<ウェルター級/5分3R>
押忍マン洸太(日本)
Def.1R2分30秒 by KO
川中孝浩(日本)
<ウェルター級/5分3R>
押忍マン洸太(日本)
Def.1R2分30秒 by KO
川中孝浩(日本)
【写真】濃いキャリアを送っている松岡。さらに濃くするために負けられない葛西戦だ(C)MMAPLANET
明日24日(日)、東京都の立川ステージガーデンで開催されるPANCRASE337で、葛西和希と対戦する松岡嵩志のインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike
右を主体にKOを生み出してきた松岡だが、トップ選手との対戦が増えるにつれ、右を打つ瞬間を狙われることも増えてきた。そんななか、松岡はいかに「自分の弱さ」を克服してきたのか。前回の岡野戦で進化した姿を見せた松岡が語る葛西戦と、北岡悟イズム――。
<松岡嵩志インタビューPart.01はコチラから>
――岸本戦に続く粕谷優介戦は、衝撃のKO劇でした。
「ちょうど粕谷選手が調子を落としていた時期だったと思います。でも、そのチャンスをモノにできたことは大きかったですね。以降は対戦相手に実力者が続くようになって」
――粕谷戦のあとは松本光史選手、冨樫健一郎選手、雑賀ヤン坊達也選手、そして岡野裕城選手と対戦しています。文字通り強豪と対戦し続けていますね。
「勝った試合も負けた試合も、胸を張って『強い相手だ』と言える選手ばかりでした」
――仰る通りです。ただ、松岡選手といえば右ストレートが強いというイメージがありました。しかし松本戦と雑賀戦は松岡選手の右にパンチを合わせてきました。
「正直、あの2人が素晴らしい選手であることは間違いないです。松本さんは今でも一緒に練習させてもらっていて。メチャクチャ強いですし。雑賀選手も試合前から『シンドイ相手だな』と思っていました。それよりも自分の弱い部分が出てしまいました。
最初に試合をコントロールし始めたのは自分なんですよね。それは2人の強さに焦りを感じて、早く試合を決めたいと思ってしまったからなんです。それで突っ込んで、負けてしまう。今までのKO負けも全て同じで、弱い自分が出てしまって負けることが多かったので。この2試合も相手のプレッシャーが強いからこそ、それが出てしまったんですけど……。あれは北岡さんからも『技術で負けたわけじゃないけど、気持ちの面が出てしまうけど、この結果になってしまうよね』という話をしてもらいました」
――直近の岡野戦は、2つの敗戦を踏まえて戦術の変更があったのですか。
「戦術というよりは、とにかく突っ込まないようにしました。自分にとって良い状況になったり、あるいは自分が追い込まれた時には、どうしても得意な右に頼ってしまいますよね。右を当てればどうにかなるというのは勝負じゃなくて博打ですから」
――「勝負ではなく博打」、とても良い言葉です。
「そういう意味では、岡野選手との試合は良かったと思います。岡野選手のジャブは本当に凄くて、それでも我慢して蹴ったり、テイクダウンのフェイントを混ぜたりして勝負できたので。あまり自分が崩れることもなく勝てたので、自分の中では満足しています」
――岡野選手が左ジャブを出してくると、右を被せるかインサイドから打ち込みたくはなりませんでしたか。
「やっぱり狙ってしまうところはありました。でも岡野選手のリーチが長いのと、顔を後ろに背けるディフェンスをするので、右クロスは当たりづらくて。それも踏まえて左フックまで返して。右は打ちたくなります。要は、いかにして良い右を打ち込むか。重要なのは、そこですよね」
――もうひとつ、松岡選手といえばローの強烈さが印象深いです。ローが当たっている時ほど右ストレートも当たるようになっていて。
「そうですね。岡野戦でも右ローがバシバシ当たっていて。蹴ると体のバランスが良くなります。実は冨樫さんとの試合は足を痛めていて、『これは蹴れないな』と思っていたんです」
――えっ! でもバシバシ蹴っていましたよね。
「アハハハ、そうなんですよ(笑)。試合前は、たとえ蹴れなくても蹴るフェイントを入れれば体のバランスが戻ってくるから、フェイントだけは入れていこうという話をしていました。だから蹴りは生命線というか、すごく重要な武器です」
――次に対戦する葛西選手も蹴りが得意なファイターです。
「柔道出身だからグラップリングをやるのかと思ったら、最近はキレのある蹴りを打ってきますよね。負けたけど粕谷選手との試合も良かったですし、あの小気味よい蹴りは僕も嫌いじゃないです(笑)」
――対戦相手の蹴りが好みですか(笑)。
「粕谷選手はメチャクチャ強くて、あの試合を物差しとしては考えられないですよね。僕と粕谷選手では違いすぎるという意味で。僕には粕谷選手ほどのテイクダウンやグラップリング力はない一方で、打撃面では粕谷選手ではなく葛西選手のほうがコントロールしていたと思います。とにかく次の葛西戦が厳しい試合になることは間違いないです」
――その葛西戦では、どういった試合を見せたいですか。
「正直、試合で何かを見せるということは考えたことがないです。もちろん良い試合、良いKOを見せることができれば、それに越したことはないです。でも勝負をしていれば、ハマる人にはハマると思いますし。僕としては勝ちを求めるだけで、自分が勝ちに行く過程で何かを見せられたら――あとは観ている人が判断してほしいです」
――その言葉はまさに北岡イズムですね。
「あぁ、確かにそうですね。でもそれは北岡さんにお世話になるなかで、僕が北岡さんに染まってきたわけじゃないんですよ。ロータスに行きたいと連絡する前から、北岡さんの意見に共感することが多くて。だから僕のほうから北岡さんに『練習させてもらいたい』と連絡しました。僕も勝利至上主義なので」
■Pancrase337計量結果
<フェザー級KOP決定戦/5分5R>
亀井晨佑:65.75キロ
新居すぐる:65.65キロ
<ウェルター級/5分3R>
藤田大:75.5キロ
住村竜市朗:77.55キロ
<ストロー級/5分3R>
八田亮:52.75キロ→52.6キロ
黒澤亮平:52.55キロ
<ウェルター級/5分3R>
押忍マン洸太:76.65キロ→77.55キロ
川中孝浩:76.95キロ
<バンタム級/5分3R>
井村塁:61.35キロ
河村泰博:61.65キロ
<フェザー級/5分3R>
平田直樹:66.25キロ
遠藤来生:66.0キロ
<フライ級/5分3R>
秋葉太樹:57.05キロ
ムハンマド・サロハイディノフ:57.05キロ
<ライト級/5分3R>
余勇利:70.55キロ
神谷大智:70.55キロ
<バンタム級/5分3R>
山口怜臣:61.6キロ
安藤武尊:61.0キロ
<ライト級/5分3R>
松岡嵩志:70.15キロ
葛西和希:70.6キロ
<女子ストロー級/5分3R>
KAREN:51.85キロ
高本千代:52.0キロ
<バンタム級/5分3R>
矢澤諒:61.8キロ→61.65キロ
笹晋久:61.4キロ
<フライ級/5分3R>
梅原規祥:57.05キロ
饒平名知靖:56.1キロ
<ウェルター級/5分3R>
佐藤生虎:77.5キロ
渡邉ショーン:77.0キロ
【写真】警戒心の強い笹、かといって下がるわけでもなく組み力の強い相手にどのような打撃戦を仕掛ける(C)MMAPLANET
24日(日)、東京都の立川ステージガーデンで開催されるPANCRASE337で、笹晋久と対戦する矢澤諒のインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike
矢澤といえば右ストレート。右を得意としているファイターが多い現在のパンクラスで、その威力はトップレベルを誇る。さらに組みや右以外のパンチを鍛えることで、より右ストレートも輝くようになってきた。そんな矢澤の右ストレートの秘密に迫る!
<矢澤諒インタビューPart.01はコチラから>
――ご自身のフィニッシュブローを右ストレートと定めたのは、いつ頃ですか。
「プロデビュー戦ですね。北岡さんの興行(2020年7月、iSMOS)でデビュー戦を組んでもらった時、大井洋一選手を右で倒してから『右で倒せるんじゃないか』という意識が生まれました。そのあと2連敗したことで、自分の中に迷いも出ていたんです。でも『どれだけ自分の打撃が通用するのか』という気持ちで相手に向かうようになってからは、右で倒せるようになっています。負けたことで逆に、しっかり打撃をやるようになりました」
――現在は3連続KO勝ちです。これだけ右が当たる秘訣はあるのでしょうか。
「自分の中では、右が当たるイメージづくりが一番大切だと思っています。試合に向けて、自分の右が対戦相手にどう当たるかをイメージしながらスパーリングしたり、サンドバッグを打つようにしています」
――2022年5月の上田祐起戦までは、頻繁にスイッチしていましたよね。
「僕は身長が低いので、どうすれば相手の懐に入れるかって考えていました。もともとはオーソドックスですけど、サウスポーも出来たのでスイッチしながら懐に入ろうと。でも技術的にも中途半端だったために、あの結果に終わったのかと思います」
――次の漆間戦からはスイッチすることなく、オーソドックスで戦っています。上田戦の結果を受けて、何か気持ちの変化があったのですか。
「はい。『もう細かいことは考えずに殴り合っちゃおう』と。それがうまくハマッたのかなと思っています。たまたま、かもしれないですけど(笑)」
――ここまで右ストレートでKOしていたら偶然ではないでしょう(笑)。これは結果論ですが、スイッチしている頃の試合ぶりと現在を比べたら、今は迷いがないように感じます。
「そうなんです。スイッチしている頃は、試合中も全体的にフワフワしていました。すると相手にとっては怖さもなかったんじゃないですか。今は右ストレートを軸に圧をかけていますから、相手も下がってくれるんだと思います」
――もう一つ。右ストレートが当たるということは、右以外の要素も増えてきたということですよね。
「どんどん対戦相手のレベルが上がって、自分の右は絶対に警戒されます。でもそれが僕にアドバンテージになっていて。相手が右を意識してくれるおかげで、他のパンチが当たるようになってきていると思います」
――右だけでなく左のパンチも当たるようになってきています。ジャブなのか、フックなのか、あるいはその中間というべきか……相手にとっては見えにくいパンチだと思います。
「左はスマッシュ気味に打っています。そうやって常に、右だけに頼らないように取り組んでいます」
――さらに現在は、大道塾吉祥寺支部の飯村健一さんにも打撃を教わっているのですか。
「去年10月の漆間戦が終わってから、飯村さんのところに行かせてもらっています。純粋なミットの打ち込みをやりたいと思って飯村さんにお願いしました。マンツーマンで丁寧に教えてくださるので、メチャクチャ勉強になっています」
――ここ数試合を視ると、打撃を出す際の重心が変化していませんか。それは飯村さんの指導や、タケ大宮司さんのトレーニングの影響なのでしょうか。
「打撃を出した時に止まれるようになりました。以前はパンチを打つ時にどうしても、つんのめっていたんですよね。つんのめるなら、そのままスイッチしようと考えて」
――それがスイッチ時代に繋がるのですね。
「つんのめらずに止まれるようになったのは、タケさんに股関節の使い方を教わった効果もありますね。あとは自分のパンチの力が、どれだけ相手に伝わるかをイメージしならがサンドバッグを打つ。それで右のインパクトが強くなったんだと思います。今は誰が相手でもパンチで倒せる自信があります」
――では次の対戦相手、笹選手の印象を教えてください。
「フィジカルが強いという印象があります。でも僕は相手がどうだからこう……ということは、あまり考えていなくて。自分が強いところをぶつけることができれば勝てる。ぶつけられなければ負ける。自分はまだそのレベルだと思っています。もっと上に行かないと、相手どうこうは言えないかなって。今は自分のやるべきことをどれだけ形にできるか、ですね」
――打撃だけでなく組みのレベルについては、どのように考えていますか。前回のジェイク・ムラタ戦は組んでくる相手を切り続けて、パンチで倒しました。
「ジェイク選手と試合をするにあたって、まず自分のパンチが当たれば絶対に倒れるから、組みの練習を増やしました。それで試合で組まれた時に『大丈夫だ』と思って、安心することができました」
――なるほど。矢澤選手は現在パンクラスのバンタム級4位で、この試合で勝てばベルトを狙える位置につけています。最後に次の試合への意気込みをお願いします。
「次の笹選手はパンクラスのランキングには入っていないけど、実力を考えると上のほうにいる選手です。ここで勝てるか勝てないかで、今後の自分の進む道が決まっちゃうのかと思います。まずはファーストコンタクトでどれだけ出せるか。しっかりと勝って、皆さんに矢澤諒を見せたいです。ぜひ注目してください!」
■Pancrase337計量結果
<フェザー級KOP決定戦/5分5R>
亀井晨佑:65.75キロ
新居すぐる:65.65キロ
<ウェルター級/5分3R>
藤田大:75.5キロ
住村竜市朗:77.55キロ
<ストロー級/5分3R>
八田亮:52.75キロ→52.6キロ
黒澤亮平:52.55キロ
<ウェルター級/5分3R>
押忍マン洸太:76.65キロ→77.55キロ
川中孝浩:76.95キロ
<バンタム級/5分3R>
井村塁:61.35キロ
河村泰博:61.65キロ
<フェザー級/5分3R>
平田直樹:66.25キロ
遠藤来生:66.0キロ
<フライ級/5分3R>
秋葉太樹:57.05キロ
ムハンマド・サロハイディノフ:57.05キロ
<ライト級/5分3R>
余勇利:70.55キロ
神谷大智:70.55キロ
<バンタム級/5分3R>
山口怜臣:61.6キロ
安藤武尊:61.0キロ
<ライト級/5分3R>
松岡嵩志:70.15キロ
葛西和希:70.6キロ
<女子ストロー級/5分3R>
KAREN:51.85キロ
高本千代:52.0キロ
<バンタム級/5分3R>
矢澤諒:61.8キロ→61.65キロ
笹晋久:61.4キロ
<フライ級/5分3R>
梅原規祥:57.05キロ
饒平名知靖:56.1キロ
<ウェルター級/5分3R>
佐藤生虎:77.5キロ
渡邉ショーン:77.0キロ
【写真】5月で30歳になった黒澤。打の圧があるトータルファイター、完成度は相当に高くなっている(C)TAKUMI NAKAMURA
24日(日)、東京都の立川ステージガーデンで開催されるPANCRASE337で、黒澤亮平が八田亮と対戦する。
Text by Takumi Nakamura
修斗を主戦場に戦い、第6代世界ストロー級王者となった黒澤。今年7月からはパンクラスに活躍の場を求め、9月大会に連続参戦となった。勢いで勝ち続けていた時代、技術を覚えてファイトスタイルのバランスに苦しんだ時代を経て、今は「技術を乗せた喧嘩が出来るようになった」という。自分の強さを追求する日々を「難しいけど楽しい」と表現した黒澤にパンクラス2戦目を控える心境を訊いた。
――7月PANCRASE335での小林了平戦に続いて、パンクラスに連続参戦することになった黒澤亮平選手です。プロデビューからキャリアの多くを修斗で戦ってきた黒澤選手がパンクラスに参戦を決めた理由はなんだったのですか。
「今年は4月の修斗沖縄大会に出て、たくさん試合をやるつもりだったんですけど、なかなか次の試合が決まらない状況が続いて。その時に周りの人たちから『修斗以外には興味がないの?』と言われて、自分としては修斗へのこだわりがあったんですけど、修斗では色んな選手と対戦したし、修斗以外でも試合のチャンスがあるなら試合をしたいと思っていました。そういう流れもあって7月にパンクラスさんに出させてもらいました」
――大会、イベントとしてパンクラスにはどのような印象を持ちましたか。
「もともとうちのジム(パラエストラ松戸)は修斗で試合をする選手が多かったですし、同じMMAの試合なんですけど、プロモーションが違うと計量から雰囲気が違いましたね。すごく新鮮でした」
――黒澤選手が“飛鳥拳”として修斗デビューした当初と比較すると、プロ選手が試合をする舞台や選択肢もかなり増えていますよね。
「そうですね。若い選手も増えてきましたし、選手それぞれ戦いたい舞台があって、そこに出ているという感じですよね。あとは練習中に僕が最年長という時もあるくらいなので、だいぶ変わりました(笑)」
――先ほどは「今年はたくさん試合をやるつもりだった」という言葉もありましたが、それは何か理由があるのですか。
「コロナの影響もあって、意図しない形で試合数が減ってしまって。僕は試合が一番強くなれる方法だと思っているので、それが戦績に影響した部分もあったと思うし、できるだけ試合数は減らしたくなかったので、今年はがむしゃらに試合しようと思いました」
――実際に今年は4月、7月、9月と試合が続いていて、コンディションは上がっていますか。
「そうですね。7月の試合が終わって、すぐ9月のオファーをいただいて、いい意味で間を置かずに練習が出来ています」
――対戦相手の八田亮選手の印象は?
「一言でいうと“極め”ですね」
――あれだけ極めに特化する選手は今のMMAでは珍しいと思います。
「はい。だから見ていて面白いと思うんですけど、ぶっちゃけそこまで真剣にMMAと向き合ってないと思うんですよ。そういう選手には負けたくないですね」
――ファイトスタイル・キャラも含めて、独特というか個性的な選手ではあると思います。
「実際にどうかは分からないですけど。僕はずっと『どうすればMMAで強くなれるのか?』を考えて、毎日MMAで勝つための練習をしているので、そこの違いを見せたいと思います」
――逆に今の黒澤選手が考えるMMAにおける理想の戦い方はどんなものですか。
「少し話はさかのぼるんですけど、僕が修斗でチャンピオンになった時(2016年7月)は、今思うとチャンピオンに“なれた”というより“なっちゃった”という感じだったんです。それから怪我でベルトを返上して復帰するにあたって、ちゃんとMMAを深堀して色んな技術を身につけようとしたんです。そうしたら技術先行のスタイルになって、試合でも技術で勝とうとするようになっちゃって。それでバランスが崩れて、上手くいかない時期がありました。でも今はそこが改善されてきて、MMAの技術を乗せた喧嘩が出来るようになりました。自分の強さで相手の強さを飲み込んでしまう、そういう戦い方が理想ですね」
――では7月の小林戦のKO勝ちは、それまでのKO勝ちとは違うものですか。
「全然違いますね。色んなことを想定して、試合中も色んなことを考えて、自分で試合を作ってKOすることが出来たんです。最後のパンチやKOシーンを褒めてもらうことが多かったのですが、自分のなかではKOするまでの過程・中身が違いましたね。今までの僕はステップを使って、簡単に言うとアウトボクシングして、自分の打撃を突くスタイルだったんですよ。でも今は自分から試合を作って、自分の強さ=ストロングポイントをぶつけて勝つ。そういう戦い方になっていると思います」
――今練習していて自分の伸びしろを感じているのではないですか。
「感じていますね。まだまだ……まだまだ……伸びしろありますよ」
――そのうえで黒澤選手のMMAファイターとしての目標は?
「よく『パンクラスでチャンピオンになったらどうするの?』と言われるんですけど、僕はそこまで先のことは考えていなくて、パンクラスのベルトを獲ることしか考えてないです」
――具体的にいつ頃までにタイトルマッチをやりたいという希望はありますか。
「パンクラスのストロー級はチャンピオン不在なので、八田選手にいい勝ち方をできたら年内にはタイトルマッチをやりたいですね。あと修斗でベルトを獲ったときは防衛戦が出来なかったので、パンクラスでベルトを獲ったらベルトを守る試合、防衛戦も経験したいです」
――例えば国内ではRIZINのようなビッグイベントで試合をする選手たちも身近にいると思いますが、そういった舞台に自分も出たいという気持ちはそこまでないですか。
「みんな素晴らしい選手たちだから、彼らに対する嫉妬はなくて。みんな仲間であり、ライバルであり、素晴らしい選手が素晴らしい舞台で戦っているなと思って見ています。本当に今は自分がずっとやってきたMMAのレベルを上げたい、MMAファイターとしての成長していきたいという想いの方が強いです」
――自分の強さへの追及ですね。
「はい。MMAは難しくもあり、面白い。そういう気持ちで日々練習していますし、それが楽しいです」
――それでは最後に黒澤選手の試合を楽しみにしているファンの皆さんにメッセージをいただけますか。
「八田選手は寝技師でいい選手ですけど、自分の方が強いと信じています。次もKOするので楽しみにしていてください」
■Pancrase337対戦カード
<フェザー級KOP決定戦/5分5R>
亀井晨佑(日本)
新居すぐる(日本)
<ウェルター級/5分3R>
藤田大(日本)
住村竜市朗(日本)
<ストロー級/5分3R>
八田 亮(日本)
黒澤 亮平(日本)
<ウェルター級/5分3R>
押忍マン洸太(日本)
川中孝浩(日本)
<バンタム級/5分3R>
井村塁(日本)
河村泰博(日本)
<フェザー級/5分3R>
平田直樹(日本)
遠藤来生(日本)
<フライ級/5分3R>
秋葉太樹(日本)
ムハンマド・サロハイディノフ(タジキスタン)
<ライト級/5分3R>
余勇利(日本)
神谷大智(日本)
<バンタム級/5分3R>
山口怜臣(日本)
安藤武尊(日本)
<ライト級/5分3R>
松岡嵩志(日本)
葛西和希(日本)
<女子ストロー級/5分3R>
KAREN(日本)
高本千代(日本)
<バンタム級/5分3R>
矢澤諒(日本)
笹晋久(日本)
<フライ級/5分3R>
梅原規祥(日本)
饒平名知靖(日本)
<ウェルター級/5分3R>
佐藤生虎(日本)
渡邉ショーン(日本)
【写真】1991年生まれの32歳。雑賀ヤン坊達也、冨樫健一郎、松本光史、粕谷優介、岸本泰昭、横山恭司、牛久絢太郎、林源平、そして──チェ・ドゥホ。これだけの面々と戦ってきた(C)SHOJIRO KAMEIKE
24日(日)、東京都の立川ステージガーデンで開催されるPANCRASE337で、松岡嵩志が葛西和希と対戦する。
Text by Shojiro Kameike
松岡のプロデビューは2008年。MMAキャリアは14年間と、ベテランの域に達している。しかしその14年間は決して平坦なものではなかった。パンクラスのニューエイジ戦線からトップファイターとの対戦を経て、松岡が打撃主体からオールラウンドのMMAファイターへ進んできた道程を訊いた。
――MMAPLANETでは今回が初のインタビューとなりますが、どうしても松岡選手にお聞きしたいことがありました。雑賀ヤン坊達也戦が決まった際、プレスリリースで「格闘家の3大親方と言えば、藤野恵実、長南亮、そして松岡嵩志だ」と書かれていましたが……。
「アレですか(笑)。昔、専門学校に通っている頃に、あまり練習できていなくて太ってしまった時期がありまして。その時に北岡さんに『親方感が出ている』と言われて、親方という言葉が内輪で広まっていたんです」
――親方と呼ばれる職種でも何でもなかったのですね。
「それもよく言われました。『大工か何かやっているの?』って。僕としては藤野選手や長南さんと並べていただいて、嬉しかったです(笑)。でも藤野選手は僕のせいで巻き込まれていまい、すみません!」
――アハハハ、いきなり余談で失礼しました。まずは格闘技を始めたキッカケから教えていただけますか。
「僕たちは地上波で格闘技を視ていた世代で、中学校を卒業したら格闘技をやろうと考えていました。そんな時、たまたま町田へ遊びに行ったらU-FILE CAMPを見つけて。でも入会してからしばらくはキックボクシングしかやっていなくて、あまり寝技クラスには参加していませんでした」
――そこからパンクラスイズム横浜の所属になった経緯を教えてください。
「2011年ごろにU-FILE CAMP町田からキックボクシングのSTB Japanというジムに移って、ちょうどその頃にパンクラスに出させてもらえるようになりました。そのパンクラスで2015年3月に牛久絢太郎選手と対戦する前に、ロータス世田谷でプロ選手が集まって練習していることを、北岡さんのツイッターで知ったんです。北岡さんに『自分も参加させてもらっても良いでしょうか』と連絡して、そこから北岡さんには本当に良くしていただいています。
当時の僕は、どこにも所属していないフリーの状態で。ロータスの練習に参加し始めたあと、北岡さんからパンクラスイズム横浜が出来るという連絡をいただき、そこに入るしかないと思いました。もともと柔道整復師の資格を取るために専門学校に通おうと考えていたので、学校もパンクラスイズム横浜から近いところを選びました」
――ロータスでの練習に参加したいと連絡した時、すでに北岡選手とは面識があったのですか。
「いえ、なかったです(笑)」
――えっ……面識がない先輩ファイターに連絡するのも、なかなか勇気がいりますよね。
「いきなり連絡するのは失礼かと思いましたが、どうしても参加したくて……。ただ、当時の北岡さんは、傍から見ると本当に怖くて(笑)。『ロータスへ行くと練習で足を壊されちゃったりするのかな』と思いながら行きました。でもお会いすると本当に優しかったです。今でも怖いところはあるけど、あれだけしっかり怒ってくれる人とは、なかなか巡り会えないです。自分としては、ありがたいですね」
――ロータスの練習に参加するまでは打撃主体といいますか、キックボクシングで戦っていたわけですか。
「テイクダウンされなければ勝つ、というぐらいの気持ちで試合をしていました。とにかく組まれたら耐える、倒されたら背中を見せてでも立つという感じで。勝つ時はKO、寝技で一本を取るようなタイプではなかったです」
――当時は徐々に対戦相手のレベルが上がってきて、2015年から2016年にかけて、パンクラスの中でも次の時代を担う選手同士の戦いが繰り広げられていました。しかし松岡選手は2018年まで負けと勝ちを繰り返しており、当時はどのように感じていましたか。
「自分にとっては牛久選手に負けた時が、悪い転換期になったといいますか……。まさに今後上がっていく選手同士の対決だったんです。そこで牛久選手はすごく頑張って――技術的な部分以上に、自分が気持ちで負けたような試合でした。牛久戦以降の4年間は、『もう自分は上に行けないのか』と思って過ごしていました」
――……。
「その頃にはパンクラスイズム横浜に移って、一生懸命やっていました。でも、そこにビジョンがなかったです。ただスパーリングを頑張って試合に出る。その結果、勝つと負けるを繰り返すような時期でした。
実は2019年に入って、MMAを辞めようと考えたことがあったんです。2018年12月に金田一孝介選手とのランキング入りを賭けた試合で、すごい失神KO負けをして。そのあとに柔道整復師の試験があり、『もう柔道整復師の資格を取って普通に仕事をしていく。もうMMAは終わりだ』と思いました。でも国家資格を取得したあとに改めて考えた時、『ダメだ。まだ燃え尽きることができていない』と思って。MMAがなくなった自分の生活を想像できなかったです」
――1度辞めようと決めたからこそ、自分にとってMMAが必要だと気づくことができたのですね。
「そこから技術的な面でも変わってきて。金田一戦に続く平信一選手との試合を経て、組みが強くなったと明確にと思えるようになったのは岸本(泰昭)選手に勝ってからです。もともと技術的な部分では、下位の選手が相手なら勝負できていたかもしれないです。でも本番でその組みを試すのは怖くて。実際に試合で、グラップリングが強い岸本選手に勝つことができて、自信に繋がりました」
<この項、続く>
■Pancrase337対戦カード
<フェザー級KOP決定戦/5分5R>
亀井晨佑(日本)
新居すぐる(日本)
<ウェルター級/5分3R>
藤田大(日本)
住村竜市朗(日本)
<ストロー級/5分3R>
八田 亮(日本)
黒澤 亮平(日本)
<ウェルター級/5分3R>
押忍マン洸太(日本)
川中孝浩(日本)
<バンタム級/5分3R>
井村塁(日本)
河村泰博(日本)
<フェザー級/5分3R>
平田直樹(日本)
遠藤来生(日本)
<フライ級/5分3R>
秋葉太樹(日本)
ムハンマド・サロハイディノフ(タジキスタン)
<ライト級/5分3R>
余勇利(日本)
神谷大智(日本)
<バンタム級/5分3R>
山口怜臣(日本)
安藤武尊(日本)
<ライト級/5分3R>
松岡嵩志(日本)
葛西和希(日本)
<女子ストロー級/5分3R>
KAREN(日本)
高本千代(日本)
<バンタム級/5分3R>
矢澤諒(日本)
笹晋久(日本)
<フライ級/5分3R>
梅原規祥(日本)
饒平名知靖(日本)
<ウェルター級/5分3R>
佐藤生虎(日本)
渡邉ショーン(日本)
【写真】トータル一点突破の一戦、世界を目指す上で負けられない亀井だ(C)TAKUMI NAKAMURA
24日(日)、東京都の立川ステージガーデンで開催されるPANCRASE337。今大会のメインイベントではフェザー級KOP王座決定戦として、亀井晨佑が新居すぐると対戦する。
Text by Takumi Nakamura
亀井は昨年7月にフェザー級KOP暫定王座決定戦で透暉鷹に一本負け。今年4月にパン・ジェヒョクに判定勝利すると、透暉鷹の階級変更による王座返上で今回のチャンスが舞い込んだ。ファイトスタイルもキャラクターも正反対の新居との王座戦、また記者会見での「圧倒的実力至上主義」発言について訊いた。
──PANCRASE337で新居すぐる選手とフェザー級KOPを争う亀井晨佑選手です。4月のパン・ジェヒョク戦はスプリット判定での勝利でした。あの試合を振り返ってもらえますか。
「正直、もっときつい試合になるのかなと思ったんですけど、今思うと割と自分のやりたいようにできた試合でした。手応えはあったし、そこまできつい内容ではなかったなと思います」
──ジェヒョク選手は亀井選手が敗れている前王者の透暉鷹選手ともスプリット判定の接戦を演じている相手です。その相手を透暉鷹選手に敗れた直後の試合で指名したことが意外でした。かなりリスクのある試合だったと思います。
「僕としては透暉鷹選手と再戦したいという気持ちがあったし、ジェヒョク選手がどう見ても強いのは分かっていたんですけど、彼をクリアしないことには再戦はないと思っていました。あと自分とは相性的に勝ち目がなくはないなとも思ったんです」
──透暉鷹選手と比べると自分の方が相性がいいと。とはいえ試合前に不安になることはなかったですか。
「正直僕は試合前に『この選手に勝てるんのかな』って思うことはないんですけど、この時はそう思いましたね」
──実際にジェヒョク選手と拳を交えて、どんな場面でいけるという手応えがあったのですか。
「もっと圧力、プレッシャーがあると思ったんですけど、思ったより自分のジャブが刺さったんです。これなら相手が自分の間合いに入ってきても対応できるなという感じで。元々そういう試合になることを想定して練習していたんで、そこは対応することができました」
──その一戦を経て、新居選手と王座決定戦という形で試合が決まりました。
「最初に話を聞いた時は意外でしたね。チャンピオンの動向が分からなかったし、バンタム級に下げることも知らなかったので。それで『次は王座決定戦です。相手が新居選手です』と言われて『そこか!』」と思いました」
──対戦相手として新居選手はどんな印象がありますか。
「記者会見でも言ったように、対戦相手は僕のペースを崩すのが難しいと思うんですよ。でも今のランカーの中で唯一その可能性を持っているのは新居選手なのかなと思います。ハマったときは本当に強いですし、一発で試合をひっくり返せるタイプなので、ちょっと怖い選手ではあります」
──アベレージ的な部分ではなく一発勝負の試合だからこそ怖い相手だと思います。
「いざ試合するとなったら、バランスがいい選手よりも、新居選手のようなタイプは怖さがあります」
──ずばり新居選手の武器は右の強打とアームロックで、いい意味でバランスが悪い・強い部分が偏っているスタイルです。
「それは間違いないです。で、本人も言っているように分かっていてもかかるのが必殺技だし、実際にそれで勝ってきているわけじゃないですか。僕も手を取られたらおしまいだと思っているし、一回でも取らせないつもりで戦います」
――MMAにおけるバランスの良さで勝負する亀井選手とは真逆のスタイルですね。
「はい。でも相手が新居選手だからと言って特段やることは変わらないです。自分のスタイルはジャブを当てて自分の距離を取って……というもので、自分のペースを乱さずにやりたい。練習でも新居選手と背丈が似た相手と、自分の戦い方ができるような練習を続けてきました」
──またファイトスタイルも対照的ですが、キャラクターも対照的ですよね。新居選手は会見で「飲んで遊んでいてもチャンピオンになれる。それが若い選手に夢を与える」といった発言をしていたじゃないですか。亀井選手はあの発言を聞いて、どう思いましたか。
「何も感じなかったですよ。ただ『遊んでいても勝てることが凄い』と思っているなら、それはちょっと考えたが古臭いかなと思いました。ただ僕も正社員として働きながら試合をしているので、練習環境という意味ではあまり変わらないのかなと思いました(笑)」
――まさにお互いのファイトスタイルや格闘技への向き合い方がぶつかり合う試合かなと思います。
「本当に矛と盾みたいな感じですよね。新居選手は『触れば極められる』と言いますし、僕は僕で『やれるもんならやってみろ』なので」
──今回の試合に限らず、亀井選手の中で自分のファイトスタイルや戦い方が確立されてきたという手応えはありますか。
「ありますね。デビュー当初は倒して勝つイメージを持たれていたんですけど、試合の中で感覚的にポイントアウトのようなことができてきたというか。もちろん倒しに行ける場面では倒しに行くんですけど、試合の中でリスクを負う場面が少なくなったと思います」
──亀井選手は本格的にMMAを始めたのが高校卒業後で、決して年齢的に早い方ではないと思いますが、その分、デビュー以降の強くなるスピードが速いんじゃないかなと思ったんです。
「本当にそうですね。ここ2~3年でやっと自分の完成系が見えてきたのかなと思います。もっとやらなきゃいけないことはあるんですけど」
──亀井選手は柔道経験があるものの、MMAでは打撃中心のファイトスタイルですが、自然に打撃の方が得意になっていったのですか。
「柔道は高校3年間やったんですけど、全然強くもなかったですし、高校でちょっとやったぐらいなんです。打撃の方が上手くいったのは、単純に寝技より上達するスピードが早かったっていうのがあって。ジムに入った当初はプロになりたいとは思っていなくて、そうなると寝技より立ち技のほうが楽しくて、そっちに重点を置いたという感じです」
──透暉鷹戦は組み技・グラウンドでペースを握られて判定負けという結果でした。あの試合で自分が強化すべきところも分かったと思います。
「あれは僕の弱いところが露骨に出てたんで、それこそジムでの打撃と組み技の練習の比率を一時期は真逆にしたんです。8:2ぐらいの割合で柔術を多めにしたり、ロータスさんに行って組み技の練習をしたり、あの試合から練習のバランスは結構変わりましたね」
──色々なタイミングが重なっての王座決定戦ですが、再びベルトを獲るチャンスが来ました。それについてはどう感じていますか。
「日本でMMAをやっていて、ベルトを持っていない選手が世界で戦っていくのは、条件的に厳しいと思います。世界と戦うという意味ではベルトが最低限の交通手形になると思うので、絶対に欲しいです」
──その想いは透暉鷹戦と同じですか。
「いえ、あれから変わりました。情けない話ですけど、透暉鷹選手に負けて、より一層ベルトが欲しくなりましたし、自分がベルトに対してどんな想いを持っているかを再認識しました」
──先ほどベルトは世界で戦っていくための通行手形という言葉もありました。その目標に向かうためにも、ただ試合に勝つだけではなく、自分の可能性を見せられるような試合にしたいですか。
「世界と戦うためにベルトが必要とは言いましたが、実際ただ勝てばいいというものではないですし、そこは試合内容でも判断されると思っています。今回も勝つことには徹しますが、そのうえで倒せる方向に持っていきたいです」
──リスクを負う場面を減らしてフィニッシュすることが理想ですか。
「最近フィニッシュできていなかったので、勝つことは最低条件で、今言われたようによりいい勝ち方をするのが必要なのかなと思います」
──また試合中に興奮して叫ぶ亀井選手が見られそうですか。
「まあ状況によっては(笑)。あれは自分を鼓舞するあれでやっているんで、今回また叫ぶかもしれません」
──また記者会見でも質問がありましたが、24日はRIZINや修斗の興行があり、多くの試合が組まれています。そのなかで亀井選手は圧倒的実力至上主義を見せたいとコメントしていました。そこにはこれからもこだわっていきたいですか。
「はい。パンクラスがそういうイベントですし、もし一つでも実力主義ではないカードが組まれたら僕はガッカリします。僕はパンクラスの硬派なところに誇りを持っているので」
――パンクラスという舞台で、自分がやっている格闘技がこういうものだというのを見ている人たちに伝えたいですか。
「そうですね。自分の試合は勝っても負けても、刺さる人に刺さる試合をするので、それも含めてファンの人たちに見てもらいたいです」
■Pancrase337対戦カード
<フェザー級KOP決定戦/5分5R>
亀井晨佑(日本)
新居すぐる(日本)
<ウェルター級/5分3R>
藤田大(日本)
住村竜市朗(日本)
<ストロー級/5分3R>
八田 亮(日本)
黒澤 亮平(日本)
<ウェルター級/5分3R>
押忍マン洸太(日本)
川中孝浩(日本)
<バンタム級/5分3R>
井村塁(日本)
河村泰博(日本)
<フェザー級/5分3R>
平田直樹(日本)
遠藤来生(日本)
<フライ級/5分3R>
秋葉太樹(日本)
ムハンマド・サロハイディノフ(タジキスタン)
<ライト級/5分3R>
余勇利(日本)
神谷大智(日本)
<バンタム級/5分3R>
山口怜臣(日本)
安藤武尊(日本)
<ライト級/5分3R>
松岡嵩志(日本)
葛西和希(日本)
<女子ストロー級/5分3R>
KAREN(日本)
高本千代(日本)
<バンタム級/5分3R>
矢澤諒(日本)
笹晋久(日本)
<フライ級/5分3R>
梅原規祥(日本)
饒平名知靖(日本)
<ウェルター級/5分3R>
佐藤生虎(日本)
渡邉ショーン(日本)
【写真】押忍マン洸太戦で勝利を決めた直後の藤田。表情豊かな選手だ (C)MMAPLANET
24日(日)に立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase337「30周年記念大会」で、住村竜市朗と対戦する藤田大のインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike
インタビューを進めていくと、自信のない発言も出て来る藤田。しかしそれは、彼が自分の気持ちに素直な証拠だ。臆病な気持ちを隠さないからこそ、強くなれる――はず。周囲の声や協力を得て成長していく藤田の姿が明らかになる。
<藤田大インタビューPart.01はコチラから>
「もともとMMAをやる気は全然なかったです。柔道を諦めてからは柔術とグラップリングを頑張っていこうと思っていました。でもある日、鶴屋さんから『大阪にグラジエイターというMMA大会があって、出てみるか』と言われたんですよ。対戦相手の写真を見たらタトゥーがいっぱいだし、自分はMMAの練習はしたことがないし……もうガタガタ震えていました。その話が来てから打撃を練習し始めて」
――デビュー戦が決まるまでMMAの練習はしていなかったのですか!
「はい。中学生の頃に何回か練習したことがありますけど、打撃が痛くてすぐに辞めました(笑)。それでもデビュー戦が決まったのでMMAの練習をどうしようかと考えていたら、ジムの先輩の山本琢也さんが『練習相手になるよ』と言ってくれて。まず山本琢也さんが打撃を出して、僕がブロックしながら組みつく練習から始めたんです。組んで壁に押し付けてから倒すという」
――自分が打撃を身につける前に、まず打撃を防御しながら得意分野に持ち込むことを選んだわけですね。
「だって、いきなり打撃を身につけるのは無理っスよ。でもデビュー戦で勝てて本当に嬉しかったです。デビュー戦の自分と対戦してくれて、対戦相手の方にも感謝しています。その次は負けてしまいましたけど……」――デビュー2戦目となったスティーブン・ギレスピ戦はバギーチョークを極められてしまいましたが、それまでの展開は藤田選手がリードしていたと思います。
「テイクダウンからバック、RNCまで取りかけて、9-1でほぼ勝っていましたよね。でも最後に気持ちがガタガタになってしまったんです。僕は本戦が終わったあとの1試合目で、本戦のメインは中川皓貴選手がボディへの攻撃でKO負けしていたじゃないですか。その中川選手がお腹を抑えながら運ばれていくのを見たら、もう怖くて心もギュッと苦しくなっちゃって。
それで自分は試合が始まったら『すぐ倒そう。すぐ極めよう』としすぎて、緊張もあって疲れてしまいました。息が上がった状態で肩固めを極めようとしたところに、相手が足を掛けてきて、バギーチョークを極められたという流れですね。あの負けは結構ハートに突き刺さりました。でも親父も一緒に泣いてくれて。『ずっと落ち込んでいても仕方ないから、とにかく大阪から千葉に戻ってすぐ練習しよう』と。
対戦相手のギレスピ選手には感謝しています。あの負けがあったから『もっと寝技で強くならないといけない』っていう気持ちを持つことができたし、今も世界中の寝技の技術を調べ続けていますから。あの敗北が僕を強くしてくれて、パンクラスで押忍マン洸太選手に勝つことができました。いつかギレスピ選手と対戦したいです。次は負けない自信がありますよ」
――寝技で強くなろうという気持ちは分かります。しかしMMAである以上、打撃を強くしようとは考えていないのですか。「打撃はディフェンスできれば良いか、と考えているぐらいです。ウェルター級は相手もデカいし、パワーがありますからね。組みに行った時にカウンターで一発もらうと、それでKOされる可能性があるので。下手に自分からパンチを打っても、ガラ空きになったところに打ち込まれるだけですからね」
――体格面でいえば、藤田選手の身長だとライト級やフェザー級に落とそうとは考えなかったのでしょうか。
「落とそうかなと思ったことはあります。でも如何せん、筋肉が付きすぎて体重を落としづらいんですよ。あと階級を落として勝つというのは――なんだか苦手です。あとはアイスと竜田揚げが大好きなので(笑)」
――アイスと竜田揚げを食べるために、ウェルター級で戦うということですか。
「そういうことです!」
――いや、そういうことではないでしょう(笑)。
「アハハハ。自分の適性階級は自分や練習仲間しか分からないと思うんですよ。周りが『お前はこの階級のほうが動きは良い』と言ってくれたりとか。パンクラスのウェルター級王者になった林源平選手もミドル級やライト級でも戦った結果、ウェルター級が適正だということに辿り着いたわけじゃないですか。自分もやってみないと分からないです。あとギレスピ戦で負けてから階級を下げたら、ウェルター級から逃げたように思われるのが嫌で」
――次の対戦相手である住村選手は、国内ウェルター級の中でも屈指の体躯を誇ります。
「住村さんは怖いっす。あの人に勝てる気がしないんですよね」
――えっ!?
「だって住村さんは戦績も凄いじゃないですか。柔術ではオープンクラスで大きな相手と対戦してきたけど、MMAでは初めてですね。次の試合はMMAをやっていくうえで大事な試合だと思っています。でも……いやぁ、自信ないっス」
――試合前に、そこまで弱気になるのは……。
「僕は、はっきり言って試合前はチキンなんですよ。メチャクチャ緊張します。柔術の試合でもガチガチに硬い状態で試合をしたことが何度もありました。気持ちが弱いから、打撃があっても相手に立ち向かっていけるようにMMAを始めたという理由もあって。
自分は今ランキング2位ですけど、まだタイトルマッチまでも遠いと思っています。住村さんに勝っても、まだ次がタイトルマッチじゃないと考えていて。住村さんに勝ってランキングをキープして、自分の中で気持ちを固めて――さらに打撃も鍛えてからベルトに挑みたいです」
――分かりました。では最後に、次の試合への意気込みを……弱気にならずに。
「はい! 押忍マン洸太選手に勝ったあと、会場でいろんな方に声をかけていただいたんですよ。『良い試合だったね』、『強かったね』とか。自分なんて、まだまだの存在ですけど、そういう声が凄く嬉しかったです。頑張りますので、これからも応援よろしくお願いします!」
■Pancrase337対戦カード
<フェザー級KOP決定戦/5分3R>
亀井晨佑(日本)
新居すぐる(日本)
<ストロー級/5分3R>
八田 亮(日本)
黒澤 亮平(日本)
<ウェルター級/5分3R>
藤田大(日本)
住村竜市朗(日本)
<フェザー級/5分3R>
平田直樹(日本)
遠藤来生(日本)
<フライ級/5分3R>
秋葉太樹(日本)
ムハンマド・サロハイディノフ(タジキスタン)
<バンタム級/5分3R>
井村塁(日本)
河村泰博(日本)
<ライト級/5分3R>
松岡嵩志(日本)
葛西和希(日本)
<バンタム級/5分3R>
矢澤諒(日本)
笹晋久(日本)
<ウェルター級/5分3R>
押忍マン洸太(日本)
川中 孝浩(日本)
<女子ストロー級/5分3R>
KAREN(日本)
高本千代(日本)
<ライト級/5分3R>
余勇利(日本)
神谷大智(日本)
<ウェルター級/5分3R>
佐藤生虎(日本)
渡邉 ショーン(日本)
<フライ級/5分3R>
梅原規祥(日本)
饒平名知靖(日本)
<バンタム級/5分3R>
山口怜臣(日本)
安藤武尊(日本)
【写真】既に自らの城を持つ藤田大。醸し出す空気感が異質であることは間違いない (C)SHOJIRO KAMEIKE
24日(日)に立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase337「30周年記念大会」で藤田大が住村竜市朗と対戦する。
Text by Shojiro Kameike
藤田は昨年のJBJJF全日本オープンで茶帯ミドル級とオープンクラスを制し、10月にグラジエーターでプロデビュー。圧倒的な組みの強さで一本勝ちしたものの、続く今年1月はスティーブン・ギレスピにバギーチョークで敗れていた。しかしパンクラス初参戦となった6月の押忍マン洸太を下し、いきなりランキング入りして今回の住村戦を迎える。試合以外のところでも、そのキャラが注目され始めている藤田に初インタビューを試みたところ、単なるキャラではなく全てがリアルな格闘家だった。
――本日はリモート取材ですが、背景に映っているのは……パラエストラ柏ではないですよね。どちらにいらっしゃるのですか。
「父と一緒に建てた道場です。1年ぐらい前に創って、まだ会員さんを募集しているわけではないんですけど。自分の練習場であったり、誰か一緒に練習したいと言われたら受け入れるような感じで」
――その年齢とキャリアで自分の城を持つことは凄いです。
「いえ、自分は全然で――父が格闘技に理解を示してくれて、応援してくれるので感謝しかないです。一般的には、子供であっても『道場を創るなら自分で金を稼げ』って言うと思うんですよ。でも父が自分に対して、それだけ金と時間を掛けてくれて、凄くありがたいです」
――藤井選手が格闘技をやることに理解を示してくれている。ということは、お父さんの影響で藤井選手が格闘技を始めたのではないのですか。
「はい、5歳の時に柔道を始めました。当時は暴れん坊将軍で……」
――暴れん坊でなく、暴れん坊将軍ですか?
「いろんなところを走り回るような、ヤンチャな男の子でした(笑)。それで一度大きな怪我をした時に、診てくれたのが柔道をやっている方で。自分に『柔道をやってみたらどうか』と薦めてくれて、僕も近くにあった町道場へ通うようになりました。きっと親も僕に手を焼いていたでしょうし、『やらせてみようか』と考えたと思うんですよね」
――アハハハ。5歳から始めた柔道の実績を教えてください。
「柔道の実績は……言えるようなものは無いです。高校生の頃まで柔道をやっていましたが、ちょうど高校に入ってからコロナ禍があったりして。自分の中では、柔道は『やり切れずに終わった』という気持ちが強いです。柔道が楽しかったのは間違いないんですよ。でも柔術もやっていましたし」
――柔術を始めたのは何歳の時ですか。
「柔術は小学4年生の時からパラエストラCNWに通っていました。部活だけでなく町道場に通っている頃でも、柔術をやっていることに関して、あまり良い顔はされなかったですね。柔術に対してというより、寝技ばかりやることに対して。なぜ寝技をやるようになって柔術も始めたかというと、僕は背が小さいじゃないですか。体格で劣っていると、立ち技では勝てないんですよ。体格で負けているうえ、技術もない、スタミナもない」
――……。
「基本的な柔道の投げ技もできなかったんです。そこで見つけたのが寝技でした。始めてみると寝技が楽しくて、柔術のことも知ってパラエストラCNWにも通うようにもなりました。ただ、周りからは『お前は寝技ばかりやっていて――』というようなことも言われたりして。さらに柔道が、どんどん立ち技中心のルールになっていきましたよね。そこで自分の心も折れてしまったんです」
――そのような事情があったのですね。一方で小学4年生から柔術を習い始めるのは、同世代の中で早いほうではなかったですか。
「いえいえ、全然! パラエストラCNWだと、小4で始めるのは遅いほうでした。僕が入った頃、周りはすでに何年も柔術をやっている子たちばかりでしたよ。それを見て、『自分ももっと早く始めていれば良かった』と思いました。あっ! ちょっと自慢話みたいになっちゃうんですけど、良いですか」
――はい(笑)。ぜひお願いします。
「小学5年生の時に、柔道の大会で古賀稔彦先生に『君は日本一の寝技師になれ』と言ってもらえたんです」
――えっ! それは嬉しいですね。
「ちょうど柔術を始めた後で。大会中に僕が古賀先生に『握手してください!』と寄っていったんです。そうしたら古賀先生が僕の試合を見てくれていて、『君は寝技が強い。もっと寝技を伸ばしていったほうが良い』と言われました。それが嬉しくて、自分は柔術も柔道の寝技も頑張ろうと誓ったんですよ」
――なるほど。柔道部に所属しながら柔術の大会に出ることも認められていたのですね。
「いや、あの、うん……」
――聞かないほうが良いですか(笑)。
「大丈夫です! 一応、部に許可をもらって柔術の大会に出ていました。あまり良い顔はされませんでしたが(苦笑)」
――結果、柔道ではなく柔術を続けることを選んだ理由は何だったのですか。
「寝技でやってきたい、という気持ちが強かったです。実は大学からも誘いはあったんですよ。でも勉強が得意ではなく――中学の時なんて5教科中、4教科で0点を取っていたぐらいでした。国語なんかテストの解答欄に下ネタを書きまくり、あとで職員室に呼び出されました。『お前、勉強する気あるのか!?』って(笑)」
――アハハハ! これ以上訊くと危険そうなので、止めておきます。柔道の練習と柔術の練習を並行するのは大変ではなかったのでしょうか。1日のスケジュールは……。
「まず7時から8時まで柔道部の朝練があります。授業が終わって15時か16時ぐらいから、また柔道部の練習が始まって。部活が終わると家に帰ってから、すぐ柔術の練習に向かっていました。だいたい22時ぐらいまで練習していましたね。柔術のほうは小6ぐらいになると、キッズクラスだけでは物足りなくなっていたんですよ。だから大人のクラスにも参加していました。大人のクラスではボッコボコにされましたけど、楽しかったですね。
自分が柔術で強くなれたのも、その時に大人のクラスに参加できていたからだと思います。どうしても子供だと力は弱いじゃないですか。力が強い大人と練習することで自分も力の使い方とか、いろんなことを覚えることができました」
<この項、続く>
<フェザー級KOP決定戦/5分3R>
亀井晨佑(日本)
新居すぐる(日本)
<ストロー級/5分3R>
八田 亮(日本)
黒澤 亮平(日本)
<ウェルター級/5分3R>
藤田大(日本)
住村竜市朗(日本)
<フェザー級/5分3R>
平田直樹(日本)
遠藤来生(日本)
<フライ級/5分3R>
秋葉太樹(日本)
ムハンマド・サロハイディノフ(タジキスタン)
<バンタム級/5分3R>
井村塁(日本)
河村泰博(日本)
<ライト級/5分3R>
松岡嵩志(日本)
葛西和希(日本)
<バンタム級/5分3R>
矢澤諒(日本)
笹晋久(日本)
<ウェルター級/5分3R>
押忍マン洸太(日本)
川中 孝浩(日本)
<女子ストロー級/5分3R>
KAREN(日本)
高本千代(日本)
<ライト級/5分3R>
余勇利(日本)
神谷大智(日本)
<ウェルター級/5分3R>
佐藤生虎(日本)
渡邉 ショーン(日本)
<フライ級/5分3R>
梅原規祥(日本)
饒平名知靖(日本)
<バンタム級/5分3R>
山口怜臣(日本)
安藤武尊(日本)
【写真】春日井たけしとの寒天ミットのために、HEAT24中村も練習場所になっている山口 (C)MMAPLANET
24日(日)に立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase337「30周年記念大会」にて、山口怜臣がプロデビュー=安藤武尊戦を迎える。
Text by Takumi Nakamura
山口はIMMAF(International MMA Federation)世界選手権制覇からプロを目指し、タイガームエタイとALIVEを拠点に活動。今年2月の世界大会では怪我の影響もあり、1回戦を突破するものの、2回戦を棄権するという結果に終わった。この大会を終えて、山口はパンクラス30周年記念大会でのプロデビューを果たす。J-MMA界で唯一無二のアマチュア経験を積んできた山口にプロデビューを決意した理由、そして今後のMMAファイターとしてのキャリア設計について聞いた。
――24日のPancrase337=30周年記念大会でプロデビュー戦を控える山口怜臣選手です。デビュー戦に向けた今の練習状況から聞かせてください。
「前回の試合は2月のIMMAF世界大会になるんですけど、大会前のキャンプで怪我をしていて、3月いっぱいは治療の時間に充てていました。それから7月末までプーケットのタイガ―ムエタイでトレーニングして、そこでは各分野、ボクシング、ムエタイ、レスリングなどパーツのトレーニングをしっかりして、技術を分厚くしてきたイメージです。
8月からはALIVEに帰ってきて、昔からよく知っている仲間たちとスパーリングしつつ、鈴木社長にはグラフを作ってもらいつつ体重管理や体調管理もしてもらっています。ここまでコンディションを大きく崩すこともなく順調にきていますね」
――山口選手はタイガームエタイとALIVEが練習場所になっていますが、どのぐらいのバランスで練習の比率を考えているのですか。
「基本的な考え方として、普段はタイで技術を磨いて、試合前に日本で調整するという形です。タイにいたまま試合に出たこともあるのですが、タイガームエタイは選手が多いので、どうしてもコーチの指導が分散してしまう部分があるんです。日本のように細かい部分にまで気にかけてもらって、試合まで持っていくことはどうしても難しいです」
――ALIVEの鈴木陽一代表がやっているようなコンディション管理ができない部分はありますよね。
「現にタイで調整していて怪我や感染症でコンディションを作れないときがあったので。今は慣れ親しんだ、気心がしれた仲間たちと対人練習をして、昔から僕を見てくれている(鈴木)社長やコーチ陣に仕上げてもらうのがしっくり来ていますね」
――2月のIMMAF世界大会は1回戦を突破したものの、2回戦を怪我で棄権という結果に終わりました。どういう状況だったのですか。
「大会の3週間前に怪我をしてしまい、かなり練習も制限された状況で試合をしたんです。初日(1回戦)は何とか勝てたのですが、2日目は厳しいと判断して棄権することにしました」
――そのタイミングでプロデビューを決めた理由は?
「ずっとIMMAFにはこだわってきやってきたのですが、今後のキャリアを考えた時に僕はUFCでチャンピオンになることが一つの目標で。そこから逆算したとき、僕ももう23歳なので、しっかりプロでレコードを重ねていく段階だなと思いました。また、タイガームエタイの仲間、それこそUFCやONEで活躍している選手と接していると、しっかりファイトマネーやスポンサーで資金を潤沢にしたうえでいいコーチを雇ったり、身体のケアに費やしたり…そういうことをやっているんですね。
僕もそうした本当の意味でのプロフェッショナルな生活をしたいと思い、ここからはファイトマネーで稼いでいきたいと思いました」
――では2023年にプロデビューするというのはもともとプランにあったことなのですね。
「はい。ある程度この時期にプロデビューしようと思っていました」
――アマチュアはトーナメント制で、大会前に対戦相手が分からないまま、時に1日で複数回、IMMAFでは連日のように試合を戦わなければいけないということもあります。逆にプロは事前に対戦相手が決まっていて、試合当日は1試合戦うだけです。同じMMAでもプロとアマチュアでは違うものですか。
「本当に別物だと思います。アマチュアは金メダル以外はすべて負け。5回戦って5勝して初めて勝ち、4勝1敗だったら負けなんです。しかも試合するために海外で10日間ほど拘束されるし、ある程度慣れていたとはいえナーバスでした。IMMAFにおいて日本人は発展途上で、最小限のチーム編成で試合をしなければいけない。それこそコロナ禍で試合したときは両親と僕だけで試合したこともあるし、そういう環境で戦うことには緊張感がありました。
あとプロとアマの大きな違いとしては対戦相手の部分ですね。プロは対戦相手の情報が事前に分かるし、相手に似たタイプの選手を練習相手に選ぶこともできる。相手の特徴を考えて練習できることは大きいです」
――アマチュア時代は対戦相手の対策ができないなか、どのようなことを意識して練習していたのですか。
「日頃から自分の穴をなくすための練習ですね。もし相手がストライカーなら寝かせなければいけないし、下からのアタックが強い相手だったら寝技の対処ができないと極められる。それは試合まで分からないので、そういう部分での地力の底上げはアマチュアキャリアが長いからこそできたことだと思います、今回に関していえば、タイガームエタイでぶ厚くした技術でどう相手をハメるのかを考えています」
――アマチュアで長くキャリアを積んできた強みはMMAにおける地力や対応力になるのですか。
「一番はそこですね。トーナメントで勝つためにどんな相手が来てもいいように総合力を上げる。その部分への意識は高まりました」
――間違いなくプロとは違う経験値を積むことができているようですね。
「プロでも色々なことはあると思うんですけど、10日間海外にいて、60カ国以上の国の選手が一箇所に集まるMMAの大会はIMMAF以外でなかなかないじゃないですか。そういう国際感覚はIMMAFで身についたと思います。僕もタイでは英語を使うんですけど、IMMAFが英語を学ぶきっかけになったし、格闘技以外の感覚的な部分は大きな学びになりました」
――それだけ違う国の選手が集まると文化背景も違いますし、細かいトラブルや事件は起きなかったですか。
「……おおらかさが大事だなと思いました(笑)」
――MMAでは色々なキャリアの積み方があると思います。山口選手はUFCでチャンピオンになるための近道や方法論がアマチュア=IMMAFだったのですか。
「そうですね。でも僕がMMAを始めた頃から考えていたことではなくて、マーシャルワールド杯2017JMMAFトーナメントで準優勝して、優勝者が外国籍の選手だったので、僕が繰り上げで豪州の大会(2018年のIMMAFオセアニア・オープン選手権大会)に出る切符を掴んだんです。社長も『経験だから行ってみよう!』と背中を押してくれて、結果的に金メダルを獲ることができました。それが自信になれた部分もありますし、そこで初めてUFCを意識したことは覚えています」
――ジュニア時代にIMMAFの世界大会で対戦したムハマド・モカエフがUFCで活躍しています。彼の活躍はどう捉えていますか。
「妬ましい気持ちがないと言ったら嘘になりますけど、各々選手は人生設計ややりたいことが違うと思うんです。最終的なゴールがUFCだとしても。だから一概に自分と(モカエフを)比較しても意味がないと思います。ファンのみなさんがそこを比較して面白く見てもらう分には構わないですが、僕は少なくとも10年以上はこの競技をやっていくつもりですし、誰と比較して、ではなく自分を高めていく方向に集中しています」
――ファイターとしての人生設計という部分で、プロデビュー後はどのようなキャリアを積んでいきたいと思っていますか。
「僕が考えるMMAファイターは、まずしっかりファイトマネーで生活できること。あとはシンプルに僕はMMAが好きで、格闘技歴でいえば5歳から空手をやっているので、自分がやってきたものをどこまで追求していけるのか。それが毎日楽しいです。後付けになりますけど家族、社長、地元の仲間、コーチ……本当に僕は恵まれた環境で格闘技をやっているので、そういう人たちにも喜んでもらいたいと思います」
――山口選手はもともと極真会館出身なんですよね。極真を始めたきっかけは何だったのですか。
「お父さんが格闘技の大ファンで、小さい頃からテレビでUFCやDREAMを見ていたんです、具体的なキッカケは覚えてないですけど、自然な流れで空手を始めました。そんなお父さんですけど、そこまでガツガツしたタイプじゃなくて『やるならとことんやれよ!』と応援してくれるタイプですね」
――ALIVEに入会したのもお父さんの影響ですか。
「そうですね。通いやすさで言えば、もっと近いところにジムもあったんですけど、お父さんが日沖さんの活躍を知っていて『MMAをやるならALIVEだろ』ということでALIVEを勧められました」
――対戦相手の安藤武尊選手はレスリングベース、山口選手と同じく今回がプロデビュー戦の選手です。
「それこそ僕の場合はお父さんが対戦相手のことをものすごく調べてくれて。こんなこというとドキッとするかもしれないですが、相手のSNSの発言も全てチェックしています(笑)。僕は動いている動画はもちろんSNSの投稿一つとっても選手の性格がにじみ出ていて、それは試合にも影響すると思うので、僕はそういう感覚は大事にしています」
――他の選手とは違うキャリアを積んできたという部分で「山口怜臣、どんなもんだ?」という見方もされると思います。
「試合内容で言うと、全局面で技術の差があると、相手は段々とやることがなくなっていくじゃないですか。アマチュアと違って試合時間が5分3Rあるんで、その時間を使って技術の分厚さを見せたいですね。自分はアマチュアを通じて総合力を磨いてきたので、5分3Rあった方が技術の差を出せると思うんですよ。5分3Rの自分が楽しみです」
――注目のプロデビュー戦、どのような試合を見せたいですか。
「僕は『アマチュアでやってきた部分がどうなんだ?』という見方をされると思いますが、僕自身それ以上にUFCやもっと大きなゴールを見てやっています。逆にそこを見て欲しいというか。『この先コイツは伸びるぞ』とか、MMAファイターとしての将来性を見せられたらと思います」
■Pancrase337対戦カード
<フェザー級KOP決定戦/5分3R>
亀井晨佑(日本)
新居すぐる(南アフリカ)
<ストロー級/5分3R>
八田 亮(日本)
黒澤 亮平(日本)
<ウェルター級/5分3R>
藤田大(日本)
住村竜市朗(日本)
<フェザー級/5分3R>
平田直樹(日本)
遠藤来生(日本)
<フライ級/5分3R>
秋葉太樹(日本)
ムハンマド・サロハイディノフ(タジキスタン)
<バンタム級/5分3R>
井村塁(日本)
河村泰博(南アフリカ)
<ライト級/5分3R>
松岡嵩志(日本)
葛西和希(日本)
<バンタム級/5分3R>
矢澤諒(日本)
笹晋久(日本)
<ウェルター級/5分3R>
押忍マン洸太(日本)
川中 孝浩(日本)
<女子ストロー級/5分3R>
KAREN(日本)
高本千代(日本)
<ライト級/5分3R>
余勇利(日本)
神谷大智(日本)
<ウェルター級/5分3R>
佐藤生虎(日本)
渡邉 ショーン(日本)
<フライ級/5分3R>
梅原規祥(日本)
饒平名知靖(日本)
<バンタム級/5分3R>
山口怜臣(日本)
安藤武尊(日本)
【写真】藤田は初参戦のパンクラスでもキャラ全開 (C)MMAPLANET
<ウェルター級/5分3R>
藤田大(日本)
Def.2R0分29秒 by アンクルロック
押忍マン洸太(日本)
身長で大きく上回る押忍マンが、いきなり右ヒザで飛び込んだ。下がってダブルレッグを仕掛けた藤田、押忍マンはスプロールするも藤田が組んでキムラを狙いながら引き込む。藤田は下か腕十字へ。腕を抜いた押忍マンに対して横三角に切り替えるも、押忍マンが藤田の顔面にヒザと蹴りを浴びせて試合は中断される。グラウンド状態での頭部への蹴りという反則に、1点減点となった。
ケージ中央で横三角に入った状態から再開される。再開直後、頭を抜いた押忍マンの右腕を離さず、藤田が腕十字へ。さらに足を狙ったが押忍マンが足を抜いて立ち上がる。スタンドで押忍マンを追いかける藤田は、押忍マンのヒザ蹴りをキャッチするようにダブルレッグでテイクダウンを奪った。
右腕を枕にして、左腕を差し上げた藤田がパスしてサイドへ。押忍マンがエビで逃げるも藤田がバックに回り、パンチで削る。バックマウントから押忍マンの体を伸ばしながらRNCを狙うも、しっかりと伸ばし切ることができない。再びサイドに戻る藤田、回転する押忍マンからまたもバックマウントを奪取する。パンチで削りながらRNCを仕掛ける藤田はマウントに移行し、肩固めへ。しかし極めきることはできなかった。
初回は押忍マンの1点減点もあり、ジャッジ3者とも藤田に10-9をつけた。
2R、藤田が体を振って中に入るチャンスをうかがう。プレッシャーをかけてくる押忍マンに対し、今成ロールで飛び込んだ。そして強引に左足を抱えてヒザ十字、そしてアンクルに切り替えて押忍マンからタップを奪った。
試合後「ヒザで記憶が飛んでいるんですけど、俺、勝ったんですか?」とヒザを食らった記憶はある様子の藤田。パンクラス初参戦でランカーの押忍マンを下した。