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【UFC FPI04】立ちレス強制終了ルール適用UFCファイトパス招待TにB-TEAM移籍のハイサム・リダが出場

【写真】2021年のハイサム旋風を再び巻き起こすことができるか!! (C)SATOSHI NARITA

9日(木・現地時間)、東部時間の午後9時よりUFCファイトパスにて、グラップリング大会UFCファイトパス・インビテーショナル(FPI)04が配信される。
Text Isamu Horiuchi

強豪選手を集めたシングルマッチと優勝賞金3万ドル(※約430万円)が掛かった8人トーナメントを同時開催するこの大会は、トーナメントは本戦8分、メインカードのシングルマッチは本戦20分のサブミッション・オンリールールで争われる。

本戦で決着がつかなかった場合には、攻撃側と防御側に分かれて極めとエスケープの速さを競うEBI形式のオーバータイム(OT)で勝敗を決める。


UFC FPIルールの特徴は、立ち技の攻防が続くことを防止するための「ゲットダウン」ルールが採用されている点にある。スタンドの攻防が1分間続いた場合にはレフェリーが強制的にブレイクし、選手はバタフライガード(下の選手は双差しで相手の背中で手を組む)の上下に分かれて、(選択権はコイントスで決められる)寝技から攻防が開始されることとなる。

さらに、寝技の攻防で膠着を誘発する選手には積極的に警告やペナルティ(1回につき、OTにおいて自らのエスケープ時間を1分間加算される)が与えられ、選手たちは常に組技でのアクションを促されることとなる。

今回のトーナメントの参加選手は以下の通りだ。

ハイサム・リダ(ガーナ)
ダン・マナスー(米国)
フィリッピ・アンドリュー(ブラジル)
ヴァグネウ・ホシャ(ブラジル)
ガブリエル・アウジェス(ブラジル)
ヒョードル・ニコロフ(ロシア)
ニック・ロドリゲス(米国)
ロベルト・ヒメネス(米国)

日本のファンにとって嬉しい知らせは、昨年12月のUFC FPI03に続いてのハイサム・リダのエントリーだ。米国移住後、デトロイトのアセンブリー柔術を拠点としてメジャーグラップリング大会で活躍をしてきたハイサム。昨年のADCC世界大会最重量級1回戦では、超大物ホベルト・アブレウからわずか75秒で腕十字を極めてみせ、世界にその恐るべき潜在能力を知らしめた。

が、2回戦ではルーズベルト・ソウザのテイクダウンに敗れ、また無差別級では階級下のジャンカルロ・ボドニにガードをパスされ、完全制圧された上で腕を極められてしまう等、発展途上な側面が露呈してしまったことは否めない。前述のFPI 03においても、やはり階級下のパトリック・ガウジオの三角絞めの前に初戦敗退となってしまった。

そんなハイサムは、今年4月末にデトロイトを離れてテキサスのB-Teamに移籍することを決意。「負けが続いて、自分の戦いをみんなに知られてしまっていることが分かった。新しい技術を身に付けなければいけないと思った。そのためにここ以上の場所はない。僕の弱点、やるべきことは自分でも分かっている。突然強くなるはずもないから、多くのドリルやスパーリングを重ねてゆくよ」とハイサムは語る。

実際、クレイグ・ジョーンズ、ニック・ロドリゲス、ニッキー・ライアンといった世界最高峰のグラップラーが所属するB-Teamは、これまでハイサムの大きな課題であった各要素──テイクダウン、足関節、柔術ファンダメンタル=パスガードの攻防──に優れた選手たちが集い、特に足関節とパスガードの技術においては世界最先端を行く集団だ。

重量級として突出した瞬発力とダイナミックな極めを持つハイサムが、真のコンプリート・グラップラーとなるためにはまさに最善の選択だろう。

持ち前の明るい性格であっという間にチームに溶けこみ、また道場前に駐車した自分の車を荒らす泥棒を追いかけ、素手で取り押さえるという経験までしたというハイサムは、今回が移籍後初戦となる。本人も語るように、わずか数ヶ月の練習で全てが劇的に変わるものではないだろうが、ガーナ生まれの少年が、日本~デトロイト~テキサスと移動し世界の頂点を目指す旅の新章の幕開けとして、今大会は注目だ。

そしてこのトーナメントには、ハイサムを受け入れたB-Teamの重量級エース、ニック・ロドリゲスもエントリーしている。ハイサムの加入について「僕と同体格で、同じように高い身体能力を持ったパートナーが得られて最高さ。ハイサムは自分のエゴを試合では勝つために上手く使うけど、練習ではシャットダウンし、いつも笑っているんだ」と大歓迎の様子だ。

前回大会で世界最強のグラップラー、ゴードン・ライアン相手にOTに持ち込み、eエスケープタイム時間差で敗れたもののチョークを極めかける場面を作ったロドリゲスが本命であることは間違いない。

チーム加入前、練習に訪れたハイサムとのスパーリング動画が公開されているが、そこでは──あくまでお互い、勝ち負けではなく技術の向上を目指した手合わせにおいて──ロドリゲスがボディロックからパス、マウントを奪い上からの三角で極めているシーンがある。今回ハイサムとの同門対決が実現した場合、お互い手の内を知り尽くしているからこそ、当時よりさらにステージの上がった攻防を期待したいところだ。

さらに直前になって、ペドロ・ホシャに代わりロベルト・ヒメネスがエントリーされたこともこのトーナメントの期待感を増している。どのポジションからもダイナミックに極めを狙いにゆくヒメネスと、同様のスタイルを最重量級で実践するハイサムの対戦が実現すれば、好勝負となることは必至だ。

他にも世界王者レベルのグラップラーたちが続々と名を連ねるこのトーナメントでは、ジョン・ダナハー門下の22歳の巨漢ジョン・マナスー、10th Planetセントペテルスブルグ支部のヒョードル・ニコラスといった新顔の戦いぶりにも注目だ。

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
6月30日(金・日本時間)
午前10時00分~UFC FIGHT PASS

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ABEMA BELLATOR Finishers Kombat04 Kombat04 MMA MMAPLANET o UFC YUKI アンドリュー・タケット エステヴァン・マルチネス ガブリエル・ソウザ ケネディ・マシエル ザック・エルファルナーニ ジアニ・グリッポ ジオゴ・ヘイス ジャンカルロ・ボドニ マニー・ヴァスケス ヴァラー・ボイヤー 高橋SUBMISSION雄己

【ECI06】高橋Sub雄己、EBIならぬECI=Emerald City Invitationalバンタム級Tに出場

【写真】10thPlanet効果が見られるか── (C)YUKI TAKAHASHI

4月29日(金・現地時間)、ニューヨーク州シセロで開催されるEmerald City Invitational06のバンタム級Tに高橋Submission雄己が出場する。

高橋は2月26日にフィラデルフィアで行われたFinishers Kombat04でラミロ・ヒメネスを内ヒールで21秒殺したばかり。同イベントのバンタム級王座挑戦が約束されたが、より規模の大きなグラップリング大会への出場権を得た。

エメラルドシティとは緑豊かの街を指す言葉で、ワシントン州シアトルがこの名で呼ばれることが多いが、NY州の中央部の商工業都市で冬は豪雪地帯のシラキュースもこの名を用いている。そのシラキュース郊外のシセロで開かれる同大会は、同市にあるエメラルドシティ柔術が母体となっている。


活動2年で5大会=ウェルター級、フェザー級、ミドル級、ライト級、無差別級の16人制Tを実施してきたECIだが、今回は男女バンタム級16人Tが行われ、高橋が出場することとなった。

過去にウェルター級TでPJ・バーチやアンドリュー・タケット、フェザー級ではケネディ・マシエル、エステヴァン・マルチネス、ガブリエル・ソウザ、ジアニ・グリッポ、ミドル級にはジャンカルロ・ボドニ、オリヴィエ・タザら錚々たるグラップラーが出場してきた。

EBIルールが採用され、1回戦から準決勝までは6分、決勝戦は10分というECIバンタム級T。まず注目したいのは2021年ノーギワールド黒帯ルースター級優勝のエステヴァン・マルチネスだ。

ADCC66キロ級世界王者のベイビーシャークことジオゴ・ヘイスとWNOで戦いレフ判定負け、階級的に北米では5キロや7キロ重い階級で戦うのが常で敗北も少なくないが、ECIではフェザー級Tにも出場経験があり、今大会の優勝候補筆頭であることは間違いない。

そのマルチネスにレフ判定で敗れたことがマニー・ヴァスケスも、ある意味注目したいファイターだ。ヴァスケスはキャリア12勝4敗のMMAファイターで、Bellatorやコンテンダーシリーズ出場経験もある。いわばMMAでは高橋より格上となる。

さらにジェイソン・カウチ属するデイジーフレッシュこと、ペディゴ・サブミッションファイティングの新星ザック・エルファルナーニ、2022年ヨーロピアン&パンノーギ茶帯ライトフェザー級優勝のヴァラー・ボイヤーらなどは、要注意が必要な相手といえる。

またFinishers Kombat04で高橋に敗れたラミロ・ヒメネスもエントリーしており、高橋はともかくヒメネスはリベンジの機会を虎視眈々と狙っているだろう。

女子バンタム級にはUFC女子フライ級ファイターのミランダ・メーヴェリックも参戦しており、今後はEBIだけでなくECIも動向を追う必要があるグラップリング大会の一つになるやまもしれない。

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JT・トレス MMA MMAPLANET o ONE UNRIVALED UNRIVALED02 WNO18 ゴードン・ライアン ジャンカルロ・ボドニ ニック・ロドリゲス ペドロ・マリーニョ

【WNO18】Unraivaledの同時刻、米国ではニッキー・ロッド×プレギーサ、ボドニがLH級王座挑戦

【写真】ボドニのグラップリングは、今一番見逃せない。まさに格闘を想わせるグラップリングだ(C)SATOSHI NARITA

25日(土・現地時間)、日本時間で26日のUNRIVALED02とか重なった時刻にWNO18が開催中だ。

メインでは因縁のゴードン・ライアン×フィリッピ・ペナが組まれる予定だったが、大会2日前にゴードンの体調不良で、ニック・ロドリゲスの代替出場が決まり、30分のヘビー級王座決定戦が組まれることとなった。

コメインではライトヘビー級王者ペドロ・マリーニョに、現代グラップリングの完成形ことジャンカルロ・ボドニが挑む一戦。さらにJT・トレスがWNO初出場──マジット・ヘイジと対戦する。

現在のグラップリング界も盛り上がりに多いに寄与したWNOだが、ONEに人材を吸い上げられたことは否定できない。それでも米国がホームの強味、ワンマッチ制プロ・グラップリングイベントでナンバーワンの座は譲らない、そんな意気込みが感じられる注目のカードが並んでいる。

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Brave CF MMA MMAPLANET o PFL PFL CS2023#01 UAEW サディボウ・シ ジャラ・フセイン・アルシラウィ ジャンカルロ・ボドニ ムスタファ・ラシッド・ニーダ ルーカス・バルボーザ

【PFL CS2023#01】PFL版トライアウトはウェルター級から。炸裂するか!! ハルク・バルボーザの鉄板パス

【写真】やはり気になるのは、打撃への耐久力だ(C)MMAPLANET

27日(金・現地時間)、フロリダ州オーランドのユニバーサル・スタジオでPFL Challenger Series2023#01が開催される。

賞金100万ドルを賭けたシーズン&プレーオフ制を敷くPFLとの契約を勝ち取るため8選手が争うPFL版トライアウト大会のチャレンジャーシリーズ、2023年の第一弾はウェルター級で実施される。


4試合、8人の出場選手を国別で分けると米国が3人、ブラジルが2人、ジョージアとスロバキアという東欧&旧ロシア勢、中東サウジから1人となっている。

なかでも注目はルーカス・バルボーザであることは間違いない。ムンジアル&ノーギワールズを制し、昨年のADCCでは88キロで2位となっているバルボーザは、ハルクの異名を持つグラップラーだ。

昨年の同シリーズにもエントリーしていたバルボーザだが、対戦相手の変更を経てキャンセルとなった。その後、グラップリングシーンに戻ったバルボーザはBJJ STARで柔術の神の子ミカ・ガルバォンに決勝で敗れ、ADCCでもジャンカルロ・ボドニにファイナルで下った。

2つの2位はバルボーサにとって納得いく結果ではない。そしてCSでいえば、基本は1人しかサバイバルできない舞台で勝利、オーディエンスと立会人の支持を得て一等賞に輝くしかない。

MMAでは2勝1敗のバルボーザのテイクダウンから鉄壁のパスガード、そして肩固めというタイトな攻撃が、NY在住ジョージア人ファイターでCFFCなどのアマ部門からキャリアを積み上げてきたイッツォ・バブレイゼに爆裂するのか。

打撃のある戦い、その神経戦でスタミナの有無も勝敗の行方に大きく影響してくるだろう。この他のメンバーでは昨年の同シリーズで契約を果たしたヨルダンのライオン=ジャラ・フセイン・アルシラウィに続き、中東サウジアラビアから挑むムスタファ・ラシッド・ニーダも気になる存在だ。

Desert Force、Phoenix FC、そしてBRAVE CFとUAEWと中東のMMAイベントでキャリアを積み重ね7勝3敗の結果を残すラシッドは、5年前に昨年のPFLウェルター級を制したサディボウ・シとPhoenix FCで対戦予定だったがキャンセルになった過去がある。この間、シは100万ドル獲得フィターとなったが、ラシッドのPFLでのキャリアはまず今週末から始まる。

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ADCC2022 MMA MMAPLANET o   ジャンカルロ・ボドニ タイ・ルオトロ ニコラス・メレガリ ハイサム・リダ

お蔵入り厳禁【ADCC2022】無差別級 タイ・ルオトロ、今大会道着柔術最強メレガリ相手に奮闘の準決勝

【写真】体格差だけでなく、ノーギの慣れとファウンデーションの強さでタイを下したメレガリ(C)SATOSHI NARITA

9月17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。第21回は――お蔵入り厳禁、今大会の出場者のなかで道着柔術最強といっても過言でないニコラス・メレガリとタイ・ルオトロが対戦した無差別級の準決勝の模様をお伝えしたい。


もう一方のブラケットを勝ち抜きタイとの準決勝まで上がってきたのは、99キロ以下級で3位入賞したニコラス・メレガリだ。

初戦はヴィニシウス・フェレイラ相手に下から足を取りにゆくと、勢いよくスピンして引き抜いたフェレイラが左ヒザを負傷してしまい棄権。メレガリが次に駒を進めた。二回戦でメレガリを待っていたのは、同門にして88キロ以下級を圧巻の強さで制したジャンカルロ・ボドニだ。

ボドニは初戦では、一年前のWNOチャンピオンシップの重量級3位決定戦で僅差で敗れているハイサム・リダと再戦。そのボドニ、ハイサムのオープンガードを丁寧に捌き、体を二つ折りにしてレッグドラッグから背後にまわる。

ハイサムの左腕を両手で掴んで動きを制した後、裏返して後ろ三角絞めをロックしたボドニ。最後は孤立した左腕を捻り上げ、4分少々で一本勝ち。最重量級のハイサムの動きを完全に封じたまま、詰将棋の如く一手ずつ進めて極めまで持っていくという、恐るべしとしか言いようがない技術の高さと圧巻の強さを見せつけた。

ボドニとの同門対決となったメレガリの2回戦。まず小外刈りを内股で切り返されてしまったメレガリだが、下から足を絡めて上を取ると、レッグドラッグからパスに成功。

加点時間帯に入ってからニアマウントからバックに回ってフックを入れ、さらにそれを入れ直す形でリードを6点に広げた。

その後エスケープに成功したボドニにスタンドでテイクダウンを仕掛けられると、あまり抵抗せず下になったメレガリは、得意のガードで残り時間をやり過ごしてチームメイト対決を制し、ルオトロとの注目の準決勝に駒を進めた。

<無差別級準決勝/10分1R>
ニコラス・メレガリ(ブラジル)
Def ExR by Reff decision
タイ・ルオトロ(米国)

スタンドにて、お互い頭に手をかけてはいなし合う展開が続いた後、身長で勝るメレガリが小手に巻いての内股へ。綺麗にタイの体を舞わせたが、タイはヒザを入れて距離を取り、右腕でフレームを作り立ち上がった。

さらにスタンドの攻防が続くなか、メレガリがやや腰高のままタイの右足を掴みながら前に。と、今度はタイが小手からの内股でカウンター。メレガリの体を前に崩すと、次の瞬間必殺のダースチョークをロックオン。

場内の興奮が一気に高まるなか、腕が深く食い込み絶体絶命かと思われたメレガリだが、右腕を張って距離を作って脱出。そのまま体を預けて上を取るメレガリに対し、タイはバギーチョークを狙う。が、メレガリは大きな上半身を引いて逃れてみせた。

そこからしばらく、右でニースライスを仕掛けるメレガリのプレッシャーを、タイが下から耐える展開が続く。やがて試合が加点時間帯に入り、タイは両腕のフレームで距離を作り、さらに脇を差しながら立ち上がった。体格差のあるメレガリ相手に、さすがのスクランブル能力だ。

その後もスタンドで積極的にフェイントから仕掛け合う両者。やがてメレガリが前に出てボディロックを取ると、タイは小手投げでカウンター。が、これを耐えたメレガリはタイの背後にまわる。ここから高々とリフトしてグラウンドに持ち込もうとするメレガリだが、タイはすぐに立つ。

それでも背後に付き続けるメレガリ。タイが自ら前方に倒れてのスクランブルを試みると、巨体を浴びせてハーフネルソンからタイの体を返してフックを狙う。が、タイは一瞬早く体を翻して立ち上がってみせ、場内からは再び大きな歓声が上がった。

その後メレガリは、再びタイの右足に手を伸ばして抱えると、タイの軸足を豪快に刈ってのテイクダウン。スクランブルを試みるタイの背後に付く――や、タイは前転狙い。体重を浴びせてそれを許さないメレガリと、前転して足を取りたいタイの攻防が続く中で本戦が終了した。

スタンドから再開された延長戦。タイはヒザを付いてのダブルレッグへ。深く入りそのままドライブを試みるが、メレガリは倒れず、右の前腕で距離を取って防いでみせた。これは体格差がものを言った。

さらにスタンドの攻防が続き、またしてもメレガリが長い手を伸ばしてタイの右足をキャッチ。そのまま前に出て体を預けて倒し、亀になったタイに背後から覆いかぶさってバックを狙う。が、タイはここもスピンして体をずらし、襷を作ろうとするメレガリの腕を自分の腕で押しのけながら正対してみせた。

下になりかけたメレガリは腕で距離を作って立つが、すかさず迫ったタイは背後からボディロック。が、メレガリは豪快に巨体を舞わせて前方にダイブ。体のグリップを切って立ち上がる。

その後の残り2分、お互いスタンドでフェイントをかけ、手や足を飛ばし合いシュートインを試みるなかで試合終了。激闘を繰り広げた両者を、場内は大歓声で称えた。

レフェリー判定はメレガリに。スタンドでのテイクダウン狙いからタイを亀にさせる場面を数回作ってみせて、背後からフックを狙う時間も長かったので妥当な裁定だろう。

一方、惜しくも敗れたタイ。大きな体格差のあるメレガリ相手に抑え込まれることなく、15分間最後までペースを落とさず動き続けたそのスタミナとスクランブル能力は、驚異としか言いようがない。2回戦のペナからの勝利も併せて、階級別初戦敗退のショックを払拭するに余りある活躍ぶりだった。

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【ONE FN03】越えろ、Do Sportsの壁。ケイド・ルオトロ「サンビストはTDもレッグロックもできる」

【写真】ケイド・ルオトロがONEを舞台にグラップリングの歴史を変えることができるか(C)SATOSHI NARITA

22日(土・現地時間)、マレーシアはクアラルンプールのアシアタ・アリーナで開催されるONE Fight Night03「Lineker vs Andrade」でONEサブミッショングラップリング世界ライト級王座決定戦が組まれ、ケイド・ルオトロがウアリ・クルジェフと対戦する。

ケイドといえば9月に行われたADCC2022の77キロ級で4試合連続一本勝ちを飾り、19歳9カ月という最年少ADCC世界王者に輝いたばかり。今、最も注目されているグラップラーだ。

ADCCは前半がサブオンリー、後半からポイントという特殊なルールセットとなっているが、ONEはケージ使用のサブオンリーで極めが重視される。とはいえ、先のライト級王座決定戦=マイキー・ムスメシ✖クレベル・ソウザ戦のようにテイクダウンの攻防はスルーできるルールになっている。投げ、抑え、スクランブルというのはグラップリング競技の醍醐味の一つであり、ADCCでも勝負の行方を分けるキー・ファクターであった。

ルールの違いが、試合展開の違いを生むのは当然。それでもケイドの唯一無二のゴールは対戦相手を仕留めること。ルールによってプロセスが変化するが、ケイド自身はサンビストであり柔道家のクルジェフとの対戦を楽しみにしている。その理由こそ、グラップリングを見る側にとっても楽しめる要素となっている。

グラップリング=Do Sportsという壁を破るべき、世界最高のグラップラーの組み技、柔術論に注視してほしい。


──ADCCで世界一に輝いたグラップラーの多くが、暫らくは競技会から離れるかと思いますが(※88キロ級優勝のジャンカルロ・ボドニは10月23日開催のEBI=エディ・ブラボー・インビテーショナルに出場)、ケイドは10月23日にクアランプールで、ONEチャンピオンシップのサークルケージでサブミッショングラップリング世界ライト級王座を賭けてウアリ・クルジェフと対戦します。

「今回の対戦相手はサンボと柔道出身で、上半身への攻めが強力だ。うん、凄く楽しみだよ。サンビストはテイクダウンが強くて、レッグロックに秀でている。興味深いよ。テイクダウンとレッグロックって、ADCCのメイン・スタイルだからね」

──確かにその通りですね。

「ADCCにレスリングは必須だよ。レスリングを避けているようでは、絶対に勝てない。でもADCCに出ているレスラーの弱点はレッグロックなんだよ。サンビストは違うだろう? テイクダウンもレッグロックも強いクルジェフと、僕の戦いがどうなるのか。想像するだけでも、ワクワクしてくるよ」

──ムエタイやキックボクシング、MMAを見に来ているファンの前でのサブオンリーファイト、観客を満足させることを意識するとタップを奪うことが絶対です。そのような戦いを心掛けることで、ケイドはサブミッション・ファイターとして進化するのでしょうか。

「イエス、絶対的にね。ONEでの試合はサブミッションにフォーカスしている。ただし前回のシンヤ・アオキとの試合は、そこを意識する余りにミスが多かった。サブミッションを仕掛けすぎると、対戦相手のディフェンスへの意識は高まる。だから、あの試合は極めそこなってしまったんだ。僕はサブミッションに気持ちがいき過ぎていた。フィニッシュすることが、自分の役目だと思っていたんだ。決して僕自身のためじゃなくて、柔術のために必要だと考え過ぎていた」

──柔術のために? それはどういうことでしょうか。

「柔術は普及にもの凄く時間が掛かるスポーツだ。普通の人が視て楽しむことは、とても難しい。世界最高峰の黒帯の世界大会で、どれだけ退屈な試合が続くか。一般の人が見たら、10分間何も動きがない。ずっと同じことをしていると思われる。それが柔術の最高峰の戦いなんだ。

でもONEで戦う時はムエタイやMMAというエキサイティングなマーシャルアーツと見比べられる状況にあることを忘れてはいけない。だからこそ、次の試合でも必ずフィニッシュを狙うよ」

──観客がエキサイトするのは、サブオンリーかポイント制か、議論の余地があるかと思います。サブミッション決着は、ファンの求めるところでしょう。ただポイントがあれば、どちらが優勢なのか可視化できるという良さもあります。それにサブオンリーでは引き込みにより、テイクダウンの攻防がなくなることも多いです。

「テイクダウンの攻防がなくなるのは、僕の戦い方じゃない。僕はテイクダウンして、パス。そしてサブミットする。誰と対戦しても戦い方は変わらないよ。作戦も同じだ。テイクダウンが強い相手とレスリングで勝負する。そういう風に戦うことが、エキサイティングなんだ。そして素早くサブミッションを仕掛ける。もちろん、上手くいくかどうかは分からない。でも、僕のゴールは常にサブミッションだよ」

──柔術はポイントを取れば守って勝てます。ケイドは優勢でも、フィニッシュを狙うのですね。

「柔術ではサブミッションの前のポジションが重視される。そこがちょっと僕と違うところで。僕はポジションよりも、先にサブミッションを仕掛ける。ポジショニングを重視過ぎると、その先にあるサブミットするという意識が希薄になるからね。そして、守りのファイトになってしまう。

同様にサブミッションを意識し過ぎると、さっきも言ったように、相手が防御一辺倒になってしまって結果的には、エキサイティングな試合にならない」

──やはりグラップリングを観賞用スポーツとするのはハードルが高そうです。

「結果としてサブミットすれば良いんだよ。ただし、一つの技にトライしてタップを奪えないなら、違う技を仕掛けなければならない。ADCCでもノーポイントの時間帯からテイクダウンを取ってフィニッシュを狙った。でも一本を奪えないなら、ガードを取っても構わない。一つの技に拘ると、ポイント制だろうがサブオンリーだろうが、退屈な試合になってしまうんだ。

ミカ(ガルバォン)のガードからのアタックは同じことが繰り返されて退屈な試合になってしまう。僕はそういう戦いはしない。ミカがガードに固執すると、エキサイティングな試合にはならない。ガードが上手く機能しないなら、レッスルアップしてスタンドでレスリングをすれば良い。そういう風に戦い方を変えることで、グラップリングはエキサイティングなスポーツとして普及できるよ」

※ADCCを制した4試合、ステロイド・フリーの大会で「ナチュラルなのは僕とタイ(ルオトロ)、ロベルト・ヒメネスの3人だけ」(※注インタビュー中のケイドの発言)という爆発力とアイソメトリック・ストレングスの違い。2回戦のヒメネス戦、準決勝のPJ・パーチ戦、そして決勝のミカ・ガルバォン戦とJT・トレス論が聞かれたケイド・ルオトロのインタビューは、10月28日発売のFight & Life#93に掲載されます。

■放送予定
10月1日(土・日本時間)
午前9時00分~ ABEMA格闘チャンネル

■ONE Fight Night03対戦カード

<ONE世界バンタム級(※65.8キロ)選手権試合/5分5R>
[王者] ジョン・リネケル(ブラジル)
[挑戦者] ファブリシオ・アンドラジ(ブラジル)

<ONEムエタイ世界ライト級王座決定戦/3分5R>
レギン・アーセル(オランダ)
シンサムット・クリンミー(タイ)

<ムエタイ・フライ級ワールドGP決勝戦/3分3R>
スーパーレック・ギアットムーガーオ(タイ)
パンパヤック・ジットムアンノン(タイ)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
キム・ジェウン(韓国)
シャミル・ガサノフ(ロシア)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
ジャレミー・ミアド(フィリピン)
ダニエル・ウィリアムス(豪州)

<ONEサブミッショングラップリング世界ライト級(※77.1キロ)王座決定戦/12分1R>
ケイド・ルオトロ(米国)
ウアリ・クルジェフ(ロシア)

<ムエタイ・フライ級/3分3R>
アミール・ナセリ(イラン)
内藤大樹(日本)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
エイサー・テン・パウ(米国)
メヂ・ザッツプッツ(アルジェリア)

<女子ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
リー・ビヴィンス(米国)
ノエル・グホンジョン(フランス)

<キックボクシング・ヘビー級ワールドGP補欠戦/3分3R>
ラーデ・オバチッチ(セルビア)
ジヤンニス・ストフォリディス(ギリシャ)

ONE162「Zhan vs Di Bella」

2022年10月21日(金・現地時間)
マレーシア クアラルンプール
アシアタ・アリーナ
ONE162「Zhan vs Di Bella」

■放送予定
10月21日(金・日本時間)
午後8時~ ABEMA格闘チャンネル

■対戦カード

<ONE世界女子ストロー級(※56.7キロ) 選手権試合/3分5R>
チャン・ペイミエン(中国)
ジョン・ディベラ(カナダ)

<キック・ライト級/3分3R>
ニキー・ホルツケン(オランダ)
イスラム・ムルタザエフ(ロシア)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
リース・マクラーレン(豪州)
ウインジソン・ハモス(ブラジル)

<キック・フライ級/3分3R>
シッティチャイ・シッソンピーノン(タイ)
ムハマド・ブゥタサ(オランダ)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
アレックス・シウバ(ブラジル)
グスタボ・バラルト(キューバ)

<ムエタイ・フェザー級/3分3R>
ジミー・ビエノ(フランス)
ニクラス・ラーセン(デンマーク)

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
レアンドロ・イッサ(ブラジル)
アルテム・ビュラク(ロシア)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
エコ・ロニ・サプトラ(インドネシア)
ヨッカイカー・フェアテックス(タイ)

<ムエタイ・フライ級/3分3R>
チョーファー・トー・センティアノーイ(中国)
デニス・ピューリック(ボスニアヘルツェゴビナ)

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ADCC2022 K-1 MMA MMAPLANET o   アイザック・ミシェル エオガン・オフラナガン ゴードン・ライアン ジェイ・ロドリゲス ジャンカルロ・ボドニ ジョシュ・ヒンガー タイ・ルオトロ ニック・ロドリゲス ペドロ・マリーニョ ルーカス・バルボーザ ヴァグネウ・ホシャ

【ADCC2022】88キロ級決勝 現代グラップリングの完成形=ジャンカルロ・ボドニがハルクを破り世界一に

【写真】投げとテイクダウン、上も下も極めもあるジャンカルロ・ボドニ(C)SATOSHI NARITA

9月17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。第13 回からは88キロ級決勝ジャンカルロ・ボドニ×ルーカス・バルボーサ戦の模様をお伝えしたい。

緻密な技術で決勝に進んだボドニを決勝で待っていたのは、優勝候補の一人ルーカス・ハルク・バルボーザだ。

バルボーザは1回戦はフィンランドのサンテリ・リリアス相手に加点時間前から積極的に極めを狙ってゆき、中盤にテイクダウンからバックを奪取。極めることはできなかったものの3-0で完勝した。

2回戦でバルボーザはアトスの同門にして40歳の大ベテラン、ジョシュ・ヒンガーと対戦。

ヒンガーは初戦、やはり同門にして21歳も年下のタイ・ルオトロと両者総力を尽くした大激戦を展開。延長にてダブルレッグで先制点を取られるものの、オモプラッタの仕掛けからスクランブルで背後に付いてフックを入れ、3-2で驚愕の逆転勝利を収めている。

そのヒンガーを相手にバルボーザは、加点時間帯に入ってからシュートイン。ダブルからシングルに移行して左足を抱えてテイクダウンに成功。亀を取られて加点はなかったものの、そのまま上からじっくり低く体重を預けて侵攻し、足を超えてパス、そしてマウントまで奪って7-0で完勝した。

迎えた準決勝の相手は、やはり大ベテラン40歳のヴァグネウ・ホシャ。こちらは初戦でオセアニア予選の覇者のアイザック・ミシェルに、2回戦ではペドロ・マリーニョ相手に得意のスタンドでの持久戦を展開。延長で加速して判定勝利を収めている。

ちなみにマリーニョは一回戦、ニック・ロドリゲスの弟ジェイ・ロドリゲスにワキをくぐられてバックを奪われたものの、自ら前転してスクランブルして上のポジションを奪取。そのままニースライスパスを決めて3点を先制し、終盤テイクダウンを奪われるものの終了まで足を絡めて逃げ切る形で激闘を制していた。

そんなホシャとの準決勝。バルボーザは前半バックを取りかける等優勢に進めるものの、後半は恐るべきスタミナと尽きない闘争心を持ち、ヘッドバット上等で前進してくるホシャに精神的にも肉体的にも疲弊させられる展開に。最後はテイクダウンを奪われかけたものの背中を向けて終了まで耐え抜き、前半の優勢を評価される形でレフェリー判定勝利。死闘の末に薄氷の決勝進出を果たした。

迎えた決勝戦。ボドニが2020年に黒帯を取得して以来、両者はノーギで5度対戦。いずれも僅差だがバルボーザが4勝1敗と勝ち越している。


<88キロ下級決勝/20分1R>
ジャンカルロ・ボドニ(米国)
Def.14分10秒 by RNC
ルーカス・バルボーザ(ブラジル)

まずはスタンドレスリングで争う両者。お互い頭を掴んで下げさせようとする重厚な攻防が続く。ボドニがバルボーザの右腕をドラッグしようとしたところで、バルボーザがシュートイン。

しかしスプロールしたボドニは、上体を起こすバルボーザをフロントヘッドロックで捕らえて投げを放つ。が、バルボーザはうまく左腕をマットにポストして堪え、そのまま上になった。

低く入るバルボーザは、左右に方向を変えながら侵攻を試みるが、ボドニも左右のニーシールドとフレームを使って止める。ここでレフェリーにバルボーザにもっと積極的に動くようにと警告。これはトップからじっくり圧力をかけていくのがバルボーザの持ち味なだけに、気の毒なコールだ。

さらにプレッシャーをかけるバルボーザだが、ボドニは下から入れた右ヒザでバルボーザの体を引き寄せてその右足を抱えると、そのまま足を伸ばしにゆく。バルボーザは自ら横回転しボドニの背後に。さらに前方にダイブしたバルボーザは、ボドニの背中をマットに付けさせてからバックを狙う。

嫌がったボドニをボディロックで固定したバルボーザはサイドへ回ろうとする。ボドニも両腕を張って距離を作って足を入れて抵抗する。

それでも巨大な上半身で圧力をかけてせり上がるバルボーザは、ニアマウントから肩固めへ。そのまま絡んでいる足を外し、サイドに回るバルボーザ。絶体絶命かと思われたボドニだが、ポジションが固まる前に全身の力を使ってスピンして亀に。そのままバルボーザを振り解いて立ち上がってみせた。バルボーザの世界随一の圧力から脱出したのだから、素晴らしいタイミングと力の集中のさせ方だ。

試合はスタンドから再開され、またしてもいなし合いを展開する両者。やや疲弊したバルボーザが、ボドニに手をかけられて頭を下げさせられる場面が増えてきている。

8分過ぎ、再び頭に手を伸ばすかと思われたボドニがダブルレッグに。反応の遅れたバルボーザの懐に深く入ってテイクダウンに成功し、そのまま上のポジションを取った。加点時間帯に入っていないこともあり、バルボーザは無理にスクランブルをせず下になった形だが、試合の流れが、スタミナを残しているボドニに傾きはじめた感がある。

ボドニがクローズドガードの中から立ち上がると、その右足にデラヒーバで絡むバルボーザ。盤石のバランスを誇るボドニは、慌てず騒がず絡んでくる左足を下から押し下げ、ヒザでピン。さらにボドニはバルボーザの右足も抑えてサイドを狙うが、ここでバルボーザは腕で距離を取り、立ち上がった。

スタンドに戻る両者。いなし合う中で試合は加点時間帯に。ボドニに頭を押さえられたバルボーザがシュートイン。しかしボドニにがぶられてしまう。序盤同様に上体を起こそうとするバルボーザだが、ボドニは体重をかけてそれを許さず、そのまま左足を巻き込んでクレイドルの形でグリップを作る。

ここでバルボーザは力を込めてボドニのグリップを切りながら、上体を起こすことに成功する。バルボーサはさらに両差しの状態から大内でドライブしてのテイクダウンを狙うが、ボドニは腰を引いて防御。次の瞬間、バルボーザの右腕を小手で巻いたボドニが内股へ。前に崩されつつ、バルボーサはうつ伏せで耐えきった。

力のこもった攻防に場内から歓声が上がるなか、ボドニはさらにバルボーザの足を跳ね上げて投げ切りにいく。バルボーザは自ら前転し、勢いをつけてスクランブル。場外ブレイクとなった。動きが落ちているバルボーザだが、ここ一番で出力を上げられるのはさすがだ。

この場面、解説のショーン・ウィリアムスが「いま、彼(ボドニ)がニューウェーブでサトシ・イシイのようなトレーニングパートナーを持っていることが役に立っているんだ。内股の使い方だよ。柔道はこのようにレスリングに対して素晴らしいディフェンスとして機能するんだ」とコメントした。

試合はスタンドで再開されボドニのダブルレッグに対し、ワキをすくって押し返すバルボーザだが、疲弊のあまりその時に両ひざをついてしまう。すかさずボドニは突進して肩を押し倒し、スクランブルを試みたバルボーザの背後に付いてみせた。

亀の体勢のバルボーザに覆いかぶさって襷を取ったボドニは、そのままバルボーザの体を仰向けに返しながら四の字フックを完成させ、大きな3点を先取した。大歓声が沸き「USA」チャントが沸き起こるなかチョークを狙うボドニだが、バルボーザも諦めずに両腕でディフェンスする。

が、足を組み替えてさらに6点を追加したボドニは、左手でバルボーザの顎を掴んで上げさせてから、右腕を深くこじ入れることに成功すると──マタレオンの形で絞め上げてタップを奪った。昨年のWNOチャンピオンシップの重量級では3戦全敗、優勝候補に挙げられることは少なかったボドニが、初出場初優勝を決めた。しかも4試合全てを完勝(3つの一本勝ち)。その強さは、他の出場選手たちより頭一つ以上抜けていた。

決勝のバルボーザだけでなく、スタンドレスリングの強さで世界の頂点に立ったディニズをも制した、粘り強いスタンドレスリング。トップゲームで世界柔術の頂点に立ったバルボーザとバイエンセにパスを許さない優れたガードワーク。今回旋風を巻き起こしたオフラガナンの足関節攻撃を的確に捌き、逆に極め返した正確な技術。そして盤石のバランスを礎に段階を踏んで相手の動きを潰し、やがて完全制圧する緻密なトップゲーム──スピード感こそやや欠けるものの全ての局面で抜群の安定感を持ったボドニの戦いぶりは、同門の先輩ゴードン・ライアンを彷彿させる強さを見せつけた。

実際、ニューウェーブに加入してからの練習について「毎週のように自分が上達しているのが感じられる。特に僕は2、3ヶ月ごとに全く違うレベルの選手になっていることが分かるんだ」と語ったボドニ。26歳にして急成長を続ける彼は現在、ライアンとともにダナハーのグラップリングシステムをもっとも高いレベルで体現している選手と言っていいだろう。

これで66キロ級、77キロ級に続き88キロ級も初出場選手が初優勝。ADCCに新しい風が吹いている。

なお3位決定戦は、そんな風など何するものぞ──とばかりにベテラン40歳のヴァグネウ・ホシャがいつもの如く闘争心を前面に出す戦いを展開。

今大会一躍名を挙げたエオガン・オフラナガンに上のポジションから仕掛けるトーホールドを極めてみせ、準優勝の前回に続いてメダル獲得を果たした。

88キロ以下級リザルト
優勝 ジャンカルロ・ボドニ(米国)
準優勝 ルーカス・バルボーザ(ブラジル)
3位 ヴァグネウ・ホシャ(ブラジル)

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ADCC2022 MMA MMAPLANET o WNO15   エオガン・オフラナガン シャンジ・ヒベイロ ジェイ・ロドリゲス ジャンカルロ・ボドニ マテウス・ジニス メイソン・ファウラー ルーカス・バルボーザ

【ADCC2022】88キロ級 次々と現れる組み技界の未来=ジャンカルロ・ボドニ─準決勝までの勝ち上がり

【写真】柔術とレスリングが見事に調和されたボドニ。上でも下でも勝てるスタイルは、ADCCルールとサブオンリーの両ルールでも同様の活躍が見込める選手だ(C)SATOSHI NARITA

9月17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。第12 回からは88キロ級──まずはジャンカルロ・ボドニ×エオガン・オフラナガンの準決勝の模様と両者の勝ち上がりをお伝えしたい。

北米予選覇者のジャンカルロ・ボドニは、ベウナウド・ファリアの教えを受けてアリアンシの黒帯を取得し、昨年からジョン・ダナハー門下に移った選手。昨年のノーギパンナムでルーカス・バルボーザを倒した実績が光る。

7月のWNO15におけるジェイ・ロドリゲス戦ではグラップリングの未来といえる柔術とレスリングの融合体を見せてジャッジ3人の支持を得て勝利した試合も印象深い。

そのボドニは1回戦で元柔術世界王者のイザッキ・バイエンセと対戦。

巧みなシッティングガードやハーフガードでバイエンセの上からのプレッシャーに対抗。足関節合戦からのスクランブルで背後に回ってフック入れて3点を先取すると、一度フックを緩めてから入れ直してさらに3点追加。バイエンセの左腕を足で封じた状態でチョークを狙い続けて6-0で完勝した。


続く2回戦では前回王者にして優勝候補筆頭と見られたマテウス・ジニスとボドニは相対することに。

序盤にアームバーからニータップにつないでテイクダウンを奪いパスまで決めたボドニは、加点時間帯に入ってから場外際のスクランブルでボディロックを取り、ブレイク後に中央から再開されると直後にテイクダウンに成功。さらにニアマウントから腕十字を狙い、最後は三角絞めを完全にロックオンして本戦で一本勝ちを収めた。

バイエンセ&ジニス、柔術&グラップリング界の超ビッグネーム2人に完勝という驚くべき快挙を成し遂げて、絶好調のボドニは準決勝進出を決めたのだった。

そのボドニの相手はヨーロッパ予選覇者にして、こちらも前日に2戦連続で大物食いを果たして世界を驚かせた英国のエオガン・オフラナガンだ。

1回戦、下から柔軟なガードでレジェンド中のレジェンドであるシャンジ・ヒベイロのプレッシャーに対処したオフラナガンは、足関節攻撃でむしろ優位に本戦を終えた。

延長ではシャンジのタックルをギロチンで切り返したオフラナガンは、バックにまわってフックを入れて先制点。その後シャンジに脱出されるも、柔軟性を存分に活かしたガードワークと巧みな足関節の仕掛けをもってシャンジに反撃を許さず、3-0で完勝した。

続く2回戦も、オフラナガンは柔軟性を利したガードワークをもってメイソン・ファウラーのトップからの攻撃に対処。ファウラーが上から外ヒールを仕掛けてきたところを内ヒールで切り返し、最後は両腕を組むような形で極めてみせた。

世界的には比較的無名の存在ながら、大ベテラン世界王者のシャンジ、SUG王ファウラーを連覇したオフラナガンは、今大会のブレイクアウト・スターの1人といえるだろう。

<88キロ級準決勝/10分1R>
ジャンカルロ・ボドニ(米国)
Def. 2分18秒by トーホールド
エオガン・オフラナガン(英国)

揃って大物2人を撃破し勢いに乗る両者の準決勝。試合後すぐ座ったのはオフラナガンの方。自分の両足の間にあるボドニの右ヒザ裏を外から抱え、崩しながら下の足を抜いてサドルに入るフォールス・リープを狙うが、ボドニは同時に回転し、絡んでくる左足を両手で押し下げて回避する。

さらに絡もうとするオフラナガンの足を丁寧に捌くボドニは、やがて体勢を低くして上半身でオフラナガンの足を潰しにかかる。が、オフラナガンはインバーテッドから柔軟な股関節を利用して足をこじ入れて、回転しながらサドルを作る。

ここからが足関節を熟知しているダナハー門下のボドニの真骨頂だった。アフラナガンの動きに冷静に付き合うと、絡まれている足の支点をヒザより下に持ってきてから、改めて手で押し下げて絡みを解除し、再び低く体重を預けてゆく。オフラナガンは再びインバーテッドから鋭く回転してサドルへ。が、ここもボドニは落ち着いて回転しつつ、外掛けで絡むフラガナンの左足を右手で抑えて防御する。

それでもオフラガナンが左足を絡めようとするが、ボドニはその左足を左手で抱えて自らの胸部にかかとを付けると、右手を内側から入れて(自らの胸部とかかとの接着面を支点に)足首を捻りあげる。フリーだった左足首を突然極められたオフラガナンはすぐにタップ。ボドニはしてやったりと言わんばかりにニヤリと笑ってみせた。

今大会一躍注目の的となったオフラガナンの下からの攻撃に対し、抜群の安定感のベースを軸に慌てず騒がず、きわめて落ち着いた様子で対処し、段階を踏んで着実に潰していったボドニ。

その姿は、技の一つ一つの工程を丁寧に説明する師匠ジョン・ダナハーの教則映像の如しであった。そして最後は、人体の関節の構造を知り尽くしたかのようなカウンターの足関節。この階級では今まで見たことがないような類の緻密な技術を披露し、ボドニが決勝に進出した。

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ADCC2022 JT・トレス MMA MMAPLANET o カイナン・デュアルチ ケイド・ルオトロ ゴードン・ライアン ジオゴ・ヘイス ジャンカルロ・ボドニ ハイサム・リダ ホベルト・アブレウ ユーリ・シモエス 岩本健汰

【ADCC2022】66キロはジオゴ・ヘイス, 77キロはケイド。88キロがボドニ。KINGはゴードン・ライアン!!

【写真】タイが初日に姿を消すというなか、ケイドがADCC最年少世界王者に (C)SATOSHI NARITA

17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて2022 ADCC World Championshipが開催された。

イベントの規模、試合レベル共に四半世紀を迎えようかというADCC世界大会の歴史において、また他のグラップリング・イベントと比較しても、過去最高のグラップリング・イベントとなった今大会。

そんななか日本でも特に注目された66キロ級ではジオゴ・ヘイスが優勝。77キロ級ではケイド・ルオトロがミカ・ガルバォンを足関節で下し頂点に。

88キロはノーマークだったといっても良いジャンカルロ・ボドニが、これが新時代のグラップリングだという戦い方を続けた。

結果、決勝でルーカス・バルボーサをRNCで仕留め優勝している。

99キロ級はカイナン・デュアルチ、99キロ超級はゴードン・ライアンがゴールドを獲得、ゴードンはスーパーファイトも制し文字通りグラップリング界のKINGに君臨。無差別級では古豪ユーリ・シモエスが復活を遂げる勝利を挙げている。

日本から出場した岩本健汰は初戦でJT・トレスと対戦し、非ポイントの時間帯から積極的に攻めるという戦い方を選択する。

岩本のテイクダウン狙いに序盤の5分間は倒れていたJTは5分以降と延長戦では、切ってバックを伺うという展開で大善戦の岩本をレフ判定でくだした。

ハイサム・リダは初戦でホベルト・アブレウを腕十字で破るジャイアントキリングを達成するも2回戦敗退。それでも多くの新しい力の台頭の象徴──その一員であることを大いに印象づけている。

※ADCCの詳細レポートは後日、掲載となります。


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MMA MMAPLANET o WNO15 ジェイ・ロドリゲス ジャンカルロ・ボドニ ニック・ロドリゲス

【WNO15】グラップリング最前線=ADCC予選優勝者対決。ボドニがジェイ・ロッドの反撃を凌ぎ判定勝ち

<アブソルート級/15分1R>
ジャンカルロ・ボドニ(米国)
Def.3-0
ジェイ・ロドリゲス(米国)

Bチーム所属、ニック・ロドリゲスの実弟ジェイ・ロッドに対するは、ダナハー門下=ニューウェイブ柔術のボドニと対戦。この両者はADCC米国西海岸予選=ジェイ・ロッド、東海岸予選=ボドニという88キロ級予選優勝者対決だ。

ADCCイヤー、非常に大切になってくるスタンドの攻防でボドニがスナップダウンを仕掛ける。右腕を差したジェイ・ロッドだが切り返され、アームドラッグを狙われ藩王する。体格で明らかに上回るボドニはアームドラッグ&足払いでバックに回ると、背中に飛び乗ってワンフックでグラウンドに持ち込む。

残り時間は13分30秒のあり、ボドニは急ぐ必要なくゆっくりと攻め、ジェイ・ロッドが腰をずらそうとすると両足をフックさせボディトライアングルから右腕で絞めに掛かる。腕を組み変えつつ絞めを圧を高めるボドニに対し、厳しい展開のジェイ・ロッドは手首を掴んで必死に耐える。

ボドニは顎の上からフェースロック気味にRNCを狙い、強烈な四の字フックで背中を捻るような力強さを見せる。我慢の時間が続くジェイ・ロッド、ボドニは時間切れは判定があるために無理に攻めることはない。8分間、バッググラブに捕えられたジェイ・ロッドだが、体を左に向けボドニがついてくると反転、腰を押してエビでついにガードに戻ることに成功する。

バタフライがーどのジェイ・ロッドは、Zハーフからバギーチョークへ。ボドニが立ち上がって防ぎに掛かると、ジェイ・ロッドは着地して打部売レッグで立ち上がる。ギロチンで下になったボドニだが、ジェイ・ロッドは頭を抜いてパスを狙う。

残り5分、ジャッジがボドニを支持しているアナウンスがあり、直後にガードのボドニがキムラから腕十字に移行する。腕を抜いたジェイ・ロッドはここからパスを圧を高め、足関節にも対応して上四方がダースを仕掛ける。

グリップしきれず、ガードの中に入ったジェイ・ロッドはバタフライガードも一気にボディロックパスを決めてサイドへ。足を戻したボドニはニーシールドでスペースを創り、ジェイ・ロッドが離れると、一気に立ち上がる。ジェイ・ロッドは引き込みに合わせて、スクランブルからバックに回ろうとする。

ここは前方に落とされ、再度バギーチョーク狙いへ。極まらずガードを取ったジェイ・ロッドが、50/50、さらにニーシールドから立ち上がりダブルレッグへ。引き込むように下になったボドニはパス狙いに背中を見せる。ジェイ・ロッドは足をフックしつつ、アゴの上からRNCへ。さすがに強引で極めきれない──。残り45秒、四の字フックに取ったジェイ・ロッドが肩固めを伺い、腕を取って懸命に動こうとする。こうなると防御一辺倒で構わないボドニが、時間切れまで守り切り3-0の判定勝ちとなった。

レスリングと柔術の融合、簡単に下にならず、下での防御力に優れた両者。これぞ、今のグラップリング=レスリング&柔術という戦いだった。


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