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【UFC307】TUF18以来、11年間も続く因縁に決着の刻。UFC女子世界バンタム級選手権ペニントン×ペニャ

【写真】オンナの意地が、世界の頂点を争う場で爆発。こ、こわい (C)Zuffa/UFC

5日(土・現地時間)、ユタ州ソルトレイクシティのデルタ・センターにて、UFC 307「Pereira vs Rountree」が行われる。アレックス・ポアタン・ペレイラがカイル・ラウントリー・ジュニアの挑戦を受けるライトヘビー級タイトル戦をメインとするこの大会のコメインは、新王者ラケル・ペニントンに元王者ジュリアナ・ペニャが挑戦する女子バンタム級タイトルマッチだ。
Text by Isamu Horiuchi

ペニントンは2018年5月、当時の絶対王者アマンダ・ヌネスに初挑戦するも終始圧倒され、5Rに背後からのパウンドでTKO負けを喫した。しかしこの敗戦が自分を見直すきっかけとなり、2020年6月から連勝を重ね、今年1月にマイラ・ブエノ・シウバとの王座決定戦に漕ぎ着けた。ここで相手の組技を凌ぎ主武器のパンチを当てて削ったペニントンは、5R判定3-0で激闘を制して新王座に就いた


対するペニャは、2021年12月にヌネスに挑戦。圧倒的不利という下馬評のなか初回の猛攻を耐え抜くと、2R突然雑になった王者の打撃にことごとくカウンターを合わせて大反撃に。怯んだヌネスに組みつき投げ倒すと、背後からチョーク一閃。世界を震撼させる大番狂わせを引き起こしてみせた

しかし8カ月後のリマッチでは、2Rに不用意にパンチで前に出たところにカウンターを合わされる形で3度のダウンを喫してしまう。その後も前に出続けたペニャだが、ことごとくヌネスにテイクダウンを合わされてしまい、5R判定で大敗して初防衛に失敗した。

2023年5月に予定されていたヌネスとの3度目の対決は、ペニャが肋骨を骨折してキャンセル。この時に代打のアイリーン・アルダナに完勝して防衛に成功したヌネスは、王者のまま引退を発表した。こうして空位となったタイトルを今年一月の決定戦でモノにしたのが、ペニントンというわけだ。

TUF18以来、11年間のドロドロ

今回が初対決となる両者だが、二人の因縁は11年前2013年に行われたTUFシーズン18シーズンまで遡る。この年初頭、UFCはロンダ・ラウジーを初代バンタム級王座に認定して初の女子試合を開催している。新設された女子部門の拡大を目論み、各チームに女性監督(ラウジーとそのライバルだったミーシャ・テイト)を迎えて女性選手たちを競わせるというはじめての試みが行われたのが、このTUF18だった。

予選を勝ちハウス入りを果たした8人の女子選手のなかで、チーム・テイトのドラフト1位に指名されたのがペニャ、3位指名がペニントンだった。ペニャはトーナメント一回戦にて、当時頭一つ抜けた実績&知名度を誇っていたベテラン、シェイナ・ベイズラーと1位指名対決に臨んだ。幾度となくテイクダウンを奪われても柔術流のスクランブルを駆使して動き続けたペニャは、突出した体力と圧力とアグレッシブネスをもってベイズラーを呑み込んでゆき、2Rにチョークで一本勝ち。

陽の当たらないところで長年努力を重ね、ついに大舞台で輝くチャンスを掴んだベテラン──日本流に「ジョシカク第一世代」とも呼べるだろう──を、新世代が若さと勢いで打ち砕く。あまりにも残酷かつ鮮やかに新時代の到来を象徴する一戦となった。

このシーズンにおいては予選でタラ・ラロサ、トーナメント一回戦&フィナーレでロクサン・モダフェリといったジョシカク勢も敗れ去り、時代の移り変わりを色濃く反映した。ただしモダフェリがその後階級を落として戦い続け、2017年には新設のUFCフライ級王座決定戦に出場、その後も2022年までUFCで活躍したことは特筆に値する。

閑話休題。

対するペニントンは、一回戦で長身のムエタイ使いジェサミン・デュークと対戦。デュークの強烈な前蹴りや膝や肘をもらいつつ、強烈なパンチを打ち返す大激闘の末に判定勝利を収めた。この試合はデイナ・ホワイト代表も絶賛し、ファイト・オブ・ザ・シーズンを受賞。「女性版フォレスト・グリフィンvsステファン・ボナー(※)」という声まで出るほど、今まで女子MMAに触れてこなかった層にその可能性を知らしめる試合とされた。

(※第一回TUF決勝のグリフィン×ボナーは、壮絶な殴り合いによってUFCの魅力を一般大衆に伝え、その後の人気爆発に大きく貢献したとされる試合。ホワイト代表は、30年を超えるUFC史上ベストバウト1位を聞かれた際には常にこの試合を挙げる。それほどその歴史的意義は高く評価されている)

素晴らしい内容の初戦を経て、決勝での対決が期待されたペニャとペニントンだが、ペニントンは試合前の右手の負傷の影響もあって準決勝で敗退。両者の対戦は実現しないまま、ペニャが準決勝&フィナーレともにその組み力を如何なく発揮して圧勝してシーズン優勝を果たしたのだった。(ペニントンはフィナーレの前座試合に出場してモダフェリに勝利

ちなみに両者は単にチームメイトというだけでなく、ハウス内の狭い二人部屋の二段ベッドの上下に陣取り生活を共にする仲でもあった。ペニャはこの種のリアリティショーの盛り上がりには欠かせない「自己中迷惑キャラ」を地で行く女性。常に自分の好きなように振る舞い、ハウス内の男女から煙たがられても一切気にせず、自分に向けられる非難を平然と他人に転嫁しては視聴者のヒートを誘っていた。

もっともシーズン序盤の二人は、(自分が同性愛者であることを公言し女性的な所作は好まない)ペニントンにペニャが「プリンセス風」メイキャップを施し、ドレスを着せてモデルウォークを教えるというコミカルな場面も見られ、関係は良好だった模様だ。

しかしペニントンはやがて、常に騒音を立て続けるペニャに耐えられなくなり本人に直接対峙する。が、ペニャは笑って「そんなことしてないわ」と全否定。呆れ気味のペニントンが「あんた精神安定剤が必要なんじゃない?」とこぼしても、ペニャは「私は至って冷静よ。みんな揃ってそうやって、私がしてもいないことを言って責め立てる嘘付きなのよ」と返したのだった。

とまれペニントンとペニャはともに、UFC女子部門の創設期にその未来を担う若手として登場し、先行世代を容赦無く打ち破り新時代の到来を告げた選手たちだ。そしてすっかり女子部門が確立した現在、11年の時を経てその頂点を──お互い30代半ばという円熟期に入った──二人が競い合う。オールドファンには感慨深い構図がこの試合には存在する。

当然両者とも11年前来の確執は意識しており、ペニントンは「あれからアイツと連絡を取ったことがあるかって? あるわけないでしょ。ジュリアナと同じ部屋に住むのは本当に苦痛だった」、「やっと11年前の話に決着を付けることができる」と語れば、ペニャの方も「ラケルは私がメイクしてあげたおかげで、彼女の生涯で最も美しい見た目になれた。なのにそんな私に感謝するどころか文句を言うなんて、なんて酷い人間なのでしょう。みんなで私の陰口を叩いて、私の生活を生き地獄にしたのはあいつらよ」とまったく譲らない。

さらにUFC女子勢では群を抜いたトラッシュトーク力を誇るペニャは、返す刀で(4月に鮮やかなUFCデビューを飾り、ペニントン×ペニャ戦の試合の勝者への次期挑戦者の有力候補である)ケイラ・ハリソンにも言及し「お注射はもうやめておきなさいね。今はやっていないだろうけど、アイツは昔は間違いなく打っていたわよね。昔ATTに練習に行った時にある人に言われたのよ『ATTの女子選手たちは、シャワー室でお互いにケツに注射を打ち合っているんだぞ』ってね」と、一部男性ファンの想像力まで掻き立てながら挑発してみせた。

当然ハリソンが「私は柔道で12歳の頃から検査を受けてきて、一度も陽性になったことはない。使っていないからよ!(次の対戦相手について聞かれて)別に誰でもいい。もっともそれがジュリアナなら喜んでタダで頭にエルボーを叩き込んでやるけどね」と反応すると、ペニャは「まあなんて怖い。典型的なロイドレイジ(ステロイドの副作用で激昂すること)の症状だわ!」と見事に切り返したのだった。

絶対女王ヌネスが去って話題が少ない女子バンタム級へのファンの興味を繋ぎ止めるのに、根拠など一切気にせず放言するペニャの口が一役買っていることは否定できない。

一方でペニントンとペニャのオクタゴンのなかでの振る舞い=パフォーマンスに目を転じると、試合はまずはパンチで突進して組みつきたいペニャとスタンド戦をキープしたいペニントンのせめぎ合いとなる可能性が高そうだ。前戦でペニャは、ワキを開けてパンチを振り回して前に出ては、ヌネスに面白いようにカウンターを合わされ何度も倒されている。が、ヌネスほどの圧倒的な破壊力の拳やリーチの長さを持ち合わせていないペニントンは、いかにペニャの突進を止めるのか。

ペニャが組みつくことに成功すれば、次はペニントンの安定したディフェンスを、いかにペニャが攻撃的グラップリングでいかに切り崩すかの攻防となる。

もっとも技術的なこと以上に、互いの精神と肉体のタフネスのぶつかり合いこそがこの試合最大の見どころだろう。女子有数の頑丈さを誇り、被弾するたびに倍打ち返しては相手を削り続け、体力&根性の判定勝利を重ねるペニントン。やはり被弾上等の恐れを知らぬ突進と、問答無用の組みの圧力とノンストップ攻撃で相手を呑み込んでしまうペニャ。引退したヌネス、下の階級のシェフチェンコやグラッソのような洗練された技術を持っていない両者だからこそ、あのハウスでの日々以来、お互いが歩んできた11年間の集大成をぶつけ合うような闘いを期待したい。

■視聴方法(予定)
10月6日(日・日本時間)
午前7時30分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前7時00分~U-NEXT


■UFC307対戦カード

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者] アレックス・ポアタン・ペレイラ(ブラジル)
[挑戦者] カリル・ラウントリー(米国)

<UFC世界女子バンタム級選手権試合/5分5R>
[王者] ラケル・ペニントン(米国)
[挑戦者] ジュリアナ・ペニャ(米国)

<バンタム級/5分3R>
ジョゼ・アルド(ブラジル)
マリオ・バウティスタ(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
ケイラ・ハリソン(米国)
ケトレン・ヴィエイラ(ブラジル)

<ミドル級/5分3R>
ロマン・デリツ(ジョージア)
ケヴィン・ホランド(米国)

<ウェルター級/5分3R>
スティーブン・トンプソン(米国)
ジョアキン・バックリー(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)
イアズミン・ルシンド(ブラジル)

<ミドル級/5分3R>
イホール・ポティエリア(ウクライナ)
セザー・アルメイダ(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
アレキサンダー・ヘルナンデス(米国)
オースティン・ハバート(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
カーラ・エスパルザ(米国)
テシア・ペニントン(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
オヴァンス・サンプレー(タヒチ)
ライアン・スパン(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ティム・ミーンズ(米国)
コート・マッギー(米国)

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45 MMA MMAPLANET o UFC UFC306 アイリーン・アルダナ キック ノルマ・ドゥモント

【UFC306】アルダナは前進&単発、大流血。ステップ&コンビネーションで捌いたドゥモントが判定勝ち

<女子バンタム級/5分3R>
ノルマ・ドゥモント(ブラジル)
Def.3-0:30-27.30-27.30-27.
アイリーン・アルダナ(メキシコ)

ガードを固めてローを放つアルダナに対し、サウスポーのドゥモントも右ローで足を止めに行く。スイッチ&ローのドゥモント、アルダナはガードを固めて前に出るが手数は少ない。ドゥモントの右ローにパンチを合わせたアルダナの左ジャブがドゥモントの顔面を捉える。ドゥモントはオーソドックスからワンツーでアルダナを下がらせた。

とにかく前に出続けるアルダナに、ドゥモントが右ストレートと右カーフを浴びせる。アルダナの左フック届かず、ドゥモントの右ストレートがアルダナのガードの間から入る。さらに左ショートを合わせて下がった。ドゥモントがサイドキックでアルダナの勢いを止める。前に出るも手を出せないアルダナには、何か策はあるのか――。ラスト10秒でドゥモントが打撃をまとめ、アルダナのパンチをかわした。

2R、アルダナが左ジャブを突きながら前に出る。下がるドゥモントの左ジャブを交わし、右ストレートを当てた。さらにロー、右ボディストレートと一気に手数が増えたアルダナ。ドゥモントも右を合わせに行くが、アルダナもインから右を突く。サウスポースタンスで左に回るドゥモントが、距離を詰めて蹴りを散らした。アルダナが右ストレートを伸ばす。ジャブの突き合いから、ドゥモントが左ボディを混ぜたコンビネーションを繰り出した。

さらにパンチでアルダナを下がらせる。アルダナの左を受けてバランスを崩したドゥモントだが、すぐに打ち返して体勢を戻した。打ち合いの中でドゥモントが右ボディを突き刺し、さらに組みついた。これを切ったアルダナだが、いかんせん攻撃がパンチのみになっている。右は当たるが、蹴りを散らすドゥモントの左フックを受けてしまう。アルダナはバッティングで顔面から大量の出血が見られる。

最終回、大流血のアルダナが前進するも、ドゥモントが蹴りで勢いを止めてシングルレッグへ。これは切られたが、やはりドゥモントがステップワーク&中距離のパンチでアルダナを捌く。アルダナの前進をかわしたドゥモントがニータップでケージに押し込む。離れた両者、前進するもパンチが単発のアルダナをドゥモントが捌き続ける。返り血を浴びたドゥモントは、冷静にジャブと前蹴り、さらにテイクダウンのフェイントを織り交ぜて捌く。ラスト10秒、シングルレッグで組みつくも切られたドゥモントが距離を取って試合を終えた。

裁定は文句なくアルダナがフルマーク判定勝ちを収めた。


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45 MMA MMAPLANET o UFC UFC306 YouTube   アイリーン・アルダナ アオリーチーラン アレクサ・グラッソ イグナシオ・バハモンデス エドガー・チャイレス オーデ・オズボーン キック ショーン・オマリー ジエゴ・ロピス ジャスミン・ハウレギ ジョシュア・ヴァン ノルマ・ドゥモント ブライアン・オルテガ ボクシング マニュエル・トーレス マラブ・デヴァリシビリ ラウル・ロサスJr ロナルド・ロドリゲス ヴァレンチーナ・シェフチェンコ

【UFC306】展望  ついに決着なるか。史上最強の女子MMA三部作=グラッソ×シェフチェンコ

【写真】グラッソが124ポンド、シェフチェンコが125ポンドで計量をパス。フェイバリットは-140でグラッソ。とはいえシェフチェンコも+115でほぼ差はない (C)Zuffa UFC

14日(土・現地時間)、ラスベガス近郊のパラダイスにあるスフィアにて、NOCHE UFC 306が行われる。昨年9月にオープンしたばかり、世界中で話題の地球上最大の球形建造物におけるUFCの記念すべき初興行。
Text Isamu Horiuchi

メキシコの独立記念日(16日)に合わせて行われるこの大会のコメインを飾るのは、王者アレクサ・グラッソと、元王者ヴァレンチーナ・シェフチェンコによるトリロジー最終章=UFC女子フライ級タイトルマッチだ。

既報の通り、昨年オープンしたばかりの光り輝く球形アリーナ=スフィアで開催される世界初のスポーツイベントとして、2000万ドル(約28億円)という莫大な演出費をかけて行われる今大会。そのメインテーマがメキシコのファイトカルチャーの祝福ということもあり、総勢7人のメキシコ人ファイター(加えてメインカードに出場するブライアン・オルテガもメキシコ系だ)が出場する。そんな彼女/彼らの大トリとして登場するのが、現在UFC唯一のメキシコ人王者であり、女子UFCパウンドフォーパウンドランキングにおいても頂点に君臨するグラッソだ。


(C)Zuffaf/UFC

昨年3月にグラッソは、当時7度王座防衛に成功していた絶対女王シェフチェンコに挑戦。

圧倒的に不利が予想される中、4Rに逆転のバックチョークで一本勝ちし、まさに世界が震撼する王座戴冠劇を演じてみせた。そして半年後、ベガスのT-Mobileアリーナで行われたメキシコ独立記念日を祝福する第1回「NOCHE UFC(UFCナイト)」大会のメインイベントにてリマッチが実現。一進一退の大激闘の判定は三者三様のドローとなり、グラッソが初防衛に成功した。

(C)Zuffa/UFC

それからちょうど一年――。

2度目の「NOCHE UFC」大会──販売開始当初のチケット最高価格250万円以上という、前代未聞のメガイベント──で、両者の決着戦が行われる。ちなみに同日、昨年のNOCHE UFCが行われたT-Mobileではメキシコ人が誇るボクシング世界4階級王者のカネロ・アルヴァレズの防衛戦も行われることになっている。当然デイナ・ホワイト代表やメインを飾るショーン・オマリーは「興行としてカネロに完勝してやる」と息巻いているが、対照的にグラッソは「彼と同じ日に戦えて光栄」と謙虚なコメントを残している。

さて、この夏にESPNでオンエアされたTUF32にて、チームを率いてコーチ対決を行うなど決着戦の機運を盛り上げてきた両者。ただしどちらも対戦相手へのトラッシュトーク等は好まず、互いに敬意を持つ二人の間に特筆すべき個人的な遺恨は存在しない。その代わり昨年の両者の2戦そのものが、純粋な競技としてのMMAの魅力がこれでもかとばかりに凝縮された連続ドラマと言える。両者がケージの上で見せているのは、試合を通してお互いが打・投・極の全てにおいて進化を重ね、どんな苦境にも屈しない魂をぶつけ合う、究極の総力戦としてのMMAだ。

第1戦。4Rまで試合をリードしていたシェフチェンコのスピニングバックキックの空振りに乗じたグラッソは、あっという間にバックを奪ってチョークを極めた。絶対王者のたった一つの不用意な攻撃が仇となった、まさかの大番狂わせとの印象が強かったが、実はグラッソの所属するロボジムのヘッドコーチにして叔父のフランシスコ氏が、王者の試合映像を繰り返し研究して生み出した作戦の成果だったことが後に判明した。

そこに至るまでの試合展開も決して一方的なものではなく、1Rはグラッソが自分の最大の武器であるボクシングを存分に活かし、待ちの姿勢の王者を追い込む場面が目立っていた。2、3Rは戦い方を変えた王者にテイクダウンを取られたグラッソだが、高い危機意識をもって動き続けて凌いでみせた。そして迎えた4R、グラッソは王者のテイクダウンを切り始めると、再びスタンドで攻勢に──命運を分けたバックキックは、ジャブでプレッシャーをかけるグラッソに対し、ややケージ側に詰められかけた王者が放ったものだった。

チームの総力を結集して、あまりにも厚い絶対王者の壁に挑んだグラッソは、序盤は自分の強みを最大限に用いて王者に肉薄。中盤作戦を変えてきたシェフチェンコの攻撃を凌いだ上で後半反撃に転じ、最後についに致命的なミスを誘い出したのだ。たゆまぬ努力と研究、不屈の精神と勝負強さの全てが組み合わさりはじめて可能となった、きわめて劇的な王座戴冠だった。

そして第2戦では、初戦を経て進化した両者によるさらなる高次元の攻防が展開された。「もう同じことは起こらない」と断言したシェフチェンコは、スタンドで受けに回った前回の反省を踏まえて先に仕掛け、鋭いジャブとワンツーを次々とヒット。コンビネーションの最後に強烈な左ミドルも放って完全にペースを掌握した。

しかし2Rは、グラッソが前回見せなかった首相撲からのヒザで反撃。さらにランディ・クートゥアばりに相手の首を抱えてのダーディボクシングで元王者を豪快に殴りつけるという、荒々しくも力強い新しい側面を見せて取り返した。3Rは、シェフチェンコの方が(簡単にエスケープを許した)前回以上にタイトさを増したバックコントロールを披露してさらに上をゆく。続く4Rは、グラッソの荒々しさが再び炸裂。クリンチからの打撃を入れた後にワキをくぐってバックを奪い、高々と抱え上げて元王者を叩きつけるという驚きの新展開を見せた。それを凌いだシェフチェンコが終盤バックを奪い返すと、グラッソは前転してのヒール狙いで逆襲し、さらなる引き出しを開けた。

お互いがお互いの進化に対応し、「その先」を行き合って迎えた最終R。消耗し被弾が目立つグラッソだが、頭を振りながら前に。その右フックをくぐったシェフチェンコは組みつくと、首を抱える形で強引に倒しにいってしまう。ここで一瞬体をずらしたグラッソは、首をすっぽ抜けさせるような形でバックを奪取。前回のスピンキック同様、会場の誰もが思わず大声を上げてしまうような決定的なシーンを経て有利なポジションを奪ったグラッソが、背後からの強烈なパウンドやフェースロックを仕掛けるうちに試合は終了した。

1Rと3Rは間違いなくシェフチェンコ。逆に2Rと5Rは明らかにグラッソ。4Rをどちらに付けるか次第と思われた判定は、何と3者3様のドロー。4Rの判断によって48-47、あるいは47-48と付けた2人の採点は十分理解できるとして、問題はもう一人のジャッジ。4Rをシェフチェンコに付けたにもかかわらず、最終Rは10-8でグラッソに与えていた。

この最終回、ダメージという点で全ラウンド中もっとも差があったことは確かだ。しかし現代MMAにおいては、よほど一方的な展開にならない限り2点差を付けることはない。例外的な──意図的な「得点調整」と思われても仕方のないような──採点が行われた上で、グラッソのドロー防衛が成立したことになる。

試合直後のインタビュー。母国メキシコを祝う日に初防衛を果たしたグラッソは「私のパンチの方が強力だった。私が勝者よ!」と宣言し、インタビュアーのダニエル・コーミエに「でも結果はドローですよ」と訂正されてしまうも笑顔を見せた。

対するシェフチェンコの方は苦笑しながら「メキシコ独立記念日のプレッシャーで、ジャッジはこんな採点をしたのでしょうね。もしもこれがフェアな競技だったとしたら、勝利は私のものだった」と語り、当然のようにメキシコ系の大観衆からブーイングを浴びてしまう。元・絶対女王の名前に恥じない素晴らしい戦いを見せてくれただけに、最終Rのジャッジは確かに気の毒だった。

しかし、前回と同じく最後の最後に痛恨の、かつ決定的なミステイクを犯してしまったことは否めない。そしてそのミスが、苦境に立たされながらも自分を信じて前に出たグラッソの気迫と執念によって引き出されたこともまた、前回と同様だ。そして最終的には、もはや両選手の力ではどうすることもならない領域=ジャッジによる判断によって明暗が別れた。

グラッソとシェフチェンコ。お互いに研究を尽くして全局面での進化を遂げ、全てをぶつけ合った両者による昨年の2試合は、究極的には技術や理屈を超越した勝負強さと、それさえも及ばぬ運が作用し、刹那で天国と地獄が入れ替わってしまう──そんな現実の残酷さも我々に見せつけてくれた。MMAの凄さ、奥深さ、さらには不条理さまで堪能させてくれる極上の連続ドラマだった。

あれから一年──今度はどのような形で両者は「極上の、さらなる先」を見せてくれるのだろうか。前回シェフチェンコの鋭いジャブに翻弄されたグラッソ陣営が今回出してくる答は? 逆にグラッソのダーティボクシングにしてやられたシェフチェンコの対策は? 回を増すごとに高度化する両者のテイクダウン&コントロール&スクランブル&サブミッションの攻防の行き着く先は? そして何より、二度に渡って土壇場で自らのミスを引き出したグラッソの無類の勝負強さを、今回シェフチェンコは克服することができるのだろうか? 

女子MMA史上最高の連続ドラマは、週末に完結する。

■視聴方法(予定)
9月15日(日・日本時間)
午前8時30分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前8時00分~U-NEXT

■対戦カード

<UFC世界バンタム級選手権試合/5分5R>
[王者] ショーン・オマリー(米国)
[挑戦者] マラブ・デヴァリシビリ(ジョージア)

<UFC世界女子フライ級選手権試合/5分5R>
[王者] アレクサ・グラッソ(米国)
[挑戦者] ヴァレンチーナ・シェフチェンコ(キルギス)

<フェザー級/5分3R>
ブライアン・オルテガ(米国)
ジエゴ・ロピス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ダニエル・セルフーベル(メキシコ)
エステバン・リボビチ(アルゼンチン)

<フライ級/5分3R>
ロナルド・ロドリゲス(メキシコ)
オーデ・オズボーン(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
アイリーン・アルダナ(メキシコ)
ノルマ・ドゥモント(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
マニュエル・トーレス(メキシコ)
イグナシオ・バハモンデス(チリ)

<女子ストロー/5分3R>
ジャスミン・ハウレギ(メキシコ)
ケトレン・ソウザ(ブラジル)

<フライ級/5分3R>
エドガー・チャイレス(メキシコ)
ジョシュア・ヴァン(ミャンマー)

<バンタム級/5分3R>
ラウル・ロサスJr(米国)
アオリーチーラン(中国)

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F1 MMA o UFC UFC Fight Night   アイリーン・アルダナ

9.14『UFC 306: O’Malley vs. Dvalishvili』でアイリーン・アルダナとノルマ・デュモンが対戦



 UFCが9月14日にネバダ州パラダイスのスフィアで開催する『UFC 306: O'Malley vs. Dvalishvili』でアイリーン・アルダナ vs. ノルマ・デュモンの女子バンタム級マッチが行われることをAg Fightが確認したとのこと。

 アルダナは12月の『UFC 296: Edwards vs. Covington』でカロル・ロサに判定勝ちして以来の試合。現在UFC女子バンタム級ランキング4位。

 デュモンは4月の『UFC Fight Night 240: Allen vs. Curtis 2』でジャーメイン・デ・ランダミーに判定勝ちして以来の試合で4連勝中。現在UFC女子バンタム級ランキング10位。続きを読む・・・
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MMA o UFC アイリーン・アルダナ アリアネ・リプスキ ショーン・ストリックランド ジャレッド・キャノニア ジョシュ・エメット ダナ・ホワイト マッケンジー・ダーン

UFC296:ポストファイトボーナス/総評

・ファイト・オブ・ザ・ナイト:アイリーン・アルダナ vs. カロル・ロサ

・パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト:ジョシュ・エメット、アリアネ・リプスキ、シャミル・ガジエフ

女子の試合がファイト・オブ・ザ・ナイトになるのは5月のマッケンジー・ダーン vs. アンジェラ・ヒル戦以来今年2回目で、ナンバーシリーズに限れば2020年7月のUFC251(ローズ・ナマユナス vs. ジェシカ・アンドラジ)以来。

ラフモノフはファイト・オブ・ザ・ナイトの受賞はならなかったが、次の試合でそれ以上のご褒美があって欲しい。

メインは大凡戦。昨年も、年内最終戦だったジャレッド・キャノニア vs. ショーン・ストリックランドは両者消極的な凡戦だったが、2年続けてメインが締まらず。特に、負けているのに勝負に行かなかったコビントンは、もともと挑戦自体が否定的に捉えられていただけにいただけない。

コビントンは「自分が3~5R取って勝った。自分がトランプ支持者だからジャッジに負けにされた」と言っているが、恥の上塗りでしかない。

前戦で勝ったにも関わらず、王座挑戦ができなかった(その時点でコビントンの挑戦が決まっていた)ベラル・ムハマッドは「この試合はウェルター級にとってジョークだった」と発言。負けたコビントンは本来タイトルマッチの資格がなく、勝ったエドワーズにしても、失礼な言動をしたコビントンを仕留めて恥をかかせるべきだったとのこと。さすがに次の試合は王座挑戦になるはず。

UFC7連敗となったファーガソンについては、ダナ・ホワイトが「引退して欲しい」とコメント。ピンブレット相手に完敗で、序盤から動きも悪かったので、潮時だろう。しかしダナの口ぶりからすると、本人が引退すると言わなければ止められない様子。少なくともUFCでの次のチャンスはもう無いか。

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AB o ONE UFC UFC296   アイリーン・アルダナ アリアネ・リプスキ シャミル・ガジエフ ジョシュ・エメット

『UFC 296: Edwards vs. Covington』パフォーマンスボーナス

絵で見てわかるシステムパフォーマンスの仕組み



 UFCが『UFC 296: Edwards vs. Covington』のパフォーマンスボーナスを発表。

▼ファイト・オブ・ザ・ナイト
・アイリーン・アルダナ vs. カロル・ロサ

▼パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト
・ジョシュ・エメット、アリアネ・リプスキ、シャミル・ガジエフ

 5選手には各5万ドルのボーナス。続きを読む・・・
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AB ACA MMA o ONE UFC UFC Fight Night   アイリーン・アルダナ アマンダ・ヌネス ケトレン・ヴィエイラ ホーリー・ホルム マイラ・ブエノ・シウバ

1.20『UFC 297』でラケル・ペニントン vs. マイラ・ブエノ・シウバの女子バンタム級王座決定戦

UFCレガシーチャンピオンシップレプリカベルト


 UFCが来年1月20日にトロントで開催予定(会場未定)の『UFC 297』でラケル・ペニントン vs. マイラ・ブエノ・シウバの女子バンタム級王座決定戦が行われることをMMAFightingが確認したとのこと。アマンダ・ヌネスが6月の『UFC 289: Nunes vs. Aldana』でアイリーン・アルダナに判定勝ちした後に引退を発表して以降、王座は空位になっていました。

 ペニントンは1月の『UFC Fight Night 217: Strickland vs. Imavov』でケトレン・ヴィエイラに判定勝ちして以来の試合で5連勝中。現在UFC女子バンタム級ランキング2位。

 シウバは7月の『UFC on ESPN 49: Holm vs. Bueno Silva』でホーリー・ホルムに2Rニンジャチョークで勝利したものの、薬物検査でリタリン酸の陽性反応が出たことからノーコンテストになって以来の試合。その前までは3連勝していました。シウバは過去3年間服用していたADHDの薬に由来するものだと主張し4ヶ月半の出場停止処分を受けており、『UFC 297』には出場可能です。現在UFC女子バンタム級ランキング3位。続きを読む・・・
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o UFC アイリーン・アルダナ ダン・イゲ モフサル・エフロエフ ライアン・ホール

UFC on ESPN50:第9試合・ディエゴ・ロペス vs. ギャビン・タッカー

フェザー級

ロペスのUFC2戦目。今年5月に直前の代役でUFCとの契約を果たし、いきなりランキング10位のモフサル・エフロエフ相手に1R腕十字を極めかけ、3R終了間際には膝十字でこれもほぼ完全な形に入り追い込んだことで評価が上がった。メキシコ在住のブラジル人で、自身が経営するジムには6月にやはり代役で女子バンタム級タイトルに挑戦することになったアイリーン・アルダナもいる。28歳。

迎え撃つカナダのタッカーはUFC4勝2敗。柔術黒帯のグラップラーで、UFCでもチョークで2度勝利している。3連勝中だった前戦は、ライアン・ホールの代役としてランカーのダン・イゲと対戦するチャンスを得たが、わずか22秒でKO負けしてしまった。その後2度組まれた試合をいずれも欠場し、2年5ヶ月ぶりの試合となる。37歳。

ローを入れたタッカーだがローブローに。タイムストップ。再開。タッカーシングルレッグ。ロペス飛びつき三角で引き込んだ!肘を極めに行く。首を抜こうとするタッカーだががっちりクラッチして極めるロペス。そのまま後方に回転しつつ腕を逆向きに反らせるとタッカータップ!

久々の復帰戦とはいえ、4勝2敗のグラップラーから瞬時に極めてみせた。前戦の高評価に応える快勝。

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『UFC 289』アマンダ・ヌネス vs. アイリーン・アルダナ&ヌネス引退を見たファイター・関係者の反応

Amanda Nunes Victory Tee Kelly Green


 『UFC 289: Nunes vs. Aldana』アマンダ・ヌネス vs. アイリーン・アルダナ&ヌネス引退を見たファイター・関係者のツイッターでの反応。続きを読む・・・
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MMA MMAPLANET o UFC uFC289 アイリーン・アルダナ アマンダ・ヌネス キック ダナ・ホワイト

【UFC289】ヌネスがアルダナをドミネイト。最大7ポイント差の判定勝ちからMMA引退を発表——

<UFC世界女子バンタム級選手権試合/5分5R>
アマンダ・ヌネス(ブラジル)
Def.3-0:50-43.50-44.50-44.
アイリーン・アルダナ(メキシコ)

ガードを固めるアルダナのボディに、ヌネスが左ジャブを伸ばす右インローからアウトローと散らすヌネスが、さらに蹴りを上下に繰り出した。アルダナは手数が少ないものの、ヌネスとの距離を潰す。ここでヌネスがシングルレッグでコカせたが、背中を着いたアルダナもすぐに立ち上がった。スタンドに戻ると左ジャブを突き続けるヌネスに対し、アルダナは手が出ない。

ヌネスの左ジャブがアルダナの顔面を捉え始める。左ボディストレートは払うアルダナに対し、ヌネスがパンチと蹴りを上下に散らして、右スピニングバックキックも見せる。シングルレッグをフェイントにパンチを当てるヌネスが、残り1分で左右ストレートを伸ばす。アルダナはバックステップでかわすも、やはり手を出すことができない。ヌネスはラウンド終了間際、組みつく体勢を見せた。

2R、アルダナが左ジャブを伸ばす。肩を振って左ジャブを返すヌネスが、サウスポーからオーソドックスにスイッチし、右の関節蹴りでアルダナを下がらせた。サークリングしてケージ際を脱したアルダナは、ヌネスのシングルレッグをカットする。ヌネスが左ジャブを当て、右関節蹴りに繋げる。アルダナも左インローを返す。

シングルレッグのフェイントから、アルダナの顔面にパンチを集めたヌネス。アルダナが距離を詰めると左縦ヒジを見せる。シングルレッグでコカしたヌネスだが、あくまでスタンド勝負か。体勢を低くしたアルダナの顔面に右を打ち下し、さらにローを効かせる。距離が詰まると首相撲からヒザ蹴りを突き上げた。

ガードを固めて左ジャブを突くアルダナは、ヌネスの右ストレートをスウェーでかわす。残り30秒でヌネスがパンチのペースを上げてくると、アルダナもプレッシャーをかけて下がらせる。しかし右ハイをかわされ、組んできたヌネスに背中を着かされてしまった。

3R、左手を合わせた両者。ヌネスはそのままオーソドックスで左ジャブを突き、アルダナが下がると右ストレートを伸ばす。肩を振るフェイントから左右ストレートを繰り出すヌネスに対し、アルダナも左フックを振るうが届かない。スイッチ、さらにテイクダウンのフェイントを織り交ぜるヌネスの打撃に対し、アルダナもガードを固めてプレスをかけるも手が出ない。

ケージ中央でヌネスがダブルレッグでアルダナに手を着かせ、さらにケージへドライブして、しっかりと背中を着かせた。ハーフガードのアルダナを抑え込みながパスを狙うも、アルダナが両手を伸ばしてディフェンスする。アルダナの右手首をコントロールし、ヒジを打ち込むヌネス。アルダナはスクランブルに持ち込むも、再びヌネスが倒した。

ヌネスが距離を取ると立ち上がったアルダナだが、ヌネスがケージ際でバックに回りグラウンドへ。すぐさまバックマウントを奪い、RNCからアルダナの右腕に腕十字を狙う。腕を抜いたアルダナが立ち上がるとヌネスが左右のジャブを伸ばし、サウスポーから右ヒジも見せた。さらに残り10秒で首相撲からボディへヒザを突き刺していった。

4R、アルダナが観客を煽って前に出た。ガードを固めながら左右のローを当てていく。ヌネスの左ジャブに右アッパーを合わせるアルダナに対し、ヌネスが一気に距離を詰めてヒジとカーフキックを当てた。ギアを挙げたヌネスが左ジャブを突き刺す。アルダナもヌネスの左に右を被せようと試みるが、ヌネスのニータップに潰されてしまう。

右関節蹴り、パンチを当ててから組みついたヌネスが、離れるアルダナにパンチを当てる。さらに左ジャブでアルダナの顔を跳ね上げ、アルダナのパンチはブロックでかわす。ケージ中央でニータップで組んだヌネスがアルダナに背中を着かせる。立ち上がってヌネスをケージに押し込むアルダナ。しかしヌネスがシングルレッグで押し返した。

ヌネスの左ジャブを受け続けるアルダナの顔面が真っ赤に染まっている。アルダナの左ジャブに右クロスを2連続で被せたヌネスは、首相撲からヒザを突き上げた。ヌネスが右ボディから左フック、右ストレートを当てるとアルダナの体が揺れる。終了間際にヌネスが右ボディストレートを決めた。

最終回、アルダナが前に出てワンツーを繰り出す。下がりながら自身もワンツーを伸ばすヌネスが、ダブルレッグで組みつきケージ際でテイクダウンを奪った。足を利かせるアルダナ、トップを固めるヌネスに下から右ヒジを打ち込む。アルダナの頭を引き付けてトップをキープするヌネスが、インサイドからパウンドを打ち込んだ。

ケージキックを狙うアルダナに対し、ヌネスは右ヒジを落とす。パスしてマウントに移行したヌネスは、頭を抑えられながらボディパンチで削る。頭を起こしたヌネスが左手を枕に抑え込みながら、パウンドとエルボーを落とす。勝利を確信したか笑みを浮かべながら、ガードに戻すアルダナから再びマウントを奪う。そのままフィニッシュは狙わず、しっかりと抑えてパウンドを連打し、試合終了のホーンを聞いた。

試合結果を聞く前に、ケージを出てダナ・ホワイトの下に駆け寄ったヌネス。裁定はジャッジ1人が7ポイント差をつけるユナニマスで、王者ヌネスが世界女子バンタム級王座の防衛に成功した。

試合後、ヌネスがインタビュー中にバンタム級とフェザー級のベルトをマットに置き、ここでMMA引退宣言。2つのベルトの間にグローブを置いたヌネスはマットにキスをして、UFCに関わる全ての関係者に感謝の意を伝え、笑顔でケージを後にした。


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