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【ONE FN22】ムンジアル&ADCC世界王者の強さを発揮。わずか35秒、ビアンカが市川をRNCで絞め落とす

【写真】ビアンカのテイクダウンディフェンス、バックテイクからRNCのセットアップまで--すべてが速かった(C)ONE

<サブミッショングラップリング132ポンド契約/10分1R>
ビアンカ・バシリオ(タイ)
Def.0分35秒 by RNC
市川奈々美(日本)

ビアンカが頭を触ると、市川から組みに行った。しかしビアンカは首を取り、ガブってからバックへ。すぐさま左腕を首に回してから、バックマウントを整える。市川の体を伸ばし、RNCで絞め上げると市川はタップ直後に落ちた。

秒殺勝利でムンジアル&ADCC世界王者の実力を示したビアンカは、サブミッション・グラップリングの戦いとともにMMAへのチャレンジも語った。


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【ONE FN22】ビアンカ・バシリオと戦うタイ在住柔術家、市川奈々美「サブオンリーのほうが柔道に近い」

【写真】すでに計量とハイドレーションテストをクリアしている市川。決戦は明日だ(C)SHOJIRO KAMEIKE

4日(土・現地時間)、タイはバンコクのルンピニースタジアムで開催されるONE FN22で、市川奈々美がビアンカ・バシリオとのサブミッション・グラップリング戦に挑む。
Text by Shojiro Kameike

3歳から柔道を始めた市川は強化選手になり、2010年には東アジア選手権で優勝するほどの柔道家であった。しかし彼女は「柔道はそれほど好きではなかった。辞めた時にホッとした」と語る。そんな市川は柔術を始め、現在はタイで仕事を持ちながら、バンコクのアラテ柔術で柔術の練習や指導を行っている。知らないことだらけのタイ在住の日本人黒帯柔術家、市川奈々美のMMAPLANET初インタビューです。


――MMAPLANETでは初のインタビューとなりますが、他のメディアにも登場されていることは少ないですよね。

「まず拠点がタイで、柔術家としてそれほど試合にも出ていないこと。今回このような大会に出させていただくのですが、もともとプロ選手でもなく格闘技専業というわけではないので……。普段はフルタイムで仕事をしていて、仕事が終わったあとにジムでクラスを受け持っていたり、柔道をやっていたので柔道クラスでも指導しています」

――個人的なことを言えば、クインテットに出場された2019年頃は格闘技業界から離れており……失礼ながら市川選手のお名前を聞いたのが、彩綺選手のインタビュー時でした。

「彩綺ちゃんですね! 先日の試合は、たまたま日本に一時帰国していて、会場で観ました。彼女は全く何も知らない状態から――それこそ普通の女子という状態から柔術を始めたんです。もちろん本人の頑張りが一番ですし、今は日本でしっかりとMMAの寝技を習って練習していますが、ベースを教えたのが私なんだと思ったら、すごく嬉しいです」

――市川選手のベースは柔道で、強化選手でもあったそうですね。市川選手が1988年2月生まれということは、88年8月生まれの渡辺華奈選手とも強化選手として重なっていた時期があったのでしょうか。

「そうですね、彼女は1学年下で。私は同期で言うと松本薫(ロンドン五輪、女子57キロ級金メダリスト)がいて、いつも一緒に練習していました」

――市川選手は過去のインタビューで「柔道は好きではなかった。柔道を辞める時にホッとした」という旨の発言をされていたのが印象に残っています。

「アハハハ。そういうことを言うと、嫌な想いをする人もいるかもしれないけど――自分の正直な感想です。父が柔道の指導者で、私も3歳から柔道を始めました。今となってはジムで柔道を教えていて楽しいですし、柔道をやっていて良かったなと思っています。でも当時を振り返ると楽しくなかったし、早く柔道を辞めたいと毎日考えていましたね」

――柔道を辞めることになったキッカケは、勤務していた学校を退職された時ですよね。その前に柔道から離れようとは考えなかったのですか。

「正直言うと、辞められない環境でした(苦笑)。試合に出ることに対しても積極的ではなく、どちらかと言えば『出ざるをえない』という状況にいて。だから勝つとホッとしていたんです。『これで怒られない』って。そういう環境がプレッシャーにもなっていましたね」

――……。

「もう一つ、3歳の時から柔道だけをやってきたので『辞めても柔道以外に何があるんだろう?』という怖さもありました」

――柔道を辞めた自分を想像できなかったのでしょうか。

「まさに、そういうことです。かといって試合に出ても『勝って嬉しい』ではなくて。勝ってホッとする。そんな状況でしたから、勝負には向いていなかったと思います」

――同期の松本薫選手は「野獣」と呼ばれており、それほど勝負に賭けている気持ちはテレビの画面越しでも伝わってきました。だからこそ金メダルを獲得できたのでしょう。そんな松本選手を見ていた市川選手にとっては……。

「私にとって松本薫という選手は特別な存在です。遠征でも合宿でも松本選手と一緒になることが多くて……、彼女を見ていると『これほどまで柔道に賭けていないと上には行けないのか』と思いました。彼女ほど『絶対に勝ちたい』と思ったり、勝利に対するハングリー精神とか……『私とは違うんだな』って」

――柔道はナショナル競技で、競技人口も多く、上に行けば行くほど現実を突きつけられることも多いでしょう。

「結局、柔道を辞めても――3歳から23歳まで、20年間ずっと体を動かしていたわけじゃないですか。だから何も運動しない生活というものに慣れなくて(笑)。ダイエットも含めてスポーツジムに通ったり、たまに『柔道を教えてほしい』と言われて子供たちに柔道を指導することはありました。

そんな頃に柔術もやっている格闘技ジムに行く機会があって。最初は『絶対に道衣は着たくない』と思い、頑なにキックボクシングをやっていたんですけど(笑)。するとギは着ないけどグラップリングはやってみようかと思って。すると自然とギもやるようになりました」

――道衣にはトラウマのようなものを抱えていたものの、本格的に柔術を始めることになったのですか。

「なぜ本格的に柔術をやるようになったか――柔道の時って怒られてばかりだったんですよ。『ダメだ、お前は弱い』とか。強化選手になっても下っ端で、ずっと怒られていました。だけど柔術を始めたら、いきなり『君、すごく強いね』って。褒められたんですね。20年間、柔道ではそんな経験なかったです。『こんなに褒めてくれるなんて楽しい!』と思って。

あと私は柔道時代も寝技が得意だったんです。そんなに立ち技がキレるわけではなくて。だから柔術にも入りやすかったですね」

――柔道時代の試合映像も拝見しましたが、投げというよりも崩してバックを狙いに行く動きでした。全ての試合がそうではないと思いますが。

「私としても、投げたいのは投げたいんですよ。でも上のレベルに行くと、そんなに投げることができなくなる。すると自分の最善策として『寝技を強化したほうが良いな』と思って、寝技を強化していました」

――柔道時代に寝技が得意であれば、最初のうちは圧倒的に強いと思います。

「まず体が出来上がっている選手は多いですからね。たとえば柔術初日の私と、柔術を2~3年やっている方が組んでも、私のほうが体の使い方は分かっていますし。さらに力もスピードも私のほうが上で」

――MMA、グラップリング、そして柔術でもどこかの段階までは柔道時代の貯金で勝てる。しかしその競技で上を目指すかぎり、どこかの段階で壁にぶつかり勝てなくなる時があります。市川選手の場合、その壁にはぶつかりましたか。

「これも言ったら怒られるかもしれないけど、私は『柔道の人と思われたくない』という気持ちが強かったんですよ」

――というと?

「柔術では、なるべく柔道らしさを出さないように練習していました。白帯から始めて、もちろん白帯のなかでは強いです。でもそのなかで柔道の技は出さないようにしていて(笑)。できるだけ立ち技はやらずに、寝技もできるだけ柔術の技をやろうと練習していましたね。

たとえば柔道だと、いきなり引き込んでボトムになるのは反則になります。でも寝技になってからボトムに入るのはOKなんです。私は柔道時代からその動きが好きで。当時から柔道と柔術の中間のようなことをやっていたとは思います」

――そうなると、よほど詳しくなければ「この寝技の入り方は柔道だ!」とは気づかないでしょうね(笑)。

「アハハハ、そうなんですよ」

――そこからご結婚された方と一緒にタイへ移住されたのですね。

「はい。……ただ、もう離婚していまして(苦笑)。タイへ移住後に相手は仕事の都合で日本に帰りたい、私はタイで仕事を始めていてビザも取って。私としては、ようやくタイでの仕事に慣れて来たし、契約もあって。相手は日本、私はタイと別々の生活を始めましたが、ちょうどコロナ禍で行き来もできなくなり――という感じですね」

――その際に「柔術をやるなら日本で」とは思わなかったのですか。

「私はタイで柔術をやるほうが好きですね。やはり日本て、良い意味でも悪い意味でもキッチリしているし、真面目だなと思います。タイは良い意味で緩いんですよ」

――いわゆる「マイペンライ」の気質ですね。

市川が所属するアラテBJJ。高層ビルの上層階にある(C)MMAPLANET

「そうです(笑)。あとは、いろんな国の人たちがいることは大きいですね。今のジムでも日本人もいえばタイ人もいるし、ヨーロッパの方々もいる。さらに様々な国の方が仕事でタイに来て、ビジターで練習して帰国するとか。

あとは私も一緒に練習している人たちを沸かせるために、柔道の投げ技を見せたりするんですよ。日本では、それを見ると『危ない!』と思う方もいます。でもタイだとウォーッ! ナナミすごいな!!』と喜んでくれる人も多くて。

日本は静かに自分の技術を磨くという雰囲気もあって、それはそれで良いことだと思います。一方でタイは、みんなで楽しみながら強くなるという感覚が強い。私にとっては、そういう雰囲気の中にいるほうが楽しいだろうなって思います」

――そんななか、ONEでビアンカ・バシリオと対戦することが決定しました。

「最初に聞いた時は、『私が出て良いのかな?』と思いました。それほどギの試合に出ているわけではないし、ノーギの練習もそれほど多いわけではないので……。それと試合をするからには、それだけの覚悟が必要だと思うんです。試合が決まってから当日まで、死に物狂いで練習しないといけない。でも『大丈夫かなぁ』と悩んでいたら、チームメイトから『なぜ出ないの?』と言われました。私も『一生に一度の経験かもしれない』と思って」

――とはいえ、プロ初戦の相手がビアンカとは……。今年3月に山田海南江選手と対戦したマイッサ・バストスと共に、現在の柔術界で随一の実績を誇る世界王者です。

「ビアンカの場合、ADCC世界大会でも優勝しているじゃないですか。ノーギでも抜け目がなさそうですよね。私自身も相手どうこうより、ノーギに切り替える必要がありました」

――市川選手もノーギの試合には出ていながら、多くはIBJJFルールかADCCルールだと思います。ONEグラップリングのようなサブオンリーの経験というと……。

「クインテットだけですね。でも、これは矛盾するかもしれませんが――サブオンリーのほうが柔道に近い。柔術でもポイントを意識して試合をしているわけではなく、サブオンリーでも問題はないのかなと思っています。ONEの判定基準もサブミッションを取りかけたほうが勝っているので、そこは意識して練習していますね」

――「好きではなかった」と言えども、ご自身のルーツである柔道と繋がっていくのも不思議ですね。

「そう思います。『やっぱり私から柔道が抜けることはないんだな』って。あの頃は柔道が好きじゃなかったけど、今は柔道にも――柔道を始めさせてくれた父にも感謝しています。柔術でもグラップリングでも、柔道の技術が生きる部分は多くて。チームメイトにも『柔道を生かしていけ』と言われていますし」

――なるほど。5月11日にタイで開催されるADCC予選には出ないのでしょうか。

「チームメイトからは『出たほうが良い』と言われています。ADCCはスタンドレスリングが重要なルールですし、私の柔道も生かすことができるからと言われて。とにかく今は目の前の試合に集中しているので、そのあとに考えます。この1カ月でノーギの技術も伸びてきました。ビアンカ戦でどこまでできるか――全ては次の試合次第だと思っています」

■放送予定
5月4日(土・日本時間)
午前8時45分~U-NEXT

■ ONE FN22対戦カード

<ONEムエタイ女子世界ストロー級王座統一戦/3分5R>
[王者]スミラ・サンデル(スウェーデン)
[暫定王者] ナタリア・ディアチコワ(ロシア)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
アクバル・アブデュラエフ(キルギス)
ハリル・アミール(トルコ)

<ムエタイ・ライト級/3分3R>
シンサムット・クリンミー(タイ)
ドミトリー・メンシコフ(ロシア)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
モーリス・アベビ(スイス)
ジャン・リーポン(中国)

<キックボクシング・バンタム級/3分3R>
秋元皓貴(日本)
ウェイ・ルイ(中国)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
リース・マクラーレン(豪州)
フー・ヤン(中国)

<キック・ライト級/3分3R>
ルンラーウィー・シッソンピーノン(タイ)
ボグダン・シュマロフ(ブルガリア)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
澤田千優(日本)
ノエル・グランジャン(タイ)

<ムエタイ・ストロー級/3分3R>
トンプーンPK・センチャイ(タイ)
ザガリア・ジャマリ(モロッコ)

<サブミッショングラップリング132ポンド契約/10分1R>
市川奈々美(日本)
ビアンカ・バシリオ(タイ)

<ムエタイ・フライ級/3分3R>
ショーン・クリマコ(米国)
ホシュエ・クルス(メキシコ)

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