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【DWCS S08 Ep05】UFC契約を賭けたベルガウイ戦へ、岩﨑大河「今回は勝ちに徹しようと思っています」

【写真】渡米後のインタビューに、いつもの大河スマイル(C)SHOJIRO KAMEIKE

11日(水・日本時間)、米国ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されるDWCS S08 Ep05で、岩﨑大河がユースリ・ベルガウイと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

岩﨑にとっては昨年9月のキム・ウンス戦以来、1年振りの試合がUFCとの契約を賭けたDWCS出場となった。対戦相手のベルガウイはキックボクサー時代、2017年にはGLORYのミドル級トーナメントを制している。さらにGLORYでは現UFC世界ライトヘビー級王者のアレックス・ポアタン・シウバにも勝利したキャリアを持つ。今回2度目のDWCSチャレンジとなるベルガウイと、ABEMA TVの武者修行プロジェクトを経て成長したという岩﨑が戦う。UFC2から30年――あの浪漫を求めて。


ちょうどCMMAで同じようなタイプの選手と練習していた

——昨年9月以来、1年振りの試合を控えている岩﨑選手です。この期間は、UFCとの契約あるいはDWCS出場を調整していたのでしょうか。

「いえ、そういうわけではないんです。ABEMA TVさんの武者修行プロジェクトに参加させてもらったり、修斗さんから何度もオファーを頂いていましたけど、いろいろ重なって——試合が決まらずに1年経ってしまいました」

——岩﨑選手の中で、1年も試合間隔が空いたことに対して、それほど特別に捉えているわけではないのですね。

「知らない間に1年経っちゃった、という感じです(苦笑)」

——なるほど。ではまずABEMA TVの武者修行プロジェクトの感想から教えてください。

「日本と米国ではMMAのロジックが違うというか。そのロジックを学ぶために、以前から米国で練習してみたいと思っていました。ABEMA TVさんのおかげで、ビクター・ヘンリーがいるカリフォルニアのCMMAというジムに行かせてもらえて良かったです」

——日本と米国でMMAのロジックが違うというのは、何が一番大きく違いましたか。

「自分も言葉で説明するのは難しいけど、根本の考え方が違いますよね。米国では皆が、MMAで一番主にしているところが、どこにあるか。そこに重きを置いている感じで。まず全員レスリングができるのはマストで、テイクダウンできることがベスト。そのための壁際の練習をやっていると思います。

たとえば日本でストライカーなら倒されない、あるいは倒されてからの展開からスタートする部分があります。しかも練習中に抽象的な言葉が飛びがちで。米国では一つひとつの要素がチェーンとして繋がっているというか。『米国の選手は、こうやってMMAの構造を考えているんだな』って知りましたね。ちゃんとMMAを勉強しながらMMAをやっているんだと思います」

——キリクリフFCで練習している木下憂朔選手も仰っていますが、どのようなスタイルで戦おうとも、まずはレスリングが根本にあるわけですね。

「第一にレスリングで、レスリングに合わせた打撃を学ぶ。レスリングができれば打撃も生きる、という考えですよね」

——全てレスリングありきで各技術が構築されていくわけですか。

「自分がレスリング出身でなくても、とにかくジムでレスリングの練習をやりますから。日本だと20歳を越えたり大学を卒業すると、なかなかレスリングをイチから学べる環境がないんですよ。それが米国では、MMAのジムで一からレスリングを学ぶことができる。腕の取り方、テイクダウンの入り方から、すごく細かい技術まで教えてもらえたのは良かったです」

——その武者修行プロジェクトを経て、今回のDWCS出場は急きょ決まった話だったのでしょうか。

「まず武者修行プロジェクトに行かせてもらった時、現地のコーチに米国のマネジメント会社を紹介してもらったんです。そこで『UFCを目指している』と言ったら、『じゃあDWCSに出られるよう交渉しよう』という話になって。

だけど8月に入ってDWCSが始まり、カードも埋まっているから諦めます——と伝えた1週間後に、マネジメント会社から『DWCSに欠員が出た!』と連絡が来ました。そういった経緯で自分を代役に選んでもらえたのが、今から1カ月ぐらい前です」

——DWCSを諦めると決めた時点では、もう今後の試合スケジュールを考えていたのですか。

「そろそろ試合しないと、もう1年経っちゃうなという感じで。そうなると自分の仕事は何なのか、って話になってしまいますからね。だからDWCS以外で交渉しようと思っていたところで。個人的には3月から5月まで米国で練習させてもらい、海外勢のフィジカルやMMAのスタイルを肌で感じました。そこから帰国して日本で練習しながら、いつでもDWCSに挑戦できるように準備はしていました。

それと対戦相手の映像を視ると、ちょうどCMMAで同じようなタイプの選手と練習していたんです。スパーリングではその選手に勝っていたと思うし、これは行けるかなと。実際に試合をしてみないと分からないですけど、いろんな伏線が繋がって準備はできていました。おかげで気持ちにも余裕はできていますね」

出場を躊躇していると、ずっと足踏みし続けるMMA人生になってしまう

——CMMAで一緒に練習していた選手というのは?

「ルイス・フランシスコネリというブラジルのウェルター級ファイターで、LFAで4戦4勝——全て1R KO勝ちしていますね。LFA側からも期待されていて、次はメインカードに出るかもしれないと言っていました。今回も自分は早めに渡米して、ルイスと調整しています。身長が198センチ、リーチは235センチぐらいあって」

——ベルガウイ対策としてはピッタリの練習相手ですね! 現在UFCと契約するにはRoad to UFCかDWCSから、という形が多くなっています。日本人選手でも、いきなりUFC本戦出場となった平良達郎選手と朝倉海選手は例外で。

「最初はRTUでワンマッチを組んでもらえるかどうか交渉してみようか、という話もあったんです。でもアジアのRTUは重い階級の試合はやらない、という方向性みたいで。だったらDWCSに狙いを絞ろうということになりました」

——今年のRTUはライト級もワンマッチのみでしたし、ウェルター級以上はワンマッチを組むことすら無さそうですね。とはいえ、RTUとDWCSでは仕組みが大きく異なります。どんな内容でもトーナメントで優勝すればUFCと契約できるRTUに対して、DWCSでは勝利だけでなく試合内容のインパクトも求められる傾向にあります。

「それは分かります。もちろんフィニッシュしたほうが契約してもらいやすい。でも相手は去年のDWCSにも出ていて、組みで負けているじゃないですか。今回は2度目のチャレンジで――もともとベルガウイと対戦する予定だったという選手の試合映像を視たら、僕と同じストライカーでした。だからUFCとしては、今回ベルガウイと契約したいのではないかと思ったんですよ(笑)。

その印象を周りの人たちに伝えたら、みんな『たぶんそうなんだろうね』と言っていて。だから僕がベルガウイにサブミッションで勝っても、UFCとは契約できないんじゃないか。KOでないと契約できない、というぐらいに考えていますね」

——ベルガウイはGLORY時代に対戦しているポアタンとアデサニャに続く、第3のキックボクシング出身ファイターとして期待されているかもしれません。この2選手と同じように身長が高く、リーチが長くてKOも多い。

「しかもGLORYでポアタンに勝ったことがありますからね。その実績だけでも、プロモーター側からすれば欲しい選手だというのも分かるんです」

——昨年のDWCSでマルコ・トゥーリオはベルガウイに判定勝ちを収めたもののUFCと契約できませんでした。しかし今年8月、2度目のチャレンジでKO勝ちして契約に至っています。ということは、昨年のトゥーリオのような勝ち方では契約できない可能性が高いです。

「本当に分かりやすいです。でも個人的には、勝ちに徹しようと思っています。たとえば序盤にバックを奪って、ボディクラッチで相手は動けない。だったら残りの時間はずっとその状態でいたいですね。

正直言うと、自分はどんな試合内容でも今回は契約してくれないと思っています。でも勝てば来年もDWCSに出場できる可能性がある。その場合は、自分と契約したいためのカードになっているかもしれないですよね。その試合のために、また1年頑張れば良い。

僕としては今回、このレベルの相手に対して自分がどれぐらい通用するのか。それが分かれば良いと考えているんですよ」

――なるほど。考えてみれば北米MMAと自分の現在のレベルを比較できる相手といえば、IGFで対戦したハファエル・ロバトJrのみでした。

「しかも海外でMMAの試合に出るのは今回が初で。だからって出場を躊躇していると、ずっと足踏みし続けるMMA人生になってしまうと思うんです。ここで一回ステップアップできるなら挑戦したい、という気持ちでいます」

——翌週にはパンクラスのミドル級KOP、内藤由良選手もDWCSに臨みます。同じ階級の日本人ファイターとして意識するようなこともないですか。

「ないです。同じ日本人ファイターである、というだけで。今回UFCは内藤選手と契約したいマッチアップなのかな、とも思っています。それだけ立場が違うなかで比べても仕方ないですよね。自分は自分であって」

UFC2から30年の時を経て、再び大道塾の選手がオクタゴンに入る

——DWCSの試合を目前に控えて、それだけ自分自身のことを客観視できていることも凄いですね。

「いえいえ(苦笑)。いわばUFCはプロモーターとしてプロフェッショナルであり、こちらもプロのファイターとして自分に何がもとめられているかは理解しないといけないと思うんですよ。今回、自分の立場は相手を立てるための脇役だと考えています。そこで僕が勝ったりすると、視ている側としても面白いでしょうし。

もちろん自分が一番欲しいものは、UFCとの契約です。UFC2から30年の時を経て、再び大道塾の選手がオクタゴンに入るということを大切にしたかったです」

——UFC2から30年! その言葉を聴くと、格闘技ファンの気持ちが蘇ってきます。以前、オクタゴンのスポンサーバナーに「KUDO」という文字が見えた時は興奮しました。「KUDO」が何の会社かは分かりませんが……。

「自分も視ていて気になりました! 調べてみると飲食関連の会社みたいですね。詳しいことは分からないのですが」

——そうだったのですね(笑)。では対戦するベルガウイの印象を教えてください。

「好き嫌いがハッキリしている選手ですよね。距離を取って打撃で戦うのは好きだけど、距離を詰められるのは嫌い。自分にとって気持ち良いことを続けたい選手だと思います。それはキック時代から今のMMAに至るまで変わっていなくて――。僕も20年、格闘技をやっているから分かるんです。長い期間をかけて染みついたものは消えない。なかなか新しいスタイルに変えるのは難しいですよね」

——昨年のトゥーリオ戦でも、打撃の圧をかけられたら極端に手数が減っていました。

「たぶん打撃面がしっかりしているからこそ分かる部分ってあるんですよ。打撃を知らない人のほうが、プレッシャーをかけられても無視して打ち返してきたりとか。でも——自分もそうですけど、打撃の間合いが大切だと分かるからこそ、間合いを保とうとしてしまうところがある。そういう意味ではメチャクチャ分かりやすいです。それとグラップリングは何もやっていないんじゃないか、というレベルで。ただフレームが大きいので、そこは気にしないといけないです」

——そのベルガウイを相手に、遠い間合いで待つのはリスクがあります。となると至近距離で戦うことになるのでしょうか。

「自分もリーチが長いわけではないし、かといってパンチをよく使うタイプではないので、近い距離で組むチャンスを探すことにはなると思います。また日本人選手がUFCと契約することが増えてきたなかで、まだ中量級の選手は少ないです。そんななかで自分がUFCとの契約を目指して頑張ります」

■視聴方法(予定)
9月11日(水・日本時間)
午前9時00分~UFC FIGHT PASS

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【Shooto2023#06】キム・ウンスの強い右をかわしてTD、さらにヒジ打ちを見せた岩﨑が大差判定勝ち

【写真】(C)MATSUNAO KOKUBO

<ミドル級/5分3R>
岩﨑大河(日本)
Def.30-26.30-27.30-27.
キム・ウンス(韓国)

キム・ウンスが右ストレートと右フックを繰り出す。距離が近くなったところで岩﨑が組みつき、ボディロックでケージに押し込む。キム・ウンスはケージを背にしながら左ヒザをボディに突き刺す。岩﨑が足払いで左に倒すもテイクダウンができる。そのまま両脇を差し上げてケージに押し込み、ヒザとカカト蹴りで削っていく。離れたキム・ウンスが岩﨑の蹴りに右ストレートを合わせる。

岩﨑の左前蹴りを払ったキム・ウンスに対し、岩﨑は組んでから両腕を差し上げてドライブする。岩﨑の腰を押して離れたキム・ウンスだが、一気に距離を詰めた岩﨑が左ヒジを当てながらクリーンテイクダウンを奪い、マウントまで移行する。さらにバックマウントを狙う岩﨑、キム・ウンスは右腕を岩﨑の右ヒザ裏につけている。キム・ウンスが振り落とそうとしたところで、岩﨑は左腕に腕十字を仕掛けつつ、後ろ三角で捕えた。頭を抜いて立ち上がるキム・ウンスは、再びグラウンドに持ち込まれるも、ギロチンからリバーサルに成功した。

2R、岩﨑が左ミドルを2発。キム・ウンスが右フックから組みつき、右腕を差し上げて岩﨑をケージに押し込む。差し返した岩﨑がキム・ウンスを押し込み返す。キム・ウンスの足払いを耐えた岩﨑は、さらに内股でバランスを崩すも、体勢を立て直して反対に足払いで尻もちを着かせた。両者が立ち上がり、岩﨑がキム・ウンスをケージに押し込む。小外刈りで崩した岩﨑は、バックを狙いながらキム・ウンスのボディに左ヒザを突き刺す。

ヒザを着いたキム・ウンスに対し左足を差し入れた岩﨑が、バックからコツコツとパンチを入れていく。キム・ウンスを寝かせると左のパンチとヒジを叩き込む岩﨑。キム・ウンスは後頭部への打撃だとアピールするがレフェリーは止めず。岩﨑がパンチとヒジを連打すると、キム・ウンスは明らかに疲労の表情を浮かべる。残り10秒で岩﨑が三角から四の字ロックに移り、鉄槌を落とし続けた。

最終回、岩﨑が左ハイと左ローを散らす。右前蹴りに右フックを合わされたが、蹴りで距離を取る。キム・ウンスが右フックを振ろうとしたところで岩﨑は組みついてケージに押し込んだ。キム・ウンスの投げを耐えた岩﨑は、右ヒジを打ち込みながら離れる。岩﨑は左ミドルハイを放ってサークリングする。キム・ウンスの右が岩﨑の顔面をかすめるも、組みついて凌ぐ。

ケージ際で両腕を差し上げている岩﨑は、キム・ウンスが顔を起こすとヒジを放っていく。さらにケージに押し込む岩﨑の右ヒジが、キム・ウンスの顔面を捕えた。ケージ中央で岩﨑の右前蹴りがキム・ウンスの下腹部に当たり、試合が中断される。再開後、岩﨑はサークリングしながら左ハイを見せた。キム・ウンスの右をかわして組んだ岩﨑が、クリーンテイクダウンこそ奪えなかったものの組み勝った。

ジャッジ1名が4ポイント差をつける判定で勝利した岩崎は「僕が修斗も空道もパラエストラも背負って戦います!」と宣言した。

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