【写真】PFLで見せた成長度合は、いきなり2段階ステップアップしたようにも感じられた東だけに、今回の試合は非常に楽しみだ (C)SHOJIRO KAMEIKE
28日(金・現地時間)に米国カンザス州カンザスシティのメモリアルホールで開催されるInvicta FC55「Bernardo vs Rubin」で、東よう子がテイラー・ガルダードとバンタム級で対戦する。
Text by Shojiro Kameike
2022年5月にDEEP JEWELSフェザー級王座を獲得した東は、翌2023年にPFL女子フェザー級に参戦するも2連敗。今年に入り、Invicta FCで再スタートを切ることが発表された。その東がPFLで経験した2試合を糧に、ここまで取り組んできたことを語ってくれた。
――昨年のPFL出場から1年が経ち、今回Invicta FC参戦はいつ頃から話が進んでいたのでしょうか。
「前からInvictaに出るお話はあったものの、スケジュールが分からなくて。このまま決まらなければ一度、国内で――と考えていたんです。正式に決まったのは今年に入ってから、ですね」
――国内で試合をするという選択肢もあるなか、東選手にとっては海外で戦うことを優先したかったですか。
「そうですね。米国で試合ができることは貴重ですし、試合できる大会があれば米国で戦いたいとは思っていました」
――PFLはフェザー級で出場しましたが、今回Invictaではバンタム級で戦います。
「自分としては『海外で試合をするうえで、フェザー級とバンタム級では、どれくらいの違いがあるんだろう?』と楽しみではあります」
――東選手はDEEP JEWELSでフェザー級王座を獲得したあと、次のダイヤモンドローズ・ザ・ロケット戦は、海外進出を見越してバンタム級に落としていました。しかしPFLはフェザー級で戦うことになり、階級差は感じましたか。
「計量時と試合当日で、相手の体の大きさが違いました。やっぱり当日は相手の大きさを感じて。だけど自分がフェザー級で出ると決めたことだし、負けた言い訳にはならない。実際、それが2連敗した理由だとも思っていないです」
――PFLでは初戦でマリーナ・モフナトキナを相手に黒星。続く2戦目のオレナ・コレスニク戦は敗れたものの、モフナトキナ戦で敗れた要因を克服しつつあったと思います。それはコレスニク戦の前に課題として挙げていた「スピードで対抗し、自分が先に当てること」でした。
「初戦は緊張しすぎて、自分が自分じゃない――みたいな。ずっとフワフワしているような感じでした。2戦目は慣れたというか、セコンドの声も聞こえていたし、やるべきことを整理して臨むことができたとは思います」
――2戦目はコレスニクのパンチも見えて、東選手が足を使い、パンチを散らすことはできていたと思います。だからこそ「PFLでもう1戦見たい」というのが正直な感想でした。
「ありがとうございます。自分としても、できるならもう1試合やって、自分の実力を試したいという気持ちもあったんですよ。でも、2試合終えて『リリースされるだろうな』と思いました。女子に関して次の年はフライ級だと聞いていましたし、私もフライ級に落とすのは無理で。その結果リリースというのは、米国の厳しさを知る良いキッカケになりましたね」
――ケイラ・ハリソンがUFCに行き、女子フェザー級のシーズンはなくなりました。ところで次戦の相手テイラー・ガルダードは2021年にPFL女子ライト級で戦っています。話を戻すと「もう1試合やって、自分の実力を試したい」というのは、すぐに試したかったですか。
「そうですね。1年間は空けたくない、と思っていました。2~3カ月後は難しいけど半年後ぐらいには――と。でも今考えると、この試合間隔がちょうど良かったのかなと思うんです。今、練習の中で打撃からテイクダウンとかMMAとして基本的なことを、自分の中で落とし込むことができていて。その成果を次の試合で出すのが楽しみですし、結果的に試合するのがこの時期で良かったなと考えています」
――そのPFL女子フライ級に渡辺華奈選手が出場しています。ここまでの2試合はご覧になりましたか。
「……正直、彼女が米国で凄い試合をしていることに対して、悔しい気持ちがないわけではないです。ただ、自分も米国で試合を控えている立場で言うと『日本から行っても、それだけ戦えるんだ。自分も頑張ろう』という励みにはなっていますよね」
――では東選手ご自身が、今回のInvicta出場に向けて新たに取り組んできたことはありますか。
「今まで女子選手と練習していても、思いきり打撃を当てることは少なかったんですよ。男子の練習でも同じぐらいの距離感でやっているので、自分の打撃が当たる感覚と距離を意識した練習はそこまで――という部分はありました。でも今はジムの若手を捕まえて……」
――ジムの若手をボコボコにしているのですか(笑)。
「そんなことはしていません(苦笑)。練習で自分の中でリミッターを外すというか。とにかく打撃を当てられても前に出て、逆に打撃を当てていくという練習をやっています。おかげで自分も良い打撃を当てることができたり、良い形で組めるようになったりとか。あとはポジションのスパーでも、今までは体重をかけたりするのも気を遣ったりしていたんですよ。それも全力でやるようにしたら、うまくハマってきていて」
――グラップラーが組みつくために、ストライカーを相手に打撃で上回らないといけない。それが今のMMAですよね。
「米国に行ったら相手が全力でパンチを振ってくるのは当たり前で。その打撃に対して丁寧に対応していても、自分が前に出られなければ意味はないし。だったら相手が振ってきても自分が前に出ていかないといけない。どれだけ蹴りが入っていても、そこからもう一つ前に行けば良かった。それは米国の2戦で学びました」
――そこで次の試合に関するお話ですが、対戦するガルダードは何か突出した武器があるわけではない。しかし勝ち残る強さがある、というイメージを持っています。
「試合映像を視ていると、重い。一発のパンチも重いし、距離を詰めてくる圧力の重さ、それから寝技の重さもある。打撃から突進してきてボディロックで組む、という感じですよね。
柔道技で投げられている場面もあるけど、気づけばトップを取っていたりする。まず体そのものが強いと思うんですよ。自分としてはその重い一発をもらいながら、どうやって組みに行くか。一発にスピードはないと思うので、こちらが打って相手が打ち返した時に自分がどうするか――ということばかり考えています」
――さらにガルダードはライト級からバンタム級に落として、どれだけ動けるかもポイントになるかと思います。まず体重を落とせるのかどうか……。デビュー当初はバンタム級で戦っていたようですが。
「それも心配はしているんですよね(苦笑)。たとえ減量でフラフラになって、試合で苦しい展開になってもリカバリー力は凄いと思うので、油断はできないです」
――Invicta参戦にあたり、現在の目標はInvicta王座になりますか。
「そうですね。何か目標がなければ戦う意味もないと思いますし、ベルトは欲しいです。でも毎回『頑張ります』と言っていて、その『頑張ります』が自分にとってプレッシャーになっている気もするんですよ(笑)。だから、まずは試合を楽しみたいです」
■視聴方法(予定)
6月29日(土)
午前8時00分~Invicta FC Official YouTube & Facebook(Prelim)