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【UFC309】「15分間支配できてハッピー」。TDは狙わず3-0でクレイグ破ったボー・ニコルに大ブーイング

<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
Def.3-0:30-27.30-27.30-27
ポール・クレイグ(英国)

₋1600のニコル。クラウチングのニコルが左ジャブを伸ばし、クレイグが距離を取る。スイッチしたニコルはオーソに戻しロー左オーバーハンドを伸ばす。長身のクレイグが右ハイ、左ヒザを見せて右インローを蹴る。ローに右を合わせようとしたニコルはハイをかわしつつ、左ミドルを見せる。左オーバーハンドを伸ばし、組まないニコルは右ローを連続で繰り出す。グラップラー同士の打撃戦、クレイグが右インローから右を当てる。ニコルも左オーバーハンドを伸ばし、組みがないまま初回が終わった。

2R、左ハイでバランスを崩したクレイグを追ったニコルは、ここも組まずにパンチ勝負。クレイグも引き込むことなく、スタンドの展開が続く。ニコルは左オーバーハンドと左ミドルを続け、オーソに戻して右オーバーハンドを届かせる。スイッチして左ボディを入れたニコルは、右ミドルをブロックする。右ミドル、ローのクレイグは左インローをチェックする。

残り1分、ニコルが左を当て、間合いを取ったところでクレイグも左フックをヒット。テイクダウンダウンでポイントメイクをしないニコルが左を入れ、構えを変えて右を届かせたところで時間となった。

最終回、クレイグが前に出ると、ニコルが右オーバーハンドから右ローを入れる。クレイグはガードの上から右ハイ、距離を詰めたニコルはテイクダウンのタイミング、距離でも打撃の間に戻る。オーバーハンドのタイミングで、テイクダウンに入れるはずのニコルが組まないのは何が理由があるのか。場内にブーイングが響き渡るなか、両者のスタンド戦が続く。右で組むと見せて左オーバーハンドを決めたニコルが、圧を高める。ケージに詰まったクレイグは、右を打たれた後に前に。ニコルはローから、左オーバーハンド。クレイグも右ハイと同じパターンに。

残り1分を切り、左を入れたニコルをクレイグが何か挑発する。最後の10秒に左を2発入れたニコルは、最後までテイクダウンを仕掛けないままキャリア初の判定を待つ間、1分以上もドナルト・トランプ大統領と言葉を交わし続けた。

「15分ドミネイトできて、僕は良かったと思っている。皆、流血が見たいんだよね(笑)。25秒で殴り倒し、1分で絞め落とすところが見たくても、現実的に相手は10年以上戦ってきたプロフェッショナルなんだ。僕はまだ2年半しかキャリアがない。ドミネイトして、カットさせた。フィニッシュはできなかったけど、ハッピーだよ。ジョン・ジョーンズ、カビブ、GSP、マイティマウスもタフな相手は判定勝ちをしてきた。ポール・クレイグが27戦、僕は6戦のキャリアで支配できたんだ」とブーイングのなかで、自論を話した。


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【UFC309】展望 余人をもって代え難き存在=ジョーンズ×普通の男であることに価値を置くミオシッチ

【写真】持ち過ぎた才能が、人生を狂わせながら強さは絶対のジョン・ジョーンズ。そして強さを求めて、幸福な人生を歩むこととなったミオシッチ。対照的な強者の戦いだ(C)Zuffa/UFC

16日(土・現地時間)ニューヨーク州ニューヨークシティのマジソン・スクエア・ガーデンにてUFC 309「 Jones vs Miocic」が行われる。由緒ある大会場におけるメインイベントは、事実上無敗で二階級制覇を達成したジョン・ジョーンズに、元王者のスタイプ・ミオシッチが挑むヘビー級タイトルマッチだ。
Text by ISAMU HORIUCHI

王者JJは、実に13年半前の2011年3月にマウリシオ・ショーグン・フアを3RTKOに下してライトヘビー級王座を獲得すると、6度の防衛に成功し長期政権を築いた。しかし、その後はコカイン使用、ひき逃げ、禁止薬物使用といったさまざまな問題行動を起こして3度に渡って王座を剥奪されてしまう。だがそのたびに復活しては、恐るべき強さで王座復帰を果たしてきた。

さらに2020年には飲酒運転&発砲事件による逮捕を経て、自ら王座を返上。ヘビー級への転向の意志を明らかにするが、その翌年にフィアンセへの家庭内暴力で再逮捕された。


それでも昨年3月には宣言通りヘビー級で復帰。シリル・ガンヌとの王座決定戦において1Rわずか2分でギロチンチョークで仕留め、二階級制覇を達成している。オクタゴン内での絶対的な強さにおいても、その内面に棲まうデーモンの巨大さにおいても余人をもって代え難き、格闘技の矛盾を最大限に体現する存在だ。

対するミオシッチは、8年半前の2016年5月にファブリシオ・ヴェウドゥムを敵地クリチバで1RKOに下し、ヘビー王座を獲得。その後アリスター・オーフレイム戦ジュニオール・ドスサントス戦フランシス・ガヌー戦とヘビー級王座3連続防衛というUFC新記録を樹立した。その後ダニエル・コーミエに敗れるも、リマッチで勝利して王座奪還に成功。が、21年3月にフランシス・ガヌーとの再戦に敗れて再び王座を明け渡している。

ちなみにミオシッチは、以前からファイターであると同時に消防士としての職を持ち続けている。仕事で地域に貢献し、家庭でも妻と子供を大切にする「普通の男」であることに何よりも価値を置く、JJとはあらゆる意味で対照的な生き方を実践している。

2022年にはフルタイムの消防士となったことが報じられ、ミオシッチは幸せな引退を果たしたと考える向きも多かった。しかし昨年3月、上述のようにガンヌを倒したJJがオクタゴンの上で「みんな、俺がスタイプを倒すところが見たいか? スタイプよ、練習してくれていると嬉しいぜ。あんたは歴史上のグレーテイストヘビーウェイトだ。あんたと戦いてえんだ。ものすごくな!」と不敵な笑顔で宣戦布告。11月に復帰してJJへの王座挑戦が決まった。

だが、この大一番に向けての練習中にJJが胸筋断裂の大怪我を負ってしまい、手術と半年以上の治療期間を要することが判明し欠場を余儀なくされてしまう。ここでUFCは、当日のバックアップファイターとして用意されていたセルゲイ・パブロビッチとミオシッチの暫定王座戦を行うことはせず、パブロビッチとトム・アスピナルによる暫定王者決定戦を敢行し、1R1分でKO勝利したアスピナルが王座に就いた。

強引な措置とも言えるが、デイナ・ホワイトUFC代表は「ミオシッチ対JJはレガシーファイト。歴史上最も偉大なヘビー級王者と、歴史上最も偉大なミックストマーシャルアーティストの激突だぞ。レジェンド二人の対決をファンも見たいし、私も見たいし、両者ともやりたがっている。スタイプに暫定王座戦を戦ってくれなどと頼むこと自体、まったくもって失礼な話だよ」と説明した。両者のカードは、競技の理屈をスキップしてでもUFCが実現させたいメガファイトということだ。

その後アスピナルがまたしても1分KOにて暫定王座を防衛する間に、正規王座のJJは手術を経てリハビリを完了。一年の延期を経て、今回──暫定王者として圧倒的に勝ち続けているにもかかわらず挑戦できない気の毒なアスピナルが「老いぼれどもによる、異議にまみれたタイトル戦だ」と毒づくのをよそに──ついにミオシッチとの防衛戦がついに実現することとなった。

長年パウンドフォーパウンドランキングのトップに君臨し、一年前には体にかなり脂肪が乗ったヘビー級としても圧巻の強さを見せつけた37歳のJJと、片や42歳にして3年8ヶ月ぶりの復帰戦となるミオシッチ。当然下馬評は圧倒的にJJ有利だ。

が、もしミオシッチが王者時代に劣らぬコンディションでJJの前に現れれば話は別だ。全てに卓越した王者JJだが、最大の武器はレスリングをベースとした圧巻のグラップリング力。相手が組みを警戒するからこそ、JJはスタンドでオクタゴン中央を取りプレッシャーをかけつつ、他の追従を許さない創造性に溢れた攻撃を交えて距離を支配することができる。

ただし体格に勝りレスリングにも長けたミオシッチは、JJのテイクダウンを恐れずスタンドで逆に圧をかけてくるだろう。仮にミオシッチがJJのテイクダウンや寝技を凌ぎ、スタンドで前に出る展開が生まれれば、俄然試合は興味深いものとなる。アルロフスキー、ヴェウドゥム、オーフレイム、ドスサントスといった名だたるヘビー級王者たちを沈めてきた一撃必殺の右を持つミオシッチの圧力を、手を開いた柔らかい構えと関節蹴り等独自の武器を用いて間合いを作る──しかしライトヘビー時代の機動力はないと思われる──JJがいかに捌くのか。

ここで忘れてはならないのは、苦境に陥った時の強さこそがJJの真骨頂だということだ。かつてJJは、1度目のアレクサンダー・グスタフソン戦ドミニク・レイエス戦で前半は思うようにテイクダウンを取れず大苦戦を強いられたことがある。が、いずれも後半に驚くべき精神力とスタミナを発揮。何より勝利への執着心が試される極限状況下にて、前に出て挑戦者を削り続けて圧倒して逆転勝利をもぎ取っている。

また、JJと組技の練習を重ねる世界最強のグラップラー、ゴードン・ライアンは、「グラップリングのみの練習でも、ジョンは展開に応じて直感的にゲームプランを変えることができるんだ。また、一つのことを教えると、たちまちそれを別の部分でも応用できてしまう」とJJの真の強さは試合中の適応力や応用力にあると語る。

試合が競った展開になればなるほど、JJの恐るべき勝利への執念、適応力、創造力を我々が目にする可能性は高まる。

今回、JJ自身も己の全てを出し尽くすフルラウンドの戦いを予期している模様だ。「お互いにとって長い夜になるだろう。相手の心臓を皿に盛りつけてみんなの前で食らうのは格別だ。奴を深海に引き摺り込んで溺死させてやる。スタイプの技術じゃなく、心臓に襲いかかるつもりだ」と、心にダークサイドを秘めた者ならではの発言でその覚悟を語っている。

相手を罵ることはもちろん、試合前には多くを語りたがらないミオシッチも「ライトヘビーで戦ってきたジョンは、俺のような相手と戦ったことはない。試合が開始すればすぐに体感するはずだ」と自信をのぞかせている。

適正階級ではない怪我上がりの38歳と、3年8ヶ月ぶりに戦う42歳の戦いでありつつも、まごうことなきMMAレジェンド二人による重量級スーパーファイトであるこの試合。UFCヘビー級最多防衛記録を持つミオシッチが、MMA史上最高のファイターと呼び声高いJJを追い詰めることで、その奥深くにさらに眠っている力が呼び覚まされる──そんな極限の戦いを期待したい。

■視聴方法(予定)
11月17日(日・日本時間)
午後8時00分~UFC FIGHT PASS
午前11時~PPV
午後7時 30分~U-NEXT

■UFC309対戦カード

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者] ジョン・ジョーンズ(米国)
[挑戦者] スタイプ・ミオシッチ(米国)

<ライト級/5分5R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
マイケル・チャンドラー(米国)

<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
ポール・クレイグ(英国)

<女子フライ級/5分3R>
カリーニ・シウバ(ブラジル)
ヴィヴィアニ・アロージョ(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
マウリシオ・ルフィ(ブラジル)
ハメ・ジョントップ(ペルー)

<バンタム級/5分3R>
ジョナサン・マルチネス(米国)
マーカス・マギー(米国)

<ミドル級/5分3R>
クリス・ウェイドマン(米国)
エリク・アンダース(米国)

<ライト級/5分3R>
ジム・ミラー(米国)
デイモン・ジャクソン(米国)

<フェザー級/5分3R>
ロベルト・ロメロ(メキシコ)
デヴィッド・オナマ(ウガンダ)

<ヘビー級/5分3R>
マルチン・ティブラ(ポーランド)
ジョナタ・ジニス(ブラジル)

<ウェルター級/5分3R>
ミッキー・ガル(米国)
ラミズ・ブラヒメジ(米国)

<ウェルター級/5分3R>
オーバン・エリオット(英国)
バシル・ホフェス(米国)

<女子フライ級/5分3R>
ベロニカ・ハルディ(ベネズエラ)
エドゥアルダ・モウラ(ブラジル)

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【UFC309】UFC300の次はMSG、6勝6フィニッシュのNCAA3冠=ボー・ニコル「マッシブなポスチャーを」

【写真】とても穏やか。そして拙い英語へもPatienceしてくれます (C)MMAPLANET

16日(土・現地時間)、ニューヨーク州ニューヨークシティのマジソン・スクエア・ガーデンでUFC 309「Jones vs Miocic」が開催される。
Text by Manabu Takashima

同大会のメインカード、コメイン前でキャリア7戦目、UFCでは4戦目となるボー・ニコルがポール・クレイグと戦う。NCAAを制すること3度、MMAに転向後は5試合連続で初回フィニッシュ。前回のUFC300におけるコディ・ブランデージ戦で初めて2Rを経験も、全試合フィニッシュ記録は更新している。

ガードからの三角絞めと腕十字に特別な強さを見せるクレイグ戦を前にニコルにインタビューをすると、MSGで戦うことの特別さが伝わってきた。


──今週末のポール・クレイグ戦に向けて、今の気持ちを教えてください。

「最高の気分だよ。ただ減量という一番気が滅入る時間帯を向けているけどね。そこ以外は何かも素晴らしいよ」

──NCAAを3度制したレスラーなので減量は手慣れたモノという印象があるのですが、それでもやはり気が滅入るものなのですね。当日計量だったレスラー時代と、前日計量のMMAとはまた違うものですか。

「そりゃあレスリング時代の方がきつかったね。試合まで時間もなくて、リカバリーもそれほどできない。と同時に、レスリングではMMAほど体重を落とさない。レスリングもMMAも直接比較すると楽な部分もどちらにもある。でも、全てをひっくるめるとレスリングの減量の方がしんどいね。とにかく計量後1時間で試合が始まる。これはタフだよ」

──ではMMAを戦うようになってリカバリーには、レスリング時代にない知識も必要になったということは?

「そこに関しては、凄く科学的な減量方法を取り入れているから問題ないよ。確かに細かい失敗はあったけど、全ての経験が生きてきている。毎回、しっかりとその時に合ったカットとリカバリーをしてきたしね」

──ところで前回の試合は初めて2Rを経験しました。5分以上戦ってどのような印象を持ちましたか。

「ハハハハ。いう間でもなく、良い経験になったよ。ケージの中に以前より長くいることができたのは良かった。9分間戦っても何も問題はないばかりか、より動けることが確認できたんだ。フレッシュなままだったよ。コンディションとスタミナに自信が持てるようになった」

──押忍。前回のUFC300は誰もが認める歴史的なショーでした。そして今回はMSGでのファイトになります。28歳のボーにとって、MSGで戦うことは特別なのでしょうか。

「そりゃあそうさ。この機会を得られたことは、最高に光栄に感じている。ものすごく歴史のある会場……MMAだけでなくバスケットボール、アイスホッケー、ボクシングの名勝負が繰り広げられた来た。ガーデンに一歩足を踏み入れると、その伝統と威厳が感じられるんだ。そういうエネルギーを得て、今週末は戦えると思うとワクワクしてくるよ。

ただ大観衆の前で戦うのとは、違う。なんというのか、特別な感覚……それを心の底から感じられそうだ。確かに米国にはもっと大きくて、近代的な会場も増えている。スフィアなんて、その最たるものだよね。

ただニューヨーク、マンハッタンのど真ん中で戦うことは特別だ。アリーナの壁に飾れた数々のポスターからも、あの場で何が行われたのかが伝わってくる。その歴史の重みは皆が共有しているんだよね。今回の試合にサインしたことを伝えると、皆が『おぉ!! MSGで戦うのか!!』って興奮していたから」

──米国の人は格別、その感覚を持っているのでしょうね。そのMSGで戦う相手ポール・クレイグは、ボトムからの三角絞めと腕十字に特別な強さを見せるファイターです。

「危険な相手だ。UFCにおける戦績を見ても、それが証明されている。経験に裏付けされたサブミッションの使い手で、僕としては冷静かつ自信を持って戦う必要がある。焦って戦いたくない。過去に経験したたことがない試合になるだろうから、我慢強く戦うことが自分を助けてくれると思う。それでも、しっかりとポジションを考えて戦うと、サブミッションの餌食なることはないだろう」

ポール・クレイグはUFCで9勝8敗。4試合が三角絞めで勝っている(C)Zuffa/UFC

──ボーも既に仕留め方を心得ているかと思います。

ただし、ボーはレスラーです。テイクダウンからトップコントロールという常套手段が、クレイグの望む戦場になるということが特異な状況です。

「アームバーやトライアングルをセットするまでに、上手くパンチやエルボーを使っている。辛抱強く、三角絞めや腕十字の機会が訪れるのを待つことができるファイターだ。その時が来たら、全力でフィニッシュに掛かる。その機会を与えない。それが僕に必要になってくることは間違いない。あのハイガードを取れないと、彼にはチャンスはない。そのためのコントロールを僕ができるのかだよ」

(C)Zuffa/UFC

──ボーのポスチャーに要注目です。

「そこはしっかりと、やってきた。ポスチャーが悪くて、頭が下がっていることを僕らはデンジャーゾーンと呼んでいるんだ。しっかりとポスチャーができていれば、打撃を叩きこむことができる。ポスチャーに関しては、トレーニングキャンプの軸だったといえる。徹底的に考え、対策をこうじてきた。マッシブなポスチャーを見せるよ」

──ただ寝技に付き合わない戦いもMMAには存在しています。

「つまりは打撃だよね。今回のファイトキャンプ以前から、最高のコーチの下でストライキングを学んできた。打撃に関しては、僕にアドバンテージがある。彼の方が経験値は高いけど、僕の方が若くて速く、パワーもある。スタンドでの勢いのある打撃のある攻防は、ポールの弱点だ。立ち技は絶対的に僕の方が上だよ。

テイクダウンの機会があればするし。そうでなかったとしても、どの局面でも問題ない。それだけファイトキャンプで準備は整えてきたからね」

──ボー、今週末の試合を楽しみにしています。最後に日本のファンにメッセージをお願いできますか。

「UFC309を日本のファンにも楽しんでもらいたい。いつか日本を訪れて東京、地方、富士山に行きたいんだ。僕はMMAもそうだし、日本のレスリングの大ファンでもあるんだ。レスリング時代はタツヒロ・ヨネミツ(米満達弘。2012年ロンド五輪フリースタイル66キロ級金メダリスト)、今はリンヤ・ナカムラ、キョージ・ホリグチという友人がいる。日本のファンの応援に感謝しているよ」

■視聴方法(予定)
11月17日(日・日本時間)
午後8時00分~UFC FIGHT PASS
午前11時~PPV
午後7時 30分~U-NEXT

■UFC309対戦カード

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者] ジョン・ジョーンズ(米国)
[挑戦者] スタイプ・ミオシッチ(米国)

<ライト級/5分5R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
マイケル・チャンドラー(米国)

<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
ポール・クレイグ(英国)

<女子フライ級/5分3R>
カリーニ・シウバ(ブラジル)
ヴィヴィアニ・アロージョ(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
マウリシオ・ルフィ(ブラジル)
ハメ・ジョントップ(ペルー)

<バンタム級/5分3R>
ジョナサン・マルチネス(米国)
マーカス・マギー(米国)

<ミドル級/5分3R>
クリス・ウェイドマン(米国)
エリク・アンダース(米国)

<ライト級/5分3R>
ジム・ミラー(米国)
デイモン・ジャクソン(米国)

<フェザー級/5分3R>
ロベルト・ロメロ(メキシコ)
デヴィッド・オナマ(ウガンダ)

<ヘビー級/5分3R>
マルチン・ティブラ(ポーランド)
ジョナタ・ジニス(ブラジル)

<ウェルター級/5分3R>
ミッキー・ガル(米国)
ラミズ・ブラヒメジ(米国)

<ウェルター級/5分3R>
オーバン・エリオット(英国)
バシル・ホフェス(米国)

<女子フライ級/5分3R>
ベロニカ・ハルディ(ベネズエラ)
エドゥアルダ・モウラ(ブラジル)

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45 MMA MMAPLANET o UFC UFC300 コディ・ブランデージ ブログ ボー・ニコル

【UFC300】ボー・ニコル、初めての2R突入もブランテージをRNC葬で6連続フィニッシュ勝利

<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
Def.2R3分38秒by RNC
コディ・ブランデージ(米国)

サウスポーに構え、テイクダウンの機会を伺うニコル。ブランデージがミドル、ヒザ蹴りを狙う。ステップインして左を振るい、続いてニータップ気味にテイクダウンを狙ったニコルがスクランブルでバックに回り、正対したブランデージをケージに押し込む。ブランデージの右腕越しのボディロックでテイクダウンを奪い、バックに回ったニコルがワンフックから両足をフックへ。RNCを狙いつつパンチを入れると、強引に絞めを狙う。

ブランデージは半身から、ガードを取りハーフバラフライもニコルがマウントを取って殴る。自らマウントをといて、ブランデージを動かしてバックに回る。ニコルの左手首を両手でつかんで防ぐブランデージは、笑顔をみせて大丈夫だとアピールした。

キャリア初の2Rを戦うこととなったニコルが、左ミドルを蹴る。そこに右を合わせていったブランデージの蹴り足をキャッチしたが、ボディロックに取ろうして跳ね返される。慌てず、直後にダブルレッグでテイクダウンを決めたニコルが、サイドバックから正面に回ってがぶる。ハーフで潜ろうとし潰されたブランデージは、背中をつかされ枕で圧を受け、パスから直接マウントを取られる。

胸を合わせて肩固めを狙うニコルは、ハイマウントからパンチを落とし背中を見せたブランデージをボディトライアングルに捕え、RNCへ。懸命に防いでいたブランデージだが、RNCをセットされると即タップした。

「2Rになったけど、完全に支配して勝ち自信になった。王座を目指せる。皆、僕の負けを見に来たかったけど、逆にファンにしてみせるよ」とブーイングを送ったファンを皮肉った。


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【UFC300】ケイラ・ハリソンと対戦、女子格レジェンド=ホーリー・ホルム「少しでも成長しようと」

【写真】落ち着き払っているホルムだった (C)MMAPLANET

13日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催されるUFC 300「Pereira vs Hill」で、ホーリー・ホルムがケイラ・ハリソンと対戦する。
Text by Manabu Takashima

2017年にボクシングの殿堂入りを果たしたホルムだが、ボクシングでの活動が9年間だったのに対し、MMAは13年目を迎える。そしてボクシングよりも、キックの印象が強い被弾しないMMAストライカーは42歳になっても衰えることを知らない。

ハリソンと戦うことで、ロンダ・ロウジー戦が思い起こされるホルムだが、日進月歩の女子MMAで2011年から戦い続けてきたホルムこそ、今はベルトを巻いていなくともUFC300で戦う相応しいファイターに違ない。


――今週末UFC300という大舞台で戦うこと、どのように考えていますか。

「現役チャンピオンと元チャンピオンが揃って出場している大会に参加できて、本当にワクワクしているわ。この大会で戦うメンバーの1人に選ばれて光栄よ。でも、出場するからにはしっかりと勝たないといけないから」

2009年、MMAデビューの2年目にジャクソンズMMAでMMAファイターとスパーリングをしていたホルム

──ボクシングで世界のベルトを15本も巻いた。

そんなホーリーが、Legacy FCに出場し始めた頃からファイトを見させてもらってきましたが、あの頃ここまでMMAにのめり込むと思っていましたか。

「こんなに長く戦うなんて、思っていなかったわ。ファイト毎に自分の限界を見極める必要があると思って戦ってきて、それが1年、1年と続いてきた感じね。それにしても、ここまで長いキャリアになるとは全く想像もしてなかった」

──ここまで戦うことができる要因はどこにあると思っていますか。

「やっぱり精神面の影響が大きいと思うわ。ファイトでも、ビジネスでもフィジカルよりもメンタルに依るところが大きいから。もちろん肉体的にヘルシーでないといけないけど、メンタルもそうね。心身ともに健康で、しっかりと考えることができる状態でいないと。それに他の選手が負ったような大きなケガとは無縁というのも、やっぱり大きいわね。だからこそ、前進できる。今も、前を見続けて戦うことができているわ」

(C)Zuffa/UFC

──ところで今回のケイラ・ハリソンとの一戦は、多くの人がロンダ・ロウジーとの戦いを連想しているかと思います。

「2人ともバックグラウンドは柔道だから。皆が、あの2人を比べるのはしょうがないこと。でもロンダとケイラは全然違う。ロンダの方が立ち技で戦いたがっていた。それにロンダは柔道で戦っていたけど、ケイラはレスリングで戦っている。何よりロンダはオーソドックスで、ケイラはレフティ。そこからして違っているわ。だから、ロンダ云々でなくケイラの動きに集中する必要があるの。

同時にロンダと戦ったことで、私は本当に色々なことを手にすることができたのは事実よ。メンタル的にもあんなに凄いプレッシャーのなかで戦ったことはなかった。それでもポジティブに乗り越えることができた。ケイラは、MMAでそういう経験していないでしょうね。何よりロンダと戦った時と比べると、MMAは凄く進化している。それは私も証明してきたし、多くのガールズがケージのなか見せてきた。今もそう。少しでも成長しようと、練習を続けているから」

──では、ケイラとの試合でカギを握る攻防はどこになると思いますか。

「とにかく集中することよ。ケイラの想うような試合展開にさせないためにも、集中して戦うこと。ファイターなら誰もそうだけど、距離のコントロールは絶対よ。望むような試合をするには、絶対的に自分の距離で戦わないといけない。

どれだけ相手との間に距離があるのか。そして、どれだけ空間をコントロールできるのか。それがMMAというゲームで、自分のパズルで埋めていく必要があるの」

──簡単に伝わることではないでしょうが、そこも踏まえてどのような試合をファンに見せたいと考えていますか。

「今も私がこの階級の実力者だと、証明したい。私の持つ、全ての技術を駆使して戦うわ。とにかくケイラとの試合はビッグファイトよ。この試合で勝利を手にすれば、またタイトルに挑戦できると思っている。どうなるかしらね」

■視聴方法(予定)
4月14日(日・日本時間)
午前7時分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前6時30分~U-NEXT

■UFC300対戦カード

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ポアタン・フェレイラ(ブラジル)
[挑戦者] ジャマール・ヒル(米国)

<UFC世界女子ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者]ジャン・ウェイリ(中国)
[挑戦者] イェン・シャオナン(中国)

<BMFタイトルマッチ・ライト級/5分5R>
ジャスティン・ゲイジー(米国)
マックス・ホロウェイ(米国)

<ライト級/5分3R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
アルマン・ツァルキャン(アルメニア)

<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
コディ・ブランデージ(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
イリー・プロハースカ(チェコ)
アレクサンドル・ラキッチ(オーストリア)

<フェザー級/5分3R>
カルヴィン・ケイター(米国)
アルジャメイン・ステーリング(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
ホーリー・ホルム(米国)
ケイラ・ハリソン(米国)

<フェザー級/5分3R>
ソディック・ユースウ(米国)
ジエゴ・ロピス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ジェイリン・ターナー(米国)
ヘナト・モイカノ(ブラジル)

<女子ストロー級/5分3R>
ジェシカ・アンドラーデ(ブラジル)
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ボビー・グリーン(米国)
ジム・ミラー(米国)

<バンタム級/5分3R>
デイヴィソン・フィゲイレド(ブラジル)
コディ・ガーブラント(米国)

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【UFC300】展望。ゲイジー×ホロウェイ、Baddest Motherfuckeを超越したBMFタイトル戦!!

【写真】両者とも156ポンドで計量を終えている。最高の駆け引きのあとで、最高の殴り合いに発展する可能性も?? (C)Zuffa/UFC

13日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催される。プレリミ含めて全試合がメインイベント級と呼べるスーパー・メガ・ヒストリカルショーで、UFC認定の非公式タイトル=BMF(Baddest Motherfucker=最高にヤバい奴)現王者であるジャスティン・ゲイジーにマックス・ホロウェイが挑む一戦もラインナップされている。
Text by Isamu Horiuchi

もともとこのBMFタイトルが創設されたのは、2019年11月のネイト・ディアズ×ホルヘ・マスヴィダル戦だ。その3カ月前のアンソニー・ペティス戦に勝利したネイトが「俺は真のBaddest Motherfuckerの座を賭けてマスヴィダルと戦いてぇんだ。ただ相手を抑え込んでルール上の勝利を狙うような連中じゃなくな」と発言。この言葉にダナ・ホワイト代表も大いに乗り気となり、BMFの文字が大きく刻まれたベルトを本当に作成、両者による決定戦を敢行したのだった。


試合は1Rに右ハイでネイトの右目上をカットしたマスヴィダルが終始優勢に試合を進め、3R終了時にTKO勝利。元WWEスーパースターのザ・ロックことドウェイン・ジョンソンにBMFベルトを巻かれたのだった。

その後4年近く封印されていたBMF戦だが、初代王者のマスヴィダルが引退を表明した3カ月後の昨年7月、ゲイジー×ダスティン・ポイエーにて復活。ここでゲイジーが右ハイでポイエーを沈め2代目王座に輝いた。この勝利でイスラム・マカチェフの持つライト級王座の挑戦権を得たと思われたゲイジーだが、その話がなかなか具体化しないまま、今回元フェザー級王者のホロウェイを相手に史上初のBMF王座防衛戦に臨むこととなった。

挑戦者のホロウェイは、現在アーノルド・アレン戦とコリアンゾンビことジョン・チャンソン戦と2連勝中。ライト級のゲイジー同様、こちらもフェザー級タイトル挑戦に最も近いところにいると思われる選手だが、新王者イリャ・トプリアの都合や前王者アレックス・ヴォルカノフスキーとのダイレクトリマッチが優先されているせいか、なかなかタイトル戦の話が挙がらない。

そこで今回──ある意味正式のタイトルよりも世間的な注目は高いかもしれない──BMFタイトル戦に出陣を決めた。

現BMF王ゲイジーはこれまで25勝のうち20KO、実に80パーセントのKO率を誇る。名だたる強豪たちと対戦経験を持つ前ライト級王者シャーウス・オリヴェイラをして「自分が対戦した中で最もパンチ力があったのは断然ゲイジー」と言わしめるライト級屈指のハードヒッターだ。対する挑戦者ホロウェイは、これまでUFCの試合中に誰よりも数多く有効打を当てているとされるボリュームストライカー。(有効打かどうかの判断に厳密さはないと思われるが)昨年のアレン戦のライブ中継の途中で合計3000発ヒットという記録を達成したと伝えられ、2位に1000発以上の差をつけていると説明された。

そんな両者の「ヤバい奴決定戦」である以上、期待されているのがド派手な打撃戦であることは言うまでもない。実際にゲイジーはこの試合について「理想的には、KOして眠らせるよりも目をカットするとか、彼の腕が折れてしまうとか、何らかの形で歩けなくすることで試合が終わってくれる方がいいとは思う。でも実際に向こうはこっちをKOしようと向かってくるだろう。だからこっちも向こうがどうなろうが、完全に眠らせてしまおうがまったく良心の呵責は感じないよ」と彼流の静かな言い方で凄絶な展開を予告している。

対するホロウェイも「僕なりにBMFを一言で言い表すなら”violence(暴力)”だ。ゲイジーはバイオレントな男だ。この試合は暴力そのものとなる。最高だ。生きがいだ。考えるだけで満面の笑みが浮かんでしまうよ」と真っ向から打撃戦を挑む姿勢を見せている。

わざわざ階級上の超弩級のハードパンチャーとの殴り合いに嬉々として臨むホロウェイの精神性は、確かに常識を超越したBMFさ(ヤバさ)に溢れている。しかし、近年の両者の戦いぶりやMMAファイターとしての進化を考えた場合、この戦いで重要なのはBMFな要素のみではないと思われる。むしろBMFを超えたお互いの格闘家としての成熟度こそ、今回問われているのではないだろうか。

前回ポイエーを倒してBMF王座に就いたゲイジーだが、その勝因が本人の成熟ぶりにあったのは自他ともに認めるところだ。2018年4月にポイエーと対戦した際には、序盤から体を振って距離を詰めて殴りに行ったゲイジー。最後も強引に前に出たところにカウンターをもらってマットに沈んだ。以降この試合を教訓として忍耐強く戦う術を身に付け、5年を経た再戦となった前回のBMF戦ではまるで違う戦い方を見せた。

前に出てくるポイエーの打撃に柔らかく体を使って反応しては強烈なカウンターを何度も当て、最後もポイエーが近づいてきたところに右ストレートから右ハイ一閃。見事なコンビネーションをもってゲイジーは鮮烈なKO勝利を収めた。

2018年のポイエー戦と並んでゲイジーが「大きな教訓となった」と認めているのが2022年5月のシャーウス・オリヴェイラ戦だ。序盤からお互いに効かせ合う凄絶な展開となった1R。チャンスと見るや我を忘れて大振りの一発狙いを繰り出していったゲイジーは、逆にオリヴェイラの一撃を貰ってダウンし、チョークで仕留められてしまった。

その後ゲイジーは、次戦となる昨年3月のラファエル・フィジエフ戦でこの敗戦の学びを生かしてみせた。最終3R、やや動きの落ちたフィジエフに対してゲイジーは急くことなく強烈なジャブで出鼻をくじき続けてペースを握る。終了寸前、後のないフィジエフが勝負を掛けて振り回してきた左右のフックを見切ったゲイジーは、見事なカウンターのテイクダウンに成功。最後まで冷静さを保ち勝負どころを見極めての完勝だった。

昨年のフィジエフ戦とポイエーとの再戦でゲイジーが見せた冷静さと忍耐強さこそ、今回の対ホロウェイBMF戦の勝利に向けても、最重要視される。一発の威力より圧倒的な手数で勝負するホロウェイだが、相手が強引に前に出たところに放つカウンターには一撃必殺の威力が宿る。前戦にて手負いのコリアンゾンビが強引に詰めてきた時に巧みにバックステップして距離を作り、右オーバーハンドをスマッシュヒットして劇的なKO勝利を挙げたのは記憶に新しいところだ。

5年前、急遽のオファーを受けて短い準備期間で敢行したライト級戦(2019年4月、ポイエーとライト級暫定王者決定戦にて5R判定負け)の時とは違い、今回は十分に時間を掛けて筋肉量を増やしてきたというホロウェイ。減量苦からも解放され「スピードは落ちず、パワーは上がって体調は100パーセントさ」と語っており、過去最高に力強い姿が期待できそうだ。

仮にBMFを期待する雰囲気に流されて、ポイエー初戦やオリヴェイラ戦の向こう見ずなゲイジーが現われるようなことがあれば、ホロウェイが世間を驚かせる可能性も高まるだろう。

当然ゲイジー本人もそこは十分承知しているようで「確固たる技術を用いて、距離を支配し、角度を作って素早く反応して戦う」と予告している。おそらく今回のタイトル戦で我々が見るのは、闇雲に前に出て相手を殴りにゆくのではなく、冷静に相手を見て反応し、有効な打撃を繰り出してゆくゲイジーの姿だろう。

その上で勝負所を見極め凄まじい威力の打撃を爆発させる、前戦に続くゲイジー流進化版BMFを期待したい。

今回のBMF戦で進化が求められるのは、ホロウェイも同様だ。この試合でまず警戒すべきはゲイジーの強烈な右のカーフキックだろう。オーソドックスに構えて絶妙の間合いを保ちつつボクシングで勝負するホロウェイは、以前から相手の右ローを被弾する傾向が見られる。2019年末のヴォルカノフスキーとの初戦では序盤からカーフを何度も貰ってペースを握られ、2年後のジャイー・ロドリゲス戦の序盤でもローを効かされる場面が目立った。

そこで鍵となりそうなのが、昨年4月のアレン戦でホロウェイが見せた新しい戦い方だ。普段とは逆にサウスポー中心に構えたホロウェイは、スイッチや横への動きも随時に交えて多彩な角度を作り、強打を誇る新鋭アレンに動きを読ませずに判定勝利した。

昨年の来日時にこの試合について筆者が質問した際「MMAは常に進化するスポーツだから、自分も進化しないと置いていかれてしまうんだよ」と答えてくれたホロウェイだけに、今回も危険極まるゲイジーの蹴り、そして凄まじい破壊力の拳を捌くための新しい姿を期待したい。

ちなみにゲイジー陣営もこのアレン戦のホロウェイの新しい戦い方を警戒しているらしく、公式予告番組「UFC 300 Countdown」カウントダウンでも、ゲイジーがコーチたちとともにこの試合のホロウェイの立体的な動きを熱心に分析研究する姿が映し出されている。ホロウェイが見事なタイミングでアレンにワンツーを入れた場面を見たゲイジーは「もし俺がローを蹴ることで、彼のこの動きを誘い出すことができたなら、そこにカウンターを合わせることができるよな」とコーチに語っている。

やはり──この試合はただのBMF決定戦ではない。お互いが最も進化した状態の対戦相手を想定し、勝つための緻密な策を組み立て最高の状態に仕上げた上で、死力を尽くして戦うのだ。

すでに長きにわたって世界トップで戦いつつ、なおかつMMAファイターとしての進化を見せてくれるゲイジーとホロウェイ。この階級を超えたBMF戦は、彼らがそれぞれの階級で頂点に登ってゆくための道筋としても興味深い。

■視聴方法(予定)
4月14日(日・日本時間)
午前7時分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前6時30分~U-NEXT

■UFC300対戦カード

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ポアタン・フェレイラ(ブラジル)
[挑戦者] ジャマール・ヒル(米国)

<UFC世界女子ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者]ジャン・ウェイリ(中国)
[挑戦者] イェン・シャオナン(中国)

<BMFタイトルマッチ・ライト級/5分5R>
ジャスティン・ゲイジー(米国)
マックス・ホロウェイ(米国)

<ライト級/5分3R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
アルマン・ツァルキャン(アルメニア)

<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
コディ・ブランデージ(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
イリー・プロハースカ(チェコ)
アレクサンドル・ラキッチ(オーストリア)

<フェザー級/5分3R>
カルヴィン・ケイター(米国)
アルジャメイン・ステーリング(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
ホーリー・ホルム(米国)
ケイラ・ハリソン(米国)

<フェザー級/5分3R>
ソディック・ユースウ(米国)
ジエゴ・ロピス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ジェイリン・ターナー(米国)
ヘナト・モイカノ(ブラジル)

<女子ストロー級/5分3R>
ジェシカ・アンドラーデ(ブラジル)
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ボビー・グリーン(米国)
ジム・ミラー(米国)

<バンタム級/5分3R>
デイヴィソン・フィゲイレド(ブラジル)
コディ・ガーブラント(米国)

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【UFC300】UFC100、200&300出場。オクタゴン44戦目ジム・ミラー「予想も期待もしていなかった」

【写真】1983年8月30日生まれ。MMA戦績37勝17敗1NC。UFC戦績26勝16敗1NC。いぶし銀な鉄人(C)MMAPLANET

13日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催されるUFC 300「Pereira vs Hill」で、ジム・ミラーがオクタゴン44戦目をボビー・グリーン相手に戦う。
Text by Manabu Takashima

ジム・ミラーはUFC100、UFC200 、UFC300を戦う──この惑星でたった1人の存在だ。UFC100は25歳の時、UFC200は32歳だった。そして40歳になってUFC300を戦う。功労賞的な出場ではない。今も世界最高峰にあってコンペティティブな存在だから、あの場に立てる。世界チャンピオンという肩書はない。それでも紛れもなくMMA界のオンリーワン、ジム・ミラーに話を訊いた。


――今週末、UFC300でボビー・グリーンと対戦します。今の調子は?

「キャンプも最高だったし、凄く調子が良い。後は戦うだけだよ。UFC300に関しては、数年前から出たいという気持ちは口にしていた。でも、自分の立ち位置によってUFC300のようなビッグショーで戦えるか否か状況次第だった。でも、このところのファイトが認められたのか出場オファーが届き、拘って来た甲斐があったよ。

トレーニングキャンプを経て、ボビーと戦う。つまり、ここからということ。ボビーに勝って、このまま正しい方向に進んでいくつもりだよ」

──ところでジムはUFC100、UFC200、そしてUFC300を戦う唯一のファイターです。心の底から、自らを誇れることかと。

「そうだね。自分でも凄いことだと思っている(笑)。ただ、本音をいえば少しプレッシャーも感じているんだ。第1試合からメインイベントまで凄い試合が並んでいるなかで、チャンピオンと元チャンピオンの名前をいくらでも見ることができる。18人もの世界チャンピオンが出ているショーで、僕は彼らに繋げるためにもしっかりとファンの気持ちを温めたい。自分の役割を果たすつもりだ」

──そんな……UFC300は試合順こそあっても、全員がヘッドライナーですよ。この大会は過去の名声だけで戦える場所ではないはずです。UFC100でマック・ダンジグと、UFC200では五味隆典選手と戦った。UFC100は2009年で、UFC200は2016年でした。そして2024年となった今も、ジムはコンペティティブな存在です。だから出場権利を得ることができたに違いない。

「サンキュー。本当に色々と努力を続けてきた。と同時に、幸運でもあったんだ。大きなケガをすることなく、キャリアを積みかさねることができた。ライム病との診断を受けて頭を悩ますこともあったけど、症状を軽減させる努力をして……楽しく、ここまで戦い続けることができた。そして、今回のような大きな大会で大勢のファンの前で試合ができることが凄く嬉しい。コロナ後、今回のような大観衆のなかで戦うのは2度目なんだ。ファンが僕の名前を叫ぶなかで戦うことが楽しみでならない」

──そして今回のファイトが、UFCで実に44戦目になります。信じられないような試合数です。

「アッハハハハハ。こんな風なキャリアを送ることになるなんて、予想もしていなかったよ。期待もしていなかった。年老いたライト級ファイターとして、いかにトレーニングをして、いかに戦うのか。その方向性を見つけ出せたことが大きい。40歳のライト級って、ヘビー級では50歳のようなモノだからね(笑)。

簡単なことではない。でも、MMAの戦い方をずっと研究してきた。マーシャルアーチストとして、自分のスタイル、自分の力に合った方法論を見つけてきたんだ。そうやって積み重ねてきたことが、合致して実を結んだとは思っているよ。なんといってもファイトだけでなく、僕の人生に合致したんだ」

──素晴らしいです。

「UFC100の翌年に生まれた子供がもう14歳だ。以前は子供達は、僕が何をしているのかはちゃんと理解できていなかった。それが今では、より深く理解できている。この時間、経験を子供達と共有できて幸せな限りだ。子供達も土曜日の試合を観戦することを楽しみにしている。本当に喜ばしいことだよ」

──そんな記念すべき夜も、対戦相手はジムをぶっ飛ばしに来ます。

「その通りだ(笑)。ボビーは素晴らしくタフなファイターだよ。彼もまた長い間、UFCで戦ってきた。過去に何度か戦う話もあったけど、実現には至らなかった」

──2022年7月に対戦予定でしたが、グリーンがドラックテストに陽性反応が出てキャンセルとなりました。

「その通りだね。ただ、あれからもいつかは戦う時が来るとずっと思って来たんだ。ボビーのようなユニークなスタイルの選手と、こうやって戦うことができて嬉しいよ。ヤングキッズと戦う時は、何も知らない。本当に何も分からない相手と拳を交えることになる。でもボビーは違う。彼は彼で、色々なことを積んできている。ボビーのようなUFCで20数試合(※23試合)も戦ってきた選手と戦えることが楽しみでしょうがない」

──押忍。ところでUFC100に出場していた選手で現役を続けているのはジムに以外、ジョン・ジョーンズ、そして秋山成勲選手がいます。秋山選手は48歳になった今も試合に出ていますが、ジムが秋山選手の年齢に近づく頃にUFC400が開かれるはずです。

「ノー、ノー(笑)。待ってくれ、UFC400で戦うつもりはないよ(笑)。だから、僕はライト級だからセクシーヤマとは違う。ライト級ファイターが48歳で戦うなんて、あり得ない」

──可能性はゼロとは思えなくて。

「う~ん……。UFCが僕と同じようにリタイアしている選手との試合を組んで、ショーの役に立てるなら……その時は考えるよ(笑)」

■視聴方法(予定)
4月14日(日・日本時間)
午前7時分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前6時30分~U-NEXT

■UFC300対戦カード

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ポアタン・フェレイラ(ブラジル)
[挑戦者] ジャマール・ヒル(米国)

<UFC世界女子ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者]ジャン・ウェイリ(中国)
[挑戦者] イェン・シャオナン(中国)

<BMFタイトルマッチ・ライト級/5分5R>
ジャスティン・ゲイジー(米国)
マックス・ホロウェイ(米国)

<ライト級/5分3R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
アルマン・ツァルキャン(アルメニア)

<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
コディ・ブランデージ(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
イリー・プロハースカ(チェコ)
アレクサンドル・ラキッチ(オーストリア)

<フェザー級/5分3R>
カルヴィン・ケイター(米国)
アルジャメイン・ステーリング(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
ホーリー・ホルム(米国)
ケイラ・ハリソン(米国)

<フェザー級/5分3R>
ソディック・ユースウ(米国)
ジエゴ・ロピス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ジェイリン・ターナー(米国)
ヘナト・モイカノ(ブラジル)

<女子ストロー級/5分3R>
ジェシカ・アンドラーデ(ブラジル)
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ボビー・グリーン(米国)
ジム・ミラー(米国)

<バンタム級/5分3R>
デイヴィソン・フィゲイレド(ブラジル)
コディ・ガーブラント(米国)

The post 【UFC300】UFC100、200&300出場。オクタゴン44戦目ジム・ミラー「予想も期待もしていなかった」 first appeared on MMAPLANET.
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45 MMA MMAPLANET o UFC UFC300   アルジャメイン・ステーリング アルマン・ツァルキャン アレックス・ポアタン アレックス・ポアタン・ペレイラ イェン・シャオナン イスラエル・アデサニャ イリー・プロハースカ カルヴィン・ケイター キック グローバー・テイシェイラ ケイラ・ハリソン シャーウス・オリヴェイラ ジェイリン・ターナー ジェシカ・アンドラーデ ジエゴ・ロピス ジム・ミラー ジャスティン・ゲイジー ジャマール・ヒル ジャン・ウェイリ ダナ・ホワイト デイヴィソン・フィゲイレド ヘナト・モイカノ ホーリー・ホルム ボクシング ボビー・グリーン ボー・ニコル マゴメド・アンカラエフ マックス・ホロウェイ マリナ・ホドリゲス ライカ

【UFC300】展望─01─ポアタン✖ヒル。記念大会のメインはKO必至。瞬き厳禁=近距離の打撃戦?!

【写真】KO必至。MMA的にはヒルという見方も成り立つが、近い距離のポアタンの振りにどう体が反応するか (C)MMAPLANET

13日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催される。プレリミ含めて全試合がメインイベント級と呼べる豪華カードがズラリと揃ったこの記念大会のメインを飾るのは、二階級制覇を達成した王者アレックス・ポアタン・ペレイラに、前王者のジャマール・ヒルが挑むUFC世界ライトヘビー級選手権試合だ。
Text by Isamu Horiuchi

この試合は、約1年半続いてきたUFCライトヘビー級戦線の混迷状況に完全に終止符を打ち、ついに誰もが認める──”Undisputed”王者を決定する戦いといえる。


同級の混乱は2022年11月、当時の王者イリー・プロハースカが右肩の負傷によりタイトルを返上したことに端を発する。これを受けて翌月、2位のヤン・ブラボヴィッチと3位のマゴメド・アンカラエフの試合が急遽王座決定戦に格上げされて行われた。

しかしこの試合が、直後の会見でダナ・ホワイト代表が「酷い試合だった。ファッ○ンな3ラウンドが終わった後、私は卒倒しそうになったよ」と得意のFボムを投下し吐き捨てるような内容の末にドロー、王座は空位のままとされた。呆れた表情のホワイト代表はその場で、年明けの2023年1月リオ大会にて、元王者のグローバー・テイシェイラと当時6位のヒルの間で新たな王座決定戦を行うと発表したのだった。

(C)Zuffa/UFC

突然の大抜擢を受けて敵地に乗り込む形となったヒル。

地元の英雄に対して多彩な打撃でスタンド戦を支配。5Rにはテイシェイラ執念のテイクダウンからマウントを奪われたものの、股間を抜けてスクランブルして上を取り返し、文句なしの判定勝利を収めた。デビュー後14戦にして見事世界の頂点に立ち「俺のような境遇からここまで来られるなんて」とマットに突っ伏して感涙にむせんだヒル。

そこから顔を上げて「多くの人間が俺には無理だとぬかしやがった。チャンスは1Rしかなく、5Rは戦えないとかな。見たかこのクソ野郎ども!!」とアンチに大見栄を切ったが、思わぬ展開が重なった末の「棚ボタ的」戴冠という印象は拭えず、ヒルをまだ真の王者としては認め難いという声が消えることはなかった。

防衛を果たすことでそんな声を黙らさんと意気込んでいたヒルだが、半年後の7月に悲劇が襲う。なんとファイトウィークの催しで行われたファイターたちによるバスケットボールの試合にてアキレス腱断裂の大怪我を負ってしまい、タイトル返上を余儀なくされたのだ。

(C)Zuffa/UFC

そこで同年11月、この一年間で実に三度目の王座決定戦へ。

前王者プロハースカと二階級制覇を目指して階級を上げてきたアレックス・ポアタン・ペレイラ。1Rに強烈な右カーフでダメージを与えたポアタンは、2Rに強引に詰めてきたプロハースカに左右のフックをヒット。崩れたところに追い討ちをかけてTKO勝利。キックボクシングとMMAの両方で世界二階級制覇という大偉業を達成してみせた。

今回の記念大会ではその新王者ポアタンに、手術とリハビリを経て復活したヒルが挑む。正規王者と、敗れることなく王座を失った前王者による真の世界の頂点を決める戦いが、ついに実現するというわけだ。

ヒルにとってこの試合は、戴冠後も自分を認めようとしない世間に対して自分を証明する戦いでもある。対戦相手の悪口を言わないストイックな求道者ペレイラのことを「クールな男で、ああいうやつは好きだ」と認めているヒルだが、自分のことをビッグマウスと罵るペレイラファンたちのことは我慢がならない様子だ。

「俺はアレックスを立ち技でKOしてやる。そしてその事実を奴のファンどもの目の前に突きつけてやるぜ。アレックス本人に対してはやらないけどな。俺のことを侮辱しやがる奴ら、お前らより俺の方が遥かに優れた存在だ。俺は自分の本職で世界のトップに上り詰めたんだ。それと比べてお前らは何様だ? たかが百人くらいの規模の工場で月間優秀社員に選ばれたとか、そんな程度でお前らは自慢し、自分を特別だと思ってたりするんだろ? 

お前らなとど違い、俺は選ばれた1パーセントの中の1パーセントの中の1パーセントだぞ。そんな俺の達成や努力に唾を吐きかけクソぶっかけるような真似しやがって。その理屈で行けばお前らなど、人生において誇れることなど何一つありはしないということを理解するがいい。お前らがどう足掻こうが、俺はこの3年間で、ほとんどの人間が生涯で稼ぐ額より遥かに多くを手にしたんだ。そいつらの子供が稼ぐ金を含めてもな。俺はお前らの言葉をモチベーションにして、お前らが崇め奉るアレックスを眠らせてやるぜ」と、対戦相手ではなくそのファンに対して身も蓋もないトラッシュトークを展開する前王者だ。

それはさておき、この試合で期待されているのは凄まじい殺傷能力を持つ両者による大打撃戦だ。グローリー2階級制覇という輝かしいキックボクシングの実績を持つポアタンは、当然のようにMMAでも9勝中7フィニッシュの全てがKO勝利だ。対するヒルも、7つのフィニッシュの全てがKO。しかし高校時代までバスケットボールに励んでいたというヒルは、MMAを始めるまで特に格闘技経験はない。まったく異なるバックグラウンドとスタイルを持つMMAストライカー同士の対決という意味でも、興味深い頂上決戦だ。

まず注目なのは、ポアタンの主武器である右カーフキックを巡る攻防だ。腰を捻らないコンパクトな蹴り方でありながら強烈無比な威力を持つこの右カーフを駆使し、序盤に相手の足を殺すのがポアタンの常套手段だ。ほぼノーモーションから放たれるため、相手にとっては反応が極めて困難となる。

ヒルのヘッドコーチであるチャド・ポメロイも「我々はローキックの対策を重点的に行っていて、強いムエタイ選手たちにスパーでローを蹴ってもらっている」と発言しており、挑戦者陣営がこの技を最も警戒していることは間違いない。ヒルとしては、スタンドでいかにプレッシャーをかけて王者のローを封じるかが勝利への大きな鍵となりそうだ。

その点本人は、11月のポアタンの戴冠をケージサイドで目撃した直後にすでに「1Rはスローな展開だった。イリーは広いスタンスでローに対処せずにダメージを受けてしまったが、俺にはアレックスが対処できないようなスキルと特性がある。奴は俺が試合に持ち込むスピードとボリュームに対抗できないよ」と自信を覗かせている。

実際ヒルは王者と同じ193センチという長身を誇り(201cmのリーチは王者のそれを1センチ上回っている)、前手での多彩な攻撃を軸に、足技も交えてプレッシャーをかけることを得意とする。さらに相手のジャブにカウンターを合わせるタイミングにも天賦の才を持ち、サウスポーを基本としつつスイッチも駆使するが故に、ローのダメージを両脚に分散させることもできる。

王者のローの距離を殺しケージ際に詰めるために必要な適性に恵まれているのは確かだ。さらに誰よりもポアタンをよく知るイスラエル・アデサニャとの練習も敢行したヒルは「彼は俺の質問に全て隠すことなく答えてくれて、(打倒ポアタンのための)素晴らしいインサイトを授けてくれたよ」と語っている。

もっともポアタンとしては、ローを嫌がる相手が前に出てくるのはいつものこと。前戦でも、プロハースカが2Rに強引に詰めてきたところを待ち構えていたように強烈な左右のフックを当てて沈めている。近距離からでも異次元の破壊力を発揮する拳こそ、ポアタンの真の怖さだ。

が、挑戦者はむしろそこにポアタンの弱点を見出しているようだ。「奴のディフェンスは、自分のオフェンスに依存しているんだよ」とヒルは言う。「守るときには、自分の攻撃の背後に隠れる形になっている。だからディフェンスを余儀なくさせるように追い込んでいけば、そこに弱点が出てくるはずだ」と。

実際ポアタンは、相手が距離を詰めてきた時に上半身を動かさず腕を伸ばして下がる傾向があり、その際に相手のパンチを被弾する場面も見られる。ケージ際からの一撃必殺のカウンターは持っているが、巧みなディフェンスワークを披露することはあまりない。対してヒルは柔らかく体を使ったスウェイも得意とする。前戦の4Rにテイシェイラをケージ際まで詰めると、リーチに勝る自分の打撃だけが当たる絶妙な距離を保ち、反撃を巧みなボディワークでかわしつつ多彩なコンビネーションで滅多打ちにしてみせた。「オフェンスに依存したディフェンス」を攻略する術を、ヒルは確かに持っている。

しかし──この師と仰ぎ敬愛する存在がヒルに打ちのめされる光景を、ポアタンはセコンドとして間近で目撃している。打撃戦で師と同じ轍を踏むつもりは毛頭ないはずだ。

今回の試合に向けてテイシェイラの道場で共に練習し、攻略法を伝授される日々を過ごしてきた王者は「ヒルの打撃は確かにパワーがあって危険だ。でも技術レベルを見ると(自分が倒した)イリーの方が優れていると思う」と静かに語り、自信を覗かせる。両者の間合いが蹴りの距離からパンチの距離へと移行した時、射程距離の長いヒルの拳と短いポアタンの拳、二つの凄まじい殺傷能力はどのように交錯するのか。

お互いのことを熟知し、研究し尽くした最高峰のMMAストライカー二人による決戦。意表をついてどちらかがテイクダウンを仕掛けてゆく可能性も含め──真のライトヘビー級の頂点を決める、記念大会に相応しい至上の攻防を堪能したい。

■視聴方法(予定)
4月14日(日・日本時間)
午前7時分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前6時30分~U-NEXT

■UFC300対戦カード

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ポアタン・フェレイラ(ブラジル)
[挑戦者] ジャマール・ヒル(米国)

<UFC世界女子ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者]ジャン・ウェイリ(中国)
[挑戦者] イェン・シャオナン(中国)

<BMFタイトルマッチ・ライト級/5分5R>
ジャスティン・ゲイジー(米国)
マックス・ホロウェイ(米国)

<ライト級/5分3R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
アルマン・ツァルキャン(アルメニア)

<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
コディ・ブランデージ(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
イリー・プロハースカ(チェコ)
アレクサンドル・ラキッチ(オーストリア)

<フェザー級/5分3R>
カルヴィン・ケイター(米国)
アルジャメイン・ステーリング(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
ホーリー・ホルム(米国)
ケイラ・ハリソン(米国)

<フェザー級/5分3R>
ソディック・ユースウ(米国)
ジエゴ・ロピス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ジェイリン・ターナー(米国)
ヘナト・モイカノ(ブラジル)

<女子ストロー級/5分3R>
ジェシカ・アンドラーデ(ブラジル)
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ボビー・グリーン(米国)
ジム・ミラー(米国)

<バンタム級/5分3R>
デイヴィソン・フィゲイレド(ブラジル)
コディ・ガーブラント(米国)

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【UFC300】ホルムとUFC初陣、ケイラ・ハリソン「70歳になった時、自分の人生を後悔したくなかった」

【写真】柔道時代ともPFL時代とも明らかに違う、バンタム級で戦うケイラ・ハリソン。計量まで3日、声に力があった(C)MMAPLANET

13日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催されるUFC 300「Pereira vs Hill」で、ケイラ・ハリソンがオクタゴンデビューを迎える。
Text by Manabu Takashima

2度五輪を制した柔道家は2017年にMMA転向を果たすと、2019年&2021年のPFL女子ライト級シーズンウィナーとなった。2022年はMMA初黒星の喫し準優勝に、昨年は女子フェザー級が実施されたがケイラは参加しなかった。

そんななか11月にワンマッチで元UFCファイターのアスペン・ラッドを下すと、今年の1月になりダナ・ホワイトからケイラとの契約、UFC300で初戦を戦うことが発表された。UFCに転じた理由、そしてホルム戦とこれからに関して、ケイラ・ハリソンに尋ねた。


――UFC300という歴史に残る舞台で、オクタゴンデビューを果たすケイラです。今、どのような気持ちですか。

「凄く楽しみだし、この機会を得られたことに感謝しているわ。新しい舞台で、新しい階級のファイトを伝説になるようなショーで戦う。大きなリスクを伴っているけど、見返りの大きな試合はワクワクするわ」

──ケイラがUFCと契約したと知った時、凄く驚きました。PFLがBellatorを買収したことで、女子フェザー級のシーズンが楽しみだったので。いつ頃から、UFCで戦うことを考えていたのでしょうか。

「いつ頃からということでいえば、ずっと前からよ。MMAを始めた時からゴールはUFCチャンピオンだった。それでもPFLを離れることは、簡単な決断じゃなかったわ。PFLがスタートした時から、共に歩んできたわけだし。でもUFCこそがMMA界におけるオリンピックなの。

きっと、今回のコントラクトが私のキャリアにとって恐らくは最後の契約になるはず。70歳になった時、自分の人生を後悔したくなかった。『あの時、チャレンジしていれば』って。後々「あの時、なぜトライしなかったの?」と自分を責めたくなかったから、UFCに挑戦することを決めたの」

──素晴らしいですね。本当に素晴らしい。ケイラは既に五輪で2階級を制し、PFLでは100万ドルを2度も手にしている。ダブル・ゴールドにダブル・ミリオンなわけですよ。

「アハハハハ。ダブル・ミリオン(笑)」

──それなのにベストファイターになることを渇望しているのですね。

「そうね、それが私なんだと思う。とにかく好きなことに邁進し続けたい。MMAはただの仕事じゃないから。凄く大変よ。多くを犠牲にして取り組む必要がある。自分で背中を押して、成長する必要がある。それがファイターとして、人としての成長に繋がるわけで。常に自分を次の段階、ニューレベルに引き上げたいの。それこそが、私の人生を完成させるピースになるの。毎朝、目を覚まして──その日をベストバージョンの自分でいたい。誠実さ、尊敬心、献身、規律──全てをひっくるめて、自分を成長させる。そこに安らぎが存在しているから」

──深いです。そんなケイラですが、実はフェザー級に落とすということで減量がハードでインタビューがキャンセルされることもあると思っていました。そもそも柔道時代は78キロで戦っていて、8年後に65キロで戦う……。いや、常識では考えられないだろうと。

「柔道時代は、ピザやクッキーも食べ放題だったわ(笑)。真剣にダイエットにはとりくんでいなくて、食べたいモノを何でも食べていたの。今は違う。栄養士、ダイエットの専門家とチームを創って減量に取り組んでいる。チームだけでなく、UFCもサポートしてくれる。無理なく体重を落とせているから、ボディもメンタルもコンディションは最高で。気持ちもデキているし、いつでも戦えるわ」

──しかし、ピザやクッキーを好きなように食べていたとは。この事実をケイラに敗れた柔道時代のライバルが知ると……。

「アハハハ。まだ若かったのよ。16歳から一人で生活してきて、料理もできなかった。回りには常にダイエットコーク、ピザ、ハンバーガー、フレンチフライがあったから(笑)」

──ところで2017年の秋、MMAデビュー前の日本でインタビューさせていただいた時に「ロンダのことを聞かれなかったのは初めて」とケイラは言っていました。

「そうそう。あのときは誰もが私にロンダのことを尋ねてきて、少しフラストレーションがたまっていて(笑)。でも、あなただけがロンゴと比較するようなことを聞いてこなかったの」

──あの言葉は凄く印象に残っていて。ただし今回、UFCがケイラに用意した相手はホーリー・ホルムです。どうしてもホルム✖ロンダを思い出せるマッチアップではないかと。

「皆がロンダとホーリーの試合を連想するのは、もう仕方のないことだと思う。ロンダ=柔道、ケイラ=柔道というイメージは絶対で。でも私はロンダとは違う種類のファイターで、人間も違う。正反対よ。だから、土曜日の夜は試合結果も違ってくるわ」

──女子MMAもロンダが活躍したころと、今では相当に違っています。払い腰から腕十字が取れると、もうハイライトリールの極みです。

「別モノね。私は柔道でなく、MMAを戦う。ウェルラウンディッド・ファイターで、ビギナーじゃない。17試合を戦ってきたわ。ドミネイトするのが一番だけど、皆が楽しめる試合をしたい。そういう意味ではPFLでは禁じられていたエルボーを使えるのが、凄く楽しみで」

──いやぁケイラにエルボーがあれば、まさに鬼に金棒です。

「たくさんの人を驚らかせることができるはず。絶対に(笑)」

──とはいえホーリー・ホルムはあれだけのストライカーですが、MMAで結果を残せたのはその距離の取り方にあると思います。彼女の印象を教えてください。

「とにかくホーリーのことは凄く尊敬していて。素晴しく高いファイトIQの持ち主で。素晴しいフットワークから、最高の打撃を繰り出すことができる。グラップリングも常に成長している。あんな風に瞬く間に成功すると、その場に踏み止まってしまうアスリートが多い中で、彼女は常に成長してきた。変化を厭わない強い気持ちで、強くなり続けている。そこが一番尊敬できる点ね。

彼女のフットワークは女子バンタム級でも最高。そこに立ち向かうことが、私にとって最大にタフな挑戦になるはず。あのフットワークが、ホーリーの最高の武器であることは間違いないわ」

──対してケイラのアドバンテージは?

「それは……凄くたくさんある(笑)。自分ではそう思っているわ。MMAを始めた時、知識も経験も凄く僅かだった。柔道の力で限界を突破して、勝利を手にすることができていたけど今の私はより強く、より大きく、より速くて経験豊かなファイターになった。この1年でさらに成長できたという感覚もあるから、全ての動きに注目してほしいわ」

──会場の雰囲気はPFLとUFCでは違うかと。あの盛り上がり方はUFC独自なモノで。

「それこそ、凄く楽しみにしているポイントよ。何度もUFCの会場を訪れたけど、あれはもうマジックね。凄くオリンピックや日本での柔道世界選手権に似ているわ。2010年、私が初めて世界選手権で優勝したのは東京だった。あの時も会場(国立代々木競技場)の雰囲気は特別だったわ。あんな空気の中で、最高の自分でいる。毎晩、頭のなかでイメージしているの。自分があの場に立つことを」

──UFCでの第一歩。これからのケイラ・ハリソン、特別な存在の雄姿を追うのが楽しみでならないです。

「ありがとう。そう、私はスペシャル・ファイター。今回の試合は新たな章に向かう、第一歩。私はすぐにUFC世界バンタム級チャンピオンになるから」

──では最後に日本のMMAファンに一言お願いします。

「日本、柔道。柔道は日本の皆のマーシャルアーツで、私の初恋だった。今はMMAを心から愛している。皆、応援ありがとう。UFC300で皆に私の試合を見てもらえることが凄く嬉しいわ。アリガトゴザイマシタ」

■視聴方法(予定)
4月14日(日・日本時間)
午前7時分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前6時30分~U-NEXT

■UFC300対戦カード

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ポアタン・フェレイラ(ブラジル)
[挑戦者] ジャマール・ヒル(米国)

<UFC世界女子ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者]ジャン・ウェイリ(中国)
[挑戦者] イェン・シャオナン(中国)

<BMFタイトルマッチ・ライト級/5分5R>
ジャスティン・ゲイジー(米国)
マックス・ホロウェイ(米国)

<ライト級/5分3R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
アルマン・ツァルキャン(アルメニア)

<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
コディ・ブランデージ(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
イリー・プロハースカ(チェコ)
アレクサンドル・ラキッチ(オーストリア)

<フェザー級/5分3R>
カルヴィン・ケイター(米国)
アルジャメイン・ステーリング(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
ホーリー・ホルム(米国)
ケイラ・ハリソン(米国)

<フェザー級/5分3R>
ソディック・ユースウ(米国)
ジエゴ・ロピス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ジェイリン・ターナー(米国)
ヘナト・モイカノ(ブラジル)

<女子ストロー級/5分3R>
ジェシカ・アンドラーデ(ブラジル)
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ボビー・グリーン(米国)
ジム・ミラー(米国)

<バンタム級/5分3R>
デイヴィソン・フィゲイレド(ブラジル)
コディ・ガーブラント(米国)

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45 AB MMA MMAPLANET o UFC UFC300 アルジャメイン・ステーリング アルマン・ツァルキャン アレックス・ポアタン イェン・シャオナン イリー・プロハースカ カルヴィン・ケイター ケイラ・ハリソン シャーウス・オリヴェイラ ショーン・オマリー ジェイリン・ターナー ジェシカ・アンドラーデ ジエゴ・ロピス ジム・ミラー ジャスティン・ゲイジー ジャマール・ヒル ジャン・ウェイリ デイヴィソン・フィゲイレド ヘナト・モイカノ ホーリー・ホルム ボクシング ボビー・グリーン ボー・ニコル マックス・ホロウェイ マリナ・ホドリゲス 食事

【UFC300】フェザー級転向、前バンタム級王者アルジャメイン「全てやりきったから新しいゴールを」

【写真】300回のスーパーイベントは現地時間の月曜日から水曜日までメディアデーが設けられている (C)MMAPLANET

13日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催されるUFC 300「Pereira vs Hill」は、実に新旧12人のUFC世界王者が出場するスーパー・メガ・アニバーサリー・ショーだ。
Text by Manabu Takashima

プレリミ出場となった6人の元世界王者に前UFC世界バンタム級王者アルジャメイン・ステーリングが含まれている。昨年8月にショーン・オマリーに敗れて以来の再起戦は、フェザー級二階級をカルヴィン・ケイターと戦うアルジャメインに、この間に出場したグラップリング戦、そして当たらな階級で戦う胸の内を尋ねた。


――UFCでは初めて、実に12年ぶりにフェザー級で戦うアルジョです。今の心境を教えてください。

「良い感じだよ。階級を上げいるから、これまでとは食事も変わり違った体験をしている。凄く状態も良くて、フェザー級でも自信をもって戦えるよ。体の強度も全く落ちていないからね」

──UFC300という記念すべきショーで戦うことに関して、どのような気持ちですか。

「これらのカードに自分の名前が入っていることに、ワクワクするね。現役のチャンピオンと元チャンピオンが揃っている。こんな凄い試合が並んだショーは、これまでになかったはずだ。ファンのためにも良い試合をしたい。ただ勝ちに徹するようなファイトではなくて」

──5年振りにプレリミで戦うことになりますが、そこに何か想うことはありますか。

「全然、気にしていない。早く家に帰ることができるじゃないか(笑)。友人を集めて乾杯して、一杯やるのも早くなる。それが今から楽しみで仕方ないんだ」

──ハハハハ。昨年8月にバンタム級のベルトを失って以来、この8カ月でグラップリングマッチで3度戦いました。組み技の試合に出た目的は何だったのでしょうか。

「試合に出ていたかったんだ。グラップリングも好きだし、自分より大きな相手と手合わせができる。3試合中、2試合は大きな相手と戦うことができた。試合にでることで、実戦感覚を失いたくなかった。それがグラップリングを戦った一番の理由かな。顔を殴られる心配はないし、良い経験になっている。

グラップリングといえども実戦を戦うことで、体が錆びつかないし、技もしっかりとシェイプできる。それにプロの試合だ、ちゃんと稼げたからね(笑)。例え組み技でも、フリーで戦おうとは思わない。色々と試せたし、モチベーションを保つことができた。そんなことを全て含めて、チャレンジしたってことだよ」

──なるほどです。ところでファイトウィークになっても、やはりバンタム級時代と違って肌に張りがあって元気そうです。

「とにかくメンタル面で違いがある。凄く良い感じだ。肉体的にもベターだ。何よりエナジー・レベルは明らかにバンタム級時代より高い。もう2019年には、あと数試合戦ったら階級を上げようとは思っていたんだ。それがバンタム級でタイトルコンテンダーになったから、135ポンドでの戦いを続けていた。ワールドベストにもなれた。結果的にバンタム級世界王者として、試合に勝つたびにもう一度バンタム級で戦うということを繰り返していたんだ。

でも前回は、試合をすることを凄く急いでいた。今回は時間をかけて調整してきたし、全てがポジティブに動いている。自分に誰よりも厳しい減量を課すことで、自らの可能性を高めてきた。それがバンタム級で戦うということだったんだ。脂肪が少なく、ほぼ筋肉のボディなのにギリギリの減量を強いてきた。今回からフェザー級で戦うことで、自分の体の可能性をさらに探りたい」

──アルジョだと、フェザー級でも全く見劣ることはないかと思います。ただし、やはり対戦相手はバンタム級時代と比較すると大きくなるかと。

「カルヴィンに関しては、身長も変わらない。そして、ショーン・オマリーは4インチ(※約10センチ)も背が高かった。細かったけどね。それに練習で長身の選手とやってきたし、相手が大きくなっても構わない」

──では体格面でなく、技術面でケイターのことをどのように思っていますか。

「ボクシングの基礎がある。フットワークも良いし、ジャブも良い。右クロスが特に良いね。ただ、いくら威力のあるクロスを持っていても、その威力が発揮できるような攻防にはならない。そんな場所に留まることがない。すぐに移動するからね。

それでも自分の力を試すファイトになるだろう。今回は過去2試合と比較しても、しっかりと調整できた。過去最高の体調だといえる。だから、ファンの皆に喜んでもらえるよう戦界、その腕でこの手が挙げてもらうファイトをするよ。それからフェザー級タイトルに向けて、動き始める。

正直なことをいえば、現時点でもう自分がやりたいことは全てやってきた。やり切った。もうゴールに辿り着いている。だからこそ2024年は新しいゴールを目指し、新しい挑戦を始めるんだ。今回の試合で、他のフェザー級のタフ・ファイター達にアルジャメイン・ステーリングの存在を認識させるつもりだ」

──ところで、今ではずっとラスベガスでキャンプをしているのですか。

「そうだね。NYに戻る理由がない。最高のトレーニング・パートナーに囲まれていて、より整備された環境で練習ができているからね。NYよりもラスベガスの方が、必要なピースが簡単に手に入るんだ。可能な限り、最高の練習がしたいからベガスでやっている」

──アルジョ、今日はインタビューを受けていただきありがとうございました。最後に日本のファンにメッセージをお願いできますか。日本ファンは井上姉弟のチームメイトだったアルジョのことを少し身近に感じていると思います。

「そうなんだ。ありがとう。そして、いつも日本のファンのサポートに感謝している。そんな皆に伝えたいことは、大変な時を迎えても顔を上げて前に進んで欲しいということ。どんな困難にぶちあたってもダイジョウブ、ダイジョウブ(※日本語で)」

■視聴方法(予定)
4月14日(日・日本時間)
午前7時分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前6時30分~U-NEXT

■UFC300対戦カード

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ポアタン・フェレイラ(ブラジル)
[挑戦者] ジャマール・ヒル(米国)

<UFC世界女子ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者]ジャン・ウェイリ(中国)
[挑戦者] イェン・シャオナン(中国)

<BMFタイトルマッチ・ライト級/5分5R>
ジャスティン・ゲイジー(米国)
マックス・ホロウェイ(米国)

<ライト級/5分3R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
アルマン・ツァルキャン(アルメニア)

<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
コディ・ブランデージ(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
イリー・プロハースカ(チェコ)
アレクサンドル・ラキッチ(オーストリア)

<フェザー級/5分3R>
カルヴィン・ケイター(米国)
アルジャメイン・ステーリング(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
ホーリー・ホルム(米国)
ケイラ・ハリソン(米国)

<フェザー級/5分3R>
ソディック・ユースウ(米国)
ジエゴ・ロピス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ジェイリン・ターナー(米国)
ヘナト・モイカノ(ブラジル)

<女子ストロー級/5分3R>
ジェシカ・アンドラーデ(ブラジル)
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ボビー・グリーン(米国)
ジム・ミラー(米国)

<バンタム級/5分3R>
デイヴィソン・フィゲイレド(ブラジル)
コディ・ガーブラント(米国)

The post 【UFC300】フェザー級転向、前バンタム級王者アルジャメイン「全てやりきったから新しいゴールを」 first appeared on MMAPLANET.