【写真】舌好調なジャレッド・ブルックスでした(C)MMAPLANET
3月1日(金・日本時間)にカタールはルサイルのルサイル・スポーツ・アリーナで開催されるONE166「Qatar」でONE世界ストロー級王者ジャレッド・ブルックスが、ジョシュア・パシオの挑戦を受ける。
Text by Manabu Takashima
2022年にそのパシオからベルトを奪ったブルックスだが、昨年はMMAの試合はなくマイキー・ムスメシの持つサブミッショングラップリング世界フライ級王座に挑んで敗れた。そのブルックスが、1年3カ月振りのMMAでの試合に向けて胸の内をダイレクトにぶつけた。
かつてのようなトラッシュ・トーカーではない。それでも、相手をこき下ろす言葉はリズムに乗ってスラスラと口をつく。それでいて、変わらない日本への想い。アスリート然としていない実力者、それがブルックスの魅力だと再確認できた。
──カタールでの試合になりますが、中東を過去に訪れたことは?
「ないよ。今回が初めてだ。でも、ホテルは本当に綺麗で食事も最高だ。こうやって旅をするのは大好きだけど、本当にカタールに来ることができてハッピーだよ」
──東南アジアと中東、どちらの方が移動は大変ですが?
「そこは特にどちらが良いっていうことはないかな。やはり試合前は少しでも早く現地入りをして、調整をしたいから。ただ試合の2日前にシンガポールに入った時も問題なかった。どんな状況でも開催地に行って、試合をする。それが僕の仕事だから。さっきも言ったように、どこへ行くのも最高だからね。ただし、これまでの人生で一番の訪問先は日本であることは譲りようがないよ」
──ありがとうございます。サービストークでない感じが伝わって来て、嬉しい限りです。
「だって2016年にWSOF-CG、そしてパンクラスで戦った時から、ずっとこうやって取材をしてくれるメディアもいて」
──そのMMAメディアとして、昨年のONEにはフラストレーションがたまりました。ムエタイやサブミッショングラップリングを盛り上げるために、MMAファイター……しかもチャンピオンが使われたような感じで。
「僕だってMMAをもっと戦いたかった。そして僕のスター性を重視し、米国大会でプッシュするべきだろうって思っていたよ。僕が防衛戦を行わないことで、ストロー級の動きも止まってしまう。選手たちもフラストレーションがたまる。でもプロとして、求められることをするのも僕の役割だ。MMAの試合が少ないことで不満が起こるのは、僕の責任ではなくてプロモーションの問題だから。僕自身は少しでも多くファイトをしたい。30歳、これからの5年間が僕にとってピークとなるだろうから。これからの5年は、可能か限りの試合数をこなしたい。
スーパースターになって皆を引っ張りたい。でも、米国人だ。アジアベースのプロモーションでその役割は求められていない。結果として自分のために戦うわけで、そこも気にしていないよ、もう。皆が僕を嫌っていても構わない。僕はリング、ケージに上がって戦うだけで。
ONEはムエタイと柔術をMMAのように大きなスポーツにしたいという考えがあるわけだし、MMAファイターがそこに交わるのは最上のアイデアなんだよ。だってMMAこそが、最も世界で知られたファイトなんだから。UFCがあり、日本にだってPRIDEがあってRIZINがある。ムエタイと柔術は、そこまでの大きな存在になっていない。まだ、スーパースタースポーツにはなり得ていない。だからね、そこに力を入れられて、MMAファイターがムエタイや柔術が知られるためのツールにされるなんて、実際はファッ〇〇フって気持ちだよ」
──アハハハハ。
「フ〇ック、柔術。ファ〇ク、ムエタイ。僕が最高のショーを見せてやるから」
──最高です。ところで今回の挑戦者はジョシュア・パシオになりました。タイトルを奪取したときに、初防衛の相手がジョシュアになると思っていましたか。
「僕はストロー級でやるべきことは、やり尽くした。ボカン・マスンヤネ、リト・アディワンをフィニッシュし、ヒロバ・ミノワも判定だったけどニア・フィニッシュまで追い込んでいる。ジョシュア・パシオをそうだ。他の試合よりは少し接戦だったけど、文句のない勝ち方だった。だから、なぜONEがまた彼と戦わせたいのか分からない。
とにかくジョシュア・パシオを再び倒し、僕はDJとの試合に向かう。今回、ストロー級最強だと証明し、DJを指名する。柔術なんてやっている暇はないぞってね。そして、もう2度とジョシュア・パシオと戦うことはない。ONEはジョシュア・パシオにチャンスを与え過ぎだ。今回の試合で皆を黙らせ、ジョシュア・パシオが二度と大口を叩けないようにする。フィリピン人のファンの皆がリアル・ファイター、本物のミックスマーシャルアーチストとはどういう人間なのか、正しい道に導いてやろうと思っている」
──押忍。ところでジョシュアとマンスール・マラチェフの試合は、どのように見ましたか。あそこでマラチェフが勝っていれば、今大会の挑戦者も違っていたかと。
「あの試合はライブで視聴していたんだけど、ジョシュア・パシオが勝ったと思ったよ。なぜか、僕はONEのルールを知り抜いているからだ。ギロチンのキャッチ、あれだけ勝った。ラウンド・バイ・ラウンドならマラチェフの楽勝だ。マラチェフはトップを取ってから、疲れてしまった。あの試合はマラチェフにとって、良いレッスンになったはずだ。ボディロックを懸命に続けていても、ONEでは勝てないってね」
──ギロチンのキャッチで勝てる……。ポジションを取ってサブミットできなくても、自分の優位が変わらない。そこが真のキャッチポイントで、逃げられると下になって不利な位置にいる仕掛けは掛け逃げに通じると思います。
「良い見方だと思う。ボトムになる仕掛けでも、腕十字ならキャッチがあっても良いかもしれない。ケガをさせる攻撃だからだ。でも、ギロチンに関してはキャッチの評価を下すのが凄く曖昧だ。と同時に、ONEでは下になることがユニファイドのようにマイナス要因にならない。ギロチンを防がれても、下からエルボーやパンチを入れると挽回できる。それがONEのMMAだ。ジョシュア・パシオはそこを頭に入れて戦っている。でもジャッジに関しては、何が有効な攻撃かはもう少し勉強してほしいところだ」
──ジョシュアもONEの裁定基準をよく理解して戦っていたと。そして挑戦権を手にできたわけですね。
「ただマラチェフとヨースケ・サルタとの試合を見て、今回のジョシュア・パシオ戦に向けてさらなる自信になったよ。この1年半で、僕が何を身ににつけたのか。しっかりと披露する良い機会になると思う。マイキー・ムスメシ戦のために、これまで以上に柔術に取り組んだ。そこで学んだものに、拳の利用方法を融合させてジョシュア・パシオと戦うことになる。
実はマラチェフはムスリムだし、カタールで挑戦者になるのはビジネスとして正しいと思っていた。でも、こっちに来てみて分かったよ。この国には凄い数のフィリピン人が住んでいる。
■2022年のワールドカップの際に話題になったが、カタールにおけるカタール人が占める人口は全体の1割程度で外国人労働者の人権問題が起こっていた。フィリピン人はカタールでインド人に次ぐ労働者数を誇る。
ジョシュア・パシオは人々を熱狂させることができるファイターじゃない。ただ単にフィリピンの同朋が、彼に思い入れを持っているだけなんだ。ジョシュア・パシオはグレートファイターだ……東南アジアではね。僕は合衆国からやって来て、与えられた試合を戦う。第1試合だろうが、誰が相手だろうが、戦う。ジョシュア・パシオはフィリピンの人達のサポートがあるから、この位置で戦うことができているに過ぎない。
ストロー級最強はジャレッド・ブルックスだ。誰も僕を倒すことはできない。ジョシュア・パシオが僕をKOしたり、サブミットすることは今回の試合も、これからも未来永劫に、絶対にない。どうすればアゴを砕くことができるのか、試合で見せてやる。そうすれば、ストロー級でもう誰も俺と戦いたいとは思わないようになるだろう。
ストロー級をドミネイトしているのは俺だ。徹底的にジョシュア・パシオを苦しめぬく。もうONEチャンピオンシップがどれだけジョシュア・パシオをプッシュしても、再浮上できないようにする。そして、フライ級に転向だ。ジョシュア・パシオは体だけは、俺よりデカい。バカみたいに減量している。本来はプロモーションが認めていないことをやって、ケージに上がってくる。通常体重で戦うという建前は、どこにいった?(笑)。ジョシュア・パシオが脱水をしていないわけがない。ワハハハハ。
試合の時は、きっと142ポンド(※64.86キロ。ストロー級リミットは56.7キロ)くらいはあるだろう。でも、そんな体の大きさは本物の前では問題ない。そして、俺はONEの米国大会で自分の今後を賭けた試合に挑む。米国はUFC、MMAにとって一番大きな市場だ。そこで俺が抜きん出ないと、どうなる? そうやって自分のキャリアを賭けた、ギャンブルに挑む。通じなければ、それで終わりだ」
──さすがのブルックス節。そして素晴らしい覚悟です。では、日本のファンに一言お願いします。
「アリガトーゴザイマース。2016年から僕のインスタ、フェイスブックをフォローしてくえる日本の皆、僕の君たちへの想い、愛は変わることはない。いつも、本当にありがとう」
■放送予定
3月1日(金・日本時間)
午後9時15分~U-NEXT
■ONE166対戦カード
<ONE世界ミドル級(※93.0キロ)選手権試合/5分5R>
[王者] ライニア・デリダー(オランダ)
[挑戦者] アナトリー・マリキン(ロシア)
<ONE世界フェザー級(※70.3キロ)選手権試合/5分5R>
[王者] タン・カイ(中国))
[挑戦者] タン・リー(米国
<ONE世界ストロー級(※56.7キロ)選手権試合/5分5R>
[王者] ジャレッド・ブルックス(米国)
[挑戦者] ジョシュア・パシオ(フィリピン)
<ヘビー級(※120.2キロ) 5分3R>
アージャン・ブラー(カナダ)
アミール・アリアックバリ(イラン)
<ボクシング147ポンド契約/3分3R>
ズハイール・カハタニ(サウジアラビア)
メディ・ザトゥー(アルジェリア)
<サブミッショングラップリング・フライ級(※61.2キロ)/12分1R>
オサマ・アルマルワイ(イエメン)
クレベル・ソウザ(ブラジル)
<ムエタイ147.75ポンド契約/3分3R>
ザファー・シャイック(トルコ)
ウラジミール・クズミン(ロシア)
<ムエタイ・フライ級/3分3R>
ザカリア・ジャマリ(モロッコ)
アリ・サルドエフ(ロシア)
<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
鈴木真治(日本)
ハン・ズーハオ(中国)
<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
山北渓人(日本)
ジェレミー・ミアド(フィリピン)