【写真】このルックスを人生が優位に運ぶように使わない。男前は、そんなことは考えないのだ (C)MMAPLANET
16日(金)、配信に特化して開催されるGLADIATOR CHALLENGER SERIES01「Bang vs Kawana Ⅱ」で、三上ヘンリー大智がアン・ジェヨンと対戦する。
Text by Manabu Takashima
剣道界からは、消えた名選手と呼ばれ。銀幕デビューを果たし、POWNDSTORMやEXFIGHTでは黄色い声援を誰よりも集めていた甘いマスクの持ち主。取材中も彼の姿を視界にとらえた街往く女性が、そのまま目を奪われたように追い続ける。あるいは振り向いたままということが、続いた。それでもヘンリーは、その視線に気づかず──懸命に重心移動について、言葉を続ける。自身の持つルックスには無頓着で、武道精神をもって研ぎ澄まされた感覚でMMAを突き詰めようという姿勢を持つラスト侍に、今回の対戦や剣道との関わり、今後について尋ねた。
──16日にアン・ジェヨンと対戦が決まった三上選手です。このタイミングでGLADIATORの新機軸であるGLADIATOR CHALLENTER SERIESで戦うことを決めたのは?
「最初にやる予定だったイ・イサク選手が、若くて勢いのある5勝0敗の選手で凄くモチベーションが上がりました。この選手を倒すと、MMAファイターとしてもう少し認められるんじゃないかと思って」
──イ・イサクは5月から開始のTUFへの出演が決まり、出場が流れた。主催者もUFCへの道が開いた選手をここに縛ることはできないという判断をしたと聞いています。その結果、アン・ジェヨンと戦うこととなりました。
「あのあと候補として名前を頂いた選手のなかで、一番自分のなかで意味ある試合になると思った選手なのでお願いしたという形です」
──イ・イサクと戦っていたなら、三上選手がこれまで見せていなかったMMAファイターとしての完成度の高さが必要な戦いになったと思います。対して、アン・ジェヨンとはどのような意味のある試合になると考えられたのでしょうか。
「私自身のMMAの創り方のようなモノは変わらないのですが、テーマはちょっと変わったかなというのはあります。ストライカーとしてMMAをやらせてもらって、向うも自分のことをストライカーだと認識してくるでしょうし、変な話──打撃の勝負になるかなと思っています。そこでMMAのなかでのストライキング能力が試される試合という風に位置づけは変わったと思います。そこに向けてチャレンジングな試合、挑戦者として挑もうという気持ちです」
──イ・イサク戦がなくなった時、試合を断ろうと気持ちには?
「若干、『あぁ、マジかぁ』というのはありましたけど、一つひとつ勝たないといけないし。自分のなかではどんな相手とやってもかけがえのない財産になると思うので、試合ができる時にやらせてもらえることが一番喜ばしいことなので」
──ミドル級は国内で対戦相手が少ないですし、試合機会を逃したくないという気持ちも強かったのではないでしょうか。
「それが一番にあります。立ち技でも何でも色々な団体で戦わせてもらう立場でやっていますが、一番優先したいのはMMAの試合なので。これからは韓国人選手だったり、外国人選手と戦うことが多くなると思うので、一つひとつ受けたオファーはケガとかがなければ断らないようにしていきたいです」
──正直、これまでの試合で三上選手はそのポテンシャルを出し切れてない印象があります。デビュー戦はMMAの打撃に戸惑っていた。そして前回のチョン・ホチョル戦は組み主体の試合となりました。
「アハハハハ。まず、チョン・ホチョル戦を細かく分けると、1Rは本当に打撃で行こうと思っていました。ただ、がぶった時に『あれっ? これ寝技の展開でデキるかも』と思って。で、バックを取ろうとしたときに足が引っ掛かって下になってしまったんです。あの時は立つ意識は余りなくて。相手も力を凄く使っていたので、寝技である程度しのいで2R、3Rに賭けようと思っていました。
で2Rは自分のなかでは打撃でいって、相手がダウンをしたら立たせて打撃ではなくて、上を取ってトップで何かをする。ポイントを稼ぎ続ける。そういうゲームをやっていかないと今後、ストライキングが自分と同じぐらいだったり上の選手と戦った場合に話にならない。勝ち負けが懸かった大事な一戦ではあるけど、あそこはトップの状態で勝負に行くべきだと思いました。なので効いたのか、頭を振ってテイクダウンに来たところをがぶって上を取って終わらせました。だから自分のなかでは成長するために凄く良い試合だったと思っています」
──MMAに慣れた三上選手の打撃の威力が見られるかと期待していたので、その選択に驚かされました。ただし、そこを経験できたことは本当に良かったですね。では今、三上選手のMMAの打撃のレベルはどうなのかと考察した時に、12月9日のNOKC OUT UNLIMITEDという全局面打撃ルールというファイトを経験した。あの試合が得られるモノは何だったのでしょうか。
「MMAグローブで殺傷力のある展開のなかで、落ち着いて相手を見て自分の打撃を繰り出す──ストライカーとして、凄く良い経験ができました。ヘッドギアで固めて、ガチガチのスパーリングをするのとはわけが違うじゃないですか? 緊張感もあるし。心の揺れもある。そのなかで冷静に自分を保って戦えたのは、本当に良い経験になりました。だから今後もああいうオファーを頂けるのであれば、積極的に受けていきたいです」
──KNOCK OUT UNLIMITEDルールでの試合は三上選手の成長につながる?
「繋がると思います。打撃をやらないといけない。打撃って組み技とちょっと違う……勝負ごとって何でもそうだと思いますが、階級が重くなればなるほど運の強さが大きくなると思うんですよ。そこで腹を括って、自分の動きを出す。そこは何度も繰り返さないと、自分の自信につながらないと思います」
──やはり一発で勝負が決まると。
「それが重量級にはあります。そこは自分もやられた経験がありますし、すごく怖いと思っているところです」
──アマチュア時代のアンディ・コング戦のことかと思われますが、キャリアの汚点と言っても良い敗北でした。
「ただ、あれはあれで人々を勇気づけられるスパイスになったんじゃないかと思っています。今後頑張って色々な結果を出した時に、あの過去があったと他の人が知れば『俺もここで頑張り続ければ、何か良いことがあるんじゃないか』と思ってもらえるような選手になりたいですし。格闘技の天才で無敗で、強い。まぁ格好良いですけど、それって人に何を与えるのかと考えた時に『あの人は特別』って思われるだろうし。敗北を経験している人の言葉って凄く温かくて、私はそういう人間になりたい。だから色々とチャレンジして、負けても良いし……負けても良いという気持ちでは戦わないです。でも、負けてもチャレンジを続けて人に元気を与えられるファイターになりたいです」
──押忍。UNLIMITEDルールの試合を再び振り返って欲しいのですが、キックボクサーがあの展開になると、寝技でもガムシャラに殴るか、サッカーボールキックを思い切り狙うかと。一方で三上選手は非常に冷静にヒジ、鉄槌を落としてパウンドアウトしました。
「正直に言うと、あの試合の記憶はほとんどないです。それが自分の中の理想で。試合の記憶がない状態が、一番無意識で攻撃が出せるんじゃないかと。『これを出そう』という時点で、脳が余計なことを考えている。どれだけ自分を無意識な状態に持って行けるか。そのための日々の鍛錬だと思うので、そこのしっかりとした鍛錬が出た試合だったかと思います」
──試合全般でそうだったのですか。
「ハイ。スピニングバックフィストを食らったんですが、そこ以外はほとんど覚えていないです」
──ではスイッチしての左ミドルという素晴らしい攻撃も?
「覚えていないですっ!!」
──首相撲からのヒザも?
「覚えていないです」
──無心で本来の動きが出せるということなら、あの一連の攻撃が本来の三上選手の打撃なのですね。そうなると我々も欲張りなので、MMAであの攻撃が見たくなってしまいます。
「私はやっぱりトータルでやっていきたいとは思っていて。色々な道具を持っていて、場面・場面で使い分けることができるのが理想で。ただ下の展開に関していうと、柔術というのは積み重ねだと思うので、ずっとやってきた人とそこで勝負しようとなると凄く限定的になってしまいます。
だから色々な道具は持ちますが、道具を使う取捨選択が非常に大事になってきます。年齢的に考えても、取捨選択は大事になります。一つ一つを研ぎ澄まさせて、この場面でコレは絶対に勝てる。これは自信がないから、他の展開にしようとか。打倒極の全部で一つ自分のなかで必殺技を創りたいです。必殺の展開を創っていきたいとは思っています」
<この項、続く>
■視聴方法(予定)
2月16日(金)
午後6時30分~ THE 1 TV YouTubeチャンネル
■ Gladiator CS01対戦カード
<Gladiatorフェザー級選手権試合/5分3R>
[王者]パン・ジェヒョク(韓国)
[挑戦者]河名マスト(日本)
<Progressフォークスタイルグラップリング・フェザー級王座決定戦/5分3R>
竹本啓哉(日本)
竹内稔(日本)
<ミドル級/5分3R>
三上ヘンリー大智(日本)
アン・ジェヨン(韓国)
<Progressフォークスタイルグラップリング88キロ契約/5分2R>
グラント・ボクダノフ(日本)
大嶋聡承(日本)
<Gladiatorフライ級王座決定T準々決勝/5分3R>
和田教良(日本)
チェ・ドンフン(韓国)