月別: 2024年9月
【写真】次の舞台はRIZINかEternal MMAか……それとも (C)TAKUMI NAKAMURA
8月23日(金・現地時間)にネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されたRoad to UFC2024 Ep06 & Ep06=Road to UFC Season03 Semi Finalsにて、フェザー級準決勝で原口伸がチュウ・カンチエにスプリット判定で敗れた。
text by Takumi Nakamura
試合の大半でテイクダウンを仕掛け、グラウンドでコントロールしていた原口だったが、ジャッジが評価したのは細かい打撃を当てたカンチエの方だった。最近のMMAは打撃偏重と言われ、原口自身もそれを頭に入れて準備をしてきたうえでの敗戦。
納得いく判定ではなく、Road to UFC(以下、RTU)敗退という結果を受け入れるまでに時間がかかる試合だった。あの敗戦から約5日後、米国から帰国した当日から練習を再開していたという原口に話を訊いた。
――RTU準決勝のチュウ・カンチエ戦がスプリット判定負けという結果に終わりました。原口選手がテイクダウンを仕掛けてコントロールしている時間も長い試合展開でしたが、それがジャッジには評価されなかったという形です。率直に今はどんな心境ですか。
「やっぱり『納得いかねえな』という本音はあります………あるんですけど、自分のファイトスタイルなど色々と見直すきっかけにはなったかなと思います」
――試合中はどんなことを考えながら試合をしていたのですか。
「1Rは思ったようにテイクダウンできなくて、上からヒジをコツコツ当てられてしまって。目立った攻撃をされてはいないけど、自分もいい見せ場は作れていなかったので、相手にポイントがついたと思いました。それで2Rは半分以上は自分のターンだったし、相手も打撃を繰り出してきたんですけど、ほとんどブロックしていたんですよ。
1発だけストレート?を軽く当てられたんですけど、それは全く効いていなくて。客観的に見て自分の方が印象がいいラウンドだったと思いました。で、3Rは完全に自分が取ったと思います。セコンドとも2Rが終わったあとのインターバルで話を聞いて、セコンドからも『2Rは取っている』と言われて、自分と同じ認識だったと思います」
――では原口選手としては2・3Rを確実に取ったという判断だったんですね。
「そうですね。3Rも10-8でもおかしくないような展開だと思うんで……はい(苦笑)」
――ただし結果はスプリット判定となり、カンチエに軍配が上がりました。
「スプリット・ディシジョンと聞いた瞬間、めっちゃ嫌な予感がしたんですよ。そうしたら案の定、相手の手が上がっていて……。ただ相手陣営は相手陣営で判定を待っているときはみんなお通夜みたいな顔してたんです。それを見て僕は勝ったと思ったし、選手と陣営はお互いそういう予想をしていたのかなと思います」
――この結果をどう受け止めていますか。
「自分の中では2つの感覚があって、1つは今回の試合に関しては勝負に勝って、試合に負けたんだなと。でも負けは負けなんで、自分が決着をつけられなかったという反省点もありますし、1本取るかパウンドアウトしていればよかっただけの話です。だから仕方ないなという部分もあります。
もう1つはシンプルに、あの試合内容で勝ちにならないんだったら色んなことが吹っ切れました。今回もそうなんですけどRTUに2年連続で出場して、どうしても戦い方が勝ちにこだわるスタイルになっていたんです。そこを追及して、ああいう判定になるんだったら、もうレスリングやコントロールに固執する必要はないなと。自分がやりたいようにやって、打撃でもガンガン行くし、失敗してもいいから寝技でもガンガン極めに行こうと思いました」
――戦い方を微調整するのではなく、考え方そのものを変える必要があると。
「今回の試合前に分かっていたことではあるんですけど、 実際に自分がこういう事態に直面して。今は心のそこから自分のやりたい格闘技をやればいいんだと思えていて、今が一番人生で格闘技を楽しめているかもしれません」
――勝つための格闘技じゃなくて好きな格闘技をやるということですか。
「そうですね。良くも悪くも考えがアスリート的になっていたというか、勝つために手堅く行きすぎたという部分は確実にあって、勝たなきゃ意味がない・結果を出さないといけないという考えに縛られすぎていたと思うんです。でもあの負けを経験してその呪縛から解放されて、なんかこう…次はバチバチに行ったろうかな!という気分になれています」
――フィニッシュすれば試合は終わるし、そこまで行きつかなくても、そのための動きが評価されるのであれば、その通りに戦いますよということですね。
「はい。今回の試合でも、いくら僕と周りの人たちが『伸が勝っていたよ』と言ってくれても、負けは負けじゃないですか。だったら今の判定基準に合わせるしかないし、そういう時代(判定では打撃やダメージが評価されやすい)になったんだと思います」
――そこも踏まえてどんなことを意識して練習していこうと思っていますか。
「僕の場合はとりあえずレスリングは一旦置いておいて、打撃とグラップリングだけに重点を置いてもいいのかなと思います。僕の強みはレスリング・コントロール力だと思うのですが、そこに頼らない、そこに逃げない練習をしたいです」
――ある意味、練習でやるべきことが明確になりましたか。
「すごく今は清々しいんですよね。本当に判定には納得していないし、あの結果を落とし込むのにも時間はかかりました。でもそれを一旦置いておいて、もっとシンプルに格闘技の技術という面においては『俺、めちゃくちゃ伸びしろあるやん!』という風に捉えています。だから今は自分で自分が楽しみです」
――すぐ試合が終わってすぐ練習も再開したのですか。
「練習しないと居ても立っても居られないというのではなくて、自分自身に伸びしろをすごく感じたので、どこかに遊びにいくような感覚で練習をしたいと思って。帰国したその日にボクシングトレーナーに連絡して、ジムでミット打ちをやっていました(笑)」
――帰国したその日ですか。
「はい。試合の次の日の朝6時半くらいには日本に到着したんですけど、昼にはトレーナーさんに連絡していましたね。『今日って練習できますか?』って。そのくらい練習したくてしょうがなかったです」
――さてRTUでの戦いが一段落して、これからはどこを目標にして試合をしていこうと考えていますか。
「よく勘違いされがちなんですけど、僕は海外で試合することにこだわりがあるわけではないです。UFCを目指すという目標は変わらないですし、そこにたどり着くまでの過程として試合をしていきたい。もしRIZINでチャンスが来るんだったらやってみたいし、引き続き海外でもチャンスがあるならやってみたい。
そこは割と柔軟に考えていて、舞台問わず、強い選手と戦って成長できればという感覚でいます。海外志向になりすぎると考えの幅を狭めることになると思うので、チャンスを与えられたところで結果を出す。どの団体で試合をやるにせよ、勝ち続ければ上に行けるわけですし、道は切り開けると信じています」
――実は原口選手は日本国内ではGrachanとVTJにしか出ていないんですよね。
「そうなんですよ。出ていない大会の方が多いので、色んなチャンスがあるのかなと思います」
――では試合のチャンスを待って、次の試合に向けて準備していくという形になりそうですね。
「はい。本当にまだ先のことは何も分からないので、さっき言った通り、強ければ道は開けると思っています」
――国内の団体ではRIZINがビッグプロモーションとして存在していますが、RIZINのことは意識していますか。
「試合が終わった後にX(Twitter)でもRIZINで見たいですというリプやメッセージをたくさんいただいて、もしオファーをいただけるなら全然出たいと思います。海外で言ったら、同門の伊藤空也選手が豪州のEternalMMAでベルトを獲ったんですけど、EternalMMAからUFCに行った選手もたくさんいるので、そういう大会に向けても準備していきたいです」
――それでは最後に次戦に向けての意気込みをいただけますか。
「出来れば年内もう1試合やりたいと思っていますが、いい意味でこだわりを持ちすぎず、自分が強くなることを考えて試合のチャンスを待ちたいと思います」
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【写真】練習はもちろん、お互いにセコンドについて試合をサポートする芦澤と山本。対談でも2人の息はぴったり合っていた(C)MASASHI KIKAWA
現在発売中のFight & Life#104のワイド特集「格闘技日本代表」内で芦澤竜誠と山本聖悟による対談が行われた。
Text by Takumi Nakamura
7月13日に行われたBlack Combat 11でパク・ソンジュンをKOした山本、そして7月28日の超RIZIN03で皇治に判定勝利してMMA初勝利を挙げた芦澤。2人は芦澤がK-1参戦当初から交流があり、芦澤のMMA転向に合わせて共にMMAに取り組むようになった。
今回の対談ではそれぞれの試合を振り返りつつ、独自の打撃論について語っている。MMAPLANETでは「Black Combat 11」での山本×ソンジュンについて語っている部分の一部を掲載したい。
──それでいくと、山本選手は韓国のBlack Combat(以下、BC)に参戦していて、7月のパク・ソンジュン戦でもKO勝利して、現在3連勝中です。ちょうど芦澤選手と練習するようになった時期と重なりますよね。
山本 最後に負けた試合(2023年1月のキム・ジョンフン戦)から竜誠にセコンドについてもらっていて、今年は3戦3勝です。
芦澤 俺がセコンドについて、試合前に「絶対にこれやったら勝てるよ」って話をして、それが実際にハマったことがいっぱいあるんですよ。俺がセコンドにつく以上、勝たせなきゃいけないんで。
山本 BCはプロモーションも兼ねて試合の一週間前くらいから現地に入るんですけど、竜誠もそのタイミングから来てくれて、向こうのジムで一緒に練習して、その一週間で分かることも多いんです
芦澤 それで結果が出て、ってことがお互い積み重なっているから、お互いを信じて、自信にも繋がる。基本的に俺と聖悟は一緒じゃないですか、ストライカーとして。だから聖悟の打撃が段々と試合でもハマって、俺たちがやっていることは間違いないよねっていう。
──山本選手としても芦澤選手のアドバイスを受けて打撃の向上や変化は感じていますか?
山本 感じますね。例えば前回の試合は相手がサウスポーで、試合の一カ月前くらいからクレイジービーの選手にスパーリングパートナーをお願いして、サウスポー対策をやっていたんです。でもその時のスパーリングで怪我しちゃって。その時の動画を見ていたら、僕の位置取りとか動きがよくなかったんです。
芦澤 そうそう。だから俺がスパーリングの映像を見て「それじゃダメだよ。こうやって動かないと」ってアドバイスして。
山本 竜誠のアドバイスを聞いたら、なんで自分が怪我したのか分かるし、骨折してからはスパーリングはできなかったんですけど、動きそのものを修正することが出来たんです。
芦澤 俺もずっと立ち技やってたから“見える”んですよ、有利なポジション取りとか。それでいうと怪我した時の聖悟は相手にとって有利なポジションでやっちゃってたから、ある意味、自滅してた。だからそこを俺が修正したら、試合でKOしたんですよ。
山本 まさに竜誠に言われたことは間違ってないなと思いました
■「俺はK-1の頃から距離で戦うタイプ。MMA用の距離感が自分の中で分かってきた」(芦澤)「一度ブランクがあって復帰して、今年から連勝が始まった。これから竜誠と一緒に上がっていく」(山本)。ファイトスタイルや技術体系はもちろん、人間性も含めて盟友と言いたくなるほど息の合った2人。両者の対談が掲載されたFight&Life Vol.104は現在発売中です。
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【写真】青井がチャンスを逃さず一気に詰め切った(C)Echigo Fujin Festival
9月1日(日)、新潟市の東区プラザでプロ修斗公式戦「越後風神祭り13」が開催された。ここではメインイベントとともに、北陸在住のルーキーたちの試合をお届けしたい。
Text by Shojiro Kameike
<フェザー級/5分2R>
青井太一(日本)
Def.1R0分56秒 by TKO
澤江優侍(日本)
澤江の左ジャブに、青井が右カーフを合わせる。澤江も右カーフを返した。右に回り、澤江にロープを背負わせた青井が右ボディストレートを打ち込み、左フックをフォローする。パンチを振ってくる澤江を捌く青井だが、澤江も左フック、右カーフを当てた。至近距離の打ち合いで青井が右ストレートから左フックを返す。さらにワンツーで澤江の顔面を打ち抜き、ダウンを奪う。
パウンドを浴びながらも立ち上がる澤江。しかし動きが止まっている澤江の顔面を青井の右ストレートが襲う。コーナーを背にした澤江のボディに、青井が左ヒザを突き刺した。体がくの字に曲がった澤江に対し、青井がラッシュをかけるとレフェリーが割って入った。
<フライ級/5分2R>
鈴木尊(日本)
Def.1R1分22秒 by RNC
本多“弥彦”直樹(日本)
鈴木がクラウチングスタイルから鋭い右ローを放つ。一度バックステップした本多は、鈴木の右の打ち終わりに、ガードの間から右ストレートを打ち抜いた。尻もちを着いた鈴木はすぐにシングルレッグでスクランブルへ。立ち上がる本多をバックコントロールで制し、両足を差し込んだ。体を伸ばさずにパームトゥパームでRNCを狙う鈴木だが、ここは極められず。再度しっかりと左腕を首に巻きつけ、本多の体を伸ばしてRNCを極めきった。
<ストロー級/5分2R>
大ちゃん(日本)
Def,1R4分06秒 by RNC
シューティングガイコツ(日本)
試合が始まると、サウスポーのシューティングガイコツが距離を詰めてくるが、大ちゃんが右前蹴りで距離をつくる。さらに右前蹴りをボディに突き刺す。この一撃が効いたか、下がるシューティングガイコツに大ちゃんが右ストレートを浴びせる。シューティングガイコツが頭を下げると右ストレートを打ち込み、体を起こすと右前蹴り、さらに右ミドルを当てた。シューティングガイコツは大ちゃんの右ヒザをキャッチしようと試みるが、大ちゃんの足の引きが速い。
相手をコーナーに追い詰めて連打を浴びせる大ちゃん。シューティングガイコツの右の蹴り足をキャッチして、こかした大ちゃんがトップから鉄槌を連打する。シューティングガイコツはシングルレッグからリバーサルへ。その左腕にオモプラッタで絡みついた大ちゃんは、シューティングガイコツの顔を引き寄せ、胴をロックしていないままRNCで絞め上げてタップを奪った。
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