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【WNO Championships】高橋サブミッション&堀内勇がWNOを深掘り─02─。ヒメネス? ミカ? 混戦ミドル級

【写真】現代グラップリングに十分に対応している一方で、オールドスクール柔術の完成度が非常に高いヒメネス(C)MIKE CALIMBAS/FLOGRAPPLING

25&26日(土&日・現地時間)にテキサス州オースチンのパーマー・イベンツセンターで開催されるWho’s Number One Championships。男子ではライト級、ミドル級とヘビー級、女子はストロー級及びヘビー級で賞金3万ドルとチャンピオンベルトを賭けた2days 8人制トーナメントが同大会では行われる。

世界のベストグラップラー、新進気鋭の若い選手が一堂に会す大会。その中から3階級を日本のグラップリングをネクストステージに引き上げようという高橋サブミッション雄己、そしてMMAPLANETでグラップリングシーンを執筆中の堀内勇氏に水先案内人となってもらった。

今回はライト級に続き、ミドル級の行方を占ってもらった。

<高橋サブミッション雄己&堀内勇、WNO Championship対談Part.01はコチラから>


──ミドル級は残念でならないですが、クレイグ・ジョーンズが欠場です。そして高橋選手、一押しのオリバー・タザが代役出場決定と。

(C)CLAYTON JONES/FLOGRAPPLING

高橋 タザはFight&Lifeのインタビューで、好きなグラップラーにタザの名前を挙げさせてもらったんですよね。

堀内 アレ読んで、『おぉ、渋い』って思いました(笑)。そうなると、楽しみですね。

高橋 クレイグほどではないですけど、タザも高名なレッグロッカーなので代役としては凄く楽しみです。

──クレイグが本命だったかもしれないですが、マイキーのように飛びぬけた存在ではなかったです。そしてクレイグがいなくなったことで、ミドル級は読めないトーナメントになったかと思います。

高橋 トーナメント枠によって大混戦になると思いますが、中心になるのはロベルト・ヒメネスだと思います。ヒメネスは今回出場しているジョン・ブランクなんかにも、ポロっとレッグロックを取られたり、欠場になったクレイグにもヒールを取られています。触ってみないと分からない穴のようなものが、足関周囲にあるのであれば……代役のタザやブランク、タケットというオッズの低い選手にやられることもあるかと思います。

堀内 SUGでも今回、クレイグに続き欠場になったペドロ・マリーニョにもヒールを取られていますからね。

──柔術的なコントロール力、支配力もあるけど足関を取られると、それらの経験をして防御力が高まった風にも見えますが、本命ヒメネスに続く存在は?

高橋 ミカですね。

──来ました。グラップリングと柔術の未来系、ミカ・ガルバォンですね。

高橋 ハイ、ミカで妥当だと思いますが、そこも組み合わせ次第かと。それでもブランクやタケットやタザが、ミカやタイ・ルオトロ戦っても、僕はミカやタイに分があると思います。この階級は荒れて、どんな決勝戦の顔合わせも有り得る──それだけ凄く面白い階級です。

堀内 ホント、本命不明ですよね。ミカは異常に体が柔軟でタザとの試合も最後は1人ラバーガードみたいな動で凌ぎきったり、タイはベリンボロで足関節を捌ける。そういうことを考えると、あまり足関節は極まらないかもしれないです。タイとミカは、レッグロックが得意なオッズの低い選手は勝てそうです。

ただしヒメネスはそのレッグロッカーに極められるかもしれない。それでもヒメネスは体自体が大きいですし、ガードから体をずらしてバックを取るとか柔術自体が凄く上手ですよね。本当に綺麗なガード柔術家の戦い方ができる一方で、上からガンガン攻めることもできます。

実際、タイには完勝していますし。だからミカとやるとどうなるのか。ミカは本当に不思議な感じで、掴みどころがない。結果、タイとミカよりもヒメネスは柔術の自力で上回る。ホントにこの階級はジャンケンポンのようにタイプが分かれているので非常に面白いと思います。

──レッグロッカーに負ける可能性のあるヒメネスは、タイやミカには分が良い。タイやミカはレッグロッカーには遅れを取らないだろうと。まさにトーナメント枠がどうなるのか。

堀内 ミカに対しては、ヒメネスに分があるのかは分からないです。ミカは1人だけ違う生物に見えます。タザと戦った時も省エネ戦法を取り、年上のタザの方が必死に攻めていましたし。

高橋 ミカは未知数ですね。タザとの試合もヒョイヒョイとポイントを取って勝ってしまう。余裕がある無難なポイントゲームをしたという印象でした。

(C)CLAYTON JONES/FLOGRAPPLING

堀内 僕は後半は動きが落ちているように感じたので、今回は決勝が30分という長丁場で──タイなんてスタミナのバケモノだから問題ないと思いますが、ミカはどうなのか。

高橋 だからこそ、ミカが真の姿が分かるトーナメントかもしれないです。

──ミカは攻めにしても、防御にしても反応力の高さが半端ないなと。道着ですけど、回って立つというスイープゲームを許さない。立ちそうな人間をレッスルアップから許さず、上を取るなり、バックに回るなり。野性的な動きは見ていて惚れ惚れしました。

堀内 本当に反応が良いですよね。上からの圧力もメチャクチャあって。良くある筋肉ムキムキ柔術家の圧力とは違う感じで。

──ルーカス・バルボーサとは全く違いますよね(笑)。そのミカの圧力が、このメンバーのなかで通用するのか。

堀内 他にもデンテ・リオンも、ダヴィ・ハモスにF2Wで勝って調子は上向きですし。伏兵になるのか。ただ、Road to ADCCでニッキー・ライアンに完敗している。だからニッキーの名前がここにないのは残念ですね。

(C)CLAYTON JONES/FLOGRAPPLING

高橋 なんで、ニッキーは出てこないんですか?

堀内 その圧勝したダンテ・リオン戦でケガをしちゃったんですよ。レッスルアップから倒したときに、半月板を負傷して。

高橋 いやぁ、残念です。

──クレイグ&ニッキー不在は非常に残念ですが、ミドル級は本命ロベルト・ヒメネス、対抗がタイ・ルオトロと未知数ミカ・ガルバォン。だけど、本命は下位予想の選手に取られるかもしれない。波乱含み、非常に楽しみな階級ということですね。

■WNO Championships出場選手

【ヘビー級】
カイナン・デュアルチ(ブラジル)
メイソン・ファウラー(米国)
オーランド・サンチェス(米国)
カイル・ベーム(米国)
ティム・スプリッグス(米国)
ルイス・パンザ(ブラジル)
テックス・ジョンソン(米国)
ハイサム・リダ(ガーナ)

【ミドル級】
タイ・ルオトロ(米国)
ウィリアム・タケット(米国)
ロベルト・ヒメネス(米国)
ジョン・ブランク(米国)、
ダンテ・リオン(カナダ)
ミカ・ガルバォン(ブラジル)
ジェイコブ・カウチ(米国)
オリバー・タザ(カナダ)

【ライト級】
マイキー・ムスメシ(米国)
ケイド・ルオトロ(米国)
ジオ・マルチネス(米国)
ディエゴ・オリヴェイラ(ブラジル)
コール・アベート(米国)
デミアン・アンダーソン(米国)
ジョシュア・シスネロス(米国)
ガブリエル・ソウザ(ブラジル)

【女子ストロー級】
マイサ・バストス(ブラジル)
ダニエル・ケリー(米国)
ジェッサ・カーン(米国)
アマンダ・アレキン(米国)
グレース・ガンドラム(米国)
アレックス・グエン(米国)
ジェシカ・クラン(米国)
タミー・ムスメシ(米国)

【女子ヘビー級】
ギャビ・ガルシア(ブラジル)
ハファエラ・ゲイジス(ブラジル)
エリン・ハープ(米国)
アナ・カロリーナ・ヴィエイラ(ブラジル)
エリザベス・クレイ(米国)
アマンダ・ローウェン(米国)
ケンドール・リユージング(米国)
アマンダ・レヴィ(米国)

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F2W182 JJ Globo ダンテ・リオン ダヴィ・ハモス ブログ

【F2W182】残り2秒、ダンテ・リオンがダヴィ・ハモスからRNCで一本勝ち

先月28日(土・現地時間)、カリフォルニア州バーリンゲームのハイアットリージェンシー・サンフランシスコ・エアポートで、F2W182「East Bay」が開催された。
Text by Isamu Horiuchi

遅まきながら、注視すべき結果にになった上位カードから、メインで行われた一戦の模様をレポートしたい。

<F2Wノーギ・ウェルター級選手権/10分1R>
ダンテ・リオン(カナダ)
Def.9分58秒 by RNC

ダヴィ・ハモス(ブラジル)

常にアグレッシブな姿勢で試合に臨むリオンは、試合開始後すぐにシュートイン。腰を引いたハモスに防がれると、今度はイマナリロールへ。これもハモスに距離を取って防がれると、そのままオープンガードに入った。

低くプレッシャーをかけにくるハモスに対し、リオンはハーフガード&左のニーシールドという十八番の形を取ってその侵攻を許さない。ハモスの左腕にアームドラッグを仕掛けたリオンは、さらに下からの腕ひしぎ腕固めに。一瞬左腕を伸ばされかけたハモスだが、素早く反応して防御した。

その後もハモスは重心を低くしてパスを狙うが、リオンは左のニーシールド&フレームで防ぐ。逆に隙を見てリオンはレスリングアップを仕掛けるが、ハモスは素早く距離を取って防いだ。

残り4分少々のところで、リオンが潜っての仕掛けを狙うと、ハモスは前方に飛び込んでリオンの左足を取りにゆく。すかさず反応したリオンは逆にベリンボロからのバック狙いへ。が、ハモスはすぐに距離を取って立ち上がった。

ここでリオンも立ち上がり、試合はスタンドの攻防へ。リオンは二度ほどシュートインするが、反応の速いハモスに防がれると引き込み。

その後は、上から圧力をかけるハモス、それをニーシールドで防ぎながら煽るリオンによるどちらも譲らない攻防が続いた。

残り1分半、立ち上がったリオンはまたしてもシュートイン。ハモスは両脇を指してそれを振りほどくが、ここでリオンは間髪入れずもう一度ダブルレッグへ。これが深く入り、見事にテイクダウンに成功した。

この試合はじめて下になったハモスは、オープンガードから潜りを仕掛け、すぐにリオンの右腕をたぐってのアームドラッグへ。これでリオンを前のめりに崩したハモスは、リオンの足を抱えて前転を余儀なくさせて上に。あっという間に上を取り返してみせたのだった。

残り30秒、またしてもニーシールドから内回りに入ったリオンに対し、勝負をかけたハモスは瞬時に倒れ込みながらの左足に膝十字狙い。が、素早く足を畳んで対応したリオンは、そこに乗じてバックポジションを奪取。そのままリオンはあっという間に右腕をハモスの顎の下に食い込ませて締め上げ、なんと残り1秒でタップを奪ってみせたのだった。

常に自分から仕掛けて試合を作り、鉄壁のニーシールドで世界的競合ハモスの攻撃を遮断したリオン、最後は圧巻の極めを見せつけての見事な勝利──その腰にベルトが巻かれた。

対するハモスも、リオンの様々な仕掛けを遮断した反応速度の速さはさすが。そして最後にリスクを背負って勝負を仕掛けた姿は、プロとして称賛に値する。

それにしても、19年のADCC世界大会77キロ級で名を挙げたリオンが、15年の同階級決勝で見事な飛び十字を極めて優勝したハモスに完勝(奇しくも、両者の対戦相手はルーカス・レプリだった)。時代が確実に動いていることを実感させられる試合となった。

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IRE05 JJ Globo Report ブログ 寒河江寿泰 杉本孝

【IRE05】ルールに則し(時には破り)、掌底駆使の杉本孝をOTで寒河江寿泰が破り決勝へ

【写真】OT勝利の寒河江はこの表情。不慣れな掌底攻撃がどのような心理的影響を与えのか。戦った当人、同時インタビューの第2弾は近日中にアップ予定です (C)MMAPLANET

14日(土)に東京都港区のリバーサルジム東京スタンドアウト田町芝浦スタジオで開催されたIRE(Imanari Roll Ecstasy)05。ここでは掌底有りのコンバット柔術70キロ級トーナメント準決勝第1試合──寒河江寿泰✖杉本孝の練習仲間対決の模様をお届けしたい。

<コンバット柔術70キロT準決勝/10分1R>
寒河江寿泰(日本)
Def.OT
杉本孝(日本)

練習仲間が相対する準決勝。握手から試合が始まり、寒河江のアンクルピックで下になった杉本は一旦立ち上がっても、直ぐに座り直し飛び上がるように掌底を伸ばす。続いて寒河江の手首を掴んだ杉本は、立ち上がった状態で掌底を繰り出したが、これは反則だ。

寒河江に詫びた杉本は、座った寒河江に容赦なく掌底を落とす。初戦とは戦い方を完全に変えてきた杉本は足を絡まられても、それ以上深くいれないために掌底を落とし、一旦離れるや太腿や背中と打撃を続ける。

対して寒河江は足を絡めていくが、ここに付き合ってもらえず同じように太腿や腕までも叩くというビンタ合戦に。ついには両者スタンドの状態で杉本は掌底を使ってしまい「ゴメン」と声を出して謝る場面も。寒河江もデラヒーバから回転しリバーサル、上を取って立ち上がるが、下から掌底を打たれ飛び込むように殴りに行くと前方にバランスを崩して腹ばいになる場面も。

杉本は仕掛けの前にまず殴るという戦法を取るも、殴られると寒河江も接近度がルーズになるため結果的に、自分から詰めないとグラップリングの攻防は生まれないという状況に。両者スタンドの状態でジャンピンガードのような仕草を見せた杉本は、入れないと見ると座ってカカトを取りながら掌底を打っていく。

両者が片ヒザをついた状態で、かなりの勢いで杉本が寒河江の頬を張る。

続くスタンドの攻防で、ついにジャンピンガードに捕えた杉本だったが、スタンドの状態にもかかわらず勢い余って掌底を連打してしまう。

掌底という要素が、両者のグラップリングの形を崩しているともいえる一戦で、スラム気味に背中を落とした寒河江に対し、杉本もクローズドをすぐに解く。

もう一度ガード中に入れようとしたが、寒河江が離れる。ここは杉本がクローズドからラバーに移行すれば、上から殴らせない10thPlanet柔術の流れになるかという局面だったが、成立しなかった。

グラップリングに限らず打撃でも、MMAでも相手の仕掛けに付き合うか、かわすかという状況はいくらでも見られるが、この試合の場合は掌底という要素が、より相手の懐に入らない心理的な影響を与えているか。杉本もこれ以降はガードに入れようとはせず、片ヒザ&飛び上がって掌底、寒河江がシッティングから足を絡める……あるいは頭を押し込んでいても掌底という流れに戻る。

残り2分を切り、杉本が座ったケースでは、寒河江は上から掌底を落として足を取りにいく。足を抜いて立ち上がった杉本の手首を両手で掴んだ寒河江は、座って掌底へ。続いて杉本が立場を変え、座ってから張っていく。ここまでの試合と同じで、掌底があることで緊張感ではなく、弛緩するという本場のコンバット柔術では感じられない場内の空気感のなか、戦っている当人は如何に極めに入るかと、思案しているように映る。

と、下になった寒河江は杉本が立ったまま掌底を落としてきたところで、後方回転で杉本右足を取り、足関へ。足を抜かれそうになると、バックテイクを狙う。杉本も寒河江にトーホールドを仕掛けつつ、足を抜いて立ち上がった。この一戦でピークといえる攻防が見られ、試合タイムは残り30秒に。

ここで座った寒河江は、スタンドの杉本と掌底を繰り出し時間を迎えた。OTは先攻の杉本が50/50を選択も、寒河江が5秒でエスケープ。後攻の寒河江はサドルを選び、杉本はエスケープに8秒を要し、ファイナル進出は寒河江となった。


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IRE05 JJ Globo Report タツノスケ ブログ 村田卓実

【IRE05】タツノスケの掌底に、頭が揺れた村田卓実。OTでヒールを極め、壮絶な戦いを制し準決勝へ

【写真】 (C)MMAPLANET

14日(土)に東京都港区のリバーサルジム東京スタンドアウト田町芝浦スタジオで開催されたIRE(Imanari Roll Ecstasy)05。ここでは掌底有りのコンバット柔術70キロ級トーナメント準々決勝最終試合──5月のポイント制グラップリング=Unrivaledでタツノスケのスイープポイントで敗れた村田卓実がリベンジに挑む一戦──激しい掌底が見られた試合の模様をお届けしたい。

<コンバット柔術70キロT準々決勝/10分1R>
村田卓実(日本)
Def.OT
タツノスケ(日本)

村田の投げにバックに回ったタツノスケが、寝技に持ち込むが、背中を取られている村田は真後ろを取らせず掌底を入れ、ガードを取るとパス狙いのタツノスケにさらに掌底を続ける。

上のタツノスケは両ヒザ立ちで左右の掌底を連打すると、村田は内ヒールへ。

仰向けになったタツノスケが左の掌底を放っていくが、体を起こした村田が上を取り、リバースハーフで抑える。ここから跨いで左の掌底を連打する村田、タツノスケも下から掌底を振るっていく。

このタイミングでパスを決めた村田がサイドからキムラを仕掛けつつ、クルスフィックスから村田が掌底で削り、腕を狙う。

立ち上がってアームロックを防ごうとしたタツノスケだが、ネルソンに捕えられ再びガードを強いられる。ここでも村田はハーフで頬を張っていく。

足を抜いてマウントに入った村田は、タツノスケのディープハーフ狙いに後ろ三角の状態になりつつ、絞めよりも掌底で攻める。

腹ばいになったタツノスケが頭を抜くと、ガードの中から横移動のビンタのような掌底でなくパウンドに近い手根──というよりも、手首の骨の部分で掌底を打ちつける。痛さや嫌がらせではなく、明らかに効かされた村田は続く掌底5連打に頭が揺れて危ない状況に。

それでも場内から飲み会で宴会芸を見ているような笑い声が挙がるという異様な空気のなか、村田はシッティングからロックアップを狙う。

と、今度は腰の回転を生かしたタツノスケの左右の掌底を被弾する。立ち上がったタツノスケは、飛び込むように直線の動きの掌底を落とし、村田は横を向いて頭を覆って連打を打たれる。

ハーフを取るが、足を効かすことができない村田は、抑えてこないタツノスケを相手に足を引いて立ち上がることもない。

スクランブル全盛のMMAファイターでなく、背中をつけて一本を狙うグラップラーの性が出てしまったような状況で、村田は掌底を打たれ続ける。

レフェリーが村田の後頭部側から顔が見える方に回り、いよいよストップがかかるかと思われた刹那、なんとタツノスケが打ち疲れて抑えにいってしまう。

組みと殴りの融合が普段はなく、鋭い掌底攻撃で余計に疲れてしまったか。仮にカルペ芦屋の師・岩﨑正寛がセコンドに就いていれば、最後の一押しをプッシュしただろうが、そのような声がないタツノスケは村田にひと呼吸以上の息を整え、ダメージを回復する時間を与えてしまった。

息を吹き返した村田は下からの掌底、さらにギロチンで頭を抱えると後方回転でリバーサルへ。

ここで足を抱え合った両者、上体を起こして上になったタツノスケとマットに背中をつけて下になった村田が、ビンタになった掌底を振るい合う。

村田も体を起こし、掌底を額で受けるようにして自らの右の掌底で頬を叩いていく。タツノスケの反撃に、足を抜いた村田がスタンドに戻る。立ちレスからタツノスケがダブルレッグを決める。ここは足をきかせて、掌底をガードした村田はタツノスケの飛び込みを跳ね上げる。

サイドスタンドに戻った両者、残り30秒となりタツノスケがダックアンダーからバックに回り、ワンフックでグラウンドへ持ち込もうとしたが下になってしまい、最後は村田が右の掌底を纏めて時間となった。

壮絶な掌底合戦の結末は──OTで先攻の村田が50/50から3秒で内ヒールを極めると、同じく50/50を選択したタツノスケに3秒以内で極めさせることなく、勝利を手にし準決勝へ。

これだけ頭部へのダメージがあるのであれば、試合毎にドクターチェックが必要と思われる一戦だった。


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BJJ BET02 JJ Globo Preview セルヴィオ・トゥリオ ブログ ルーカス・バルボーザ

【BJJ BET02】トーナメント本命?! バルボーザという『無理ゲー』にトゥリオは如何に挑むのか

【写真】この人も人智を越えていそうだ(C)CLAYTON JONES/FLOGRAPPLING

8月1日(日・現地時間)ブラジルのサンパウロにて大型プロ柔術・グラップリングイベントBJJ BET02「Who’s Next」が行われる。目玉の8人参加の88キロ級のノーギトーナメントはまさに実力伯仲、誰が勝ってもおかしくない状況だが、敢えて優勝候補本命を挙げるとすればだが、ルーカス・バルボーザか。

そのバルボーザと初戦で戦うのが、2017年ADCC無差別級王者フィリッピ・ペナの黒帯セルヴィオ・トゥリオだ。


2018年の柔術世界王者バルボーザは、ノーギにおいて2019年ADCC世界大会99キロ級で3位の実績を誇る。決して下にならず、巨大な上半身を用いたプレッシャーで相手の攻撃を封じ制圧する戦いを身上としており、先月のRoad to ADCCには適正階級である88キロ契約で出場し、クレイグ・ジョーンズの代打であるウィリアム・タケット相手に34-0で圧勝して見せた。来年のADCC本戦の同階級における優勝候補だ。

対する新鋭のセルヴィオ・トゥリオは、2019年のADCCブラジル予選77キロ級優勝という実績を持っている。先月の Big Deal 03 では柔術世界王者イザッキ・バイエンスとノーギルールで対決し、互角の攻防を見せていた。

トゥリオは下からのヒールの仕掛けから上のポジションを取って先制点を奪うと、巧みなガードワークで終盤までそのリードしていた、結果的に残り25秒でテイクダウンを許し逆転負けを喫したものの、大番狂わせまであと一歩まで迫ってみせた。

実績ではもちろん、体格面でもバルボーザが上回る両者の対決。相性面を見ても、足関節とガードワークを主武器とするトゥリオにとって、それらを封じることに長けたバルボーザは非常に厳しい相手だろう。さらに最近バルボーザは、先日のRoad to ADCC大会で対戦予定だったジョーンズ──世界屈指の足関節師だ──対策を重ねてきており、その成果を、同種の武器を持つ代打のタケット相手に見せつけたばかりだ。

トゥリオの立場になって考えると「無理ゲー」とでも形容したくなるほど難しい試合だが、なんとかバルボーザ攻略の糸口を見出してくれることを期待したい。

■視聴方法(予定)
8月2日(月・日本時間)
午前5時00分~FLOGRAPPLING

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BDP03 JJ Globo Report イサッキ・バイエンス セルヴィオ・トゥリオ ブログ

【BDP03】IBJJFノーギルールにヒールフックのうねり。バイエンスが残り25秒で新鋭トゥリオを逆転

10日(土・現地時間)、ブラジルのフロリアノポリスにて、プロ柔術団体Big Deal Pro の第3回大会が行われた。レビュー2回目は、世界王者たちが参戦した豪華スーパーファイトの模様をレポートしたい。

<ノーギ/8分1R>
イザッキ・バイエンス(ブラジル)
Def 2-2 A4-2
セルヴィオ・トゥリオ(ブラジル)

2018年の世界王者バイエンスは、今年のアブダビ・ワールドプロもブラジル国内予選から勝ち抜いて優勝。2月のBJJ Stars05ではノーギの試合で新鋭ロベルト・ヒメネスとの激闘を制する等、今年無敗街道を走っている。

対するフィリッピ・ペナの黒帯トゥリオは、2019年のADCCブラジル予選を制する等、ノーギを中心に活躍する選手で、今試合はビッグネーム相手に名前を挙げるチャンスだ。

試合開始直後にシッティングしたトゥリオに対し、バイエンスは距離を詰めると左で鋭いニースライスを仕掛ける。トゥリオは右腕でフレームを作って距離を取って防ぐ。さらにバイエンスがニースライスを仕掛けても、トゥリオはうまく体をずらしながらバイエンスの右足に外掛けで絡み、あっという間に下からの外ヒールの体勢に。

あわや極まったかに見えたが、スピンしたバイエンスが尻をつけた状態で距離を作る。するとトゥリオはすかさず立ち上がって上になり、2点を先制したのだった。

下になったバイエンスも足を絡めての反撃を狙うが、トゥリオは足を抜いて逆にバイエンスの片足を抱えて押してゆき、両者は場外へ。結果的にトゥリオは2-0で完全リードした状態でリスタートを迎えることとなった。

再開後またもや引き込んだトゥリオは、下からの足狙いを続ける。バイエンスはそれを捌いては、ニースライスや素早く横に動いてのパスを狙うが、その度にトゥリオは両腕のフレームを巧みに使って距離を取って回避する。上のバイエンスと下のトゥリオ、スピード溢れる攻防を繰り返す両者は互いにアドバンテージを2つずつ獲得した。

残り2分半。なかなか点差を詰められないバイエンスは、足の絡みを巧みなステップで解除すると、またしても左のニースライスへ。そのまま押さえてパスに成功かと思われたが、トゥリオは下から動いて距離を作ってうつ伏せに。それをガブったバイエンスは、首に圧力をかけてトゥリオの背中をつけさせる。そのまま抑えにかかるバイエンスだが、トゥリオも諦めずに動き続けて両者はまたしても場外へ。この攻勢でもバイエンスはアドバンテージを一つ得るにとどまった。

中央からトゥリオが下で再開。後のないバイエンスはトゥリオの右足を取ってストレートフットロックからトーホールドを仕掛け、さらに上からのベリンボロの形を作ろうとするが、トゥリオが逆に足を取ると立って距離を取った。

大殊勲まであと1分と迫ったトゥリオに対し、バイエンスはシュートイン。しかし、トゥリオはスプロールしてそれを防ぐ。いったん距離を作ったバイエンスは、下がり気味のトゥリオに対してもう一度組んでいく。再び反応してスプロールしたトゥリオの左足の裏でグリップを作って上体を起こしたバイエンスは、ワキをくぐってボディロックに移行しながらトゥリオの背後に。

なんとか逃れようとするトゥリオに対し、体重をかけて亀の体勢を余儀なくさせるバイエンス。ここでレフェリーがテイクダウンの2点を宣告。残り25秒の時点で、ポイントで追いつきアドバンテージに逆転に成功する。

さらにチョークを狙うバイエンスだが、トゥリオは体を動かして脱出に成功したも──この攻撃でバイエンスがアドバンテージを追加してリードを広げた。

残り10秒、この日初めて追う立場となったトゥリオはテイクダウンを狙うが、バイエンスは軽く両腕を伸ばして防いで試合終了に。

残り25秒までまさかの大番狂わせか、と思われるところまで追い込まれたバイエンスだったが、世界王者の意地と誇りで逆転勝ちをもぎ取ったのだった。

2月のノーギ戦では、ヒメネズ相手に今年IBJJFで解禁された外掛けからの足関節を巧みに用いて勝利を得たバイエンスが、今回は同じ技術を相手に使われて、よもやの敗北寸前に。IBJJFによるヒールの解禁は、今後も彼らブラジルに拠点を置く選手たちのノーギの戦いにおいて影響を与えそうだ。

そしてそこでは、フィリッピ・ペナの練習相手の一人でもあり、今回見事な足関節の仕掛けとガードワークを見せてバイエンスを追い詰めたセルヴィオ・トゥリオが注目の存在となるだろう。

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JJ Globo Preview SUG25 アンディ・ヴェレラ エドウィン・ナジミ ジェレミー・ケネディ ブログ ペドロ・マリーニョ

【SUG25】ファウラー✖ベーム戦は延期。ジェレミー・ケネディを相手に、エドウィン・ナジミ参戦!!

【写真】万が一ということも、ないと思われる一戦だが……果たして(C) MMAPLANET & BELLATOR

18日(日・現地時間)、オレゴン州ポートランドでSubmission Undergroud25が開催される。

5分1R & EBI OT、そしてケージ使用のチェール・ソネン率いるノーポイント&サブオンリー・グラップリングイベント=SUGの25回目の大会。

本来はSUG無差別級王者メイソン・ファウラーが、6月の挑戦者決定トーナメントで優勝したカイル・ベームの挑戦を受ける予定だったが、10日に負傷が理由で欠場が決まった。これによりメインはベームに同トーナメント決勝で下ったペドロ・マリーニョとアンディ・ヴェレラの一戦がメインに昇格している。


ヴェレラは昨年12月に石井慧を下し、4月王者ファウラーに挑戦したがOTで敗れている元タイトルコンテンダーだ。10thPlanet所属で、既にSUGで9試合を経験しており、6勝3敗──4勝がOT勝利のヴェレラに対して、マリーニョはグレイシーバッハの黒帯で、SUGでの試合を含めロベルト・ヒメネスに3勝1敗と勝ち越している。

IBJJFルールを知り抜いたヒールの使い手のマリーニョはOT前に一本を狙ってくることが予想されるが、OTでは腕に乳酸でも溜まっていると勝ち目はなくなる。

ここがSUGルールの難しいところ。OTまでは我慢した方が有利という考え方もあるが……マリーニョはどちらを選択するか。

またSUGらしさでいえば、今大会にもMMA界からジェレミー・ケネディが参戦、なんとマリーニョと同門エドウィン・ナジミと対戦することになっている。ホメロ・バハルの黒帯ナジミは跳びつき三角で一世を風靡し、2016年にはムンジアル・ライト級に準優勝に輝いているワールドクラスの柔術家だ。

パンデミック以降はF2WやThird Coastを主戦場にしているナジミは、昨年5月にF2WでMMAレジェンドのベンソン・ヘンダーソンと対戦──、跳びつき三角で下している。ウェルター級やライト級で戦うベン・ヘンに対し、ケネディはフェザー級の選手だけにノーギといえどもフィジカル的なアドバンテージはない。

UFC~BRAVE CF~PFL~Bellatorとメジャーシーンで活躍してきたケネディが、引き込んでくるトップクラスの柔術家=ナジミとグラップリングで戦う術を持っているのか。三角もそうだが、バックを回避する力が問われる──SUGらしい一戦だ。

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JJ Globo Preview Road to ADCC   ケイド・ルオトロ ブログ ロベルト・ヒメネス

【Road to ADCC】天敵へのリベンジ賭け、ケイド・ルオトロがロベルト・ヒメネス戦にスクランブル発進

【写真】タイと合わせて兄弟でヒメネスに3連敗中のケイド──4度目の正直なるか(C) MIKE CALIMABS/WNO&SUG/em>

17日(土・現地時間)、テキサス州オースティンのJWマリオット・オースティンにてFlograppling主催のRoad to ADCCが開催される。
Text by Isamu Horiuchi

キッズの隆盛もあり、次から次への柔術界の将来を担うといわれる逸材が生まれるなか、ミカ・ガウバォンと並び未来のスーパースター候補がタイ&ケイドのルオトロ兄弟であることは間違いない。そんな兄弟の天敵が、ロベルト・ヒメネスだ。今回、ヒメネスはアンドリュー・ウィルツィだったが、ヒザの負傷で欠場が決まり、ケイド・ルオトロと代役に名乗りを挙げた。


ヒメネスは、昨年黒帯デビュー戦でキーナン・コーネリアスに競り勝つ大殊勲を挙げると、そのまま瞬く間に世界のトップグラップラーの仲間入りをした21歳。2月のBJJ Stars 05では柔術世界王者イザッキ・バイエンスと、同月のWNO 06では世界最強のノーギグラップラーのゴードン・ライアンといった超大物との対戦も経験している。

結果は敗れたもののバイエンスからはバックを取り掛け、ライアンの強烈な腕十字から脱出するなど見せ場を作り爪痕を残した。

また、先月はグラウンドでの掌打が許されているコンバット柔術トーナメントにも参戦、JZカバウカンチ、ネイサン・オーチャードらの強豪を倒して見事に優勝している。さらに2週間後にはThird Coast Grappling、その翌週にはSUGと超過密スケジュールをヒメネスは過ごしてきた。

対するケイドは、帯色のことを言えば昨年10月に茶帯になったばかりの18歳。が、前回のADCCで旋風を巻き起こした双子の兄弟のタイとともに、幼少時からグラップリング界の未来を担う存在として注目を浴びてきた。

今年4月のWNO 08ではイサン・クレリンステンとの激闘をダースチョークで制し、先月のWNO 10ではコール・フランソンをバギーチョークで斬って落として2連勝、勢いに乗っている。

この両者は、昨年10月の3CG Kumite Vの準決勝で対戦経験がある。体格で上回るヒメネスがスタンドでプレッシャーをかけてゆくと、ケイドが珍しくガードに引き込む。そこからのスイープや足狙いを見せたケイドだが、ヒメネスに圧力で潰されてバックに回られてチョークで完敗した。

ヒメネスはその前後に、ケイドの双子の兄弟タイとも2度対戦しており、スタンドのクリンチからのバックテイク、ダブルレッグテイクダウン、クローズドに引き込んでからのバックテイク等で攻め込み、いずれもオーバータイムでしっかりとポイントを奪って勝利している。両試合とも本戦から動きのある見応え十分な攻防が展開されたが、全体的にヒメネスが優勢に進める場面が目立った。

ルオトロ兄弟は、ともに通常下にステイせず、トップからのノンストップパスを仕掛ける戦いを身上とする。だがこれまでの対戦では、体格差のあるヒメネス相手にスタンディング・レスリングの攻防で押され気味だ。

ヒメネスの数少ない弱点の一つと言われる足関節狙いで見せ場を作ることはあったが、極めきることはできていない。また懐の深いヒメネスのクローズドガードに対しても、突破口を開けないままだ。逆に合わせて3連勝中のヒメネスは、トップからであれボトムからであれ、兄弟の攻略に自信を持っているだろう。

兄弟にとって天敵であるヒメネス相手に、準備期間もほとんどないまま今回リベンジを挑むケイド。不利を承知で試合出場を決めたその心意気は称賛に値する。グラップリング界の未来を体現する両者だけに、これまでの兄弟vsヒメネス戦を上回るような攻防を期待したい。

■視聴方法(予定)
7月18日(日・日本時間)、
午前9時00分~Flo Grappling

■ 対戦カード

<無差別級/20分1R>
カイナン・デュアルチ(ブラジル)
マテウス・ジニス(ブラジル)

<175ポンド契約/20分1R>
ダンテ・リオン(カナダ)
ニッキー・ライアン(米国)

<66キロ級/5分3R>
マイキー・ムスメシ(米国)
ジオ・マルチネス(米国)

<88キロ級/5分3R>
ウィリアム・タケット(米国)
ルーカス・バルボーザ(ブラジル)

<女子60キロ以上級/5分3R>
エリザベス・クレイ(米国)
アナ・カロリーナ・ヴィエイラ(ブラジル)

<88キロ級/5分3R>
ケイド・ルオトロ(米国)
ロベルト・ヒメネス(米国)

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BDP03 JJ Globo Preview エリキ・ムニス エルベース・サントス グーテンベルギ・ペレイラ ブログ

【BDP03】エルベース・サントス、復活なるか。 エリキ・ムニス✖グーテンベルギ・ペレイラに注目

【写真】攻め重視の柔術を再び見せることができるか。エルベース・サントス(C)MMAPLANET

10日(土・現地時間)、ブラジルのフロリアノポリスにて、プロ柔術団体Big Deal Pro の第3回大会が行われ、Flograpplingで中継される。世界的競合が多数出場するスーパーファイトに加え、8人参加の道着着用ヘビー級トーナメントを目玉とするこの大会の見どころを紹介したい。
Text by Isamu Horiuchi
ヘビー級トーナメントの参加者は以下の通り。いずれもブラジル人選手だ。

エルベース・サントス
エドゥアウド・ロペス
ガブリエル・エンヒッキ
ギリャルメ・ランベルッチ
ハリソン・ペレイラ
イアタン・ブエノ
ワレシ・コスタ
マーカス・ヒベイロ


メンバーの中で頭抜けた実績と知名度を誇るのがエルベース・サントスだ。2015年に黒帯を取得したサントスは、重量級選手を瞬時にねじ伏せる圧巻のフィジカルと爆発的な極め力で重量級シーンを席巻。特にフィリッピ・ペナやベウナウド・ファリアといった世界王者たちを腕十字で一瞬にして負傷に追い込んだことで、世界から恐れられる存在となった。

ときに暴力的なまでの破壊力を見せつけながらも、極度に慎重な戦いに終始することもある二面性を持った怪物は、2017年にはリベンジを狙うファリアの必殺のハーフガードをトップから遮断して返り討ちにし、スーパーヘビー級世界王者に。サントス時代の到来かと思われた。

しかし試合中に急に集中力を失う場面を見せたり、乱闘騒ぎを起こすなど精神面での不安定さを露呈することも少なくなく、以後今日まで世界王座返り咲きは果たしていない。

そんなサントスは今年2月のBJJ Stars 5 のヘビー級トーナメントに参戦。1回戦で新鋭のエリキ・ムニスのスパイダーガードに手を焼き、2点を先制された後で50/50戦に持ち込まれて競り負けた。さらに先月のBJJ Stars 大会ではもう一人の新鋭グーテンベルギ・ペレイラと対戦した際には、終始上のポジションを譲らず、ペレイラの引き込んでの攻撃を凌ぐディフェンシブな戦いに終始した。レフェリー判定で勝利したものの、少々首をかしげたくなる裁定だったことは否めない。

このところは破壊性よりも慎重さが前面に出ているサントス。今回どのような戦いを見せるかはフタを開けてみなければ分からない。その底知れぬ潜在能力が再び全開となる場面を見ることはできるだろうか。

このサントス以外の有力候補を挙げるとすれば、一人目は昨年黒帯を取得した後、CBJJE主催のブラジレイロ無差別級王者に輝いた27歳のワレシ・コスタとなるだろう。20歳を過ぎてから柔術を始めたにもかかわらず、数年でトップ色帯として頭角を現したコスタ。豪快な引き込みからのスタースイープやラッソーガードから回転してのオモプラッタ等、ダイナミックな動きを身上としている。

そして昨年、このコスタに上述のCBJJEブラジレイロ無差別級決勝では敗れたものの、階級別では勝利を得ているのが24歳のイアタン・ブエノだ。コスタ同様きわめてダイナミックかつアグレッシブな戦いを見せる選手だが、こちらは優れたボディバランスを活かしたトップゲームが主武器。相手の足を捌きながら横にダイブしてのパスは、重量級ならではの迫力と切れ味を兼ね備えている。

その他も2019年茶帯王者のガブリエル・エンヒッキ&マーカス・ヒベイロ、フィリッピ・ペナの弟子にして、柔軟なガードワークを武器に主にノーギで活躍するギリャルメ・ランベルトゥチ等、ブラジルの重量級の新鋭がずらりと顔を揃えているこのトーナメント。優勝者が、将来の世界最強候補として大きくその名を上げるのは疑いのないところだ。

トーナメント以外に、スーパーファイトという名目で多数組まれたワンマッチにおいて、最大の注目の一番がエリキ・ムニス✖グーテンベルギ・ペレイラの新鋭対決だ。両者ともに、今年2月のBJJ Stars05のヘビー級トーナメントに参戦。どちらも優勝したフィフィッピ・ペナに惜敗したものの、ムニスは1回戦でエルベース・サントスに競り勝ち、ペレイラは1回戦でニコラス・メレガリを、準決勝ではルーカス・バルボーザを倒し、ともに世界王者超えを果たして新世代の台頭を強く印象づけた。

ムニスの主武器は、長い手足を利用したオープンガードからのスイープ。これでサントスからもペナからも先取点を奪い、逆にパスを許すことはなかった。

対するペレイラの強みは、盤石のベースと優れたボディバランス、強烈なプレッシャーを利したトップゲーム。2月のトーナメントではメレガリのオープンガードを完封してその強さを見せつけた。さらにペレイラは、下になっても豪快なベリンボロ等多彩な仕掛けを持つ。

両者は、今年のアブダビ・ワールドプロ大会のブラジル国内予選でも対戦。6分間という短い試合時間においてどちらも決定的な場面を作ることはできなかったものの、ペレイラが序盤にムニスのオープンガードを捌きつつ、素早く横に動いてのパス攻撃を仕掛けて1ポイント(他の柔術大会ではアドバンテージに該当)を獲得。

このリードを守り切って接戦を制した。なおその後ペレイラは予選、本戦の全試合で対戦相手と力の差を見せつけて勝利し、見事ワールドプロ制覇を果たしている。

今回改めて行われる、重量級新世代頂上決戦ともいえるこの一戦。今回ムニスはペレイラの強靭なベースを崩すことができるのか。それとも今度こそペレイラが難攻不落のムニスのガードを完全攻略してみせるのか。再び上下に分かれた両者の強みが真っ向からぶつかり合う、世界最高峰の攻防が期待できそうだ。

さらにこの日は世界4階級制覇のレジェンド、レアンドロ・ロ や、2018年の世界王者にして、今年のワールドプロ大会を制したイザッキ・バイエンスも登場。ロは道着着用でエンリケ・セコーニと、バイエンスはノーギでセルヴィオ・トゥリオと対戦予定だ。

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JJ Globo Report SUG24 アマンダ・ローウェン ブログ ラケル・カヌート

【SUG24】SUGのSは、StuckのS? ローウェンがOTでエスケープ許さずカヌートを下し王座防衛

<SUG女子アブソルート級選手権試合/5分1R>
アマンダ・ローウェン(米国)
OT by Escape time
ラケル・カヌート(米国)

引き込んで、草刈りスイープを仕掛けたローウェン。バランスを崩しながらスタンドをキープしたカヌートのパス狙いに、カウンターの足関へ。枕で固め、足を畳むカヌーとは内ヒールをセットされても、上体を起こしてたえる。足を蹴られ、マットに背中をつけたカヌートは、内ヒールにトーホールドを仕掛けて足を抜く。

右足を絡まれたまま、腕十字に移行したカヌートは足を抜いてリバース三角から腕を伸ばしかかる。さらに上体を起こして足を取りにいくと、ロックしていた足がルーズになりローウェンの頭を抜ける。それでもカヌートはトップからパスを狙い、3/4マウントへ。ローウェンはOT狙いか防御に徹し、ニーシールドで距離を取り、上体を起こしつつ時間に。

OT、先攻のカヌートはシートベルトを選択し、フェイスロック気味にRNCを仕掛ける。極めきれず、組み換えを狙ったところでローウェンは横を向いて自らの手を喉の前におきクロスして防御。カヌートはリストコントロールからRNCを狙うも、残り6秒でローウェンが胸を合わせることに成功した。

後攻のローウェンはスパイダーウェブから、腕十字狙いへ。足をすくい、左腕を伸ばしにかかったローウェンに対し、上を取ったカヌートだが十字は切れない。残り1分、ヒザを胸に置くカヌートを前方に送り、仰向けにさせようとするローウェン──カヌートは守り抜いた。

OT2Rもカヌートはバックを選び、ローウェンは肩をマットにつけて体をずらし、絞めの態勢に入らせない。手首を掴んで絞めは耐えきったローウェンは、腕十字を選択する。カヌートはローウェンの体を跨ぎ、体を平行にしてエスケープを図る。極めることはできなかったローウェンだが、再びエスケープを許さなかった。

OT最終回、3度目の正直とばかりシートベルトのカヌートが、フェイスロックも腕が張っているのか、クラッチを続けることができない。鼻に圧をかけるえげつない仕掛けもローウェルは耐えきり、2分を迎えた。

タップか1分54秒エスケープさせないと王座防衛のローウェンは、スパイダーウェブへ。ここも体を跨いで防御のカヌートが腰を上げる。ヒザで臀部に押し付け、さらに持ち上げえ腕を抜きにかかるカヌートだが、ローウェンは時間まで逃さず王座防衛に成功した。

バックも腕十字も、極めでなくエスケープを許さないという究極のスタックファイト、SUGのSは何の頭文字かと考える一方も、このホールド力の強さには脱帽だ。


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