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【ONE FN20】女子キック新時代。ペッディージャーがメクセンに続いてトッドも下してキック王座統一

<ONEキックボクシング世界女子アトム級王座統一戦/3分5R>
[暫定王者] ペッディージャー・ルクジャオポーロントン(タイ)
Def.3-0
[正規王者] ジャネット・トッド(米国)

トッドがジャブを見せてインロー。ペッディージャーもジャブと左右のローを見せ、ワンツー。トッドもすぐに右ストレートを返す。ペッディージャーはトッドのジャブに右をかぶせ、右ミドルで前に出る。トッドがジャブから右、ペッディージャーも右を合わせる。ペッディージャーが細かい出入りでパンチをまとめれば、トッドはそれを迎え撃つようにワンツー。互いにミドルも蹴り合い、ハイレベルな打撃戦が繰り広げられた。

2R、ミドルの蹴り合いから、ペッディージャーが右ミドルとヒザ蹴りで前に出ていく。トッドもジャブ・右ストレートで止めようとするが、ペッディージャーが圧力を強めて左右のフックをまとめる。トッドはジャブと右ミドル、ペッディージャーもすぐに右ミドルを蹴り返す。ペッディージャーが右ストレートから左ハイ、トッドもローを蹴り返して譲らない。

3R、ペッディージャーが左の前蹴り、そこから前に出て右ストレートと右ミドル、左ミドルと手数を増やす。距離が詰まるとペッディージャーはパンチをまとめてヒザ蹴り。トッドもパンチとヒザ蹴りを返すが、ペッディージャーの攻撃の回転力が勝る。トッドのジャブにペッディージャーが右をかぶせると、トッドがバランスを崩すがスリップ。ペッディージャーが右ミドル、トッドはそこにインローを合わせる。ペッディージャーは左の前蹴りを起点に、前に出ながらヒザ蹴り、左フック、右ストレートとヒザ蹴り。終盤は右ストレートを立て続けにヒットさせた。

4R、トッドは左フックから右ストレート。ペッディージャーも右ストレートから左右のミドル、距離を潰してヒザ蹴りにつなげる。トッドが右ストレートを出すと、ペッディージャーも右ストレートを合わせ、パンチからヒザ蹴り、左ボディから顔面への右フック。トッドもパンチの打ち合いでは左フック、ワンツーを狙う。ペッディージャーは前蹴りと左ボディ、左ミドル、そして右ストレートでトッドの動きを止める。

5R、ペッディージャーが左ミドルから右ストレート、左の前蹴りからパンチとヒザ蹴りにつなげ、右ミドルを連打する。トッドもペッディージャーの攻撃にパンチを返すが、ペッディージャーはしっかり距離をとって追撃させない。攻防の終わりには必ずミドルを蹴って、ガードを上げてヒザ蹴りを返すペッディージャー。そしてトッドがローを空振りしたところに、ペッディージャーが右ストレートを合わせてダウンを奪う。トッドも最後までパンチとヒザ蹴りで前に出るが、ペッディージャーが逃げ切る。

判定はペッディージャーが勝利。前回12月にアニッサ・メクセン、そして今回トッドを下してのキック王座統一で、まさに女子キック世界最強の座についた。試合後、ペッティージャーは「ジャネット・トッドは凄く優れたファイターなので、プレッシャーを感じていた。でも、今、開放されたわ。ハイキックとローキックを使う、シンプルな作戦だった。国際女性デーで戦えて、勝ったことを誇りに思う。ムエタイのベルトが欲しい。キックのベルトを防衛しつつ、本当に本当にムエタイのベルトを巻きたい」とコメント。

一方、この試合を最後にリングを去るトッドは「ここが最後のチャレンジとなって、凄く感動している。彼女は凄く若くて、このステージであの戦いができる。その戦いに、参加出来て嬉しかった。(家族のことを聞かれ)、ありがとう。家族、友達の皆が私のジャーニーを支えてくれた。私の素晴らしい経験が、他の人たちがインスパイアしてくれる事を願っている。とONEはホーム。本当に感謝している。チャトリ、ONEという素晴らしい場所に加えてくれて、ほんとうにありがとう」と感謝の言葉を述べた。


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【ONE FN20】澤田千優戦へ、ジヒン・ラズワン「アトム級より下の階級があれば彼女にとっては最高だった」

【写真】フェアテックスのロゴがまぶしい?ジヒン・ラズワン(C)ONE

本日9日(土・現地時間)、タイのバンコクにあるルンピニー・スタジアムで開催されるONE Fight Night20「Todd vs Phetjeeja」で、ジヒン・ラズワンが澤田千優と対戦する。
Text by Manabu Takashima

レスリングベース、修斗でチャンピオンになったアスリート=澤田に対し、ラズワンは動物病院で働く普通の女の子という印象が強い選手だった。そのラズワン、今年の1月からフェアテックスジムの所属となりパタヤに生活をしている。

家族から離れ、フルタイムMMAファイターとしての生き方を選択したラズワン。それこそが、彼女がやりたいことをして生きるという選択だった。


――今週末、日本からのニューカマー澤田千優選手と戦います。今の気持ちを教えてください。

「良い感じよ。そしてチヒロにはONEでのデビュー、おめでとうと伝えたい。土曜日の朝に彼女と最高の試合をしたいと思っている」

──今回はバンコクでの試合となります。ジョホールバルからだとシンガポールは隣町のような感じだと思うのですが、バンコクで戦うことをどのように思っていますか。

「私は1月からタイのパタヤに住んでいるの」

──つまりフェアテックスジムで練習をしているということですか。

「イエス。だからバンコクは凄く近くて、移動も簡単よ」

──なぜ、タイガームエタイでトレーニングをするようになったのですか。

「去年の3月にフェアテックスのプレム・フェアテックスからスタンプのトレーニングパートナーを務めて欲しいという依頼があって、5月のアリス・アンダーソン戦までパタヤで練習をしていたの。その後はマレーシアに戻っていたけど、プレムから再び連絡があって、もっと長い期間トレーニングをすることになって。その間にフェアテックスと複数年契約をサインしたの。凄く良い機会だと思って、パタヤに移り住むことにしたわ」

──去年の3月といえば、ジヒンはスタンプに敗れてから半年後です。リベンジしたいと思っていたかと思うのですが、練習パートナーの要請を受けることに躊躇することはなかったですか。

「私はリベンジをしたいという想いを持ったことはないわ。再戦したいと思っていてもね。とにかくワールドチャンピオンを含めて、多くのすぐれたトレーニングパートナーがいる場所で練習をできることがとても魅力的に感じて。それにフェアテックスには4、5人の女子MMAファイターが常に練習している。ジョホールバルでは女子選手と練習をすることがなくて、凄く良い経験になったの」

──フェアテックスで練習するようになり、何が一番変わりましたか。

「練習環境は全く変わったわ。故郷にいる時は、お昼は動物病院で働いていたから夜の6時から10時半ぐらいまで練習する日々だった。でもフェアテックスでは朝起きてランニングをし、それからミット打ち。少し休んで、お昼のクラスと夕方のクラスと1日に3度練習できるようになった」

──フルタイムのファイターになったということですね。

「本当に新しい体験で。仕事のことを考えなくて、練習に集中できることが本当に新鮮なの。練習は厳しくなったから、そこはスマートになる必要があって。調子が落ちているなと思ったら、体のメンテをしないとケガをしてしまうし。ただ、休める時に休むというのも、仕事をしている時はできなかったことだから。仕事をして疲れるのと、練習して疲れるのは別モノで。仕事中は体こそ疲れないけど、ストレスが溜まって精神的に疲れていたわ。今はトレーニングでヘトヘトになっても、爽快な気持ちね」

──ところでパタヤで格闘技に集中するという話をした時、ご両親はどのような反応でしたか。

「私の決心には驚いていたわ。ずっと一緒に住んでいたし、家から出たことがなかったから。でもフェアテックスの環境、そして仲間のことを知ると安心してくれたわ」

──親というものは子供達に夢を叶えて欲しい一方で、安定した生活を望むものですしね。

「両親には、私の夢の旅路をサポートしてくれて本当に感謝している」

──1月からフェアテックスの所属になったということは、フルタイムファイターとなって、今回が最初の試合ですね。

「去年の9月のジェネリン・オルシム戦前もフェアテックスで練習をしていたけど、長い休暇を取ってパタヤに行っていたから。ただ事実上フルタイムで練習はできていたから、今回が2試合目とも言ってもおかしくないわ」

──フェアテックスで練習するようになって、どこが一番伸びましたか。

「もちろん、打撃ね。フェアテックスでムエタイの練習をするようになって、打撃にキレが出てきた。同時にグラップリングでも最高のコーチと練習仲間に恵まれているから、組み技も凄く進化しているわ」

──そういうなかで戦う澤田選手ですが、印象を教えてくれますか。

「グッドファイターでレスリングが強い。そして、小さいわね。でも、どんな相手と戦ってもそうだけど、彼女が小さいからといって軽視することは絶対にない。レコードは6勝0敗だし、本当にレスリングを生かした戦いができている選手だから。

もちろん、アトム級より下の階級があれば彼女にとっては最高だったと思う。ただ、ないのだからしょうがないし、結局のところただ戦うしかないの」

──ところでチャンピオンが、チームメイトというのはどのような心境になるモノなのですか。

「世界チャンピオンと練習ができるなんて最高の経験になっているわ。ただONEが私たちの世界戦を組むのであれば、そこはプロとして戦うべきだし。それこそが、完璧なビジネスだから」

──なるほど、です。最高の練習環境を得た今、負けることができないというプレッシャーは?

「最初に言ったように私がフェアテックスに行くことを決めたのは、良い機会だったから。何が良い機会かといえば、自分がやりたいことができるということ。自分が思うように生きる──それが、何よりも大切なことでしょ」

──では土曜日の朝、どのような試合がしたいですか。

「今回は国際女子デーのラインナップに名前を並べることができると同時に、6年前の3月9日に私はONEデビュー戦を戦っていて。個人的な記念日なの。日本の皆は、国籍に関係なく選手をサポートしてくれる。そして日本には凄く強いファンベースがあるから、皆の期待に応えたい。私もチヒロもベストを尽くして、最高の試合を皆に届けたい」

■放送予定
3月9日(土・日本時間)
午前9時45分~U-NEXT

■ ONE FN20対戦カード

<ONEキックボクシング世界女子アトム級王座統一戦/3分5R>
[正規王者] ジャネット・トッド(米国)
[暫定王者] ペッディージャー・ルクジャオポーロントン(タイ)

<ONEムエタイ世界女子アトム級選手権試合/3分5R>
アリシア・エレン・ホドリゲス(ブラジル)
クリスティーナ・モラレス(スペイン)

<ムエタイ130ポンド契約/3分3R>
ジャッキー・ブンタン(米国)
マルティニ・ミケレット(イタリア))

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
ジヒン・ラズワン(マレーシア)
澤田千優(日本)

<ムエタイ・ストロー級/3分3R>
エカテリーナ・ヴァンダリーバ(ベラルーシ)
マルティナ・キエルチェンスカ(ポーランド)

<ムエタイ・アトム級/3分3R>
ララ・フェルナンデス(スペイン)
ユウ・ユウペイ(香港)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
ヴィクトリア・ソウザ(ブラジル)
ノエル・グホンジョン(フランス)

<サブミッショングラップリング女子アトム級(※52.2キロ)/10分1R>
マイッサ・バストス(ブラジル)
山田海南江(日本)

<ムエタイ・アトム級/10分1R>
シール・コーエン(イスラエル)
テオドラ・キルオバ(ブルガリア)

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【ONE FN20】正真正銘、絶対的世界一=マイッサと対戦、山田海南江「誰かのせいにはしたくない」

【写真】ゴミゴミした中心部と違い、スッキリしたラートプラーオ。5月のADCCアジア&オセアニア予選はバンコク郊外のランシットで行われるため、この空気を知っておくことも貴重な経験になるはず(C)MMAPLANET

9日(土・現地時間)、タイのバンコクにあるルンピニー・スタジアムで開催されるONE Fight Night20「Todd vs Phetjeeja」で、山田海南江がマイサ・バストスと対戦する。8日のInternational Women’s Dayに合わせたタイミングで実施されるオール女子大会で、唯一組まれたサブミッショングラップリング戦で、世界最高峰と戦う山田。
Text by Shojiro KameikeText by Shojiro Kameike

黒帯ルーキーに、突然ビッグチャンスが舞い込んだ。ムンジアル4連覇中のマイッサ・バストスとONEサブミッショングラップリング戦で対決する。ムンジアルはもちろんパン選手権、ヨーロピアン、アジア選手権やブラジレイロ優勝など、マイッサの国際大会の実績を挙げればキリがない。そんなマイッサとの対戦を控えた山田は、リモート画面の向こうで喜びを露わにした。ONEのリングで、世界一の柔術家が待っているから。


――山田選手にとって、海外のプロ興行に出場するのは今回が初めてなのですか。

「初めてです。現地での公式スケジュールが凄いですね。拘束時間も長いから『皆はどのタイミングで練習するんだろう?』って。今までレスリングや柔術だと、直前に近いぐらいの日まで調整してから試合に臨んでいたんですよ。でもONEの公式スケジュールを見ると、写真撮影やインタビューなどもあって……その状況に慣れていなさすぎて、どうしようかと思っています(笑)」

――昨年11月に出場したADCCアジア&オセアニア予選も、そういった公式スケジュールはなかったわけですよね。

「はい。あの時は自分たちで現地の練習場所を見つけて、試合前にMMAPLANETさんがインタビューしてくださった以外は、特に予定もなかったです。アハハハ。逆にONEはホテルと、体を動かす場所を用意してくれているのは安心でした。問題は体を動かすタイミングですね。でもその場所を使って体を動かしている選手も多くなくて」

――MMAの場合は大幅な減量をしている選手もいますし、特にONEはハイドレーションテストもあるので試合直前の調整方法も異なってくると思います。

「ハイドレーションテスト! それが一番の心配です。自分は今回、減量幅も少ないので問題はないとは思いますが……。日本で三浦彩佳選手にハイドレーションテストのことを聞いて、いろいろ勉強してきました」

――何もかも手探りで、調べながらのONE初戦なのですね。

「昨日の夜(※取材は6日に行われた)タイに着いて、そこからの公式スケジュールは先に届いていたんですよ。でも英語だし、私個人のスケジュールではなく全体のスケジュールで。その中から私が関わるものを自分で探すという感じでした。どう動けば良いのか、分からないことが多いです」

――聞いているだけで大変な状況であることは分かりますが、それでも山田選手が楽しそうにしているのが印象的です。

「アハハハ。試合が楽しみです。あのマイッサ・バストスと対戦することができるなんて」

――今回のバストス戦が発表されたのは3月に入ってからでした。かなり急なオファーだったのではないですか。

「お話があったのは2週間前ぐらいかなぁ……。すぐOKって返答しました。でもビザの申請とかあって、正式発表も遅くなったんだとは思います。私としては本当にマイッサ・バストスと試合できるのが嬉しくて(笑)」

――その言葉が決して嘘ではないと思えるほど、笑顔に満ち溢れています。

「そうなんですよ。マイッサって今年1月、柔術グランドスラム東京大会に出て優勝していたじゃないですか(女子茶黒ルースター級で優勝)。私もあの大会に出る予定だったんです。でも年末に怪我をしたために出場をキャンセルしたら、その後にマイッサが飛び込みでエントリーしていて。『うわぁ~』って思いました。

私も今年に入って黒帯になったので、もうIBJJFの世界大会はポイントがないと出場することができないんです。そんななかでマイッサと、しかも日本で戦えるチャンスなんて今回しかなかったのに――と。グランドスラムの大会当日は、会場の上のほうからずっとマイッサの試合を眺めていました。『マイッサと対戦できる選手、良いなぁ』って(笑)」

――確かにギ、ノーギを問わずマイッサの試合は自然と魅入ってしまうものがあることは分かります。

「あの強さは何でしょうね……。2019年に初めてムンジアルで優勝してから、ずっと勝ち続けているじゃないですか。ムンジアルのあとに主要な大会で負けたのは、2021年のパン選手権と今年のヨーロピアンぐらいで。その間ずっと強さが安定していて、つけこむ隙がないんですよ」

――ムンジアル4連覇をはじめ、ギでもノーギでも国際大会で勝ち続けている。分かりやすいところでいえば柔道の谷亮子さん、レスリングの吉田沙保里さんや伊調馨さんのような実績ですよね。

「そう! 本当にそうなんですよ。だから今回の試合も、まずONEとしてはマイッサに出場してもらいたかった。その相手を探して私にオファーが来たって捉えています。そういう扱いに対して思うところはあるというか。ONEとしてはマイッサが勝って、いずれダニエル・ケリーと対戦させたい――というようなプランもあると思うんですよ。でも私は、そんなことを気にしていなくて。何より私自身がマイッサと対戦したかったです。

もちろん『マイッサの相手』という扱いじゃなくて、いずれ私という選手にオファーが来るような試合を見せたいです。今回だけでなく世界を目指すために、それだけの強さを身につけていかないといけないですし」

――なるほど。今回はノーギでの試合となります。ギとノーギで試合の印象も異なりますか。

「ギのほうがベリンボロとかの固定力は強いと思うんですよ。掴むところがあるので。もちろんノーギでも強いけど、私としてはノーギのほうが対策もできると思っています。今回の試合でも凄い技数で攻めてくるでしょうし、その対策を講じながら自分の得意なところに持って行く。私としては、その試合展開しかないと考えています。マイッサとの試合のなかで、私にチャンスが巡ってくることは少ない。その少ないチャンスにつけ入るしかないですね」

――マイッサもギよりノーギのほうが展開も速いし、何よりサブミッションを狙い続けています。ONEサブミッショングラップリングでも強いタイプなのだろうとは思いますが、それだけ展開が速い相手のほうが手は合うのではないでしょうか。

「そういうタイプのほうがやりやすいです。これまでも強い選手と対戦したほうが、私のレベルも上がるというか――私自身、試合が楽しくなるんですよ。強い相手との試合だと、自分が持っている以上のものを出せるみたいで。

去年11月のADCCでは、決勝でアデーレ・フォーナリオには負けてしまいました。でも試合写真や映像を視ると、よほど試合が楽しかったんでしょうね。ずっと笑っていて……私ってヤバいヤツなんじゃないかと思いました(笑)」

――それはファイターにとって素晴らしい素質であり、才能だと思います。ADCC直後の前澤智戦も楽しかったのではないですか。

「楽しかったです! 自分では分かっていなかったんですけど、入場の時から笑っていて。会場へ応援に来てくださっていた方からは、『後ろの席から、あの子笑っているよ……っていう声が聞こえた』と言われました。まぁ、変な人間ですよね」

――いえいえ。ADCCや前澤戦と同じく、あるいはその時以上に楽しそうな山田選手を見て、マイッサ戦にも期待することができるのは確かです。

「ありがとうございます。もともと試合に対して不安や恐怖とかって無いタイプなんですよ。もしかしたら、気づいていないだけで不安や恐怖は感じているかもしれません。でもそれ以上に、『ここまでやってきたから大丈夫だ』って納得できるほど取り組んでいるので。

私の中では、去年のムンジアルで負けたことが一番大きいです。茶帯の2回戦で逆転負けを喫してしまって……『私はこのままで良いんだろうか?』と思いました」

――……。

「紫帯で3位になった時は、『今までのやり方を続けていけば大丈夫だろう』という確信があったんです。でも、そう思ったやり方を1年間続けた結果、茶帯で負けてしまって。『何が悪かったんだろう? このままじゃいけない』と考え始めたんですね。『これは海外で練習したら解決するものだろうか』とか、いろんな気持ちが生まれていました。

それで去年の秋から、自分の練習については自分自身で考えるようにしたんですよ。それまではパーソナルで指導してもらったりしていて。もちろん自分の負けを、教えてくださっていた人たちのせいにすることはないです。ただ自分自身で考えたほうが、試合で勝っても負けても納得できるんじゃないかと思ったんですね」

――誰かのせいにはしたくない。でも、このままだと誰かのせいにしてしまうかもしれないし、そんな自分が許せないという気持ちもあったのではないですか。

「……そうかもしれないです。今までもそうだし、今後もし負けた試合でも誰かのせいにはしたくない。自分で決めた目標だから、自分の気持ちも曲げたくはないですからね。まさか黒帯デビュー戦の相手が世界一のマイッサだとは思わなかったけど(笑)」

――それこそ初めてのオリンピックで、1回戦で吉田沙保里さんや伊調馨さんと戦うような。

「本当にそんな感じです(笑)。もう最高ですよ。今、私に良い風が吹いているんじゃないかって思います。マイッサには――もちろん今のままではギだと歯が立たないし、ノーギでも怪しいですよ。自分の100パーセントを出しても勝てない。それこそ120パーセントまで自分を引き上げないと勝てないです。だからこそ試合が決まった瞬間、どうやって120パーセントを引き上げるかって考えるのが楽しくて」

――そうして強くなる、強くなろうとする瞬間が楽しいわけですね。まさに根っからのファイターです。

「正直『これからはSNSも活用して自分のことをもっとアピールしていかないといけない』とは思っています。強いことはもちろんだけど、強い選手は世界にたくさんいますからね。その中から、どうやって自分が試合に呼ばれるようになるかっていうことも考えるんですよ。でも自分の中では強くなりたい……強くなることが一番で。

今年はADCC世界大会と、IBJJFノーギワールドにも出たいです。ノーギワールドもポイントが関わってきますけど――さっき言ったとおり、ここでマイッサ戦が決まるのは私に良い風が吹いてきているとは思います。でもそのチャンスを掴むためは、強くなるしかないから。格闘技をやる限り、その気持ちは絶対に変わりません」

■放送予定
3月9日(土・日本時間)
午前9時45分~U-NEXT


■ ONE FN20対戦カード

<ONEキックボクシング世界女子アトム級王座統一戦/3分5R>
[正規王者] ジャネット・トッド(米国)
[暫定王者] ペッディージャー・ルクジャオポーロントン(タイ)

<ONEムエタイ世界女子アトム級選手権試合/3分5R>
アリシア・エレン・ホドリゲス(ブラジル)
クリスティーナ・モラレス(スペイン)

<ムエタイ130ポンド契約/3分3R>
ジャッキー・ブンタン(米国)
マルティニ・ミケレット(イタリア))

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
ジヒン・ラズワン(マレーシア)
澤田千優(日本)

<ムエタイ・ストロー級/3分3R>
エカテリーナ・ヴァンダリーバ(ベラルーシ)
マルティナ・キエルチェンスカ(ポーランド)

<ムエタイ・アトム級/3分3R>
ララ・フェルナンデス(スペイン)
ユウ・ユウペイ(香港)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
ヴィクトリア・ソウザ(ブラジル)
ノエル・グホンジョン(フランス)

<サブミッショングラップリング女子アトム級(※52.2キロ)/10分1R>
マイッサ・バストス(ブラジル)
山田海南江(日本)

<ムエタイ・アトム級/10分1R>
シール・コーエン(イスラエル)
テオドラ・キルオバ(ブルガリア)

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【ONE FN20】ペッディージャーとのラストファイトへ、ジャネット・トッド「最後はチャレンジで終わりたい」

9日(土・現地時間)、タイのバンコクにあるルンピニー・スタジアムで開催されるONE Fight Night20で、ONEキックボクシング女子世界アトム級王者ジャネット・トッドが同暫定王者ペッディージャー・ルクジャオポーロントンとの統一戦に臨む。
Text by Takumi Nakamura

2020年2月にスタンプ・フェアテックスに勝利してキックルール、2022年7月にララ・フェルナンデスに勝利してムエタイルールのベルトを巻いたトッド。昨年3月にアリシア・ヘレン・ロドリゲスに敗れてムエタイ王者のベルトを明け渡す形となったが、今大会ではペッディージャーとの統一戦を迎えた。

アニッサ・メクセンを下して世界最強とも目されるペッディージャー戦を前に、トッドは「これを最後の試合にしようと思っている」と明かした。ONE、そして女子の立ち技を牽引してきたトッドのラストファイトに向けたインタビューをお届けしたい。

――トッド選手にとっては約1年ぶりの試合となりました。この1年間はどのように過ごしていたのですか。

「試合間隔が1年空いちゃったけど、毎日トレーニングは続けてきた。それが完璧というわけではないけれど、自分が成長するための練習をやってきたと思う」

――一昨年は新型コロナウィルスの影響で試合そのものがキャンセル&延期になったこともありましたが、あのときはどんな心境だったのですか。

「COVID(コロナ)の前は年間5回ぐらい試合していたのに、COVIDの後は年1~2試合になってしまって。もちろんたくさん試合はしたかったけれど、それが出来ない状況なのは分かっていたし、それに慣れちゃったわ(笑)。試合は出来なかったけど、自分が強くなるための練習ができたし、以前よりもいいファイターになれていると思う」

――自分を成長させるための練習をしてきたということですしたが、トッド選手もキャリアが長くなってきて、具体的にどんなことに重点を置いて練習してきたのですか。

「またキックボクシングルールの試合をやることが分かっていたから、この1年間はボクシングだったり、ムエタイよりもハイペースなパンチとキックを練習してきたわ。あとキックルールはヒジとクリンチがないからトレーニング内容もそれに少し変えている」

――トッド選手はONEでもキックルールとムエタイルールをどちらも戦っています。例えば日本人はどちらかのルールは得意で、どちらかのルールは不得意という選手も多いですが、トッド選手はなぜ両ルールで結果を出すことができたのですか。

「確かにキックとムエタイは違うもの。なんだけど似ているところもあるから、そこを理解することが大事で、私はそこを理解してうえでルールに合わせて戦うことができる」

――特にONEの場合はムエタイルールがMMAグローブですが、その難しさはなかったですか。

「グローブの違いは大きいね。キックルールはボクシンググローブだからブロッキングで顔をカバーすれば大丈夫だけど、MMAグローブはブロッキングしても殴られてしまう。ディフェンスのやり方が変わることが一番の違いだと思う」

――逆にMMAグローブのムエタイルールをやったことで、キックボクシングルールにプラスになったことはありますか。

「ムエタイルールの方がよりディフェンスを意識してやっていたから、キックボクシングをやるときも、ムエタイのディフェンスをしっかりやるという部分が活きてくるんじゃないかな」

――また武尊選手がトッド選手も所属するBoxing Worksで練習しているそうですね。

「タケル!私とはトレーニングの時間がずれていたから一緒に練習することはなかったけれど、私のトレーニングパートナーとは一緒に練習していて、何度かジムで一緒になったことはあるわ」

――さて今大会では暫定王者のペッディージャーと王座統一戦で対戦します。ペッティージャーにはどんな印象を持っていますか。

「すごくボクシングが強いので、自分にとっていいチャレンジになると思う」

――ペッディージャーは昨年12月にアニッサ・メクサンに勝利しています。個人的にまだペッディージャーはメクセンに勝てないだろうと思っていたのですが、トッド選手はあの試合を見てどんな感想を持ちましたか。

「ペッディージャーの方が接近戦で自分の距離を作っていたと思う。だからアニッサが自分の距離で戦おうとしても、それが出来なかった。あの試合は常にペッディージャーが自分にとっていい距離で戦って、力のある攻撃を入れることができたと思う」

――恐らく今回もペッディージャーは前に出て距離を詰めてくると思います。それに対する戦い方は準備していますか。

「もちろん接近戦になることを想定して、しっかり練習してきている。もし接近戦になっても自分の攻撃を効かせる試合ができると思う。私は試合をちゃんとイメージして、相手の弱点と自分が強みをしっかり頭に入れて戦う。その準備はできているわ」

――今回はキックルールの統一戦でしたが、これをクリアしたらもう一度ムエタイルールのベルトを獲りにいきたいという想いはありますか。

「いや………私はこれを最後の試合にしようと思っているの」

――そうなのですか!

「これはもう何カ月も考えていたことで、私は今38歳で新しい家族が欲しいと思ったら、これ以上、試合を続けることは難しいと思った。
だから最後の試合で、自分の最高のパフォーマンス、そして最高の姿をみんなに見せたいと思う」

――例えばONEのアメリカでの大会も予定されていて、そこまで待って区切りをつけることは考えなかったのですか。

「アメリカでも試合をしたかったけど…試合がマッチできなかったわけだから仕方ない。それにアメリカで試合をしたい、マッチできないを繰り返していたら、区切りをつけられなくなるから、今回の試合を最後にしたいと思っている」

――これからまたトッド選手の試合を見られると思っていたので驚きました…。ペッティージャーはおそらく今世界一強い選手だと思うのですが、そういう相手と戦って現役生活にピリオドを打ちたいという気持ちはあったのですか。

「それはあります。最後は大きなチャレンジで終わりたいから。しかもそんなファイトを国際女性デーに開催される女性だけの大会で出来ることは本当にうれしい」

――それこそトッド選手のようなファイターがいて、ONEで戦ったからこそ、そういった大会が開催できることになったと思いますし、女子の立ち技格闘技が世界的にクローズアップされたと思います。

「そう言ってくれてありがとう。私も今までずっとやりたいことをやってきたし、この試合をやることで自分の中でも達成感を持てると思う。素晴らしいファイトを見せて、これから次の人生のことを考えていくわ」

――それではトッド選手のラストファイトを見るファンのみなさんにメッセージをいただけますか。

「ずっと私の長い旅を見てきてくれた皆さんに『ありがとう』と言わせてください。私は最後までベストを尽くして戦うので、しっかり見届けてください」

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