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【DEEP114】暫定メガトン王座防衛戦=水野竜也戦へ、酒井リョウ「僕、水野選手のことは大っ嫌いなので」

【写真】それぞれのMMA感があるなかで、水野と共に自分の信じたMMAを戦う(C)SHOJIRO KAMEIKE

7月2日(日)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP114で、暫定メガトン級王者の酒井リョウが水野竜也を挑戦者に迎え、ベルトの初防衛戦を行う。
Text by Shojiro Kameike

両者の初対戦は2019年10月、グラウンド状態にある水野の頭部に酒井のヒザ蹴りが入り、結果は水野の反則勝ちとなった。しかし水野にインターバルが与えられている中で、酒井が「試合を続けよう」とばかりに両手を挙げて観客を煽る姿が問題になり、酒井の悪びれない発言も炎上の要因になったという。

果たして、あの時に何が起こっていたのか。酒井の言い分を記すことで、あとは読者の判断に委ねたい。一つ言えるのは、彼が格闘技を大好きで、永遠のMMAファンとしてベルトを巻いているということだ。


――昨年11月にDEEP暫定メガトン級王座を獲得し、今回が初防衛戦となります。ベルトを巻いてから何か変化はありましたか。

「チャンピオンになってから、いろんな選手に声をかけてもらうようになりました。ファンだけじゃなく、プロのファイターの人たちに認められたことが何よりも嬉しいです」

――プロデビューから10年を経ての戴冠でした。ここまでの10年は短く感じますか。それとも長かったでしょうか。

「最初はあっという間だなぁと思っていましたけど、改めて考えると長いというより濃かったですね。勝ったり負けたりのキャリアで、『この試合で負けたら辞めよう』と思ったこともありました。でも勝つことでMMAを続けられて、濃いキャリアになっています」

――赤沢戦は、わずか33秒のKO劇でした。最初から短期決戦を狙っていたのですか。

「いえ、最近は5分3R戦うつもりで試合をしています。それが前回は、たまたま1Rで決着したというだけですね。最初は1Rに削られたあと、2Rから巻き返そうと考えていました。相手が疲れたところで勝負するために、レフェリーは自分が上を取られて、殴られていても止めないでくれ――と」

――開始早々、酒井選手がスイッチを繰り返しながら赤沢選手の様子を見て、距離が近くなったところで左フックを当ててKOしています。意外にも――といったら失礼かもしれませんが、器用なタイプという印象を受けました。

「それね、よく言われるんです。『意外と器用なタイプだよね』って(笑)。僕としては、赤沢選手が近づいてこないなと思っていました。10年前、僕にKOされた記憶が赤沢選手の中には鮮明に残っていたかもしれないです。でも赤沢選手のセコンドが『見すぎるな! 行け!』と言ったのが聞こえて。そこで赤沢選手が近づいてきたところに左を合わせました」

――相手のセコンドの声がハッキリ聞こえるほど、冷静に戦うことができていたのですか。

「とにかく練習がキツかったんですよ。『ここまでやって負けたら、それでいいや』と吹っ切れていました」

――なるほど。ではベルトを巻くまでのキャリアについてお聞きしたいのですが、MMAを始める前は何をされていたのでしょうか。

「バックボーンは何もないです(笑)。まず小学4年から中学3年までサッカーで、ゴールキーパーをやっていました。自分で言うのも何なんですけど、結構上手くて中3の時はサッカー部のキャプテンをやっていましたね。地元の栃木県では県の選抜になるぐらいで。

でも高校はアイスホッケー部に入りました。進学した高校はサッカー部よりもアイスホッケー部のほうが厳しそうだったので、あえて厳しそうな部を選んだんです。だけど喧嘩みたいなことをしてしまって、1年も経たずに高校を自主退学することになりました」

――喧嘩ということは、ヤンチャな時期があったと。

「これも自分で言うようなことじゃないけど、地元では不良というか番長みたいな存在でした。でも身体が大きくて、ただ腕っぷしが強い真面目な学生という感じですよ。しかも栃木の地元っていう、狭い地域の話でしかないです」

――高校を自主退学してからは……。

「そこから定時制と通信制の高校に行きました。高校卒業は数カ月、航空自衛隊に入っていて。その自衛隊で、偉い方に『なぜ大学に行かなかったんだ?』と聞かれたんですよ。それで親と相談して、大学に行かせてもらいました」

――大学を卒業するまで格闘技経験はゼロだったのですか。

「高校時代に少しキックボクシングジムに通っていた時期がありました。魔裟斗さんに勝ちたいと思って。ただ地元で喧嘩に勝っていただけで『オレって魔裟斗に勝てるんじゃね?』と。とにかく勘違いクソ野郎だったんですよ(苦笑)」

――アハハハ、まさに若気の至りですね。

「大学に入ってからパラエストラ松戸に入会しました。とにかく格闘技は大好きだったんです。大学の卒業論文はPRIDEと日本の総合格闘技について書いたぐらいですから」

――卒論がPRIDE!

「その論文を大学の先生に見せたら、『もっと歴史を掘り下げたほうが良いね』と言われて、プロレスの力道山の時代から調べましたよ。とにかく格闘技が好きで、DERAM、戦極は毎回会場に観に行っていました。ただ、プロとしてやっていくつもりはなかったんです。でも大学を卒業して、就職した会社をすぐに辞めるような――社会不適合者で(苦笑)。それをキッカケに大好きな格闘技を、プロとしてやっていこうと決めました」

――パラエストラ松戸に入会してからプロデビューに至るまでの期間が長かったのですね。

「大学に入ると、いろんな誘惑があるじゃないですか。そういう誘惑に負けてしまいました。本格的にMMAをやろうと思ったのも、大学を卒業してからです」

――当時からすでにヘビー級の体だったのでしょうか。

「パラエストラ松戸に入った頃、96~97キロぐらいでしたね。それで102キロぐらいから減量して、赤沢秀典選手との初戦はミドル級でやりました。でも91キロぐらいまで落としたところで一度挫折してしまって、以降はヘビー級で試合をするようになりました。当時ジムの先輩だった鈴木淑徳さんから、『お前はそのままの体重で試合をしたほうが強いよ』と言ってもらえたことも大きかったです。

それで次の試合はシュレック(関根秀樹)さんと対戦しました。負けましたけど、根性があると思ってもらえたみたいで。すぐ次の試合を組んでもらってKO勝ちしたあと、今度は誠悟さんに負けちゃいました。そんな感じで、山あり谷ありのキャリアです」

――PRIDEに憧れた世代からすると、特に日本のヘビー級は規模が縮小していった時期だと思います。その状況はMMAを続けるモチベーションに影響を及ぼさなかったですか。

「全然、影響はなかったです。だって一度、人生で挫折しているじゃないですか。自分は社会不適合者で、一般企業に就職できるわけがない。それで『格闘技をやる!』と腹を括って始めているわけだから、逃げ場所がないんですよ。あと誰かのインタビュー記事で『これから格闘技を始めるなら、まず5年はやってみろ』という言葉があって、僕も5年は腹を括ってやってみようと思いました。何より格闘技が好きっていう気持ちだけは、誰にも負けない。だからブレずに続けることができたんだと思います」

――その後は3連敗も経験するなかで、酒井選手ご自身の中で「MMAでやっていける」という確信を得たのは、いつ頃ですか。

「確信? ないですよ。僕も36歳になって、いつまで続けられるか分からないじゃないですか。年齢や戦績的にもUFCに行けるかといえば、それは諦めています。10年以上前からUFCも好きで。でもジョン・ジョーンズやGSPを見ていると、働きながらこのレベルまで行くのは無理だなと思いました。1日3部練とか、格闘技に集中しないと無理だなって。ただ正直、それだと生活していくのは厳しいからって気持ちを切り替えたところはあります。だから今は1試合1試合、後悔しないように戦いたいと思っているだけですね」

――そのように気持ちを切り替えたのは何年ぐらい前のことですか。

「今レンジャージム赤坂店の店長をやらせてもらっていて、このレンジャージムでアルバイトを始めた2017年ぐらいです」

――2017年といえば、TOP FCで敗れたあとDEEPで3連勝を収めた時期ですね。

「その頃が自分にとってキャリアの分岐点だったと思います。TOP FCに出た頃、奥さんと知り合ったんですよ。奥さんは智野真央といって――今は結婚して酒井真央というんですけど、自転車ロードレースのアスリートでした。MMAに転向して、2戦2勝です。その奥さんの練習を見ていると、自分の取り組み方は甘いってことに気づいたんですよね。TOP FCでチョン・ダウンに負けた頃から体のケアとかも考えるようになって。若い選手がどんどん出て来るなかで、自分が勝つためには取り組み方から変えないといけない。だから奥さんと出会ったことも、自分の中では凄く大きかったです」

――そしてDEEPのベルトを巻き、水野選手との初防衛戦に臨みます。試合に関するお話の前にお聞きしておきたいのが、前戦の反則決着に関して悪びれない発言です。あれが酒井選手の本心なのか、あるいは煽るための発言なのか。

「あぁ、よく聞かれますよ。『煽るために演技しているの?』って。あれは本心です。僕、水野選手のことは大っ嫌いなので」

――本心だったのですか……。

「水野選手が嫌いというか、水野選手の考え方ですね。反則については、やってしまった僕が悪いです。それは間違いなくて。一つ言いたいことがあるとすれば、あれは反則をしたあとに僕が『試合を続けよう』と観客を煽ったという感じになっていますよね。

実は反則決着になるかどうかの前に、僕が観客に煽られてしまったんですよ。会場から『酒井! 酒井!』という声が聞こえてきて、それに僕が乗ってしまったというか。そこだけ切り取られると……。でも反則を冒したのは僕なので、それについては何も言うことはないです」

――では『水野選手の考え方が嫌い』というのは、どういうことでしょうか。

「前回の計量の時、僕が『明日はバンバン打ち合って盛り上げましょう』と言ったんですよ。そうしたら水野選手からは『それはひと昔前の格闘技であって、今は重量級でもスピードとテクニックとパワーを見せたい』みたいな答えで。いやいや、水野選手のほうが僕より先輩で、その時代に戦っていた人じゃないですか。だから自分もそう言ったのにって、試合前日にムカついちゃいました」

<この項、続く

■視聴方法(予定)
7月2日(日)
午後5時50分~DEEP チャンネル-YouTube、U-NEXT、サムライTV

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F1 o ONE RENA UFC UFC Fight Night   ジョン・ジョーンズ セルゲイ・スピヴァク デリック・ルイス

9.2 UFCパリ大会のメインイベントはシリル・ガーン vs. セルゲイ・スピヴァク

パリピ孔明(13)


9月2日、UFCが1年ぶりにパリ大会を開催(2023年06月08日)

 こちらの続報。


 UFCが9月2日にフランス・パリのアコー・アリーナで開催する『UFC on ESPN 51』のメインイベントがシリル・ガーン vs. セルゲイ・スピヴァクのヘビー級マッチになることを発表。

 ガーンは3月の『UFC 285: Jones vs. Gane』で行われたヘビー級王座決定戦でジョン・ジョーンズに1Rギロチンチョークで敗れて以来の試合。現在UFCヘビー級ランキング1位。昨年9月の『UFC Fight Night 209: Gane vs. Tuivasa』に続き2年連続でパリ大会のメインを務めます。

 スピヴァクは2月の『UFC Fight Night 218: Lewis vs. Spivak』でデリック・ルイスに1R肩固めで勝利して以来の試合で3連勝中。現在UFCヘビー級ランキング8位。続きを読む・・・
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o UFC キック ジョン・ジョーンズ

UFC on ABC4:セミファイナル・アンソニー・スミス vs. ジョニー・ウォーカー

ライトヘビー級。スミス5位、ウォーカー7位。

スミスはUFC11勝7敗で、ライトヘビーに上げてからは7勝4敗。負けた相手はジョン・ジョーンズ(タイトル戦)、グローバーテイシェイラ、アレクサンドル・ラキッチ、マゴメド・アンカラエフ。下位ランカーやランク外の相手にはきっちりとフィニッシュして完勝しており、タイトルコンテンダーの門番的存在になっている。UFCデビューから10年になるが、まだ34歳。

ウォーカーはUFCデビューから3連勝・3連続1RKO勝利で一気に注目株となったが、そこから5試合は1勝4敗。内容も悪く、チアゴ・サントス戦では両者極端に手数が少ない展開で判定負け。かつては必要以上にアグレッシブで、ポカもあるが豪快に勝つこともある選手だったのだが、すっかり良さが無くなった。が、ランク外のイオン・クテラバにチョークで一本勝ちすると、前回はグラップラーのポール・クレイグをグラウンドに持ち込ませずパンチを打ち込み続けKO勝ち。しかしその前の負けの印象が悪すぎるので、まだタイトルに絡むレベルにあるという証明は出来ていない。門番のスミスを下せばそのアピールになるが、勝った場合でもさらにランキング1~4位のファイターに勝つ必要があるだろう。31歳。

両者フェイントで牽制。ウォーカーカーフキック。スミス右オーバーハンド。なかなか間合いに入らない両者。右を一発入れるスミス。ウォーカーのパンチがヒットし一瞬ぐらついたスミス。パンチを振って右をヒットさせたスミスだが、ウォーカーカーフキック。またカーフ。ウォーカー飛び膝。不発。またカーフ連打。左ミドル。スミスは右から前蹴り。ウォーカーの前蹴りがローブローに。1分ほど休んだスミス。再開。スピンキックを見せたウォーカー。スミス前に出て行くが、ウォーカーの下がりながらの右フックをテンプルに貰い効いて膝を着いた。しかしそのままシングルレッグ。鉄槌を打ち込んで抵抗するウォーカーだが、スミスしつこくテイクダウンを仕掛けて倒した。ハーフで押さえ込む。残り1分。効かされたパンチの分だけの攻めがないまま押さえ込んでいるスミス。残りわずかでウォーカー立った。ボディロックから逆にテイクダウン。ホーン。

1Rウォーカー。

2R。カーフを蹴るウォーカー。スミス右オーバーハンドを打ち込む。ブロックの上か。またカーフを入れるウォーカー。そこに右オーバーハンドを合わせているスミス。ジャブをヒットさせるスミス。カーフの蹴り合い。このラウンドは両者大きな攻めがない。スミス右オーバーハンド。ブロックの上。ウォーカー、1Rのようにはせめてこない。ジャブを放つがスミスの右をもらった。スミスも出られない。カーフを蹴り合う。残り1分。センチャイキックを見せたウォーカー。両者出られない。見合いが続く。ウォーカー終盤にカーフキック連打。ホーン。

2Rも微差でウォーカーか。

3R。ウォーカーの蹴りをキャッチしてボディにパンチを打ち込んだスミス。見合いが続いてブーイングが飛んだ。スミスちょっと出ていく。右オーバーハンドは肩でブロックしたウォーカー。関節蹴り。トラースキックは空振り。スミス踏み込んで右を一発ヒット。カーフを蹴るウォーカー。効いてる。ウォーカーカーフ連打。出ていけないスミス。関節蹴り。スミスシングルレッグを狙ったが切られた。ケージ際で頭を押さえつけたウォーカー。スミスアンクルピックを狙ったが切られて鉄槌をもらう。引き込んだが付き合わず立たせるウォーカー。またカーフ。右ハイ。スミスもはや出られない。ウォーカーも安全運転で間合いを詰めずに打撃を入れていく。残りわずかでウォーカー飛び膝。最後にパンチを入れたところでタイムアップ。

29-28、30-27×2の3-0でウォーカー勝利。

相変わらず上位が相手になると、ダイナミックな攻めがなくなり、持ち味が消えるウォーカーだが、今回は結果勝ったところが違う。タイトルコンテンダーの門番・スミス相手に完勝。が、タイトル挑戦にはかなり物足りない内容。

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MMA MMAPLANET o TJ・ディラショー UFC UFC288 YouTube   アルジャメイン・ステーリング ショーン・オマリー ジョゼ・アルド ジョン・ジョーンズ チャンネル ドミニク・クルーズ ピョートル・ヤン ヘンリー・セフード マルロン・モラエス

【UFC288】UFC世界バンタム級選手権試合=ステーリング✖セフード展望─01─、プロローグ&前哨舌戦

【写真】トリプルCからクアドラプルCを狙うことを公言したセフードと現王者のアルジャメイン。話術も優れた両者(C)Zuffa/UFC & MMAPLANET

6日(土・現地時間)、ニュージャージー州ニューアークにあるプルデンシャル・センターにてUFC 288「Sterling vs Cejudo」が開催される。
Text by Isamu Horiuchi

クロン・グレイシーが約3年半ぶりに復帰し、シャルル・ジョーデインと戦うなど興味深いカードが揃った今大会だが、最注目はやはりメインイベントのUFCバンタム級タイトルマッチ、王者アルジャメイン・ステーリング✖ヘンリー・セフードだ。


今回3度目の防衛戦を迎えるステーリングだが、もともとこの王座は3年前、当時圧倒的な強さを誇っていたセフードが引退発表と共に返上したものだ。

2008年北京五輪フリースタイルレスリング55キロ級金メダリストのセフードがMMAの頂点に立ったのは、2018年8月のこと。一度は完敗を喫したフライ級絶対王者デミトリウス・ジョンソンに再挑戦し、判定2-1で接戦を制して世界を驚かせたのだ。

続く翌年1月には、あえて階級を落として挑んできたバンタム級王者TJ・ディラショーと王者同士の決戦へ。このスーパーファイトも1R0分32秒KOで制したセフードは、軽量級最強の座を不動のものとした。

その後、禁止薬物EPOの使用が発覚したディラショーがバンタム級王座を返上すると、7月にセフードはマルロン・モラエスとのバンタム王座決定戦に臨む。2Rに打撃で圧をかけ主導権を奪うと、3Rにヒザでダメージを与えるや上を取って強烈な鉄槌を連打してTKO勝利。この勝利を受けてセフードは、「俺はただのチャンプ・チャンプ(二冠王)ではない。我こそはTriple C(トリプルチャンプ=五輪金+UFC二階級制覇)。歴史上最も偉大な格闘家だ!」と勝ち誇った。

続く2020年5月、セフードは元王者ドミニク・クルーズとバンタム級王座の初防衛戦に。序盤から打撃戦で主導権を握り、2Rにカウンターの右ヒザをヒット。さらに追撃を加えてTKOに下した。そして直後の勝利者インタビューにてセフードは、もう全て達成し尽くしたと引退を宣言。世界を獲ったレスラーが打撃でMMAの頂点に君臨するという、恐るべき戦いの才の底を見せぬままベルトを返上し、オクタゴンを去ったのだった。

空位となったバンタム級王座は、7月の決定戦でジョゼ・アルドを下したピョートル・ヤンが獲得。2021年3月にこのヤンに挑んだのがステーリングだが、体重調整の失敗が原因で中盤から失速してしまう。しかし4R、片ヒザをマットに付けたステーリングの顔面にヤンが膝を当ててしまい、ステーリングが試合続行不可能となりヤンは反則失格に。新王者となったステーリングは敗色濃厚の展開で最後は打ちのめされるという──なんとも嬉しくない戴冠となってしまった。

昨年4月にステーリングはヤンと再戦。2、3Rに見事なテイクダウンからバックを奪って完全にコントロールすると、4、5Rはヤンの猛追をかわしきって判定2-1で勝利──王者に相応しい実力を証明しての初防衛だった。

続く10月には、元王者TJ・ディラショーと2度目の防衛戦を戦う。ステーリングは1Rに肩を脱臼して片腕で戦う挑戦者をテイクダウンして一方的に攻め込むと、2Rにマウントパンチを連打して圧勝した。

そんな世界の頂点に君臨する王者ステーリングに、セフードが復帰第一戦でいきなりタイトル挑戦する形となった。

実は両者の対戦の機運は、セフードが昨年4月に復帰を宣言し、USADA(米国アンチドーピング機構)の検査選手リストに再加入した直後から作られていた。この時期にヤンとの2戦目を制してバンタム級王者の座を不動のものとしたステーリングは、ダニエル・コーミエーのYoutubeチャンネルの企画でアリゾナ州にあるセフードの自宅を訪問。コーミエを司会役にして机に向き合った両者は、来るべき対戦について語り合ったのだった。

「引退後、ジョン・ジョーンズやデイヴィドソン・フィゲレード等をコーチすることを通してMMAの見方が断然変わったよ。以前よりはるかに深い理解を得て賢くなった。そして今でも戦う力があると分かっているから戻ってきたんだ」と話すセフードは、現王者を目の前にしてコーミエに「この男が王者となるなんて思っていなかったよ。あまりにも多くの欠点があるからね。俺と戦うことになればそこが露呈するさ。こいつとの試合は俺にはイージーマネーだな!」と言い放つ。

さらにステーリングに向かって「お前は力は持っているよ。特に長い手足は最大の長所だ。でもお前はまだ自分の能力の全てを理解してはいない。そこを理解して、単なるファイターではくコンペティターとして上達すれば、もっと危険な選手になるだろうがね。まあ怒らず聞けって、俺様が褒めてやっているんだから」と言い放つと、さらに「お前は俺をKOする力を持ってはいる。その長い手足を使ってな。特にヒザだ。それがお前が俺を倒す一番の可能性だろうが、俺は賢いからそんなことさせるわけはない。俺はコンペティターとして誰よりも優れているんだ」と上から目線&余裕の表情で現役王者を論評した。

当然ステーリングも言われっぱなしでは終わらない。「俺はいつもそうやって負けると言われてきたけど、試合でそういう奴らを黙らせてきた。それこそ俺の生きがいだ。ファイトじゃなくコンピートする必要があるというのは同意だが、その点でもあんたを上回るさ」と反論をスタートさせると、「俺はレスリングでもあんたと渡り合える。ダブルアンダーフックを取ればあんたの体を浮かせることができるし、たとえあんたが得意のインサイドトリップ(大内刈り)で俺をテイクダウンしたとしても、すぐに三角絞めに捕らえてやるよ。俺はまだ自分の戦い方の半分も見せていない」と言葉を続けた。

こうしてSNS時代ならではの手法を用いて、現王者と元王者は将来の対戦の布石を打ったのだった。そしてステーリングが昨年10月にディラショーを倒して王座防衛に成功した後、両者の試合は正式に決定した。

そして──試合を約1カ月後に控えた3月末、再びコーミエの司会のもと、両者はESPNが企画するZOOM会議で論戦を交わすこととなる。

予定の時間にやや遅れて入室したセフードは、ステーリングが遅刻に不快感を表していると聞き「まあ本物のキングは自分のやりたいように行動するってことだ!  アルジョよ、キングの前にひざまづく準備はできているか? ダニエル、こいつはいつも俺から逃げているんだ。今回も直前で逃げ出すかもしれないから、UFCはこいつのボーイフレンドのマラブ(・デカリシビリ。ステーリングの同門にしてバンタム級トップランカー)を代役に用意しておいた方がいいだろうな!」と傲慢キャラクターを全開に。

さらに「俺が復帰する理由は、フェザー級のベルトを取るためだよ。その前にバンタム級王者であるこいつを倒し、その後ショーン・オマリーも倒してから、(アレックス)ヴォルカノフスキーと戦う。こいつらは俺にとっては単なる踏み台に過ぎないな! お前は(ヤン初戦で)アカデミー賞並の演技でタイトルを獲得しただけだ。次の試合はジャッジの間違いだ。その次のTJなど、俺が32秒で倒した男だ。奴がEPO(禁止薬物)を使ってきたにもかかわらずだ。そんな野郎が片腕だけで戦っていたのに、お前は倒すのに2Rもかかったんだ」と、ステーリングが苦闘の末に掴み取った栄光の軌跡まで侮辱し続ける。

さらに「アルジョよ、次の試合でお前は死ぬのだぁ! WHOO!」とリック・フレアーの物真似まで繰り出して挑発してみせた。

当然王者ステーリングも黙ってはおらず、「そもそもあんたがどうして引退したかを思い知らせてやるよ。おい、今この場で “I quit (私はもう辞めました)”と言ってみろよ。そのニヤついた顔をぶん殴るのが待ち切れないぜ」と言い返したのだった。

もっとも話題は単なる煽り合いだけでは終わらず、両者は具体的な試合展開についても言及している。

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
5月7日(日)
午前7時00分~UFC Fight Pass
午前11時00分~PPV
午前6時30分~U-NEXT

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【RIZIN LANDMARK05】倉本一真 inアリゾナ─01─「ヘンリー・セフードのファイトキャンプが始まった」

【写真】倉本は凄まじい勢いで、色々なモノを吸収しているように感じる(C)SHOJIRO KAMEIKE

29日(土・祝)、東京都渋谷区の代々木第一体育館で開催されるRIZIN LANDMARK05で、倉本一真が太田忍と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

レスリング時代に対戦経験のある両者の激突が発表されたのは、3月3日に行われた記者会見だった。しかし倉本は会見を欠席、そのとき彼は米国アリゾナ州フェニックスのファイト・レディーで、元UFC世界フライ&バンタム級王者のヘンリー・セフードと練習していたのだ。なぜ彼は米国に渡っていたのか。その理由と現地の練習について訊いた。


――現在、米国アリゾナ州のファイト・レディーで練習されているそうですね。

「はい。以前からヘンリー・セフードがいるファイト・レディーで練習したいと思っていたんですよ。もともとヤマニハ選手に負けた(2021年6月、アラン・ヤマニハに判定負け)あとに、マネージャーから『米国で練習してみるのも良いですよ』と言われていて」

――なぜファイト・レディーに興味を持ったのでしょうか。

「やっぱり組みのファイターが、組みを生かしつつ打撃をやって結果を残している。そういうファイターが育っているジムで練習したいと思ったんです。それでファイト・レディー側も受け入れてくれることになったんですけど、当初は去年の末に来るつもりでいたものの、ジムの受け入れ態勢の確認とかもあって。

僕は元谷選手に負けた直後に行きたい気持ちが強くなっていたけど、コーチやヘンリー・セフードのスケジュールとか、そういったことを確認して、ようやく2月15日に日本を発つことが決まりました。ちょうどその頃に次の試合も決まったという流れです」

――2月15日に日本を発ったということは、2カ月ファイト・レディーで練習しているわけですね。

「そうです。4月13日にこちらを出発するので、ちょうど2カ月ですね。もともと『米国で練習するなら3カ月』と言われていました。1カ月でこちらの環境に慣れて、2カ月でさらに練習にも慣れていき、3カ月でもっと良くなっていく。そういう感じで話をしていたんですが、出発日も伸びて、僕の試合が決まったこともあって――それでも丸2カ月はいることができると思って、アリゾナに来ました。ただ、すぐ2カ月経ってしまいましたね。時間が経つのは早いです」

――ファイト・レディーでは、どのような練習を行っているのでしょうか。

「最初の1カ月はヘッドコーチのエリック・アルバラシンさんが、マンツーマンで指導してくれました。ちょうど僕がファイト・レディーに来る頃に、セフードの次の試合(5月6日、アルジャメイン・ステーリングとのUFC世界バンタム級タイトルマッチ)が決まって、ここにセフードのファイトキャンプのメンバーが集まっていたんですね。それで僕もファイトキャンプに参加させてもらい、すごく勉強になっています」

――セフードのファイトキャンプも始まるとは、絶好のタイミングですね。では1日の練習スケジュールを教えてください。

「ジムは朝10時から練習開始で、セフードのファイトキャンプとファイト・レディーの練習は完全に分かれているんですよ。僕はオモニファイトキャンプのほうに参加して、朝10時からの練習は12時から12時30分ぐらいに終わります。そこから各自のトレーニングに入り、また午後6時30分ぐらいからファイトキャンプのメンバーと練習が再開されます。MMAのスパーリングはファイトキャンプというよりジム全体で、火曜日と金曜日に行われていますね。MMAの練習はセフードのお兄さん(アンヘル・セフード)が、レスリング中心のMMAを教えてくれたり。他にも打撃のコーチやグラップリングのコーチが、入れ替わりながら練習を見てくれるという感じです」

――そこにデメトリウス・ジョンソンをはじめ、多くのトップファイターが集まっていたのですよね。

「DJがいたのは何日かだけだったと思うんですけど、すごいですよね。試合前の大事な時期はDJもファイト・レディーに来ているらしいです。他にもデイヴィソン・フィゲイレド、ジャン・ウェイリ、ジョン・ジョーンズが来ていて。パウロ・コスタやブルーノ・シウバはファイト・レディー所属で、他にもUFCファイターやベラトールの選手がたくさん練習しています。でもそのメンバーでジムに常駐しているのはセフードぐらいで、他はファイトキャンプや何かある時に来るという感じです」

――常駐はしていなくても、それだけのファイターが練習に訪れるということは、皆が求める練習環境がファイト・レディーにあるということですね。

「そうだと思います。ヘッドコーチのエリックをはじめ、打撃コーチのエディ・チャーさん、グラップリング中心のコーチでサンティノ・デフランコさん、そしてセフードのお兄さんが主なコーチで、他にも選手兼コーチという人たちもいます。そうしたコーチ陣が的確な意見をくれるし、コーチ同士で意見を言い合うことができる良い雰囲気なんですよ」

――トップファイターたちが集まる中で、いわゆるガチスパーは行われるのですか。

「こっちは結構ガチでやりますね。火曜日と金曜日は大きめのMMAグローブとシンガード、ヘッドギアは着けてガチスパーをやります。他の大きなジムについて訊いたら、大きいボクシンググローブを着けてスパーするところが多いらしくて。でもボクシンググローブだと、たとえ8オンスでもスタイルが変わってしまうじゃないですか。まず組むことができないですからね。でもファイト・レディーではMMAグローブを着けてガチスパーをやるので、良かったです。さすがにセフードとはスパーしていないですけど……。彼はもうファイトキャンプに入っていて、完全にアルジャメインを研究したメニューをやっていました」

――そのなかで、「コイツは強い」という選手はいましたか。

「いやぁ、みんな強いですよ。何回もスパーしているのは、モンゴルのバットゲレル・ダナーですね。身長も高いし、前に出て来るストライカーで強い。僕も勉強になっています」

――ではファイト・レディーでの練習を通じて、一番得たものは何なのでしょうか。

「次の試合にも関わってくるので、細かいことは言えないんですが……いろいろと変わってきました。教わったことを全部できるようになったかといったら、それは難しいですけど。2カ月の練習だけで全部できるようになったら、僕もUFCチャンピオンになれると思いますし。アハハハ。でも次の試合で、変わった自分を見せることはできると思います」

<この項、続く>

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MMA o ONE UFC   ジョン・ジョーンズ フランシス・ガヌー ボクシング

デイナ・ホワイト「フランシス・ガヌーがジョン・ジョーンズと戦っても勝てないだろう」→ガヌーが反論

カヌー&カヤック入門


デイナ・ホワイト「フランシス・ガヌーがUFCに戻ることは絶対にない」「ガヌーがいなくてもアフリカ大会を開催する」(2023年03月17日)

 こちらの続報。


 デイナ・ホワイトがジョン・ジョーンズ vs. フランシス・ガヌーの可能性について尋ねられ以下のコメント。

「私は興味がない。私はその試合を2年間もトライしていた。彼は対戦を望んでいなかった。彼は契約もしないでここを去った。私はボクシングの世界がどういうものかを知っているし、それはクレイジーだ。しかし、フランシスは対戦を望んでいなかった」

「多くの人も同じことを思っているだろうが、フランシスがジョン・ジョーンズとやったところでシリル・ガーンと同じことになってただろう。フランシスとシリルは(『UFC 270』で)5ラウンドの戦争をした。シリルもサブミッションを狙わなければ、第5ラウンド終盤に勝ってただろう」



 これに対しフランシス・ガヌーは以下のコメント。

「俺は2年以上前からその試合がしたかったが、その時ジョン・ジョーンズはどこにいた? デイナ・ホワイトも誰も興味を持っていなかった。彼らは常に避けて通ろうとしていた。俺はやりたかったが、実現しなかった」

「ジョンはジョン、俺は俺だ。どうでもいい。少し前から言ってることだが、もういい。俺は上手くやっているし、自分にとってベストなことをしたし、ハッピーだ。試合が実現してれば良かったとは思ってる。彼らには多くの怒りや不満があるようだしな。だがそれをコントロールすることはできない。俺をコントロールできるのは俺だけだ」

「俺は出来る限り穏やかに対処しようとした。前進するために全力を尽くしたが、上手く行かなかった。俺の方からドアを閉ざすことは無いが、向こうも攻撃的になっているので、今すぐ彼らと話し合うことはできない。彼らが俺について話しているのを聞いたが、彼らは動揺しているし、多くの怒りが渦巻いている感じだ。俺は大丈夫だけどね」
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ニック・ディアス「UFCにはできるだけ早く試合をしたいと言っている」



ニック・ディアス「年末に試合をしたいが、やるならカマル・ウスマンのタイトルに挑戦したい」(2022年05月27日)

 こちらの続報。


 ニック・ディアスが以下のコメント。

「UFCにはできるだけ早く試合をしたいと言っている」

「ジョン・ジョーンズではないが…まぁイスラエル・アデサニャとかアレックス・ペレイラとか、常にベストな相手と戦いたい」


Nick Diaz(Sherdog)

 ニック・ディアスは8月には40歳になります。2021年9月の『UFC 266: Volkanovski vs. Ortega』でロビー・ローラーに3R TKO負けして以来試合をしていませんが、この時も6年8ヶ月ぶりの復帰戦でした。

 昨年5月に当時ウェルター級王者だったカマル・ウスマンと対戦したいと言った時はデイナ・ホワイトに一蹴されています。続きを読む・・・
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【Shooto2023#02】ここにもいた、格闘ジャンキー=関口祐冬─01─「サンチンで、ヒザの上にコップを」

【写真】宇宙の背景は意味がないという関口だが、話を訊いていると何か通じているような気がしてくる……(C)SHOJIRO KAMEIKE

19日(日)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるSHOOTO2023#02で、修斗世界フライ級1位の関口祐冬が、フライ級契約で世界ストロー級王者の新井丈を迎え撃つ。
Text by Shojiro Kameike

2020年から5連勝でランキング1位まで昇りつめた関口だが、現在この階級のベルトはUFC参戦中の平良達郎が保持している。そこで関口が他のランカーと暫定王座決定戦を行うのか――と予想されたなかで、1階級下の新井がフライ級に進出してきた。新井の挑戦状を受け取った形の関口祐冬とは、いかなるファイターなのか。インタビューを試みると、MMAマニアっぷりが発揮された。


――関口選手が所属する修斗GYM東京のプロフィールには、格闘技を始めたきっかけが少林寺で、好きな選手はコナー・マクレガーとありました。現在のファイトスタイルは、その少林寺とコナー・マクレガーの影響が大きいのでしょうか。

「あぁ、ジムのホームページに載っているプロフィールですよね。細かく言うと、まずお父さんが空手と少林拳をやっていました。もともと自分の中では、決まったスタイルがないのが僕のスタイルだと思っています」

――決まったスタイルがない! どういうことでしょうか。

「次に対戦する新井君や、分かりやすいところだと堀口恭司選手って、コレっていうスタイルがあるじゃないですか。僕はマクレガーの距離の取り方や堀口選手のステップワークも好きだし、コーディ・ガーブランドのスタイルも好きなんですよ。そういう選手の良いところを、ちょっとずつ取り入れているような感じですね」

――そうだったのですね。以前、試合前に体勢を低くして相手を見つめていたところも、マクレガーを意識していたのかと思っていました。

「あれはジョン・ジョーンズです(笑)。ジョン・ジョーンズって四つ這いで相手を見て、動物的な動きで相手に近づいていくじゃないですか。あのスタイルが好きで」

――色々と取り入れていますね。ガーブランドは、どのようなところが好きなのでしょうか。

ガーブランドがドミニク・クルーズからベルトを獲った試合(2016年12月に判定勝ち)が、一番分かりやすいですよね。頭を振って、相手のパンチをかいくぐりながら、パンチとレスリングを織り交ぜて戦う。そういうスタイルがカッコいいなと思っています。ハファエル・アスンソンを2Rラウンド終了間際にKOした試合(2020年6月)もシビれましたし。

ああいう動きを見て、使ってみようかなって練習してみるんです。多くの人は、そうやって練習しても実戦で使うことは少ないと思います。それが僕は試合でも使ってみたくなるタイプですね」

――ガーブランドは先日のトレヴィン・ジョーンズ戦も、相手との実力差はあったとはいえ、ステップとの距離の取り方が抜群でした。

「すごく良かったです。相変わらずボクシングとレスリングを巧く組み合わせていて。新井君はガーブランドから、ステップワークと頭の振りを抜いたタイプだと思っています。ただ、KIDさんもそうでしたけど、体格で劣る選手が相手の中に入っていく姿は、見ていて興奮しますし憧れますよね。純粋に、カッコいいです」

――ただ、関口選手はフライ級の中で体格が小さいわけではないですよね。公式プロフィールでは、身長が180センチとなっています。

「そうですね。フライ級の平均より少し大きいぐらいだと思います。僕の理想は、全部できるようになることです。たとえば相手の体格によってスタイルを変えることができる――何か一つのスタイルをゴリ押ししていくようなことは、僕にはできないですから。それが可能なのって、何か一つが突出している選手なんですよ。

でも僕には、他の競技を経験して何か突出したものがあるわけじゃないので。MMAを始める前も、ちゃんと格闘技と向き合っていたわけではないので、一つひとつのレベルは高くない。どちらかといえば相手のスタイルや体格に合わせることのほうが多いです。

宮城選手との試合(2022年3月、宮城友一に判定勝ち)は、宮城選手のほうが身長は高かったので、僕がガーブランドのように頭を振って中に入っていきました。でも梶川選手の場合(2019年3月、梶川卓に判定負け)は僕が体格で上回っていて、マクレガーのように前手で距離を取りながらパンチを合わせるスタイルを選択したんですよね」

――それだけ普段からMMAの試合を観ているということですね。

「最近は新井君との試合を想定して、ガーブランドとディラショーの試合を観ています。一方はリーチが短くて、一方は体格が大きいっていう試合で。ディラショーとガーブランドは、ディラショーが2連続KO勝ちしていますけど、ガーブランドのパンチが当たっているシーンもありましたから。そこは参考にしたいです。

国内だと今は、和田竜光さんや上久保周哉選手の試合を観ていますね。結局、フライ級ってパンチが当たっても相手は立ち上がってくることが普通じゃないですか。となるとデメトリウス・ジョンソンもそうだし、和田さんや上久保選手のように相手を組み伏せる力がないと、シーソーゲームになっちゃうので。UFCのフライ級でも、ブランドン・モレノとフィゲイレドが、そういうシーソーゲームになっていて。

僕も昔は一発頼りだったんですよ。一発で倒す試合って、憧れるじゃないですか(笑)。それがヘビー級だと一発で終わるのに、フライ級だと倒れない。だから、パンチで倒したあとに組み伏せられる力を身につけないといけない――ここ最近は練習でも、それを痛感しています」

――なるほど。

「やっぱりMMAは観ていて楽しいですよ。僕の試合がある日に、UFCでレオン・エドワーズとカマル・ウスマンが対戦しますよね。3度目の対戦(過去1勝1敗)で、どうなるのかなって。さすがに試合当日の朝だから、僕も体を休めていると思いますけど……でも観ちゃうかな(笑)」

――アハハハ、それだけMMAが好きということですね。それだけ現在はMMAが好きであるにも関わらず、MMAを始める前は格闘技にちゃんと向き合っていなかったというのは……。

「子供の頃は、本当に格闘技が大っ嫌いでしたね。お父さんは最初に空手をやっていて――流派が何だったかも聞いたことはないです。そのお父さんに、無理やり空手をやらされていました。思春期で友達と遊びたくても、家に帰って厳しい練習が待っていて。さらにお父さんが少林寺を習い始めて、空手とミックスしたものを始めたんです。それも日本で広まっている少林寺拳法ではなく、中国で行われているやつなんですよ」

――えっ!? 嵩山少林寺の方だったのですか!!

「だから対人で行われる大会はなくて。あるのは型の大会で、それも映画で見るようなものでした。ジャッキー・チェンの酔拳みたいなものや、三節棍を使った型がありましたね。僕も映画でジャッキー・チェンがやっていた練習を、実際にやっていましたよ。サンチン立ちのような形で、ヒザの上にコップを置かれ、水がこぼれないように1時間その体勢のままでいるとか」

――幻想が膨らむお話です。とはいえ、お聞きしているだけで、幼少期にその練習はキツかっただろうと思います。

「もうね、『この家から早く出たい』と思っていました。格闘技はやりたくない、格闘技とは縁のない会社員か公務員になりたい――と考えていましたけど、今こうしてMMAをやっていますね(笑)」

<この項、続く>

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『UFC 285』ジョン・ジョーンズ vs. シリル・ガーンを見たファイター・関係者の反応

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 『UFC 285: Jones vs. Gane』ジョン・ジョーンズ vs. シリル・ガーンを見たファイター・関係者のツイッターでの反応。続きを読む・・・
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『UFC 285: Jones vs. Gane』パフォーマンスボーナス



 UFCが『UFC 285: Jones vs. Gane』のパフォーマンスボーナスを発表。

▼ファイト・オブ・ザ・ナイト
・シャフカット・ラフモノフ vs. ジェフ・ニール

▼パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト
・ジョン・ジョーンズ、アレクサ・グラッソ、ボー・ニッカル


 5選手には各5万ドルのボーナス。続きを読む・・・