

「僕はONEを目指しているので、そのためにいずれはONE FFに出たいですね」

——なるほど。その前にまずは次のザ・タイガー石井戦をクリアしなければなりません。昨日、MMAPLANETに掲載された石井選手のインタビューは読みましたか。

「あっ、まだ読んでいないんですよ。いま読んでもいいですか。すみません」

——はい、ぜひお願いします。

一瞬にして、表情が変わった

「……、……、……んっ!?」

——いきなり表情が変わりましたね。

「いや、うーん……」

——石井選手のインタビューについて、率直な感想を聞かせてください。

「緊張感とかピリピリ感のことは分からないです。僕は12年前の修斗を知らないし、12年前の石井選手のことも分からないので。ただ、僕は旭那選手とは違いますよ。舐められたくないですね。舐められてたまるかって──」

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
6月18日(日)
午前1時00分~ Twit Casting LIVE

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MMA MMAPLANET o Shooto Shooto2023#04 キック ザ・タイガー石井 タイガー石井 ボクシング 修斗 旭那拳 田上こゆる 金内サイダー雄哉

【Shooto2023#04】田上こゆると対戦、ザ・タイガー石井─01─「修斗ってコレで良いんですか?」

【写真】タイトルの言葉の前には「勝った自分が言うのもなんですが」という前置きがある(C)SHOJIRO KAMEIKE

18日(日)、大阪市淀川区のメルパルクホール大阪で開催されるShooto2023#04で、ザ・タイガー石井が田上こゆると対戦する。
Text by Shojiro Kameike

石井は今年4月の沖縄大会で12年ぶりに修斗に参戦、世界ストロー級2位の旭那拳を判定で下した。旭那戦はストロー級リミットではなく54キロ契約であったため、石井が新たに世界ランク入りすることはない。それでも現在の修斗ストロー級に、一つの大きな風を巻き起こしたことは間違いない。そして迎える次の相手は、またも世界ランカーの田上。しかも相手の地元で戦う。そんななかで石井は、修斗の現状に問題提起を発した。


――今日はよろしくお願いいたします。……前回のインタビューと同じ構図ですね。

前回のインタビューのスクショ

「前回と同じ時間に、同じ場所に車を止めています。車も同じです(笑)」

――違いといえば、前回よりも髪が少し長いぐらいですか。

「アハハハ、これももうすぐ切ります。それだけで何グラムも落ちるので」

――えっ……、次の田上戦は4月の旭那戦と同じく、ストロー級リミットではなく54キロ契約です。それでも減量はキツいのでしょうか。

「いえいえ、今回は試合間隔が1カ月で――それも沖縄の時と同じですね(苦笑)。ただ、オファーを頂いてから試合までの期間に余裕があるわけではなかったので。とはいえ減量は大丈夫です」

――となるとフライ級に上げて試合をするという選択肢もあるかと思いますが、石井選手にとってフライ級は大きすぎるのでしょうか。

「そうですね。いずれストロー級に落として戦いたいと思っています」

――なるほど。まずは旭那戦ですが、12年ぶりの修斗参戦となった石井選手がストロー級のランカーに勝利したことについて、周囲の声はいかがでしょうか。

「いろんな声をかけていただいていますね。試合会場に行くと、みんな声をかけてくれて。修斗の世界ランカーに勝つと、ここまで評価が違うんだって思います」

――その旭那戦ですが、勝因は何だったと考えていますか。

「自分のできることをやった。それが一番だと思います。最初に自分のパンチが当たってから、僕が前に出ると相手が下がるようになりましたよね。相手にとっては、すごくやりづらかったんだろうなぁと感じました。あのパンチは狙っていたわけではないんです。まずフェイントとして出してみようと思っていたパンチが当たったので、自分でもビックリしました。そういうパンチが意外と当たって、効いたりするんですよ」

――ワンツーで右ストレートを当てようと思ったら、先の左ジャブが効いたりだとか。

「そのパターン、よくありますよね。まず右でダウンを奪ったので、右を軸に試合を進めようと思いました。2Rは僕がダウンを奪って、パウンドに行かずに腕を取られたらひっくり返されて。そういうムーブは巧いなと思いましたが、そこで相手は取り切れずに、僕にとっては救われましたね。それと久しぶりに修斗で試合をして感じたことというか……」

――12年ぶりの修斗参戦で、以前と何か違うものを感じましたか。

「修斗に戻ってきたなぁと感慨深いものはありました。もう一つ——『昔のような修斗じゃないんだなぁ』と感じましたね」

――昔のような修斗ではない……それは、どのような意味でしょうか。

「これは悪い意味ではなくて。単純に、僕たちが後楽園ホールや北沢タウンホールで試合をしていた頃の修斗とは違うなと思いました。空気というか」

――石井選手が感じたものとはリングがケージに変わったり、場所が東京ではなく沖縄だったことは関係ありますか。

「それもあります。反対に昔から馴染みの人たちも会場にたくさんいて、そういう意味では変わっていないところもありますよ。でも、それも懐かしさであったり……。以前のようなピリピリした雰囲気や、緊張感は薄れていたかもしれないです。僕がキャリアも年齢も重ねたからですかね?」

――どちらが良いかどうかはともかく、石井選手が出場していた頃の北沢タウンホールの雰囲気とは違うと思います。前回も同じような話になりましたが(苦笑)。

「アハハハ、そうですね。北沢だけじゃなく後楽園ホールでも、相手をブッ殺すような気持ちで挑んでいた選手が多かったじゃないですか。僕が修斗の前に、キックボクシングに出ていた時もそうだったんですよ。試合前は死刑台に昇るような気持ちで。もう試合後のことは何も考えられないというか」

――……。

「北沢タウンホールって劇場だからか、バックステージが暗くて。だけど対戦相手の顔は見えるので、試合前は緊張感が凄かったです。あの相手を潰して、自分が上に行くことしか考えていませんでした。当時は軽量級なら修斗しか選択肢がなかったし、そこで這い上がるしかなかったので。

そういえば、沖縄ではサイダーさん(※金内サイダー雄哉。現在は旭那と同じTheパラエストラ沖縄所属)と会って、昔からの知り合いなので話をしました。でも昔の自分だったら、サイダーさんと話をすることはなかったと思います。対戦相手だけでなく、対戦相手と同じチームの人とも話をすることはなかったでしょう。自分も変わってきたのだと思います。

それも時代の流れなのでしょうね。いくら懐かしがっても、あの頃には戻れませんし。それならそれで良くなっていってほしいと、自分の中で受け入れるしかないです。でも、ちょっと言いたいことはあるんですよ」

——はい、ぜひお願いします。

「あの時は、旭那選手が絶対に勝たなきゃいけない試合じゃないですか。でも12年ぶりに修斗で試合をした人間が、世界ランカーに勝った。世界ランカーが地元で、こんなワケ分からないヤツに負ける。勝った自分が言うのも変だけど、修斗ってコレで良いんですか?」

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
6月18日(日)
午後1時00分~ Twit Casting LIVE

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【Shooto2023#04】22歳差対決=田上こゆる✖ザ・タイガー石井。10年振りに加マーク納がプロ修斗参戦

【写真】なんだか、おとぎ話のようなマッチアップだ (C)MMAPLANET & SHOJIRO KAMEIKE

5月31日(水)、半期に一度のプロ修斗大阪大会の開催とカード発表がSustainよりあった。18日(日)に大阪市淀川区のメルパルクホール大阪で開催されるShooto2023#04は、キックの8人トーナメントが、従来の大阪大会と同じく組まれている。

修斗公式戦で目を引くのは、4月の沖縄大会で12年振りの修斗出場でストロー級ランカーの旭那拳を破ったザ・タイガー石井の参戦。対戦相手は──負けられないだけでなく、MMAとしての成長を見せ続ける必要がある田上こゆるだ。


1979年7月生まれ、43歳の石井が初めて修斗のリングに上がったのは2003年5月のこと。田上が1歳4カ月の時に、石井はキックからMMAに転向を果たした。年の差実に22歳というマッチアップは、田上にとって対戦相手がひたすら組んでテイクダウン&コントロールを狙ってこない初めての試合になるかもしれない。

田上にとっては、昨年の夏のミルウォーキー、ルーファスポート修行で感じた組み技の成長を確信に変える試合が組まれたといっても過ではない。とはいっても、石井はムエタイをMMAに落とし込んだ、組み技を持つ。仮に田上がMMAに拘り過ぎれば、打撃と組みが一体化した石井の一発にヒジやヒザの餌食、さらに崩しを食らうことも十分にあり得る。

田上がMMAをするには、打の圧で石井を上回ること。そうすれば田上のMMAは回り始める。今後、組み力のアップデートが必要な田上だが、それは彼の持つ打撃の強さを生かすため。

正直、修斗関係者は誰も石井が旭那を破るとは思っていなかったはず。それ故に広がるザ・タイガー石井幻想。MMAで勝つために打撃の圧が絶対に必要な田上と、そんな若さをザ・タイガーが老獪さでいなすことができるのか。興味深い交わりといえよう。

ザ・タイガーのプロ修斗カムバックロードの裏で、34歳=加マーク納の修斗10年振りの参戦もコア層には気になるところだ。

加マーク納は2013年にその後の修斗世界王者、そして今は京葉間で事業家としての成功を目指す岡田遼とプロデビュー戦を戦い、RNCで一本負け。以来、Wardog、GRANDSLAM、HEAT、GLADIATOR、パンクラス、DEEP、ZST、さらにGrachanでキャリアを積んできた。

グラジとZSTではフライ級王座に絡んだが、ベルト奪取ならず。現時点で直近の試合となったグラチャンでは王座決定T及びフライ級タイトル戦線に当然のように顔を出すと思われていたが、継続参戦はなかった。

前回の長野将大戦では跳びヒザKOというキャリアハイの勝ち方をしており、井口翔太と続けて「しょうた」を相対する加マーク納──流れ流れて原点回帰にも注目したい。

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【The Okinawa Shooto08】ザ・タイガー石井、旭那拳から3度ダウンを奪い──12年振りの修斗で激勝

<54キロ契約/5分3R>
ザ・タイガー石井(日本)
Def.2-0:30-27.29-27.28-28
旭那拳(日本)

前蹴りを顔に入れた石井が、直後に右でダウンを奪う。直ぐに立ち上がった旭那は左から右を打ち、スイッチを織り交ぜる。クリンチから離れ、ローを蹴り合った両者。左を伸ばした旭那に対し、石井が組む。残り3分で間合いを取り直すと、石井が右ロー。パンチを出すと組むという展開のなかで、打撃の間合いになって旭那が左を当てる。石井は右を返し、クリンチへ。右を打った旭那は離れて、ショートのコンビを打っていった。

石井は右ローを連続し、左ハイへ。ブロックした旭那が右から左、首相撲でヒザを顔に突き上げる。ボディロックで押し込んだ石井もヒザを見せ、初回が終わった。

2R、右前蹴りを入れた旭那に対し、石井が右ロー。すぐにクリンチの展開となり、石井がケージに押し込む。ヒザを入れて離れた旭那は蹴りを掴んでパンチも、石井も近い距離での打撃戦に応じる。間合いを取り直した旭那に右ローを蹴る石井は、ヒザを受けながらテイクダウンを決めると、立ち上がった旭那に右を当ててダウンを取る。

ここもすぐに立った旭那だが、いきなりの奥手のパンチが石井の距離になってしまい、またも右を被弾して腰から崩れる。パウンドでなくアームロック狙いの石井は、ここでリバーサルを許しバックを許す。頭を抱える石井に対し、旭那は袈裟固めに捕えられると足をフックして頭を抜く。バックグラブで襷も旭那は、石井の後方へのパンチに苦しそうな表情を浮かべる。上を選択し、マウントを取った旭那が右の鉄槌を落として挽回もポイント的には追い込まれた。

最終回、旭那はインローからワンツー、組んでケージへ押し込む。石井は体を入れ替えて離れ、左フックにクリンチして崩す。蹴りを踏み止まった石井は、立ち上がった旭那をクリンチに捕えてケージに押し込む。回って離れた旭那が右を当て首相撲へ。石井はダブルレッグから、自ら後方に倒れ込み上を取りに行く。

すぐにスタンドに戻った両者、旭那が右をヒットさせる。残り2分を切り、ケージに押し込まれた石が頭を抱えてヒザを見せる。間合いを取り直しパンチを纏める旭那がヒザ蹴りを決める。下がった石井に続けてヒザを入れるが、石井はダブルを仕掛ける。疲れた石井が、絶妙のクリンチワークで時間の経過を待つ。

首を取って崩し、左エルボーを入れた石井はタイムアップと同時に両手を大きく広げガッツポーズを続けた。結果、28-28をつけたジャッジもいたが2-0で石井が勝利。

「ザ・タイガー石井、12年振りに修斗に帰って来たぜ。先月もタイルマッチ5分5Rをやって、ベルトを獲られてしまって。ホントはベルトを持って来たかったんだけど。今日は先月の5分5Rのダメージもあってきつい中、旭那選手、2位の強い選手に勝ててね。良かったです。僕はどこの団体も来るものは拒みません。また機会あれば修斗、沖縄に来たいので。また呼んでくれたら、嬉しいです。沖縄の人、アウェイだからヒール的な扱いかと思ったら意外と温かくて嬉しかったです。ザ・タイガー石井、忘れないでください」とマイクで話した。


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【The Shooto Okinawa#08】旭那拳戦へ、ザ・タイガー石井─02─「僕にとって修斗は生まれ故郷です」

【写真】5分5Rの激闘から1カ月と3日というインターバルでの試合。「修斗だから」の言葉は泣かされる(C)PFC

16日(日)、沖縄市のミュージックタウン音市場で開催されるTHE SHOOTO OKINAWA#08のメインで、旭那拳と対戦するザ・タイガー石井のインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike

ザ・タイガー石井のMMA20年目は、アウェイでの戦いで幕を開けた。3月に北海道PFC、そして今回は沖縄で地元のホープ旭那と対戦する。試合間隔は1カ月——今年44歳になる石井にとっては、厳しい試合間隔かもしれない。それでも石井がオファーを受けたのは、それが修斗だからだ。12年ぶりのホーム、ベテランのいぶし銀ファイトやいかに。

<ザ・タイガー石井インタビューPart.01はコチラから>


――就職して仕事の割合のほうが高くなったのは、いつ頃のことですか。

「30歳ぐらいです。それこそプロの選手でなくても、柔術とかを趣味で続けられたらいいかなとも考えていたんですよ。でも趣味で柔術をやっている人たちの練習レベルが凄くて。皆さんが当たり前のように、昼はバリバリ仕事をして夜はガチガチに柔術を練習して――そういう人たちの偉大さを知りました。たぶん僕も本当の意味で、格闘技を辞めようと思うことってないんじゃないですかね。プロでなくても趣味や指導としてやったりとか」

――石井選手は2014年からファイティング・ネクサスに参戦し、その後はレギュラー出場して「ネクサスフライ級のエース」という扱いでした。当時、石井選手の中でも意識の面で変化は起こりましたか。

「当時はパンクラスの試合で首を負傷してしまって、それこそ引退も考えないといけない状態でした。それでもネクサスの山田峻平代表からオファーを頂いて、1試合はできるかなと思って出たんです。この試合で最後かな……と思いつつ。もうメチャクチャ首が痛くて(苦笑)。それがネクサスの1回目の大会で、その後も出させていただくことになりました。でも僕も34か35歳ぐらいだったし、もう若い選手がどんどん出てきていたので、『若い選手たちを前に出してください』と山田代表に伝えたんです。『僕は前座で渋い試合しますから』って。昭和の新日本プロレスでいえば、木戸修みたいなポジションですね」

――……それがどのようなポジションなのか分かりませんが、とにかく「いぶし銀」ファイトで大会の中盤を盛り上げると。今も同じスタンスでMMAを戦っているのですか。

「アハハハ、そうです。目指すのは木戸修か藤原喜朗ですね」

――そうなると、若手の相手に選ばれるベテランというポジションにはなってしまいます。

「それは仕方ないですよ。僕よりベテランって、もう少ないですからね。近い階級だと大石真丈さんぐらいじゃないですか。それと金内サイダー雄哉さんですね。サイダーさんは僕の2歳上で、あの人がやっている間は自分もやれるなと思っていますよ(笑)」

――もう一つ、リングネームがタイガー石井からザ・タイガー石井に変わったのは……。

「2019年4月にネクサスのフライ級トーナメントがあって、駒杵嵩大選手と対戦した時に『負けたら引退する』という流れになったんですよ。結果はスプリットで負けてしまったんですけど、その年の7月に青森のGFGに、ザ・タイガー石井の名前で出場して。『タイガー石井は引退しました。ザ・タイガー石井は別人です』と(笑)」

――アハハハ。

「それでも別に何も言われなくて。次にネクサスに出る時、山田代表に『表記もザ・タイガー石井にしてほしい』とお願いしたのに、ネクサスでは頑なにタイガー石井のままでした。何か難しい面があったらしいんですけどね。ともかく、次はスーパータイガー石井で、10年後にはタイガーキング石井でやっていると思います(笑)」

――試合の話に移ります(笑)。現在の石井選手のスタンスは、ベテランとして若手を食って上に行こうとするのか。あるいは違うスタンスなのか。前回のPFCはベルトが懸かっていました。次の修斗沖縄大会では――PFCと同様アウェイですが、ノンタイトル戦で修斗世界ストロー級2位の旭那拳選手と対戦します。

「今回は話が別で、修斗だからです。修斗に戻る。それが自分の中のテーマです。たまに修斗の試合を見ながら、『最後にこの舞台で戻るのも良いかなぁ……』と考えたりはしていました。でも『良いかなぁ』ぐらいの感覚で、まさか本当にオファーがあるとは思いませんでした。しかも自分が他のところに出始めたあとに生まれた沖縄大会で。不思議な感覚ですね」

――石井選手が最後に修斗で戦ったのは2011年4月、もう12年前になります。

「東日本大震災の直後の試合ですね。あれ以降、自分がまた修斗で試合をすることなんて考えていなかったし、オファーが来た時は衝撃でした。信じられないというか。これはプロモーター側には関係ないけど――なぜPFCの1カ月後なのか(苦笑)。もっと期間が空いていればダメージを抜くこともできたのに……と思いながら、こういうのはタイミングですからね。

1カ月後でダメージも心配だからと断っていたら、もう修斗で試合をするチャンスは巡ってこなかったかもしれない。僕にとって修斗は生まれ故郷です。修斗だから出ようと考えました」

――沖縄で試合をするのは今回が初めてですか。

「試合どころか、今まで沖縄に行ったことがないですね。でもこの顔立ちだからか、よく沖縄出身だという前提で話かけられることがあって。『僕は沖縄の××出身で、石井さんはどこですか?』と、沖縄県内の出身地を訊かれます。東京出身なんですけど(笑)」

――修斗は生まれ故郷であっても、沖縄は生まれ故郷ではないわけですね(笑)。ともあれ今回、旭那選手に勝てばランキング入りし、ベルトを狙える位置に来るかもしれません。

「今回は契約体重(54キロ契約)なので、ランキングとかは関係ないかもしれないけど……、とにかく頑張りたいです。さすがに修斗のベルトは雲の上の存在ですし、若い選手がたくさんいて、もう自分がどこまで戦えるかは分かりません。

ただ、決められた試合は全力でやりますし、今回は旭那選手に勝つ。それだけです。試合映像を視ると、とても強い相手です。厳しい試合になることは間違いないけど、そのなかでも全力で、自分の良いところを出していきたいですね」

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【The Shooto Okinawa#08】12年振りの修斗公式戦、ザ・タイガー石井─01─「何か燻っているものがある」

【写真】渋い。大人なザ・タイガー(C)SHOJIRO KAMEIKE

16日(日)、沖縄市のミュージックタウン音市場で開催されるTHE SHOOTO OKINAWA#08のメインで、ザ・タイガー石井が旭那拳と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

現在43歳の石井が修斗でプロデビューしたのが2003年、そのMMAキャリアは20年に及ぶ。リングネームも「タイガー石井」から「ザ・タイガー石井」と変わり、様々な舞台を渡り歩いてきた末に、12年ぶりに修斗参戦を果たす。「MMAを辞めようと考える時もあった」という石井だが、それでもなお戦い続ける理由とは。


――プロ修斗沖縄大会を控えているタイガー石井選手です。修斗でプロデビューしたのが2003年、Zoomの画面越しでも貫禄が伝わってきます。

「アハハハ、今年もう44歳になりますからね。MMAデビューから20年経っていて、その前にキックボクシングで1998年にデビューしているから、もう同世代の選手も少なくなってきています。それでも今までの試合は、一つひとつ覚えているんですよ」

――えっ、デビュー当初の試合も明確に記憶しているのですか。

「デビュー当初だけじゃなく、他の試合も事細かく覚えていますね。いつ何処で誰と対戦して、どんな試合内容だったか。格闘技サイトに僕の戦績が載っているじゃないですか。あれって抜けているのもあるんです。それが分かるぐらい自分自身で覚えています」

――それは凄いです。ただ、それだけ同世代の選手が引退していくなかで、石井選手がMMAを続けている理由は何なのでしょうか。

「続けられるかどうかというのは考えています。前の試合(※3月12日のPFCで、亀松寛都に5R判定負けでベルトを失う)もそうだったんですけど、前はできていたことが今はできなっているというのも多くて」

――それでも亀松戦は5Rフルで動き続けて、敗れましたが大接戦でした。

「前回の試合は頑張りました(笑)。やはりPFCのベルトには思い入れがあったし、大事なものだったので。何より自分が負けると想定していなかったので、心のダメージも大きいです。確かに5Rは長かったんですけど、2Rが終わった時点で『疲れた』とかっていう感覚もなくなっていました。この先どう戦うか、そういうことしか考えていなかったです」

――もともと石井選手はキックボクシングがベースにあり、修斗でプロデビューした当初は打撃主体のスタイルでした。しかし亀松戦では、どちらかといえばテイクダウンとグラウンド勝負の展開が多かったです。石井選手のファイトスタイルは、キャリア20年の中で、どのあたりで変わっていったのでしょうか。

「前回も打撃の展開になると思っていました。だから打撃の練習が中心になっていたのに、なぜか体が動いたのはテイクダウンと寝技の展開だったんですよ。自分でも意外で(苦笑)。試合の中で、『テイクダウンするほうが良いな』と自然に動いたんですね。

相手のほうが初戦(※2020年3月、石井が腕十字で一本勝ち)より強くなっていたのは確かでしたが、やはり負けてベルトを失ってしまったのはショックでした。PFCの試合の前に修斗沖縄大会に出る話は進んでいましたし、北海道のベルトを持って沖縄の大会に参戦するつもりだったので」

――まさに日本MMAの縦断ですね。石井選手の所属は「とらの子レスリングクラブ」となっていますが、現在はどのような練習環境にあるのでしょうか。

「基本的にはフリーランスで、主にトイカツ道場でMMAの練習をさせてもらっています。あとは出稽古に行かせてもらったりとか。所属名は――フリーランスよりは何か名称があるほうが良いと思って。『とら』はタイガーで、いつか子供たちに格闘技を教えられたら良いなと思って、子供に分かりやすいように平仮名にしました。ということで、そこまで所属名に深い意味はないです(笑)」

――石井選手といえば修斗でデビューして以降、ケージフォースやパンクラス、ファイティング・ネクサスからPFCまで、様々な舞台で戦ってきました。もちろん勝つ時もあれば負ける時もあり、起伏の大きい20年間を過ごしてきたと思います。そのMMAキャリアのなかで、何を追い求めて戦ってきたのでしょうか。そして今後も、何を求めて戦っていくのか。

「まぁ、良い時もあれば良くない時もありましたよね。同世代の選手も引退してジムを始めたり。そのなかで自分が選手を続けるのは――辞めるっていう選択肢がなかったですね。もし格闘技を続けられないぐらいの大怪我をしたりしたら、その時は考えます。あるいは試合でコテンパンにされて、『自分はもうここまでなんだ』と考えたら、それは辞める時だと思います。でも、まだ自分の中に何か燻っているものがあるんでしょうね」

――くすぶっているもの……それは何なのでしょうか。

「怒り――かもしれないですね。業界に対しての怒りだったり、自分に対する怒りだったりとか。もう最近はなくなりましたけど、『いつか見返してやる』という気持ちは強かったです。昔はよく『お前なんか、もうダメだよ』とか言われることもありました。そう言われると、自分でも『もうダメなのかな……』と考えたりすることもあって。でも言われるたびに『いつか見返してやる』という気持ちが湧いてききたんです。それが僕の原動力だった時代もありましたね。特に勝てなかった時期は」

――2007年から2009年にかけて、修斗では連敗を経験する時期もありました。

「あぁ、全然勝てなかったですね。当時の修斗は、後のトップ選手が多くて。今の選手って技術的なレベルは、すごく高いと思うんです。でも当時の修斗は、技術的な面だけでは測れない強さがあったというか。あれって何だったんですかね? なかなか口では説明しづらいですけど」

――当時の修斗――特に北沢タウンホールで行われているクラスBの試合には、狭き門を潜り抜けるために、ただただ強くなるためだけに戦っていた熱があったと思います。今は違うとは言いませんが、やはり時代の違いはあるでしょう。

「そう、そうなんですよ。MMAの修行僧みたいな感じで。正直、MMAをやっていて金を稼げるのは一部の選手だけだし、プロスポーツとしては当たり前だと思います。自分も一時期、就職して仕事のほうが割合も高くなったことがありました。でも仕事しながら練習していると、やっぱり難しい。『自分はもっと強くなりたいんだ』と思ったんですよね」

<この項、続く>

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【Gladiator020】フライ級王座を見越した久保健太戦へ、宮城友一─02─「自分はこのままじゃいけないと」

【写真】伊藤裕樹、関口祐冬、安谷屋智弘、NavE、宇田悠斗、駒杵嵩大──勝っても負けても、錚々たるメンバーと宮城は試合を続けてきた。久保の好戦績に向き合った時、そこに自負はあるだろう(C)MMAPLANET

22日(日)、大阪府豊中市の176Boxで開催されるGladiator020で、久保健太と対戦する宮城友一のインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike

1年4カ月ぶりのグラジエイター出場で、宮城も対戦する久保もアラフォーだ。お互いの年齢とキャリアを考えれば、ここで負けるとタイトル挑戦への道は厳しくなるだろう。そんな共通点を持つ久保の印象を訊くとともに、宮城にあの言葉の意味を尋ねた。

<宮地友一インタビューPart.01はコチラから>


――宮城選手はかつてグラジエイターでライトフライ級のベルトを巻いていました。現在は修斗のベルトを目指しているとのことですが、もう一度グラジエイターのチャンピオンになりたいという気持ちはありますか。

「もちろん、あります。自分が目標にしているのは、修斗とグラジエイターのベルトです。その2つをモチベーションに、日々練習しています。今回の試合で勝つことで、またグラジエイターのベルトに近づくことができれば良いなぁと思っています」

――対戦相手の久保健太選手はRoad FCでのプロデビュー戦で星を落とし、その後4連勝。2021年には鶴屋怜選手に敗れるも、以降は3連勝しています。3連勝のうち2勝はグラジエイターでのもの――つまり、グラジエイター・フライ級のベルト戦線に関わってくるマッチメイクかと思います。

「僕もそういう意味合いを持っている試合だと感じています。自分としてはNavE選手に負けているので(2021年9月、フライ級タイトルマッチで判定負け)、すぐ再戦させてほしいとは言えません。ただ、今回勝てば再戦に近づくことはできるだろうと考えています」

――では、久保選手の印象を教えてください。

「まず戦績が良いですよね(MMA戦績7勝2敗)。勝つ選手は、絶対に強い。砂辺さんとも『絶対に強い選手だから勝ちに徹する。確実に勝ちに行こう』という話をしました」

――久保選手も強い打撃を持っている一方で、手堅い攻めができる選手ですよね。

「はい、しっかり勝つ選手だなって印象があります。だから反対に、試合の展開についてはいろいろ想像してしまって……。もう試合も近いので、そこは迷わずに、砂辺さんと作戦をしっかり固めています。この作戦を遂行すれば大丈夫だろう、というところまで来ました」

――宮城選手は1983年生まれで現在39歳、久保選手は1982年生まれの40歳です。お互いキャリアは違うものの年齢も近く、久保選手もまた宮城選手と同様、グラジエイターでキャリアが変わった選手ではないでしょうか。

「プロモーターも、そういうところを狙ったマッチメイクなのでしょうね(笑)。このグラジエイターという新しい舞台で、もうひと輝きしたいと思っているのは僕も彼も同じです。ただ、僕は僕で積み重ねて来たものがあるつもりだし、そこは負けてないと自信を持っています。試合内容としては、圧倒して勝ちたいです」

――なるほど。宮城選手にとっては、これからがラストチャンスと考えているのでしょうか。修斗沖縄大会でKO勝ちしたあと、「あと少し、死ぬ気で頑張って上を目指したい」と仰っていました。

「……何て言うんでしょうね。周りの人から『もうそろそろ辞めたほうが良いんじゃないか』と言われることはないです。みんなが応援してくれています。でも自分の中で勝手に、『周りの人たちに迷惑をかけているんだろうなぁ』という気持ちが強くなっているんですよね。ジムもあるし、家族がいて――家族から辞めてほしいと言われることはないですが、それでも考えてしまうことがあって。

ジムで一緒に働いてくれているスタッフさんも『先生、僕たちにジムは任せて試合を頑張ってください』と言ってくれるけれども、そういう言葉に対して自分で勝手にプレッシャーを感じるようになってきました。だから今は毎試合、『あと少しやらせてください』という言葉が出てしまいますね」

――もう一つ気になる発言がありました。「選手として死ぬ気で頑張るということを、長らくやっていなかった気がします」と仰っていましたが、現場で「そんなわけがない」と思いました。ここまでMMAを続けてきた宮城選手が、死ぬ気で頑張っていないはずがない。

「もちろん自分としては、一生懸命やってきたつもりです。でもジムの仕事や人間関係などとのバランスを取りながら、選手生活を続けてきました。それでも強い選手を見ていたり、沖縄で若い選手たちと練習していると――彼らは一つのことに懸けているわけです」

――……。

「若い選手たちは練習でヘトヘトになり、また次の日も……という日々を過ごしています。僕もそういう日々を過ごしたかったけど、ジムもあり家族もいて、同じようなMMAとの向き合い方ができなかった。ジムを立ち上げる前は会社員をやっていて、最初から生活ありきで考えていました。

会社員であったり自分のジムを持っていたら当たり前かもしれないけど、どうしても仕事のほうに心と体が引っ張られてしまうことがあったんです。でも若い選手たちと練習していて、自分はこのままじゃいけないと思いました」

――今、沖縄から若いMMA選手が多く出てきていますね。

「そうですね。昼にパラエストラ沖縄の練習に参加すると、25人ぐらい集まっていますよ。そして、みんな強いです。平良達郎君はもちろん、南風原吉良斗君や旭那拳君たちは本当に一生懸命やっています。砂辺さんのクロスラインからも、当真佳直君が修斗沖縄大会のメインを務めたりとか。僕はあと何年、MMAを続けられるか分かりません。だからこそ――彼らと同じように一生懸命やってみようと思ったんです」

――なるほど。

「実は修斗で関口祐冬選手と対戦した時(2022年3月に判定負け)も思っていて。修斗の入場式で、みんな並んだ時に『この中で自分だけ何かが足りないんじゃないか』って。でも、一生懸命やろうと考えてから、気持ちも吹っ切れました。おかげで、今は試合へのモチベーションは高いです。

練習ではヘトヘトになるし、かといってジムの指導を休んでいいわけではない。それでも毎日が充実していて、自信にもなっているし、自分の中で納得できる取り組み方ができています。これからも1試合1試合、絶対に後悔することがないように」

■視聴方法(予定)
1月22日(日)
午後2時20分~THE 1 TV YouTube

■ Gladiator020対戦カード

<フライ級/5分2R>
坪内一将(日本)
陸虎(日本)

<バンタム級/5分2R>
今村豊(日本)
秋田良隆(日本)

<ウェルター級/5分2R>
藤田大(日本)
スティーブン・ギレスピ(英国)

<Gladiatorフェザー級王座決定戦/5分3R>
中川皓貴(日本)
チョ・ソンビン(韓国)

<Gladiatorライト級選手権試合/5分3R>
[王者]キ・ウォンビン(韓国)
[挑戦者]グスタボ・ウーリッツァー(ブラジル)

<Progressフォークスタイルグラップリング・ウェルター級王座決定戦/5分3R>
森戸新士(日本)
ジョセフ・チェン(台湾)

<フライ級/5分3R>
宮城友一(日本)
久保健太(日本)

<バンタム級/5分3R>
笹晋久(日本)
ジョン・オリニド(フィリピン)

<キック・ウェルター級/3分3R>
璃久(日本)
イゴール・シルバ(ブラジル)

<バンタム級/5分2R>
溝口司(日本)
ガッツ天斗(日本)

<ヘビー級/5分2R>
大場慎之助(日本)
チョン・ホチョル(韓国)

<Progressフォークスタイル・グラップリング79キロ契約/5分2R>
山田崇太郎(日本)
井上啓太(日本)

<Progressコンバット柔術バンタム級/5分2R>
竹本啓哉(日本)
江木伸成(日本)

<アマMMA女子アトム級/3分2R>
住村斉明里(日本)
MIYU(日本)

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【The Shooto OKINAWA06】計量終了。田上こゆる「ランカーとしての差を見せつける」

【写真】コンディション調整はうまく行ったと思われる田上。敵地で連敗脱出なるか(C)SHOJIRO KAMEIKE

17日(日)、沖縄市のミュージックタウン音市場で開催されるThe Shooto Ookinawa06の前日計量が16日(土)、那覇市内で行われた。

出場選手のうち、工藤圭一郎と南風原吉良斗は1回目の計量で契約体重をオーバーしていたが、再計量でクリア。メインに出場する田上こゆるは、航空便の都合で他選手の計量後に会場へ到着し、しっかりと計量をクリアした。今回の当真佳直戦に向けて「自分はランカー、相手はランカーではないので、その差を見せつける」と意気込みを語った。

■視聴方法(予定)
4月17日(日)
午後3時~ Twit Casting LIVE

■The Shooto OKINAWA06計量結果

<ストロー級/5分3R>
田上こゆる:51.74キロ
当真佳直:52.00キロ

<ストロー級/5分2R>
旭那拳:52.20キロ
竜己:52.06キロ

<女子アトム級/5分2R>
小生由紀:47.18キロ
加藤春菜:47.50キロ

<フェザー級/5分2R>
平澤克明:65.36キロ
工藤圭一郎:65.88キロ→65.76キロ

<バンタム級/5分2R>
南風原吉良斗:61.22キロ→61.18キロ
川北晏生:61.12キロ

<ストロー級/5分2R>
わっしょい内田:52.04キロ
畠山隆称:52.14キロ

<ストロー級/5分2R>
大城匡史:52.04キロ
大城正也:51.98キロ

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