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【PJJC2022】パン柔術見所。ライト級のムラサキ✖アウヴェス。ミドル級はダウプラ、ヒメネスらに注目

【写真】昨年のパンナムは8ファイナル敗退だったアンディ・ムラサキ。今年はどうなる?!(C)EUG

フロリダ州キシミーのシルバー・スパーズ・アリーナで6日(水・現地時間)から、IBJJFパン柔術選手権が10日(日・同)の日程で始まっている。

世界の強豪が集結し、6月の世界大会の行方を占う上でもきわめて重要なこのパン柔術。プレビュー最終回は橋本知之が出場するライトフェザー級、嶋田裕太が出場するフェザー級以外について考察したい。


【ルースター級】
本命は2020年のヨーロピアンでブルーノ・マルファシーニ越えを果たし(その年は惜しくも決勝で橋本知之に敗れたものの)、今年のヨーロピアンで優勝を果たしているタリソン・ソアレスか。ソアレスと決勝で対峙する有力候補としては、2019年のヨーロピアンで芝本幸司に快勝したカルロス・アルベルトが挙げられるだろう。

(C)EUG

【ライト級】

この大会2連覇中、AOJのジョナタ・アウヴェスがエントリー。昨年のEUG2のトーナメント決勝にて、柔術の神の子ことミカ・ガルバォンと対戦し、一度トップを取ったら這いつくばってでもキープする執念の戦いぶりでリードを守り切って優勝した姿が印象深い。

そして別ブロックには、ティーン時代を日本で過ごし、昨年のEUG1で世界的黒帯を3タテして衝撃の黒帯デビューを果たしたアトスのアンディ・ムラサキがいる。

23歳のアウヴェスと22歳のムラサキは今年のLAオープンの決勝でも対戦し、この時は8-8のアドヴァンテージ差でアウヴェスが勝利している。柔術界の未来を背負う新世代のライバル対決が、今回決勝でまた見られる可能性は高そうだ。

(C)SATOSHI NARITA

【ミドル級】

大本命は、昨年の世界大会初出場にて初優勝を果たしたタイナン・ダウプラ。鍛え上げたフィジカルを武器に、万力のオープンガードで相手をたちどころにスイープして上を取ると、問答無用の圧力で相手のガードを潰して極めまで持ってゆく戦い方は圧巻だ。

(C)FLOGRAPPLING

そのミドル級、ダウプラの初戦が要・注目だ。

1回戦シードのダウプラが初戦で当たる可能性が高いのが、WNO等のノーギシーンでも目覚ましい活躍を見せるロベルト・ヒメネスだ。見事なバックグラブの技術とどこからでも極めを狙うダイナミックな戦いを身上とするヒメネスが、ダウプラの盤石の戦いぶりを崩せるか、注目したい。

ここをダウプラが順当に勝ち上がれば、おそらく準決勝で当たるのはホナウド・ジュニオール。昨年はパン大会、世界大会とどちらもダウプラの軍門を下っているだけに、雪辱に向ける気持ちは強いだろう。

もう一つのブロックにも強豪選手が散見されるが、ダウプラとの決勝を期待したいのは豪州出身のリーヴァイ・ジョーンズレアリー。抜群の切れ味のベリンボロ・ゲームの持ち主で、以前絶対王者ルーカス・レプリの必殺ニースライス・パスを凌駕してみせて世界を驚かせた。レアリーのベリンボロは、ベリンボロを世界に広めたメンデス兄弟を師に仰ぐダウプラにどこまで通用するのだろうか。

【ミディアムヘビー級】

最大のビッグネームは、階級世界制覇のレジェンド、レアンドロ・ロ。ユニティのムリーロ・サンタナ門下に入ったロと、別ブロックにいる師のサンタナによるクローズアウトが実現するかどうかが注目だ。

この二人を止める候補としては、メンデス兄弟の弟子にして昨年の茶帯世界王者マテウス・ホドリゲスや、昨年のF2W 166でダンテ・リオンに勝利する等ノーギで活躍するマニュエル・ヒバマーらが挙げられる。

【ヘビー級】
第1シードはポーランド出身、今年のヨーロピアン王者のアダム・ワルジンスキ。準々決勝では2019年のADCC世界王者にして、世界柔術でも二度3位入賞しているマテウス・ディニズと当たる可能性が大きく、この対戦がトーナメント序盤の大きなヤマとなりそうだ。

別ブロックでは、素晴らしい切れ味のヒールやギロチンを武器にノーギシーンで活躍し、1月のWNOではクレイグ・ジョーンズを破る殊勲の星を挙げたペドロ・マリーニョがエントリー、道着着用での戦い方も注目だ。

【スーパーヘビー級】
昨年の世界柔術初出場初優勝を果たしたエリキ・ムニスが大本命。長いリーリを活かしたスパイダーガードはまさに難攻不落、別ブロックにいる兄のアンデウソン・ムニスとともにクローズアウトを狙う。

が、アンデウソンのブロックには、エリキと昨年の世界大会決勝を争い僅差で敗れたフィリッペ・アンドリューや、そのアンドリューに道着着用の世界大会では敗れたものの、ノーギ・ワールズではアナコンダ・チョークで一本勝ちを収めて優勝したディヴォンテ・ジョンソン等の有力選手が控えている。

(C)SATOSHI NARITA

【ウルトラヘビー級】

最大のビッグネームは、サイボーグことホベルト・アブレウ。13年にADCC世界大会無差別級を制し、昨年もノーギ・ワールズで優勝する等その強さは健在だ。ノーギ専門家というイメージが強いが。その必殺のトルネードスイープは、道着着用にてグリップを確保することで威力が増すはずだ。準々決勝で当たる、昨年サウスアメリカンを完全制覇しているワラス・コスタとの試合がまずはヤマとなりそうだ。

もう一つのブロックには、強靭なベースを誇り、昨年、今年とワールドプロ大会を2連覇しているグーテンベルギ・ペレイラがいる。ちなみにペレイラとコスタは今年のグランドスラム・ロンドンの決勝でも当たり、僅差でコスタに凱歌が上がっており、今回の決勝で再戦が実現する可能性は大いにあるだろう。

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【BDP03】強さと手堅さを見せたエルベース・サントス、決勝でムニス兄弟・次男のアンデウソンに敗れる

【写真】若手中心、彼らが本格的に柔術界が活動再開した時に黒帯の中心にいるかもしれない(C)BIG DEAL PRO

10日(土・現地時間)、ブラジルのフロリアノポリスにて、プロ柔術団体Big Deal Pro の第3回大会が行われた。まずは大会の目玉であるヘビー級GPの模様をレビューしたい。


若手中心のメンバーにあって、実績と知名度では頭二つほど抜けているエルベース・サントスは一回戦で、フィリッピ・ペナの黒帯ギリャルメ・ランベルトゥチと対戦した。

場外ブレイク後の再開時の体勢をめぐって議論となり、不満な顔をしながらもランベルトゥチの主張するラッソーグリップを作らせたサントスは、再開後すぐに豪快にそれを引きちぎってみせる。さらに右に動いてのパスからバックを奪い、フェースロックでアゴの上から強烈に締め上げてタップを奪って圧勝した。技を離すと相手を両手で押し除けたサントスは、儀礼的な握手だけ交わしてマットを去った。

続く準決勝でサントスは、対抗馬の1人と思われたワレシ・コスタとの対戦に。コスタ得意のスタースイープで体勢を崩されながらも、ストレートフットロックでアドバンテージを奪うも──結局上を許して2点を献上してしまう。

この時にサントスが下から50/50で足を絡めて、シーソーが成立。最後に上を取った方が勝ちという条件下で、両者は上下を入れ替え続けた。

残り40秒のところで、相手に背中を向けるようにして上を取ってリードしたサントスは、なんとか上を取り返したいコスタの肩口を押さえてその動きを制すると、自らはターンして足の絡みを解きながら向き直ることに成功。そのままコスタの上体を押さえつけてニースライスパスの形を作った。

最終局面で決定的に有利な状況に持ち込んだサントスは、舌を出してバッドボーイスマイルを決める。残り10秒、最後の望みを懸けて下から煽ろうとするコスタだが、サントスは難なく上をキープして試合が終わった。

世界レベルの相手との神経戦を、強靭なベースと見事な体捌き、冷静な状況判断を合わせた素晴らしい動きをもって制したサントスは、ジャケットをはだけて上半身を露出させアピールした。

こうしてサントスは1回戦、準決勝とバッドボーイぶりは発揮しながらも、それを暴走させず柔術競技における強さとプロとしてのアピールに昇華させ、決勝進出を決めた。

<ヘビー級GP決勝/8分1R>
アンデウソン・ムニス(ブラジル)
Def.0-0 A1-0
エルベース・サントス(ブラジル)

サントスを決勝で待っていたのは、イエタン・コスタの代わりに出場したアンデウソン・ムニスだ。兄にアレッックス、弟にエリキを持つムニス兄弟の次男は、2019年ムンジアル茶帯無差別級において、弟エリキとクローズアウトを達成している有望株だ。

長い手足を活かした、弟に劣らぬ切れ味のスパイダーガードとラッソーガード、さらにラペルガード、シングルレッグエックス等も用いた多彩なスイープの仕掛けを使いこなし、一回戦、準決勝を突破してきた。

サントスは今年のBJJ Stars 05のトーナメント1回戦でエリキ・ムニスと対戦、オープンガードを攻略できず敗れているだけにアンデウソン・ムニスも決して相性の良いタイプではない。

試合開始後、引き込みを狙うムニスに対し、サントスは素早いテイクダウンのフェイントを見せる。が、ムニスは一瞬だけサントスの体を掴みながら座りながら、引き込むことに成功する。サントスは瞬時にムニスの右足を掴んで横に捌いてのパス狙いへ。が、ムニスもすぐに反応して正対してみせた。

ムニスは、立っているサントスの右手首を左で掴む。これが彼のオープンガードの基点となる形だ。そこから右手でサントスの足を掴んで崩しにかかるが、強靭な足腰を持つサントスはベースを保つと、ムニスの右足を捌いて素早いトレアナ・パスへ。ムニスは、回転して距離を取った。

残り5分。右ヒザをついた姿勢を取ったサントスに対し、ムニスは内側から右足を入れてサントスの左足に絡めるシングルレッグエックスを作るが、サントスのバランスは崩れない。やがてムニスは50/50を作るが、それでも展開は動かず。座って胸を張ったサントスが絡まれている左足を下げると、ムニズはクローズドガードを作った。

ここでも両者とも仕掛けず、お互いに2度目のペナルティが与えられる──展開を経て残り1分に。両者揃って、終盤の勝負所でポイントを奪って勝とうという腹積りか。

残り1分。立っているサントスに対して、ムニスは左足でサントスの右足にデラヒーバで絡む。相変わらず強靭なベースでバランスを保つサントスだが、左手でフックを補強したムニスは、さらに右手でサントスの右手首をクロスグリップで掴んで引き寄せると、そのまま横向きに起き上がるようにサントスを後ろに崩すことに成功する。

尻餅を付かされたサントスはすぐに体勢を立て直して立ちあがると、ここで場外ブレイク。そしてレフェリーはムニスにアドバンテージを与えた。

残り10秒で差を付けられてしまったサントスは、テイクダウン狙いから引き込んでのスイープを狙うが、ムニスを崩すことはできず試合終了。

勝負所において、自らの持つ多数の攻撃手段の中で最適なものを選び、確実にポイントを取る強さを見せた若きオープンガード職人のアンデウソン・ムニスが、見事なGP優勝を決めた。

準決勝では見事に残り10秒で相手を出し抜いたものの、決勝ではムニスに上を行かれてしまったサントスは、試合終了と同時にムニスをハグし、その頬にキスをして勝利を祝福し、内に秘めた凶暴さをスポーツマンシップで制御してみせた。

6月のエリキ戦に次いで、道着を利用したオープンガードゲームへの対処という課題は残ったものの、初戦と準決勝で見せた圧巻の極めと体捌きは、この怪物が将来世界王座奪還を果たす期待を抱かせるのに十分なものだった。

一方、見事にビッグネームを倒して強豪揃いのGPを制したアンデウソン・ムニス。各種オープンガードから多彩な仕掛けを持ち、勝負勘に秀でていることに加え、重量級離れしたスピードとキレを誇るサントスのトレアナ・パスにもしっかり対応する等、防御力も出色だ。

将来、弟のエリキとともに世界柔術の黒帯無差別級を兄弟クローズアウトという、前代未聞の偉業を達成する可能性すらありそうだ。

また、そのムニスと準決勝で対戦し、ひとまわり小さい体格ながら互角の攻防の末にレフェリー判定で敗れたガブリエル・エンヒッキ、サントスに準決勝であと一歩まで迫ったワレシ・コスタ、そのコスタに1回戦で逆転負けしたものの、序盤にバックを奪ってみせたマーカス・ヒベイロ等も、このトーナメントで輝きを見せた。

世界レベルの重量級の新鋭が次々に登場するブラジルの層の厚さを改めて感じさせる、今回のヘビー級GPだった。

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