カテゴリー
45 MMA MMAPLANET o ONE ONE FN24 ダニエル・ケリー マイッサ・バストス

【ONE FN24】ケリーのヒールを凌いだマイッサがボトムから攻め続けてSG世界女子アトム級王座を奪取

<ONEサブミッショングラップリング世界女子アトム級(※52.2キロ)選手権試合/10分1R>
マイッサ・バストス(ブラジル)
Def.3-0
ダニエル・ケリー(米国)

ケリーが距離を詰めていく。組み手争いでマイッサが、くくった長い髪を気にしている。マイッサはボトムを選択したが、ケリーが付き合わない。再びマイッサがボトムからリバースデラヒーバで足に絡み、ケリーに尻もちを着かせたがスタンドに戻る。あくまでボトムで戦うマイッサが、リバースデラヒーバから潜りにいくも、ここもケリーは離れる。

スクランブルからケリーがトップを奪った。ケリーのリストを取ったマイッサは、足を取りながらバックを狙うもケリーがロープを背にして上半身を起こしている。左足をたぐってトップを狙ったマイッサ。しかしケリーが前転してトップに戻る。右スネをケリーのヒザ裏に当て、足をすくってスイープしたマイッサに対し、やはりケリーがトップに戻った。

スクランブルからバックを狙うマイッサだが、それをケリーが許さず。腕をかけていくマイッサから離れたケリーが、マイッサの左足を取って一気に外ヒールへ。マイッサが回転して逃れたがジャッジへの印象は強いか。さらにケリーがニースライドパスを狙う。マイッサが足を取りに行くも、ケリーがマイッサの足に乗っかり潰す。

マイッサのトーホールドも防いだケリーが立ち上がる。パスを狙ったケリーに対して、カウンターでサドルに入ったマイッサだが足関節の体勢には入れず。マイッサは再びバックテイク狙いに戻したが、ケリーがトップからパス&足関節で攻め続ける。しかしマイッサがストレートフットロックからヒールを仕掛けたが、これは凌がれて試合終了となった。

マイッサがユナニマス判定勝ちを収め、SG世界王座に就き、ファイトボーナスも獲得した。


The post 【ONE FN24】ケリーのヒールを凌いだマイッサがボトムから攻め続けてSG世界女子アトム級王座を奪取 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
45 AB MMA MMAPLANET o ONE ONE FN24 UFC YouTube エリアス・マムーディ エンフオルギル・バートルフー キック グスタボ・バラルト シャミル・ガサノフ ジャレッド・ブルックス ダニエル・ケリー デッドゥアンレック・ティーデ99 パンクラス フィリッピ・ロボ マイッサ・バストス マンスール・マラチェフ リト・アディワン ルンピニー 修斗 内藤大樹 和田竜光 大沢ケンジ 山北渓人 猿田洋祐

【ONE FN24】山北渓人、世界最高峰で日本人対決。猿田洋祐「日本のストロー級を背負って来た自負はある」

【写真】長女、彩雪(いぶき)ちゃんと。ママがお迎えにくるまで、FIGHT BEAT WORKOUTで一緒に過ごす(C)MMAPLANET

明日3日(土・現地時間)、タイはバンコクのルンピニー・スタジアムでONE Fight Night24「Brooks vs Balart」が開催され、猿田洋祐が山北渓人と日本人対決を行う。
Text by Manabu Takashima

修斗とONEの世界王座を巻いたベテランが、パンクラス王者から世界最高峰ONEストロー級王座を目指す山北と戦う。世代、日本でのホームが違う山北との一戦はジム経営&指導をしながら、限られた時間をやりくりして現役ファイター生活を送る猿田にとって自分の戦いであり、自己肯定するためのファイトとなる。


苦しい試合になるのは分かっているので、そういう練習を小野島さんの力を借りてやっています

――2月のマンスール・マラチェフ戦、ジム経営者として初めて挑んだ試合に敗れ、今回の山北選手との試合はそれ以来となるファイトです。

「1年半以上、試合期間が空いての復帰戦でしたが、もちろん勝つつもりで戦っていました。準備期間は3週間しかなくても、ベストは尽くしました。その結果の敗北ということで、納得はしています。強かったです、あの押し込みとか。ケージだったら、もっと何もさせてもらえなかったかもしれないです。押し込みの力強さは、過去に感じたことがないモノでした。

でも3週間の準備で、あのレベルの選手とある程度戦えた。そこは把握できたので、それと同時に時間をかけないといけないということが分かりました」

──以前とは違いベルトを意識せず、強い相手と戦っていきたい。そのように話していた猿田選手ですが、復帰戦に負けても同じ気持ちで今回の試合に臨んでいるのでしょうか。

「年齢もあるので、どういうモノが残せるのか。ジムに関しても今はセミパーソナルのフィットネスジムですが、将来的には選手育成のジムを創りたいという目標を持っています。その時になって今の自分のように35歳を越えた選手が、どのような練習をして、どういうメンタルで試合に臨めば良いのか──。

もしくは遅くに格闘技を始めた人が、30代後半で結果を残すためにどういうトレーニングをすれば良いのか。それを自分の体を使って、実験しているような感覚で創っています」

──今の猿田選手にフィットしたMMAファイター人生を送ると。

「20代の後半、30代の前半のように長い時間の練習とか、3部練習とかは体の面、仕事の面で厳しくなっています。限られた時間で、試合に勝つために工夫をした練習をやっています。それで結果を残せるのか、それこそ今の自分がやっていることです。だから結果が欲しいです。

今できる最大限の練習をしているので、結果が伴わないと続けることができなくなるということですね」

──その限られた時間で工夫した練習というのは、どういうものなのですか。

「ジムでの指導が昼からある日は、朝早くにHEARTSに今年のネオブラTのストロー級で優勝した船田侃志に来てもらって練習して。今日のように夕方からの日は、小野島(恒太)さんと午前中に、CBW東中野でマンツーマンでスパーリングをしてもらっています。

HEARTSで皆が集まってやるプロ練習にも出たいのですが、ジムの都合で出られないのが現実で。だから自分のジムに選手に来てもらったりしています。それとマンツーマンの練習は効率が良いというのもあります」

──というと?

「自分の試合のためだけの練習ができるということですね。誰かに合わせたり、決められたことをするのではなくて。やりたいことだけを集中して短時間でできます。時間に追われているので、マンツーマンは良いと思います」

──つまり小野島選手とのマンツーマンの練習は、山北選手との試合のことを考えられたトレーニングで、小野島選手が強くなるとかということは考えていないことになるのですか。

「そこまで仮想・山北ということではないのですが、誰と戦っても最後は気持ちが大切になります。苦しい試合になるのは分かっているので、そういう練習を小野島さんの力を借りてやっています。

リバーサルジム川口リディプス時代に小野島さんが練習に来てくれて。小野島さんは打撃の選手で、僕は柔術がベース。互いにレスリング──つなぎの部分が足らないと感じていて。それこそ山北選手と同じMe.We所属でレスリングが得意な中村憲輔さんにパーソナル・レッスンをお願いして一緒にやるようになったのが12、13年前です。あれから週に1度、試合前は2度という感じでずっと一緒にやってきました」

──もうHEARTSのプロ練習には一切参加していないのですか。

「いえ、それでも金曜日にはHEARTSのレスリングとグラップリングのプロ練習に出させてもらっています」

──大沢ケンジさんと顔を合わせるのは、その日だけですか。

「ハイ。でも、ずっとLINEで連絡を取り合っています。自分が仕事でチェックできていない試合とか、『絶対に視ろ』ってメッセージが来て。視たら、その試合について話をしたり。ONEとかUFCでも、自分に合った攻撃や山北選手対策になるような動きがあると、その試合を視るように連絡が来ます。そして自分もチェックして、動いて答え合わせをする。大沢さんは格闘技の試合を見ている数が違っていて。本当に色々な試合を見ているので、たくさんアドバイスを貰っています。ここまでずっとやってきたので、毎日のように顔を合わせていなくても、大沢さんへの信頼は変わらないです」

山北選手との試合は、自分と戦うイメージです(笑)

──そんななか、山北選手のオファーを貰った時はどのような気持ちでしたか。

「今回、3カ月の準備期間があって。オファーが来た時は、ジムを任せられる人に確認を取って即答で受けました」

──国際戦の方が良かったという気持ちは?

「全然なかったです。基本的に誰とでも戦います」

──山北選手としては、世代が上の元世界王者を踏み台にする。そういう位置づけの試合かと思います。

「向うは元チャンピオンとか思っているかもしれないけど、そういう意識は自分のなかにはなくて。ジムにベルトを飾るのも本当は嫌なんですけど、ビジネスのために置いています(笑)。ベルトは1回取ったものなので。それより、今の自分がどうなのかっていうところに興味があります」

──マラチェフの押し込みの強さを経験したことで、山北選手とはどのような戦いをしたいと考えていますか。

「山北選手との試合は、自分と戦うイメージです(笑)。ONEと契約したころの自分と戦うような。勢いがありますよね。だから、自分もあるだろうし。自分は競技としてレスリングはやっていないのですが、レスリングと柔術を合わせた自分とよく似た戦い方をしています。似ている部分がたくさんあります。だからこそ、より勝ちたいという気持ちが大きいです。経験が違うということを見せたいですし……。」

──サクッと勝てる相手ではないですし、疲れる試合が予想されます。

「楽に勝ちたいとは思わないです。サーキットトレーニングとかで追い込んでいるのに、1Rで勝つと勿体ない。これだけ練習をしてきたのに。5分3R、全て戦いたいです」

──そういうモノなのですね……。

「試合が終わると、色々な感情があって。厳しいことを乗り越えて、反省会じゃないけど試合を振り返る。その時、厳しかった試合を振り返るのが、一番楽しいです。アハハハハ」

──マゾでナルじゃないですか(笑)。

「アハハハハ、確かに。自分に負けなかった。そこなんですよね。なんか普通じゃないことをやりたいんです。子供の頃から、ずっと普通って言われてきて。体操時代もそう。身体能力は決して高くなかったし、体力テストも平均的で。そんな感じだったから普通でないことに憧れていました」

──ならばタイトルには興味はなくても、ここで勝ってさらに上の相手と戦いという気持ちになりませんか。その方が、とことんしんどい試合ができます。そのために、山北選手とどのような試合をしないといけないと考えていますか。

「毎試合、気持ち的には変わらないですけど……自分から逃げないこと。楽な道とキツイ道があれば、常にキツイ道を選択していけるのか。そして、キツイ方に山北選手も引きずり込む。ただ、山北選手もそういうつもりで戦っていると思います。そこで競り勝てるのかどうかですね」

──個人的には山北選手がボカン戦の最終ラウンドで下になった時、彼の試合で初めて気持ちが途切れるような表情になったように見えました。

「マシーンになり切れていないのかも知れないですね。試合で感情を出さない。それも僕のテーマです。一生懸命になることも、なるべく出さないように戦っています。練って来た戦略通りに動いて、セコンドの声に従う。そこでスイッチを入れるという感覚でいて、それをまたやりたいですね」

──それこそマシーンになりきれた試合はありましたか。それが猿田選手の満足感に繋がると思うのですが。

「1度目のパシオとの試合ですね。あの時は途中から、疲れも感じていなかったです。ラウンドも分からない。ただ、大沢さんの指示通りに動く。マシーンになれましたね」

──つまり無心ということですからね。

「あの時も、準備期間がなかったんですよ。それこそ、普通じゃない。でもHEARTSに移籍してから、大沢さんは常に『普通じゃないことをやれ』って言っていて。だから試合スパンとか、修斗のチャンピオンになってからも、すぐに2階級制覇を目指して試合をしたり。大沢さんとやってきたから、僕もこうなったんだと思います」

──HEARTSから1分や2分の所に住んでいた時と変わらず、同じ気持ちで戦えるのか。本当に勝負ですね。

「まぁ『デキるのかな?』って不安に感じることはあります。普通の人なら諦めるなって思えるから、やり切れます」

──追い込みも指導が終わって、マシーンで一人でやっていると聞きました。ケツを叩く人がいなくても、それができるというのも……。

「正確にいうと、指導中にも同じ時間に自分を追い込んでいます(笑)。そこしか時間がないので。絶対にやると決めていることで、あとは夜にやるか朝にやるか。それだけです。スケジュールに書いたことをやらないと、自分は満足できないので」

──やはりマゾですね(笑)。

「アハハハ。本当にできるのかなっていう不安は、付きまとっています」

和田選手……やりたいですね。ストロー級、甘くないぞって

──この生活を続けるには、この努力に相応な相手を求めることかと思いますが、山北選手との試合後はどのような相手と戦っていきたいと思っていますか。

「戦ったことがない選手と、やりたいです。リト・アディワン、こないだ負けてしまったけどジェレミー・ミヤド。上の方だとボカン。そしてジャレット・ブルックス。あと5試合、契約が残っているので試合をするなら触れたことがない相手と戦いたいです」

──ストロー級転向を宣言した和田竜光選手とは?

「和田選手……やりたいですね。強いことは分かっているし、試合を見て勉強もさせてもらっています。練習でも触れたことがないから戦ってみたいです。それにストロー級、甘くないぞっていう気持ちもあります。階級を落としたからって、勝てるわけじゃない。ストロー級にはストロー級の厳しさがありますから、そんな楽じゃないぞと教えたいです。

自分も元々は修斗フライ級から、ストロー級に落としました。今は勝てていないので大きなことは言えないのですが、日本のストロー級を背負って来た自負はあります。そこの強さを見せたいし、まだ終わっていないということも証明したいです」

──UFCにストロー級がない限り、計量方法の違いでリミットも違いますが、ONEのストロー級は世界最高峰ですよね。

「ハイ。ONEのストロー級は世界一なんで。世界中のストロー級のトップがONEにやってきます。そこで強さを証明したいという気持ちは普通にあります。

だからこそONEのストロー級で6年、7年間やってきました。試合はどうなるか分からないですけど、自分のなかでは山北選手を圧倒する自信はあります」

■放送予定
8月3日(土・日本時間)
午前8時45分~U-NEXT

■ ONE FN24対戦カード

<ONE暫定世界ストロー級(※56.7キロ)王座決定戦/5分5R>
ジャレッド・ブルックス(米国)
グスタボ・バラルト(キューバ)

<ONEサブミッショングラップリング世界女子アトム級(※52.2キロ)選手権試合/10分1R>
[王者]ダニエル・ケリー(米国)
[挑戦者]マイッサ・バストス(ブラジル)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
フィリッピ・ロボ(ブラジル)
ナビル・アナン(アルジェリア)

<ムエタイ・フライ級/3分3R>
デッドゥアンレック・ティーデ99(タイ)
ナックロップ・フェアテックス(タイ)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
シャミル・ガサノフ(ロシア)
アーロン・カナルテ(エクアドル)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
ドミトリー・コフトゥン(ロシア)
フェラーリ・フェアテックス(タイ)

<キック・フライ級/3分3R>
内藤大樹(日本)
エリアス・マムーディ(アルジェリア)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
山北渓人(日本)
猿田洋祐(日本)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
ランボーレック・チョーアッジャラブーン(タイ)
クレイグ・コークレイ(アイルランド)

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
エンフオルギル・バートルフー(モンゴル)
カルロ・ブーミナアン(フィリピン)

<ムエタイ128ポンド契約/3分3R>
アリーフ・ソー・デチャパン(ロシア)
ザガリア・ジャマリ(モロッコ)

<ムエタイ女子アトム級/3分3R>
ユー・ヨーペイ(香港)
エイミー・ピルニー(英国)

The post 【ONE FN24】山北渓人、世界最高峰で日本人対決。猿田洋祐「日本のストロー級を背負って来た自負はある」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
45 IMMAF MMA MMAPLANET o ONE アデーレ・フォーナリノ ティファニー・テオ マイッサ・バストス 山田海南江

【ADCC2024 Asia & Oceania Trial 02】女子55キロ級に出場、山田海南江「今までいっぱい泣いてきたから」

【写真】今年2度目のタイ。ONEとは異なり自身で航空券とホテルを抑え、戦う。それでもグラップラーは海を渡り、世界の頂点を目指す(C)SHOJIRO KAMEIKE

11日(土・現地時間)、タイはバンコク郊外ランシット大で行われるADCCアジア&オセアニア二次予選の女子55キロ級に山田海南江が出場する。
Text by Shojiro Kameike

昨年11月にシンガポールで開催された1次予選で、女子トーナメントは世界大会への出場権が賭けられていなかった。しかし山田は「ADCCルールに慣れるため」と女子55キロ級にエントリーし準優勝という結果を残している。今年3月にはONEサブミッションレスリングで、現役最強の柔術家のひとりマイッサ・バストスを相手に、敗れながらも好勝負を展開した山田が、今回挑むADCC予選について語った。


――タイのバンコク入り直後のインタビューとなります(※取材は5月9日に行われた)。昼に出発した東京の気温が18℃で、夜のバンコクが35℃と寒暖差が大きいようですね。

「そうなんです。東京も飛行機の中も寒い、空港に着いたら暑い、タクシーに乗ったら寒い――の繰り返しで(苦笑)」

――ここまで調整とコンディションはいかがですか。

「体調は問題ないです。実はコンディションよりも、ONEの試合が終わってから自分の中でギャップが生まれちゃっていて」

――ギャップとは?

「自分ではマイッサ戦で、もっともっとやられると考えていたんです。コテンパンにやられなかったのは、良いことかもしれません。だけど、そんなに世界は遠くないのかなって勘違いも生まれてしまいました。手応えがあった部分、プラス思っていたものと違っていたんですよ。ONEが終わってから1週間ぐらいは自分の中でもいろいろ考えて。練習はしたいけど体調も悪くなってしまいました。心と体のバランスに差が生まれたといいますか」

――世界チャンピオンに負けたけど良い試合を見せた。再戦すれば勝てるかもしれない……と期待されながら、その再戦は初戦とは程遠い内容で敗れるという例は、過去多数ありました。そのケースでは、もしかしたら初戦で燃え尽きてしまっていたのかもしれません。

「何となく分かります。マイッサと試合をして良かったと思う自分と、まだ対戦しなくても良かったんじゃないかと思う自分がいて。それでもADCC予選に向けて気持ちを切り替えないといけない。どうやって切り替えようかと考えたら、また心と体のバランスが――」

――……。

「でも1日中そういうことを考えていると、やることがなくなって。いつもどおり指導はしながら、練習は休んでいると時間もできて『私はこのままで良いのかな?』と。結局は『やっぱり練習するしかない』ってところに辿り着きました」

――マイッサ戦を振り返ると、ご自身の中で試合内容に対して満足いかないものでしたか。

「正直、あまり覚えていないんです。あとで試合映像を見返すと、一方的に攻められていたことには変わりないです。でも最初に言ったとおり『もっとやられるかな?』と思っていた試合内容ではなくて。

どの試合でも、内容に満足することはないです。ただマイッサ戦は周りの人からも『良い愛だったね』と言われますし、高い評価も耳にします。かといって自分で自分を褒めることはない。自分で自分を褒めて良いのかどうかは分からないです。

でもあの試合を見て『勇気をもらった』という連絡をくださった方がいて。それぐらい視ている方の心に響いた試合だったんだなって思うと、あの試合をやって良かったんだなって考えています。それがまた心と体のギャップにも繋がってしまうんですけどね(苦笑)」

――プロとして考えるのであれば、次の試合オファーとファイトマネーが評価を表すものの一つだと思います。マイッサ戦後、ONEから試合のオファーはあったのでしょうか。

「それもADCCとの兼ね合いなんですよ。今の私が目指しているものはONEのベルトではなくADCCです。ADCC世界王者に至る過程として、ONEの試合が存在しているのであれば考えます。でも今の状態では、そのベルトを目指そうとは考えていなくて……。もちろん評価してもらえるのは嬉しいけど、自分の芯はぶらさずに続けていきたいですね」

――それだけ山田選手にとって、今はADCCこそが目指すべき世界の頂点ということなのですね。

「グラップリングって『世界の頂点』と呼ぶ基準が分からない競技じゃないですか。プロとして活動するにしても、やはり自分の中の世界チャンピオンとしての基準をクリアしてから次のことを考えたくて。その自分にとっての世界チャンピオンというのは、やっぱりADCC世界大会優勝なんですよ」

――そんななか昨年11月には、ADCCルールに慣れるためにと、代表決定戦ではないにも関わらずトーナメントに出場しました。以降、ルール対策はいかがですか。

「前回のインタビューでもお話したとおり、自分の中でタイマーを見ながらポイントが入らない前半と、ポイントが入る後半を意識して練習してきました。あとONEが終わってから1カ月間、足関節にこだわってきたんですよ。足関節で攻めて来る相手は絶対いるじゃないですか。特にポイントがない前半は足関節を凌げば、後半に自分がポイントを得られるチャンスが来るんじゃないかと思っています。

それと週1でレスリングの練習に行っていました。ちゃんとしたレスリングはもう5年ぐらいやっていなかったけど、ADCCのためにはレスリングも必要だと思って。今まで柔術だとギがある分、逃げていたところもあったんですよ」

――逃げていた部分……というと?

「ギは掴むところがあるじゃないですか。体で痛めているところがあると、ギを掴んで逃げてしまう時もありました。でもADCC、レスリングはそうもいかなくて。やっぱりADCCで戦うためには逃げることなく、その部分を埋める練習が必要だと思ったんです」

――なるほど。レスリングの練習は母校に行ったのでしょうか。

「いえ、早稲田大学ですね。早稲田のレスリング部に友達がいて。でも申し訳なかったです。全然レスリングができなくなっていて(苦笑)」

――やはり5年振りだと全く勝手が違いますか。

「ひとつは自分が柔術に慣れすぎていて、たとえばテイクダウンに入りきることができなくなっていました。柔術だとギロチンを警戒するので、テイクダウンに入るにしても、すぐに抜けられるような形になっていて。私はグラップリングでも、小さい頃からレスリングをやっていた部分をもっと生かしたいです。そのためにも普段から、もっとレスリングの練習をしておいたほうが良いと思いました。ハッキリ言ってしまえば、私にはレスリングの部分しか勝ち目がないから。アハハハ」

――笑いながら言うことではないです(笑)。

「前半に相手の足関節を凌いで、後半に持ち込んでポイントを取る。そのために自分が好きだったレスリングを――レスリングから離れた今もう一度見直すのも不思議ですね」

――今回の出場選手を見渡すと、やはり昨年11月よりも様々な競技で実績を残しているメンバーがエントリーしています。そのなかでもご自身のレスリング力、レスリングの経験はアドバンテージになるでしょうか。

「アドバンテージにするためにレスリングの練習をしてきました。前回、アデーレ・フォーナリノとの決勝戦では最初のほうで私がテイクダウンしたんです。それも含めて前回出場したメンバーの中では、レスリングに関しては私が上のほうにいたと思います。でも、おかげで私がレスリングで強いのはバレちゃったから、今回は簡単にテイクダウンに入れる状態に持っていかせてくれないでしょうね……」

――そう考えると、前回の予選でアナコンダを極めまくった竹内選手にも同じことが言えるでしょう。

「そうかもしれないですね。自分の強みが周りに知られているなかで、その強みにこだわって貫くか、あるいは別の強みを摂り入れるか。ただ、周りの選手を見ても思うんです。たとえばボトムからの展開にこだわっている選手も、間違いなくトップからの攻めも強いはずなんですよ。それでもボトムにこだわるのは、何か理由があるからで。自分はボトムからはヘタなので分からないですけど」

――ここでも自虐ですか(笑)。それだけに今の山田選手にとって、一番適正なのがADCCルールであると言えませんか。

「はい。今はADCCが一番、可能性のあるルールだと思うんですよね。でも今回出ている選手も、みんな強そうで」

――世界大会への出場権が賭かっているためか、エントリー選手の質が昨年11月とは大きく異なりますね。国際大会の実績を持つ比国のアニー・ラミレスをはじめとして、ONEで戦っているMMAファイターのティファニー・テオや、IMMAF世界王者のジャンナ・カスキノヴァなど多種多様な選手が出場します。

「アニーとは練習したことがあります。私が負ける感じではなかったけど、もともと60キロで試合をしているぐらい、とにかく大きいんですよ。柔術もグラップリングもやっていて、アジアで最強の一人だとは思います。

韓国のキム・シウンは今年1月に、マイッサが優勝したアブダビグランドスラム東京(女子茶帯ルースター級)で3位になっていますよね。マイッサが一度スイープでポイントを取られていて、その時から注目していました」

――なるほど。トーナメント表は計量後に発表されるとのことですが、現時点で出場メンバーを見た印象を教えてください。

「誰と対戦することになっても、結局は自分のスタイルは変わらないですね。これまでも、それで戦ってきましたし。あとは珍しく運次第って言いたいです。

私って、もともと運がないんですよ。レスリング時代のくじ引きとか。でも今回は運も勝負のうちだなと思っています。自分がやれることはやってきました。そこにプラスして『今まで泣いてきた分、運がついてきらら良いな』と。次が無い試合って心地良いです」

――次が無い試合、というのは……。

「今回負けたら、次のチャンスは2年後じゃないですか。そういう試合って久しぶりなんですよね。今は光と絶望の中間にいる状態で」

――オリンピック出場のチャンスは4年に一度しかありません。一方でプロの試合は勝てば、あるいは良い試合をすれば、すぐに次のオファーが来る可能性がある。マイッサ戦でギャップを感じたと言われましたが、「負けても良い試合だったから次がある」というプロの世界が、これまで山田選手が生きて来たレスリングや柔術の世界とは違うわけですよね。

「そうか、そういうことですね。『負けても次がある』という世界に馴染んでいないというか。それと私は今まで楽しんで柔術をやってきました。でも今回『負けたら次はない戦いだ』と気づいた瞬間、勝ちたいという欲が強くなって。そのために『楽しみたい』と『勝ちたい』の間で、気持ちの浮き沈みが激しかったです。

でも今はもう吹っ切れました。今回出ているメンバーの中でも、その気持ちを味わっている経験は私が一番だと思っています。『みんな、その環境に置かれたことないでしょ?』と言いたいです。私は今まで、その環境でいっぱい泣いてきたから。負けたら次はない、だから勝ってラスベガスの世界大会に行きます」

■視聴方法(予定)
5月11日(土・日本時間)
午後12時00分~Flo Grappling

The post 【ADCC2024 Asia & Oceania Trial 02】女子55キロ級に出場、山田海南江「今までいっぱい泣いてきたから」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
45 MMA MMAPLANET o ONE ONE FN20 マイッサ・バストス 山田海南江

【ONE FN20】マイッサ・バストスにキャッチを許さず。山田海南江、0-3で敗れるも世界に爪痕残す

【写真】高い防御力を守り一辺倒でない展開で、しっかりと見せたことが大きいかと(C)ONE

<サブミッショングラップリング女子アトム級(※52.2キロ)/10分1R>
マイッサ・バストス(ブラジル)
Def.3-0
山田海南江(日本)

立ちの展開でリスト、頭を取り合う両者。引き込んだマイッサに対し、山田は担いでいく。レッスルアップからがぶったマイッサはすぐに引き込み、三角を仕掛ける。山田は即反応して立ち上がると、足を取らせずに側転系のパスを狙う。

山田の足関に対してマイッサは足関節のカウンターから、さらに山田の反応へのカウンターでバックを取る。両足をフックされた山田は仰向けから亀へ。アゴの上から絞めを仕掛けるバストスがフェイスロック。

外した山田が立ち上がると、場内から拍手が起こった。山田のパス狙いに腕を取りに行くマイッサだが、山田はここも反応する。またも足関節からバックを取りに行ったマイッサだが、山田も正対して足関節へ。起き上って上を取った山田は、足首を抑えて圧を掛けるとニースライス──コーナーが近く、リリースして中央に戻った。

山田は飛び込む際に、マイッサの仕掛けを察知したように足関節にバックを伺う。そして立ち上がってトップの山田が、足首を掴んでダブルガードへ。尻から太腿をマットにつけて、いつで立てる姿勢の山田はマイッサにレッスルアップを許さず、後方に送って互角の攻防を続ける。そして立ち上がるとパスを仕掛け、マイッサの足関のエントリーを許さない。リバースデラヒーバにも即反応した山田に対し、マイッサはキャッチを取れないまま残り2分を切る。

マイッサは足関を餌にスイープを狙ったが、山田はスクランブルで許さない。それでも攻めるマイッサ、防いでカウンターという山田とう流れは続き、最後にマイッサがマイキーロックを狙う。ロールして、起き上った山田はキャッチを取られないまま10分を戦い切った。

結果はバックグラブを取り、アタックで上回ったマイッサに凱歌が挙がったが、勝者の表情には、明らかにフレストレーションが感じられ──アンダードッグとしてタイに渡った山田が、世界に爪痕を残した一戦となった。


The post 【ONE FN20】マイッサ・バストスにキャッチを許さず。山田海南江、0-3で敗れるも世界に爪痕残す first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
45 AB MMA MMAPLANET o ONE ONE FN20 アリス・アンダーソン キック ジェネリン・オルシム ジヒン・ラズワン ジャネット・トッド プレム・フェアテックス ペッディージャー・ルクジャオポーロントン ボクシング マイッサ・バストス ルンピニー ヴィクトリア・ソウザ 修斗 山田海南江 澤田千優

【ONE FN20】澤田千優戦へ、ジヒン・ラズワン「アトム級より下の階級があれば彼女にとっては最高だった」

【写真】フェアテックスのロゴがまぶしい?ジヒン・ラズワン(C)ONE

本日9日(土・現地時間)、タイのバンコクにあるルンピニー・スタジアムで開催されるONE Fight Night20「Todd vs Phetjeeja」で、ジヒン・ラズワンが澤田千優と対戦する。
Text by Manabu Takashima

レスリングベース、修斗でチャンピオンになったアスリート=澤田に対し、ラズワンは動物病院で働く普通の女の子という印象が強い選手だった。そのラズワン、今年の1月からフェアテックスジムの所属となりパタヤに生活をしている。

家族から離れ、フルタイムMMAファイターとしての生き方を選択したラズワン。それこそが、彼女がやりたいことをして生きるという選択だった。


――今週末、日本からのニューカマー澤田千優選手と戦います。今の気持ちを教えてください。

「良い感じよ。そしてチヒロにはONEでのデビュー、おめでとうと伝えたい。土曜日の朝に彼女と最高の試合をしたいと思っている」

──今回はバンコクでの試合となります。ジョホールバルからだとシンガポールは隣町のような感じだと思うのですが、バンコクで戦うことをどのように思っていますか。

「私は1月からタイのパタヤに住んでいるの」

──つまりフェアテックスジムで練習をしているということですか。

「イエス。だからバンコクは凄く近くて、移動も簡単よ」

──なぜ、タイガームエタイでトレーニングをするようになったのですか。

「去年の3月にフェアテックスのプレム・フェアテックスからスタンプのトレーニングパートナーを務めて欲しいという依頼があって、5月のアリス・アンダーソン戦までパタヤで練習をしていたの。その後はマレーシアに戻っていたけど、プレムから再び連絡があって、もっと長い期間トレーニングをすることになって。その間にフェアテックスと複数年契約をサインしたの。凄く良い機会だと思って、パタヤに移り住むことにしたわ」

──去年の3月といえば、ジヒンはスタンプに敗れてから半年後です。リベンジしたいと思っていたかと思うのですが、練習パートナーの要請を受けることに躊躇することはなかったですか。

「私はリベンジをしたいという想いを持ったことはないわ。再戦したいと思っていてもね。とにかくワールドチャンピオンを含めて、多くのすぐれたトレーニングパートナーがいる場所で練習をできることがとても魅力的に感じて。それにフェアテックスには4、5人の女子MMAファイターが常に練習している。ジョホールバルでは女子選手と練習をすることがなくて、凄く良い経験になったの」

──フェアテックスで練習するようになり、何が一番変わりましたか。

「練習環境は全く変わったわ。故郷にいる時は、お昼は動物病院で働いていたから夜の6時から10時半ぐらいまで練習する日々だった。でもフェアテックスでは朝起きてランニングをし、それからミット打ち。少し休んで、お昼のクラスと夕方のクラスと1日に3度練習できるようになった」

──フルタイムのファイターになったということですね。

「本当に新しい体験で。仕事のことを考えなくて、練習に集中できることが本当に新鮮なの。練習は厳しくなったから、そこはスマートになる必要があって。調子が落ちているなと思ったら、体のメンテをしないとケガをしてしまうし。ただ、休める時に休むというのも、仕事をしている時はできなかったことだから。仕事をして疲れるのと、練習して疲れるのは別モノで。仕事中は体こそ疲れないけど、ストレスが溜まって精神的に疲れていたわ。今はトレーニングでヘトヘトになっても、爽快な気持ちね」

──ところでパタヤで格闘技に集中するという話をした時、ご両親はどのような反応でしたか。

「私の決心には驚いていたわ。ずっと一緒に住んでいたし、家から出たことがなかったから。でもフェアテックスの環境、そして仲間のことを知ると安心してくれたわ」

──親というものは子供達に夢を叶えて欲しい一方で、安定した生活を望むものですしね。

「両親には、私の夢の旅路をサポートしてくれて本当に感謝している」

──1月からフェアテックスの所属になったということは、フルタイムファイターとなって、今回が最初の試合ですね。

「去年の9月のジェネリン・オルシム戦前もフェアテックスで練習をしていたけど、長い休暇を取ってパタヤに行っていたから。ただ事実上フルタイムで練習はできていたから、今回が2試合目とも言ってもおかしくないわ」

──フェアテックスで練習するようになって、どこが一番伸びましたか。

「もちろん、打撃ね。フェアテックスでムエタイの練習をするようになって、打撃にキレが出てきた。同時にグラップリングでも最高のコーチと練習仲間に恵まれているから、組み技も凄く進化しているわ」

──そういうなかで戦う澤田選手ですが、印象を教えてくれますか。

「グッドファイターでレスリングが強い。そして、小さいわね。でも、どんな相手と戦ってもそうだけど、彼女が小さいからといって軽視することは絶対にない。レコードは6勝0敗だし、本当にレスリングを生かした戦いができている選手だから。

もちろん、アトム級より下の階級があれば彼女にとっては最高だったと思う。ただ、ないのだからしょうがないし、結局のところただ戦うしかないの」

──ところでチャンピオンが、チームメイトというのはどのような心境になるモノなのですか。

「世界チャンピオンと練習ができるなんて最高の経験になっているわ。ただONEが私たちの世界戦を組むのであれば、そこはプロとして戦うべきだし。それこそが、完璧なビジネスだから」

──なるほど、です。最高の練習環境を得た今、負けることができないというプレッシャーは?

「最初に言ったように私がフェアテックスに行くことを決めたのは、良い機会だったから。何が良い機会かといえば、自分がやりたいことができるということ。自分が思うように生きる──それが、何よりも大切なことでしょ」

──では土曜日の朝、どのような試合がしたいですか。

「今回は国際女子デーのラインナップに名前を並べることができると同時に、6年前の3月9日に私はONEデビュー戦を戦っていて。個人的な記念日なの。日本の皆は、国籍に関係なく選手をサポートしてくれる。そして日本には凄く強いファンベースがあるから、皆の期待に応えたい。私もチヒロもベストを尽くして、最高の試合を皆に届けたい」

■放送予定
3月9日(土・日本時間)
午前9時45分~U-NEXT

■ ONE FN20対戦カード

<ONEキックボクシング世界女子アトム級王座統一戦/3分5R>
[正規王者] ジャネット・トッド(米国)
[暫定王者] ペッディージャー・ルクジャオポーロントン(タイ)

<ONEムエタイ世界女子アトム級選手権試合/3分5R>
アリシア・エレン・ホドリゲス(ブラジル)
クリスティーナ・モラレス(スペイン)

<ムエタイ130ポンド契約/3分3R>
ジャッキー・ブンタン(米国)
マルティニ・ミケレット(イタリア))

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
ジヒン・ラズワン(マレーシア)
澤田千優(日本)

<ムエタイ・ストロー級/3分3R>
エカテリーナ・ヴァンダリーバ(ベラルーシ)
マルティナ・キエルチェンスカ(ポーランド)

<ムエタイ・アトム級/3分3R>
ララ・フェルナンデス(スペイン)
ユウ・ユウペイ(香港)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
ヴィクトリア・ソウザ(ブラジル)
ノエル・グホンジョン(フランス)

<サブミッショングラップリング女子アトム級(※52.2キロ)/10分1R>
マイッサ・バストス(ブラジル)
山田海南江(日本)

<ムエタイ・アトム級/10分1R>
シール・コーエン(イスラエル)
テオドラ・キルオバ(ブルガリア)

The post 【ONE FN20】澤田千優戦へ、ジヒン・ラズワン「アトム級より下の階級があれば彼女にとっては最高だった」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
45 MMA MMAPLANET o ONE ONE FN20 YouTube キック ジヒン・ラズワン ジャネット・トッド ダニエル・ケリー ペッディージャー・ルクジャオポーロントン ボクシング マイサ・バストス マイッサ・バストス ルンピニー ヴィクトリア・ソウザ 三浦彩佳 前澤智 山田海南江 海外 澤田千優

【ONE FN20】正真正銘、絶対的世界一=マイッサと対戦、山田海南江「誰かのせいにはしたくない」

【写真】ゴミゴミした中心部と違い、スッキリしたラートプラーオ。5月のADCCアジア&オセアニア予選はバンコク郊外のランシットで行われるため、この空気を知っておくことも貴重な経験になるはず(C)MMAPLANET

9日(土・現地時間)、タイのバンコクにあるルンピニー・スタジアムで開催されるONE Fight Night20「Todd vs Phetjeeja」で、山田海南江がマイサ・バストスと対戦する。8日のInternational Women’s Dayに合わせたタイミングで実施されるオール女子大会で、唯一組まれたサブミッショングラップリング戦で、世界最高峰と戦う山田。
Text by Shojiro KameikeText by Shojiro Kameike

黒帯ルーキーに、突然ビッグチャンスが舞い込んだ。ムンジアル4連覇中のマイッサ・バストスとONEサブミッショングラップリング戦で対決する。ムンジアルはもちろんパン選手権、ヨーロピアン、アジア選手権やブラジレイロ優勝など、マイッサの国際大会の実績を挙げればキリがない。そんなマイッサとの対戦を控えた山田は、リモート画面の向こうで喜びを露わにした。ONEのリングで、世界一の柔術家が待っているから。


――山田選手にとって、海外のプロ興行に出場するのは今回が初めてなのですか。

「初めてです。現地での公式スケジュールが凄いですね。拘束時間も長いから『皆はどのタイミングで練習するんだろう?』って。今までレスリングや柔術だと、直前に近いぐらいの日まで調整してから試合に臨んでいたんですよ。でもONEの公式スケジュールを見ると、写真撮影やインタビューなどもあって……その状況に慣れていなさすぎて、どうしようかと思っています(笑)」

――昨年11月に出場したADCCアジア&オセアニア予選も、そういった公式スケジュールはなかったわけですよね。

「はい。あの時は自分たちで現地の練習場所を見つけて、試合前にMMAPLANETさんがインタビューしてくださった以外は、特に予定もなかったです。アハハハ。逆にONEはホテルと、体を動かす場所を用意してくれているのは安心でした。問題は体を動かすタイミングですね。でもその場所を使って体を動かしている選手も多くなくて」

――MMAの場合は大幅な減量をしている選手もいますし、特にONEはハイドレーションテストもあるので試合直前の調整方法も異なってくると思います。

「ハイドレーションテスト! それが一番の心配です。自分は今回、減量幅も少ないので問題はないとは思いますが……。日本で三浦彩佳選手にハイドレーションテストのことを聞いて、いろいろ勉強してきました」

――何もかも手探りで、調べながらのONE初戦なのですね。

「昨日の夜(※取材は6日に行われた)タイに着いて、そこからの公式スケジュールは先に届いていたんですよ。でも英語だし、私個人のスケジュールではなく全体のスケジュールで。その中から私が関わるものを自分で探すという感じでした。どう動けば良いのか、分からないことが多いです」

――聞いているだけで大変な状況であることは分かりますが、それでも山田選手が楽しそうにしているのが印象的です。

「アハハハ。試合が楽しみです。あのマイッサ・バストスと対戦することができるなんて」

――今回のバストス戦が発表されたのは3月に入ってからでした。かなり急なオファーだったのではないですか。

「お話があったのは2週間前ぐらいかなぁ……。すぐOKって返答しました。でもビザの申請とかあって、正式発表も遅くなったんだとは思います。私としては本当にマイッサ・バストスと試合できるのが嬉しくて(笑)」

――その言葉が決して嘘ではないと思えるほど、笑顔に満ち溢れています。

「そうなんですよ。マイッサって今年1月、柔術グランドスラム東京大会に出て優勝していたじゃないですか(女子茶黒ルースター級で優勝)。私もあの大会に出る予定だったんです。でも年末に怪我をしたために出場をキャンセルしたら、その後にマイッサが飛び込みでエントリーしていて。『うわぁ~』って思いました。

私も今年に入って黒帯になったので、もうIBJJFの世界大会はポイントがないと出場することができないんです。そんななかでマイッサと、しかも日本で戦えるチャンスなんて今回しかなかったのに――と。グランドスラムの大会当日は、会場の上のほうからずっとマイッサの試合を眺めていました。『マイッサと対戦できる選手、良いなぁ』って(笑)」

――確かにギ、ノーギを問わずマイッサの試合は自然と魅入ってしまうものがあることは分かります。

「あの強さは何でしょうね……。2019年に初めてムンジアルで優勝してから、ずっと勝ち続けているじゃないですか。ムンジアルのあとに主要な大会で負けたのは、2021年のパン選手権と今年のヨーロピアンぐらいで。その間ずっと強さが安定していて、つけこむ隙がないんですよ」

――ムンジアル4連覇をはじめ、ギでもノーギでも国際大会で勝ち続けている。分かりやすいところでいえば柔道の谷亮子さん、レスリングの吉田沙保里さんや伊調馨さんのような実績ですよね。

「そう! 本当にそうなんですよ。だから今回の試合も、まずONEとしてはマイッサに出場してもらいたかった。その相手を探して私にオファーが来たって捉えています。そういう扱いに対して思うところはあるというか。ONEとしてはマイッサが勝って、いずれダニエル・ケリーと対戦させたい――というようなプランもあると思うんですよ。でも私は、そんなことを気にしていなくて。何より私自身がマイッサと対戦したかったです。

もちろん『マイッサの相手』という扱いじゃなくて、いずれ私という選手にオファーが来るような試合を見せたいです。今回だけでなく世界を目指すために、それだけの強さを身につけていかないといけないですし」

――なるほど。今回はノーギでの試合となります。ギとノーギで試合の印象も異なりますか。

「ギのほうがベリンボロとかの固定力は強いと思うんですよ。掴むところがあるので。もちろんノーギでも強いけど、私としてはノーギのほうが対策もできると思っています。今回の試合でも凄い技数で攻めてくるでしょうし、その対策を講じながら自分の得意なところに持って行く。私としては、その試合展開しかないと考えています。マイッサとの試合のなかで、私にチャンスが巡ってくることは少ない。その少ないチャンスにつけ入るしかないですね」

――マイッサもギよりノーギのほうが展開も速いし、何よりサブミッションを狙い続けています。ONEサブミッショングラップリングでも強いタイプなのだろうとは思いますが、それだけ展開が速い相手のほうが手は合うのではないでしょうか。

「そういうタイプのほうがやりやすいです。これまでも強い選手と対戦したほうが、私のレベルも上がるというか――私自身、試合が楽しくなるんですよ。強い相手との試合だと、自分が持っている以上のものを出せるみたいで。

去年11月のADCCでは、決勝でアデーレ・フォーナリオには負けてしまいました。でも試合写真や映像を視ると、よほど試合が楽しかったんでしょうね。ずっと笑っていて……私ってヤバいヤツなんじゃないかと思いました(笑)」

――それはファイターにとって素晴らしい素質であり、才能だと思います。ADCC直後の前澤智戦も楽しかったのではないですか。

「楽しかったです! 自分では分かっていなかったんですけど、入場の時から笑っていて。会場へ応援に来てくださっていた方からは、『後ろの席から、あの子笑っているよ……っていう声が聞こえた』と言われました。まぁ、変な人間ですよね」

――いえいえ。ADCCや前澤戦と同じく、あるいはその時以上に楽しそうな山田選手を見て、マイッサ戦にも期待することができるのは確かです。

「ありがとうございます。もともと試合に対して不安や恐怖とかって無いタイプなんですよ。もしかしたら、気づいていないだけで不安や恐怖は感じているかもしれません。でもそれ以上に、『ここまでやってきたから大丈夫だ』って納得できるほど取り組んでいるので。

私の中では、去年のムンジアルで負けたことが一番大きいです。茶帯の2回戦で逆転負けを喫してしまって……『私はこのままで良いんだろうか?』と思いました」

――……。

「紫帯で3位になった時は、『今までのやり方を続けていけば大丈夫だろう』という確信があったんです。でも、そう思ったやり方を1年間続けた結果、茶帯で負けてしまって。『何が悪かったんだろう? このままじゃいけない』と考え始めたんですね。『これは海外で練習したら解決するものだろうか』とか、いろんな気持ちが生まれていました。

それで去年の秋から、自分の練習については自分自身で考えるようにしたんですよ。それまではパーソナルで指導してもらったりしていて。もちろん自分の負けを、教えてくださっていた人たちのせいにすることはないです。ただ自分自身で考えたほうが、試合で勝っても負けても納得できるんじゃないかと思ったんですね」

――誰かのせいにはしたくない。でも、このままだと誰かのせいにしてしまうかもしれないし、そんな自分が許せないという気持ちもあったのではないですか。

「……そうかもしれないです。今までもそうだし、今後もし負けた試合でも誰かのせいにはしたくない。自分で決めた目標だから、自分の気持ちも曲げたくはないですからね。まさか黒帯デビュー戦の相手が世界一のマイッサだとは思わなかったけど(笑)」

――それこそ初めてのオリンピックで、1回戦で吉田沙保里さんや伊調馨さんと戦うような。

「本当にそんな感じです(笑)。もう最高ですよ。今、私に良い風が吹いているんじゃないかって思います。マイッサには――もちろん今のままではギだと歯が立たないし、ノーギでも怪しいですよ。自分の100パーセントを出しても勝てない。それこそ120パーセントまで自分を引き上げないと勝てないです。だからこそ試合が決まった瞬間、どうやって120パーセントを引き上げるかって考えるのが楽しくて」

――そうして強くなる、強くなろうとする瞬間が楽しいわけですね。まさに根っからのファイターです。

「正直『これからはSNSも活用して自分のことをもっとアピールしていかないといけない』とは思っています。強いことはもちろんだけど、強い選手は世界にたくさんいますからね。その中から、どうやって自分が試合に呼ばれるようになるかっていうことも考えるんですよ。でも自分の中では強くなりたい……強くなることが一番で。

今年はADCC世界大会と、IBJJFノーギワールドにも出たいです。ノーギワールドもポイントが関わってきますけど――さっき言ったとおり、ここでマイッサ戦が決まるのは私に良い風が吹いてきているとは思います。でもそのチャンスを掴むためは、強くなるしかないから。格闘技をやる限り、その気持ちは絶対に変わりません」

■放送予定
3月9日(土・日本時間)
午前9時45分~U-NEXT


■ ONE FN20対戦カード

<ONEキックボクシング世界女子アトム級王座統一戦/3分5R>
[正規王者] ジャネット・トッド(米国)
[暫定王者] ペッディージャー・ルクジャオポーロントン(タイ)

<ONEムエタイ世界女子アトム級選手権試合/3分5R>
アリシア・エレン・ホドリゲス(ブラジル)
クリスティーナ・モラレス(スペイン)

<ムエタイ130ポンド契約/3分3R>
ジャッキー・ブンタン(米国)
マルティニ・ミケレット(イタリア))

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
ジヒン・ラズワン(マレーシア)
澤田千優(日本)

<ムエタイ・ストロー級/3分3R>
エカテリーナ・ヴァンダリーバ(ベラルーシ)
マルティナ・キエルチェンスカ(ポーランド)

<ムエタイ・アトム級/3分3R>
ララ・フェルナンデス(スペイン)
ユウ・ユウペイ(香港)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
ヴィクトリア・ソウザ(ブラジル)
ノエル・グホンジョン(フランス)

<サブミッショングラップリング女子アトム級(※52.2キロ)/10分1R>
マイッサ・バストス(ブラジル)
山田海南江(日本)

<ムエタイ・アトム級/10分1R>
シール・コーエン(イスラエル)
テオドラ・キルオバ(ブルガリア)

The post 【ONE FN20】正真正銘、絶対的世界一=マイッサと対戦、山田海南江「誰かのせいにはしたくない」 first appeared on MMAPLANET.