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Interview Special UFC ESPN09 ケイシー・ケニー ブログ ルイス・スモルカ 岡田遼

【Special】修斗チャンプ岡田遼が斬る、UFCプレリミ戦─01─ケイシー・ケニー✖ルイス・スモルカ

【写真】修斗暫定世界バンタム級チャンピオン岡田遼が受けたケイシー・ケニー✖スモルカ戦の衝撃とは?(C)Zuffa/UFC

今回より、正式スタートする新企画=修斗暫定世界バンタム級チャンピオン岡田遼が斬る、UFCプレリミマッチ。

第1回は5月30日(土)のUFC ESPN09で行われたバンタム級戦=ケイシー・ケニー✖ルイス・スモルカ戦について話してもらった。

タイトル戦を控えた朝、岡田の目にケイシー・ケニーはどのように映ったのか。

<修斗チャンプ岡田遼が斬る、UFCプレリミマッチ─序章─はコチラから>


──ケイシー・ケニーのどこに興奮させられたのでしょうか。

「僕、ATTでコーチに口を酸っぱくして言われていたのが、『チェンジ・レベル』、『チェンジ・アングル』、『チェンジ・スピード』の3つだったんです。高さ、角度を変えて緩急をつける。これをずっと言われていて、日本に戻ってきてからも気を付けていたんですけど、だからって簡単にモノにできることではないです。

それがケイシー・ケニーを見て、『これだ。コイツ、全部チェンジしてるじゃん!!』って思ったんです。緩急がついていて、角度も変える。で、高さも違いをつけて戦っていました。正直、これまでケイシー・ケニーのことを知らなくて、漫然と眺めていたら、『なんだ、この選手は?』ってなったんです。

しかも流れるように、ごく自然にできている。『これ、マイク・ブラウンに言われたわ』って(笑)。答を見ることができ、凄く興奮しましたね」

──UFCでの2試合はテイクダウン中心で戦っていたのが、LFA時代に戻ったような試合でした。

「ローとミドルを散らして、どっちも重い。レスラーのスタンスじゃないですよね、あれだけ重い蹴りを使えるなんて。パンチも下がりながら当てていて、メチャクチャ上手い。ちょっと衝撃的でしたね。最後も左から右の返しを決めて、そこからスモルカが、テイクダウンに逃げて」

──一旦切ってから、ギロチンに入りました。あれでスモルカのスクランブルを止めることができるのかと。

「普通はそのままアームインで入るのが定石で。受け止めてからハイエルボーを選択するというのは、僕の常識にはなかったです。いやぁ強いし、美しいとすら思いました」

──ダメージがあったのは確かですが、普通にアームインよりも念を押すかのようにハイエルボーに入ったのかと。確実に上を取るために。

「スモルカが逃げるために背中をつけて、隅返しみたいに返そうとしたけど、それもしっかりと潰してハーフでトップを取って極め切りました。あれで極めてしまうんですよねぇ」

──アームインで頭を抜かれると、下になることもありますしね。

「自分の試合がこれからあるので、『また、ちゃんと後で視よう』って思いました。凄い試合を見てしまったというのが正直なところでしたね……『うわぁ』って。で、会場ですれ違った時にUFCのプレリミと比べるからと言われて、食いついて話してしまったんです(笑)」

──食い気味だったから、驚きました(笑)。

「でも、試合後の共同インタビューで『ケイシー・ケニーと戦ったらどう?』って聞かれて……(苦笑)。情けない話だけど、『今やったら、絶対に勝てない』と思ったんです……もうギクッとして」

──いやぁ、申し訳ない質問でした。では、続いてブランドン・ロイヴァル✖ティム・エリオット戦をお願いします。

<この項、続く>

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Interview Shooto2020#03 Special ブログ 倉本一真 岡田遼 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:5月─その参─岡田遼✖倉本一真「素養はクラスBだけど……」

【写真】素質はクラスB、その岡田がUFCもあるという青木の真意は(C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ4月の一番、第3弾は31日に開催されたShooto2020#03から岡田遼✖倉本一真の一戦を語らおう。


──5月の青木真也が選ぶ、この一番。3試合目はどの試合になるのでしょうか。

「岡田遼✖倉本一真ですね。岡田選手は5R制だから、あの戦いができました。それが一番大きいと思います。僕がマラット・ガフロフとやった時の組み方でした。主導権を握って攻めさせる。それを岡田選手がかしこくやりましたね。

倉本選手陣営をくさすことになってしまうかもしれないですが、あの試合運びは完全に作戦ミスです。」

──青木選手が倉本選手のチームなら、どのような作戦を立てましたか。

「ゆっくり見ろと僕なら言います。できる限り力を使わず、テイクダウン。あとはボディクラッチして岡田選手の動きに合わせておけば良いって。泳げってことですね。10-9.8で初回から3Rを取りましょうと言いますね」

──倉本選手はバックと比較して、トップの時の圧力がないように見えました。

「それはサブミッションですね。サブミッションがないから、ゴールがない。だから岡田選手としては、ずっとバックを取られても、グルグルと付き合ってたまにギロチンを狙う。そういう戦いができますよね。倉本選手は終わらせることができないから。

あのギロチンも岡田選手が上手いわけじゃない。あれだけ抱き着いてドミネイトしていると、まぁギロチンは食らいますよ。MMAとして完成度が低い倉本選手が、終らせることができたとすれば、それはテイクダウンのフェイントからぶん殴ってKO。それしか今はないと思います」

──今はそれだけしかできない選手が、ここからMMAを突き詰めていくとUFCで勝てるようにならないでしょうか。

「う~ん、身体的素質が高い選手ならUFCにはいくらでもいますよ。倉本選手はいうても、まだ7試合とか8試合しかやっていない。それで修斗の世界王座に来ること自体が、人材難なんです。だから岡田選手も倉本選手も、この試合でUFCが見えてくるということではないと思います。

皆が世界、世界って言っている時に……まぁ、その世界ってどこなんだよっていうなかで、修斗王座を狙う。そこに愛ある物語があったのが良かったですね、岡田選手は。他と差別化もできて」

──そして、UFCで戦いたいと口にしました。

「良い話ですよ。ATTに行って、そういう気持ちになるって」

──UFCに行きたい、その気持ちは青木選手も持っていましたよね。

「僕も思っていますよ。あのう……何て言うんだろうな、次なる格闘技の人生のなかで機会があって、もう一度北米で何かできれば楽しい……豊かになれるなって思います。僕はUFCに出ている選手へのリスペクトはメチャクチャありますからね。

岡田選手がUFCを目指したいっていうのは良い話ですね。だってさぁ、策士じゃん?」

──アハハハ。

「そもそも……こんなこといったらアレですけど素質的にはクラスBですよ。素養としては。それをアレだけ考えて、整理整頓できて、自分がどこにフォーカスして努力すれば良いのか正解を見出している」

──最高の誉め言葉ではないですか!!

「だから、僕はあると思いますよ。岡田選手のUFCは。UFCのチャンピオンになるとかっていうことは、現実離れしています。でも、UFCに加入して勝ったり負けたりすることは、彼の思考能力からすればあると思います。

やりくり上手じゃないですか。倉本選手との試合で、露骨にのんびりしようぜってできるほど性格は悪いし。1Rと2Rはお前にやるけど、俺は5Rという試合タイムをフルに利用するからよって、戦えるんですよ」

──それって図太いということですよね。

「図太いです。頭が良いし、腹黒い。図太さでいえば、鶴屋門下ですね。倉本選手の方が絶対に良い人ですよ(笑)。なんかKIDさんっぽさがあって。でも策士が勝っちゃうんですよ、良い人に」

──自分は一つ、岡田選手が凄いなと思ったことがあるんです。当日は2階の記者席から写真を撮っていたのですが、試合後にそれに気づいて2階に視線を送ってきました。正直、後楽園やディファのバルコニーで写真を撮影していて、そこに気付いた選手は過去に1人としていなかったです。

「それは凄いッスね。ちゃんと周囲が見えている。自分がコントロールできているんですね」

──それに受験勉強ができる人って、コツコツできる根性があると思いませんか。

「あぁ、ハイ、ハイ、ハイ。だって意味ないですからね。そのゲームを越える以外に。要はセンター試験を越えるって、部活動を頑張るとかよりも、根性ありますよ。だって甲子園に出るとか、サッカーで国立だっていう風に注目を集めるわけでもなく、別に大学に受かっても有名になれるわけでもない。凡人としての強さですね。それがヤツにはあります」

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Interview J-CAGE Shooto UFC UFC ESPN09 クリス・グティエレス ブログ 岡田遼

【Special】修斗チャンプ岡田遼が斬る、UFCプレリミマッチ─序章─「叶うことなら」

【写真】5教科7科目をこなすチャンピオンが、UFCのプレリミについてどのようにメスを入れるのか?! 写真はクリス・グティエレス✖ヴィンス・モラレス (C)MMAPLANET

5月31日(日)に会場非公開のABEMAテレビマッチとして開催されたProfessional Shooto2020 #03で修斗暫定世界バンタム級チャンピオンになった岡田遼。

試合後の共同会見でMMAPLANETから『今日UFCのプレリミで勝利した同じバンタム級のケイシー・ケニーと戦うと、どうなると思いますか』という質問をし、新王者が「いや、あの試合を見て──自分が試合をして、俺はまだまだなって。前に高島さんが『修斗のベルトを獲ったからなんや?』って言っていたのが分かります(笑)」というやり取りがあったのだが、これは試合前に岡田とUFCのプレリミの話をする機会があったことで、行った質問であった。

そして、ならば修斗のチャンピオンにUFCのプレリミ、そして軽量級に特化した──いわば、誰も触らない試合について語ってもらうという企画がスタートした。

まずは序章として、新チャンピオンの現在の心境とこれからについて尋ねた。


──チャンピオンになって3日が過ぎました。改めてどのような気持ちですか。

「試合後は凄くハイテンションになっていましたが、だいぶ落ち着いてきました。でも嬉しい気持ちはそのままです。『良い試合だった』という風に試合内容を誉められたことも嬉しかったです。

ジムの仲間たちもほぼ全員が試合を視聴していてくれて、試合後はLINEが300件ぐらいたまっていました。でも、もう今日からパーソナル・トレーニングの指導も再開しましたし、日常が再開しています」

──修斗でチャンピオンになった。これから先はどのように見ていますか。

「倉本選手との試合は、僕がこれからを考えると一つのバロメーターになると思っていました。彼には申し訳ないですが、倉本選手に苦戦してダメダメな試合をするようだったら、僕は世界では通用しない。そういう風に感じていたので、ひとまず自分のなかでは合格点を挙げられるぐらいにはクリアできた試合になったので……、これから上を目指したいと発言する資格を得ることができたのかなと」

──修斗内でいえば佐藤将光選手が正規王者です。統一戦を視野に入れていますか。

「これは言って良いのか……決まれば戦います。でも佐藤選手からすればONEでビビアーノ・フェルナンデスの首を狙っている。そこで岡田遼が出てきても、なぜ戦う必要があるのかって正直思うはずです。僕が逆の立場ならそう思いますし」

──ただしONEもスケジュール再開の正式発表はまだないです。そのなかで佐藤選手には日本で試合をするという選択があるのか。

「う~ん、もうそこは僕には分からないですよね。僕に関していえば今まで通りの世の中になるなら、やっぱり出たいです」

──あのう……多くの選手が、そこで固有名詞を出さないケースが多い。そういう抽象的な言い方をするのですよね。

「ハッキリ言えと?(笑)。 ハイ。UFCに行きたいです。叶うモノならUFCに行きたい」

──ダハハハ。今回、実は試合前に会場の通路ですれ違った時に自分が軽い気持ちで『今日のUFCのプレリミであった軽量級の試合と比べさせてもらうので』って話すと、岡田選手が滅茶苦茶食いついてきて、凄く驚かされたんです。なぜ、夜にタイトル戦がある選手がUFCをプレリミから見ているんだと、本当に思いました(笑)。

「アハハハハ。逆に試合があるから、プレリミの最初の3試合を視ていたんです。コロナ感染が始まり、こういう世界になってから単純に、僕はUFCに感謝しています。今、UFCがMMAをやってくれていることに、すごく有難みを感じるようになっちゃたんです。

正直、これまでそんな風に思っていなかったです。でも、今やってくれることは本当に有難くて。MMAを視ることって当たり前じゃない──そういう世界になったじゃないですか。

それを認識してからは、毎大会見ています。まぁ自分の試合の前に、他の大会を視るなんてことは今まではなかったです。でも今回は、試合に行く準備を始める前にプレリミを見て『スゲェなっ!』て興奮してしまって。なんかパワーもらえたなっていう気持ちだったんです。それで廊下ですれ違った時にUFCの話題になって、夢中になって話してしまったんです(笑)」

(C)Zuffa/UFC

──なるほど、そういうことだったのですね。

「1試合目と2試合目がバンタム級で、最初の試合からえげつかなかったですよね。

クリス・グティエレスが、左右のローで勝つという。もう凄かったというしかないです。でも2試合目のケイシー・ケニーと3試合目のブランドン・ロイヴァン、この2人の試合はさらに凄まじくて」

──まさかタイトル戦を控えた選手がそのような心境とは思えなかったのでチャンピオンになった岡田選手に、その2試合について寸評をもらいたいと思ってインタビューをお願いしました。

「ハイ。本当に凄い試合でしたね。ケイシー・ケニーには、試合前なの興奮させられましたよ(笑)」

<この項、続く>

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Other MMA Result SASUKE Shooto2020#03 ブログ 世羅智茂 倉本一真 岡田遼 岩本健汰 杉本恵 清水清隆 石井逸人 西川大和 黒部三奈

【Shooto2020#03 】試合結果 暫定世界バンタム級チャンピオン岡田遼──ケージの中央で愛を叫ぶ

【写真】これぞ5RのMMAという戦いをし、2RKO勝ちで環太平洋に続き、暫定ながら世界バンタム級のベルトを巻いた岡田遼──チョット悪い目つき(C)MMAPLANET

5月31日(日)、Shooto2020#03が会場非公開で開催された。

メインで5教科7科目をマスターしたMMAファイター=岡田遼が、一芸に秀でいた倉本一真からKO勝ちし世界暫定バンタム級王座を獲得し、修斗への愛をケージ内で叫んだ。

注目のAOKI PRJECT=グラップリングマッチ=岩本健汰✖世羅智茂は時間切れのドローに。修斗女子スーパーアトム級王座決定T準決勝は黒部三奈と杉本恵が勝ち上がり、決勝で対戦することなった。

Shooto2020#03
<修斗暫定世界バンタム級王座決定戦/5分5R>
○岡田遼(日本)2R3分02秒
KO
詳細はコチラ
×倉本一真(日本)
<ライト級/5分3R>
○SASUKE(日本)3R
判定
詳細はコチラ
×西浦ウィッキー聡生(日本)
<グラップリング72キロ契約/10分1R>
△世羅智茂(日本)Draw
詳細はコチラ
△岩本健汰(日本)
<バンタム級/5分3R>
○清水清隆(日本)2R4分34秒
KO
詳細はコチラ
×小堀貴広(日本)
<修斗女子スーパーアトム級王座決定T準決勝/5分3R>
○黒部三奈(日本)3R1分54秒
TKO
詳細はコチラ
×大島沙緒里(日本)
<修斗女子スーパーアトム級王座決定T準決勝>
○杉本恵(日本2R3分32秒
RNC
詳細はコチラ
×中村未来(日本)
<フェザー級/5分3R>
○石井逸人(日本)3R
判定
詳細はコチラ
×齋藤翼(日本)
<ライト級/5分2R>
○西川大和(日本)2R
判定
詳細はコチラ
×木下タケアキ(日本)


             

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Interview J-CAGE Shooto2020#03 ブログ 倉本一真 岡田遼

【Shooto2020#03】新修斗世界暫定バンタム級チャンピオン岡田遼、試合後の会見──「感無量です!!」

【写真】さすがにこの瞬間にはグッとした。そして会見場は新チャンピオンが何を言っても許される──幸福感と達成感に満ち満ちていた(C)MMAPLANET

5月31日(日)に会場非公開のABEMAテレビマッチとして開催されたProfessional Shooto2020 #03。

同大会のメインで岡田遼が倉本一真を破り、修斗暫定世界バンタム級王座に就いた。一大学生がパラエストラ千葉ネットワークの門をくぐり12年、念願の世界のベルトを巻いた岡田はケージの中で修斗への想いを口にし、2メートルのソーシャルディスタンスが取られた試合後の会見でも王者になったテンションのまま共同会見に臨んだ。


──ベルトを巻いた気持ちを教えてください。

「長年の夢だったので、感無量です。言葉になりません。嬉しいです。めっちゃ嬉しいです」

──あのマイクは何日前ぐらいから考えていたのですか(笑)。

「アレは試合が終わってから、即興です……と言わせてください(笑)」

──試合前にトイレで練習している声がしていたとか……。

「アッハハハハ。緊張して、嗚咽していただけです(笑)」

──バックを取られそうなとき、ウィザーや頭を抱えて戦っていた。あの時はどのような精神状態でしたか。

「やっぱり凄い組み力でビックリしました。米国でも強いレスラーとやってきたけど、凄い圧力でした。そこは想定していたつもりなのですが、思っていた以上の組み力で化け物でしたね」

──セコンドの鶴屋さんからは『投げられて良いから』という指示がありました。

「実は作戦の一つで。投げられるのを嫌がっていて投げられると大ダメージですけど、ある程度分かっていて自分からちょっと行っちゃえば、そっちの方がダメージは少ないという練習はしていました。

投げられないことは大切ですが、もし形を作られると自分から投げられようと思っていました。鶴屋さんからあの指示があったことは、『あっ、チョット危ないな』というところだったと思います。だから、そこは頭に入れてこのまま作られたら、自分から投げられようと思っていました。でも、ギリギリのところで防ぐことができましたね」

(会見の横を通りかけた)青木真也 チャンピオンだったね。

「ありがとうございます!!」

青木 コメントで出したんですけど、チャンピオンってメインを締められることだから。チャンピオンだなって。

──バックを取られるかどうかの壁際の攻防のとき、自分か倉本選手かどちらが疲れるかと感じていましたか。

「正直、1Rと2Rはバックを許してコントロールされても良いと思っていました。あの時は僕のスタミナをロスしないことだけ考えていました。倉本選手は凄く力を使ってハァハァ言っているのが分かってので、無理に力を使った態勢を変えるよりもこのままで相手が疲れてくれれば良いなと思っていました。あえてチョット、あの態勢は『これで良いかな』と」

──行けると思った瞬間は?

「ギロチンチョークは完全に入っていました」

──力を使い過ぎたかと思いました。

「それは俺も思いました。疲れたかな?って。だから下で暫らく休んだんです」

──倉本選手のトップのプレッシャーは?

「ガードにいるときは全然大丈夫でした。バックと斜め後ろ、サイドバックにいるときは凄く強いので、ポジションによって圧力が違いましたね。袈裟固めに取られた時、返すことができましたし。袈裟固めとかは、まだちょっと教えてあげようかなって(笑)」

──あの形は師匠・鶴屋さんの首投げから必殺技の……。

「Vクロスですね。僕は鶴屋さんの袈裟固めを食らっているから、あの袈裟固めは倉本選手も鶴屋さんの指導を受けた方が良いです(笑)」

鶴屋浩 全日本3連覇だよ。何言ってんの(笑)。

「実際、あそこで返せたので」

──倉本選手はMMAファイターとして完成度が低いだけ、まだまだポテンシャルが高いと思います。これからは一緒に日本を引っ張っていくためにも、倉本選手はMMAファイターとしてどこを磨いていけば良いと思いますか。

「凄いポテンシャルです。UFCで勝っていくのなら、僕じゃなくて彼だと思います。でもグレコで3連覇して強いという想いはあるのでしょうが、もう少しMMAを……年下が偉そうなこと言えないですけど、もう少しMMAを覚えないとなって感じでした。それでもパンチとバックのポジションは本当に凄かったです」

──無観客での試合の印象は?

「いつも応援していただいて凄く有難いですけど、大歓声でセコンドの声が全然聞こえないんですよ。でも今日は無観客なので全部、鶴屋さんの声が聞こえました。セコンドの声がずっと聞こえて試合ができたのはキャリアで初めてでした。

僕は無観客を気にすることは何もなかったです。試合に関して言えば、冷静に指示が聞けて良かった。指示が聞こえていなかったから、劣性な場面が多かったのでちょっとパニックになってしまっていたかもしれないです」

──これからどんなチャンピオンになりたいですか。

「強く恰好良い、修斗のチャンピオンになりたいです。

──水を差すようですが(笑)、今日UFCのプレリミで勝利した同じバンタム級のケイシー・ケニーと戦うと、どうなると思いますか。

「いや、あの試合を見て──自分が試合をして、俺はまだまだなって。前に高島さんが『修斗のベルトを獲ったからなんや?』って言っていたのが分かります(笑)」

──それをここで言うというのが、腹黒さです(笑)。

「アハハハハ」

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J-CAGE Report Shooto2020#03 ブログ 倉本一真 岡田遼

【Shooto2020#03】岡田、KO勝利で暫定世界王座&環太平洋王座の二冠達成!「俺は修斗を愛しています」

<修斗暫定世界バンタム級王座決定戦/5分5R>
岡田遼(日本)
Def.2R3分2秒 by KO
倉本一真(日本)

いきなり倉本が組み付いてテイクダウンを奪う。岡田は半身で金網に身体を預けてトップポジションを許さない。ここからバックを狙う倉本に対し、岡田は正対しながらフロントチョークへ。かなり深く入っていたものの倉本は何とか頭を抜いてトップポジションをキープする。倉本はパスガードして袈裟固めへ。岡田は倉本の脇をくぐってバックを狙いつつ立ち上がる。スタンドに戻ると岡田はジャブとロー、そして右ストレートを狙う。倉本もバックブローやバックキック、左フックを打ち込む。

2R、倉本が左フックから右、下がる岡田はテイクダウンを狙う。試合がスタンドに戻ると岡田は左ミドルと右ローを蹴り、倉本は前に出て右フックを打つ。距離を詰める倉本はヒザ蹴りと右アッパー、岡田の後ろについてバックコントロールする。正対した岡田は倉本のバックブローを空振りさせて右ストレート。これを効かせると倉本のタックルをつぶしてパンチを打ち込む。何とか立ち上がる倉本だったが、最後は岡田が右ストレートから左フックを打ち抜いて倉本をKOし、暫定王座に就いた。

試合後、岡田は師である鶴屋浩への感謝を述べたあと「修斗バンタム級は激戦区と言われています。いろんな化け物がいるけど、俺には勝てなかった。その理由をオンラインレッスンします。彼らより俺の方が修斗を愛しているから!」と修斗愛を叫んだ。

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J-CAGE News Shooto2020#03 ブログ 倉本一真 岡田遼

【Shooto2020#03】メインの暫定バンタム級王座決定戦の計量終了 岡田遼61.2キロ✖倉本一真61.1キロ

30日(土)、明日31日(日)に会場非公開でABEMAテレビマッチとして開催されるShooto2020#03のメインで組まれた修斗暫定世界バンタム級王座決定戦=岡田遼✖倉本一真の計量が行われた。

この1戦以外の出場選手は、通常階級より1クラス重い階級で戦い、当日計量が密を避け、試合順に指定の時間に行われることになっている。

その一方で、タイトル戦は従来の階級を用いられ前日計量としたうえで、コロナウィルス感染拡大の状況を鑑み、両選手の移動を最小限に留めるために岡田はパラエストラ柏、倉本は修斗ジム東京で別々に計量は取り行われている。両所を回線でつなぎ、計量結果を同席した双方のマネージャーが動画で確認、修斗ジム東京には修斗コミッション、パラエストラ千葉ではサステインの北森代紀氏が立会うという形が取られた。

■計量結果
<修斗暫定世界バンタム級王座決定戦/5分5R>
岡田遼:61.2キロ
倉本一真:61.1キロ

なお明日の大会当日はマスコミ1社1人、2階席でマスク着用の上、ソーシャルディスタンスをとっての取材に限られており、当然会場入りの際には検温がなされる。またケージサイド回りのスチール撮影はオフィシャル1人に限定され、会場では2時間にわたりに消毒がなされ、イベント開催前に改めてケージ回りを消毒、さらに試合の合間にケージ内で7度の消毒が行われる模様だ。

これも日本版コロナの時代のMMA大会開催──イベントを行う裏で感染リスク対して、最善を尽くすことが命題となっている。

※今大会出場選手のインタビューは以下リンクから。

岡田遼インタビュー
倉本一真インタビュー
石井逸人インタビュー
世羅智茂インタビュー
岩本健汰インタビュー

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Interview J-CAGE Shooto2020#03 ブログ 倉本一真 岡田遼

【Shooto2020#03】キャリア2年半で修斗の挑戦へ。岡田遼戦を控えた倉本一真「学校とMMAは違いますよ」

【写真】 無敗、絶対の自信があって然り(C)KEISUKE TAKAZAWA/MMAPLANET

31日(日)に会場非公開のABEMAテレビマッチとして開催されるProfessional Shooto2020 Vol.3 で、倉本一真が岡田遼と修斗暫定世界バンタム級王座決定戦を戦う。

グレコローマンレスリング日本代表から、修斗へ。プロデビューは2017年12月、つまり2年半で修斗の頂点を狙う倉本は、岡田の「MMAは5教科7科目」発言を一笑に付した。


──8日後に岡田選手と世界バンタム級王座決定戦が迫ってきました。今回の試合は新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言がなされたなかで調整が必要になりました。

「最初にこの試合があると聞いたときは、まだ世の中はコロナ、コロナってなっていなかったので、いつもと変わりなく調整していました。もともと去年の根津さんとの試合で怪我をして、練習が思い切りできるようになったが1月の終わりごろからなので、ちょうどそのタイミングで今回の試合にむけて、練習はしていました。

ただ、コロナ問題が大きくなってからは一般の会員さんはジムに来られなくなったので。それでもジムのプロの人間には練習を手伝ってもらってきましたし、これまでと比較すると練習量は減りましたけど、やれることはやってきました。公園を走ったり、1人でもできることはあるし、調整不足とかは全く思っていないです」

──話に出た根津戦に勝利して、次が世界戦だという心構えはありましたか。

「チャンピオンは佐藤将光選手なのですが、いきなりやらせてもらえないのは理解していました。僕の上には環太平洋王者の岡田君がいたから、順番抜かしはないやろうと。それなら岡田君が挑戦して勝った方がとやるんかなぁとか、僕が岡田君に勝って佐藤選手に挑戦する方が早いかなって思っていました。

僕的には3月か4月に試合がしたかったですけど、こういう状況ですし、しかも怪我もあったから……まぁ5月でエェかと」

──では岡田選手の印象を教えてください。

「岡田君は誰もが思うはずですが、何でもできる選手……何でも無難にできる選手だと思っています」

──その岡田選手はMMAPLANETのインタビューで、倉本選手は3教科だけだと自分より絶対に強い。でもMMAは5教科7科目なので、自分とは差があるという発言をしました。

「読みました、それ(笑)。勉強に例えること自体が、僕には意味が分からないです。何が言いたいんやろうかって(笑)。引き出しの数がどうこうって言うていたそうやし。でも国立大学がどうだとか、5教科7科目って……MMAは混ぜくちゃになっているし、例えになっていないやろうって。学校とMMAは違いますよ。絶対的に例えが間違っている。

勉強とMMAは違うし。MMAは入試じゃないから。単純にそれは例えが間違っていますっていう話です。それって、僕がジャーマンしかできないってイメージなんでしょうし。そう思ってくれている方が良いです。僕ももうすぐMMAを始めて3年ですけど、根津さんとの試合が終わってからも成長していますし、あの試合とは違う試合が絶対にできます。これまでの僕の試合を見て、そういう風に思っているんだったら痛い目に合いますよ」

──バックスープレックスがない倉本一真の強さというのは?

「別にジャーマンをやろうと思ってやっているんじゃなくて、試合の流れで使っているだけなので。ジャーマンじゃなくても、ナンボでも投げ技を持っています。やっぱり僕は相手を浮かして落とすことは、得意技ではあるので。それは決してジャーマンだけでなく、誰よりも強みで出せるときは出します」

──浮かして落とす。どのようなバリエーションがあるのか、個人的に楽しみです。

「結構、ありますよ(笑)」

──バックスープレックスでなく、カレリンも見てみたいですね、MMAで。

「俵返しですか(笑)。カレリンは半端ないです。持ち上げると、全部ひっくり返しますからね。まぁ、僕も組めばなんでもできます」

──つまり組むまでの過程で、根津戦からどれだけ成長しているのか。そこが鍵になります。

「組まないと勝てないのかってなると、別にそうじゃないように練習はしています。スタンドの打撃でも、やりあえるよう練習していますし、寝技もやっています。

根津さんの試合は、下手くそのくせに遠い距離からテイクダウンを狙って失敗して、良い勉強させてもらいました。無暗やたらと組みに行っても……。僕はフリーもやっていたんですけど、ダブルレッグとかシングルで勝ったことないんです」

──フリーでの主武器は何だったのですか。

「組まれたら潰して、投げて勝っていました。高校の時は全国で優勝しているんですけど、自分からテイクダウンに行くことがなくて……」

──あぁ、それはMMAで米国のレスラーが勝つスタイルでもありますよね。受けの強さがあるので、ジャブだけで勝てるとか。

「パンチが当たる距離は、組める距離です。それに僕に組まれたくないからって、岡田君はグルグル回っていても勝てないですよ。それに根津さんと試合して、止まっていたら蹴られるし、殴られるってことは学びました。こっちが狙い過ぎると、食らいます。ああいう打撃の距離を取らせないで、殴られないで戦おうと思います。貰いません……デキる限り。それが僕の距離であり、間合です」

──ところで5分✖5Rは初めてですね。

「まぁ、そこまでいかないと思います。そんなに時間を掛けずにKOします。何でKOするかは分からないですけど、スタンドの打撃か、ジャーマンなのか。一本かもしれないです。何で終わらせるか分からないですけど、自分の体が勝手に動くと思います。判定なんて面白くないんで、フィニッシュします。ちゃんと勝って、次にデカいところへ行きたいので」

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【Shooto2020#03】暫定バンタム級王座決定戦で倉本一真と対戦、岡田遼─02─「MMAは5教科7科目」

【写真】ATTで積んだものとは別に、彼が修斗を始めてから12年をブル蹴る試合になる (C)MMAPLANET

31日(日)に会場非公開のABEMAテレビマッチとして開催されるProfessional Shooto2020 Vol.3 。同大会のメインで倉本一真と暫定世界バンタム級王座を賭けて戦う岡田遼インタビュー後編。

ATTでの練習成果を感じる、特殊な状況下での準備期間を経て、岡田は倉本との対戦にどのような想いでいるのかを訊いた。

<岡田遼インタビューPart.01はコチラから>


──それがタイトルの重みですか。

「僕は試合があるけど、試合の予定が決まっていないジムの仲間が協力してくれています。もう本当に自分が感染して、彼らにうつしたらどうしようという想いもありました。それでも、これまでにない状況で練習をするしかない。ここを乗り越えてこそチャンピオンになれる資格がある──そう自分に言い聞かせています」

──その練習でATT成果は出ていますか。

「出ています。それは断言できます」

──扇久保選手との練習でもそれを感じることができるのですか。「扇久保、弱ぇよ」みたいな(笑)。

「いやいやいや、ホント、扇久保さんのこと好きですよね(笑)。でも扇久保さんとの練習でも、ホントATTで練習してきたことの正しさを確認できています」

──ところで神田コウヤ選手は天皇杯5位、鶴屋玲君も高校レスリングの強豪です。それでも倉本選手のレスリング力は、日本のMMAにあって別次元かと。

「レスリングの実績でいえばその通りですね。あの根津選手があれだけ投げられる。それはそれは衝撃的でした。と同時に、あの試合を見ることができたことが、僕にとっては凄く有利に働くと思います。

生物として身体能力のポテンシャルは圧倒的に負けています。でもMMAの選手として、彼とはまだ実力差があると思っています。僕がそうだったんですけど、国立大学に進むのって5教科7科目勉強しないといけないんです。同じ分野に進むとしても私立大の入試って英・国・数学だけなんです。英・国・数学だけの点数だったら、多分僕は倉本選手に勝てない。でもMMAは5教科7科目なんです。英・国・社・理・数学という5教科7科目なら、僕の方が上です」

──電話取材なのですが、きっと凄いドヤ顔しているんでしょうね。でも、腹黒出木杉君らしい凄く嫌なモノの例えです(笑)。

「アハハハハ」

──その5教科7科目という総合力で打撃だけなら特待生ジアン・クラウド・サクレッグに優等生が勝ったと。

「ハイ。トータルの点数で上回ったので、俺が勝ったと思っています」

──センター試験で670点ぐらいの内容だったかと……。

「全部が平均点より、少し上みたいな(笑)。でも、なかなかの評価をしてもらったと思うようにします。次の試合でも、それぐらい取れるような試合をします」

──倉本選手の能力がペーパーテストでは測り知れないもので、三教科で850点ぐらいの力があったらどうしますか。

「アハハハ。また、意地悪な質問をしてきますね。そうしたら、俺の点数足らないじゃないですか(笑)。でも、それもMMAなんですよねぇ……一点突破が総合力を上回ることがある……。想定外のパワーだったり、想定外の何かが起こるのも……。それが想定外にならないよう想定して戦います」

──それにしても、興味深い対戦です。その要因が倉本選手のダイレクトに強さが伝わる戦い、そして未知数の部分だと思います。

「それは僕も分かります。特にこの間の根津選手との試合でも、倉本選手は見ている人に分かりやすい武器を持っている。ただし、さっきも言ったけどあの試合を見ることができて本当に良かったです。僕には彼のような分かりやすい武器はないですけど、『なんだか分からないけど、倉本の良いところが出ないなぁ』という感じの試合をするので、そこを見て欲しいです」

──う~ん、その言葉が試合を盛り上げようとかということでなく、心の底からそう思っていることが口調から感じられます。

「ぜんっぜん本音の本音ですよ。全然、本音です。差があると本当に思っているので。試合をABEMAで視てくれるファンの人たちにとって、とても分かりやすい試合になるかどうかは分からないです。でも、MMAが心の底なら好きな人おいは『おっ、岡田っ!!』って思われる試合をします」

──それがどういうMMAなのか、一言だけヒントを貰えないですか。

「MMAはMMA。でも現代MMAだけじゃないんです。あらゆる面で武器が多いのは、僕のほうです。それを見せます」

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Interview J-CAGE Shooto2020#03 ブログ 倉本一真 岡田遼

【Shooto2020#03】暫定バンタム級王座決定戦で倉本一真と対戦、岡田遼─01─「ATTで世界との差を──」

【写真】一途だが、純粋ではなく──常識人だが、わきまえていないところが岡田の良さ (C)MMAPLANET

31日(日)に会場非公開のABEMAテレビマッチとして開催されるProfessional Shooto2020 Vol.3 。同大会のメインで現修斗環太平洋バンタム級チャンピオンの岡田遼が、倉本一真と暫定世界バンタム級王座を賭けて戦う。

修斗の出木杉君は、強くなることに関しては傲慢だ。そして一途でもある。倉本との世界戦に向け、ATTで過ごした1カ月をまず岡田遼に話してもらった。


──待望のプロ修斗暫定世界王座決定戦が迫ってきました。この間、世の中は大変な状況に陥っていますがタイトル戦はいつ頃決まったのでしょうか。

「5月のこの時期に世界戦があるというのは環太平洋王座の防衛戦が終わってすぐに内々に聞いていました。ただ暫定で倉本選手と戦うのは1月の後半に決まった感じでしたね」

──では岡田選手のなかでは、当初は佐藤将光選手に挑戦する腹積もりだったのですか。

「暫定で倉本選手と戦うと聞かされるまでは、佐藤選手に挑戦するんだと思っていました。それもあって、米国へ練習に行こうと……。僕としては佐藤選手がベルトを返上しないのは防衛戦をする気持ちがあるのかなとか考えていて。でも僕が佐藤選手の立場だったら、ONEで連勝してタイトル挑戦も見えてきたのに……『うるせぇ、黙っていろ』ってなりますよね(苦笑)」

──アハハハ。そうなりますよね。ところで安藤達也選手と戦う前にONEに行きたいと言っていた岡田選手ですし、ここは正規王座が欲しいところですか。

「僕、ONEに行きたいって言っていましたっけ? いやぁ、あの頃はそういう気持ちだったのかもしれないですが、今は……UFCに行きたいです。ATTの練習を経験して、そう強く思うようになりました」

──あぁ、それは良かったです……ラカイに行かなくて。

「アッハハハハ。いや、あの時はスミマセンでした。鶴屋さんが僕が海外で練習したいと言っていたから、高島さんに連絡して相談に乗ってもらって……」

──バギオの高地で、ケビン・ベリンゴンやスティーブ・ローマンと練習すればと。

「ホント、スミマセン。僕は米国でUFCファイターに触れたくて……どうしても」

──いえいえ、自分としては気になっているのが懐具合だったので。鶴屋さんならともかく……米国に行くと金が掛かるからアジアの方が良くないですかと返答させてもらって。米国に行けるのであれば、米国が一番です。

「世界のトップと自分にはどれぐらいの差があるのか、単純にそれを知りたかったんです。で2月から3月の最初にかけて1カ月間、ATTに行ってきました」

──差を知ることはできましたか。

「完全に……1カ月の練習が、日本の1年分ぐらいに感じました。皆、同じことをやってくるんです。ATTのプレーモデルのようなモノがあって。壁、ボトムになった時のスクランブル、がぶられた場合、バック取られた時の崩し方とか、皆同じ反応で迷いがない。

僕は考えてしまうんです。そういう局面になると。そこに明確な差がありました。技術の精度、練られている練度に『ここまで差があるのか』と感じました。でも、UFCと日本の試合のクオリティを考えると当たり前のことだったんですよね……」

──う~む……。

「スパーリングの時も、ATTのコーチの判断でUFCのトップどころとはなかなか交わらせてもらえないんです。それが僕の実力なんだと……僕はTitan FCのチャンピオン達とやらせてもらうような感じでした」

──修斗環太平洋王者がTitan FC王者クラスと。あのう……。

「分かります。それが当然ですよね。悔しかったですけど、実力差が明白だから受け止めるしかないです。ただ、そんななかでもアレッシャンドリ・パントージャとやらせてもらったことがあって、『扇久保さん、すげぇなぁ。コイツに勝ったのかよ』って(笑)。

それとハニ・ヤヒーラは結構相手をしてくれたのですが、金原選手と田中選手の凄さが理解できました。ハニ・ヤヒーラに極められないことがどれだけのことか……堀口選手もヤヒーラにはやられちゃうって言っていましたし。もちろん、俺はボコボコにされました。よく金原選手と田中選手は、ヤヒーラとやって極められないで3R戦い抜けたなと尊敬します。

それに金原選手はボディを効かせていたし、田中選手が肩固めを耐えていたんですけど、『なんで、この極め力の強い選手から逃げることができたんだ』って本当に心の底から思いましたよ(苦笑)」

──試合と練習の違いはあるかと思いますが……。

「いやぁ、でもホントに極め力がありました」

──いずれにせよ、素晴らしい経験ができましたね。

「1カ月間、マイク・ブラウンや他のコーチが指導してくれたことを日記に書き残しているので、帰国してからも内藤弟と反復練習しています。正直、もう一度行きたいです。そして皆で共有するとパラエストラ千葉ネット自体が強くなれると思います」

──3月に帰国し、世の中が一気に変わりました。

「そうですね……ATTも帰国してすぐに全館休館になり、もう少し帰国が遅いと僕も自主隔離とか必要になるところでした」

──不要不急の濃厚接触を避ける世の中で空気です。

「ハイ。でも試合が決まっていたので。さすがに出稽古はできないですが、鶴屋さんもジムは閉めても『お前はやれ』と言ってくれて、僕のために少人数で徹底して倉本戦に向けて練習してきました。扇久保さん、神田コウヤ、鶴屋さんのところの怜君と徹底して……」

──完全にレスラー対策メンバーですね。

「ハイ。でも、この状況でMMAの練習をするということには迷いはありました。こんなことをしていて良いのか、と」

──岡田選手は一般的には常識派ですから。

「それでも、試合があるなら格闘家は練習するのが当然です。なので、この試合が発表されてからは吹っ切っています。チャンピオンシップなんだから、水抜きするのも当たり前だし」

<この項、続く>