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【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、ナイファンチン編(05)「手刀、刀の理合い」

【写真】笑わば、笑え。刀も理を知るためのツールだ(C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型と使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせない。

サンチン、ナイファンチン、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。そんな剛毅會の稽古には站椿が採り入れられている。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンで創られた、空手の体をいかに使うのか。その第一歩となるナイファンチンの解析を行いたい。目線と体の向き、足の小指が正しくなることでナイファンチン立ちが成り立つ。前回はナイファンチンの型の動きに基づく「二挙動の手刀受け→ヒジ当て」の手刀受けを分解した。

このナイファンチンの型の動きに基づく手刀受け→ヒジ当は、二挙動の手刀受け、一挙動の手刀(内と外)、一挙動のヒジ当てという3つのプロセスがあるが、「シンプルな動きのなかに、重要なことを詰まっています」(岩﨑)ということで、今回は「二挙動の手刀受け→ヒジ当て」の手刀受けを改めて深掘りしたい。

<ナイファンチン第4回はコチラから>


相手の突きに対し


下がってからの


手刀では


左ハイや


左の追い突きを受ける

相手が打って来ることに対し、そのタイミングで下がってからの手刀だと相手の間になっているので、攻撃を受けてしまう。「相手の追撃を許してしまいます」(岩﨑)

ナイファンチンは首里手の代表的な型であり、首里手の始祖・拳聖=松村宗棍が薩摩で示現流の免許皆伝を得たことで、刀の理合いに通じることがある。ここでは刀の理解を通じて「二挙動の手刀受け→ヒジ当て」の手刀受けの理解を深めたい

右足前の攻撃に対し


下がってから


抜刀しても既に斬られている。「本来は攻撃されて、この状態で刀を抜くことはできないです。車の運転に例えると、下がる時にギアを入れて動くこと。下がってからギアを入れても、もう遅いということです」(岩﨑)


「間を制しておらずタイミングで動くと、下がって→抜くという動きになるが、さがるときには抜く状態になれば斬られることはない。刀がない、手刀受けでも同じことが言えるということです」(岩﨑)

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BELLATOR Bu et Sports de combat Cage Warriors LFA MMA MMAPLANET o ONE UFC ガブリエル・ベニテス デヴィッド・オナマ ボクシング 修斗 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。オナマ✖ベニテス「五輪競技≠MMA」

【写真】オナマの勝利から話題の軸はボクシング、五輪競技で結果を残すとMMAでも結果を残せるのかという点に (C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たデヴィッド・オナマ✖ガブリエル・ベニテスとは?!


──序盤、ベニテスが圧倒した感もある試合でしたが、左を被弾して右目を気にしながらオナマが一気に試合をひっくり返した試合でした。

「ベニテスが非常に勇敢で、危険な距離でちゃんと打つ選手ですね。オナマが左足前のオーソドックスで戦っている間、ベニテスの猛攻を食らいました。良い距離で腹を殴ることできる。そういう距離にMMAになっていますね。メキシコは『腹が死んだら、頭が死ぬ』という言葉あるそうで。とにかくメキシカンはボディから攻める。それをベニテスも実践していましたね。そしてフックで右目を気にするようになったオナマが右足前のサウスポーにスイッチしました」

──右目が見えなくなっていたそうです。

「それよりもボディを効かされた構えを変えたようにも見えましたが、ラウンドを跨ぐと止められるという状況で、彼もスイッチが入ったかもしれないですね。なんせ、ここから全く動きが変わりました。あれだけ攻めていたベニテスが何もできなくなった。

ベニテスが、サウスポーには弱いのか。それともオマナのサウスポーが異様に強いのか。ここまで戦局が変わるのは、どういうことなのか。そこはよく分からないですが、シンプルに効かされていました。なら、なぜ最初からサウスポーでオナマは攻めていないのか。つまりは偶発的なモノで、そこに理はなかったスイッチだったといえます。それまでは積極的なのはベニテスで、質量もベニテスでしたし」

──ベニテスが打たされているということではなくて?

「いや間もベニテスでしたからね。ベニテスも打たれる覚悟があるので、それで戦えるというのはあるのですが、覚悟はあっても打たせないように戦うべきなんです。今回の試合でいえば、あの距離でベニテスが良いというよりもオマナがやるべきことをしていない。だから、あの距離で打ち続けることができるということはあったと思います。打たせるより、打つという意志の方が彼らは強い。

と同時に武術的に見ると、オナマは姿勢が悪かったです。オーソの時は受けの態勢で、その時は間はベニテスになります。居着くという言葉と、受けに回るは同意語です。そう捉えてください。そしてスイッチした瞬間、姿勢が良くなり──攻めの姿勢になると、間は完全にオマナになりました」

──ただし、本人は把握していないと。

「はい。オナマは自分ではオーソがやりやすい、でもベニテスはサウスポーの方が苦手だったから起こった事象かもしれないですね。だから、私たちも稽古の時に構えを変えるのであれば、自分の得意な方を選ぶのではなくて、相手の苦手の方を選ぶようにやっています。得意な方が相手の苦手というのが一番ですが、そうでないとしても相手の苦手を優先させる。

オマナはオーソで戦いたいけど、ベニテスはオーソの方が戦いやすかった。そういうことは考えられます。オーソ基調でスイッチをする選手はオーソでは受けて変え返すことが多く、サウスポーではポンッと奥手の左ストレートをスッと出すようになったりする。そういうこともあります。ただし、こうしたら勝てるなんてことはMMAにはないです。勝つことを追求すればするほど、そんな答えはない。迷宮に迷い込むように」

──ところでルーツは同じでもアフリカ生まれの黒人選手と、米国生まれの黒人選手は何か違うような気がします。そして軽量級にもアフリカン・アフリカンが進出してきました。

「それは当然違いますよ。アメリカン・カルチャーで育った人と、アフリカン・カルチャーで育った人は違います。そういうコトを考えると、勢力分布図にアフリカ勢が軽量級も加わってくるということですね。一攫千金を目指して」

──現状、徐々にそうなっているかと思います。そして、「徐々に」が定着すれば一気に広まるのはロシアも、中央アジアもそうでした。残すは中東とアフリカ。そして中東がアフリカの中継地にもなる。

「とにかく、同じことをしてはいけないです。心も体も違うので。だからこそ、やりようはあります」

──日本はボクシングで世界チャンピオンがいる。柔道は当然、そしてレスリングも五輪金メダリストがいる。だからMMAもできるという意見があります。でも、現状は結果がまで出ていないです。

「私がそこに関して思っているのは、五輪スポーツに関しては東京五輪までと、これからは違うと考えています。東京五輪は、どれだけ金を使って北区の味の素ナショナルトレーニングセンターで強化してきたことか」

──では、プロボクシングはどうですか。

「これも私の自論ですが、私らの頃はWBAとWBCしかなかった。五輪が唯一の世界一というのとは違うかもしれないですが、ボクシングの世界王座で世の中から認められていたのは2つでした。今はどれだけ世界王座があるのか。統括組織なんて関係なく世界、世界という報じられます。対して、MMAは世界王座と名がついていても、UFCだけが頂点と誰もが分かっています」

──なるほどBellator、ONEばかりかLFAもCage Fury FC、Cage Warriors、修斗だってワールドの冠がついていて。でも、世界一とはファンも認識していない。ただし、ボクシングでは報じられ方が世界イチになってしまっていると……。

「だから浜田剛史さんは僕らの永遠のアイドルです。あの頃のボクシングの世界チャンピオンは世界一だったから。そして五輪でいえば柔道の競技人口は圧倒的にレスリングより少ない。女子レスリングの競技人口は輪をかけて少ない。だから世界に先んじていて、今もそのリードを保てています。

対して男子は日本人選手が枠を取れない階級が多くなっています。ただ枠を取ったところは味の素ナショナルトレーニングセンターで徹底的に強化されたはずです。国が予算を割いたわけです。日本は豊かな国で、スポーツは盛んです。そして東京五輪があったので国が予算を割いていた。そのような状況ですから、スポーツと格闘技は分けるべきです。

特にダメージで競い合うスポーツは、基本的に五輪競技になっていない。打撃も精度が軸のポイント制で、殴り合って倒すものではないのが基本です」

──確かにそうですね。

「対してMMAは世界中で行われるようになりました。でも、日本は政府が助けることは当然なく、スポンサーもつかない。いうと勝って経済的に見返りがない──ただ地上最強を目指していた時代の極真みたいな環境のままななんですよ、日本のMMAは。そういう状況でアメリカ人、ブラジル人、ロシア人、そしてアフリカの選手を殴り倒さないといけない。ボクシング、レスリング、柔道では強いという風にMMAを同一線上にはおけない。このオマナのような選手を殴り倒すのに、そこを根拠にするのは楽観的かと私は思います」

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Bu et Sports de combat MMA MMAPLANET o UFC   ナイファンチ ナイファンチン マナ・マルチネス ロニー・ローレンス 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ローレンス✖マルチネス「自然なスイッチ」

【写真】 ロニー・ローレンスは過去にあまり例を見ない、打撃を使っている(C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たロニー・ローレンス✖マナ・マルチネスとは?!


──ロニー・ローレンス×マナ・マルチネス、最初の2Rはローレンスがダウンを2度奪い圧倒ペースから、最終回はまさかの逆転KO負け直前まで追い込まれながら判定勝ちを収めた試合でした。

「このローレンス、素晴らしい選手ですね。私は正直、打撃の専門家として打撃単体としてMMAの打撃に興味を持つことは余りないと思っていたのですが、この選手には驚かされました。そしてテイクダウンのあるMMAには、どちらの構えというモノはもう必要ない、両足を前に持って来られる彼のようなスタイルになっていくのかと思いました」

──MMAではスイッチヒッターは多いかと思いますが。

「ハイ、その通りです。ただし、その全てといって良いほどスイッチをする選手は、相手との相性を考えたり、あるいは何も考えずにただガチャガチャやるだけでローレンスのように自然に……自由に動けているファイターはほぼいなかったです。

ディラショーもそういう動きではあるのですが、アスリートとして、鍛えぬいた体を自分の意志で動かしている。ローレンスは自然にやっています。長い年月をかけて、稽古してきたことが自然と出る。そういう風に見えました。実際、負けたマルチネスもスイッチをしていたんです。ただし、マルチネスはサウスポーになると一旦動きが止まります。自由に動けていない。前足がどっちというのがないから、ローレンスはテイクダウンも本当にキレーに入っています」

──打撃とレスリングは、構えが逆になりますしね。

「彼はレスラーで、打撃を身につけたのでしょうか?」

──レスリングもやっていたようですが、ケンポーや散打、ウィンチャン、それとストリートの格闘術をやっていたようです。

「アハハハ。そんな選手がいるのですね!! 実は質量はローレンスもマルチネスも差はなかったです。ただし、マルチネスは居着く時間が多い。結果、間がローレンスだから打撃も当たる、テイクダウンも決まる。ところが3Rになって、間がマルチネスになりました」

──それはどうしてでしょうか。

「思うに1Rと2Rと2から3Pリードした。だから、もうここは落としても良いという考えだったんじゃないでしょうか」

──まぁ合理的ですよね。無理せず、戦うというのも。

「いえ、合理的ではないです。合理的なら理が合っていないといけない。つまり、やられずに終わらないと。いくらポイントを失っても。でも、逃げきろうとしてスピニングバックフィストなんか受けて倒されそうになった。それは理が合っていなかったことになります」

──なるほどっ!! 

「理が合っていなかったのは、テイクダウンを切られるようになったことでも明らかです。それまで決まっていたモノも決まらない。同じようにバックステップをしても、相手の間だと殴られます。自分の間で下がれば、次の攻撃が入る。それがナイファンチンの分解組手、二挙動ヒジ当てで学ぶことができます」

──おお、そこに武術の理が生きると。ローレンスはマルチネスの距離で下がってしまったわけですね。

「そうです。相手の間で下がるのは危険です。それまで居着いていなかったローレンスが、3Rになって居着いたのは、理に合わない戦いに変えてしまったからです。スコアのマネージメントとして、2つ取れば3Rは流せば良い。それは分かります。でも、こうなってしまうこともある。難しいです。良い逃げ方と悪い逃げ方があるということですね。

初回と2Rを取っているから、仕留めにいくと隙ができることもあるし、そこは競技で勝つことの難しさです。ただマルチネスとすれば、1Rと2Rを失っているから勝つには攻めるしかない。腹が決まると、一発の質量が上がります。そこでローレンスの逃げ方が悪かったから、ああいうことが起こったのかと。

それでもローレンスに新時代のMMAの打撃を見たような気がします。ガードを固めてっていうのでもなく、手を下げた状態でいきなりぶん殴ったりして。最初は右足前、右のボディから左フックで倒したけど、アレはあまり効いていなかったです。

面白かったのは2度目のダウンで。右足前、でも下がる相手を追いかけて走りながら左ストレートから右フックで倒しました。こんなことは普通、できないです。ひょっとすると彼がやっていたケンポーは居着くことを嫌う、そういう教えがあったのかもしれないですね」

──まるで追い突きでした。

「三本移動、三回前に出て打つという移動稽古ですね。ただ、現代空手では移動するたびにその方に体重を乗せるという教えが殆どです。そういう追い突きは使いモノならないです。足をついてから突く、つくと同時に突く──どちらでもない。全体の連動の結果として、突きが出ないと倒せる追い突きにはならないです。

左足を前にしたときは、ジャブはこう伸ばすという動きと、追い突きは違います。決めて打つのではなく、その状態になって打つ。そういうパンチをローレンスは使っていました。後ろ回し蹴りも不発でしたが、カカトが引っ掛かっているから距離が合えば一発で倒せる蹴りです。いやぁ、こういう選手がいるのですね。ローレンスは、これからも見たい選手──要注意が必要です」

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【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、ナイファンチン編(05)「手刀受け→ヒジ当て」

【写真】ナイファンチンは、型をそのまま使えそうな錯覚を覚えそうになるほど、実戦的向きの型だ(C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型と使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせない。

サンチン、ナイファンチン、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。そんな剛毅會の稽古には站椿が採り入れられている。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンで創られた、空手の体をいかに使うのか。その第一歩となるナイファンチンの解析を行いたい。目線と体の向き、足の小指が正しくなることでナイファンチン立ちが成り立つ。前回、回転の動きによるヒジ打ち二挙動に対し、一挙動のヒジ当て紹介した。第5界は一挙動のヒジ打ちを習得する前段階で、ナイファンチの型の動きに基づく、二挙動の手刀受け→ヒジ当て──の手刀受けを分解したい。

<ナイファンチン第4回はコチラから>


「一挙動のヒジ当ては言わば応用になり、二挙動の手動受けヒジ当てが基本となります」(岩﨑)

相手の突きに対し


イチ=手刀を


伸ばして


受け


二=ヒジを


打つ


手刀受けの際、目、胸、足の指がナイファンチンの型と同じ向きになるように

反対側から見て、正しい姿勢を知る

ヒジと肩を引きすぎて、胸が正面でなく右を向き中心がズレると


左ミドルや左ハイを受ける


正しい姿勢だと、相手の蹴りは上がらない


胸が相手の方が向いて、中心がずれると


左のパンチ、続く右を被弾する


正しい姿勢だと、パンチは届かない

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Bu et Sports de combat MMA MMAPLANET サンチン ナイファンチ ナイファンチン 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、ナイファンチン編(04)「ヒジ打ちでなく、ヒジ当て」

【写真】ヒジ当てはグラウンドでのヒジ打ちに応用できれば、相当に危険になる (C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型と使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせない。

サンチン、ナイファンチン、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。そんな剛毅會の稽古には站椿が採り入れられている。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンで創られた、空手の体をいかに使うのか。その第一歩となるナイファンチンの解析を行いたい。目線と体の向き、足の小指が正しくなることでナイファンチン立ちが成り立つわけだが、第4回は正しい向きとそうでない向きを分解したい。

<ナイファンチン第3回はコチラから>


相手の突きに対し、視線が右を向かず、胸と足の小指が正面を向いていないと


避けているつもりでも突きを受けてしまう。「相手が刃物を持っていると、これで終わりです」(岩﨑)


目線が相手、胸が前、足の小指が前、つまり中心が正面だと相手の突きを受けない。「中心が入り、目が入っているということになります」(岩﨑)。ここからナイファンチンの型にあるように手刀からヒジ当てを打てる


※ナイファンチンの型から知るヒジ打ちとヒジ当ての違いは前回を参照のほど

相手の突きに対し、体の回転で当てるヒジ打ちだと


イチ・ニの挙動になり


突きを受けてヒジは届かない。「外面の回した動きでは、相手の拳が当たることで、引っ掛かりができて入ることができなくなります」(岩﨑)


対してナイファンチンのヒジ当てはイチの挙動になり


相手の攻撃を受けずに、ヒジを当てることができる。「円運動でなく内面で直接入るのが、武術空手のヒジ当てです」(岩﨑)

「稽古を積んでいけば、内面の動きが可能になり、足の小指が外を向いても外側に引っ張られることがなく入ることができます。そのように内面で動けるようになるために型の稽古が必要になります。つまり内面で動けるようになると、年を取って若い頃のように体の自由がきかなくなっても、入れるということになります」(岩﨑達也)

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Bu et Sports de combat MMA MMAPLANET ONE アレックス・シウバ キック ジャレッド・ブルックス ボクシング リト・アディワン 修斗 剛毅會 岩﨑達也 武術空手 箕輪ひろば

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ブルックス✖箕輪ひろば「打・投・極の回転」

【写真】心が折れない、その強さは尊いモノだと思いたいのだが…… (C)ONE

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たジャレッド・ブルックス✖箕輪ひろばとは?!


──ジャレッド・ブルックスに挑んだ箕輪選手が、完敗を喫しました。

「ブルックスは打も組みも、全てにおいて質量が高かったです。向き合った段階で、箕輪選手は腰が引けてしまっていたように見えました。貰う前から引けていた。だから、最初のパンチを貰ったと思います。

腰が入っていない打撃は、相手の攻撃を受けた時にケガをすることが多いです。MMAは打撃でなくても組みが強いと勝てるので、そういう選手が強い打撃を受けてケガをするという例を見てきました。下手でも本気でぶん殴ろうと思うと、質量は上がります。そうすると体の強度も違ってくることもあるんじゃないかと思います。そこは分かっていないですが。

及び腰の打撃を使うぐらいなら、昔のグレイシーのように打撃を打つことを排除して戦った方が良いというぐらいに思います。組みに自信をもっていれば、組めば良い。そこで組まれたくない相手なら質量が下がります。本気で打ちこもうとしてくる相手に、中途半端にキックボクシングをするのは本当に危険です」

──……。

「ブルックスは、レスラーはこう戦いなさいという理想形の試合をしました。基本、余計なことをしないで上を取って殴り続ける。なるべく正確に。そうなると質量が高いままです」

──そこなんです。箕輪選手が敗れたタイミングなので、彼個人のことと思われてしまうかもしれないですが、彼だけでなく……修斗の選手は打・投・極の回転という言葉を口にします。修斗勢でないと総合力ですね。ボクシングとレスリングで対戦相手が上だと予想できた場合、打撃とテイクダウンで遅れを取る選手が打・投・極……あるいは総合力の回転で勝てるのか。そこには疑問を感じてきました。

「なるほど、そういうことですか。打・投・極が回転して勝てるのか、勝てる相手もいますし、勝てない相手もいます。佐山聡先生は修斗の理念と言っていましたね、打・投・極を。理想として存在しています。ただ私の考える格闘技は、全てが結果論です。勝つためにどうすれば良いのか。

つまり打・投・極が回転できなくても、勝てば良いです。それが格闘技です。回転して勝てるのであれば、回転させて勝てば良い。打・投・極の回転は勝つための手段です。打・投・極を回転させることが目的ではありません。修斗は回転させて勝たないといけない競技ということであれば、そうならのでしょうが」

──そういうことではないですよね。裁定基準にしても。

「今回の試合で、ブルックスの何が良かったかというと上体が浮かない状態で、パウンドを打っていたことです。どうしても打とうとすると浮くのが、彼にはない。そして、嫌なところからヒジを打っていました。箕輪選手が立ち上がろうとすると倒しに掛かり。下にいると殴る。あれこそ打倒極の回転ではないかと。立ち上がり際にヒザで顔面を狙うだとか。あの攻撃には唸りました。

そしてラスト30秒になると、ギロチンを狙って引き込む。途中でもRNCも狙っていて、取り切れないと抑えて殴る。ブルックスは勝つために、打倒極を使っていました。それは私があの試合を見た結果、結果論として感じたことです。ブルックス自身は、回転させようと思っていなかったでしょう。勝てば良いので。回転させる必要がなければ、回転せずに戦っていたはずです」

──箕輪選手はリト・アディワン、アレックス・シウバに連勝していたこともあり、ONEでやる力があると……修斗の世界チャンピオンになったからONEで戦うという路線は危険だと感じていた自分は、この2試合でそういう風に思えるようになっていました。

「箕輪選手にとってブルックスは、北米が来た──ということではないでしょうか。何よりアディワンに勝った、シウバに勝った。その勝利がブルックスに勝つことに、どういう法則性があるのか。修斗のチャンピンになったけど、ONEでやれる力があるかどうか分からないという見方は正直で、正しいと思います。強さなんて、分からないです。分かる人にしか。

そういうなかで力を見極めるには、法則性を持ってモノゴトを見る必要があります。組み技に課題がある選手に組み技で勝った。それをAというパターンとして、Aで勝った。対して組み技に強い選手に打撃でいく、Bというパターンでは勝てなかった。Aというパターンで勝てて、Bというパターンで負けたけど、AとBで見られたCということを出せば勝てるのではないか。そういうモノの見方をすることが大切じゃないかと、自分では思っています。だから箕輪選手に関しては、アディワン戦の勝利とシウバ戦の勝利が、ブルックス戦と繋がっていなかったように感じます」

──あれだけ劣勢でも、諦めずに戦い続けた。箕輪選手の頑張りが、これからに繋がって来ることに期待したいです。

「あのう……そういう考えは危険です」

──えっ、どういうことでしょうか。

「体を張って頑張る戦い方は、それで良い相手もいますが、一発で倒されてダメージが残ることもありますからね。箕輪選手は本当に頑張って、心が折れるようなこともなかったです。でも、危ない貰い方をしていたのは確かです」

──その根性が練習で生きるということはないですか。練習で頑張れない選手が、それこそ上のレベルと選手とはやっていけないのではないでしょうか。

「それはそうです。そうなのですが、強い気持ちを創ることを練習する目的にすることはないようにしてほしいです。これは全ての格闘技を戦う選手に言いたいです。

箕輪選手、凄く心の根の良い人間なんだと思います。その良さがあるから、金的を食らってもっと休めば良いのに、早々に試合の再開に応じる。5分間、休みましょうって──人間的に問題のある連中とやってきた自分は思います。良い人も、試合でマイナスに働くなら勝つためには必要ないです。

と同時に最後の最後まで諦めないから、あの急所蹴り以降の箕輪選手の攻めは良かったです。逆にブルックスは、あの急所蹴りの中断で何か途切れた。そうでなくても、2Rからは疲れて失速していましたが、あそこでプッツンと気持ちが途切れ持続しなかったように映りました。

あそこで箕輪選手が自分から打ちに行く打撃ではなくて、合わせる打撃を使っていた。それは試合の序盤も同じでした。結果、腰の引いた打撃だったので後の先を取りに行って、先の先を取られた。ただし最後の20秒は後の先が取れそうでした。それはブルックスに緊張感がもう欠如していたからです。実は間としてブルックスは危なかったです。

だから、攻略の糸口はあります。頑張ろう、ホントは怖いけど何としてもやるんだっていう打撃でなくて、怖いからビビッて打撃をする。その方が良いかもしれないです。ビビっていると、相手は安心から慢心して突っ込んできます。それだって強い相手を攻略する手ですしね。頑張ろう、頑張れる強さがある箕輪選手だからこそ、ネガティブな戦いをしても功を奏することもあるかもしれない。頑張りは立派で、本当に人として大好きになってしまうような選手ですが、戦いは別に弱気を見せても勝てば良いので」

──一生懸命やることは良いことか思うのですが……。

「格闘技を戦ううえで良いかどうか、それは勝つために何をするかです。一生懸命やっている、頑張っている。それは終わってから、周囲がする評価です。これは箕輪選手がそうかは分からないので、私の教え子に対して思うことですが、『頑張った』と振り返るのではなくて『ダメだ。これじゃダメだ』、『まだ穴がある』という気持ちでいてほしいです。それを見た人は『頑張っている』、『努力している』と思いますから」

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Bu et Sports de combat MMA MMAPLANET UFC キック ナイファンチ ハオーニ・バルセロス ビクター・ヘンリー ボクシング 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ビクター✖バルセロス「逆反射神経」

【写真】動き続けることで、バルセロスの意識が追いつかなくなるという戦いをしたビクター・ヘンリー (C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たビクター・ヘンリー✖ハオーニ・バルセロスとは?!


──ビクター・ヘンリーとハオーニ・バルセロス、初回の中盤までハオーニが優勢でした。

「パンチ力がありましたね。ビクターは組みの選手というイメージがありましたが、終始打撃戦になりました」

──自分はボクシングが上手いわけでも、キックが卓越しているわけでもないビクターの打撃が、局面、局面で本職と同じような強さを持つUFCファイターに通用しないと実は思っていました。よく言われたMMAの打撃という感覚では、今や勝てないと。

「ビクターは構えが悪いです。立ちすぎていて。ほとんど自己流なんでしょうね」

──そういう自己流と発想力的なことでは、UFCでは勝てないという考えは違っていたのか……。

「確かに最初は質量的にもハオーニの方が高かったです。ただし、ハオーニは単発で狙い過ぎでした。対してビクターはエンドレスで動き続けています。良く、動きという言葉を使いますが、動きとはパンチのことだけではありません。ビクターの足を見てほしいです。動きというのは手数ではなく、足数なんです。どれだけ動き続けているのか。

結果、初回の途中で前蹴りを受けたハオーニは失速しました。あの爪先が入る蹴りをビクターは練習でショーヘイ(ヤマモト。極真空手出身、CSWの同門)に食らっているんです。面白いモノで、食らっていると技を覚えるということがあります。

ハオーニは一発があるが故に狙い過ぎて、攻撃が単発でしたね。単発の強さと、軽いエンドレスでは試合が続けば後者が勝つ確率が高くなっていく。それが格闘技の試合です。そこで求められるのが、反射神経に対しての逆反射神経なんです」

──逆反射神経……ですか。それは?

「逆反射神経とは一般的な言葉ではないです。例えば刀で斬った、斬ったところで普通の神経は止まります。ただし、刀を振り落とした時にはもう切り返すことができるのは逆反射神経が働いているからなんです。ナイファンチでいえば、右の方向に移動した時に既に左側を注意している。つまり神経がいっているということになります。そういう風に逆反射神経が生きていると、最終的に神経の滞りがなくなります。そうでないと、動きが単発で神経が分断してしまいます。

技を出したあと、神経が分断されているとどうなるのか。例えば右のパンチを出したあとに意識が止まるから、隙ができてしまいます。左の逆反射神経が働いていないということですね」

──夫婦手ではないと。

「その通りです。右の突きを出した時、左の逆反射神経が働いていると夫婦手が機能しています。連動がかかっているということですね。そういう意味では参考になる試合でした。単発の攻撃は自分の意識が働いているから、相手も意識できる。対してビクターの動きは夫婦手でもないし、逆反射神経が働いているわけでもなく、イチ、ニ、サンと動けばイチだけ意識していて、二からあとは無意識なんです。だからハオーニも意識できないから被弾した。そういうことですね。決して殺傷力はない。あるのは前蹴りぐらいで。それがビクター・ヘンリーのMMAストライキングということですね。

と同時にビクターのあの動きに何かビジョンがあったかというと、そうでもなかったと思われます。効いてもそこを抉っていくことはなく、ひたすら散らして動き続ける。そうやって動き続けることでハオーニの判断力を奪う動きになっていたのでしょうね。ハオーニがついていけなくなった。嫌な攻撃だと思います」

──逆をいえば動きが止まると、ビクターは危ないということですか。

「だから2Rになって、初回の後半に攻撃を纏め過ぎたのか、動きが止まって危ない場面がありました。そこでいえば……意識という観点から、ウェービングやヘッドスリップというボクシングで、拳の攻撃に対して発達した防御を蹴りのある試合で使うと、危ういということに通じます。

ビクターの攻撃はステップ、足の動きからボクシングでも、キックボクシングでも空手でもない打撃です。そして彼のウェービングもノープランでした。マイク・タイソンはヘッドスリップから左のレバーを狙うというビジョンを持って、頭を外側に振っていました」

──でもビクターは違うわけですね。

「ハイ。ビクターは最終回にノービジョンで頭を振った時に、ハオーニの蹴りが飛んできたシーンがあり、そこから間がハオーニに変わりました。直後に左フックを貰っています。その後のスピニングバックフィストも危なかったです。あの時のようにハオーニも一発でなく、勢いに乗って連続攻撃を出した時など、確かに強い選手だと感じました。あの動きを奪えば、ビクターは打撃では有効な手立てはないかもしれないです。そういう時のために、今回の試合では見せなかったグラップリングがあるのでしょうね」

──トップUFCファイターのテイクダウン防御力、スクランブル能力、そして寝技も日本国内とは違う。だから、ビクターの次の試合が楽しみですね。そこが通じるのか。今回はそこを見せず、立ち技だけでハオーニに勝った。これは殊勲の勝利かと。

(C)GOKIKAI

「組み、寝技は疲れる。そういう意識が、もう多くの選手にありますね。それにしてもエンドレスの恐ろしさを見ました。ビクター自身が意識していないから、相手にその意識が伝わらない。実はビクターとはLAに訪れた際に交流があって、常に明るくて元気で永遠に話し続けている人間なんです。

練習も同じで動き続けている。止まることを知らない。エネルギーが途切れることがないのではないかと、そういうエンドレスさが試合にも出ましたね。普段、練習、試合、全てマッチしているエンドレス。同じ人間とは思えない、理解不能のエネルギッシュさです。きっと、ビクターは止まれない。站椿なんてやらせると、ダメになってしまうのでしょうね(笑)」

──確かに(笑)。

「あの足の動きをずっと普段からやっている。普段の生活のまま戦っていると言えます」

──なるほど。エンドレスなビクターから、逆反射神経、そして夫婦手と非常に興味深かったです。しかし、全てに神経を届かせる。やることが多いMMAファイターは本当に大変ですね。

「仰る通り、ごもっともです。キックボクシングやムエタイで左ミドルから左ストレートという連動が成立するのは、そこにダブルレッグやシングルレッグという足を取ってのテイクダウンがないからです。組みへの反射神経を使わなくて良いから、恐れることもなく使えます。ビクターは自分も組む、相手も組んでくるという中での連打なので、言い方は悪いけどおっかなびっくりな連続技でした。これこそMMAらしいエンドレスですね。そういう世界で……UFCで勝つには、我々は逆反射神経まで含めて稽古しないといけないですね」

──ビクターのMMAのエンドレス、つまりはMMA特有の打撃がUFCで通じた。ビクターと互角にやり合える日本人選手も、彼の勝利を見て日本からでもやれるという風に思えたのではないでしょうか。

「ビクターは基本的に質量が低いです。だから日本人選手と手が合った。ビクターがなぜハオーニに勝てたかは考える材料としても、ビクターとやりあえるから自分たちもハオーニとやり合えるとは考えない方が良いと思います。日本人選手の課題は、そこではないはずです」

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Bu et Sports de combat MMA MMAPLANET サンチン ナイファンチ ナイファンチン ボクシング 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、ナイファンチン編(03)「目線、胸、足の小指の向き」

【写真】横への隙をなくすナイファンチンの型で創ることができるヒジ当てとは? (C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型と使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせない。

サンチン、ナイファンチン、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。そんな剛毅會の稽古には站椿が採り入れられている。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンで創られた、空手の体をいかに使うのか。その第一歩となるナイファンチンの解析を行いたい。第3回となる今回は、目線、胸、足の小指の向きからナイファンチンの型の解析を行いたい。


ナイファンチン立ちの基本と最重要点は目線と体の向き、そして足の小指の向きになる。この3つの向きが正しくなることでナイファンチン立ちが成り立つといっても過言でない。最初の姿勢は目線、胸、正面を向いている

小指も正面を向く。「小指が正面を向くと、親指はやや内側を向きます。股関節からヒザ、つま先とつながり強い構えとなります」(岩﨑)

本来、人が正面を向いた立った時は足の小指は若干外側を向く。「よって往々にして見られるのは、指を内側を向けることでヒザも内側を向いてしまうという構えです。それでは強い構えにはならないです。サンチン立ちは、指が内側を向いてもヒザは正面を向いており、強い構えです」(岩﨑)。対してナイファンチン立ちは常に足の小指を正面に向けて、強い構えを創る

一の動作。顔は右を向き、視線は右。胸と足の小指の向きは正面のまま。「ウルトラマンのカラータイマーがあるイメージし、カラータイマーを正面に向けてください」(岩﨑)

×正しくない姿勢で顕著なのは、目線に引っ張られて胸が右側を向いてしまうこと

二の動作。左足を右足の前方から、一歩踏み出す

この時、小指は正面を向くようにする。同様に胸も前、目線は右という姿勢は変わらない

三の動作。続いて右足を一歩横へ、同時に右手で手刀打ちを行う。目線は右、胸は正面、足の小指も正面なのは変わりない

×三の動作で顕著な間違った姿勢は、左肩を引いて胸が左を向いて中心がずれてしまう。「一生懸命に腕を引くことで、上体を引っ張ってしまうことで胸のカラータイマーが左を向いてしまいます」(岩﨑)

×同様に伸ばした右手に体が引っ張られ、体が右を向くのも起こりやすい間違い

四の動作。伸ばした右手に

左ヒジを当てる

視線と胸は右を向き、足の小指は正面

×ヒジを当てるときに、指が右側に向くことで

ナイファンチン立ちではなくなる。「内面が出来上がっていないと、足を引っ張って指先が右を向いてしまいます。つま先が右を向く、つまりヒジ打ちになります。ナイファンチンではヒジ打ちではなく、ヒジ当てです。ヒジ打ちとは明確に違います」(岩﨑)

【ヒジ打ちとヒジ当ての違い】
標的に対して、ヒジを動かせるのがヒジ打ち。できているヒジを標的に置くのがヒジ当て。「ヒジを使った攻撃を見ていると、ヒジの状態を考慮せずに振るケースが多いです。振ると移動で力を養成しようとするので、ヒジの状態を創るという状態にはなかなか辿りつかないです。武術空手のヒジ当ては、ヒジの状態が固く創ることでより威力があるという考えです。ヒジの状態が出来ていて、振ることが一番です。ただし、できたヒジを振ることでエネルギーを失うことも多く簡単ではない。ワンインチパンチがエネルギーを失わないのに対し、距離のあるパンチは失ってしまうのと同じです。そこで剛毅會のMMAではこのヒジ当てをケージ・レスリングでのダーティーボクシングに取り入れる試みをしています」(岩﨑)

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Bu et Sports de combat MMA UFC ショーン・オマリー ハファエル・アスンソン リッキー・シモン 剛毅會 岩﨑達也 武術空手 海外

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。シモン✖アスンソン「常に攻撃態勢にある」

【写真】この前蹴りにしても効かせることができるリッキー・シモン (C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たリッキー・シモン✖ハファエル・アスンソンとは?!


──リッキー・シモン×ハファエル・アスンソンのバンタム級戦、ノンストップ・アクションかつリアクションMMAで先手を打つというシモンが、長年に渡りバンタム級トップ戦線で戦ってきたアスンソンにKO勝ちを収めました。

「シモンの空振りだろうが、あの勢いのある右フック。アレを被弾する選手はUFCではそうはいないでしょうが、ゾッとするモノはありました」

――レスリングベースで、テイクダウン&スクランブルを制し続けるなかで打撃を使いこなす。ただ動き続けることで、エネルギーを零し続けるということはないでしょうか。今回はKOで試合を決めたのですが。

「う~ん、この試合では言われたような組みの中での打撃以外に関しては、パンチはパンチ、蹴りは蹴り、組みは組みという風で連動は見られなかったです。ただし、その一発、一発は右フックもそうですし、上段の右前蹴りも良くて。あの蹴りもそうですし、シモンはダメージを与えることができる攻撃をもっています。

だからスクランブルゲームでマネージメントして勝つこともできるけど、攻撃自体には破壊力も十分に感じられました。今回はずっと自分の動きができたということを差し引いても、常に攻撃態勢にありますよね。

絶対に殴る、絶対に蹴る。絶対に組んで倒す。その意識を持ち続けることができると、質量も疑いようのないモノになります。その部分でアスンソンとシモンには絶対的な差がありました。本気のモノとそうでないモノは、絶対に差があるんです。

なんとなく蹴る、なんとなく打つ。この修正は練習の時から必要です。倒すつもりで攻撃をすることが必要なんです」

――そこにシモンとアスンソンの違いがあったわけですね。

「ハイ。それがあったシモンと、ないアスンソンで質量は変わってきます。そのうえで自分のやりたいようやっているのだから、シモンはエネルギーを動くことで零すこともなかったです。それだけ攻防になっていなかったというのはありますよね。アスンソンの攻撃が脅威ではないので、自分のやりたいように動ける。結果、シモンのエネルギーが零れることもない。そういう試合だったと思います。

相手の攻撃に対し、動いたのか。それとも動かされたのか。相手の動きに対し、下がるのと下がらされるのでは全然違う。下がるのは自分の間で、下がらされると相手の間になり、これは相当に危険な状態です。能動態か受動態なのか――今回のシモンは常に能動でした。

これが脅威にさらされる攻撃を持つ相手と戦った時にどうなるのか。この質量を維持できるのか。こういうことを考えると、自分が選手に対して担う役割というのは、空手だから打撃を教えるということではなくて、質量が高い相手にどのように戦えば良いのかを指導する。そこだと普段からも思って指導しています」

――質量の高い相手とは、どう戦うのでしょうか。

「それは……相手の質量を下げることです(笑)。そういう戦いを――現状で国内で戦っていて強いとされている選手が、海外の選手を相手にした時にできるのか。それは見ている立場でも、凄く楽しみにしています。だからリッキー・シモンが、そういう立場になったときにどのような戦いができるのか、そこが見たいですね」

――シモンは試合後にショーン・オマリー戦をアピールしました。

「良いですねぇ。見ものです……案外、良い試合をするんじゃないでしょうか。絶対に見たいです。ただバンタム級ですよね……。どういうことでしょうかね、リッキー・シモンが15位にもならないというのは……。凄まじいです。UFCで戦って、勝つということを考えると気が遠くなりそうです(苦笑)」

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BELLATOR Bu et Sports de combat MMA RIZIN セルジオ・ペティス 剛毅會 堀口恭司 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ペティス✖堀口恭司「質量と間はペティス」

【写真】ペティスの3Rまでの動き、その秘密が明かされるのは2022年のバンタム級ワールドGP後だろう (C)BELLATOR

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たセルジオ・ペティス✖堀口恭司とは?!


──堀口選手の敗北。武術空手的にはペティス戦をどのように見ることができました。

「まず3Rまで、堀口選手がポイントをリードしていたことは絶対的です。とはいえ、それが堀口選手の試合なのか、ペティスの試合だったのか……」

──そのように感じるというのは?

「まず、あのサークルケイジの広さと堀口選手の距離の取り方が、RIZINのリングで取っている距離のようにフィットしていなかったように見受けられました。距離が近くになっていました」

──それは試合序盤からですか。

「そうですね。遠い距離を取っているようでも、近かったです。そしてイチ・二、イチ・ニというリズムなの、そこからのパンチはイチ・ニのサンになる。対してペティスはイチで、全てを打てる構えでした。そうなると質量はペティスが重く、間もペティスになりますよね。

幾度か堀口選手はカーフを蹴って姿勢を乱すことがありましたが、質量が重いペティスを相手に蹴ろうとすると、間がペティスなのであのようになる。無理に蹴っているので空振ったり、蹴ったほうが跳ね返されるということは、往々に起こります。重心が乱れた蹴りになっているんです。対して打てば当たるという状態ではあったのですが、なぜかペティスは打たなかったです。

4Rまでずっとその調子で。それは打てなかったのか、打てなかったのか。4Rになってからは、別人といいますか……本来は1Rからあの動きができていたと思うので、なぜ最初からああいう風に動かなかったのは疑問です。どれだけ質量だ、間だと言っても手を出さないとMMAでポイントを取ることはできないですしね。

積んできたことが、練度不足だったのか。単発でしか出さないから、堀口選手がそこに合わせやすくなり、ポイントとして打撃でも堀口選手につく。そんな風になっていたのか……。それに堀口選手の右のクロスは、ショートレンジでも効きますしね」

──ペティスの3Rまでの戦い方を考察するのは、難しいということですね。

「体重差があるスパーリングが成り立つのは、重い選手が軽い選手に合わせて動くからです。それでも目に見えない攻防がある。同じ体重で戦っていてペティスが手を出していなくても、目に見えない攻防があり、試合が成立した──そんなことが起こっていたかもしれないです。とにかく質、間とも圧倒していたペティスがあのように動かなかったのは、ペティスにしかその理由は……試合中は分からないですよね」

──5Rで消耗戦、ラウンドを落としても疲れさせるという賭けだったのか。

「しかし、MMAですからね。あれだけテイクダウンを取られると、取られないように策を講じると思うんですよね。画面で見ていると、堀口選手が疲れたという風に見えなかったですし……。この連載は結果が出たところで武の理を解析しようという試みなのですので、あの結果が出ても堀口選手が疲れたようには私には見えなかったです。

ただし4Rの序盤にテイクダウンをして、それまでとは違い拘ることなく立った。そこがターニングポイントになったのかと。グラウンド・コントロールの展開にブーイングが起き、そこで堀口選手は動揺したのか、内面に何が起こったのか。あのまま抑えて、パウンドをちょこちょこと落としていれば勝てた──という仮説は十分に成り立つかと思います」

──私がFigth&Lifeで行った取材では、堀口選手は「あのままで勝てた。でも、面白くない試合で良いのか。立って倒そうと思ったし、倒せると思った」という風に話していました。

「う~ん、勿体ないです。勝利が絶対のなかで、勝利以上を目指す。だから、あれだけの存在になったのかもしれないですが……。次にまたテイクダウンを狙いにいって切られ、従来の質と間で上回る選手の試合にここからなっていました。

そうなると相手の動きをかわすという守りの間合いだった堀口選手は、手を出し始めたペティスに苦しみだした。それが4Rに起こったことかと思います。あの攻撃ができる、ああいう打撃が内在していることをペティスは明らかとしました。質量に回転が加わり、威力があることは一目瞭然となりました。

と同様に打撃に関しては、堀口選手も右のクロスを合わせるという動きに終始していましたね。テイクダウンに帰結するファイトだったからなのか単調でしたし、粗かったです。あのペティス陣営の野杁正明選手を意識したという送り足で前に出るという戦いは、相手の間になって合わされることも多いのですが、堀口選手は下がった。なら、ペティスがパンチを出していれば当たったと思うのですが……と結局、この試合はそこに行きついてしまいますね。

5R戦をマネージメントするという点において、堀口選手が3Rまでは正解だったわけですし。質量も間もペティスでも、MMAの試合では堀口選手。これは私なんかも、試合を勝たせる立場になったときに注意しないといけないことなんです。そういう意味でも勝ったペティス、負けた堀口選手、MMAを戦う選手や指導者、MMAを見ているファン、全てに勉強になる試合だったかと思います」

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