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【Special】月刊、大沢ケンジのこの一番:9月 ストリックランド✖アデサニャ。ケイプ、金原&牛久

【写真】接近戦で戦え、相手の得意なところでもやりあえる。それが世界的ウェルラウンダーという大沢ケンジの弁、ご堪能ほほどを(C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。
Text by Shojiro Kameike

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾というJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。今回は大沢ケンジが選んだ2023年9月の一番、9月10日(日・現地時間)にUFC293で行われたショーン・ストリックランド×イスラエル・アデサニャマネイル・ケイプ×フィリッピ・ドスサントス、さらには9月24日のRIZIN44でも見られた現在のMMAのトレンドについて語らおう。


――大沢さんが選んだ2023年9月の一番を教えてください。

「UFC293のショーン・ストリックランド×イスラエル・アデサニャと、マネイル・ケイプ×フィリッピ・ドスサントスです。9月は国内外で面白い試合が多かったので、いろいろ語りたいことも多いんですよ」

――ではまず、ストリックランド×アデサニャとケイプ×ドスサントスを選んだ理由からお願いします。

「まずアデサニャは、長い距離で戦いながらカウンターを狙うタイプじゃないですか。でも最近は――特にアレックス・ペレイラとの試合でも、距離を詰められるとアタフタするような場面が増えていましたよね。ストリックランドはアデサニャ戦の前にペレイラと一緒に練習していて、そのあたりはペレイラから聞いていたんでしょう。

ストリックランドが距離を詰めつつ、それほど自分からガンガン行くわけではなく様子を見ていた。

アデサニャは、あれだけ近い距離に入ってこられるのは苦手だと思います。

(C)Zuffa/UFC

それでアデサニャは距離を取る。でもストリックランドが積極的に打ってくるわけでもなく――様子を見ていたらアデサニャのほうが疲れてしまって」

――確かに、ズルズルとスリックランドのペースになっていきましたね。

「パンチが当たったことに対するポイントでいえば、アデサニャが取っている可能性もあるかもしれない、と思いました。『これは自分がポイントを取っていると考えているから、アデサニャは前に出ないのかな?』と。この試合は何度か見直しました。でも、やっぱりアデサニャは短い距離を嫌がっている。その結果、大番狂わせとも言える結果になりました。

だから、これまでMMAPLANETの企画で言ってきたことに繋がりますけど――まず近い距離に自分から入っていく。そしてコンタクトを多くして相手を疲れさせていく。それが最近のMMA、特にトップ選手のトレンドになりつつあると思いますよね」

――世界で勝つためには、近い距離でも戦えるようになること。それが大沢さんの一貫した主張ですよね。

「あの距離で戦うには技術が必要だけど、それだけではなく前に出続けるためのフィジカルとタフさ、そして気持ちも必要になります。前に出ると、どうしてもカウンターをもらってしまいますから。最初は被弾覚悟で距離を詰めて、カウンターをもらいながらもプレッシャーをかけ続ける。そうして相手がフィニッシュブローを打つスタミナを奪っていく。ストリックランドは、まさにそういう試合をしていたと思います。

(C)Zuffa/UFC

そこで比較対象として良いのが、ケイプとドスサントスの試合で」

――ストリックランド×アデサニャとは対照的に、手を出し続けるドスサントスをケイプが捌いて判定勝利を収めるという試合内容でした。

「ケイプもカウンターパンチャーだけど、近い距離になっても嫌がることはないですよね。でも基本的には『待ちのファイター』だから、プレッシャーをかけられたくはない。ドスサントスは手数が多くて距離を詰めてくるので、後半はケイプも疲れていました。

ストリックランド×アデサニャのような中量級の試合とは違って、軽量級はあの距離になると打撃だけではなく、どんどんテイクダウンも狙ってくる。フライ級のアレッシャンドリ・パントージャ、ブランドン・モレノ、デイヴィソン・フィゲイレドあたりは、まさにそんな試合をしていて。……なんかね、今のUFC軽量級は凄いことになっていますよ(笑)」

――確かに。オクタゴンの中は常に進化し続けていますが、ここ最近はより一層、進化のスピードが速いように思います。試合の中で出される技術が増える一方で。

(C)RIZIN FF

「でもそれはUFCや海外だけではないんですよね。

国内でもRIZIN44で、金ちゃん(金原正徳)がクレベル・コイケ戦で見せたのは、そういう試合でした。もともと金ちゃんって、どちらかというと近い距離が好きというわけではないと思うんです。でも、まず自分から打って中に入り、相手が打ち気になってきたら、自分からテイクダウンを狙ったりとか。

(C)RIZIN FF

RIZIN44だと牛久✖萩原戦もそうです。

前半は萩原(京平)君が、牛久(絢太郎)君に打撃でプレッシャーをかけていった。牛久君もテイクダウンに行っても切られている――これは萩原君のペースになるかと思いました。でも牛久君が下がりながらパンチを振るうと、萩原君は警戒したんじゃないですか。牛久君はカウンターを恐れずにパンチを出していくと、2R以降は牛久君のペースになりましたよね」

――牛久選手がテイクダウンに成功してポジションを奪い、3-0の判定勝ちを収めました。

「こうした試合を見ていて、『オールラウンダーとは何か?』と考えたんです。日本のオールラウンダーって、相手の苦手なところで勝負しようとしますよね。相手がグラップラーならストライカーになり、相手がストライカーなら自分はグラップラーになる。いくつもの要素を混ぜ合わせるというよりは、相手の得意なところで勝負しないというイメージが強くて。それって、本当の意味でオールラウンダーではない気がするんですよ」

――試合ごとにストライカーになるか、グラップラーになるかではなく、1つの試合の中で全ての要素を出さないといけない。

「そう。相手が強いストライカーだと、打撃の距離に入らずテイクダウンを狙う――牛久君は朝倉未来戦まで、そういうファイターだったと思います。でも萩原戦では、違い距離で打撃を振りながらテイクダウンを狙えるという、もうワンランク上がった気がしますね」

――金原選手も、クレベルが寝技師だからスタンドだけで戦うというわけではない。打撃から入って、テイクダウンを奪い、グラウンドでも勝った末の勝利でした。

「試合前に金ちゃんが『先手を取る』と言っていて、まさにそんな試合展開になりました。軽量級のトレンドがそうなってくると、ケイプのようなタイプは今後――トップに行けば行くほど苦しくなってくるでしょう。ケイプは待ちのストライカーで、時おりテイクダウンを狙うこともありますよ。でもそれは近い距離を嫌がって組みに行っているような感じで。

ストリックランドとアデサニャの試合もそうですけど、最近の試合で5分3Rや5分5Rが短く感じられる時があります。視ている側がそう感じるということは、試合をしている選手は、もっと短く感じているかもしれないです。その試合中に少しでも様子を見ていると、すぐ相手にペースを持っていかれてしまう。じゃあペースを持っていかれないようにするためには――というと、コンタクトを多くすることだと思います」

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AJ・マッキー BELLATOR F1 ISAO MMA MMAPLANET o RIZIN Special   アキラ トフィック・ムサエフ パトリシオ・フレイレ パトリッキー・フレイレ ホベルト・サトシ・ソウザ マンスール・ベルナウイ 大沢ケンジ 朝倉海 柏木信吾 榊原信行 水垣偉弥 菊入正行 鈴木千裕

【Special】月刊、柏木信吾のこの一番:7月―その壱―鈴木千裕✖パトリシオ「お代わりするんですか?」

【写真】ズバリ、舞台裏に終始しています(笑)(C)BELLATOR

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画――が1年ぶりに復活。
Text by Manabu Takashima

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾3人というJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。今回は柏木信吾が選んだ2023年7月の一番、7月30日に行われた鈴木千裕×パトリシオ・フレイレ戦――に通じるパトリッキー・フレイレ×ホベルト・サトシ・ソウザの1戦をまずは語らう。


――もう、アゼルバイジャンからは帰国されたのですか(※取材は13日に行われた)。どのような国なのでしょうか。

「自分たちはおもてなしを受けているので、良い部分しか見ていないということはありますが、バクーはとても良い街でした。皆、穏やかな人達で。2007年ぐらいから、石油と天然ガスで凄く発展しているようです」

──イスラム教の国というイメージですが、F1GPも行われた経済的な発展は凄まじいイメージです。

「11月の大会もF1を開催している会社とやっていくことになります。政局的には野党もありますが、事実上は与党が圧倒的に強い国政で安定しているようです。凄く治安も良かったですし。バクーの街は真夜中に1人で出歩くこともできました。

女性もヒシャブですら、している人は少ないです。伝統的な衣装を着ている人は、他のイスラム圏からの観光客で。それほど戒律には厳格ではないと聞きました。普通にバクーの女性は肌も出していますし、凄く綺麗な人もいます」

──いや、それにしても夏休み返上でお疲れさまでした。

「いえ。RIZINで働くようになって初めてですね、こんな風にまとまって休めるのは。僕も今日から家族と一緒に台風を避けつつ、夏休みを楽しもうと思います」

──スミマセン、そのような時に……。

「いえいえ、『今月の一番』の復活楽しみにしていましたから。そしてMMAPLANETがリングも解禁ということで、今回は鈴木千裕×パトリシオ・ピットブルで行かせてください」

──押忍。もう舞台裏から楽しみです。

「ここはもう、本当に書けること書けないことがありますから。その辺りは宜しくお願いします」

──ハイ。ギリギリのところ、狙っていきます(笑)。一つあるのはAJ・マッキーが欠場になり、ホベルト・サトシ選手が代役出場をする。これだけで、とんでもないことが起こっていたと思いますが、そこに加えて……なぜ、この1戦まで追加されているんだと(笑)。

「フフフフフ。本当に99パーセントの人の言葉を代弁していてだきました。今回は全てが重なりました。僕はフライングケージの担当もしていたんですけど、サンノゼから運んで組み立てて。24日の月曜日にリハーサルをすることになっていたんです。

そうしたら23日の朝にBellatorから電話が欲しいと連絡がきて。これは良くない話だとピンときました。そうしたらAJの話で。スミマセン、鈴木選手とパトリシオ・ピットブルの話なんですけど、ここから入らないと……(苦笑)。

その日からどうしようということになり、Bellatorはマンスール・ベルナウイが待機しているからそれで良いという考えでした」

──ハイ。まぁTV中継ができればという判断ですね。

「そうなんです。でも、僕らRIZINサイドは興行主です。BellatorカードのメインはAJ・マッキーとパトリッキー・ピットブルでチケットを買っていただいているので、ベルナウイが代役でOKとはならないです。イベントはRIZIN主催で、リスクの負い方が違う。だから、もう少し抗わさせてほしいと伝えました」

──RIZINファンがベルナウイで納得するとは思えないです。それならトフィック・ムサエフだろうって。アキラ選手には申し訳ないですが。

「いや、それが実はプランBでした。もちろん、プランAはサトシで。そして色々と交渉の結果──サトシの体重は残り1週間では絶対に落ちない。でもBellator側もトーナメントなのに73キロのキャッチを了承してくれました」

──緊急事態の超法的処置ですね。ただ、米国でのBellatorで有り得たのか。やはりRIZINが主催している大会ということも大きく影響していたと思います。

「正直、状況が状況ですし、政治的な背景、大人の判断とこのタイミングだから全てできたと思います」

──まぁ、彼らも色々とありますし。

「ハイ。もちろん、興行会社としてRIZINのリスクも分かってくれていますし。スコットはトーナメント参加者にコンセンサスもとっていました。そこはフェアでしたね」

──誰もが幸せになれる代替カードだったから、超法的処置も通ります。ファンが納得しないカードでは73キロはおかしいだろう……ともなりますし。

「その通りですね。本来ならBellatorもライト級でもう1試合、GPの代役が務める選手の試合を組んでいたはずです。それがコラボレーション興行の一つの弊害というか、キャパというか。試合数も彼らが望むだけ……7試合とかを組むことができなかったです。

BellatorにはBellatorの放送の都合があり、RIZINにはRIZINのPPVと日本の放映権が存在していて様々な事情があるなかで、それを一つひとつクリアして創り上げたイベントなので、どこかにしわ寄せがくる。それがBellatorにとっては試合数で妥協したというのは否定できないです。TV中継枠をこなすのに、体重超過や負傷欠場が──まさに現実になってしまったようにあり得る中で、彼らが受け入れる最少の試合数が5試合でした」

──ここでISAO選手や菊入正行選手の試合を組みたいという想いもあったでしょうし。

「そういうことなんです。ただし、何が起こるか分からないなかで、我々も時間制限もあるので7試合は組めないよ──ということでした。それでもRIZINがライト級チャンピオンを出したことで、双方が納得できたBellatorのメインカードでした」

──本来なら、そこで一件落着です。ただし、そこでパトリシオ・フレイレ×鈴木千裕まで追加カードとして発表があり、あのような結末に至った。AJ欠場のピンチで、こんなボーナスまで引き出してしまう。

「僕は正直、そのアイデアを聞かされて動かないと行けなくなった時──正直、憤っていましたよ(笑)」

――もちろん榊原信行CEOからだと思いますが、いやぁ凄いですね。そこまでやってしまおうというのは。言い方は悪いですけど、火事場泥棒ですよ(笑)。

「あのね、高島さん!! 僕はAJが欠場して、サトシ✖パトリッキー・ピットブルを成立させた。大仕事が終わったばかりだったんですよ。ウルトラCを引っ張りだしたのに、お代わりするんですかって(笑)」

──アハハハハ。

「それがフライングケージのリハーサル中ですよ。イタリアの製作者たちと日本の技師さんたちが、『ああだ。こうだ』とやりとりをしている時に、お代わりが欲しいと連絡があって。千葉の倉庫で、僕はブチ切れていました(笑)」

──しかし、凄いですね。榊原さん。

「やっぱ、スゲェですよ。普通の人だったら言わないことを、あの状態の僕に課してきた。まぁ、榊原社長はAJ欠場の時点で、『パトリシオを出せないかな』ということは言っていました。イベンターなんです、根っからの。朝倉海選手の欠場で、RIZINのメインを無くした。そしてBellator側のメインも無くした。

これはイベントとしては、ケガを負った状態で傷に塩を塗り込まれている状況でした。サトシという最高の応急処置ができたのですが、やっぱり体は弱っている。榊原社長は、そのままではイベンターとして終われなかったのだと思います」

──選手のコンディションなどが、先に頭にある自分のような立場の人間には全く考えが及ばない一手です。

「ハイ、全くアプローチが違いますよね」

──それはもう、火事場泥棒という言い方をしましたが、まさに怪我の功名だったわけですね。この大当たりを引き出す──格闘技界にいても、絶対的に人種が違うのですが、これは凄まじいなと素直に思いました。

「高島さんから、その言葉を聞けるのは素晴らしいと思います。僕も正直、終わったあとにスゲェなと。本当に思いました」

──それも鈴木選手が勝ったから。パトリシオが勝っていれば、まぁスクランブル出場で名前のある方が勝つという過去にも見られたケースで。

「大博打です。博打を打って、勝ったんですよ(笑)。イベント当日を下り坂で迎えてはいけない。向かい風のなかで、イベントが始まってしまうことを避ける。上り坂、追い風にしてイベントを開く。それがイベンターとしての榊原社長の姿勢なんです。『本気なの? この人?』って思ったんですけどね(笑)」

<この項、続く>

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ABEMA MMA MMAPLANET o ONE ONE FN12 Special アドリアーノ・モライシュ ウ・ソンフン キック シェ・ウェイ ボクシング 修斗 大沢ケンジ 安芸柊斗 新井丈 柏木信吾 水垣偉弥 海外 若松佑弥 関口祐冬

【Special】月刊、大沢ケンジのこの一番:7月―その弐―:若松佑弥✖シェ・ウェイ「格闘技は、戦い」

【写真】計量失敗も集中力を増した感のあった若松。落とせない試合をモノにした(C)ONE

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。
Text by Shojiro Kameike

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾3人というJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。今回は大沢ケンジ和術慧舟會HEARTS代表が選んだ2023年7月の一番、修斗世界ストロー級選手権試合=新井丈×安芸柊斗戦から、ONE FN12の若松佑弥×シェ・ウェイ戦まで語らう。格闘技は、戦いだ。

<月刊、大沢ケンジのこの一番:7月:新井丈✖安芸柊斗戦はコチラから>


――至近距離の練習、ですか。

「ウチのジムでは結構、至近距離の練習をやるんですよ。MMAのスパーリングでも、ボクシングやキックボクシングの距離でやらせます。これは『打ち合い上等』ではなく、少し打撃をもらう覚悟で前に出ていくことで、相手を削っていくということなんです」

――ボクシングジムでガードを固めている選手のグローブをトレーナーさんが叩き続けるトレーニング風景を見たことがあります。受けている選手は目を閉じず、目をそらさないでいるという。

「近い距離で目を慣れさせるためのトレーニングですね。MMAは特に、一発も食らわずに勝つことは難しいじゃないですか。打撃、組み――いろんな展開があるから。こういうことを言うと、僕が『気合いで行け』とばかり言っているように思われるんですけど(苦笑)」

――アハハハ。どうしても言葉の端々だけを取られてしまいますね。

「そう。分かりやすく『見えていれば効かないんだから行け』と言うんだけど、ただ見えているだけじゃダメなのは当たり前で(笑)。遠い距離で戦うタイプの選手は、相手に近い距離で張り付かれると疲れるものですよ。下がるほうがバテます。

でも至近距離の練習をしていない日本の選手は、距離が近くなるのを怖がっちゃいますよね。日本人選手が世界で勝てない理由の一つに、その距離の問題があるんじゃないかって感じます」

――身長差、リーチ差がある海外選手との試合では尚更のことで。

「MMAは階級制のスポーツじゃないですか。結局は同じ体重で戦うのだから、僕は身長差やリーチ差は特に気にしていないですね。日本にも海外の選手に体格で勝っている選手はいるし。それよりも戦うという気持ちのほうが大切で。倒しに行く姿勢を見せていれば、判定になっても有利になりやすい。最初からポイントを意識しすぎるよりも、フィニッシュに近づく展開を見せていれば結果的に判定で勝てると思っていますから」

――新井選手に関していえば、まさに関口祐冬戦がそうであったわけですね。下がらず、前に出て殴って判定勝ちを収めました。

「タイトルマッチや、タイトルに関わるような試合で、あそこまで前に出る選手は他にいないですよね。今後の対戦相手も嫌だと思います。『アイツ、とことん前に出て来るな』って」

――前に出ることで相手を削る。とにかく攻めて勝つ。それはONE FN15でシェ・ウェイをTKOで下した若松佑弥選手も同様だったと思います。

「佑弥の試合も良かったですよね。計量失敗があったので、完全に良かったと言ってはいけないけど……。ただ、佑弥も最近うまくいっていなかったじゃないですか。もともと上を目指すために新しく、いろんなものを身につけようとしていたんでしょう。アドリアーノ・モライシュ戦(昨年3月、ギロチンで一本負け)の前あたりから、組み技も試合で見せるようになっていて。オールラウンダーであり、巧い選手の戦い方を始めていました。

だけど、巧くなるにつれて自分に怖さがなくなっているかもしれない。それは本人も分かっていたと思うんですよ。結果はモライシュに一本負けして、次はウ・ソンフンにKO負けした。計量失敗もありましたし、選手の気持ちとしてはどん底ですよ。少なくともファンや関係者の信用を失うのは間違いない。

でも僕たちは、アイツが本当に頑張っていることは知っているから、このまま落ちていってほしくない。そう思いながら先日のシェ・ウェイ戦を視ていたら、完全に昔の若松佑弥を取り戻していたじゃないですか」

――試合後にも「殺してやるという気持ちで戦いました」とコメントしていましたね。

「何か吹っ切れたんでしょうね。たとえば最初にテイクダウンした時、体を起こそうとした相手の顔面にヒザを打ったじゃないですか。当てきれず反対に倒されかけていましたけど、ここ最近の佑弥だったら、あのヒザは打っていないと思います。もう一度テイクダウンした時も、すかさずヒジとヒザを連打していて。

今の日本のMMAなら、あの場面はまず――しっかり抑え込むように指示するでしょうね。勝とうとしているだけなら、あのタイミングでヒジとヒザは出さない。もし佑弥が負けていたら『ヒジやヒザを出すのではなく、まず抑え込むべきだった』と言う人もいたでしょうね。『仕掛けが早すぎる』とか。あの場面で自分から攻め続けて勝ったから、次に繋がるんですよ。攻めるべき時に、リスクを恐れずに攻める。だって、格闘技は戦いだから」

――「格闘技は戦い」。これも最近、大沢さんがよく口にする言葉ですね。

「もちろん計算しながら戦うことも必要です。でも計算しているのは、自分の中に恐怖心があるから。恐怖心があるために計算しすぎて、試合の中で自分が本来持っているものを出せなくなることって、本当によくありますからね。

でも佑弥は恐れず、自分らしさを出して勝った。昔のような殺気立った佑弥の試合を視て、人間がどん底から這い上がる浪漫を目撃した気がしますね。今後どういう展開になるかは分からないけど、この試合をキッカケに取り戻していくと思いますよ」

――MMAとして打ち合うことや、打撃を出し続けることが必ずしも良いとは思いません。しかし前に出ること、攻め続けることが勝つ術となることは理解できます。

「やらなきゃ自分がやられる。それが戦いであり、格闘技は戦いだから。たとえば試合でフィニッシュを狙わず、トップをキープするだけの相手って怖くないですよ。抑え込まれていても『相手は狙ってこないな』と分かるので、まず自分が仕留められる恐怖心はなくなります。試合中、精神的に追い込まれることはない。だから一切ダメージをもらわないことを考えるのではなく、まず気迫や殺気で相手を抑え込んでいくのも必要だということですね」

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【Special】月刊、大沢ケンジのこの一番:7月:新井丈✖安芸柊斗「見えていればとは、どういうことか」

【写真】強くなるためにラーメンは味で勝負。人気がでるには、色々と工夫が必要。それは大沢氏もMMAPLANETも理解は同じで、その比重はそれぞれ意見が露見する場の違い、役割の違いということです(C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画――が1年ぶりに復活。
Text by Shojiro Kameike

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾3人というJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。今回は大沢ケンジ和術慧舟會HEARTSが選んだ2023年7月の一番、7月23日に行われた修斗世界ストロー級選手権試合=新井丈×安芸柊斗戦から日本人ファイターが世界で勝つための道を語らう。


――企画復活第一弾です。大沢さんが選んだ2023年7月の一番は、どの試合でしょうか。

「修斗世界ストロー級タイトルマッチ、新井丈×安芸柊斗です」

――いきなりHEARTS所属選手の試合ですか(笑)。この試合を選んだ理由を教えてください。

「だって――新井丈の試合ってメチャクチャ面白くないですか? 試合内容もそうだし、コメントも含めて何とか試合を面白くしようとする気持ちも伝わってきますしね。格闘技っていろんな盛り上げ方、盛り上がり方はあるなかで、ジョーはケージの中だけで勝負しているじゃないですか。ラーメン屋がラーメンだけで勝負している。ジョーもSNSをやっているけど、ちゃんと試合にフォーカスした煽り方をしていて。試合もただ盛り上げるだけじゃなく、しっかりと勝つところも含めて」

――前回(2022年9月掲載)の『月刊、大沢ケンジのこの一番』では、SNSの活用について別のことを言っていませんでしたか。

「アハハハ。まぁ、それは……(苦笑)」

――新井選手の出現によって、この1年で大沢さんの考えも変わってきたわけですね。

「格闘技の世界でも、エンターテインメント的な部分は仕方ないと考えていますよ。僕なんて業界の中では、完全にエンターテインメント寄りだと思われているかもしれないけど。先日もMMAPLANETのツイートで、『笑って良いのか?』と書かれていて……」

――ONE FN13のログログ×ブシェシャ戦で選手がスタミナ切れを起こした時に、ABEMA実況勢が笑っていたと。

「あれは決して選手をバカにしていたわけじゃなく、逆に盛り上げるためなんですよ。解説が『バテましたね』と言うだけだったら、そのまま淡々と時間が流れていくだけじゃないですか。テレビを観ている人は、絶対に面白くない。テレビ解説をするうえで、観ている人を飽きさせないようにすることも必要で。そこで僕が辿り着いたのは、ああいうやり方だったんです」

――大沢さんは、マニアック層に批判される覚悟でジェネラルにMMAを広めている。それは我々も分かります。

「僕だって理想としているのは、ラーメン屋がラーメンだけで勝負できることですよ」

――急角度で話を戻してきましたね。味だけで勝負できる料理店ということですか。

「野球やサッカーは、完全に味だけで勝負していますよね。まず競技としての勝ち負けで勝負していて。今のジョーはMMAの味だけで勝負している。そんな存在って、今の日本のMMAにはいないと思います。今回の試合内容で凄いと思ったのは、試合前にジョーが『2分間は倒しに行く』と言ったんですよ。5分5Rの試合なのに、最初の2分間で倒しに行くのって怖くないですか」

――ログログ×ブシェシャ戦の話ではないですが、それこそスタミナ切れを起こした時のことを考えると怖いです。

「HEARTSって前に出る選手が多いと思います。それは試合を盛り上げるためだけじゃなくて。たとえば猿田洋祐には『自分から深海に引きずり込むような試合をしろ』と言ってきたんですよ」

――Deep Waterですね!!

「自分から先に攻めていって、最終的に相手の息が続かなくなるような試合をする。今回のジョーでいえば、アイツから攻めていくと安芸君も付き合わざるを得なくなって、疲れる。試合って相手のペースに付き合ってしまうほうが疲れてしまいますからね。

ただ距離を詰めて打ち合うというのは、本当に気合いが入っていないと難しいです。特に安芸君は打撃が強いじゃないですか。それでもジョーはスッと相手の懐に入った。そこでテイクダウンを狙って、バックに回ってきた安芸君はさすがでしたよね。ジョーは安芸君のヒザをもらって記憶が飛んでいるし。それでもジョーが自分の任務を遂行することで、安芸君も1Rの後半から疲れてきているように見えました。その気持ちは分かるんです。僕も至近距離で戦う相手とスパーしていたら、途中から休みたくなるぐらい疲れていたので」

――確かに安芸選手も途中から打撃の精度が下がっていたと思います。一方、新井選手は懐に入ってパンチを放つ際の危なっかしさが少なくなってきました。今回の試合でいえば、安芸選手は左ジャブを突き、右ストレートを打ち下ろしてくる。対して新井選手はしっかりと頭や体を振って、足の位置も変えながら距離を詰めていくので致命傷をもらわない。

「今、僕が『見えていれば効かない』と言っていて。あれって冗談のように思われているかもしれないけど、実際そうだと思うんですよ。この『見えていれば』とは、どういうことかというと――実際にパンチが見えているかどうかはもちろん、相手のパンチがどれくらいの強さなのかが分かることが大切なんです」

――というと?

「試合でも最初の1発目、2発目は怖いです。食らうとメチャクチャ効きます。でも、そこで相手のパンチの強さが分かっていると、途中から耐えられるようになるんですよね。もちろんジョーには頭や体を振って、足の位置も変えながら詰めていくというボクシング技術もあります。試合が始まって最初はパンチを食らいますよ。それでも前に出ていたら、こちらも『相手のことが分かったんだな』と考えることができる。

格闘技って戦いだから、どこかで腹を括らなきゃいけないんですよ。打撃のある競技だから、パンチをもらわないようが良いのは当然で。だけど今の日本のMMAは、あまりにも『パンチをもらわないように』と言いすぎじゃないかなって。ボクシングはMMAと比べて頭部にパンチが集中するし、試合の中でパンチを受ける数も違う。だけどダメージが溜まっているかといえば……」

――しかし、ボクシングとMMAではグローブの厚みが異なりますよね。薄いオープンフィンガーグローブでは、受けているパンチの数が同じでもダメージが違いませんか。それこそ一撃で試合が終わるケースは、MMAのほうが多いと思います。

「そこで重要になるのが、至近距離の練習なんですよ。日本の選手は一発も食らわないと意識しすぎているのか、遠い距離で戦おうとすることが多い。でもそれって、自分にとっても相手との距離が遠いということだから。米国の試合を見ていると、しっかりディフェンスしながら中に入り、至近距離で戦える選手が多くて。至近距離で戦うには気合いが必要だけど、僕が言っているのは『気合いだけ』ということじゃないんです」

<この項、続く>

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F1 MMA MMAPLANET o Special UFC UFC290 アレッシャンドリ・パントージャ ダヴィッド・ドヴォルザーク ブランドン・モレノ ボクシング 大沢ケンジ 柏木信吾 水垣偉弥

【Special】月刊、水垣偉弥のこの一番:7月:パントージャ✖モレノ「ゴールに向かって、どんな道筋を」

【写真】TUFも含め、パントージャはモレノを三タテにしたことになる(C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画――が1年ぶりに復活。
Text by Takumi Nakamura

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾3人というJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。今回は水垣偉弥氏が選んだ2023年7月の一番──7月8日に行われたUFC290でUFC世界フライ級選手権試合=アレッシャンドリ・パントージャ×ブランドン・モレノ戦について語らおう。


――今回水垣さんにはUFC290でのブランドン・モレノ×アレッシャンドリ・パントージャを選んでいただきました。

「実は今回UFCの仕事でファイトウィークに2人に事前インタビューをさせてもらったんです。それもあって普段とは違う見方で試合を見ることができました」

――タイトルマッチを控える選手をファイトウィークに取材するというのは貴重な体験ですね。2人にインタビューして、彼らの性格やパーソナリティはどうだったのですか。

「やはりファイトウィークの選手なので、どうしてもピリピリしていてしゃべってくれないんじゃないかと思って不安だったんですけど、どちらもいい感じで話してくれました。モレノの方は予定時間を大幅に過ぎるくらい話をしてくれて、パントージャの方は質問に対して必要なことを的確に応えるというスタンスで。キャラクターはすごく対照的でしたね」

――改めてモレノ×パントージャを選んだ理由を聞かせてください。

「事前に戦った2人を取材したこともそうですし、僕はパントージャが柔術ベースで、打撃の攻防になったらモレノがリードすると予想していたんです。そうしたら1Rに先にパンチでダウンを奪ったのがパントージャで、2Rにテイクダウンとバックを取ったのがモレノだった。そういう部分が自分の予想外の展開だったけど面白かったな、と。

今のMMAはどこか一つの部分を意識して戦うと、そこをスカされたり、その攻めが雑になると相手に上回られたり。各選手それぞれバックボーンはあるけれど、それが突出しているわけではなく拮抗している。自分が得意な分野はあったとしても、ちょっとした意識、警戒心、攻防の丁寧さ…そういった差で、自分の得意分野でも相手にやられる可能性があるというところが興味深かったです」

――選手のバックボーンが試合展開や勝敗に影響することが少なくなっていますか。

「特に軽量級はその傾向が顕著で、その極めつけがフライ級なのかなと思います」

――軽量級は選手のダメージの回復も早いですし、スタミナもフルラウンド維持することが出来る。一つの局面でフィニッシュにつながることが少ない分、より全局面でもスキルが試されるかもしれないです。

「はい。スタミナもそうですし、一発もらってもそれが致命打にならない可能性が高いので、よりトータルに戦えて、押さえるべきところを押さえて…がより重要になりますよね。MMAにおいては重量級と軽量級では見方が全く違うなと感じた一戦でした」

――バックボーンが試合に及ぼす影響が少ない分、モレノのようによりボクシングに特化した技術を使う選手が結果を出すようになったり、よりMMAで使える技術の幅が広がっているようにも感じます。

「MMAにおいて何が重要かを考えた時、重量級では打撃が強い、寝技が強い、レスリングが強い…に分かれると思うのですが、軽量級はその間の部分が勝敗を分けるように感じました。言葉で表現することが難しいのですが、自動車レースに例えるなら直線が速い、コーナーが速いだけじゃなくて、コーナーとコーナーのつなぎが上手いみたいな。そうしたMMAの奥深さが2人の試合や最近の軽量級の試合にあると思います」

――僕も上手く表現できないのですが「MMAはMMAが強い方が勝つ」と思っています。F1大好きな水垣さんは自動車レースを例えにMMAの特徴を話してくれましたが、僕の場合はサッカーに例えることが多いのです(笑)。いくらドリブル・パス・シュートが上手かったとしても、サッカーという競技そのものを理解していないと「サッカーが上手い」にはならない。

「分かります、分かります」

――そういった意味では今のトップ・オブ・トップで活躍している選手たちがMMAをどう捉えているかも気になるところで。仮に打撃で打ち負けていてもテイクダウンできるんだったらOKというマインドかもしれない。MMAではそれが正解かもしれないですよね。

「先ほどの話にもつながりますが、軽量級は一発で試合が終わらない分、そういった切り替えしも出来ますよね。僕がパントージャに『自分のどこがモレノより上回っていると思いますか?』と質問したときに、彼はその答えを濁したんですよ。試合前にそこは話したくないという雰囲気で。MMAでは自分が相手より勝っている部分、攻防を選手本人がどう捉えているか。そこが勝敗に影響すると考えているんでしょうね」

――なるほど。それが“MMA脳”というか“MMAセンス”にもつながりますよね。

「結局選手はどこで勝負するかをイメージしていて、そこにいくための前段階として、直球勝負でいくのか、他の攻防を見せておいて自分が勝負したいところにつなげるのか。MMAはその選択肢が多いなかで、自分が定めたゴールに向かって、どんな道筋を立てるのか重要だと感じました」

――この試合の判定がスプリットになったことはどうお考えですか。

「僕の判定はパントージャにつけたジャッジと全く同じだったんですよ。それでモレノにつけたジャッジを見てみると、モレノがダウンした1R以外はすべてモレノにつけていたんですよ。さすがにそれはないかな、と。ポイントのつけかたによってはスプリットになる可能性もあると思いますが、2~5Rすべてがモレノのラウンドというのはないと思いました」

――さて、フライ級はこれから日本人がUFCチャンピオンを目指す可能性が残された階級です。

「今のフライ級はトップ5くらいまで、ほぼほぼみんな差がないと思うんですよ。モレノとパントージャは接戦で、モレノと(前々王者の)フィゲイレドは勝ったり負けたりで。DJの時代があって、セフードの時代があって、というフライ級の歴史を考えると、今のフライ級は混沌としていてチャンスが多いと思います。具体的に言えば平良選手がこのトップ戦線の輪に入ったらどうなるのか楽しみですよね」

――ランキングこそあれど、今のUFCフライ級は序列がそこまではっきりしていない。

「DJの時代はDJが頭一つ二つ抜けていて、どんどん挑戦者がいなくなるから、色んな選手に挑戦権が回ってきたと思うんですよ。タイトルに挑戦できるという意味ではチャンスがあるけど、チャンピオン(DJ)の壁があまりにも高すぎた。でも今はトップ選手たちの差がない分、挑戦権が回ってくるチャンスは少ないかもしれないですが、ベルトを獲ることだけを考えると、DJの時代よりも可能性はあると思います」

――先ほどのパントージャ、モレノ、フィゲイレドのように相手との相性やマッチメイク次第では勝ち進んでいけるわけですからね。

「まだ平良選手は底が見えてないと思うんですよ。UFCの入り口から少し入ったところの選手には圧倒して勝つレベルにいることは証明したけれど、そこから先にいるランキングの選手たちとは戦っていないので。次戦でランカーのダヴィッド・ドヴォルザークと試合が決まっていますが、ここからどうなっていくのか楽しみです」

――今日の話をまとめると、軽量級にこそMMAという競技を考えるヒントがあるということですね。

「あとは自分が戦っていた階級と近いので技術体系が似ているというか、感情移入しやすいんですよね。どうしても重量級だと『そのパンチで倒れるの?』と思うこともあって、ちょっと自分が知っている世界とは違うものが出てくるので、僕の場合はすごく軽量級を楽しんで見ることができます」

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BELLATOR MMA MMAPLANET o ONE PFL RIZIN Road to UFC UFC   キック スコット・コーカー ベラトール ヤーソラフ・アモソフ ワジム・ネムコフ 柏木信吾

【Bellator】7/30 RIZINと再合体。スコット・コーカーに訊く─01─「バイアコムはベラトールを売却しない」

【写真】買収問題に関して、話せる範囲だろうが話してくれたスコット。ただし、某柏木信吾さんに「別れる時に『じゃあ明日会見で』と伝えると、『Road to UFCを視聴するから来られない』と言っていたぞ。どういうヤツだ!!」とこぼしていたそうです……ゴメンなさい (C)MMAPLANET

27日(土)、東京都新宿区の東急歌舞伎町タワー正面で7月30日(日)にさいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで行われるRIZINとBELLATORの合同興行に関しての会見に出席したスコット・コーカー。

その会見のために来日したスコット・コーカーから、会見前夜にインタビューの機会が得られた。これからのBellatorを知るうえで──今や至るところで聞かれるバイアコムのベラトール売却問題をスルーすることは決してできなかった。


──スコット、昨年の大晦日ショーの会見以来になりますが、なんだか血色も良くお元気そうですね。

「ありがとう。いや実はパリ大会の後、スコットランドで4日間だけどバケーションが取れてね。ゴルフを楽しんできたんだ」

──おお、スコットといえばやはりゴルフです。しかもスコットランドでゴルフとなると米国や日本のようや人工的なコースではなく、リンクスが思い浮かびます。

「実はセントアンドリュースでプレイしてきたんだ」

──ホーム・オブ・マーシャルアーツ……ではなく、ホーム・オブ・ゴルフ!!

「そう、神がデザインしたゴルフコースだよ(笑)。オールドコースでプレイできてね。500年近い歴史を持つコースだけど、ニューコース、キャッスルコースでもプレイしてきた。本当に満喫できたよ。風もなく、雨も降らなかったし」

──信じられないんです。それは凄いです!!

「普通のリゾートコースはチャレンジングで、ひたすら楽しめる。でも、セントアンドリュースは違う。タフだよ。そしても、もっと楽しめるんだ(笑)」

──そんな楽しい日々を終え、また多忙な日々を送られていると思いますが、時間をいただきありがとうございます。

「とんでもない。いつでも時間を空けるよ」

──ただ今回のインタビューでは、回答は控えたいNGな質問があるなら最初に仰ってください。

「構わないよ。何でも尋ねたいことは尋ねてくれ」

──ありがとうございます。火のない所に煙は立たぬと言われますが、今年に入ってからBellator周辺にはきな臭ない噂が流れてきます。親会社のバイアコムがBellatorを売りに出す。最近では、その交渉相手がPFLやONEだという実名も聞かれるようになってきました。

「そうだね。そういう話が出回っている。うん、その質問に関してノーコメントということはしない。私はその問いに答えることができるから。過去5年、Bellatorを手にしたいという話は毎年のようにバイアコムに舞い込んで来ていた。そして、我々は毎年、『ノー』と返答してきたんだ。Bellatorの運営を続けるとバイアコムは言い続けてきた。

今年に関しては、Bellatorに投資したいところとは話を聞くようにすることになった。ただし売却するのではない。資金調達ができるかどうかだ、ファイナンシャル・パートナーとして。ONEにはどれだけのファイナンシャル・パートナーがいる? PFL、UFCはどうだろうか。バイアコムはこれまで、そういうパートナーを持たずにBellatorを運営してきたんだ」

──自己資金で経営しているといことですね。

「その通りだ。つまりはそういうことだよ。パートナーが見つかれば、Bellatorの成長はスピードアップする。ビジネス展開も広がりを見せることができるだろう。バイアコムはBellatorを手放そうとはしていない。彼らは堅実にビジネスをしてきた。資本が増えれば、ビジネスも変わる。今、MMAビジネスとはそういう時代を迎えているんだ」

──Bellatorの集客やイベント展開はPFLより規模が大きいですが、PFLは資本家や投資家の参入が際立っているように感じます。

「皆が自分たちのやり方を持っている。そして、皆がビジネスの押し進め方を学びながら前に進んでいるんだ。資本家や投資家が、MMAビジネスに興味を持ち参入するのは良いことだ。そして、ディールを結ぶには時間が掛かる。皆が学んでいる状態なんだよ。PFLもそうだけど、学習にするにも時間と対価が掛かるんだよ。

資本家や投資家が参入すれば、Bellatorの成長はテンポが早まる。総資本が増えるわけだからね。でもBellatorはPFLとは別モノだ。ライトヘビー級には世界最高の選手が揃っている。ワジム・ネムコフはUFC王者を倒せると私は思っている。

ジェニー・エブレンは間違いなくUFCミドル級チャンピオンを倒せる。ウェルター級のヤーソラフ・アモソフは無敗のチャンピオンだ。複数の世界レベルのファイターがベラトールにはいる。今すぐUFCと対抗戦を戦っても、十分にやりあえる。それだけの選手が揃っている。

そんな彼らのファイトマネーは高額だ(笑)。もし世界最強をぶっ飛ばしたいなら……UFCに勝ちたいなら、それだけ強くて高額なファイトマネーを支払う必要のあるファイターが必要になる。だから会社は資本が必要になる。Bellatorは世界のベストファイターの創造の仕方を知っている。世界のベストファイターが戦う場を生み続けるには、それだけの元手が必要になるんだよ」

──キャピタリストやインベスターと話をするという姿勢があるなかで、PFLやONEといる競合プロモ―ションの名前が挙がったことで事態はややこしくなったのかと思います。そして皆が色めき立つような空気となりました。これがフォードやモンスターエナジー、ナイキならそのような空気にはならなかった。

「話し相手は、スポンサーではないからね」

──なるほど、そうですね。資本家ということで。

「MMAには世界中で4億人に及ぶファンが存在している。UFCは年間40大会だ。我々は18大会、RIZINは18大会、ONEは13大会ぐらいかな。4つのプロモーションの合計が100大会にも及ばない。PFLは10大会ぐらいかな? 世界中でビッグプロモーションのイベントはこれだけしか行われていないんだ。

サッカーや野球と比較して、どれだけ少ないのか。サッカーなんて数千試合が世界中で開催されている。まだまだMMAは、コンテンツを必要としている。もっとLIVEショーが人々の前で開かれるべき潜在能力が備わっている。MMAには素晴しい未来が待っているんだ」

──今でも世界有数の規模を欧州と北米にサーキットを持つBellatorが、さらに大きくなるための資本が必要でということですね。

「そうだ。ずっと成長しないといけないからね。私は1985年からキックのプロモーションを始めた。最初はスポンサーもTVもなく、観客は2000人だった。キックだけのフィーダーショーだ。この仕事を37年間やってきて、今も選手の頑張りをどの大会でも目にするのが楽しくてしょうがないんだ」

──いかにもスコットらしいです。我々もMMAがUFC一色になるのは困ります。UFCにはUFCの色があって、ONEにはONEの味がある。そしてBellatorにはBellatorの世界観があります。それぞれの違いがあり、UFC一色でないからMMAは楽しい。

「もちろん、その通りだよ。世界を見渡しても、米国発で世界中に広まっているMMAはUFCとBellatorだけだ。世界のベストファイターがUFCにはいて、我々にもいる。ONEが初めて米国大会を開き、米国市場に進出してきた。素晴しいことだ。祝福するよ。ただし、我々と肩を並べるには10年間、継続的に活動してからだ」

──確かに、継続できるのか。そこが大切になってきますね。

「PFLもそうだ。生き残りを賭けて、独自路線を模索し続けている。金も時間も掛かることをやっている。つまり、それがファイトビジネスということなんだよ」

<この項、続く>

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MMA MMAPLANET o RIZIN Special UFC UFC275   イリー・プロハースカ グローバー・テイシェイラ 柏木信吾 金原正徳

お蔵入り厳禁【Special】月刊、柏木信吾のこの一番:6月:イリー✖テイシェイラ「根性で勝てる」

【写真】最初から根性でなく、最後まで技術でなく。心技体で最高の戦いを見せてくれたイリー・プロハースカ (C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。3人の論客から、柏木信吾氏が選んだ2022年6月の一番、お蔵入り厳禁──12日に行われたUFC275よりイリー・プロハースカ✖クローバー・テイシェイラ戦を引き続き語らおう。

<月刊、柏木信吾のこの一番:6月:イリー・プロハースカ✖グローバー・テイシェイラはコチラから>


──分かりやすいですね。

「めっちゃ、興味あるじゃん?って。だから、より良い条件でUFCに進めたことはイリーにとっても本当に良かったです。イリー陣営はお金にゴチャゴチャ言うことはないです。でもRIZINのチャンピオンだし、それ相応の条件で契約して欲しかった。あの時はトントン拍子でUFCと契約ができてホッとしました」

──そして3戦目でUFCの頂点に。この試合、イリーの魅力を引き出したのが42歳のグローバーというのも何ともいえないですね。

「ホントにその通りです。メチャクチャ強いですよ。自分のようにアラフォーのオッサンとしては、希望の星。グローバーもスーパー苦労人のラフロード(Rough Road)ですからね」

──ゴツ男(笑)。

「UFCのチャンピオンになっても、満ち足りていなかったですね。あのピンチを何度も復活して。それはお互いにそういうシーンがあったのですが、3Rのテイシェイラはもう終わりだと思いました。あそこで終わっても誰も文句を言わない。でも盛り返した。最初に言いましたけど、MMAとして全てを見ることができた試合でした。

打撃も寝技の攻防も、スクランブルも、リバーサルも。間違った判断もあったし、ファイトIQの高さも見られた。本当に色々なモノが詰まった──根底に根性があった宝石箱みたいなMMAでした。

互いに諦めても仕方ない場面が何度もあって。イリーなんて、よくあのテイシェイラのパウンドを耐えることができるなって。あのパウンドは本当にヤバいですよ。あれは普通に中型ハンマーです。下半身の決めがあるから、あれだけ打っても軸がぶれない。ヒジも巧かったです。テイシェイラのパウンドは世界でトップクラスですね」

──しかも、あれだけ疲れているのにパンチはゴツゴツと落とすことができていました。

「ゴッツゴッツという音が聞こえて来そうでした。最後のタップはしょうがないです。その直前にあれだけ勝利に近かった。あそこを逃げられて、RNCはもうタップでもしょうがないです。だいたい、あの最後のラウンドだけでどれだけ攻守が入れ替わったんだって。珠玉の名勝負ですね」

──ハイ。そんななか水を差してしまう意見かもしれないですが、ジョン・ジョーンズがいなくなってUFCライトヘビー級戦線は面白くなりました。

「あぁ、そうですね。JJがいなくなったことで、跳びぬけた存在がいなくなって、例を見ない群雄割拠状態になりましたからね」

──イリーはまさに戦国時代を制した形ですね。しかし、改めて感慨深いモノがあるのではないですか。

「試合後、すぐにケージのなかで撮影された写真が送られてきました」

──泣いちゃったんじゃないですか? 柏木さん、泣きそうだなぁ(笑)。

「いやぁ……嬉しかったですね。感動しました。あと28秒ですからね。あそこでタップを奪っていないと、判定負けでした。でも高島さんが言われたように泥試合だったから、あそこまで面白かったんですよね。互いの根性が演出した名勝負ですね」

──強い者同士が戦って、あの根性勝負の泥試合になる。それはやはり最高峰の舞台で最強の座を争う泥試合と、他の泥試合はレベルが違います。五輪のマラソンでトラック勝負になるようなドッグレース、なかなかないです。

「全く別のスタイルの2人が、自分の得意な場所で勝負できた。同時に相手の得意な場面も凌げた。以前、エアータイトという言葉を使いましたが、ああいう隙をなくして相手に反撃の余地を与えない戦い方も最高ですけど、この試合は真逆で穴だらけ。無駄な動きが多い。失敗も多い。でも勝っちゃう……みたいな」

──イリーはそれまでにドミニク・レイエス、ヴォルカン・オズデミアに勝って来たわけですしね。

「そうですね。レイエスなんて、チャンピオンになれる素質を持っている選手ですからね。ジョン・ジョーンズとも、しっかりと戦っていた。その選手にあんな風に勝てるのに、なんでテイシェイラに殴られているんだって(笑)。

レイエス戦も、オズデミア戦も然り、そしてテイシェイラ戦もそうですがRIZINではできなかった相手の魅力を引き出して勝つ──風車の理論ではないですけど、そういう勝ち方をしていますよね」

──それは相手が強いから、自然発生ではないですか。本当な一方的に勝つ方が良いですし。

「いや、その通りです。本当に強い相手だから、そうならないと勝てない。一方的に勝てない相手に、根性で勝てるのが素晴らしくて」

──本当にその通りですね。

「本人は自覚がないだろうけど、気が付けば名勝負になっている。ただし、この試合が続くとダメージの蓄積が心配です。ディフェンス力の強化は欠かせないですね。あれだけ攻撃を被弾していると」

──負けると、下の選手と戦うことになってタフファイトをしないで良いかもしれないですが、チャンピオンですからそうはいかなくなる。

「だから根性勝負にならない試合が、競技を戦う上で必要になってきますね。ただし、彼のMMAへの向き合い方が競技ではないので、その辺が変わりますかね……」

──これはあくまでも私の考えですが、ガンガンやりやっていた金原正徳選手がグラスジョーになり、スクランブルの権化に変化した。でも、その一生懸命さは全く変わりなくて、MMAファイターとして魅力的なままです。

「本当にそうですね。守備力を強化しても、守りに入っているわけじゃない。そうやって考えると、まだまだイリーは若い。ここからどうやって成熟していくか、そこも期待したいですね」

──いやぁ、柏木さんが下ネタ封印の名勝負でした。

「そこですか!!(笑)」

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BELLATOR MMA MMAPLANET o PFL RIZIN Special UFC UFC275 イリー・プロハースカ ブルーノ・カッペローザ ワジム・ネムコフ 柏木信吾 石井慧

【Special】月刊、柏木信吾のこの一番:6月:プロハースカ✖テイシェイラ「ダラウェイに勝った時…」

【写真】死力を尽くした激闘。UFC世界ライトヘビー級王者をいかに見出し、日本に招聘したのかを柏木さんが話してくれた (C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。3人の論客から、柏木信吾氏が選んだ2022年6月の一番。12日に行われたUFC275よりイリー・プロハースカ✖クローバー・テイシェイラ戦について語らおう。


──柏木さんが選んだ6月の一番は?

「ここはイリーとテイシェイラの試合で行かせてください」

──それはもう思い入れタップリのイリー・プロハースカですし、ぜひともお願いします。

「これはもう……実は僕、この試合が行われた時、ラスベガスにいたんです。メイウェザーの会見前で土曜日の夜だし、関係者の人たちと会食をしていたんです。で、テーブルの下で携帯を使ってUFCをずっとチェックしていました(苦笑)」

──アハハハハ。

「もう早く帰りたくてしょうがなくて。でも、その夕食中にテイシェイラとプロハースカの試合の時間が来てしまって。やべぇ、どうしようって……。で、仕事の話中だったのに手を挙げて『スミマセン。メチャクチャ勝手なことを言って良いですか? 今、RIZINで育った選手がUFCでトップになるかどうかというタイトル戦を戦います。皆さん、良ければ一緒に視ないですか?』って」

──それ言っちゃったのですか(笑)。

「もう言うしかなくて(苦笑)。で、ベガスのカジノにあるステーキハウスで皆で視たんです」

──おお、良い話です。やはり、ここは見逃せるわけがないですよね。

「皆も『良いよ、視ようよ』ってなってくれて(笑)」

──私も正直、UFCのPPV大会で日本の専門メディアが写真撮影をできるなんて──もう14年振りとか、15年振りでした。そこであの激闘をケージサイドで撮ることができて、改めてUFCの凄まじさを思い知った次第です。

「豪華なラインナップのメインに相応しい試合でした。まさに泥試合で(笑)。

UFC、最高峰のトップ中のトップがあの泥試合を見せてくれた。凄まじいですよね。P4Pではないです、2人とも。でも、あれこそMMAだっていう全ての要素を視ることができた試合でした。

イリーのことを知らない、いちカジュアルファンが視てもあの試合は面白かったはずです」

──そのイリーを発掘し、RIZINからUFCに飛び立たせた。それが柏木さんであって。そもそも、イリーを発掘したきっかけはどういうことだったのでしょうか。

「2015年のRIZIN旗揚げの際に世界各国から選手を集めようということになり、当時協力してくれたプロモーターの推薦選手がいました。8人トーナメントをするなかで、7人はアッサリと決まりました。そして残りの1人を探している時に、ガツンとイリーがいたんです。

GFCというチェコの大会を視聴して……。今はもうヘビー級って世界的に手薄で、少しでも名前のあるファイターはいずれかのプロモーションと契約をしています。でも、当時はフリーランスの実力者が結構いました。

実はイリーだけでなく、色々な選手をチェックして。最初に目についたのがアレクサンドル・ラキッチだったんです」

──おお、オーストリア人で現UFCファイターですね。

「ハイ。その時、ラキッチはヒザを負傷していて手術をする直前だったんです。だから試合ができなくて。で、その次に当たったのがイオン・クテレバでした」

──おお、クテレバもUFCライトヘビー級で活躍中のモルドバ人選手です。いやぁ、本当に目の付け所が確かです。

「いや、結構色々な選手に声を掛けたんですよ。やはりヨーロッパに良い選手が多いなと思っていて。それが試合をチェックしていたら、いたんです。メチャクチャ良い戦績を持っているチェコ人ファイターが。

イリーを見つけた時は『こんな選手、埋もれていたんだ』って素直に嬉しかったです。で、すぐにコンタクトを取り、迷う間もなく契約書を送りました。もうトントン拍子に決まりましたね」

──初来日ではヘビー級時トーナメント決勝でキング・モーに敗れはしましたが、リベンジしてライトヘビー級王座奪取。イリーの挙げた11勝1敗という素晴らしい成績は柏木さんにとって期待通り、それとも期待以上だったのでしょうか。

「僕の中では期待通りというか……申し訳なかったです。彼が求める相手を連れてくることができなかったので。石井慧、ワジム・ネムコフに勝って、キング・モーには負けたけど、リベンジも含めその後は負け無しでした。

そうですね……ちょっと違っていましたね。強さを求める姿勢からして。だから、変な意味で対戦相手を選ぶんです。『もっと強いヤツはいないのか』と。僕のなかでは、別の意味での悩みでした。

実際、対戦相手を選ぶ選手が少なくないです。その中で、イリーだけは全く違うベクトルで厳しい要求をしてくる。それがイリーであり、イリーのチームでした。相手の名前を伝えると、いつも『もうチョット強い相手はいないのか?』という返答なんです。

もう僕の立場からすると2017年から2018年になると、UFCとBellatorだけでなくPFLまで出てきているので、上の方の選手はほぼほぼフリーじゃないから対戦相手を見つけるのが本当に難しくて」

──その通りですね。それでもブルーノ・カッペローザ、ブランドン・ホールジー、ファビオ・マルドナド、そしてCB・ダラウェイという面々を招聘しています。ケージだったら、事前取材からしっかりとしたい選手ばかりです。

「ホント、そこを分かってくれる人が記事を書いてくれないし……」

──スミマセン(苦笑)。そして、プロハースカは全員を倒してしまいました。

「一蹴しちゃいましたよね。ダラウェイを2分も掛からずKOしちゃうんですよ。誰もが納得してくれたと思いますけど、僕のなかではもう無理でした。あれ以上の相手は呼べない。あそこで僕は白旗を挙げました。

だから変な話ですけど、ミック・メイナードに話を振りました。もうUFCだろうって……RIZINに留めてもイリーのためにならない」

──あぁ、業界が柏木さんみたいな人たちばかりなら……と思ってしまいますよ。

「いえいえ。でもミックもYES. YESと2度、しかも全て大文字で返答してきました(笑)」

<この項、続く>

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【RIZIN37・対戦カード紹介】「RENA vs.アナスタシア・スヴェッキスカ」【RIZIN切り抜き】

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BELLATOR Bellator281 MMA MMAPLANET o RIZIN Special スコット・コーカー デニス・キルホルツ ベラトール 柏木信吾 海外 渡辺華奈

お蔵入り厳禁【Special】月刊、柏木信吾のこの一番:5月:渡辺華奈✖デニス・キルホルツ「過去2年」

【写真】コロナ禍の11カ月間に米国&欧州で3試合。この間に、これだけの経験した日本人選手は渡辺だけだ (C)BELLATOR

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。3人の論客から、柏木信吾氏が選んだ2022年5月の一番。13日に行われたBELLATOR281より──お蔵入り厳禁──渡辺華奈✖デニス・キルホルツ戦について語らおう。


──柏木さんが選んだ5月の一番は?

「渡辺華奈選手とデニス・キルホルツの試合ですね。海外でアウェイで戦ううえで、ミニマム・サポートで通訳をつけているわけでも、英語を話せる人と英国まで行ったわけでもなかったです。そういう環境のなかで、勝ち切る。愚直に勝ったことは凄いことで、渡辺選手の気持ちの強さを感じました」

──英語が分からず状況を把握できないから、アウェイということなのでしょうか。そうでなくBellator規模のプロモーションでも、日本の選手にアウェイの洗礼とかあるものなのですか。

「いえ、それはベラトールのホスピタリティはしっかりとしています。今回、現地についてから渡辺選手から、困ったことがあって連絡が入るということは一切なかったです」

──そこは言葉の壁だけで、信頼関係があれば問題ないということですね。

「そうですね。スコット・コーカーも『ワタタベは家族のようなものだ。心配するな』と言ってくれていましたしね」

──ならば英語が理解できなくて、モノゴトが動いているなかで大きく構えられる人って強いですね。

「英語が通じないから、分からないことを気にすると、精神的にも大変になってしまいます。渡辺選手たちも2度、3度と海外での経験を積んで、不便になる要素を消していくことをやっていました。海外でファイトウィークを過ごす……これは過去2年間、ほとんどの日本人選手ができていないことなので、彼女は凄いことをやってきたんだと改めて思います。

試合からも技術的というよりも、精神的な強さを感じました。グラウンドで顔面に蹴りを貰って中断したシーンがあったじゃないですか」

──スタンドで再開になった場面ですね。

「レフェリーは五分の展開だったのでスタンドで再開したということだったんです」

──あり得ないです。アクシデントだろうが、反則を犯した方が得をするリスタートなんて。

「ハイ。渡辺選手が、グラウンドで試合をしたくてあそこまで持っていったという展開でした。彼女はそこにいたかった。スタンドにいたくないからグラウンドに持っていったのに、相手の反則でフィフティ・フィフティだからスタンドに戻すというのは違います。

ビッグジョン・マッカーシーも解説で『反則をされた人間が選択権を与えられても良かったんじゃないか』と言っています。それを一方的にスタンドに戻された渡辺選手も『えっ、スタンド?』って声に出していました。

相手の反則なのに、自分の望まないスタンドに戻された。動揺したはずです。あの判断を引きずるかどうかで、リスタート後の試合展開は全く変わったと思います」

──気落ちする……あるいは緊張の糸が切れることもあったかと。

「でも彼女は再開してから、すぐにシングルにいきました。ボディロックが多い彼女がシングルレッグを取りにいった。MMA選手として、自分の得意分野を生かすための武器を増やしていた。練習してきたことを着実にやり切った。あの展開で挫けずに、それを出せた。本当に精神的に強いと感じました。

あの試合がホームだったら、また気持ちは違っていたと思います。逆にもっと引きずっていたかもしれない。でも、もうアウェイだから抗議してもしょうがない……しかも英語が話せないから、抗議もできない。ホンの1秒とか2秒で気持ちを切り替えることができた」

──素晴らしいです。と同時に、日本人選手はセコンドも含め、海外で審判に抗議するというのはMMAではほぼ見た記憶がないです。

「それは言ってもしょうがないっていう風になるのでしょうね」

──自分の想い通りでないのに頑張れる気持ちの強さと、抗議できる強さ。別種類ですね。

「抗議して通じないと、気持ちが折れるということもままありますしね。不貞腐れて、投げてしまうとか。そうでなく飲み込んで、自分のやるべきことをやった。素晴らしかったです。

と同時にキルホルツが、打撃の選手でMMAに対応してきた。そういう選手を攻略するのに相性が良かったです」

──つまりは前回も話されたMMAになりきっていない、得意分野で勝てて穴のある段階の両者の対戦だったわけですね。それにしもて、キルホルツの打撃は強力でした。

「危ないシーンもありました。カモーシェ戦を思い出させるような。左フックを食らった直後に、首を取ることができた。あれがライフラインでしたね。あそこで離れられると、大内刈りは決まっていなかったです」

──渡辺選手に続く、日本人選手が出てきてほしいです。

「ベラトールで戦いたいという声は聞きます。同時に日本人選手だからこそ、日本で価値を上げるということを理解している選手もたくさんいます」

──日本で戦う機会を待ち。勝って、価値を上げて乗り込む。タイミング的には渡辺選手は2019年12月に日本大会で勝った。そして、コロナ禍では海外で戦ってきた。個人的にも渡辺選手のやってきたことは、やはり格好良いです。

「立派です。本当に、あの環境で結果も残している。と同時に外国人選手の入国も再開されたので、強い選手と戦いたいと思っている日本人選手がRIZINでやりつくしたと思える。そんな相手を用意することが、僕の役割だと思っています」

<この項、続く>

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