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Bu et Sports de combat Interview スヴェトラナ・ゴツサイク ピエラ・ロドリゲス ブログ 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】MMAを武術的な観点で見る。ロドリゲス✖ゴツサイク「エネルギーで前進」 

【写真】生き方がとして気合が入っているから、ケージの中でも質量は高い。それをいかに使えるのか、否結果として出ているのかが勝負となる (C)LFA

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑氏とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──LFA015におけるLFA女子ストロー級選手権試合=ピエラ・ロドリゲス✖ストヴェトラ・ゴツサイクとは?!


──ベネズエラ人のロドリゲス、ウクライナ人のゴツサイクがそれぞれ米国のジムに所属している女子選手が、UFCやコンテンダーシリーズの登竜門であるLFA王座を賭けて戦いました。

「基本姿勢として両選手とも素晴らしいです。試合からも気持ちが伝わってきました。気迫、体力、意志力は最後まで見えました。ただし、戦略が見えないです。パンチを打って終わってしまう、殴り合って終わる。組んで倒す、立たされて立つ。そこで終わってしまって、試合全体でどこを目指しているのかが見えなかったです。

特にゴツサイクは引き込んで腕十字を執拗に狙っていたのですが、あれを防がれた時のプランは普通はどういうものなのでしょうか」

──ガードからの腕十字は防がれると担がれてパス、あるいは殴られる。だから外されるとスクランブルに持ち込むことを考えるべきではないかと思います。ただし、ゴツサイクはあの形で7つの一本勝ちとかしている選手なので、本当に極めてやろうとしていたと思います。というのも、過去の試合を見るとロドリゲスの組みはなかなかのザルだったんです。

「なるほど、そういうことですか。今回はテイクダウンディフェンスもしているし、成長していたのですね。質量はロドリゲスが高かったです。ガツサイクはパンチ力はあるのに、質量が低い。せっかくある質量をみすみす垂れ流して無駄にしてしまっています」

──それはどういうことでしょうか。

「動くからです。基本は動かないこと。以前に、クリス・グティエレスとアンドレ・イーウェルの試合で、定置で養ったエネルギーと距離を使ってエネルギーは伝える違いを述べさせてもらいましたが、動くとエネルギーを運べなくなることが往々にあります。それでも、前に思い切り踏み込んでパンチを打つ。それならまだ運べるのですが、ゴツサイクはそうでない。パンチに繋げることなく、無駄に動く。せっかくコップの中にいっぱい入っている水を無駄な動きでどんどんこぼしている。そんな戦い方でした。コップの中の水を質量とすれば、そのままこぼさずにぶつけないといけないのに。

動いてバシャッと水をぶっかけるなら良いのですが、そうでなく無駄に動いてこぼしているだけなので、自分の動きでエネルギーを喪失しています。動いた先に殴る、蹴る、テイクダウンする。そういうビジョンがあれば大丈夫ですが、動くということは難しいです。

頭を左に振って返しの左フックを振って戻ったり、右のクロスを打つために頭を振る。そうすると頭を振っただけで相手がつられる。私も現役時代に頭を左に振って左ボディを打つと、次に頭を動かすだけで相手が反応するので右ハイが入るということをやっていました。それは打撃だけをやっている人間は普通にやっていることかと思いますけど、そこには何かをしようとする『意』があるわけです」

──意拳の「意」ですね。そうやってエネルギーの無駄使いが打撃にあったのと同様に、引き込み十字が極まらないとなると、しっかりとテイクダウンを取れている。なぜ、それをもっと早くからしないのかというのはありました。

「引き込んで十字が得意な選手には見えなかったです。だから、どういう戦略をもって、そこに向けて創り込んできたのか。そこが見えなかったですが、そういう選手は多くなっていますね。そうやって動いていることで、ジャッジがつけるということですよね。ああいう動きが多くなっているということは。

つまり強さ、弱さでいえば競技のなかでは弱い方が工夫して勝つことは十分にある。特にMMAはその傾向が強く競技です。そこがMMAの面白さなのでしょうね」

──その通りだと思います。ただし、この試合は両者から強さが感じられました。

「それは質量はロドリゲスが上ですが、姿勢が悪かったことも関係しているかと思います。スタンドで姿勢が悪いから、間がゴツサイクになってしまう。ここは稽古をすれば修正できます。

ただし、ロドリゲスに驚かされたのは、前進した時に質量がいきなり上がったことです。

前に出て質量が上がるということは、エネルギーが出ている移動です。それがなくて、前に出るとパンチを被弾するだけですから。

あの前への出方は、凄く参考になりましたね。前進してエネルギーを伝えるのではなくて、エネルギーで前進していたので。去年の3月頃から、MMAの試合を武術的に解析させてもらってきましたが、このタイプの選手は初めてでした」

──なるほど、それは非常に興味深いです。特にロドリゲスは打撃に関しても、過去映像で両足が揃い気味で振りまわして不細工でしたので。

「喧嘩に強いタイプなんでしょうね。でも、ロドリゲスはずっと声を出して打っていましたね。これは武術的にはダメです、絶対に✖なんです。迫力も音も凄いけど、声を出すので息継ぎの時に息を吸う必要があります。そうなると、武術的にイチのパンチにならないんです。イ・チになってしまって。それだと動きが止まり、相手にも見えます。だから、あんなにパワフルに見えても、KOにはならない。

卵をといている時、バスケットのドリブルをしている時、呼吸は止まっていないんです。中国武術でいう不空不断、切れ間の無いシームレスということですね。私がMMAにおいて追及しているワンツーやコンビネーションも不空不断なんです。不空不断でないとイチにならない、イチの動きを続けるのが武術空手のコンビネーションです。それをセイサンの型で学びます。

呼吸が一つひとつ止まる動きを日本人がしていると、きっと欧米の人間には勝てないです。それは逆説的な見方で欧米人は呼吸が止まった状態で技が出せる。ロドリゲスもそうです。でも、アレを日本人が真似をしてしまうと打ち合いになって負けてしまいますね。

私が知る限り、最速の突きであの声は出ない。だいたい日本人は打つときに声を出す選手はいないですよね。反則にしているところもありますし。つまり呼吸で引っ張ってくるような動作をしているようだと、ロドリゲスのような選手に勝つことは難しいということです。そのためには、打たせない設定が必要になってきます」

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LFA105 other MMA Report スヴェトラナ・ゴツサイク ピエラ・ロドリゲス ブログ

【LFA105】知力、体力の限りを尽くした一戦でロドリゲスが新ストロー級王者に。敗者ゴツサイクもアッパレ

<LFA女子ストロー級王座決定戦/5分5R>
ピエラ・ロドリゲス(ベネズエラ)
Def.5R1分16秒by TKO
スヴェトラナ・ゴツサイク(ウクライナ)

左右に回りながら左ジャブを伸ばすゴツサイク。ワイドスタンスでパンチを振るうロドリゲスは、やや待ちの姿勢か。そのロドリゲスがワンツーで前に出ると、ゴツサイクも左のカウンターを狙う。スタンド戦が2分半続き、左ミドルを蹴られたゴツサイクが引き込み十字を仕掛ける。ロドリゲスは察知して腕を抜き、ゴツサイクはダブルレッグから引き込む。寝技に付き合ないロドリゲスはローを蹴り、ゴツサイクの立ち上がり際にワンツーを放って組みつく。

ゴツサイクはジャンピングガ―ドも、ケージに押し込まれ寝技に持ち込めないままロドリゲスが間合を取り直した。ロドリゲスはワンツー、そして左ハイ、さらにボディから顔面にパンチを纏める。ここでもゴツサイクは引き込み足関節を狙うが、ロドリゲスは付き合わず立ち上がったところで再びパンチから右ローを蹴り込んだ。

2R、右の相打ちからロドリゲスが笑顔を浮かべ、距離を詰める。ゴツサイクもワンツーで前に出るが、ロドリゲスがバックステップでかわす。蹴り足を掴みロドリゲスを倒したゴツサイクは、立ち上がり際に腕を取って引き込み十字を狙うが、すっぽ抜ける。スタンドに戻ったゴツサイクは、左のカウンターを当てる。追いかけるとパンチが届かないゴツサイクは、迎え撃って相打ちの覚悟の方がパンチを届かせることができるか。

ゴツサイクのパンチは空振りでも圧が凄まじく、ロドリゲスも集中力を高めて向き合う必要がある。間合いの測り合いから、ステップインしてパンチを纏めるという展開のなかで、ロドリゲスがゴツサイクの連打にヒザを合わせようとする。左を当てたロドリゲスは、ゴツサイクのシングルを切りラウンド終了となった。

3R、前に出て右を伸ばすゴツサイク。さらにジャブ、ボディストレートから左右のフックも、ロドリゲスが右フックを当てて下がらない。ステップバックをしてパンチをかわすが、打ち合いでは下がらないロドリゲスは、ゴツサイクのロングフックにもヒザを狙う。ゴツサイクが左ジャブ、ロドリゲスのステップインに左フックを合わせる。ロドリゲスがワンツー、そして左フック。ゴツサイクなウェービングからパンチでなく左ローを蹴る。

ゴツサイクのワンツーには左フックでカウンターを当て、ジャブをダブルで当てる。ならばとゴツサイクがカウンターを誘っておいて、そこで自らはフックを打っていく。激しいと同時に、頭を使った精神戦が続く、ゴツサイクがテイクダウン狙いから引き込んで、ついに腕十字へ。ヒジが抜けていたために安全に対処したロドリゲスが、ガードを取るゴツサイクがローを蹴り時間となった。

4R、ゴツサイクの左フックにロドリゲスが右をカウンターで入れる。右目がふさがってきたゴツサイクは左ボディフックをステップインから決める。ここは距離が合わず、腹を殴られたロドリゲスの脳裏に腹への攻撃をどう残るか。と、ロドリゲスが逆に右ボディフックを打ち込む。

足を止めてのワンツーからスリー、ボディへのコンビを見せたゴツサイク。続くスーパーマンパンチを見切り、右ローを決めたロドリゲスはショートのコンビにダブルレッグを合わされ、尻もちつく。ケージを使った立ち上がったロドリゲスは、ヒザをボディにいれ離れ際に追い打ちを掛ける。一瞬、気を抜いた感もあったゴツサイクは即組みつきなおし、ボディロックテイクダウンを決め、王座決定戦は最終回へ。

5R、右目が塞がったゴツサイクと、鼻血の跡が残っているロドリゲス。と、ゴツサイクがダブルレッグを決める。立ち上がったドロリゲスは、続く投げを耐えるとゴツサイクが引き込む。すかさずマウントを取ったロドリゲスは、背中を見せたゴツサイクにノンストップでパンチを続け、一気に勝負を決めた。

UFC級の知力、死力を尽くした激闘を制したラ・フィエラ・ロドリゲスが、ベルトを巻いてベネズエラ国旗を掲げる。新チャンピオンは「アメージング。ベルトを巻いて、ここにいることが本当に嬉しい。自分のパフォーマンスを誇りに思う。私はデンジャラスだけど、毎日学ぶことは本当に多かったわ。プレッシャーを与えることが私の戦い方。と同時にスマートにカウンターを狙って戦うの」と話し、ナンバーワンコンテンダーはチームメイトのタバタ・ヒッチだけど──と問われると「友達とは戦いたくない。でも、これが仕事。私は決められた試合を戦うだけ」とハッキリ回答した。


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