【写真】もう10日もすれば、NAIZA FCでタイトル防衛戦が控えている。現地の関係者が明言するジュースフリーで、どのような戦いを見せることができるか (C)MMAPLANET
日本と韓国、MMAにおいても永遠のライバルである両国。Road FCを頂点とするK-MMAは規模的には日本のRIZINのようなビッグステージを持たない。対してUFCファイターの評価は引退したコリアンゾンビに代表されるように、韓国勢の方が高い。9月のDEEP vs BLACK COMBATで後者が日本の老舗を圧倒した。日韓関係に少し変化が見られるようにもなった10月最終週に訪韓、K-MMAの今を歩いた。
Text by Manabu Takashima
特集「K-MMA、2023年・秋」。第五弾はDEEPBLAC COMBAT対抗戦で、恐るべき強さを見せつけたユ・スヨンをソウル郊外プチョンのBlack Combatジムに訪れた。
石司晃一をワンテイク、コントロールからTKOで下したZEUS FCフェザー級、Black Combatライト&フェザー級、NAIZA FCバンタム級、そしてDEEPバンタム級チャンピオン──韓国柔術界最年少で黒帯を巻いたユ・スヨンはMMAにおける柔術の重要性と、UFCへの道について話した。
──このジムはBlack Combatのオフィシャルジムなのでしょうか。
「ハイ、Black Combatの本館です。この間デジョンにもジムができて、今ブラック代表はソウルにもジムを創ろうと計画しているようです」
──昼過ぎのこの時間で、ここで練習しているのはどういう人達なのですか。
「Black Combatチームの選手で、プロだけでなくアマやセミプロの選手たちもいます。彼らは他のジムに所属しているのではなく、ここだけで練習しています。午後2時からは選手練習で、他の時間帯は一般の人が通うジムなんです。指導もBlack Combatのファイターがやっています」
──ではユ・スヨン選手はどういった関わり方を、このBlack Combat本館としているのでしょうか。
「もともと所属しているボン柔術の監督が、ここの館長になったので自分もチームメイトと一緒に選手練習に参加している形です。他のチームの選手も自由に参加できるクラスになっています」
──プロモーションが所有するジムで、自由に練習できる。対戦する可能性がある選手とも顔を合わせるのでしょうか。
「そのケースはこれまでなかったですね。過去の対戦相手は所属するジムで練習をしていました。自分はここで練習だけでなく、パーソナルで指導をしていますMMAの練習は殆どここでやっている状態ですね。夜も練習していて、ボン柔術でトレーニングをするのは週に1度ぐらいになっています」
──いうともうBlack Combatの専属で、給料が出るような契約形態なのですか。
「給料はありませんが、パーソナル・レッスンの指導料は貰っています。ファイトマネーと指導料ですね。マネージャーも別にいますし、自分の試合のことも自分達で決めています」
──それは良かったです。
「もちろんブラック代表とも相談はしますが、自分は他の団体にも自由に出ることができます」
──とはいっても韓国国内において、Black Combat以上に勢いのあるプロモーションはないですよね。
「自分はUFCが目標ですし、Black Combat以外の国内の大会に出ることはないと思います」
──押忍。では、改めて9月の石司戦について尋ねさせてください。あの石司選手を一方的な展開でTKOした衝撃的な試合でしたが、どのようなゲームプランを立てていたのでしょうか。
「石司選手は強いと聞いていたので、自分のグラップリングがどれだけ通用するのかを確認しようと思っていました。初回に組みを試して無理なら他の手段で戦う予定でしたが、グラップリングでいけたのでそのまま戦いました」
──グラップリングの展開に持ち込む。狙い通り、最初のトライでテイクダウンを奪うことができました。
「石司選手は序盤から自分の動きができるというよりも、粘って最終的に判定をモノにするファイターだと理解していました。スタンスが広くて、ステップを多用することはない。なのでパンチのフェイントで距離を詰めることができれば、テイクダウンができる自信はありました。テイクダウン後もコントロールできる。その通りの試合展開になりました」
──昨年の大晦日、Black Combatでのイ・ジンセ戦でケージレスリングの強さは十分に見せてもらっていたのですが、日本ではケージを使うことなくシングルレッグを決めきりました。
「ハイ。倒せないとケージを使うつもりでした。実際、シングルレッグに入る時まで打撃の鋭さは伝わって来ていて。だからこそ、クリンチに持ち込んでもテイクダウンしないといけないと思って戦いました。
半面、テイクダウンに成功してから寝技の展開になると、石塚選手にはそれほどでもない。だからプレッシャーをかけて、テイクダウンを奪うことができればポジションをキープできるという考えでした。実際、倒して上を取ると『予想通りだ』と勝利を確信できました」
──テイクダウン以上に、寝技のコントロールに驚かされました。パウンドがあるなかで、あの頭の位置でコントロールできる選手はそうはいない。頭を押し付けるわけでなく、上体を起こして殴るでもない。その中間の動きで、パウンドのある柔術をしていたので。
「もともと自分は柔術を使って、MMAを戦っていました。でもMMAにはレスリングが欠かせないので練習に取り入れ、去年まではレスリングが7割で、柔術には3割程度しか時間を割かなくなっていました。ただし、レスリングが上達することでMMAにおける柔術の重要性に気付いたんです。
やはり柔術には力をセーブして、相手を抑え込める技術が多いです。だから最近では柔術が6割、レスリングが4割というバランスで練習するようになっていました。柔術の本来の目的はパスをして、相手を仕留めることです。
ただし、そこに拘り過ぎると自分の方が削られます。なので相手の動きに合わせて殴れるスペースができれば殴り、必要になれば力を使ってレスリングの技術で抑える。パウンドとレスリングの間で柔術を使う。あるいは柔術の技術で、パウンドとレスリングをサンドウィッチするような感じです」
──なるほどぉ!!石司選手が足を効かせよう、腰を切ろうという方向とは別の方にあっさりと回り抑えていたのも見事でした。
「実際に、頭をつけてコントロールする方が多いです。でも、以前にあの頭の位置でも上手くコントロールできたことがあり、9月の試合でも石司選手の反応に合わせて、頭をあそこに置いて戦うことができたということもあります。相手の動きを読むことができるのは、これまで柔術をやってきた成果だと思います」
──キックボクシング+レスリング。柔術の時間になかなか練習を避けない。日本のMMAは、そのような状況が長かったです。
「柔術をすることは、絶対的にアドバンテージになります。スクランブルの対処にしても、柔術を理解している方が有利になれます。組み技のなかでカウンターのカウンターという攻撃も可能になるので。そこが自分のMMAでも、長所になっています」
──今も道着の練習をしているのですか。
「ハイ。ボン柔術でIBJJFのスタイルで練習している一般の人たちと、やっています。今、柔術はリバースデラヒーバからのバック狙いなど、MMAとして使うことが難しい技術も多いです。ただし柔術の強いベース、レッグドラッグやトレアンドパスという風にしっかりと手順を踏んで、圧力をかけてパスをする──MMAに絶対に生かせる動きも残っています。一気に動くのではなく、じわじわと動くことができる柔術は自分のMMAに欠かせないですね。
MMAですから、どのスタイルでもMMAに生きない技術はないと思います。実際、自分もMMAに集中し過ぎて柔術をやらなかった時期がありました。その間、グラップリングがどんどん大雑把になってしまったんです。結果、動きの多い選手を抑えきれないことが増えました。そこで柔術に回帰できました」
──押忍。その上であの試合があるので、説得力抜群でした。ところで先ほど目標はUFCだと言われていましたが、そこに向けて今後のキャリアの積み方をどのように考えていますか。
「12月21日にNAIZA FCでバンタム級王座の防衛戦があります。来年はBLACK COMBATフェザー級のタイトル防衛戦、そして日本でDEEPバンタム級の王座防衛戦も戦うことになります。Road to UFCも視野に入れていましたが、ダイレクトにUFCと契約する道もあるとはずです。今、自分を必要としてくれるプロモーションで試合をして勝ち続けると、自ずとUFCと契約できるはずです」
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