【写真】3度目のRTU敗戦から4カ月、プロデビューした修斗で出直す野瀬(C)SHOJIRO KAMEIKE
22日(日)、東京都文京区の後楽園ホールでShooto2024#07が開催される。今大会では空位となっている環太平洋バンタム級王座を争う4人制トーナメントが開幕し、野瀬翔平が人見礼王と決勝進出を書けて戦う。
Text by Shojiro Kameike
今年5月に三度目のRoad to UFCに挑んだ野瀬だが、初戦で韓国のユ・スヨンに判定負けを喫した。その野瀬が国内復帰に選んだ場所は修斗、しかも環太平洋王座決定トーナメントだ。RIZIN出場経験もあり、一方でUFCを目指し続けるのであれば海外のフィーダーショーという選択肢もあるなか、野瀬が修斗のベルトを目指すことになった理由とは。RTUのユ・スヨン戦を振り返るとともに、ベルト獲得に向けた現在の練習についても訊いた。
――今回、修斗の環太平洋王座決定トーナメントに出場します。5月に3度目のRTUで敗れたあと、国内のベルトを目指すというのは少し意外でした。
「弘中先生(弘中邦佳マスタージャパン代表)と話をして――RTUへのアタックが3回ダメだったので、もう一度国内で実績を積もうという結論になったんです。『国内のベルトを目指して、そこで負けていてはUFCに行くこともできない。だから国内で立て直そう』と。
じゃあ国内で、どこで試合をしてベルトを目指すのか。僕はアマチュア修斗からプロまでずっと修斗でやってきました。今回、その修斗のベルトを目指すトーナメントを組んでもらえて良かったです」
――「意外」と感じた一つの理由は、これまで野瀬選手が一度もベルトに挑んだことがなかった点です。さらに言えば、ランキングも上位ではなく。
「そうなんですよね(笑)。修斗で戦ってきて『上位ランカーと試合させてほしい』と言っている時に、ちょうどRTUの話が来たんですよ。そこでRTUを選ぶというのが2年続いて。ようやく神田(T800周一)選手に勝ってランキング入りした直後に、また3回目のRTUが決まり……それが修斗でランキングが上がらなかった理由です。
RIZIN、RTUで試合をしてきて、いきなり修斗のベルトというのも虫が良すぎるかもしれないですね(苦笑)。結局、僕は今までMMAをやっていて形になったモノが何もないんです。それもあって、まずは国内で修斗の環太平洋王座、さらに上のベルトを獲りに行こうという話になりました。今回は2回勝てば環太平洋のベルトを巻ける。だからモチベーションは高いです。さらに上のベルトも、その先も見据えた戦いになります」
――ある意味異例ともいえる3回連続RTU出場で、今年は初戦でユ・スヨンに敗れました。あの試合について振り返っていただけますか。
「もう3回目の挑戦だし、絶対に優勝してUFCと契約する。それだけ気持ちが入りすぎて、練習でも早く仕上がりすぎてしまいました。体も早く出来上がって、自分でギアも上げまくり、アドレナリンが出まくって練習でも動きまくってしまい……逆に良くなかったですね。そのために怪我もしてしまいましたし。
早い段階でピークが来るほど、気合いが入りすぎてしまいました。試合当日のパフォーマンスは悪くなかったと思います。もちろんユ・スヨンは凄く強い選手でした。ただ、今思えば自分も気持ちが入りすぎていました」
――確かにユ・スヨン戦もスタートダッシュは悪くないというか、むしろ良かったですよね。
「はい、最初にバックを取りかけたところまでは良かったです。でもそこから落とされて、逆にバックを奪われ、削られてから相手のペースになってしまいました。最初に良い形でバックを取ることができて、こちらが面喰った部分もありましたね。『おぉ、バックを取れちゃったよ!』みたいな(苦笑)」
――野瀬選手に苦手な部分があるとして、そこを突かれて負けたのであれば、また考えることは違ったかもしれません。しかしユ・スヨン戦は、野瀬選手の得意な部分で負けてしまった。試合直後、その点が一番気になりました。
「自分が組み負けてしまいましたからね。最後のラウンドは打撃で行っていれば、もしかしたら――という考えもあったかもしれないです。でも、それは『たら・れば』であって。
自分は組みを練習してきたので、最終ラウンドも組みに行ったことに後悔はないです。だから……帰国してから今まで、打撃を強化しようとは考えませんでした。もちろん普段から打撃は練習していますけど、それ以上に『ユ・スヨンに組み勝てるぐらいになりたい』と思って、今まで以上に組みにフォーカスして強化しています」
――それがファイターとしてのプライドですよね。では組み技の面で新しいことを取り入れるのか、あるいは今まで培ってきたものの精度を上げていくのか。
「一つ一つの技術の精度を上げることですよね。ユ・スヨン戦でも僕がバックを奪った時、前に落とされずに自分がポジションをキープして削っていたら、2Rめでも僕のほうが良いポジションを取れたかもしれません。今までの対戦相手なら、そこで極めることができた。でもユ・スヨンのような体格も技術もある選手なら、ここで攻めるより一度キープしたほうが良い。今はそういうことも意識しながら練習しています」
――いまやUFC本戦だけでなくRTUやDWCSでも、自分がやるべきことは分かっていても、それを判断しなければいけないスピードがどんどん速くなっている。とにかくMMAとしての進化が加速し続けています。
「そうなんです。ユ・スヨン戦も一瞬の判断ミスで、そのまま最後まで持っていかれて……まず練習から、もっともっと集中しないといけないと思っています」
――そのユ・スヨンも準決勝で得意の展開に持ち込み切れず、苦戦の末に決勝へ進みました。UFCを目指す戦いの厳しさを物語っています。
「あの準決勝を見て、『RTUの参加者は全員強いんだな』って思いました。でもあの展開で競り勝てるユ・スヨンは強いですね。戦った人間として、このまま優勝してUFCと契約してほしいです」
――なるほど。そして今回、修斗の試合が決まりSNSでは「役者が違う」と投稿していました。
「アハハハ。正直ここで苦戦しているようでは、今後について考えなきゃいけないと思っています。この2試合では圧倒的な差を見せつけて、ベルトを獲らないといけないですね。『これは野瀬がベルトを巻いて当然だ』と思われるような試合にしたいです。
これも正直に言うと、お互いのキャリアを考えたらベルトが賭けられたトーナメントでなければ、試合を受けていないぐらいの相手です。舐めているわけじゃないんですけど……」
――キャリアの差を考えたら、そう感じるのも仕方ないと思います。とはいえ、伝統派空手をベースとした鋭い打撃を持っているファイターです。
「未知な部分はありますけど、やはり打撃の踏み込みが速いですね。相手は一発効かせたい、僕は組んで極めたいという分かりやすい構図かなと思います。瀧澤戦と同じで、空手×柔術で先にどちらが自分の良さを出せるか。
国内のベルトを足掛かりにして、一番高いところに行きたいです。油断することなく、しっかりと格の違いを見せます」
■Shooto2024#07 対戦カード
<環太平洋バンタム級王座決定T準決勝/5分3R>
野瀬翔平(日本)
人見礼王(日本)
<環太平洋バンタム級王座決定T準決勝/5分3R>
川北晏生(日本)
ダイキ・ライトイヤー(日本)
<ウェルター級/5分3R>
住村竜市朗(日本)
西條英成(日本)
<ライト級/5分3R>
マックス・ザ・ボディ(カメルーン)
西尾真輔(日本)
<ストロー級/5分3R>
黒部和沙(日本)
山上幹臣(日本)
<ストロー級/5分2R>
内藤頌貴(日本)
大城正也(日本)
<女子アトム級インフィニティリーグ/5分2R>
パク・ソヨン(韓国)
NOEL(日本)
<女子アトム級インフィニティリーグ/5分2R>
平田彩音(日本)
檜山美樹子(日本)
<フライ級インフィニティリーグ/5分2R>
大竹陽(日本)
ヤックル真吾(日本)
<バンタム級/5分2R>
平川智也(日本)
新井拓巳(日本)
<2024新人王決定T フライ級1回戦/5分2R>
手島響(日本)
直島弘昌(日本)