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【UAEW45】ヌルマゴ門下ハバロフと対戦、吉野光「皆はタゲスタン人には組みで勝てないと思っているけど」

【写真】結果で自己証明。夢を実現するために、今、J-MMA界で最も険しい道を選択しているといっても過言でないUAEW参戦組の吉野(C)TAKUMI NAKAMURA

17日(火・現地時間)にUAEはアブダビのアルジャジーラ・クラブで開催されるUAE Warriors45。吉野光はリネット・ハバロフと対戦する。
Text by Takumi Nakamura

3月大会で、のちにコンテンダーシリーズでUFCとの契約を勝ち取るヴィニシウス・ジ・オリヴェイラにTKO負けを喫して以来の再起戦となる吉野。今大会で対戦するハバロフはヌルマゴ・チーム所属、プロ戦績7勝0敗というオリヴェイラ以上の強敵だ。

自ら厳しい道を行く吉野は「僕はハバロフのような相手と戦いたくてUAEWに参戦している。ハバロフに勝つことが出来たら自分の実力に自信を持てると思う」と語った。


――前回3月大会ではヴィニシウス・ジ・オリヴェイラにTKO負けという結果に終わりました。まずあの試合から振り返ってもらえますか。

「基本的に自分は組んで寝かせて極めるか判定で勝つかというスタイルで、前回は寝かせて削ってフィニッシュする作戦だったんです。でも僕が思っている以上に相手が頑なに組みから逃げて付き合ってもらえなくて、自分のペースで戦えなかったですね。細かい部分では、最初にテイクダウンしたとところでパウンドを打とうとして立たれてしまったこと。一度のテイクダウンを大事にできなかったことが反省点です。結果論ですが、あそこは殴るのではなく、まずしっかりと抑えるべきでした。そのあと何度かテイクダウンにトライしたのですが、テイクダウンできずにテンパったというか体力を消耗してしまいました」

――オリヴェイラはリーチも長く、徹底的に吉野選手のテイクダウンを嫌ってスタンドの打撃で勝負してきました。戦前からテイクダウンには苦戦すると予想していたのですか。

「簡単にはテイクダウンできないと思ったんですけど、僕も自分のテイクダウン力には自信があるし、だいたい初見の相手はテイクダウンできるんですよ。実際に先にテイクダウンできていますし。相手は過去の映像を見ても比較的組みをやる選手だったので、僕の時もそうなると思っていたら、いざやってみると組みから逃げることを徹底していたので、そこは意外でしたね」

――KOシーンについては完全に意識が飛ばされたわけではなく、まだ続行できるように見えました。試合が止まった時はどんな心境でしたか。

「今まで試合でダウンをしたことがなくて、一瞬だけ記憶が飛んでいました。で、気が付いた時に『あっ、俺、寝てる。いかなきゃ!』と思ったら、レフェリーに試合を止められちゃいました。試合直後は止めないでくれよと思ったし、まだ続行できたと思うんですけど、僕がパンチをもらったのが悪いですし、あの倒れ方をしていたら止められても仕方ないかなと思います」

――あの敗戦を踏まえて、どのようなことを意識して練習をしていましたか。

「デビュー当初は自分の引き出しがなかったこともあって、テイクダウンして上を取ることしか考えてなかったんです。でも何戦か前から打撃にも自信がついてきて、テイクダウンして立たれても『打撃でやってやるよ!』というスタンスになって。抑え込まずに殴ったり、欲を出してフィニッシュしにいったり…そういう戦い方になっていました。今はそこを見つめ直して、まずはコントロール優先で戦うことを意識するようになりました」

――また吉野選手の打撃は思い切りがいい分、相手の打撃を被弾するリスクもあるように見えます。そこはどう考えていますか。

「これは僕の感覚なんですけど、中途半端に相手のカウンターを警戒して打撃を出す方が危ないんですよ。だったら思いっきりいったほうがカウンターをもらいにくい。僕は自分の打撃の強味は思い切りの良さと突進力だと思うので、その強味を活かして戦いたいです。とは言え思い切りが良すぎるのもリスクがあるので、思い切り良くいくところと相手の打撃をもらわないで見るところのバランスを考えて練習しています」

――そこはスパーリングでも手応えを感じていますか。

「今までの僕は縦の動きしかなくて、離れた間合いで真正面からバーン!とテイクダウンに入る感じだったんです。でも今はサイドステップや横の動きを使うように意識していて、まだ完ぺきではないですけど少しずつ変わってきたと思います」

――何か新しい練習として取り入れたものはありますか。

「いつもセコンドをやらせてもらっている新居すぐるさんと一緒にレスリングの安楽龍馬さんのパーソナルトレーニングを受けていて、安楽さんの関係で早稲田大学のレスリング部に行かせてもらいました。試合が決まったのが大会まで一カ月を切ったタイミングでしたが、今回の相手はレスリングが強い選手なので、強いレスラーを体感したいと思ってお願いしました」

――その対戦相手ハバロフはヌルマゴ・チーム所属、7勝0敗のいわゆる未知の強豪です。

「打撃で倒している試合もあるんですけど、基本的にはジャブ中心でそこまで倒すための打撃じゃないと思うんですね。あくまで一番の武器はテイクダウンとパウンドで。もちろん打撃にも警戒していますが、一番はレスリングに気をつけています」。

――ハビブ・ヌルマゴメドフと同門らしく、構えをスイッチしての打撃&テイクダウンで試合を組み立てるタイプです。

「相手は組み技が強いですけど、僕の武器も組み技だし、細かいテクニックに違いはあっても、大雑把に分けるとファイトスタイルは一緒だと思うんですよ。僕はMMAグラップリングが強い選手、例えばロシア人やタゲスタン人と戦って、自分の強みがどこまで通用するかを試したかったので、今回はすごく試合が楽しみです」

――自分のストロングポイントをぶつけて勝ちたいですか。

「相手の組みが強いからといって、距離を取ってテイクダウンを切って打撃を当てて…みたいな考えは一切ないですね。自分の強みをぶつけて、どう相手をそこにはめていくか。その過程で打撃を当てる部分もあると思いますが、あくまで僕は自分の組みで勝負します」

――打ち合いならぬ組み合いでの真っ向勝負ですね。

「僕が打撃のことを分かっていないのかもしれないですけど、足を止めて打ち合って、狙っていなかったパンチが当たってKOすることってあると思うんですよ。でも組み技はそういう要素が少ないというか、打撃ほどラッキーが起こりにくいと思うんです。しかもハバロフはそこが強い相手だから、ハバロフに勝つことが出来たら自分の実力に自信を持てると思います。みんなロシア人、タゲスタン人には組み技で勝てないと思っているけど、僕がそうじゃないところを見せます」

――見ている側もロシア系の選手の組み技を必要に警戒している部分はあるのかもしれませんね。

「それは多少あると思います。大人と子供のほど差があるとは思わないですし、ある程度のレベルまでいけば相性で勝ち負けが決まるくらいの差しかないと思っています。同じ人間が同じ体重でやるわけですし。柔道時代に100キロの先輩に稽古つけていただいていたことを思えば楽ですよ(笑)」

――次でUAEWは3戦目となります。UAEで試合を続けていることをどう捉えていますか。

「凄く嬉しいし、楽しいです。僕とやったオリヴェイラもコンテンダーシリーズに出てUFCと契約していて、UAEWはUFCへの距離が近いと思いますし、UFCには出ていないけど強い選手たちが集まっている大会なので、そこで戦えることを嬉しく思っています」

――海外の大会に出て、そこでUFC出場という同じ目標を持つ選手たちと競り合うことに意味を感じていますか。

「ここで連敗しているようではUFCにもいけないし、UFCで勝っていく選手にはなれない。絶対ここで勝ち残ってやろうと思っています」

――日本の団体でキャリアを積むだけではUFCへの距離感が分かりづらい部分もあると思います。

「それが海外で試合をしようと思った理由ですね。例えば日本のトップ選手がUAEWに出ても勝ったり負けたりだと思うんですよ。でも世界的にはUAEWで戦っている選手たちの方が評価が高いと思うので、僕はその中に飛び込んで結果を出すキャリアを積みたいです」

――ハバロフはまさに知名度はなくても強い、UFC参戦の可能性を秘めたファイターです。

「僕はハバロフのような相手と戦いたくてUAEWに参戦しているので、そういう意味でも試合が楽しみです」

――では今回どのような試合を見せたいですか。

「僕はUAEWと単発契約ですし、負けたら呼ばれなくなると思うので、今回に関しては何が何でも勝ちにしがみつきます」

■視聴方法(予定)
10月17日(火・日本時間)
午後11時00分~ UFC Fight Pass

■UAEW45対戦カード

<UAEWライト級王座決定戦/5分5R>
アムル・マゴメドフ(ロシア)
ジェコンギル・ジュマエフ(ウズベキスタン)

<バンタム級/5分3R>
チムール・ヴァリエフ(ロシア)
パウリアン・パイヴァ(ロシア)

<バンタム級/5分3R>
ラニー・ザーデ(ドイツ)
ジェニル・フランシスコ(フィリピン)

<ライトヘビー級/5分3R>
アルテム・ゼムリャコフ(ベラルーシ)
バルトシュ・シェフチェク(ポーランド)

<150ポンド契約/5分3R>
アリ・アルカイシ(ヨルダン)
ヴァルテル・コリアンドロ(イタリア)

<バンタム級/5分3R>
リネット・ハバロフ(ロシア)
吉野光(日本)

<フライ級/5分3R>
ノウラ・アブザク(ヨルダン)
ヴィクトル・ヌネス(ブラジル)

<フライ級/5分3R>
サンスハル・アディロフ(カザフスタン)
藤田大和(日本)

<ライト級/5分3R>
アブダラ・コツホフ(タジキスタン)
ペトル・ブスドゥガン(モルドバ)

<139ポンド契約/5分3R>
マゴメド・アルアブドゥラ(ロシア)
ラバザリ・シェイドゥラエフ(キルギス)

<女子フライ級/5分3R>
アミーナ・ハダーヤ(豪州)
ワン・ホン(中国)

<ミドル級/5分3R>
カビブ・ナビエフ(ロシア)
アディス・タライベク・ウウル(キルギス)

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【UAEW45】藤田大和&吉野光が、UFCファイトウィークのアブダビでRoad to UFCよりも厳しい相手と対戦

【写真】吉野と藤田が、とんでもない猛者とアブダビで戦う (C)UAEW

17日(火・現地時間)にUAEはアブダビのアルジャジーラ・クラブで開催されるUAE Warriors45に日本から藤田大和、吉野光の2選手が出場することが同プロモーションの公式SNSで明らかとなっている。
Text by Manabu Takashima

藤田は8月のフィルカドベク・ヤクボフをギロチンで倒して以来2カ月弱のUAEW再出場で、吉野は3月に──コンテンダーシリーズ第8週でUFCとサインを果たした──ヴィニシウス・ジ・オリヴェイラにTKO負けを喫して以来の再起戦となる。

当初の予定ではUFC294の前日=20日開催だった同大会だが、17日に前倒しとなり、会場も二転ほどした結果──同国のプロサッカー・チーム=アルジャジーラ・クラブの本拠地で実施されることとなった。

9日(月・同)に出されたプレスリリースで上位5カードが正式発表され、その文末には「その他のカードは今週中に決定する」と記されながら、実は同じ日に全対戦カードのCGが公とされており、そこにはしっかりと藤田と吉野の顔と名前が確認できる。

いかにも中東らしく、また「中東ではよくあることだ」と関係者が公言してしまうドタバタ感のあるイベントだが、Abu Dhabi Showdown Week2023と呼ばれるファイトウィーク大会らしく、16カ国からファイターが集まるなど注目すべき試合が多い。


そもそもUFCの前日開催ではセレモニアル計量と時間がバッティングし、ダナ・ホワイト&カビブ・ヌルマゴメドフのルッキンフォー・ファイトとして機能しないことから、スケジュールが前倒しになったとも伝わってくる今大会。かなりの可能性で両者が視察する展覧試合になり、出場選手にとっては千載一遇の機会ともいえる。

そんなUAEW45のメインはUAEWライト級王座決定戦=アムル・マゴメドフ✖ジェコンギル・ジュマエフの一戦だ。マゴメドフはヌルマゴ軍団の24歳の新鋭で、これまでの戦績は6勝0敗──3試合でRNCより一本勝ちがある。

対してウズベキスタンのジュマエフはキャリア10勝3敗のストライカーで、クラシカルなグラップラー✖ストライカー対決となる。とはいえジュマエフはUAEWでディラン・サルバドールにヴァンフルーチョークで敗れた1試合しか経験しておらず、マゴメドフ・アップの試合という見方は十分になされる。

(C)Zuffa/UFC

勝負論でいえばコメインのバンタム級戦=チムール・ヴァリエフとパウリアン・パイヴァの顔合わせがより興味深い。

WSOFで5勝1敗、PLFで3勝0敗、UFCでは2勝1敗のヴァリエフは、TUFシーズン31でブラッド・カトーナに敗れオクタゴン復帰がならなかった。が、ハオーニ・バルセロスに勝利しWSOF時代には今週末のUFC Fight Nightに出場するクリス・グティエレスと1勝1敗と、正真正銘オクタゴンで戦うだけの力を持った実力者だ。

(C)Zuffa/UFC

対するパイヴァはUFCで3勝4敗。

カイ・カラフランス、ホジェリオ・ボントリン、そしてショーン・オマリーらに敗れているが、カイラー・フィリップスから勝ち星を挙げており、ヴァリエフに劣らない力の持ち主といえる。

さらにはUAEWフェザー級及びUAEWアラビア・フェザー級チャンピオンのアリ・アルカイシが、世田谷育ちのUFCベテラン=マーク・ストリーグルに勝利しているイタリアのヴァルテル・コリアンドロとノンタイトル戦で戦う。UFC級、UFCを目指す選手が砂漠に集まる大会で藤田大和は11勝1敗1分のカザフスタン人ファイター=サンスハル・アディロフ、吉野光はヌルマゴ・チーム所属のダゲスタンファイターで7勝0敗のリネット・ハバロフと戦うこと決まった。

DEEP ✖Black Combatの対抗戦で日本を震撼させたユ・スヨンがバンタム級のベルトを巻くカザフのNAIZAとヌルマゴ所有のEagle FCという両プロモーションのフライ級とバンタム級で計6勝0敗のアディロフは、スイッチヒッターでジャブが伸びるボクシングと、テイクダウン防御に優れたレスリング力を持つ。

さらには倒されないように戦うなかで、アナコンダチョークやがぶってバック奪取という堅守&カウンターアタックも強い。バックを取ってからの安定度も抜群のアディロフと藤田の一戦はフライ級タイトルが掛かっていても一切おかしくない対戦といえる。

他方、吉野と戦うハバロフは所持していたGorilla Fightingバンタム級王座がEagle FCに移管され、現時点で4度防衛中の現役王者だ。ハバロフもまたスイッチヒッターだが、打撃は前蹴りを見せて組むためのオーバーハンドが定番で、最大の強味は左右どちらの手が前にあっても、問題がなく相手を倒し続けるテイクダウン能力の高さだ。

倒せばコントロールする力も抜群で、抑え込みも非常に強い。それ故にボディロックに来た際の吉野の担ぎ系の柔道技や内股、倒された時のブリッジでリバーサルという展開が見られるのか。

もちろん、その2つの局面が強いことはハバロフ陣営は百も承知だろう。それでの通じるのが本当の意味での必殺技。吉野にとっては日本で決めまくった技術が、ダゲスタンのトッププロスペクトに通じるのか、真価が問われる一戦となる。

同様に藤田にとっての今回の試合も彼が日本で見せることがなかった近距離での打撃の攻防が、中央アジアの猛者を相手に有効なのか──ここも注目すべきポイントだ。

いずれにせよ、藤田と吉野は国内のどのプロモーション、アジア系の大会、さらにRoad to UFCよりも手強い相手と両者は砂漠で戦うことになる──これが彼らのMMA道、痺れるチャレンジだ。

■視聴方法(予定)
10月17日(火・日本時間)
午後11時時~UFC FIGHT PASS

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DWCS MMA MMAPLANET o UFC エルネスタ・カレクカイト エンジェル・パチェコ. カーリー・ジュディシー ダニー・シルバ ダニー・バーロウ ブログ ヴィニシウス・ジ・オリヴェイラ

【DWCS S08Ep08】ビッグKOのバーロウ、第1試合のオリヴェイラ──そして第2&第3試合は敗者もUFCへ!!

<ウェルター級/5分3R>
ダニー・バーロウ(米国)
Def.1R1分19秒by TKO
ラヒム・フォレスト(米国)

テネシー州メンフィス在住フィター同士の一戦。左ハイを見せたバーロウが、左オーバーハンドを伸ばす。フォレストがステップインして右ジャブ、前蹴りへ。バーロウは左ストレートを入れるなど、インパクトの強い打撃を両者が繰り出す。右フックでバランスを崩したバーロウだが、続き右に左を合わせる。

完全に足が泳いだフォレストをダーティーボクシングで削り、リリースするとケージにつまったところで左ストレート、左アッパーから左ボディを2発打ち込んだバーロウが、勝負を決めた。

勝ち名乗りを受けるとバック宙を見せ、運動神経の良さを見せたバーロウが「友人と戦うことはタフだけど、これが仕事だから」とインタビューに答えた。

ビッグKOと激闘、そして反則決着があった第8週──ダナ・ホワイトはヴィニシウス・オリヴェイラを絶賛し契約、エルネスタ・カレクカイトに対しては「この試合に敗者はいない」とカーリー・ジュディシーと共にUFCへ。

さらにダニー・シルバとエンジェル・パチェコ、両者が病院にいる状況で2人揃ってサインすることを明言。そして第4試合をほぼスルーし、バーロウに契約が告げられた。


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Bu et Sports de combat MMA MMAPLANET o ONE UAEW UFC   キック ボクシング ヴィニシウス・ジ・オリヴェイラ 剛毅會 吉野光 岩﨑達也 平本蓮 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。オリヴェイラ✖吉野光「組と打の回転力」

【写真】組んで攻勢に出られない時、打撃は必要。打撃があれば組みのアドバンテージが増える。これが組み技ベースのMMAではあるのだが、レスラーがジャブだけ勝つのもMMA (C)UAEW

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たヴィニシウス・ジ・オリヴェイラ✖吉野光戦とは。


──質量や間という武術的要素でMMAを見た場合、打撃だけでなく組みの展開にもあると思います。吉野選手は胸を合わせた状態からの小外、大内、そして払い腰という投げに絶対的な自信を持っている選手で。

「では、なぜ組みを続けることができなかったのか。もう、その一点に尽きるかと思います」

──思うに最初にテイクダウンをした後に立たれた。そして組んで倒せない展開があった。そこから組み疲れを考えたのではないかと。そうなると組みの選手の質量も落ちるのでしょうか。

「まず組みの回転数と打撃の回転数は別モノです。打撃の人間が組みの練習をすると打撃が劣化する。取返しがつかないほど劣化してしまう。ただし、MMAには組み技は当然のように存在しており、その対処も必要です。試合で組み技を使わない選手でも、組み技、寝技の練習は欠かせない。と同時に打撃を劣化させない必要性を最近は感じるようになってきました。打撃を劣化させない方法論は、あります。分かっています。だから最近指導している立ち技からMMAに転向してきた選手にはボクシング、キックボクシングのつもりでMMAを戦えと言っています。もちろん組みを対処できるうえで。

対して吉野選手は、組みの選手なのでしょうが打撃にセンスの良さを感じました。よく見えているし、動きも良い。だから、その目や動きがあるのだから得意の組みに行けば良かったのにと思いました。センスがあっても、打撃ができているわけではないので。相手の打撃に対して、打撃でなく組みで戦えば彼の回転数は上がる。そうなると、質量も大きくなります。回転数が質量を生むので。

その回転ですが、組み技はトルクで馬力を生む。対して、打撃は重力に逆らわずにそこを生かす戦い方が必要になります。

ボクシングとキック、レスリングと柔道の回転数は違っているので、ミックスする方法論はほぼ存在していないです。この2つの回転を両立させるのは、本当に難しいです。だから型が大切なんですよ。型には両方が養える」

──そして、吉野選手は組みで戦うべきだったと。

「吉野選手は序盤で、打撃のセンスがあるとすぐに分かりました。それはセンスという部分で。見えているし、動きも良い。でも、だからといって相手を倒せる決め手を持っているわけではないです。それに相手のオリヴェイラの打撃は、バーリトゥードの時のような打撃ですよね。粗い。だからこそ、世界で戦うという意志を持っているのであれば、あの精度の選手とは打撃で張り合えないと。

以前からMMAは寝技ができないと、『倒されてお終い』という風に言われてきました。今、レスリングやスクランブルができないと、『MMAでは勝てない』と言われます。それはそうでしょう。ただし、打撃ができない人はいくらでも戦っていますよね。なぜ、打撃で戦えるようにはしないのですか。

組み技と寝技で戦えるようにならないといけないのに。無暗に打ち合えってことじゃないですよ。打撃で攻防ができて、引かないで戦う。それはレスリングやグラップリングと同じことじゃないでしょうか。打撃で引いたら、世界では勝てないですよ。組みで引くと『ダメだ。引いちゃいけない』という正論が飛び交うのに、打撃は引いても良いのかと。

スクランブルで引くとバックを許し、あるいは下になって不利になりますよね。それは打撃も同じで。顔を殴られて、引いていちゃ勝てないって。平本蓮とスパーリングをして、ボコられている子がいました。そうしたら練習仲間が、『あの子は打撃ができないから、もっとやさしくしてください』って。

バカやろう、打撃ができないで何でMMAをやっているんだよって」

──ほとんどビートたけしの突っ込みじゃないですか(笑)。

「いや、だってホイス・グレイシーの時代だと打撃ができなくても勝てたかもしれないですよ。でも、今、打撃ができないでUFCで勝てますか? ONEで勝てますかって。でも、そのやさしくしてやってと言われた選手、試合を見ると良い左を持っていましたよ。良いモノを持っていても、練習しないと。優しくしていて、レスリングや柔術は強くなれるんですか」

──打撃はケガやダメージに直結する。だから、練習はより安全に行わないといけない。ただし、打撃ができないと上の舞台では勝てないのも確かです。

「致命的に打撃ができないのに、打撃をやらない」

──組みで勝つということかと。

「じゃあ、どこまでそれで勝てるのってことになっちゃいますよ。だって打撃の人間が、打撃だけやっていたらダメ出し食らうじゃないですか。もちろん、そうじゃない道場やジムの指導者もいると思います。打撃ができないと、勝てないよっていう。それでも、打撃を疎かにしていないかなって感じることは、試合を見ていても多々あります。

シャドーの段階から、自分より打撃が強くて、殺しに来ているという意識を持って練習している選手がどれだけいるのか。そういうことなんですよ。寝技の打ち込みも、動く相手を想定しているのと、ただ機械的に動くのとでは違うと思うんですよ。

そういう部分では、吉野選手はまた違っていて。彼はセンスが良いから、打撃ができていないという認識はそれほどないのかもしれないですね。これまでは、それで勝ててきたから。で、得意分野の組みで思い通りにならなかったから打撃戦をやってしまった。

日本人が国内に留まらず。アラブに行って戦う。UAEWで戦うという姿勢は素晴らしいです。だからこそ、自分の特性を生かして戦ってほしいですね。そして、とっかかりの部分でしっかりと打撃を学んでほしいと感じました」

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【UAEW39】砂漠でベルトを目指す吉野光「日本の泥沼のようなシステムにハマらなくて良かった」

【写真】砂漠を選んだ吉野光。誰もやらないことができる人生は楽しいだろう(C)GRANT BOGDANOVE

18日(土・現地時間)、UAEはアブダビのエティハド・アリーナで開催されるUAE Warriors39に吉野光が出場し、全UAEWバンタム級王者ヴィニシウス・ジ・オリヴェイラと対戦する。

Road to UFCからUFCを目指す吉野は、決まった道筋のない世界最高峰へのトレイルロードを駆け上がるには「自分から動きださないといけない」と言い切った。



――昨年10月以来のUAEWですが、前回は超スクランブル発進でキャッチウェイト戦でした。今回は試合が決まったのはいつ頃だったのでしょうか。

「オファーがあったのは1カ月弱ぐらい前ですけど、発表があったのは1週間ほど前ですね(※取材は14日に行われた)」

──前回、ジャマル・ラステムに勝利していますが、複数契約だったのでしょうか。

「いえ、1回だけです。今回もこの試合だけですね」

──なぜ、単発か複数かが気になったのかというと、やはりRoad to UFCの存在があるからです。

「Road to UFCには出たくて、応募もしています。ただ、この試合に勝てばタイトル挑戦という話もしてもらっていて。Road to UFCに出られるなら、やっぱりRoad to UFCには出たいですけど、なければUAEWのチャンピオンを狙います」

──ところで2度目のアブダビでの試合。ファイトウィークの過ごし方も、前回よりは慣れましたか。

「ハイ。ホテルにいて全部できるんで、凄く楽です。マットスペースも凄く広くて。ホテルに泊まっていると、試合っていう気持ちになって……海外にいることだけで楽しいです」

──その表情からも、エンジョイしているのが伝わってきます。

「試合は緊張しないです。ケージに入って、気持ちを創れば良いだけで。試合前は楽しいです」

──そんななか、元チャンピオンとの対戦です。

「めちゃくちゃ嬉しいです。2試合目で元チャンピオンと戦えるなんて。戦績も17勝4敗で実績もあって、強い選手。オイシイ試合です」

──映像で見る限り、相当に粗くてパワフルな打撃戦をする選手のように見えました。

「そうですね。トリッキーで、身体能力が高くて動きが読めないです。そこはちょっと怖いです。寝技も下になっている場面がなく、上から殴ることが多かった。ただし四つ組みに付き合ってくれそうな感じで、そこで倒したいですね。前回がKO負けなので、そこも僕に有利かなと思います」

──その前に、粗くて怖い打撃をどう見切るのか。

「最初は当たらない位置に立って、近づいたら組むイメージでいます。振りが大きいので、組みやすいかと思います。ただテイクダウンをした場合、どういう下の動きがあるのか。そこは未知です」

──さきほど出たいと言っていたRoad to UFCですが、昨年は日本から3人が出場して1人は過去に勝利している野瀬翔平選手でした。そして優勝した中村倫也選手に準決で敗れた。さらにいえば中村選手は決勝も風間敏臣選手に勝利し、風間選手もUFCと契約を果たしました。

「中村倫也選手は強いです。ただ組み合わせ次第ですけど、僕も出ていれば決勝には行けたと思います。日本人選手が勝った3人の外国人選手には、僕も勝てます」

──今年のRoad to UFCバンタム級では上久保周哉選手も申し込みをしているとのことですが、練習仲間ですよね。

「こんなことは言いたくないですけど、上久保選手に勝てる可能性は限りなく少ないです。初めてスパーリングをした時とか、認めたくなくて頑張っていたのですが(笑)。練習をすればするほど凄さが分かって、今では尊敬しています。技も教えてもらっていますし、戦いたいとは思わないです」

──なるほどです。ところでUFC、Road to UFCを目指すにしても砂漠経由という選手は、日本では吉野選手だけです。他の選手はLFAに出る選手はいても、大概は日本に留まっています。

「行動を起こさないとダメです。ディスるつもりはないですけど、日本で修斗、DEEP、パンクラスでベルトを獲ったところでUFCに行くアピールにはならないと思います。現状、平良(達郎)選手だけだし。だから僕はUFCに近い海外の大会に出たいとずっと思っていました。しかも中東の大会に出たいと思って狙っていたので、たまたまですけどオファーがもらえて凄く嬉しかったです。とりあえず、自分から動きださないと何も起きないと思います」

──それは吉野選手が、日本で一つのプロモーションで定期的に試合が組まれたことがなかったからこそ、備わった思考ではないでしょうか。

「結構、試合がない時期とかもありました。ただ、頑張って交渉すれば継続参戦はできたと思っています。でも、ずっとそこで使われるような形になってしまう。それと僕が所属しているALMA FIGHT GYM LIFEではグラント(ボクダノフ)君が、僕のマネージメントとの通訳を助けくれて。他のジムのように代表が話を持って来るという……日本の泥沼のようなシステムにハマらなくて良かったと思っています。

僕しかやっていないから、中東で試合をすることに味をしめています。凄く楽しいです。ただし、試合に関しては負けるイメージが浮かんで怖くなることもあります。だから、相手のことを考えないで、自分が普段やっている練習通りの試合をする。練習での力を出すことができれば、勝てると思っています。自分の形に入れば勝てるという自信を持っています。

殴られて意識さえ飛ばされなければ、大丈夫です。殴られるのを覚悟のうえで、殴らせないで試合を制する。そういうイメージで戦います」

──押忍。UFCファイトパスで、吉野選手の試合を追ってくれるファンに一言お願いします。

「僕がやっていること、中東で戦うことは僕にしかできないことです。そういう場で、レベルの高い選手に勝てる日本人がいるところを是非見届けてください」

■放送予定
3月18日(土・日本時間)
午後9時00分~ UFC Fight Pass

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【UAEW39】砂漠で戦う男、吉野光。元王者と対戦。マカエフ&ストリーグル出場のフェザー級戦線も注目

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18日(土・現地時間)、UAEはアブダビのエティハド・アリーナで開催されるUAE Warriors39に日本から吉野光が出場し、ヴィニシウス・ジ・オリヴェイラと対戦する。

吉野のUAEW参戦は昨年10月のジャマル・ラステム戦以来、5カ月振り2度目となる。


砂漠で戦う男、吉野光。Road to UFC出場を狙うとも伝わってくる吉野は、2度目のUAEW出場で前バンタム級王者と対戦することとなった。オリヴェイラは2021年3月にサビエ・アラウイを破り、昨年7月にその後PFLに進出したアリ・タレブに敗れるまでベルトを巻いていたファイターで、1度防衛にも成功していた。

つまり、吉野は砂漠のフィーダーショーでタイトル戦線に位置しているメッチメイクとなる。必殺の大内刈りと、下になってもテッポウがある吉野に対し、オリヴェイラはハイや右ストレートにKOパワーを持つ。反面、ガードが疎かになるのでそこに打撃という欲よりも、粗さをついて組み伏せる──そんな戦いでUFCスカウトの目に留まるファイトがしたい。

(C)BRAVE CF

なお今大会のメインは砂漠の独立王国BRAVE CFで活躍してきたチェチェン系オーストリア人ファイターのモチャメド・マカエフが、同じく同プロモーション初出場となるバグドス・オルシャバイと対戦する注目カードが組まれている。

ボクシング&レスリングのラッシュ力でド迫力のファイトを展開するマカエフだが、オルシャバイもカザフのアラッシュ・プライドのトップファイター。中央アジアでコーカサス系やスラブ系の強力なレスリングベースを持つファイターと、スクランブルが融合した喧嘩ファイトを勝ち抜いてきた。

マカエフ✖オルシャバイはコンテンダーシリーズで組まれてもおかしくない──そんなフェザー級マッチだ。そのUAEWフェザー級戦線制覇に元UFCファイター、世田谷育ちのピーノファイター=マーク・ストリーグが乗り出す。

今回は150ポンド契約マッチだが、イタリアの元Bellatorファイター=ヴァルテル・コリアンドロとの内容如何によっては、即タイトル戦も見えてくる。

UAEWのヨルダン人フェザー級王者アリ・アルカイシは翌日のUAEW40:UAEW Arab10でONEベテランのエジプト人ファイター=のアフメッド・ファレスの挑戦を受ける。

欧州、中近東、ブラジル、中央アジア、アフリカを対象に人材発掘&再生=厳しいサバイバルウォーが繰り広げられているUAEWに、東と東南アジアから吉野&ストリーグルが挑む。彼らに続く選手が現れるのかも気になるUAEWだ。

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【UAEW24】2人のUAEW王者に挑むのはTitan FCとEFC Worldwideのチャンピオン!! 世界中の新鋭がズラリ!!

【写真】Titan FCフェザー級チャンピオンの挑戦を受けるUAEWフェザー級王者のイ・ドギョム(C)UAEW

29日(金・現地時間)、UAEはアブダビの柔術アリーナでUAE Warriors24が開催される。

28日(木・同)には同所でUAEW23 Arabia05と中東勢中心のYoung Blood大会が行われ、2日連続のイベント開催となる。また30日には同地でUFC267が開催されることで、今大会はダナ・ホワイトの御前試合になる可能性も高い。

今年の1月のEagle FCとの合同イベントはダナとカビブ・ヌルマゴメドフが席を並べて視察し、カールストン・ハリスがUFCと契約し、ムイン・ガフロフがコンテンダーシリーズ行のチャンスを掴んでいる。


そんなUFCウィークのUAEW24では2つのタイトル戦が組まれている。メインでは16勝2敗、ブラジル人王者ヴィニシウス・ジ・オリヴェイラがシルベスター・チップファンブの挑戦を受ける。

3月大会でカナダ人王者ザビエル・アラウイをハイキックからパウンドアウトしベルトを巻いたオリヴェイラに対し、ジンバブエ人ファイターで現在は南アフリカのケープタウン在住のチップファンブはEFC Worldwideのバンタム級チャンピオンだ。

中東のプロモーションのブラジル人王者に、アフリカの王が挑む一戦。MMAの世界的伝播とUAEWのグローバル感が改めて伝わってくるメインといえる。そのグローバル感をさらに感じさせるのが、コメインのフェザー級選手権試合だ。

同級王者は韓国のイ・ドギョム。彼はAngel’s FCでフェザー級王座挑戦もムン・ギブンに敗れ、キャリアアップに中東の地を選んだ。現在はBRAVE CFに在籍する元PXCフェザー級王者でUFCベテランのロランド・ディをKOすると、2020年7月にアレクサンドル・キトランをヒザ蹴りで一蹴し、UAEWフェザー級王座に就いている。

挑戦者のアリ・アルカイシはBRAVE CFで3連勝しUFCにステップアップ──も2連敗でリリースされる。その後はUAEWで再起し、8月にはTitan FCでアンドリュー・ウィットニーを下しTitan FCフェザー級王者になっている──ヨルダン人散打ファイターだ。

イ・ドギョムとすれば、ただ王座初防衛を目指すだけでなく、有力フィーダーショーのチャンピオンを相手にインパクトを残す勝ち方をし、UFCへのステップアップを狙うファイトであることは間違いない。

また韓国からはイ・ドギョムだけでなくZEUS FCバンタム級王者のユ・スヨンがプロモーション・デビューを果たす。

(C)KEISUKE TAKAZAWA

ユ・スヨンは2019年11月にパンクラスに来日し大橋悠一を僅か13秒でKOし、再来日が期待されていた25歳の新鋭だ。

ユ・スヨンもまた中東をステップアップの地として照準を定めたが、UAEWでは同大会初戦となるタジキスタン人ファイターのサルバツホン・カミドフ──キャリア11連勝中のえげつない相手を用意している。

またEFC Worldwideのウェルター級王者サンボ・ゴリンボもUAEW初陣を迎え、PFLベテランのヘンダソン・フェヘイラと相対する。この他にもカザフスタンのオクタゴンMMAミドル級王者で19勝1敗のマヒル・マメドフも出場、世界の新鋭の品評会ともいえるUAE Warriors24──見逃せないイベントだ。

■視聴方法(予定)
10月29日(金・日本時間)
午後11時00分~UFC FIGHT PASS

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