【写真】強豪揃いのBチームでの練習——写真はニック・ロドリゲス、ハイサム・リダと(C)TOMOSHIGE SERA
2023年が終わり、新たな1年が始まるなかMMAPLANETでは2023年に気になった選手をピックアップ──過ぎ去った1年を振り返り、始まったばかりの1年について話してもらった。
Text by Shojiro Kameike
J-MMA 2023-2024、第六弾は昨年11月にADCCアジア&オセアニア予選の77キロ級3位となった世羅智茂に話を訊いた。全てはADCC世界大会出場のため――国内外を問わず毎月のように試合に出場した世羅は、海外での試合と練習を経て何を感じたのか。
■2023年世羅智茂戦績
3月26日 Gladiator021 Progressフォークスタイルグラップリング
○8-4 大嶋聡承(日本)
4月29日 Gladiator-Cup03
エリート-77.1キロ級 2位
5月27日 ADCC SouthEast Asia Open 2023
プロフェッショナル77キロ級 優勝
5月28日 AFG Open International 2023
アダルトプロ・アブソリュート紫・茶・黒帯ライト級 優勝
6月11日 Gladiator022 Progressフォークスタイルグラップリング
○2R1分50秒 by 肩固め 加賀谷庸一朗(日本)
7月8日 American National IBJJF Jiu-Jitsu No-Gi Championship
アダルト黒帯ライト級 準々決勝敗退
7月17日 Austin Summer International Open IBJJF Jiu-Jitsu No-Gi Championship 2023
アダルト黒帯ミドル級 3位
9月10日 QUINTET04
●2分13秒 by RNC PJバーチ(米国)
9月30日 Gladiator023 Progressフォークスタイルグラップリング
●2-4 森戸新士(日本)
11月25日 ADCC Asia & Oceania Trial 2023
77キロ級 3位
1回戦 ○肩固め キム・キュンジェ(韓国)
2回戦 ○8-0 アーロン・コミンスキー()
3回戦 ○5-0 シライ・ソウフィ(豪州)
準々決勝 ○2-0 シュ・ワイチン(中国)
準決勝 ●延長0-0/レフェリー判定 リース・アレン(豪州)
3位決定戦 ○3-0 シルクハン・バラトベク(カザフスタン)
――改めて戦績を並べてみると、とにかく試合数が多かった2023年です。もともと昨年はこれだけ試合数をこなしたいと考えていたのでしょうか。
「こんなに試合をするとは思っていなかったです。グラジエイターからプログレスのオファーを頂いたことは大きかったですね。2023年は『海外で試合をしたい』という目標を立てていました。どこに行くかは最初の段階で決めてはいなかったのですが、前に海外で試合をしたのはコロナ禍の前ですし、まず海外で経験を積みたいという目標があって。結果、3回も海外へ行くことができたのは――たまたまですね(笑)」
――というと?
「5月に出場した大会は、タイのバンコクで開催されたものです。これは最近オープンしたカルペディエム・バンコクのオーナーさんから『こういう大会があるのですが出ませんか?』と言われたことがキッカケでした。
まずADCCルールの大会は、自分もADCCアジア&オセアニア予選を目指していたので、ちょうど良いと思ったんですよ。翌日の大会は柔術の大会です。実は今年、あまり柔術の大会に出るつもりはなくて。でも翌日に開催されるし、タイで柔術の大会に出るのも良い経験かなと考えて出場しました。優勝すればカルペディエム・バンコクの宣伝にもなるかなと思い、結果的にどちらの大会も優勝することができて良かったです」
――現在、アジアでADCCルールのオープン大会が増加していますね。
「もともと世界各国で開催されていますが、なかでもアジアは増えてきています。僕が出たのはバンコクの大会で、確かプーケットでも行われているはずです(※2023年12月にプーケットでADCCタイ選手権が開催されているほか、プーケットオープンも存在する)」
――実際に試合をしてみて、タイのグラップリングレベルはいかがですか。
「タイ人の選手は、まだそれほどレベルは高くないです。でもグラップリングの人気は高くなっていると思いますね。特にタイ在住の外国人選手が出場するので、盛り上がっているという印象はありました」
――7月には米国ラスベガスで開催されたアメリカン・ナショナルに出場しました。
「UFC290と日程が重なっていたので、参加者も多かったんだろうと思います。会場(ラスベガス・コンベンション・センター)もメチャクチャ大きくて。その大会後にUFCも会場で観てきました。UFCのチケット代は300ドル――今のレートだと日本円で42,000~43,000円ぐらいですか。席は会場の端のほうでしたけど(苦笑)。でも平良達郎選手も出場していましたし、こんな機会は滅多にないと思って観に行きました。日本大会とも違う現地のUFCを観ることができて良かったです」
――世羅選手にとっては久々の海外遠征となりましたが、米国のグラップリングに変化はありましたか。
「僕がコロナ禍の前に行った時はIBJJFのノーギ・ワールドに出たのですが、正直言ってノーギ・ワールドの盛り上がりは、それほど変わっていないと思うんです。それよりもADCCの注目度とレベルが上がっていて。
ムンジアルとノーギ・ワールドを比べると、ノーギ・ワールドの立ち位置って微妙なところはあるんですよ。たとえばムンジアルで優勝した選手が、ノーギ・ワールドには出ないけどADCCに出ていたりとか。だからといって、ノーギ・ワールドのレベルが低いというわけではないです。やはりグラップリング界の注目度はADCCのほうが高いとは感じますよね。そのADCCやUFCの人気が高まるにつれて、米国のグラップリングもそうですし、ノーギ・ワールドのレベルも上がっているんじゃないでしょうか」
――なるほど。アメリカン・ナショナルの1週間後にはテキサス州オースティンの大会に出場しています。
「アメリカン・ナショナルの後に、オースティンにあるBチームへ練習に行ったんですよ。Bチームにいるハイサム(・リダ)に連絡すると、チームも受け入れてくれました。ちなみに、オースティン・サマー国際にミドル級で出場したのは、減量しながらBチームで練習するのは嫌だったからです(笑)。結果は4名参加の初戦敗退で、負けメダルでした」
――Bチームで練習した感想を教えてください。
「当たり前の話ですけど――やっぱり皆が強いです。盛り上がりも凄いですし。まず単純に、ジムの会員さんが多くて。朝9時ごろから始まるクラスでも、30~40人が参加していました。昼からのクラスも同じぐらいの人数でしたね」
――グラップリングのみで、それだけの人数がクラスに参加するのですか。
「はい。ニック・ロドリゲスやニッキー・ライアンといった有名選手も、一般会員さんと一緒のクラスでスパーリングに参加していました。そこで練習している会員さんたちも、かなり強い人がいます。特にしっかりレスリングができる人が多かったですね。もちろんレスリングが強くない人もいます。そういった人たちでも、まずレスリングをやろうとする。安易に下にならない、という姿勢で練習していました
もともとレスリングベースの選手も多いですよね。17歳でADCC北米予選を制したドリアン・オリヴァレスも練習に来ていて。彼はもともとレスリングのトップ選手なんですよ。体格的には66キロ級でも小さいほうなのに、レスリングを徹底していて強かったです。サブミッションになると、僕が極めることもありました。でもレスリングが強いし、体力も凄かったです。実際のトーナメントで対戦すると、シンドイ相手だろうなと思いました」
――世羅選手も2023年のテーマとして、レスリング力の強化を上げていました。
「そうですね。僕自身は大学のレスリング部や、レスリング専門ジムの練習に参加させてもらったりしていました。あと偶然のような話ではありますけど、最近はカルペディエムにレスリングをやっている方が練習に来たり、クラスでレスリングを教えに来てくださったり。そうしてレスリングと関わることが増えてきました。MMAファイターの方と練習する時も、何かしらレスリングに関することを学ぼうとしていましたね」
――それだけレスリング力の強化に取り組んできたのも、11月に開催されるADCCアジア&オセアニア予選のためだったのですか。
「そうです。練習だけでなくADCCとは異なるルールの試合でも、ADCCのことを考えながら取り組んできたものを試すように意識していました」
<この項、続く>
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