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【Gladiator028 / HEAT55 X AFC34】今井健斗×廣瀬裕斗、ニューエイジのターニングポイント in 中津川

【写真】今井と廣瀬——名古屋~中津川間は興味深いジムが並んでいる(C)SHOJIRO KAMEIKE

6日(水)、大阪府豊中市の176boxで行われたGladiator028で、今井健斗が宮川日向を判定で下した。そして26日(土)、名古屋市の名古屋国際会議場イベントホールで開催されるHEAT55×AFC34で、今井と同門の廣瀬裕斗が韓国のチュ・ドンジョと空位のAFCフライ級王座を賭けて戦うこととなった。
Text by Shojiro Kameike

今井と廣瀬が所属する「マーシャルアーツクラブ中津川」は、名古屋市からJR特急「しなの」で48分——岐阜県中津川市のJR中津川駅から徒歩10分という立地にある。長野県飯田市に隣接し、多くの山々に囲まれた中津川市に、新世代ファイターの2人を訪ねた。


――お二人とも中津川市出身とのことですが、中津川とはどのような場所なのでしょうか。

今井 どちらかというと観光地ですね。古い町並みがあって。そこに海外からも観光客が来ています。僕としては、観光地という自覚もないですけど(笑)。

廣瀬 この間も飲みに行ったら、隣のおじさんが奢ってくれたり(笑)。

今井 よく居酒屋で知らない人が奢ってくれるんですよ。フレンドリーな町です。

廣瀬 僕は出身が中津川で、今は下呂市に住んでいます。

今井 下呂って中津川の隣にある市ですけど、ココから車で1時間は掛かります。

――先に格闘技を始めたのは今井選手なのですか。

今井 このジムに入ったのは僕が先ですね。僕が格闘技を始めたのも、もともと裕斗が地下格闘技に出とったんですよ。悠斗は高校が同じで、バイトも一緒で仲が良かったんです。それで裕斗の試合を観に行ったら『おもしろそうやなぁ』と思って。僕が先にジムに入ったあと、別のジムで練習していた裕斗がココにも練習に来るようになりました。

廣瀬 最初は選手として試合に出るというよりは、とにかく格闘技をやってみたかったんです。まずはキックの試合とか、名古屋のストチャレ(ストライキングチャレンジ)にも出させてもらって。試合があれば出させてもらうという感じで、地下格闘技とか何かはこだわっていなかったですね。試合があれば、どんどん出ていきたい。そう思っていました。

今井 僕は格闘技を始める前、RIZINとK-1ぐらいしか見たことがなくて。最初に地下格闘技を見に行った時は、アマチュアだけど華やかな大会でした。だから最初は僕も地下格闘技に出るつもりだったんです。でも一度も地下格に出ることはなく、アマチュアパンクラスやアマチュアDEEPに出て――地下格には一度も出ていないですね。

――それも時代、あるいは地域性ですよね。格闘技をやるには地下格闘技しかなかった地域もある。同時に名古屋まで行けば、パンクラスやDEEPのアマチュア大会が行われているという。

今井 そうですね。僕の場合は、このジムに入る前から代表の一平(高瀬一平マーシャルアーツクラブ中津川代表)さんが、実家の近くで格闘技を教えていたんです。そこに体験に行ったのが始まりですね。僕が入って1カ月後ぐらいには、このジムに移転しましたけど。家から近いから入ったのに、1カ月後には遠い場所に……。といっても車で15分くらいしか違わないですけど(笑)。

もともとは家具屋だった建物を改装したというマーシャツアーツクラブ中津川。2階は広いマットスペース、1階はトレーニングマシンのフロアとなっている(C)SHOJIRO KAMEIKE

それで自分のほうから裕斗を誘ったのかなぁ。僕がもうプロの試合に出始めた頃、裕斗もココに練習に来るようになって。当時のことを覚えていないんですけど。

悠斗 「来いよ」って言われましたから。

今井 あぁ、それは自分が誘っているわ(笑)。

廣瀬 もともと下呂のジム(Hida Traiing Lab)に毎日通っていて、さらに新しい技術を知りたいと思ってコッチにも来るようになりました。そうして練習しとるうちに、高瀬さんから「試合の話が来たぞ」と言われたんですよ。それがプロデビュー戦(2022年3月、DEEP Nagoyaでオサモ・リチャードソンに判定勝ち)でした。

――なるほど。お二人とも白星~黒星というキャリアを経て、今は連勝中です。何か大きく変化するキッカケがあったのでしょうか。

廣瀬 僕の場合は岡本秀義戦(2022年7月、1RにハイキックでTKO負け)ですね。それまで練習でパンチを受けても、バコーンと効いたことはなかったんですよ。試合前にも「打撃は効かないですよ。KOされることは絶対にないです」とか言っとったら、思いっきりKOされて……。そこでディフェンスの重要性を理解しました。僕、寝技が全然できないんです。

今井 アハハハ!

廣瀬 本当に今でも全然できないんです(苦笑)。だから打撃の練習を……。

――「やらない」のと「できない」のは、また違う話かと思います。廣瀬選手はどちらなのでしょうか。

廣瀬 やらないわけじゃないし、寝技が好きじゃないわけでもないんです。でも、なかなか練習でもテイクダウンできなかったり……。そういう苦手意識はありますね。

今井 このジムには柔道やレスリング経験者が多いんですよ。裕斗は自分で思っているほど組技ができないわけじゃないんです。ただ、僕たちは子供の頃から組技をやっていますからね。まぁ数年やったぐらいでテイクダウンは取られません(笑)。

廣瀬 僕も「絶対にテイクダウンしてやろう」と思って行くけど、なかなか……。

――それだけ組技が強い練習相手ばかりであれば、廣瀬選手にとってはテイクダウンディフェンスやエスケープして立ち上がるのは上達するでしょう。

廣瀬 あぁ、そうですね。

今井 それは抜群に上手いです。メチャクチャ極めづらいんですよ。

廣瀬 周りは組技が強い人ばかりだったから、毎日毎日「どうやったらテイクダウンされないか。どうやったら極められないか」と考え続けてきて。

今井 裕斗は一緒に練習し始めた頃、本当に組技に関しては素人みたいな感じでした。「何だ、コイツ」と思うぐらいの弱さだったんですよ。でも今は体も強くなってきているし、技術も上がって、どんどん極めづらくなっています。成長しているとは思いますね。だけど成長するのは、みんな一緒なので。

廣瀬 だから今でも皆に追いつけないんですけど(苦笑)。でも昔はできなかったけど、今はできるようになったというものは増えています。

――今井選手にとっては、山上幹臣戦が大きなターニングポイントになったのではないでしょうか。

廣瀬 あの試合は凄かったですね。

今井 周囲からは「勝てるでしょ」と言われていたんですよ。さすがに山上選手も10年振りの復帰戦では無理でしょ――と。僕自身は最初に山上選手の経歴を見た時、「自分がこんな選手と対戦して良いのか」とは思いました。でも練習していくなかで「これは勝てる」という雰囲気になってきて。

――それ以降、「山上幹臣に勝った男」としてプレッシャーを感じるようにはならなかったですか。

今井 それが――プレッシャーがメチャクチャ強くて。

廣瀬 アハハハ!

今井 それまでは「ブッ倒してやる!」「絶対にフィニッシュする」という気持ちで戦っていました。だけど、ここ2戦は僕が勝つと予想されるようなマッチメイクだったと思うんですよ。自分の中で「ここは絶対に落とせない」という気持ちが強くなり、アグレッシブに行けずに判定が続いてしまいました(苦笑)。

――確かに松原聖也戦宮川日向戦は、山上戦よりも手堅い攻めではありました。それが決して悪いことだとは思いませんが……。

今井 特に宮川戦は、思っていたより相手は体が強かったことも大きいです。試合前は――相手の打撃が強いことは分かっている。だから絶対に打撃では勝負しない。組めば絶対に極められると思っていました。でも実際に対戦してみると、手足が長いし体も強いので、やりづらかったです。テイクダウンしても、すぐにガードに入れられてしまいますし。自分も動きが堅くなってしまいましたね。

――試合後、SNSでは11月のパンクラス出場を希望していました。

今井 グラジは次の大会が年明けの1月12日じゃないですか。ちょっと年末年始はゆっくりしたくて……。それなら年内にもう1試合、頑張って出たいなと思ったんです。もちろんオファーを頂けるのは嬉しいし、言われたら出るとは思いますけど。

パンクラスの本戦でランカーと試合したい気持ちもあるし、グラジであれば僕がベルトを目指してもおかしくない位置にいると思っています。最後は実力なので、とにかく強いヤツに勝って行けば、もっと大きな舞台に出ていけると考えています。

――一方、廣瀬選手はHEATとAngel’s Fcの対抗戦で、AFCフライ級王座を賭けて戦います。

廣瀬 タイトルマッチの話を頂いた時はビックリしました。

今井 羨ましいです。僕にはそういうタイトルマッチの話が来たことがないので。なんか――持っていますよね(笑)。

廣瀬 相手は結構、打撃を振ってくる選手です。それを食らわないようにテイクダウンも混ぜて、MMAでしっかり勝つ。寝技もあまり好きではないですけど、健斗先輩とか強い人たちと練習しているので、それを自信にしてベルトを獲りに行きたいです。

■HEAT55 x AFC34 視聴方法(予定)
10月26日(土)
午後3時00分~ Twit Casting LIVE

■HEAT55 x AFC34 対戦カード

<ISKAインターコンチネンタル・スーパーウェルター級王座決定戦/3分3R+ExR>
アブラル・ヒマラヤンチーター(ネパール)
アントニー・マルコニ(フランス)

<キック・ライト級/3分3R>
安川侑己(日本)
チュ・ギフン(韓国)

<キック63キロ契約/3分3R>
ペットサムイ・シムラ(タイ)
パク·ジョンジュン(韓国)

<バンタム級/5分3R>
熊崎夏暉(日本)
ふくやーまん(日本)

<Angel’s FCフライ級王座決定戦/5分3R+ExR>
廣瀬裕斗(日本)
チュ·ドンジョ(韓国)

<フェザー級/5分3R>
倉本拓也(日本)
キム·パンス(韓国)

<ライト級/5分3R>
岩倉優輝(日本)
シン·ジェヨン(韓国)

<ウェルター級/5分3R>
阿部光太(日本)
マ·チャンウ(韓国)

<ミドル級/5分3R>
堀越拓実(日本)
ヨ·ドンジュ(韓国)

<バンタム級/5分3R>
福井達郎(日本)
パク・チウ(韓国)

<ミドル級/5分3R>
フェルナンド・マツキ(日本)
チャン·ドンミン(韓国)

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【UFC306】展望  チケット代250万円!! 史上最強のワンオフ大会メイン=世界バンタム級選手権試合を読む

【写真】これぞ、どちらが自分を通し切る我儘さを貫けるか──という一戦だ (C)MMAPLANET & Zuffa/UFC

14日(土・現地時間)、ラスベガス近郊のパラダイスにあるスフィアにて、NOCHE UFC 306が行われる。昨年9月にオープンしたばかり、世界中で話題の地球上最大の球形建造物におけるUFCの記念すべき初興行のメインを飾るのは、王者ショーン・オマリーに、ランキング1位のマラブ・デヴァリシビリが挑戦するバンタム級タイトルマッチだ。
Text by Isamu Horiuchi

ラスベガスに出現した巨大な輝く地球儀の如きアリーナ=スフィアは、NYのマジソン・スクエア・ガーデン社により、合計23億ドル(3200億円以上)という桁外れの建築費をかけて作られたエンターテインメント施設だ。建物の外壁、内壁ともに最高解像度の巨大LEDスクリーンが全面に張り巡らされている。


前代未聞の興行のメインイベンターとしてUFCが選んだのが、バンタム級王者のショーン・オマリー

常に何らかの形でライトアップされているその姿は、外から見ても壮観極まりない。昨年11月に実に41年振りに行われたF1ラスベガスGPでは、F1のオーナー企業であるリバティ・メディアはストリートコースが、スフィアが所有する土地を使用するためにレース期間中はこの奇抜な建築物に使用料を支払い、その間スフィアは閉館していたという逸話を持つ。F1ファンなら記憶に残っているだろうが、世界最速マシンが走るワキをこの球体上の建物は常に同GPのスポンサーの映像を流し続けていた。

さらに20000人収容可能なアリーナ内部においては、全視界を覆うスクリーンによる視覚効果だけでなく、あらゆる場所に響き渡る最高品質の音響システムと、風や香り、はたまた触覚までも刺激する4D技術を駆使した演出が可能で、誰もが人生で味わったことがないような「没入型」の体験が提供されるとのことだ。

そんな斬新すぎる巨大アリーナにおける初のプロスポーツ興行として、世界のエンターテインメント業界から注目を集めている今大会。ダナ・ホワイト代表の力の入れようも尋常ではない。サウジアラビアのリヤドで毎年開催される世界最大級の観光アトラクション「リヤド・シーズン」を開催する総合エンタータインメント庁をパートナーに得て、2000万ドル(約28億円)以上の金額を演出に注ぎ込んだという。

「これは一度きりのイベントだ。もう二度とないよ。ここでスポーツイベントを敢行した者は存在しない。私は今まで誰もやったことがないことを成し遂げたいんだ。不可能だと言われているけど、だからこそ最高に魅力的だ。そもそもスフィアは映画やコンサート用のシアターであり、我々が普段使っている照明設備も使えない。(スフィア初イベントとして行われた)U2のコンサートより、はるかに複雑な照明を使うことになる(※ちなみにU2のこけら落としライブは9月29日を皮切りに週に2、3回の頻度で2月まで実施されたが、F1ウィークの前後は11月4日から12月11日まで休演となっていた)」

昨年もメキシコ独立記念日に合わせて、ベガスのT-MobileアリーナでNOCHE UFC(ノーチェは古くからあるスペイン語で「夜」の意味。つまり「UFCナイト」といったところか)を開催したUFCだが、今回の大会の正式名称は「リヤド・シーズン・ノーチェUFC」となる。

「この大会は、メキシコのファイトカルチャーに向けた私からのラブレターさ」ともホワイト代表は語っている。選手たちも特殊効果の撮影に駆り出されているようで、照明設備や壁全面を覆うスクリーンがどう用いられるのか、入場シーン等で果たしていかなるスペクタクルが展開されるのか、それだけでも見逃せない注目のイベントとなっている。

チケットの最高価格は約250万円、一番安価の席でも約32万円という超高額の設定で販売開始したチケットはさすがに即完売とはいかず、変動価格制によって現在チケット代は半額ほどに下がっている。ゲート収入の見込みも大幅に下方修正され、演出費を賄うのがやっとの2100万ドルあたりを予想しているという(もっともこの数字でも、これまでの最高ゲート収入──UFC 205における1770万ドル──を大きく上回ってはいる)。素人目には果たして採算が取れるのかと心配になってしまうが、プロスポーツの枠を超越したイベントを開くことで新たなファンの獲得も期待され、長期的に考えれば大きな利益につながるという算段のようだ。

この前代未聞の興行のメインイベンターとしてUFCが選んだのが、バンタム級王者のショーン・オマリーだ。2017年のコンテンダーシリーズ2にて衝撃的なKO勝ちを収めてUFCとの契約を得て以来──薬物検査失格による2年のブランクはあったものの──順調にKO勝ちを重ねてボーナスの山を積み上げスターダムに駆け上がった。

2022年10月のアブダビ大会において元王者ピョートル・ヤンとの大激闘を判定2-1で制したオマリーは、昨年8月には長期政権を築いていた王者アルジャメイン・ステーリングとの大一番へ。

(C)Zuffa/UFC

2R、ステーリングのテイクダウンを巧みに凌ぐと強引に前に出てきた王者に対して、下がりながら完璧なタイミングの右ストレート一閃。

倒れ込んだステーリングに鉄槌とパウンドの追撃を浴びせ、鮮烈なTKO勝利をもって戴冠を果たした。そして今年3月の初防衛戦の相手には、UFCで唯一敗戦を喫しているチートことマルロン・ヴェラを指名。

(C)Zufffa/UFC

5ラウンドを通して打撃で一方的に試合を支配して判定3-0で完勝し、コナー・マクレガー以来のスーパースターへの道を着実に歩んでいる。

対するマラブ・デヴァリシビリは、ここまで10連勝中。底知れぬスタミナを武器にテイクダウンを仕掛け続け、相手が何度立ち上がろうと前に出て組み伏せ続ける、他には真似のできない戦い方を身上とする。2年前、ベガスのシンジケートMMAにて修行中の朝倉海と出会って意気投合したことで、朝倉のYouTube動画を通してその親しみやすい性格を知るファンも多いだろう。

デヴァリシビリは長いことトップコンテンダーの座にありながらも、チームメイトのステーリングが王座に君臨してきたためタイトル挑戦表明をせずにいた。英語を母国語としないジョージア共和国出身ということもあり、白星を重ねながらもなかなか北米のカジュアルファン層から注目を集められずにいた。

実は本人はUFCで初勝利を挙げた6年前からオマリーとの対戦希望を口にしていたが、オマリーは一切反応せず。昨年5月には、ステーリングと睨み合うオマリーのジャケットを背後から取り、自ら着用してケージに登ってアピールするという直接行動に出たデヴァリシビリ。

が、それでもオマリーは「なんとも馬鹿げた行動だよな。あの時俺は、どこかの従業員がこっちの上着を脱がしてくれているのかと思ったから、そのまま渡したんだよ。あれがマラブだったなんて気付きもしなかった。まあ、奴はこれでファンに少しは知られるようになったかもな。俺のジャケットを着ることができた人間という、ただそれだけの理由でね」とまるで相手にしなかった。

オマリー戴冠=ステーリング陥落により、ついにチャンスが巡ってきたかに見えたデヴァリシビリだが、新王者は話題性と自分のリベンジを優先し、ヴェラを初防衛戦の相手に指名した。その先にはフェザー級王者のイリア・トプリアとの対決を希望し「まあマラブのように注目度の低い選手の優先度は、どうしても低くなるよな」と語っていたオマリー。

(C)Zuffa/UFC

が、デヴァリシビリが今年2月にヘンリー・セフードに完勝し流れは変わった。

この試合結果を受けて、オマリーは自らのYouTubeチャンネルにて「俺はみんながイリア戦を望んでいると思っていたんだ。でもファンは『お前はマラブから逃げている』とか『次はマラブと戦うべきだろ』とかうるさく言ってくる。いいだろう、次はマラブだ。チートを倒したらね。KOしてやるよ。奴の動きは雑だ。対して俺は正確無比。奴には速すぎるし鋭すぎる。失神させてやる」と宣言した。

そして翌月オマリーは予告通りヴェラに完勝し、今回のスーパーイベントでの両者のタイトルマッチが決定したのだった。圧倒的な人気を誇るオマリーに先を越されてしまっていたデヴァリシビリだが、ひたすら勝ち続けることで説得力を得てファンの声を動かし、ついに実力で挑戦権を勝ち取った形だ。

UFC最大のスターである現王者オマリーと、自他ともに認める最強挑戦者デヴァリシビリによる頂上決戦となるこの一戦。自らを「スナイパー(狙撃手)」と呼ぶ王者オマリーは、卓越したタイミングで瞬時に相手の顎を撃ち抜く左右の拳を持つ。対するデヴァリシビリは、常に前に出て手を出してはテイクダウンを仕掛ける恐るべきハイペースの戦いを、5R完遂してしまう底無しの体力の持ち主だ。

つまりこの試合の戦いの構図は、先々月のエドワーズ対モハメッドのウェルター級タイトル戦、先月のデュプレッシー対アデサニャのミドル級タイトル戦と同様──圧をかけ間合いを潰しグラップリングに持ち込みたい総合格闘家と、フットワークと打撃を駆使してその圧力を無効化したいストライカーによる凌ぎ合いということになる。

上述の二戦ではいずれも圧力をかけて組みに持ち込んだ側が勝利しているが、だからと言って必ずしも今回デヴァリシビリが有利ということにはならない。たとえば先日モハメッドは、巧みなスイッチと打撃を用いてエドワーズを金網側に追いやり、逃げ場を塞いでからテイクダウンを決めてみせた。しかし──同様に打撃を駆使して組みに持ち込むタイプではあっても──デヴァリシビリの戦い方はまた異なるものだ。

常にオーソドックスから思い切り良く踏み込んでパンチを放ってゆくデヴァリシビリ。打撃勝負上等の姿勢を見せておいて、その距離から上体を下げて(レベルチェンジして)シングルを取りにゆく。あるいはワンツー等で踏み込んだその勢いのままレベルチェンジして組みにゆく。

つまり、先日のモハメッドのように打撃で圧をかけ相手の逃げ場を封じてからテイクダウンに行くのではなく、デヴァリシビリはテイクダウンをまるで打撃のコンビネーションの一部であるかの如く放つ。そして、何回振り解かれようがそれを続け、やがて相手を呑み込んでしまうのが真骨頂だ。

無敵のデヴァリシビリ・スタイルがオマリー相手には命取りになる?!

(C)Zuffa/UFC

昨年3月のピョートル・ヤン戦では、5R中に何と48回テイクダウンに入るという前人未到のUFC記録を達成。

その上で判定3-0完勝している。

(C)Zuffa/UFC

これまで、このデヴァリシビリの「打撃の如くテイクダウンを放ち続ける」戦い方を止めることができた者は一人として存在しない。

上述のヤンやセフード以外にもジョゼ・アルドという元UFC世界チャンピオンが達がことごとくその軍門に下っている

しかし、まさにこのスタイルがオマリー相手には命取りになるのでは、という見方も成り立つ。たとえば同じバンタム級トップコンテンダーのコリー・サンドハーゲンは、この試合について「マラブは距離を詰めるのがすごく上手いわけではないよね。特に試合やラウンドの序盤はそうだ。それは本当にマズいことだと思う。なぜなら、ショーン・オマリーは距離を保つことにおいてベストの一人だから。同時に、相手が自分に距離に入って来ようとしたところで、酷い目に合わせることにおいても彼はベストだ」とオマリー有利を予想している。

オマリーのヘッドコーチのティム・ ウェルチも「マラブのように足を残してバランスを崩した状態で振り回してくる相手をKOするのは、ショーンには難しいことではないよ」と語っている。

実際、昨年8月にオマリーがステーリングを仕留めたのは、2R、打撃を放つステーリングが──デヴァリシビリがよくやるように──強引に体を伸ばして前に出てきた瞬間だった。卓越した距離感とタイミング、一撃必殺の左右の拳を持つスナイパー=オマリーが「まあマラブがレスリングで戦おうとしてこようが、打撃で戦おうとしてこようがどっちでもいいよ。早いうちに奴の顎を捕らえるよ」と自信を覗かせるのには確固たる根拠があるのだ。

が、その試合をステーリングのセコンドとして目の当たりにしたデヴァリシビリもまた、「オマリーは優れたフットワークとスピードの持ち主で、下がりながらのカウンターも打てて確かに危険だ。でも僕がやるべきはオマリーではなく、自分であることに集中すること。奴が勝つには僕をKOする必要がある。それさえ起きなければこの試合はこっちのものだ。スタミナには自信があるし、パンチもテイクダウンもある。防がれても構わない。今までいくらでも経験済みだ。殴られてもいい。僕はそれで目覚めるだけだ。今まで誰にもKOされたことがない。奴をブレイクする(心身を打ち砕く)よ」と揺るぎない自信を見せている。

他の追従を許さないスピードとフットワークに加え、体の微妙な動きを用いたフェイントの精妙さも天下一品、そして侵入者はたちまち撃ち落としてしまうオマリーの制空圏。そこにノンストップ・カーディオモンスターのデヴァリシビリがいかに侵入し、突破を試みるのか。一瞬たりとも見逃せない。

■視聴方法(予定)
9月15日(日・日本時間)
午前8時30分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前8時00分~U-NEXT

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45 MMA MMAPLANET NEXUS NEXUS36 o マシン 佐藤龍汰朗 将斗 瓜田幸造

【Nexus36】右2発で瓜田をマットに沈めた佐藤が決勝進出。マシンをKOした将斗と初代ミドル級王座を争う

【写真】将斗と佐藤はともにKO勝ちで決勝へ(C)MMAPLANET

<ミドル級王座決定T準決勝/5分2R+Ex>
佐藤龍汰朗(日本)
Def.1R1分10秒 by KO
瓜田幸造(日本)

サウスポーの佐藤がプレスをかけていく。ガードを下げてサークリングする瓜田は、蹴りで距離を取る。ワンツーから佐藤にケージを背負わせた。オーソドックスにスイッチした佐藤の右カーフが当たる。インサイドから右ストレートを効かせた佐藤は、さらに右を決めて瓜田を沈めた。

もう一つの準決勝戦は2Rに将斗がマシンを右ストレートを効かせてからのラッシュでストップ。11月28日に後楽園ホールで行われるNEXUS初代ミドル級王座決定トーナメント決勝は、佐藤と将斗とで争われることとなった。


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比嘉大吾【ボクシング】「軽めじゃないんですか」前代未聞?公開練習でグロッキー“キツすぎる”爆走からの全力パンチ

ボクシングの比嘉大吾が8月19日、都内のジムで王者・武居由樹に挑むWBO世界バンタム級タイトルマッチへ向けた練習を公開した。

特徴的だったのが、野木丈司トレーナーの指示に従ってランニングマシンを走ってから全力でサンドバッグにパンチを打ち込んでいく練習。無酸素運動で爆発的に体を動かすため、すぐに比嘉はグロッキー状態に。「公開練習って軽めじゃないんですか」とぼやくのも無理はないほどの強度だった。

武居を指導する八重樫東トレーナーもしっかりと視察。旧知の間柄とあって「八重樫さんが笑わしに来てる」というジョークも飛ばしながらも、内容そのものは非常に熱の入ったものだった。

#公開練習 #異例のきつさ #デイリースポーツの動画

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45 AB MMA MMAPLANET o UFC UFC298 YouTube マシン 中村京一郎 中村倫也 朝倉未来 朝倉海 鶴屋怜

【UFC】中村倫也のMMAファイター科学─01─「右手を見つめ直していると、左手のことが分かりました」

【写真】医学、人体構造学、精神論、武術論──どのような話になっても、MMAに帰結する。それが中村倫也との会話だ (C)MMAPLANET

2月17日のUFC298でカルロス・ヴェラに勝利も、右の拳を骨折し長期欠場となった中村倫也。金属をいれずに自然治癒を選択し、今ではパンチを打てるようにまで回復した。そして来月にはATTに8週間の予定で練習をするという。
Text by Manabu Takashima

改めて自然治癒を選んだ理由を中村に尋ねた。そして右の拳を負傷したことで、体の構造を理解し、握りを変えることで左のパンチの威力が増したと笑顔を見せる。

ファイターは体を動かさないでいると、周囲からおいて行かれるという想いに支配されがちだ。この現状をポジティブに捉え、中村は前進を続けてきた。実際にコースを走らなくても、データ解析をすることでレーシングマシンは速くなる。ガレージで速くなるレーシングマシンと同じように、中村倫也はギブスで拳を固定した間も強くなっていた。


やっぱり、人間の体ってあんまり切って、開けない方が良い

──まず、拳の自然治癒に関して。2月に右の拳を骨折し、MMAファイターはプレートを入れる手術を行うのが普通ですが、倫也選手はそうしなかった。周囲の練習仲間も驚く選択をしたのですが、その後の経過はいかがですか。

「まず拳の骨折に関して、他の体は全部動く。だから練習に関して、支障はないぐらいに思っていました。ただ、試合中に骨折をすると使い続けているから、回りの組織も破壊してしまっているんです。骨が皮膚の下でプカプカと浮いていて、血の海を泳いでいるというイメージですね。だから歩いていて躓いただけでズレてしまう。

ギブスで固めて、本当に動かさないようにして。あの時のストレスは相当でしたけど、そこを耐えたおかげでくっつきました」

──ギブスを外したのは、いつ頃ですか。

「4月になってからですね」

──もうシ〇シ〇もできると。

「それは左手なんでって、前のインタビュー(河名)マストが突っ込んでいたじゃないですか(笑)」

──アハハハ。

「でもギブスは取れても、格闘代理戦争で戦っていた京ちゃん(中村京一郎)のパンチを受けることとかできなかったです。思った以上に時間が掛りましたね。今もパンチの強度を上げて、MAXに近づけている途中ですね。腰を入れて思い切り打つには、まだ耐久性が戻っていないです」

──拳の骨折は繰り返すことも多いですが、自然治癒にすると回避できるようなものなのですか。

「そうなると思います。骨が折れた面に血がたまって、それが固くなり接着剤の役割になって骨融合をします。プレートを入れると、この接着剤役の血を洗い流す必要があって。プレートを入れるために血が肉となり、骨となるという過程を手術で洗い流してしまうんです。鉄を入れるので、血算は要らないですよ、と。それだと本来、人間が持つ治癒能力が最大限までいかないらしくて」

──その判断は倫也選手自身がされたのですか。

「これまでも肩とか、複数回の手術をしてきて……。やっぱり、人間の体ってあんまり切って、開けない方が良い。中を酸化させない方が良いという考えがありました。その判断を自分でしたのですが、それには川越にそういう医療をしてくださる名医の方がいたからです」

──治療箇所は違いますが、歯を抜かない。被せモノはしても根っこは少しで残し、神経を取らないという歯科医の先生もいますね。

「やっぱり必要だからあるんですよ。大切さは、その時は分かっていなくても、後から分かることだってある。そういう風に感じてします。普段は意識をしない箇所もそうですし、自然のままで治したいと思いました」

──さきほどパンチの話はありましたが、組みの方は如何ですか。

「クラッチは100パーセントで組めています。そこに関して拳のケガがあるまで、握り方やどんな風に捩じっているのか等、気にしていなかったことを凄く考えるようになりました。手がどう体に繋がっているのかを、メチャクチャ意識するようになりましたね。

クラッチの形も、場合によっては変えるようにもして。ここに気付くことができて、凄く良いことがたくさんあったという風に思えています」

──そこですね、中村倫也というファイターの特徴は。何かあると、領域が広がっていく。

「自分の体のことでいうと、ガルシア戦に向けて追い込みをしている時に左手の薬指を突き指して、今も節が膨らんだままなんです。たかが突き指だと、そのまま放置していて。でも右を折って、組み方を見つめ直すと、薬指がまるで役割を果たしていないことが分かったんです。

その時、UFCデビュー戦も2戦目も左のパンチで倒せる気がしないって感じていたことと結びついたんです。

原因が分かっていなくて、ずっと違和感があったので。右手を見つめ直していると、左手のことが分かりました。じゃぁ、左のことも考えて握り方を直さないといけないって。右だけじゃなかったんですよ。左も修正をしたんで、左のパンチがメチャクチャ良くなっていて(笑)」

──これぞ、満面の笑みという笑顔になっていますね(笑)。

「また、倒せる。これで、左のパンチで倒せますからね」

──ではケガのブランクなどなかったようなものかと。

「そこに関しては、来年で30歳なので。ブランクということは、ちょいちょい過っています。『お前には時間はないからな。時間を大事にしろよ』と毎日、内なる声が聞こえてきます。その声が聞こえてきた時に現状を苦しく感じるのか、励みにして『やろう』って思えるのか。この違いは大きいと思います。僕の場合は後者を選択することをすぐにできた。だから『今が大事』と取り組んで、積み重ねることがでできました。

なので焦りというのはなかったです。京ちゃんの試合が3度あったり、常に試合がある選手とピリピリした空気で触れさせてもらって、本当に一緒の気持ちでケージに上がっていたので。そうすることがサポートをしている選手のためになるだけでなく、メチャクチャ自分のためにもなりました。

京ちゃんの場合でいうと勝って当然というなかから、一芸に秀でた強い選手が出てきた。やりたいことは分かっている相手に、それをやらせないということを必死で考える。試合まで1カ月のスパンが2度続き、ずっと考えていました。そこも自分にとって、凄く良い経験になったんです」

ATTは強い選手は集まっていますが、強度が高いとは思わなかった

──そのなかで8月からATTに行くと決めたのは。

「前回の試合前に、勝ったらすぐにATTに行って夏ぐらいには試合をしようと思っていました。それが延びたということですね」

──ATTの練習は世界から強豪が集まって、強度が高い練習ができるということなのでしょうか。

「ATTは強い選手は集まっていますが、強度が高いとは思わなかったです。むしろ頑張らないで、必死になることなく如何に相手を制するのか。いつも通りの呼吸で相手を制するのか。そこを皆が追及している感じです。

瞬発的な動きをすると、『それは力だ』って指摘されて。そうじゃない動き方を教えてくれるんです。剛と柔なら、ATTは柔の動きを追求するようになっていますね」

──トップレベルだからこそ、達人系になってくるのですね。

「そういうことを意識して、やりあっていますね」

──ところで倫也選手は思考しまくるタイプではないですか。

「ハイ」

──それだけのレベルにある選手がいて、導いてくれるコーチがいるなかでも、やはり考え抜いているのでしょうか。

「あぁ……やっぱり考えてやりますね。最初は相手の情報をインプットするので精いっぱいでした。そこから一段階進むと、スパーリングのノートとつけていて。練習に行く前も、それを把握して何を試すのかを決めています」

──しっかりと考えるには、精神が安定しないといけないと思います。ケガをしても、落ち込まずに前向きになるように。同時に、高揚感があってもまた思考に影響はあるかと。例えば平良選手が6連勝し、鶴屋怜選手もデビュー戦で勝利した。朝倉未来選手がUFCにやってくることで、UFCが日本で盛り上がるなどと考えると、精神的な部分で影響が出るのでしょうか。

「一緒くたにはならないです。UFCが注目されると嬉しいですし、朝倉海選手の件はヤバいです。今はバンタム級ですし、『海選手が来てくれて、もしかすると戦うことがあるかもしれない』という風に発信すると、皆がメチャクチャ喜んでくれます。これまでとは反応が違いますね。やっぱり届いている層が違います。とはいっても、それはそれで。自分に何が必要なのかという日々の過ごし方が、影響を受けることはないです」

──その気にしてくれる層が広がると、怜選手のようにUFCデビュー戦で勝利しても、色々と批判される。倫也選手も「2つとも判定勝ちだろ」って言われるかもしれないです(笑)。

「アハハハハ。でも怜君に対しては……長い氷河期があってのコレなのに。ここで見始めて、怜君に何かを注文を付けるというのは……」

──氷河期の日本のMMAも良かったですよ。昆布とカツオだけでお出汁を創っているような感じで。合成添加物が混ざることがなくて。

「あぁ、なるほど。そうですよね。そういう見方ができるんだ。でも、もう怜君へのネガティブな反応は期待値の高さと捉えるしかないですよね。僕のデビュー戦ではネガティブなことを言われることはなかったけど、あの時は俺が俺に怒っていましたからね(笑)」

──アハハハハ。色々なリアクションはありますが、海選手効果があって批判も出てくるということですね。

「僕も2つの判定勝ちですからね。覚悟しておきます(笑)。とにかくUFCに興味を持ってくれる人が増えることは、嬉しいことです」

<この項、続く>

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【UFC303】UFCデビュー、鶴屋怜「『達郎君が戦ったことのある相手』というのは、プラスに考えています」

【写真】いよいよUFCデビューを迎える、鶴屋怜 (C)SHOJIRO KAMEIKE

29日(土・現地時間)、米国ネヴァダ州ラスベガスのT-モバイル・アリーナで開催されるUFC303で、いよいよ鶴屋怜がカーロス・ヘルナンデスとオクタゴンデビュー戦を戦う。
Text by Shojiro Kameike

今年2月にRoad to UFC2023のフライ級を制し、UFCとの契約を勝ち取った鶴屋が本当の意味で世界最高峰に挑む。そんな鶴屋にRTUの最中にスタートした土居進トレーナーによるフィジカルトレーニング、そして気になるあの2人についても訊いた。


ATTではペドロ・ムニョスがよく面倒を見てくれて

――試合から10日前のインタビューとなります(※取材は6月19日に行われた)。今は減量期に入っているのでしょうか。

「はい。現地入りまでに脂肪は落として、あとは水抜きという状態にしていきます」

――海外での水抜きは国内とも勝手が違うかと思います。Road to UFCの3試合では、いずれも現地で水抜きも順調に行うことができましたか。

「海外で水抜きするのはRTUが初めてでしたけど、問題はなかったですね。現地に5日間もいると意外と慣れてきて、日本と変わらない感覚で水抜きができました」

――そのRTUで3試合、さらにATTで練習することで、海外の滞在も慣れたのではないですか。

「やっぱり米国となると時差ボケは出て来ますよね。ちょっと気持ちが悪くなったりとか。でも現地に入ってから3日ぐらい経てば、普通の状態には戻ります」

――今年2月にRTUを制してUFCとの契約を勝ち取ってから、いつ頃に本戦デビューを迎えたいという希望はありましたか。

「あくまで自分の希望ではありましたけど、8月か9月ぐらいにランカーと対戦したいという気持ちはありました。初戦でランカーと試合して、あと年内はもう1試合ぐらい戦えばいいかな、という感じで。

だけどATTに行って1週間と少しぐらい経った頃、急に『ナンバーシリーズで試合をしないか? 』という連絡が、米国にいる時に来たんですよ。試合まで1カ月半ぐらい……自分も全然、気持ちが乗らなくて。でも、いろいろ考えて『出よう』と思いました。やっぱり初戦がPPV大会になるのは大きなことですし」

――試合順はともあれUFCデビュー戦がラスベガスで、しかもT-モバイル・アリーナというのは大きいですよね。

「そうですね。ファイターとしてはラスベガスの大きな舞台で試合をするのは夢ですから。『ひとつ小さな夢が叶ったな』という気持ちはあります」

――オファーが来た時には、大会のメインがマクレガー×チャンドラーになると決まっていたのでしょうか。

「まだ正式には決まっていないけど、チラホラ噂されていた――って状態でしたね。自分もオファーが来た時に『マクレガーが出るかもしれないなぁ』ということでOKしたのもあります」

――自分がT-モバイル・アリーナで試合をしたあと、現地でマクレガー×チャンドラーを観ることができたら一挙両得かもしれません(笑)。その後、マクレガーの試合はなくなりましたが……。

「アハハハ、そうなんですよ。T-モバイル・アリーナのPPV大会のほうが、APEXで試合をするよりも注目は浴びますし。だから少し急ではあってもオファーを受けました。

でも最初は『マクレガーと一緒に大会に出られて嬉しいな』と思っていましたけど、調整や減量を進めて、今はもう自分の試合が最優先になりますからね。マクレガーが出ないと聞いて残念ではありますけど(苦笑)」

――米国滞在中に試合のオファーが来たことで、現地で対策練習を始めたのでしょうか。それとも日本に帰国してからでしょうか。

「米国に行って1週間と少し経ってからオファーが来たので、そのことをコーチや周りの選手に伝えたら一緒に対策練習をやってくれました。ATTではペドロ・ムニョスがよく面倒を見てくれていて、ペドロに試合の話をしたら『じゃあオーソドックス(カーロス・ヘルナンデスはオーソ)対策のミットを持ってくれる人を呼ぶよ。今日は何時にジムへ来ることができる?』とセッティングしてくれたんですよ。ペドロも相手の動画を視て、いろいろ教えてくれたり。本格的に対策練習をしたわけじゃないけど、いろいろ対策を考えたりしてくれた――という感じです」

(C)HIROSHI TSURUYA

――なるほど。

ATTに行く前から、魔裟斗さんのフィジカルコーチを務めていたことで知られる土居進トレーナーによる、いわゆる「土居トレ」が始まっています。

「土居トレが始まったのは半年ぐらい前で、父(鶴屋浩)が土居さんにお願いしたそうです」

鶴屋浩 僕がずっとゴン格に掲載されていた土居トレの連載を読んでいたんですよ。ある時、試合会場で土居さんにお会いした際、ご挨拶して「今度ウチの選手をお願いします」と伝えました。最初はずっと土居さんに千葉へ来ていただいて、今は怜が土居さんのジム(新宿のパーソナルトレーニングジムSkyLive-R)に通っています。

――これまで行ってきたトレーニングと土居トレで何か違いはありますか。

「これまで、というか――もともと筋トレやフィジカルトレーニングはやっていなかったんですよ。高校までレスリングをやっていて、フィジカルで負けることもなかったし、練習もスパーリングばかりでした。

でも土居トレを取り入れてから、通常から筋肉質になってきました。昔は結構太った状態から減量していたんですけど、普段から脂肪もつかなくなってきて。さらに減量したあとも筋肉が残って、良い動きができるようになりましたね。筋肉量が増えたおかげで、減量も水抜きがやりやすくなりました」

――土居トレといえば、まずは走りこんだりパワーマックスを漕ぎまくるというイメージがあります。

「自分の場合はパワーマックスとローイングマシンを漕ぎまくっていますね。トレーニングが終わったあとは毎回、足が痛すぎて動かないぐらいです。終わって10分ぐらいジムの床に寝転がっている状態で」

――半年前ということは、RTUの時にはもう土居トレを始めていたのでしょうか。

「準決勝の後から、ですね。準決勝では腕がパンパンに張っていたんですよ。足を怪我していてトレーニングできていなかったこともあるでしょうけど。で、決勝戦の前から土居トレを始める時、土居さんに伝えました。すると『そういう時は――』って、腕が張りにくくなって、さらに力も継続するトレーニングを組んでくれましたね」

――本戦デビューに向けて、土居トレの効果は大きな武器となるでしょうか。

「そうですね。スタミナ面も今までとは違いますし、組んだ時の腕の張り方も変わってくるでしょうから。RTU決勝は1Rで終わったから良かったけど、これが3Rになったら大きく役立つと思います」

『達郎君が勝っているから、俺も普通に勝てるよな』

――その本戦デビュー戦の相手はカーロス・ヘルナンデスに決まりました。ヘルナンデスは2023年12月、平良達郎選手にKO負けを喫しています。どうしても今回の試合は、平良選手と比べられてしまうでしょう。

「どうなんですかね? 自分としては『達郎君が勝っているから、俺も普通に勝てるよな』と思っているぐらいですよ。まぁ『達郎君が勝っているから』と言ったら変かもしれないけど……、別に怖い相手じゃないですし。アハハハ」

――鶴屋選手が平良選手のことを知っているからこそ、ヘルナンデスの力量を測りやすいということですか。

「そうです。達郎君が2RでKOしているから、自分がどれくらいでフィニッシュできるかどうか。それで自分がランカーに通用するかどうかも分かりますしね。自分としてもフィニッシュできると考えていますし、『達郎君が戦ったことのある相手』というのは、自分はプラスに考えています」

――このマッチメイクは、むしろ鶴屋選手にとってアドバンテージになるかもしれないと。

「全く名前も知らないけど謎の強い選手と当てられるよりは、達郎君と対戦したことで日本でも知っている人はいるでしょうし、その相手をブッ飛ばせばオイシイと思っています」

――ではカーロス・ヘルナンデスの印象を教えてください。

「ストライカーなんだろうけど結構テイクダウンに来るな、というイメージですね。テイクダウンに来てくれれば、ありがたいです。そのほうが自分も疲れないし、1Rでフィニッシュできるんじゃないですか。逆にマウントを取りに行くと、バネで跳ね返してくる印象があるんですよ。バネの力は強いので、そこだけ気をつけて削っていけば問題ないです」

朝倉選手がフライ級でやるなら、自分は全然やります

――最後に、他の選手についてお聞きします。まずは先日、平良選手がアレックス・ペレスを下した試合について感想をお願いします。

「お互い5R戦うつもりでいてけど、結果的に2Rにああいう決着になったと思うんですよ。自分としては相手のランカーとしての力は分かりづらい試合でしたね。もうちょっと長く視たかったです」

――ではもう一人、朝倉海選手のUFC参戦が発表されました。ここ最近では日本人選手がRTUやDWCSを経ずに本戦出場というケースは珍しくなったと言えます。

「う~ん……、自分はRTUに出てUFCと契約するスタイルが多くなってくると思っていたので、『そういう形もあるんだ』と思ったぐらいですね。朝倉選手がフライ級でやるなら、自分は全然やりますし。まだ出場が決まったばかりなので分からないですよね」

――平良選手の活躍と朝倉選手の参戦もあり、またUFC日本大会の開催も話題になっていうるようです。

「日本大会が開催されたら面白いですね。もっと日本の人たちがUFCのことを知ってくれるでしょうし、そのためには良い機会だと思いますよ。まず自分がデビュー戦はしっかり1Rで、一本かKOで勝ちます。応援よろしくお願いします!」

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【Fighting NEXUS】河村泰博× 小倉卓也 バンタム級タイトル戦決定!

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8月25日にニューピアホールで開催されるFighting NEXUS vol.36。初代ミドル級王座決定トーナメント準決勝として行われる佐藤龍汰朗(坂口道場一族)×瓜田幸造(掣圏会瓜田道場)、将斗(AACC)×マシン(BLUE DOG GYM)の2試合に日韓対抗戦の2試合など初のニューピアホール開催に相応しい好カードが並びました。

その中でも注目なのは河村泰博(和術慧舟會AKZA)×小倉卓也(スカーフィスト)のバンタム級タイトルマッチでしょう。河村はRIZINにも参戦して、歯に衣着せぬポストが話題になる事も多い寝技師。レッグハンター須藤拓真、森永ユキトから一本勝ちしてNEXUSのバンタム級王座を戴冠。その後、パンクラスに参戦すると強豪の井村塁からダースチョークで一本を取っており、その極めの強さは際立っています。

対する小倉は修斗やPFCを主戦場にしてきたベテランファイター。最近では渡部修斗に敗れたものの、大石真丈、小林博幸に腕十字で一本勝ち。昨年12月の次期挑戦者決定戦で唐沢タツヤをギロチンチョークで下して河村戦に辿り着きました。最近になってメキメキと極めが強くなってきた印象。河村を相手にどこまで抵抗出来るのか興味津々です。

展開は河村は自ら下になってでもグラウンドで勝負してくるはず。小倉は上をキープしてチャンスを見て一本を狙うのか。もしかするとスタンド勝負を挑むのか。見る側の想像力が掻き立てられます。そうこうしているうちにFighting NEXUS vol.36でましてもビッグカードが。。。こちらは別途まとめます。今大会は会場観戦必須だな。
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【NEXUS】ミドル級王座決定トーナメント開催。5/12@GSP、8/25@ニューピア、11/28@後楽園ホール

【写真】出場6選手と山田代表&渡部マッチメイカー(C)MMMAPLANET

3日(土)、東京都新宿のGENスポーツパレス内メディアセンターでFighting NEXUSがミドル級王座決定トーナメントの開催と出場7選手および1回戦のカード3試合を発表した。
Text by Manabu Takashima

会見にはマシン、瓜田幸造、たまよせゆきと、磯部鉄心、佐藤龍汰朗、ヨコヤ•マクレガーのトーナメント出場6選手と山田峻平NEXUS代表、渡部修斗マッチメイカーが出席して行われた。

「NEXUSをここまでやってきて、核となるミドル級の選手ができたことがミドル級王座決定トーナメントの開催に拍車をかけたということはあります」という山田代表の言葉に続きマイクを握った渡辺マッチメイカーから「出場候補選手リストを出して自分が交渉したり、山田さんにお願いしたりして。本当に良い素晴らしいメンバーに揃って頂けて自分は本当に嬉しいです。良いトーナメントになればなと思っています」と熱い想いが語れた。

ここで出場選手たちが登壇し、この日は出席できなかったカタナマンも含め、トーナメントに対する意気込みをマイクで話した。

マシン
「俺が主役のトーナメントなので勝たないと意味がないと思う。

ベルトを巻いて次のステージへ行ければと思います」

佐藤龍汰朗

「全員仕留めに行くのでよろしくお願いします」

カタナマン(※代読)
「東京在住の37歳で某大手企業勤務の趣味で格闘技を嗜んでいます。この度は仕事につき会見に出られないことを深くお詫び申し上げます。さて、現在私は北海道の団体PFCのミドル級ランキング1位を取らせていただいています。地元が東京にも関わらず勝手に北海道の団体出て勝手に代表している気持ちになっています。北の国からならぬ、おら東京さいくだリターン大作戦として、ミドル級トーナメントの台風の目になります!話は変わりますが現在、物価上昇や自然災害だの混乱の世の中であります。ただ、人間が生きる活力だけはどんな環境下にあっても失ってはいけないものだと考えます。その活力を、戦いを通して生み出せれば私この上ない喜びといえます」

瓜田幸造

「修斗君からミドル級トーナメントをやるので参戦しませんかと声をかけてもらえたのが嬉しかったです。

今年50歳の誕生日を迎えるので、いい誕生日を迎えられるようにかき回したい」

磯部鉄心
「かつて国内で盛り上がっていたミドル級が今はそんなに動きがないので、このトーナメントで動き出す初動になることが嬉しく思います」

たまよせゆきと
「今回デビュー戦として出ることになりました。

格闘技を始めた時からベルトを目指してきたので、ベルトを獲って次の舞台まで活躍したいと思います」

ヨコヤ•マクレガー

「隣に同じジムの選手(磯部)がいるんですが、戦う時は関係ないので全員ぶっ倒しに行きます」

同トーナメントは5月12日にGENスポーツパレス、8月25日にニューピアホール、11月28日に後楽園ホールという3大会、半年の長丁場で争われ、初戦の顔合わせはマシン✖カタナマン、佐藤✖ヨコヤ・マクレガー、瓜田✖磯部、たまよせ✖TBAということが伝えられた。ただし、勝ち上がった選手はシャッフルされ現状トーナメント枠は存在していない。

ここから質疑応答となったが、MMAPLANETの質問に対する選手、主催者の返答を紹介したい(※要約)。


まず83.9キロがリミットのミドル級にあって、出場選手に現状の体重を尋ねると、以下の通りだった。

たまよせゆきと(97キロ)
瓜田幸造(92、93キロ)
マシン(100キロちょいぐらい)
佐藤龍汰朗(98キロぐらい)
ヨコヤ•マクレガー(97、98キロ)
磯部鉄心(84、85キロ)

──磯部選手、ほぼ通常体重で戦うわけですが、それでもメリットがあるとすればどこになりますか。

磯部 背丈は皆同じぐらいなので、皆、差はないと思います。

──山田代表、会場の格が上がっていくトーナメントですが、ここに付随して今年のNEXUSの流れを教えていただけますか。

山田 GENスポーツパレスだと本当に有難いことにお客様が入りきらないということが出てきたので、ニューピアホールで二回転させていただいたりだとか、後楽園ホールの平日使用3度も今年で終わりますので、来年から土・日を複数回やらせていただくということになっています。会場の選定も今年から来年にかけて少しずつ変わっていくのかなっていうところです。

──修斗さん、一人残っている出場選手のヒントを?

渡部 本当は決まっていたのですが、ケガで欠場になったので今から探すんですけど。自分は強い人が欲しいので、山田さんに「この選手でお願いします」とお願いしたんですけど、「ちょっと急すぎるから、ちょっと考えさせて」と言われて(笑)。この人がぶっちぎりで優勝してしまうかもしれないと言われたので、そこは相談です。対戦相手がたまよせ選手で、アマチュアデビュー戦を見て一発で「この選手は欲しい」と思って。その場で「来年お願いします」という話をして。たまよせ選手の相手になる選手なので、どちらが勝っても楽しみです。なのでそれなりの選手が欲しいですね」

──ゴン格の熊久保記者が会場名のGSP(GENスポーツパレス)を見て、「これはジョルジュ・サンピエールじゃないの?」と言っていたのですが……。

渡部 そんなギャグになりますか(笑)。

熊久保 言ってないっ!!

──GSPが最後の一枠ということは?

渡部 GSPは予算の関係で、ないかと(笑)。

質疑応答終了後に山田代表から選手に「ベルトを獲って終了ではないので、ベルトを獲った後のプランを具体的に教えて欲しい」というリクエストがあり、たまよせ、瓜田、マシンがRIZINの名を挙げた。

他方、佐藤は「パンクラスに戻って、パンクラスのベルトを取りに行きたい」と話し、ヨコヤ・マクレガーは「海外とか大きな団体」、磯部は「ベルトの勝ちを上げるには、動かさないと上がって行かないと思うので出る試合を全てタイトルマッチにしてベルトを動かしていきたいと思います」ということだった。

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