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【SOGI】岩本健汰がメインで、キース・クリコリアンを相手にSOGIウェルター級王座防衛戦!!

【写真】今や岩本、アンドリュー・タケット、ジョセフ・チェン絡みのグラップリングは、どれも超楽しみでならない (C)MMAPLANET

6日(土・現地時間)、ニューヨーク州ホーポージにある10th Planet ロングアイランド道場にて、SOGI(Submission Only Grappling Invitational)主催の「Cinco de Mayo: Iwamoto vs Krikorian」 が行われる。
Text by Isamu Horiuchi

イベント名にあるように、この大会のメインには岩本健汰が出場し、強豪キース・クリコリアン相手に自身の保持する同団体ウェルター級タイトルの防衛戦を行う。グラップリングの本場北米の大会において、日本人選手の試合がメインイベントとしてフィーチャーされるのは、2013年6月9日に行われたMetamrois02のクロン・グレイシー✖青木真也以来、実に9年11カ月振りの快挙。

さらにイベント名に日本人選手の名前が入るのは前例にないことだ。誇張抜きに、日本グラップリング界における歴史的快挙と呼べるこの試合の見所を紹介したい。


SOGIは、2019年から10th Planet ロングアイランド支部が母体となって開催されているグラップリングイベント。一流選手を招待した階級別の王座決定トーナメントやスーパーファイト、一般の参加者向けの初心者や中級者の部の試合も行っている。10th Planet支部だけあり、ルールは当然総帥エディ・ブラボーが発案したEBIルール(本戦はサブミッション・オンリーで、決着がつかない場合はオーバータイム=OT)が採用され、本戦の試合時間は10分だ。

ちなみに今回の大会名のCinco de Mayoとはスペイン語で5月5日を意味し、1862年にメキシコ軍が侵略を試みたフランス軍を撃退したことを祝う日だが、メキシコ本国よりも米国在住のメキシカンの間で重視されているようだ。もっともこの大会が行われるのは現地の5月6日であり、このようなアバウトな大会名の付け方も面白い。

さて、岩本は昨年のADCC世界大会77キロ以下級に出場。2連覇中の優勝候補筆頭だったJT・トレスと初戦で当たり、延長レフェリー判定で敗れたものの、シングルレッグで最初にテイクダウンを奪ったことでその存在を世界に知らしめたのは記憶に新しいところだ。

この大健闘から3ヶ月後の12月、岩本はSOGI主催の大会のウェルター級16人トーナメントに出場。他に有名選手がいなかったこともあり、4試合ともトップゲームで圧倒的な強さを見せて優勝を飾った。初戦と決勝戦は相手に粘られてOTに持ちこまれたものの、どちらもまず相手の攻撃からエスケープを果たした後、自分の攻撃のターンでバックからのチョークを決めて勝利し、SOGI同級王座に就いた。単身本場で戦い、自らの腕一つで名を為す。まさに唯一無二の日本人ノーギグラップラーが岩本健汰だ。

相手のクリコリアンは、ブギーマンことリッチー・マルティネスが率いる10th Planet サンディエゴ所属の軽量級トップグラップラー。昨年のADCC世界大会に向けた東海岸予選では、66キロ以下級準決勝でジアニ・グリッポにチョークで一本勝ちを収める等6試合を勝ち抜くも、決勝でコール・アバテに0-10で敗戦。

続く西海岸予選では、決勝でジョシュ・シスネロスを内ヒールで仕留めて7試合を勝ち抜いて世界大会出場を決めた。世界大会では、3位入賞したパトことディエゴ・オリヴェイラにストレートレッグロックを極められて初戦敗退としている。

そのクリコリアンは、今年3月のSOGI大会にて12月に岩本と決勝で戦ったアンドリュー・ソラノとワンマッチで対戦。引き込んで得意のニーシールドを作ると、下から足を取って崩し、3分少々でバックからのチョークを極めてみせて今大会における岩本への挑戦権を得た。

大会メインイベントに相応しい、世界レベルのグラップラー同士の好カードとなったこの試合。両者とも全局面で優れた技術を持つ万能型選手だが、戦い方は少し異なる。かつて岩本は下からの足関節狙いを主体に試合を組み立てていたが、現在は上からの攻撃を重視する。

日本でMMA選手たちと練習して強化したテイクダウンに加え、テキサス州のBチームにてトップゲームの最新技術をアップデート。上から左右に角度を付けて動き、重いプレッシャーをかけ続けて相手の足を疲弊させ、最終的に上半身を制する術に磨きをかけた。こうして相手を制圧する戦いが、現在の岩本の形だろう。

対するクリコリアンも、もともとレスリング出身だけあって立ちの攻防を恐れず挑む選手。スナップダウンやアームドラッグ、シングルを積極的に狙う場面もしばしばだ。が、引き込みがマイナスにならない状況では自ら下になり、ニーシールド等から積極的に相手の足を狙ってゆくことが多い。前述のADCC西海岸予選でも、7勝のうち3勝は内ヒールによるものだ。

体格に勝る岩本からテイクダウンを奪うのが難しいと見た場合、クリコリアンの方から引き込んでくる可能性は大いにある。その時には、岩本がそのトップゲームをもってクリコリアンのガードワーク、あるいはシールド&フレームを突破できるかが最大の見所となる。

ここで特筆すべきは、ADCC西海岸予選準決勝における、クリコリアン対デミアン・アンダーソンの試合内容だ。岩本が学んだBチームの主要メンバーの一人であるアンダーソン相手に引き込んで足を効かせたクリコリアンは、左右に動いて足を捌きにかかるアンダーソンにパスを許さず、下から足を絡めて得意の足関節で攻撃、最後には崩し切って迅速のバックテイクを決めて快勝したのだ。

果たして岩本は、最先端のパスガードの使い手をも凌駕するクリコリアンの足を捌き切り、制圧することはできるのか。もし今回、クリコリアンを完全に押さえ込むかバックを制する場面が見られたならば、それは岩本が世界の頂点にさらに近づく大いなる一歩と考えていいだろう。

その上さらに岩本が本戦で一本を奪うようなことがあれば、階級差こそあれ快挙と言える。ノーギの本戦10分間にて、世界トップグラップラーを極めるのは至難の業だからだ。逆の言い方をすれば、万能型ハイレベルグラップラー同士によるこの試合、どちらが優勢に進めようが試合がOTにもつれ込む可能性は大いにある。

もしそうなれば、昨年11月にSOS(サブミッション・オンリー・シリーズ)のミドル級トーナメント出場した際に、決勝で自分より遥かに体格で勝る相手を本戦で圧倒しながら極めきれずにOTで敗れた岩本より、おそらく常日頃からOTの研究をし、現にエステヴァン・マルティネスのような強豪にOTで勝利したこともあるクリコリアンの方が有利という見方もできる。

そう考えると今回の岩本には、OTを避けるためどこかで普段の自分のスタイルを崩し、極めを狙いにゆくという選択もあるのかもしれない。以前足関節師として鳴らしていただけに、それを試みるスキルも十分に持っている。

本人がどのような戦い方を選ぶにせよ、岩本にとってこの試合は昨年のADCC本戦のJT戦、昨年末のノーギ・ワールズと今年2月のUnrivaled02におけるタケット兄弟戦に続き、世界レベルのノーギグラップラーと真っ向勝負する貴重な機会となる。

グラップリング未発展の日本を拠点に、道無き道を一人行く勇敢な若者がさらにステップアップするための大きな糧となることを祈りつつ、この試合を見届けたい。

■視聴方法(予定)
5月7日(日・日本時間)
午前7時00~FLO GRAPPLING

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BELLATOR ECI06 MMA MMAPLANET o ONE YouTube エステヴァン・マルチネス キャメロン・メロット コール・アバテ ジオゴ・ヘイス ダナ・ホワイト デイヴィッド・テラオ ベラトール マイキー・ムスメシ マニー・ヴァスケス ライアン・ホール 高橋SUBMISSION雄己

【ECI06】身長149センチの猛者エステヴァン。D1AAレスラー、柔道&ノーギワールズ王者テラオに要注目!!

【写真】スーパーアグレッシブなエステヴァン・マルチネス。高橋はとんでもないグラップラーと相対することになるかもしれない(C)WNO/CLAYTON JONES

29日(土・現地時間)、ニューヨーク州シセロで開催されるEmerald City Invitational06のバンタム級トーナメント展望後編。
Text by Isamu Horiuchi

高橋Submission雄己が出場する32人制ワンデートーナメントには、日本では無名でもとんでもない力量を誇るグラップラーたちが参戦している。そんなECI06バンタム級T優勝候補筆頭と目されるのは、ベガス出身にしてZRチーム所属、21年のノーギワールズ最軽量級王者のエステヴァン・マルチネスだ。発表されている身長が4フィート11インチ(149.85センチ)と軽量級選手のなかでもことさら低く、太く低い手足を持つタンクのような選手だ。

<ECI06展望Part.01はコチラから>


戦い方はきわめてアグレッシブにしてダイナミック。スタンドでは積極的にダブルやシングル、ファイアーマンズキャリー、アームドラッグ等を繰り出し、たとえ潰されて下になっても簡単には抑え込ませず、動き続けてスクランブルでトップを取り返す力がある。

相手が下になれば側転、ニースライス、かつぎと矢継ぎ早にパスを仕掛け、上から滑り込んでのベリンボロでのバック取りや跳びつき三角、上からダイブしてのキムラやギロチンも狙う。リスクを厭わないスタイル故に相手にバランスを崩されることも多いが、持ち前の瞬発力と反応速度、ボディバランスと重心の低さをフル活用してトップをキープし攻撃を続け、相手を疲弊させてゆく。

ベイビーシャークが頭一つ大きいって──どういうこと?

何より特筆すべきは、体型も味方に付けての一本負けの少なさだ。

マイキー・ムスメシと対戦した際にも再三の足関節狙いを凌いで判定に持ち込んでおり、ジオゴ・ヘイスやコール・アバテといった、二回り大きい軽量級世界最高峰からも一本は許していない。6分という制限時間内にこの選手から一本を奪うのはきわめて困難だろう。

その上強烈なチョークを得意としていて、バックを奪われた状態からスピンして逃れる瞬発力にも長けているので、OTへの適性も悪くない。

階級上のキース・クレコリアンとのOT戦においては、四の字ロックを作ることができず3度連続で高速エスケープを許して敗れてはいるが──エステヴァンを誰が止めるのかが、この大会の第一の軸となりそうだ。

実は、このエステヴァンと一昨年の今大会フェザー級トーナメントにて対戦し、あと一歩のところまで追い詰めた選手がいる。20歳のキャメロン・メロットだ。

大会主催のエメラルドシティ柔術と同じヒカルド・アウメイダ・アソシエーション傘下にして、トム・デブラス率いるオーシャンカウンティ柔術所属。昨年のノーギワールズ紫帯ライトフェザー級3位と、帯色や実績では他のトップ選手には及ばないが、そのガードワークはまぎれもなく一級品だ。

前述のエステヴァン戦では、怒涛のアタックに対して下から足を効かせ続けてパスを許さず、逆に足を取りにゆく場面もあった。やがてクローズドから体をずらして見事にバックを奪うことに成功し、首に深く腕を食い込ませてあわや大金星かという場面まで作った。

執念でエスケープを果たしたエステヴァンの粘りの前に試合がOTにもつれ込むと、レフェリーから優勢と判断されて先攻後攻の選択権を与えられたのはメロットの方だった。結局OTの第2ターンでチョークを極められて敗退したが、見る側が──仮定の話をしても仕方ないとは知りつつも──「もしEBIルールでなければ…」と思ってしまうほどの大健闘だった。

このメロットのような、まだ世界的には無名だが大きな可能性を秘めた若手選手を見つけるのも、このトーナメントの見所だろう。

さらに他競技でも実績を挙げている選手として、ライアン・ホールの50/50柔術所属のデイヴィッド・テラオにも注目したい。「スタンフォード」というとても賢そうなミドルネームを持つこの日系人選手は、ワシントンDCにあるアメリカン大学在学中の16年に、NCAA Division 1のオールアメリカンに輝いている。

さらに柔道でもハワイ州の高校王者であり、現在も米国チームの一員としてIJF主催の国際試合で活躍中。昨年チュジニアで行われたアフリカンオープンでは4試合を勝利して準優勝、さらに今年キューバで行われたパンアメリカンシニア(21歳以上)オープン大会では、4試合中3試合を一本勝ちで優勝に輝いている。

グラップリングでは、色帯時代には三角絞めや足関節で敗れる姿も見られたが、着実に戦績を伸ばしてゆき21年ノーギワールズの茶帯ライトフェザー級で優勝。

決勝は自らシッティングガードを取り、一瞬で相手を引き込む三角絞めで攻め込んだ。終盤は逆転を期した相手が下からワキを差して上を取りに来たところをウィザーからの内股で防ぎ、逆に小内刈りと相手の足を内からすくう合わせ技で倒して上をキープするという──レスリング&柔道の技術を存分に活かしての勝利だった。

なお、大会後に師のホールから黒帯を授与されたことを受けてテラオは、日本人である祖父が教えてくれたという「arigatai」という言葉を用いて、今まで格闘技で出会った人々に感謝の気持ちを表現している。

黒帯取得後も柔道と並んでIBJJF系の大会に精力的に出場しており、昨年12月のノーギワールズでは初戦を突破して準決勝で世界柔術準優勝のカーロス・アルベルトと対戦。残り数秒で三角に捕まるまでポイント0-0、アドバンテージ2-3の好勝負を展開し銅メダルを獲得している。

テラオのようなレスリングや柔道の強力なバックグラウンドを持つ選手が、細かい技術への対応を身に付けた時には脅威と化すのは間違いない。それがサブミッションオンリーという舞台で、他の柔術グラップリングベースの選手たちとどのような化学反応を見せるのか。またOTとなった時に、テラオが柔道で培った極めをいかに活かすのかもきわめて興味深い。

もう一人知名度のある選手として、マニー・ヴァスケスも注目したい。現在サウスカロライナ州の10th planet グリーンヴィル支部を主催するヴァスケスは、もともとはBellatorやダナ・ホワイト・コンテンダーシリーズ(1stシーズン、第1週&第1試合に出場しジョビー・サンチェスに敗れる)にも出場した実績のあるMMAファイターだ。

18年5月までに12勝3敗の戦績を残しており、19年2月にはベラトール215で元王者のエドゥアウド・ダンタスとのキャリア最大の大勝負が予定されていたが、詳細未発表の負傷を原因に欠場。以降2年以上戦線から遠ざかっていたが、21年5月にコンバテ・グローバルで復帰戦が決まった際、実は悪性リンパ腫(がん)の治療を行なっていたことを明かした。

過酷な抗がん剤治療を乗り越えて臨んだこの試合に惜しくも判定1-2で敗れた後は、グラップリングに専念している。

MMA出身者らしくトップからの圧力で相手の攻撃を封じてゆく戦い方を信条とするヴァスケスは、昨年9月に行われたEBI形式の大会Midwest Finishers 9を制覇。決勝戦でも本戦で終始トップを維持する安定感のある戦いを見せ、OTでバックから極めた後にエスケープを果たしての優勝だった。

またその前の月には、今大会優勝候補筆頭のエステヴァン・マルチネスともワンマッチで対戦しており、敗れたものの最後まで極めさせず判定に持ち込んだ。後半はパスを許してバックも奪われてしまい、組技の地力はエステヴァンが勝っていることを印象付ける内容ではあったものの10th planet勢が研究を重ねるOTが採用されている今大会で再戦が実現した場合、どうなるかは分からない。

以前EBIでジョー・ソトがジョアオ・ミヤオをOTで下したことがあるように、MMA畑のファイターはOTへの適性が高いことが多い。

以上紹介した以外にも、さまざまなメンバーが顔を揃えたこのトーナメント。エントリー選手たちの所属道場を見るだけでも、アトス、AOJ、ヘンゾ系列、デイジー・フレッシュことペディゴ・サブミッション・ファイティング、ATT、10th planet各支部、普段はセルフディフェンスを中心に練習を行なっているホイス・グレイシー系列道場等、豪華絢爛にして百花繚乱、米国グラップリングシーンの裾野の広さが窺われる。この中にあって、今成柔術のバナーを背負って単身日本から乗り込む高橋が快進撃を見せてくれるなら、これほど痛快なことはない。

選手としてだけでなく、常に日本の業界全体の将来を視野に入れて活動する高橋。その彼が北米の最先端と触れ合うこの大会から、何を感じて何を持ち帰るのか。結果がどうあろうと、今後の日本のグラップリング界に少なからぬ影響を与えてほしいものだ。

■視聴方法(予定)
4月30日(日・日本時間)
午前6時00分~Flo Grappling

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【ONE FN06】マイキー、世界戦と無差別級について語る。「今は階級に専念。いつかクレイジーな挑戦を」

【写真】微笑みの国バージョンのマイキー・ムスメシです(C)MMAPLANET

14日(土・現地時間)、バンコクのインパクト・アリーナで開催されるONE Fight Night06で、ONEサブミッショングラップリング世界フライ級王者マキシー・ムスメシがガントゥルム・バヤンドォーレンの挑戦を受ける。

マイキーは昨年のサンボ世界選手権58キロ級優勝のサヤン・ヘルテックが挑戦予定だったが負傷欠場となり、バヤンドォーレンと戦うことになった。

コンバットサンボの世界王者が、マイキーに太刀打ちできるのか。そんな見方があったが、マイキーはこの挑戦者の変更を歓迎していた。よりタフ、よりコンペティティブになるという意味で。


──マイキー、いつもインタビューを受けてもらってありがとうございます。今の調子はいかがですか。

「最高だよ。今、トレーニングから戻ってきたばかりなんだ。僕の方こそ、インタビュー時間をずらしてもらって助かったよ。バンコクに就いて、すぐに練習したいと思っていたから空港から直接練習してきたんだ。だけど飛行機の予定自体が変わってしまっていたから、予定された時間にインタビューを受けることができなかったんだよ」

──ラスベガスから、今日バンコクに入ったということですか。

「違う、違う。シンガポールからバンコクに来たんだ。シンガポールに1週間いて、時差を調整していたから。シンガポールとバンコクの時差はたった1時間だからね」

──今回、ガントゥルム・バヤンドォーレンの挑戦を受けることになりました。もともとは、スポーツサンボの世界王者と戦う予定でしたが、負傷欠場になりコンバットサンボの世界王者がチャレンジャーになった形です。

「僕としては対戦相手が代わったことで、よりチャレンジングになったと思っている。彼は柔術をやっているから。茶帯の柔術家で、MMAのようなコンバットサンボを戦っている。より柔術ベースなんだ。サンビストとの試合は、彼らに柔術の経験がないことが大きな問題になっている。いくら世界チャンピオンで、サンボの技を使いこなせても柔術を知らない。

スポーツサンボの選手って、すぐに背中を見せる。だから、今回バヤンドォーレンと戦うことは、サンボ界から最高の相手が出てきたと思っているんだ」

──確かにトップ・サンビストがONEの組み技ルールで戦っても、柔術に対応できていないので柔術家が有利なことは明白になっています。実際、マイキーがサンボの世界王者と戦うことに関しても、もう柔術家のデモンストレーションのような試合には食傷気味でした。

「サンボと柔術は違うからね。でも今回の対戦相手は柔術の経験があって、ハイレベルなサンビストだから楽しみなんだよ」

──とはいえ世界のトップクラスのマイキーに対して、紫帯の柔術という見方もできます。

「茶帯だよ。茶帯(笑)」

──あっ、申し訳ありませんでした。

「柔術を分かっていることが大切なんだ。バックを取っても、チョークの防御方法を知っていることが。スポーツサンボだけの人はチョークがないからディフェンスできない。だから、いつもワンサイドの試合になってきた。今回の試合は、そういう過去の柔術家✖サンビストよりもコンペティティブになると期待しているんだ。サンボと柔術の技術が分かっている相手だから」

──加えて打撃有りで戦っている選手は、グラップリングマッチではナーバスにならず平常心で戦えているように見えることも多いです。技術レベルは別にしても、彼らのグラップリングに臨む時のメンタルをどのように考えていますか。

「パンチでダメージを受けたことがある選手は、そういう痛みのないグラップリングは戦いやすいだろうね。MMAファイターのメンタルは、幅広いという部分で強い。彼らはより肉体にダメージを受ける戦いを経験しているから。そういう意味でも、今回の試合はタフになるんじゃないかと思っているんだ。

そんな試合で僕がやるべきことは、完璧なポジショニングを取ってフィニッシュすること。今言ったようにMMAを経験して、タフなメンタルの持ち主をしっかりと仕留めたいんだ。僕は今でも一つのポジションにステイすることがある。どうしてもそこに拘ってしまうんだけど、そうでないもっと視野の広い試合をしたい。

今回のキャンプでは、オープンマインドで色々なポジションにスイッチすることを心掛けてきたんだ。そこからサブミッションを仕掛けていく。一つのことに固執しないよ。最初にとったポジションをずっと維持するんじゃなくて、もっと多角的に攻める」

──勝敗の行方に対し、どちらかに期待するなどということはメディアとして書けないですけど、マイキーにはファブリシオ・アンドレイやコール・アバテ、ベイビーシャークらと肌を合わせてほしいと思っています。

「う~ん、彼らは僕より階級が上なんだよね。彼らはバンタム級で、僕はフライ級だから。ただし、今名前が挙がった選手たちのようにどんどん手強いグラップラーが出現しているよ。そういう選手達の存在が、僕にもっと練習して成長しないといけないというモチベーションを与えてくれるんだ。彼らは僕より若くて、ポテンシャルがある。それだけ成長が早いということだからね。だから、僕もハードに練習できるんだ」

──ところでムエタイ、キック、MMA、ミックスルールとサブミッショングラップリングが見られるONEのケージで、これら打撃のあるスタイルでは提供できないファンが喜ぶ試合が、グラップリングでは可能だと思っています。

「……」

──それは無差別級です。2020年のヨーロピアン・オープン……。

「イエス、イエス。僕がモハメド・アリーと戦った時だね(笑)」

──ヘビー級のアリーに対して、マイキーが50/50からスイープを決めて、同点に追いついた(結果はP2-2、A1-2で敗れた)時の盛り上がり、小よく大を制す。この醍醐味が見られるのは、グラップリングだけです。そうADCC2005の……。

「マルセリーニョ・ガウッシアとリコ・ロドリゲスだ(笑)。将来的にいつか、そういう戦いもしてみたいよ。でも今は自分の階級で戦っていきたい。やっぱりオープンウェイトは体へのダメージが大きいから。アリーとの試合後も、1日ちゃんと歩けなかった(笑)。僕は心身ともに健康でいたいから。今はフライ級で戦っていたいけど、あのクレイジーさもやっぱり経験したいんだよね(笑)」

──チャトリCEOに無差別級で戦う時のファイトマネーの保障をしてもらえるよう皆で掛け合いましょう。ONEのセールスポイントになるはずです(笑)。

「アハハハ。興味深いよ、小さな選手が、大きな選手に勝つことは。それは柔術の素晴らしさを分かってもらえる一つの手段であることは間違いない。凄くビューティフルなことだよね。でも、危険がともなうことは覚えておいてほしい。それでも、いつかまたそういう試合にチャレンジしたい」

──楽しみに待っています。それでは、ぜひともムエタイ王国のファンにグラップリングでショックを与えてください(笑)。

「柔術を知らない人に、柔術の良さを分かってもらう。プレッシャーが掛かるけど、このプレッシャーがあるから強くなれる。それとバンコクのファンの前で戦うことも凄く楽しみだけど、僕としてはやっぱり日本で戦いたいんだ。チャトリにも『日本で戦わせて欲しい』と伝えているんだ。きっと今年中にONEは日本大会を開くから、絶対にそこで戦いたい。そしていつの日か、道着トーナメントを日本で戦ってみたいと思っているよ」

■放送予定
1月14日(土・日本時間)
午前10時00分~ ABEMA格闘チャンネル

■ ONE FN06対戦カード

<ムエタイ女子ストロー級/3分3R>
スーパーガール・ジャルーンサックムエタイ(タイ)
エカテリーナ・ヴァンダリエヴァ(ベラルーシ)

<150ポンド契約/5分3R>
キム・ジェウン(韓国)
佐藤将光(日本)

<ONEキックボクシング世界フェザー級選手権試合/3分5R>
[王者]スーパーボン・シンハマウィーン(タイ)
[挑戦者] チンギス・アラゾフ(アゼルバイジャン)

<ONEキックボクシング世界フライ級王座決定戦/3分5R>
スーパーレック・ギアットムーガーオ(タイ)
ダニエル・プエルタス(スペイン)

<ONEサブミッショングラップリング世界フライ級(※61.2キロ)選手権試合/12分1R>
[王者] マイキー・ムスメシ(米国)
[挑戦者] ガントゥルム・バヤンドォーレン(モンゴル)

<フリースタイル女子アトム級(※52.2キロ)/3分4R>
スタンプ・フェアテックス(タイ)
アニッサ・メクセン(フランス)

<215ポンド契約/5分3R>
オンラ・ンサン(ミャンマー)
ジルベウト・ガルバォン(ブラジル)

<キック・フライ級/3分3R>
ロッタン・シットムアンノン(タイ)
ジドゥオ・イブ(中国)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
ゲイリー・トノン(米国)
ジョニー・ヌネス(米国)

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ABEMA ADCC2022 MMA MMAPLANET o コール・アバテ ジオゴ・ヘイス ファブリシオ・アンドレイ

【ADCC2022】66キロ級1回戦。本命ファブリシオ・アンドレイが、対抗コール・アバテに初戦でレフ判定勝ち

【写真】いやぁ、なぜ1回戦?という顔合わせ(C)SATOSHI NARITA

17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。第8 回は66キロ級の優勝候補筆頭、ファブリシオ・アンドレイと対抗馬と目されていたコール・アバテ──早過ぎる顔合わせとなった1回戦の模様をお伝えしたい。


<66キロ級1回戦/10分1R&ExR>
ファブリシオ・アンドレイ(ブラジル)
Def.ExR by Ref decision
コール・アバテ(米国)

今年の世界柔術フェザー級王者にしてチームメイトのジオゴ・ヘイスとともに優勝候補筆頭に挙げられるファブリシオ・アンドレイの初戦の相手は、最年少17歳にしてやはり大きな期待を集めるAOJの新星コール・アバテ──豪華メンバーが揃ったこの階級における、 1回戦の最注目カードだ。

それにしても、このいきなりの大一番の勝者が2回戦でジオゴと当たってしまうのだから、16人ブラケットの中の1ブロック4人の中に、最注目選手3人が固まってしまったこととなる。

足を振り上げるいつものポーズを取ったファブリシオは、試合前から気合十分。対するアバテは開始と同時に迷わず座りこむと、ファブリシオの右足にハーフで絡む。

ファブリシオが距離を取ると、アバテは素早くアームドラッグで左腕を引いて崩してから左足に絡んでいく──が、ファブリシオは足を抜く。逆にアバテがシットアップで上を取るが、ファブリシオが距離を作ると無理に追いかけずに下を取り直した。

その後も下から足を狙ってゆくアバテと、極めさせないファブリシオの攻防が続く。時折りアバテはシットアップも試みるが、ファブリシオが反応して立ち上がり、下から仕切り直すという状態が続く。

やがて5分が過ぎ加点時間帯に。ダブルガードから足を取り合う両者。アバテは右腕にアームドラッグを仕掛けてから背後に回りかけるが、ファブリシオは回転を続けて距離を作り、ダブルガードに戻してみせた。

さらにアバテはシットアップを狙うが、ファブリシオは腕を伸ばしてディフェンス。本戦で点を取って勝ち切りたいアバテと、延長に持ち込んでスタンド再開からレスリングで勝負したいファブリシオ、両者の思惑が見え隠れする。本戦終了寸前にファブリシオがシットアップし、アバテの下からの煽りを耐えたところで、10分が経過した。

スタンドから再開された延長戦。ファブリシオがシュートインするが、アバテがスプロール。ここからファブリシオの左足を抱えて回して崩しにかかるアバテは、さらにダースチョークのグリップを狙った後で、ファブリシオの左足も巻き込んで上からのクレイドルの形でグリップを作って体勢を潰してゆく。

それでもファブリシオが体を起こすと、アバテは斜めからボディロック。ここでファブリシオは小手に巻いてからの内股を仕掛け、振りほどいてみせた。

試合がスタンドに戻ると再びテイクダウンを狙うファブリシオだが、アバテは下がって回避する。残り2分半、ファブリシオがまたしてもシュートイン。今度は深くダブルに入ってアバテに尻餅を付かせた。

が、アバテは両腕をマットにポストして上半身は起こした状態をキープし、体をずらして背中を向けると同時に前転してスクランブル。ポイントを失うことなく離れてみせた。

スタンドから再開。序盤に力を温存しスタミナ十分のファブリシオは、アバテの首を抑えては足を飛ばす。アバテもヒザを付いてテイクダウンを狙うが、ファブリシオは距離を取る。逆にファブリシオがダブルレッグで深く入り、アバテの右足を抱えてシングルに移行。片足で耐えるアバテを場外際まで押していくが、ここはブレイクに。

残り1分。足を飛ばすファブリシオ。両者ともにテイクダウンを狙って入るが、そのたびに距離を取ってディフェンスされる。残り5秒、ヒザを付いたアバテは強引に右足を取りにゆくが、ファブリシオがそれを回転して切りバックに回りかけたところで試合は終了した。

ガッツポーズを取って勝利をアピールする両者。本戦で下から積極的に仕掛け、バックに周りかける場面を作ったのはアバテで、延長のテイクダウン合戦を支配し、相手に尻餅を着かせたのはファブリシオだ。

解釈次第でどちらにも傾き得ると思われたレフェリー判定は、ファブリシオに。難敵から薄氷の勝利を得た勝者は、歓喜の咆哮を連発した。本戦では出力を抑えてアバテの下からの攻撃を防ぎ、延長のレスリング勝負で優位に立って判定を取る。自らの強みをルールにうまく当てはめたファブリシオの作戦勝ちといえる。

世界最高のスキルを持つグラップラー同士の戦いとしては、お互いが持てる力を出し尽くすような見応えのある戦いにならなかった感は否めないが、それもこのADCCルールの綾なのだろう。とまれ、紙一重の戦いの末に1回戦最注目のカードを制したファブリシオが、盟友ジオゴ・ヘイスとの準々決勝──事実上の決勝とも思われる大一番だ──に駒を進めた。

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ADCC2022 JT・トレス MMA MMAPLANET o ONE Road to ADCC   ケイド・ルオトロ ゲイリー・トノン コナー・マクレガー コール・アバテ ジョゼ・アルド タイナン・ダウプラ タイ・ルオトロ ニッキー・ライアン 堀内勇 高橋SUBMISSION雄己

【ADCC2022】高橋サブ&堀内勇がADCCを深掘り─02─。77キロ級、柔術の神の子とADCCルール王

【写真】巧さは強さなのか。そして強さは巧さにどう対抗するのか(C)CLAYTON JONES/FLOGRAPPLING& SATOSHI NARITA

17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターで開催される2022 ADCC World Championship。2年に1度のグラップリング界最大のトーナメントが、コロナの影響で3年振りに開催される。

グラップリング界においても特殊なポイント制が用いられながら、世界最高峰の組み技の祭典を高橋Submission雄己とMMAPLANETグラップリング・ライター堀内勇氏が、独断と偏見と愛情をもって深堀り。第2弾は66キロの米国勢から、77キロ級の2人の優勝候補の対照的なスタイルについて話を続けてもらった。

<高橋Submission雄己&堀内勇、ADCC深堀対談Part.01はコチラから>


──話を蒸し返すと、ONEでトップグラップラーのグラップリングが頻繁に視られるようになるのは嬉しいのですが、それでもADCC欠場はやはり勘弁してくださいと気持ちになります。

堀内 やっぱりマイキーは個性が際立っていますからね。最近も『僕はピザとパスタしか食べない』なんてことを言いだして。朝はアサイーを食べて、毎日同じピザを食べているという話で。毎日ピザを食べて世界一になるって、ダイエット界や栄養学界の常識を覆しているんじゃないかって。

高橋 アハハハハ。

堀内 そういう彼が抜けるのは残念ですが、今大会はファブシリオ・アンドレイとかベイビーシャークなど、新しい力を知るきっかけになりますね。

──きっと勝てないという意見もありますが、そうなると『ちゃんと負けろよ』と思ってしまうんですよね。バトンタッチしてくださいって。ただ、チャトリはADCCで優勝した人間全員とサインするぐらいのつもりでいるんじゃないかと思います。マイキー不出場はさておき、他に66キロで注目すべき選手は?

高橋 ONEへの恨み節に関しては、ルールが違うから良いじゃないかなって。そりゃあ見たかったですけど、別競技といって良いほど違う。まぁサブオンリーのレフ判も納得できるルールではあるし、ソレはソレ。コレはコレじゃないでしょうか。

──じゃあRoad to ADCCに出るなよって……ってまだ恨み節が続いてしまいます。

高橋 それは……確かに(笑)。でも、やった相手がジオですからね。66キロ級で注目したい他の選手は、ゲイリー・トノンですかね。なんか期待値が高いです。66キロ級に落としてきて体が大きいから、細かい技術はさておき、立ち技も強いだろうし、極め力でいえば抜けている気がします。

あとトノンと同様に米国勢だと、コール・アバテは注目ですね。

優勝候補とまでは言えないですが、若くてそれなりに66キロ級のなかではデカい。伸びしろの多さも期待して、コールがどんなもんなのか凄く気になりますね。

堀内 僕もコール・アバテは楽しみにしています。17歳で、最年少です。

ベイビーシャークは20歳なのに子供に見えて、コール・アバテは17歳なのにやたらと落ち着いていて。態度も凄く偉そうだし(笑)。ただ戦い方は兄弟子のタイナン・ダウプラを彷彿させるというか。もの凄く圧力がある戦い方で、極めも正確でガチッと入る。力強くて楽しみです。

なんかお父さんが結構熱心で、子供の頃からやっていたようですね。そのお父さんがガレージで、『我々は過去のADCCの66キロ級の試合は全て見た』とか言っているんですよ(笑)。そうとうにお父さんが賭けているというのが伝わってきました。

高橋 僕もコールは期待で。後は敢えて名前を出すなら、イーサン・クレリンステンですかね。

堀内 トライスタージムでフィラス・ザハビの下で学び、その後はザハビの師匠格といえるジョン・ダナハーの指導を受けた選手ですね。

高橋 結局、ブラジル✖米国の様相になっていて、ADCCルールにおいてはブラジルが育んできた柔術スタイルが優る。そう思います。

──では77キロに移らせていただきます。世界中の誰もが見たい選手と、試合は別に見たくないけど勝てる選手。そのどちらが強いのか。

高橋 その通りですね(笑)。

堀内 見たい選手がミカ・ガルバォンで。この対談を万が一、あまり柔術に興味がない人が読んでくださっているとしたら、ミカ・ガルバォンの凄さってどういう風に伝えることができるんだろうって考えました。

──ありがたい限りです。

堀内 そして思い出したのが、コナー・マクレガーの言ったことだったんです。マクレガーがジョゼ・アルドを倒した時、「精度とタイミングはパワーとスピードを打ち負かす」という素晴らしい言葉を残しています。つまり精度とタイミングを持っている人間は、パワーとスピードがない。でもミカ・ガルバォンはその4つの全てを持っている。

──おおっ!!

堀内 柔術家に良く見られる、問答無用の重厚な圧力。ベースが強くて、プレスがもの凄く強い。

1度体重を掛けられたら、対戦相手はもうどうにもならない。ああいうファンダメンタルの柔術の圧力がありながら、反応速度が素晴らしく良い。相手の体に一瞬に反応して、素晴らしい体捌きで技を決めます。精度もスバ抜けて高い。それを全て持っているのは、ズルいんじゃないかっていうぐらいで(笑)。

他の人にはない。ちょっと人間離れしたモノを見ることができる。そんな喜びをミカの試合からは感じます。

──反応の良さは、道着でモダン柔術の攻防になった時も際立つようにも感じます。

堀内 タイ・ルオトロとは2度試合をして、ノーギでは競り負けて、道着だとボコボコにしている。それを見ても分かるように、ミカが柔術の神の子たる所以、強さが最も出てくるのは道着の試合ですよね。道着があって滑ることなく、相手がなかなか逃げられないので。ノーギだとタイのようにバランスの良い選手は、そこを凌ぎ切って自分のペースに持ち込むこともできないことはない。そしてノーギのなかでもサブオンリーの方が、ADCCより適しているんじゃいかと思います。

──それは?

堀内 やはり圧倒的なレスリング力があるとは、言えないので。そうなった時に、同じノーギでもADCCルールの権化のJT・トレスと戦うとどうなるのか。試合は別に見たくないと言われたJTとミカは対照的な2人なので、本当に興味深いです。

高橋 そうですね、ミカはレスだとたまに転がされている場面を見ますよね。しかも77キロ級だと身体的な圧力は他の選手より劣るような気がします。本当に堀内さんの見立て通りだと思います。

──JTの強さはともかく、彼の試合のどこを楽しめば良いでしょうか。

高橋 トーナメント全体の見方として、誰がJTを倒すのか。それで良いと思います。ディフェンディング・チャンピオンだし、何が凄いってルールへの対応力。

組み技の質量、技量は皆が高いレベルで拮抗している。そこでJTが勝ち抜き続けているのは、勝負どころを見極め、自分だけでなく相手の特性を理解している試合運びの上手さがあるからで。ここは受けて、ここでは2Pを取るという判断と実行力がともに正確です。そこが絶対王者たる所以で。

対抗馬としてスタイル的にも対照的なのが、ミカですよね。ミカを筆頭に、誰がJTを打ち破るのか。JTはちょっと可哀そうですけどヒール的な見方をしてもらうのが楽しいのではないかと思います。JTを優勝させたら、つまらなくなるぞ──みたいな(笑)。

──JT・トレス=北の湖ですね。

堀内 アハハハハ。

──ルールもポイントも違いますが、ルールを研究し抜いて、ルールに合った技を駆使してギリギリで勝つ。それってフィロソフィーとしては、完全にIBJJF柔術の強い人のソレではないでしょうか。そうなると、JTとの競り合いに負けないのは、同じフィロソフィーの持ち主──IBJJFルールに強い柔術家なのかと。JTは柔術では準決勝ぐらいで勝ち切れなくなることが多い印象がありますし。

高橋 確かに、ホントにそうですね。

堀内 FLOGRAPPLINGが77キロ級出場の各選手の練習風景を追っているカウントダウン映像を流していたのですが、そこで主要メンバーがお互いの印象を話しているんです。だいたい皆がJTに関しては、高橋選手が言ったように隙の無さ、ルールを知り尽くした戦い方だと言っています。

そのなかでケイド・ルオトロはATOSの後輩で「JTのことは尊敬している。JTは隙が無くてペースを掴むのに長けている。でも俺はそのペースを乱すことができる手が、いくつかあるんだ」って話しているんです。ケイドは凄く動きますから、JTの不動のペースを乱すよう、色々と仕掛けてくるのかと。特にスタンドが注目です。あと、もう一人はニッキー……ニッキー・ライアンでねす。

<この項、続く>

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【WNO Championships】レポート─01─波乱続出、ライト級準々決勝~準決。ファイナルはソウザ✖ケイド

【写真】準決勝でアバテを下し、ドヤ顔のソウザ(C)CLAYTONE JONES/FLOGRAPPLING

25&26日(土&日・現地時間)にテキサス州オースチンのパーマー・イベンツセンターで開催されたWho’s Number One Championships。ライト級、ミドル級とヘビー級、女子はストロー級及びヘビー級で賞金3万ドルとチャンピオンベルトを賭けた2days 8人制トーナメント──は2021年グラップリング界の最大のイベントとなった。

WNO Championshipsレビュー、第1回はライト級準決勝までの痕跡を辿りたい。
Text by Isamu Horiuchi


ライト階級は1回戦から波乱続出となった。まず、優勝候補大本命と思われたマイキー・ムスメシが、当初は補欠扱いだったガブリエル・ソウザにまさかの一本負け(別稿で詳述)。

(C)MIKE CALIMBAS/FLOGRAPPLING

さらに、準決勝におけるムスメシとの因縁の再戦が期待されていたジオ・マルチネスまでも1回戦敗退。

土壇場で代打出場が決まったAOJの16歳、コール・アバテと対戦したマルチネスは、序盤から素早く力強いアバテの下からの足関節の仕掛けに防戦を強いられる。さらに上から強引に腕を取りに行ったところで、体をずらされてバックを許してしまった。結局最後までアバテの足狙いに手を焼き、攻め手を見つけられないままマルチネスは判定0-3で完敗した。

(C)CLAYTONE JONES/FLOGRAPPLING

かくて伏兵同士の顔合わせとなった準決勝では、ソウザとアバテが一進一退の攻防を展開。

前半はアバテが下からの足関節の仕掛けでペースを握る。が、後半はパターンを読んだソウザが徐々に上からのプレッシャーを強める展開に。結局、途中内ヒールを深く入れる場面も作ったソウザが、スプリット2-1で判定をものにして決勝進出した。が、15分間を通して攻勢に出る場面が多かったのはアバテの方だっただけに、異論を唱える声も多く聞かれたジャッジングだった。

(C)MIKE CALIMBAS/FLOGRAPPLING

もう一方のブラケットの1回戦では、ムスメシ本人が最大のライバルとして名前を挙げていたケイド・ルオトロが、今年のアブダビ・ワールドプロ大会覇者であるパトことディエゴ・オリヴェイラと対戦。

序盤にパトの下からの迅速の抱え十字で腕を伸ばされかける場面もあったものの、その後は持ち前のノンストップ・パス攻勢で徐々にパトを削ってゆく。残り2分でついにインヴァーテッドガードを突破してパスに成功したケイドは、すぐにダースチョークを仕掛け、鮮やかな一本勝ちを収めた。

(C)MIKE CALIMBAS/FLOGRAPPLING

もう一つの1回戦は、やはり注目株のジョシュ・シスネロスが代打出場のデミアン・アンダーソンと相対した。

下から足を絡めてくるアンダーソンの仕掛けを、素早い反応のダースチョーク狙いで切り返したシスネロスは、うつ伏せで耐えるアンダーソンのバックへ。そのまま右腕をとって腕十字を極め、2分弱で会心の勝利。

(C)CLAYTON JONES/FLOGRAPPLING

続く準決勝──ケイドとシスネロスによる注目の新世代対決──では、残念なアクシデントが起きてしまう。

シングルを仕掛けたシスネロスに対し、ケイドがスピード感溢れるカニバサミで切り返すと、シスネロスは不自然な形で崩れてしまう。ここでレフェリーは即座に試合をストップすると、倒れこんだシスネロスが痛みに絶叫し、それを見ているケイドも頭をかかえてしまう状況となった。

スロー再生を見ると、シスネロスが重心をかけた右足のヒザ下に、横から勢いよくケイドの上半身がぶつかっている。これにより、右ヒザが曲がらない方向に大きな力が一瞬でかかってしまったようだ。やがて立ち上がり歩けるようになったシスネロスだが、負傷棄権によりケイドが決勝に進出。本命のムスメシ、新星アバテを倒したガブリエル・ソウザと決勝を争うことになった。

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