【写真】トーナメントウィークに負傷。今回の2試合で、今後に向けて何を得られたのかが大切だ(C)SATOSHI NARITA
2日(木・現地時間)から5日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのウォルター・ピラミッドにて行われた、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権。
Text Isamu Horiuchi
レビュー第2回は、NYのマルセロ・ガウッシア道場で長期修行を行なっている嶋田裕太の戦いぶりを中心にライトフェザー級の模様をレポートしたい。
<ライトフェザー級1回戦/10分1R>
嶋田裕太(日本)
4-4 アドバンテージ4-2
ジュニー・オカシオ(米国)
まずは引き込み合う両者。お互い相手を掴まずに座ってしまい2度ペナルティを受けた後、嶋田は前に出て一瞬座ってから上を選択することで、アドバンテージを獲得した。
オカシオは嶋田の右足首に絡むが、嶋田は崩れない。ならばとクローズドガードを作ったオカシオは横回転で崩しにかかる。ここも嶋田はスプロールしてバランスをキープする。ガードを閉じているオカシオを持ち上げた嶋田は、左足を押し下げてから胸を合わせにかかるが、オカシオが対処してクローズドに戻る。
その後オカシオはガードを開いて足狙いも見せるが、ここも嶋田は回転して対処してみせた。ラッソーを作ったオカシオは、嶋田の右足を内側から抱えて回転すると、さらにベリンボロに移行を狙う。腰を切って抑え込もうとする嶋田だが、ここでオカシオはその勢いを使って回転して上に。
距離を取って立とうとする嶋田だが、オカシオはその背中を取りながら上になり、2点先制した。そのままサイドで嶋田を抑えたオカシオは、ニーオンザベリーさらに2点追加。嶋田は残り6分ほどのところで4点差をつけられてしまう。
嶋田はエビの動きでオカシオのヒザから逃れるが、ここで嶋田が苦しそうな様子をしたことで、レフェリーが一旦試合を中断。ワキ腹を抑えている嶋田だが、少々のやりとりの後で試合は再開された。
サイドに付いているオカシオは左腕で枕を取ると、嶋田の襟を引きつける。嶋田が足を戻そうとしたところで上からダイブしてのベリンボロ狙いへ。嶋田がマットに背中を付けて守ると、その左足にストレートフットロックを仕掛けてゆく。
それを防いだ嶋田が立とうとすると、オカシオはすかさず背中に回り、嶋田の襟を右で取ってコントロールする。嶋田は動いて体をずらそうとするが、襟を掴んでいるオカシオは巧みに背中に張り続け、キープしていった。
残り4分。それでも動き続けた嶋田は、なんとか距離を作ってクローズに戻すことに成功すうr。ここでオカシオのラペルをその右腕に巻きつけた嶋田は、下から腕十字一閃。うつ伏せになりながら極めにゆき、腕を伸ばし切ったかに見えたが、オカシオは回転して嶋田の体を跨いで脱出。
が、嶋田はその勢いで上になることに成功し、アドバンテージを獲得するとともに2点を返してみせた。さらにサイドを狙う嶋田だが、オカシオはスクランブルして上の体勢に。この動きはスイープではなくリバーサルとみなされ、得点は与えられなかった。
残り約3分で2点リードを許している嶋田。が、アドバンテージでは2つリードしている。シッティングからオカシオの右足に道着を通して掴んだ嶋田は、殿下の宝刀シングルレッグへ。距離を取ってがぶるオカシオだが、グリップをキープしている嶋田は再び勢いをつけてスクランブルから立ち上がる。そのままシングルにつなげる。粘るオカシオをついに倒し切って2点獲得。残り2分半にて逆転に成功した。
一度ガードを閉じたオカシオは、ラッソーに移行する。嶋田はワキを締めて守る。オカシオは回転して煽るが、嶋田はヒジをうまく使って腰を引いて防御する。その後も嶋田は終了まで上をキープし切り、アドバンテージ2つのリードを守り抜いた。
伏兵オカシオに先制点を許し、さらに中断を余儀なくされる状況に追い込まれた嶋田だが、執念の逆転勝利。勝負所で磨き抜いたシッティングからのレッスルアップを決め、最後はミヤオやソドレといった世界屈指のオープンガードプレイヤー達と凌ぎを削ってきた経験を活かして守り切った。
こうして苦境を克服した嶋田は、初日のヤマであるイアゴ・ジョルジ戦に駒を進めた。
<ライトフェザー級2回戦/10分1R>
イアゴ・ジョルジ(ブラジル)
Def.5分43秒 by 襟絞め
嶋田裕太(日本)
嶋田が前に出ると、ジョルジはすぐに引き込む。続いて左でラッソーを作ったジョルジは、そのグリップで強烈に引きつけて嶋田を左に崩してのスイープ。見事に2点を先制してみせた。
上を取ったジョルジは、左右に動いてのパスの猛攻へ。サイドに付けかけられた嶋田は、アドバンテージを一つ献上するもなんとか左足に絡んでみせた。
が、ジョルジはすぐにその左足でニースライスへ。ここも戻す嶋田だが、またしてもアドバンテージを取られてしまう。さらにジョルジは侵攻を続け、ついにヒザを抜いてパスに成功。開始僅か1分半で、点差を5-0と広げた。
サイドについたジョルジは、あえて左足を動かして隙間を作り、半ば意図的に嶋田がそこに絡むことを許してから、再びニースライスへ。さらに逆サイドに飛んでパスを決めて、8-0とリードを広げた。
その後ジョルジは、再び嶋田に一旦足を絡ませてから抜いてみせ、さらにニーオンザベリーも決めて13-0とすると、嶋田の襟首を右手で掴んで上体を起こさせてバックに付き、両足フックを入れて17-0とリードを広げる。ここから送り襟絞めに入ると、嶋田がタップ。5分43秒、一方的に嶋田を攻め続けたジョルジの完勝に終わった。
試合終了後もダメージでなかなか立てなかった嶋田。試合直前の練習で脇腹を負傷してしまっていたとのこと。今回は自分の力を出しきれずに終わってしまったが、その状況でマットに上がり、一回戦を逆転勝利した経験は必ずや今後の糧になるだろう。
嶋田を倒したジョルジは、次戦も突破して最終日へ。準決勝にて優勝候補のメイハン・マキニとのリベンジ戦に臨んだ。が、マキニはスタンドでは小内、小外でジョルジを倒し、上からは凄まじいスピードのトレアナパスを2度決め、最後は腕十字。僅か2分半、恐るべき強さを見せつけた末に圧勝して決勝進出した。
もう一方の山は、予想通り前年度覇者のパトことジエゴ・オリヴェイラとジエゴ・ヘイスの両者が勝ち上がった。この準決勝は、残り1分で50/50を作って上を取ったオリヴェイラがトップを守り切って作戦勝ち。
かくて決勝はマキニ×オリヴェイラ、昨年も死闘を繰り広げた両者の再戦となった。今年からオリヴェイラがドリームアートに移籍したため、同門同士の世界一決定戦だ。
上攻めのマキニと、下攻めのオリヴェイラ。凄まじいスピードと技のキレを持つ両者は、昨年に続いて互いに一歩も譲らない世界最高峰の凌ぎ合いを展開した。スコアは全くの同点、割れるかと思われたレフェリー判定は意外にもユナニマスでマキニを支持。21歳の新世界王者が誕生した。
マキニとオリヴェイラとヘイス──恐るべき強さを誇る新世代がライトフェザー級を席巻している。
そのとてつもなく高い頂に、今回の試練を戦い抜いた嶋田はいかに挑んでゆくのだろうか。
【リザルト・ライトフェザー級】
優勝 メイハン・マキニ(ブラジル)
準優勝 ジエゴ・オリヴェイラ(ブラジル)
3位 ジオゴ・ヘイス(ブラジル)、イアゴ・ジョルジ(ブラジル)