【写真】インチョンからテグまで移動する社内で今回のインタビューは行われた。まるでインプラントのような真っ白な歯は「日焼けして真っ白く見えるだけ」とのこと (C)MMAPLANET
14 日(土)、韓国テグのテグ体育館でRoad FC60が開催れて、現地ではキム・ソンオ名──山本聖悟がコロナ以降、初めて母の母国のケージに足を踏み入れる。
完全打撃は、バチバチの殴り合いを求めRoad FCと契約、2019年11月の初陣ではパク・ソクハンを2分45秒でKOした。しかし、コロナパンデミックを機に拠点を移していたプサンから帰国、RIZIN、DEEP、Road to ONEと3連敗を喫した。
その山本が再びRoad FCで戦う。対戦相手は6勝0敗のホープ=イ・ジュンヒョンだ。殴り合い上等の地に再び赴いた山本はこの2年間の日本での戦いでMMAファイターとしてMMAの見方、取り組み方が変化していた。
計量前日、お隣の国とは思えないハードな移動と、待ち受ける水抜きを目前に控えた山本に話を訊いた。
──空港を出てテグへ向かう最中にインタビューを受けていただきありがとうございます。
「いえ、4時間以上かかるので全然大丈夫です」
──えっ、4時間以上もかかるのですか!! プサンのキメ国際空港からだと2時間も掛からなかった記憶があります。いや、それ以前にLCCで成田~テグの直行便があったかと。
「それがコロナの影響で、国際便はインチョン国際空港しか発着していないんですよ」
──ではコロナ以前に拠点を置いていたプサンで試合の準備をするという考えはなかったですか。
「考えました。ただ仕事を休むことになるのと、減量もきつくて。塩抜きの食事を摂るのも日本の方が成分表示なんかも信用できるんです。それに症状がなくても、コロナの陽性者数が韓国がもの凄く多くて。それで試合ができなくなるのは避けたかったです。日本でフライトの48時間以内にPCR検査をして、陰性で現地に向かう方がリスクは低いと思いました。
隔離の免除も申請が必要で、それと観光客は受け入れていないので入国にはビザが必要です。僕の場合は興行ビザを取得して韓国にやってきました。日本に戻る時も陰性証明がいりますし、正直ワクチンは反対派だったんですけど海外で戦う、韓国で戦う選択をしたのでワクチン接種も済ませました」
──コロナとの共生時代に入っても、以前と比較すると全くもって不便なままですね。
「ハイ。日本は6月から規制が緩くなるとも聞いていますし、韓国もそこに追従して楽になって欲しいです。本当は日本で勝ち星を得ることが大切だと分かっているんです。でも、こうやってこのタイミングで韓国で戦えるのは僕にしかできないことなので、この選択をしてしまいました。
今、日本とK-MMAを誰がつなげるのかとなったら、韓国にルーツがある僕にしかできないことなので。それが僕の役割で、Road FCが呼んでくれましたし役割を全うします」
──それだけ面倒なことクリアしての渡韓ですし、覚悟のほどがうかがえます。それと今、ZOOMの画面で見る限り相当に頬がこけており、計量前日の現地入りだと相当に絞り込んで韓国に入ったということでしょうか。
「そうですね、日本で落として創ってきました。あと水抜きで4キロですね」
──えぇ、まだ水抜きで4キロも落とさないといけないのですか!!
「今回73キロから落としてきたので」
──73キロ!! 確認しますが、フライ級マッチですよね?!
「そうです。16キロ減量する必要がありました。このところ、秋山さんとのフィジカルトレーニングが成果があって筋量が増えてきたんです。正直、フライ級に落とすのは本当にしんどいとは思っていました。でも、その秋山さんが青木さんとの試合であそこまで落とし切ったので、さすがに僕がノーだとか計量失敗はできないです。だからメチャクチャ怖いです。今もビビっています……(苦笑)。今日の夜が一番怖いです。
藤田選手と戦ったときも水抜き5キロで本当に厳しくて。アレを思い出してしまいます……。ホントはフライ級だとコンディションはバンタム級より悪いです。でも、未練があるというか──フライ級でやるべきことをやっていないので」
──そこに行き着くまでに、まずは減量という大勝負が待っているわけですね。そして現状、3連敗中です。日本で勝ち星が挙げることができず、勝負のファイトになります。対戦相手のイ・ジュンヒョン選手の印象を教えてください。コロナ禍でRoad FCとAfreecaTVの共催イベント=ARCで5勝、Road FCでは1勝と無敗の選手です。ただ、個人的にARCは3分3Rで寝技は30秒という限定でMMAであって、本当のMMAではないと思っています。
「僕もそう思っています。あのルールなら、僕もレコードを稼ぐことができます。だからこそ僕は今回の相手にしっかりとMMAを3Rやりきることがテーマです。KOしたいとか、打撃で勝つということじゃないんです。イ・ジュンヒョンもそうだし、打撃ばかりやっている韓国の若い選手達って昔の自分を見ているみたいなんです。
打撃ばっかりだと試合をしていても楽しいです。でも、それじゃ勝てない。MMAなので。今回はMMAをやりに韓国に来ました。僕は日本で3連敗しましたけど、小野島選手と試合ができて本当に良い経験になりました。あの試合もオファーが2週間前で、しかも秋山さんからだったから断れなくて受けました」
──ケガもあって本調子でなかったとも、オフレコで試合前に話してくれました。
「そういう状況で戦って、小野島選手にテイクダウンを奪われても立つことができた。凄くしんどい試合で負けもしましたが、しんどいことを最後まで投げずにできたので自分のなかで成長も感じることができたんです」
──では今回の試合前は組みという部分も重視してきたと。
「試合前だけでなく、小野島選手との試合前からそうです。この試合に向けてもグラント・ボクダノフ選手のALFA FIGHT GYM LIFEで練習してきて。セコンドに就いてくれる吉野(光)選手も『倒せない。立たれる。ブリッジ返しもできない』って言ってくれて。その成果を試合で見せたいですね。
母親の祖国で試合をすることは、いつも楽しみで。それに3連敗してもRoad FCがオファーをくれた。だから彼らの期待を裏切る試合展開になり、もう声が掛からないようになるかもしれないですけど、僕はテイクダウンをして判定勝ちしたいと思っています。それが僕にとって成長になるので。そこを試したうえで打撃を使う試合をしたいです」
──正直、凄く変わりましたね。
「ROAD FCは自分が大好きな大会です。でも鎖国してしまっている状態です。日本に帰国して試合をして、自分が井の中の蛙だったと気づかされました。さっきも言いましたが、今回の相手や韓国の若い選手を見ていると昔の自分を見ているみたいなので。MMAはテイクダウンを織り交ぜた方が、勝つ確率が1パーセントでも上がります。
現状、向うは6連勝の選手で僕は3連敗中。ここで勝たないと終わりだというぐらいの気持ちです。だからこそ今回は自分との戦いだと思っています。過去の自分を新しくなった自分が倒すつもりです」
──ここで勝てばタイトル戦が見てくる試合だと、韓国から伝わっています。
「ハイ。なのでここで勝って、もう1試合フライ級で戦ってベルトを巻いてバンタムに上げます。そして日本に戻って試合をしたいと思います。小野島選手まで辿り着きたいです。僕と戦った次の試合で、小野島選手がチャンピオンになったのは嬉しかったです。次は石井逸人選手と防衛戦ですけど、前の試合は小野島選手が勝ったと僕は思っています。僕自身、石井逸人選手レベルまで上がっていかないといけないです。
そこまであと2段階ぐらい。手を伸ばせて届くところまで来ていると思うので、そこまでしっかりと行きたいと思います」
■ ROAD FC60対戦カード
<Road FCフェザー級選手権試合/5分3R>
[王者]パク・ヘジン(韓国)
[挑戦者]キム・スーチョル(韓国)
<85キロ契約ボクシング戦/3分3R>
クォン・アソル(韓国)
ナム・ウィチョル(韓国)
<フライ級/5分3R>
イ・ジュンヒョン(韓国)
山本聖悟(日本)
<バンタム級/5分3R>
キム・ヒョンウ(韓国)
ヤン・ジヨン(韓国)
<73キロ契約/5分3R>
ムングントスウ・ナンディンエルデン(モンゴル)
ヨ・ジェウ(韓国)
<ミドル級/5分3R>
イム・ドンフアン(韓国)
ユン・テヨン(韓国)
<ライト級/5分2R>
ジャン・ギョンビン(韓国)
ヤン・ジファン(韓国)
<51キロ契約/5分2R>
ゴ・ナヨン(韓国)
パク・ソヨン(韓国)
<バンタム級/5分2R>
イ・シンウ(韓国)
イ・ジョンヒョン(韓国)
<フライ級/5分2R>
ジョン・セボック(韓国)
キム・ミョンハン(韓国)
<フライ級/5分2R>
パク・ジンウ(韓国)
キム・ジュンソク(韓国)
<バンタム級/5分2R>
キム・ジングク(韓国)
ジョ・ミンギュ(韓国
<ライト級/5分2R>
キム・ミンヒョン(韓国)
ウィ・ジョンウォン(韓国)