【写真】淡々と自分を客観的に見て、話すことができる上久保。試合もそのように動くことができれば、もう勝利は間違いない (C)MMAPLANET
27日(日・現地時間)、シンガポールのインドアスタジアムで開催されるRoad to UFC 2023Ep06のバンタム級準決勝でシャオ・ロンと対戦する上久保周哉。
Text by Manabu Takashima
1回戦で野瀬翔平を破ったシャオ・ロンと対戦を前に、やはり上久保らしく「勝つことが一番大切」という姿勢を貫く。その一方で、肉体の疲労と感情は一致しないという非常に興味深い事実を話した。
――4日後に準決勝が迫ってきました(※取材は23日に行われた)。ここまでどのように積んで、また整えることができましたか。
「調子は前回よりは良いような気はします」
――つまり前回は体調面で不安視される部分があったということでしょうか。
「まぁ、多少はケガをしているというのもあったので。できない練習もあったし、頻繁に治療をしていないと動くにも動けないということは実はありました。そこに比べると、しっかりと練習はできていて不安もない状態です。練習はやれるだけやったかと思います」
――対戦相手のシャオ・ロンは初戦で野瀬翔平選手にスプリット判定勝ち。ヒールやギロチンで攻めた野瀬選手ですが、サブミッションのキャッチポイントが無いに等しい従来のUFCの判定基準であれば、トップを取っていたシャオ・ロンの勝ちも十分にあるという接戦だったかと思います。
「どうしても日本人だし、野瀬選手を贔屓目に見てしまうことはありますけど、あの日のRoad to UFCはトップキープ、ポジションを優先して見ていた気はします。野瀬選手の仕掛けと、シャオ・ロンのポジションのどっちを取るかとなるとポジションかな――みたいな。ギリギリといえばギリギリの試合ですけど、野瀬選手がトップを取ってサブミッションを仕掛けられていれば、文句なしに野瀬選手の勝ちだと思っていたはずです。トップを取っているのは野瀬選手だから、判定に文句言うなよって(笑)」
――ではシャオ・ロンのトップの取り方には、どのような印象を持っていますか。
「スクランブルを創って、何だかんだと上を取る。野瀬選手のサブミッションの後に抑えたので、パスガードをしているように足を抜いて良い形で抑えていました」
――上久保選手は引き込んで関節技を仕掛ける印象は、あまりありません。下になったとしても、レッスルアップやリバーサル狙いでないかと。
「まぁ、そうですよね。自分は下から攻めると勝てていると感じることができないから、引き込むことはないと思います。やっぱり逃げられる可能性が少しでもあるなら、あまりやりたくないです。行かないと取れないですが、優先順位として自分のなかではポジションを捨ててまで取りに行くサブミッションは高くない。あくまでも削り続けて、逃げられない状態を創っておいてから、フィニッシュにいきたいです」
――仮にMMAにキャッチPが採用されるなら、しっかりとポジションを取ったところから仕掛けて、逃げられても優位なポジションにいること有りきであってほしいです。
「ギロチンや足関節は、見た目より極まっていないこともありますし、異様に耐性のある選手もいるので。そういう選手に同じ態勢でかけ続けても、掛け逃げという気もします」
――では、上を取る寝技を見せていたシャオ・ロンの動きで気をつけないといけないのはどこでしょうか。
「なんやかんや上を取ろうと、動いてくるんじゃないかなというのと。組み際を狙ってくるだろうし、組み際で崩した後に攻め込まれるようなことがあれば撤退しますし、攻めることができそうならシャオ・ロンはトップを取りに来るんじゃないかと思います」
――そうなれば上久保選手の庭での戦いになることが予想されます。
「まぁ、そのつもりではいますけど――でも向こうも前回対戦したチルイイースー・バールガンと同じチームで、しっかりと対策を立ててくるんだったら、深追いはしてこないんじゃないかと」
――組みが得意の選手が、組み技に付き合わないファイトをした。ただし、付き合わないで戦うことを全うできずに上久保選手が勝利しました。
「なので、シャオ・ロンは守り切れないから、守れている時に組みでも攻めてくるんじゃいかなと。それが自分の予想です」
――打撃は気にならないですか。
「右は強いので、アレを貰うわけにはいかないです」
――組み立ての失敗で、ヒザ蹴りを被弾してフラッシュダウンを喫した。あそこから何か生かせるように練習はしてきましたか。
「そうッスね。グラップリングをやっているときも、テイクダウンには入れてもヒザとかヒジを相手は使うことができるんだというのは、気にするようにはなりました。グラップリングの練習ではヒザはなくても、そこを気にするように」
――それでも上久保周哉、決勝進出でしょうという強い期待があります。
「皆がそう思ってくれるのはありがたいですけど、僕はスプリットでも勝てれば良い。勝つことが大事で。圧倒しようとかっていう欲はないです。際、際の勝負をモノにして。向こうも競り合いに乗ってくるなら、そこは絶対に譲れない」
――そういう点でいえば、そのしんどい勝負をギリギリでもモノにするという選択ができるRoad to UFCは、コンテンダーシリーズよりも上久保選手に合っているかもしれないですね。
「僕の戦い方だと、勝っても取ってもらえないかもしれないですよね(笑)。まぁ、勝ちに行く姿勢は持っているし、終わらせる気持ちで戦っています。でも、防御もせずに倒しにいけという風だと……そういうことはしたくない。そんな練習はしてきていないし。そういうファイトは練習しなくてもできるので。このスタイルを続けてきたから、前回の試合も勝ち切れたとは思っています。長く戦い続けるには、投げやりとは言わないですけど、一か八かの打ち合いにならないことは大切です」
――しかも、本人は一か八かでも相手にすれば自分の庭ということもありますし。
「そうすると、勝ち目はない。勝てるところで勝負し続けることが大切だと思っています。前回もミスはあったけど、疲れていて相手が耐えてこなかった一面があるので。自分が思い切りのめり込んだことで崩れてしまい、抑え込めなかったことがあって。ああいう細かいミスはしたくないです」
――ギリギリの勝負をしていて相手が引けてきたら俄然、前のめりにもなりますよね。
「まぁ勢い余っちゃうというのはありますよね。心は疲れていないけど、体は疲れているということは。テイクダウンした後、自分の体が思ったより崩れていたので、そういうズレはなくしていきたいです。試合の時は感覚が違うというか……」
――それはどういうことでしょうか。
「肉体的な疲労と、自分の感情は一致していない。体は指示通りに動いているけど、痛覚や疲労は感じていない。でも、しっかりと動きは悪くなっている」
――つまりは自覚がないままダメージを受けていて、体をコントロールできなくなることもあるということですか。
「そういうのは結構あります。映像を見返して、動いていないなって。でも自分の気持ちは疲れていなくて、試合後もあと2R戦えるとか思って。でも、ちゃんと疲れている(笑)。同時に集中力とアドレナリンが全てを解決してくれるという気持ちもあります。それでも本当はズレが大きくない方が良い。思った以上に体が疲れて動けていないのに、心がイケイケだったらやっぱりミスも増えます。それは前回の試合で思いました。
自分の状態を把握しきれてなくて、やりたい時に自分のやるべきことができなかったり。スタミナには自信はあるけど、そこは無視しちゃいけないと」
――その辺りの心理面の変化は、傍で見ていても分からないので、また決勝進出を決めたあとで話を訊かせてください。
「そうですね。でも、試合はきつくなかったと言うかもしれないですよ(笑)」
■視聴方法(予定)
8月27日(日・日本時間)
Ep.05午後5時~UFC FIGHT PASS
Ep.06午後7時~UFC FIGHT PASS
午後4時30分~U-NEXT
■Road to UFC2023 Ep06対戦カード
<Road to UFCライト級T準決勝/5分3R>
バーハートゥブールゥ・アトゥボラティ(中国)
原口伸(日本)
<Road to UFCバンタム級準決勝/5分3R>
ダールミス・チャウパスゥイ(中国)
イ・チャンホ(韓国)
<Road to UFCライト級準決勝/5分3R>
ロン・チュウ(中国)
キム・サンウク(韓国)
<Road to UFCバンタム級準決勝/5分3R>
シャオ・ロン(中国)
上久保周哉(日本)
<ライト級/5分3R>
パク・ジェヒョン(韓国)
クイラン・サルキルド(豪州)
■Road to UFC2023 Ep06対戦カード
<Road to UFCフェザー級T準決勝/5分3R>
リー・カイウェン(中国)
神田コウヤ(日本)
<Road to UFCフライ級準決勝/5分3R>
チェ・スングク(韓国)
チーニョーシーユエ(中国)
<Road to UFCフェザー級T準決勝/5分3R>
イー・チャア(中国)
キム・サンウォン(韓国)
<Road to UFCフライ級準決勝/5分3R>
鶴屋怜(日本)
マーク・クリマコ(米国)
<フライ級/5分3R>
ピーター・ダナソー(タイ)
ナムジャルガル・トゥメンデムベレエル(モンゴル)