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Interview Special ダン・フッカー ブログ マイケル・チャンドラー 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:1月─その弐─マイケル・チャンドラー✖ダン・フッカー「重心」

【写真】チャンドラーが初回KO勝ちとなったフッカー──。もう少し、組みも踏まえた攻防も見てみたかった(C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

2021年1月の一番、第ニ弾は24日に行われたUFC258からマイケル・チャンドラー✖ダン・フッカー戦について語らおう。


──青木真也が選ぶ2020年12月の一番、2試合目をお願いします。

「チャンドラー✖フッカーですね。チャンドラーは色々な見立てがあると思いますが、僕自身は試合前にはダン・フッカー有利だと思っていたんです。ゴメンナサイ(笑)。

チャンドラーはあれだけ破壊力のある打撃の持ち主ですが、相性的には最悪じゃないかって。フッカーが真っ直ぐに真ん中から当てたら、終わるだろうと」

──確かにチャンドラーの踏み込みも、UFCのトップどころに通じるのかという見方もあったかと思います。

「チャンドラーとフッカーだと、あれだけリーチ差がありますしね。戦略が勝敗を分けるような階級において、これはフッカーだろうと」

──それが蓋を開けて見れば、と。

「ホントに失礼しました(笑)。構え方でいえば、チャンドラーはスタンスが広いオールドスタイルです。

レスリングのように腰を低くして、両足で踏ん張った状態で前後の移動ができる。いわばステップのない堀口恭司選手のような感じですよね」

──それは言い換えると、如何に堀口選手の前後移動がテイクダウンに適しているのかという。

「そうなんですよね。その分、体へ負担は相当あると思います。どうしてもストップ&ゴーなので。そこでいうと、チャンドラーはあのワイドスタンスで歩けるという強さがありますよね」

──堀口選手は、左右の足を使って鋭い踏み込みを見せる。それは全体運動でもあると思います。手を振ったりして。ただし、チャンドラーはもう足腰のみというような。

「強靭な肉体というと雑になってしまいますけど、レスリングが強いということに尽きると思います。MMAPLANETで空手の岩﨑さんが仰っていた『組みは打撃』ということで。組みが強いから打撃が生きる。その理屈を体現しているように思います。

何と言っても個体の強さがあります。パンチがどうこうというよりも、あの低い重心で動けるのかっていう部分で」

──しかも、左フックですから、縦移動に横回転が混ざる。もう自然の摂理に逆らった強さかと。

「そこは前傾姿勢で入っているから、誤魔化していると思います。前に倒して重さをつけている」

──それにしても、ダン・フッカーは過去にUFCで組みの強い選手とも戦ってきましし、このような負けは予想外でした。

「ジム・ミラーやドゥリーニョに勝っているわけですからね。僕はダン・フッカーの評価が凄く高かったので、もうこなるとチャンドラーとゲイジーが見たくなっちゃいます。ダでもスティン・ポイエーがマクレガーに勝っちゃったので、そこがゲイジーとやるのか。どの辺はUFCのセンスはどうなっているのか、ちょっと分からないですね」

──キーポイントはチャンドラーの組みが強いうえの、パンチ力ということですね。

「あのチャンドラーの突進を止めるには、蹴る。それが僕の理屈──あくまでも理屈上ですよ。あの低い前進は蹴りで止める……でも、それができるヤツがいるのかと。そうなるとシャーウス・オリヴェイラとか、興味深いですね。蹴りが映えるし、ヒザもある」

──下になっても構わない。下も上もどちらでも極めの強さがあります。

「テイクダウンされても構わないから、思い切り蹴ることができるだろうし。そうなるとチャンドラーがブロックしようもののなら腕を潰すこともできるじゃないかって。

今、カーフキックって流行っているけど……、カーフキックの理屈はミドルで腕を蹴るのと同じ。オリヴェイラがあの勢いでミドルを蹴って、チャンドラーが腕で受けると折れるんじゃないかって思います。

人間は基本的に、足より腕の方が弱いし、カットもできない。ならスウェイがバックステップでないと」

──でもあのワイドスタンスだと、スウェイではなくてブロックしてくるでしょうしね。

「そうなんですよ。だから、オリヴェイラとチャンドラーでオリヴェイラのミドルが見られないなかって。そこを見てみたいですね」

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Interview ONE Special ザキムラッド・アブデュラエフ ゼバスチャン・カデスタム ブログ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:1月─その壱─アブデュラエフ✖カデスタム「尿比重と階級down」

【写真】テイクダウンからバック奪取、あっという間にネッククランスを極めたアブデュラエフ (C)ONE

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

今月も変則的に番外編からお届けしたが、今回から従来の形式通りに、背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。

青木が選んだ2021年1月の一番、第一弾は22日に行われたONE116 Unbreakable からザキムラッド・アブデュラエフ✖ゼバスチャン・カデスタム戦について語らおう。


──青木真也が選ぶ2021年1月の一番、最初の試合をお願いします。

「ザキムラッド・アブデュラエフ✖ゼバスチャン・カデスタムですね」

──ジェイム・ナカシマ戦の2試合前に行われた試合です。

「ハイ。僕はカデスタムと同じ控室というか、弁当箱の仕切りみたいな感じで、一つの場所で間仕切が十字になっていて、そこで彼とは同じだったんですよね。出入り口にモニターとバンテージチェックの場所があり、そこだけは皆が共有するという感じで。他の選手と接触することもなかったです」

──控室の状況もコロナ前とは違うわけですね。ワクチンが普及するまで、そのような状態が続くかもしれないです。

「続くんですかね。ワクチンも綱引きで、分からないですよね。根気勝負か、開き直るのか。でも、シンガポールにいると日本は事実上開き直っていると思いましたよ」

──人々のモラルに頼って。

「そこがなぁなぁになっていますしね。良心になぁなぁになっているから、また難しくなっている」

──コロナ談義は取り敢えず置いておき、アブデュラエフです(笑)。

「僕はカデスタムが強いと思っていたんです。元々PXCのチャンピオンで、ONEでもサッポにKO勝ちしている。ONEっぽくスタンドが上手なファイターで。縦ヒジとかも使う。マグワイアに勝ったことが意外だったから、あの勝利で凄く彼の評価は高かったんです。

そうしたら、『えっ?』と。スウェーデンって、完全に共生する選択をしてロックダウンも、自粛政策もとらなかったら、エライことになっていて。だから、彼がどういう風に練習ができていたのか。その辺の時世も関係してくるのだとは思いますけど、それにしてもワンサイドでアブデュラエフが取ってしまうのは──ちょっと分からないです。

ああいうことが今、ONEのトップ戦線は多いですね。オンラ・ンサンの負けもそうですし」

──そもそも元チャンプとダゲスタンの新鋭と戦う。なかなかシビアなカードでした。

「そう取ります? アブデュラエフはウォリアー・シリーズ上がりだから、カデスタムのアップだと僕は思っていました。彼はウォリアーでも判定勝ちだし」

──確かに代役ですし、そこまで考えいなかったかもしれないですね。

「そうですね。そうだ、代役ですよね。最初はレイモンド・マゴメダリエフが相手で。ロシアからロシアという代役で。マゴメダリエフも強い選手だったけど、その代役が取ってしまう。分からないものですよ」

──アブデュラエフはライト級でも戦えると宣言していました。

「そこは……ナカシマもそうですけど、この計量システムだと落とせると思っちゃうんですよね。でも、そんなにうまくいってない。階級を落としてもパフォーマンスがどうなのか。

尿比重の検査があると、階級の移動は難しくなるかもしれないです。要は余分に体重を落として、水を飲む。僕は逆にリミットより下だから、76キロになるまで水を飲むと、尿比重の値は本当に小さくなります。

だから食事もできているけど、食べないで水を飲んで尿比重を下げている選手は栄養素が抜けちゃっている状態だから。それが1日のリカバリーで戻るのかなって。

水抜きをした選手、実際に動けないことが多いじゃないですか。それと同じことが、ONEの計量でも起こっているかと」

──つまりは普段と同じ体重でないと──ということですか。

「僕の理屈では、そうです」

──最近思うのですが、日々の生活や練習というのもあるのですが、水抜きをして普段大きくなっている35歳以上の選手と青木選手のコンディションが違うように感じてきました。

「あのう……それはあると思います。年を取るのが遅いです。あのフェザー級に落とした経験が、凄く響いています。あの時、これをやっていると死んじゃうわって。ハードな水抜きをやると……コンディションを本当に気を付けた方が良いと思います」

──コロナ計量といえる、当日で一階級上の計量になり選手はギリギリでも取材を受けてくれる状況が多くなりました。

「あぁ、なるほど。取材する立場だからこそ、分かる話ですね。でも僕は尿比重があると基準が2つできてしまうから、なら77と尿比重よりも、尿比重なくて70.3キロだけで合わせる方が楽じゃんっていう気持ちがあります。

それは僕の減量が厳しくないからだと思います」

──青木選手だからこそ、分かる話ですね。

「まぁアブデュラエフがこのままライト級でできるかというのは分からないし、ただ簡単ではないと思っています」

──ではウェルター級では?

「もうカデスタムに勝ち、ナカシマが抜けたんだからタイトル・コンテンダーですよね。ただチャンピオンのキャムラン・アバソフもいえばロシア人、マゴメダリエフにアブデュラエフ、ロシア人だらけですよ。手塚に勝ったムラット・ラマザノフもいるし。ロシア人以外はマグワイアぐらいじゃないですか。あとはサッポと。

マッチメイクする方も、もうちょっと考えないといけないですよね(笑)。逆にいえばロシア人を一つ崩せば、日本人もウェルター級レギュラー枠になれるかもしれない。実はチャンスかもしれないですよ。タイトル・コンテンダーになるには」

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Interview Special ブログ 石井逸人 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番─番外編─石井逸人✖よしずみの試合後「アホなことするな」

【写真】お茶目なトンパチだったら、良いのだが。境界線を理解することも必要だ (C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2021年1月の一番──だが、先月に続き本来のピックアップされた3試合からではなく、いきなりの番外編として1月31日に行われたShooto2021#01第1部で行われた石井逸人✖よしずみ戦について語らおう。


──いきなりの番外編ということで、青木選手に石井逸人選手の勝利後の……についてお尋ねしたいと思います。

「そこ来ますか(笑)。あれ、話題になっていないし……ただ嫌やヤツになっていますよね。あんなことしても、損するだけだと思います」

──損得勘定でなく、戦った相手に勝負がついた後にあのような行為をする必要があるのかということをお伺いしたいです。

「そういう部分では、彼がアレをやる意味が分からなかったです」

──それをあなたの口からどう言えるのか……という部分で、今の青木選手にお伺いしたいです。

「やってはいけないことです。やってはいけないけど……何と言ったら良いのか、石井逸人は何を考えているのか分からない。僕のことに関しては、一つの表現としてアレがあったから今の僕があるというのは間違いなくあると思うんです。今となっては経験として、肥やしにはなっています。

でも、あの当時は色々なことの狭間に自分があって、しっかりと世間からも叩かれました。だから良い経験になった──良い経験にしたということに落ち着いてしまいますけどね」

──それは青木真也が異質であり、他にない路を進むことができているという点でそうかもしれないです。ただし、今も昔も試合が終わって、中指を立てた云々でなく対戦相手を侮辱する行為は許されるモノではないです。

「それはその通りなんです。世の中に対して、そんなモノを見せる必要もないですし」

──実際、ギリギリで戦った試合でもジェイムス・ナカシマの尊厳を無視するような行為は当然行っていません。

「ハイ、死者に鞭打つ行為はできないです。やってはいけないことだし、やる意味がないことです。中指でなくても、バカヤローって言うのも同じようなモノで。マテウス・ガムロがノーマン・パークに試合後にマイクで謝罪を求めるとか……それはしなくて良いです」

──ガムロ✖パークは虚実入り乱れるというか、試合を盛り上げるための行為とそこで戦う人間の感情が入り混じった感がありました。それは青木真也✖廣田瑞人戦も然りで。

「あれは……加藤さんとかに追い詰められ過ぎて……。毎晩のように『俺たちが行くんだ』みたいなノリで電話がかかってきて。団体間というか、色々な作用があって。あの時は終わった後とか、本当にしんどかったし。

当時の心境でいえばDREAMは絶対に戦極に負けちゃいけなかった。負けることは許されていなかったんです。僕の周囲の空気として。そういう想いが、廣田という個人でなく戦極というものに出た。そして悪いのは青木真也になった。

まぁ、やってはいけないことなんですけど、あの時は正直『悪いのは俺であって、DREAMではないんだな』っていう気持ちもありましたよ」

──悪くないわけではないです。

「そうですね。悪くないわけはないけど……だったら、ちゃんと着地させてくれよっていうのはありました」

──今となっては、あの行為が青木真也という人間の一面であっても全てではなかった。当時は、全面のように見えていましたが。

「だから本音をいえば石井逸人は怖くて触れられない。何ていうのか、ただ戦った相手ですよ。そこに勝って、唐突にあんなことをしてしまうのは……う~ん、意味が分からないです。対戦相手に何か感情的なモノがあったようにも見えなかったし。試合後とかどうでしたか?」

──「興奮しちゃいました」と反省しきりでした。長南さんにも注意されたようで。

「反省するんですよね。でも、やっちゃうから。そこなんですよね、問題は。彼には例の件があるじゃないですか。あの時に彼が言っていたことも、こういうことを繰り返すとお前の言っていたことはどうなの?ってなりますよね。

それが僕の正直な想いです。あの時は逸人が言っていたことを皆が耳に傾けていたけど、今の彼だったらあそこまで皆が真剣に意見を聞かなかったと思いますよ。

だからチョット危ないっていうのか……でもね、試合を見るとあの運動能力とか素晴らしいモノが見られて。練習でも、強いというか運動能力がある。そりゃあ、ああいう素材が地方にいると抜群に惚れ込むと思います。だから、彼に対しては皆がちゃんと言ってあげたほうが良いです。早い段階で。俺もあの後、凄く怒られましたからね」

──怒られることは必要かと思います。

「あの時は複雑で……石井逸人と違って、状況も状況で謝ることができなかった。だって僕が謝ると、DREAM勢が謝ることになるから、『謝らせるな』ということがあった。だから叱られるだけっていうのを経験して……それをさっきもいったように肥やしにできましたけどね。

だから石井逸人も選手として、あれだけの能力を持っているのだから、皆が早めに注意をして、導いてやるべきだと思います。

そんな感じかなぁ。良い素材だから、伸ばさないと。そう思っています。石井逸人と野尻定由とか楽しみだし、そこで勝った人間が田丸匠とやるとか。そんな風に国内で強くなる試合が組まれればと思います。

まぁアホなことするなというか、若さの発露なんだろうけど……反省して、また頑張ってほしいですね」

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Interview JJ Globo Special SUG19 ブログ メイソン・ファウラー 石井慧 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:12月─その参─メイソン・ファウラー✖石井慧「試し割り」

【写真】石井慧のSUG挑戦第一弾はOTでメイソン・ファウラーに敗れ、ベルト奪取とはならなかった (C)SUG

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

2020年12月の一番、第三弾は20日に行われたSUG19からメイソン・ファウラー✖石井慧について語らおう。


──青木真也が選ぶ2020年12月の一番、3試合目をお願いします。

「SUGの石井慧選手とメイソン・ファウラーの試合ですね」

──SUG20の石井選手✖クレイグ・ジョーンズではなくて。

「ハイ、まぁクレイグ・ジョーンズとの試合はそうなるよなってことですし。SUGといえば5分でオーバータイム。ならメイソン・ファウラーの方かと。

石井選手とファウラーだったら、絶対に5分で決着しないですよね」

──ただ本戦5分で、ファウラーが戦っていたのが驚きました。これまで寝技に付き合わないでいた彼が積極的に動いて。石井選手のパス狙いをオモプラッタで切り返して攻めたりして。

「アイツ、これまでは攻めていないですよね。なんか異種格闘技っぽくて良かったです。今回の試合は。ただ練習を見ていてもイゴール(タナベ)とかだったら、石井選手を攻めることができるけど、俺たちだったら無理ですからね」

──体格差はあるとしても、ファウラーも力があるのだと……。

「だから逆に日本人で100キロを超えていると、練習するのも大変だと思いました。そしてあれだけ体躯が合って、組み技の心得があるとクレイグ・ジョーンズぐらいでないと取れないわけですよね。

それが発見でしたね。あと、何と言ってもファウラーはSUGルールに強い。その証拠にSUGではオーバータイムで2度クレイグ・ジョーンズに勝っているけど、ADCCでは逆にギロチンで一本負けしていますしね」

──それでもADCC北米トライアルで優勝し、世界大会でも1回戦は勝っています。

「そういう選手でも5分では、石井選手を取ることができない。そしてオーバータイムに強い。ちょっとね、不思議ですね。で、究極をいえばSUGに勝つには汗っかきが良い(笑)」

──アハハハハ。ファウラーが滑るという情報も伝わってきました。

「まぁ汗もあると思います」

──いずれにせよ、オーバータイムになって最初からシートベルトでなくスパイダーウェブを選択する石選手は、非常に珍しいタイプだと思いました。

「僕ならバックですね」

──そうだと思います。結果的にスパイダーウェブを選択し3回連続で同じように逃げられました。やはり、そういうモノなのでしょうか。

「う~ん、そこはちょっと分からないです。でも十字は取るのも逃げるのも難しいと思います。だって僕らは普段、ああいう風にならないことを重視して練習しているわけじゃないですか。あんな形になったら、もうその試合でどれだけ追い込まれているんだってことですから」

──確かにその通りです。

「あそこまで取られるのは、弱いってことですからね。バックとは違って」

──オーバータイムのセオリーではバックで絞めを極められた選手が、逆転を賭けてスパイダーウェブを選択するという風です。

「一発逆転を賭けて。でも石井選手は最初から一発逆転を選んでいた。あの逃げ方ができるのもファウラーがSUGの専門家だからです。逆に僕らはあのルールで勝つことを一番とすることはないじゃないですか(笑)」

──ハイ、そうだと思います(笑)。

「結局、SUGにしてもEBIにしても、コンバット柔術もそうですね。時間切れだからって、なんであんな決着方法なんだろう。釈然としないです」

──言ってみればパターゴルフですよね(笑)。

「ホントに。試し割ですよね。そこまでのプロセスはどこに行ったんだって(笑)。スッ飛ばして、あれで負けたとしても、負けた気がするんでしょうかね。

今回、それと気づいたことがあって──クレイグ・ジョーンズはEBIでは勝っているけど、ADCCは準優勝なんですよね。ゲイリー・トノンもADCCでは勝っていない。かといってIBJJFの道着でも勝っていない。つまりADCCやIBJJFのタイトルとは関係ないところで、ステータスを確立してやっていける世界があるということなんですよね」

──う~ん、ただしADCCで柔術界の強豪を倒したり、追い込んで名前を挙げたというのはあると思います。

「なるほど。で、そういう選手がPolarisとかEBI、SUGでも活躍して、セミナーや指導で食っていける。ネットの指導とかで。だから確立しているんですよね、そういう世界が。やはりそこは凄いと思います」

──私がSUG19で思ったのは、MMAファイターがMMAファイターとグラップリングで戦うと溌剌と攻めるということだったんです。

「ドスアンジョスとセラーニですね。まぁ、海賊ビデオですよ(笑)、スパーリングを流す。試合では蹴りを出さない選手が実はムエタイの練習をしていたり、テイクダウン&コントロールの選手が足関節を使っている。そういう海賊版ですよね。

北岡悟がQuintetのことを練習試合って言ったんです。グラップリングのことを。それと同じですよね。で、そこでビジネスも成り立っている。名前があるから可能なんでしょうけど、誰も損していないですからね。選手もファンも楽しめて。まぁドスアンジョスもセラーニもあれだけ組みができるから、思い切り打撃で思い切り攻めることができるんですよね。

ドスアンジョスは打・倒・極、全てを鍛えている。トライアスロンMMAファイターですよ。だからこそ、ファイターのなかで評価が高いと思います」

──では石井選手については、どのように思われていますか。

「石井慧のゴーイング・マイウェイ振りも素晴らしいです。一周回って、何でも見えている。ファイターとしての選択は他にもあるんじゃないかと思うことはありますけど、そこも含めてゴーイング・マイウェイです。

試合展開と同じで、もっとズル賢さがあっても良いのに常に真っ向勝負しています。ちょっと他にいないと思います」

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Interview Special ブログ ヘナト・モイカノ ラファエル・フィジエフ 平本蓮 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:12月─その弐─フィジエフ✖モイカノからの「平本蓮とローカル化」

【写真】なぜ欧米ではキックやムエタイで実績を残している選手が、次々とMMAで成功しているのだろうか。いや、逆になぜ日本にはあまり見られない事象なのだろうか (C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

2020年12月の一番、第ニ弾は12日に行われたUFC258からラファエル・フィジエフ✖ヘナト・モイカノについて語らおう。


──青木真也が選ぶ2020年12月の一番、2試合目をお願いします。

「ラファエル・フィジエフとヘナト・モイカノの一戦ですね。フィジエフはUFCデビュー戦でマゴメド・ムスタファエフを相手にこけたけど、それからは連勝していて。勝ち方が派手で、ROAD FC時代(※2017年6月10日キム・スンヨン戦、同年12月23日ムントスズ・ナンディンエルデン戦)の勢いの良さが出てきましたね。

モイカノは去年から階級をライト級に上げてきているのですが、それにしても左ボディフックから入るって凄いです。あんなことをMMAでできるの? 怖くないのって思いました」

──フィジエフはタイや欧州で50戦近いムエタイやキックやムエタイの経験がありますが、MMAでもあの距離で打撃戦ができるわけですね。

「キックなら分かります。そして、MMAでも以前より重心が高めのスタンスを取る選手も増えてきました。でも左のボディから入るって、顔が空くのに。相手の奥の手側で、右ストレートを合わされるリスクがある。それをMMAグローブでやってしまう度胸は凄いと思いました。

言い換えると自信があるのでしょうね。最後も左から右、そして左で倒しました」

──最後の1発は、モイカノは全く見えていなかったです。

「結局、あの最初の左の踏み込みがあるから右を合わせて、また左が出せる。アレは日本人にはできないと思いましたね」

──日本人はできないですか。

「できないです」

──例えばですね、フィジエフだけでなく相当な立ち技のキャリアのある選手がMMAに転じてきました。ビッグネームでなくても、そういう選手は組みと寝技を消化して中間距離で打ち合って、プロモーションやファンからも受ける戦いをしています。日本でK-1などキックやムエタイで、ガンガンやっている選手がMMAに転向したら、それも可能ではないでしょうか。

「できないことはないと思います。K-1の話になると、打ち合いなさいという戦いだけど、本当に一流は貰っていないですよね」

──それはMAX時代からそうでした。

「それでも戦い続けているとアンディ・サワーとかダメージが蓄積していますけど、魔裟斗はパンチのある選手に対してロー勝っていて。パンチ勝負で消耗しなかったです。あのルールで本当のトップは貰わない。今も野入選手とか、貰わないですよね。

言い方は悪いけど、下っ端というか抜けきれない人は技量でなく漢気で魅せていますけど、トップの人は貰っていないです」

──では明日の大晦日に平本蓮選手がMMAデビューを果たしますが(※取材は12月30日に行われた)、青木選手はどのように考えていますか。

「平本蓮選手は打撃の使い手としては神憑っていると思います。特A級です。これは岩﨑(達也)さんの武術空手のところと重なってきますけど、でもMMAっていうのは総合的な打撃だから。

組技があることによって、組み技の圧力が加わったところでの打撃です。だから平本選手が仰る『MMAの打撃は俺から見たら素人だ』という理屈は分かります。それは仰る通りです。でも組み技が入ったら違うんだせ──というのはあります」

──しかし、そんなことはもう第1回UFCで分かったことではないでしょうか。その後ストライカーが柔術、さらにレスリングを習得し、ある程度出来上がったスタイルを皆が学ぶ時代になった。結果、基本中の基本を皆が忘れてしまうのですか。

「そうレスリングの圧力がところで戦っているという部分が、なぜか抜け落ちている。いや分かっているようで、まだ分かっていないのでしょうね」

──そこを理解し、それこそフィジエフやイスラエル・アデサーニャのように消化すれば平本選手だけでなく、日本の立ち技選手もMMAで活躍できる?

(C)t.SAKUMA

「そういう話にはなるのですが、そんなに簡単に組み技は消化できないですよ。ホントに本気ならないと。MMAは1+1が2の世界じゃないですから。

競技として真面目でMMAを見ないと。真面目に見ていない人は、本当には理解できないです。本当に格闘技を分かっていて、やっているなら自分がUFCとか口にできないって分かるはずです。酷いことを言うけど、僕は道化として見ちゃっている部分はあります」

──青木選手の道化というのが、決して蔑む言葉だとは自分は思っていません。存在感を認めているということで。

「ハイ。で、あの打撃があって真剣に組み技に取り組めば、今の打撃を評価する傾向にある世界のMMAで勝てるスタイルで戦えます。ただし、簡単にそうはならんですよ。

ロシア、ブラジル、米国、海外の立ち技の選手が、それができるのはキックとMMAが地続きで、そのMMAがUFCと地続きだからだと思います。だから本気で学ぶ姿勢を持てます」

──対して、日本は……。

「現状は地続きじゃない。日本国内で完結するわけじゃないですか。ちょっと喋りが上手くて、トラッシュトークが出来る。ドン・ドンって打ち合いができれば完結するから。それで完結しても良いんですよ。でもMMAとしては、変わってきますよね。

今、情報が全て平等に与えられたことでグローバルな資本主義がコネクトしました」

──……、?

「つまりどこにいても誤魔化しがきかないモノが出来上がってしまったということです。それは僕がDREAMを戦っている頃からで。僕のレコードは世界中の選手とネット上でリンクするようになった。

だから未知の強豪なんてモノを興行側も創ることができなくなりました」

──ハイ。逆に情報が多すぎて、未知ではなく……我々が追い切れないという意味で、無知の強豪がいくらでもいます。

「それが2020年、日本の格闘技は完全ガラパゴス化を進めました」

──そこにはコロナの影響で外国人選手を招聘することが困難になったという事情があるかと思います。ただしUFCもBellator、ONEもBRAVE CFやUAEWもグローバルのなかで活動を続けている。国内スポーツを見れば契約して日本に長期滞在がベースではないところでいえば、モータースポーツは懸命に欧米と行き来し、リングしている。グローバル経済の中に踏み止まっています。

「でも日本の格闘技はビジネスとして、グローバルなモノが一切通じなくなった。そのメリットもありますが、強さの追求という部分ではデメリットの部分も同然あります。その危うさを十分に感じています。危うさがあるなかで、ガラパゴスをつくった人達が幸せを享受している感じです。海外に出向く、一部の選手を除いて……今の日本の格闘技は

いや、全くフィジエフの話ではなくなってしまいましたね(笑)」

──いえ、しっかりと地続きの話です。頂戴させてもらいます(笑)。

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Interview Special オレッグ・ボリソフ シャミル・ニカエフ ピョートル・ヤン ブログ マゴメド・マゴメドフ マテウス・マトス ルスタン・カリモフ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:2020年12月─その壱─マゴメドフ×マトス「レブニー的Bellator」

【写真】超ド級レスラーがベラトール・バンタム級戦線で如何に活躍していくのか(C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

今月は変則的に番外編からお届けしたが、今回から従来の形式通りに、背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。

青木が選んだ2020年12月の一番、第一弾は10日に行われたBellator254からマゴメド・マゴメドフ✖マテウス・マトスについて語らおう。


──青木真也が選ぶ2020年12月の一番、最初の試合をお願いします。

「マゴメド・マゴメドフ✖マテウス・マトス戦です。笑っちゃうのがマゴメドフだけでなく、相手のマトスもACBで戦っていた選手なんですよね。ピョートル・ヤンに負けてACBでは2勝1敗とかで」

ピョートル・ヤン✖マゴメド・マゴメドフ(C)ACA

──対するマゴメドフはヤンに勝ってACBバンタム級王者になっています。

「そこ、やっぱり引用しますよね。でもピョートル・ヤンに負けてベルトを失っていることは強調しない」

──それは試合を盛り上げるために、ピョートル・ヤンと1勝1敗、勝ったのは接戦で負けたのは完敗……とはしないですよね(笑)。

オレッグ・ボリソフ(C)ACA

「アハハハ。そしてピョートル・ヤンに勝っているから、バリバリの殴り合いができる選手だと思われていたかもしれないけど、超ド級のレスラーですしね(笑)。ACAとかチェックしていない人は、どんなロシア人が出てきたのかって楽しいだったからもしれないけど、実際は試合が跳ねる系じゃない。

試合内容だとオレッグ・ボリソフやルスタン・カリモフの方が面白い」

──その両名とヤン、マゴメドフでACBバンタム級四強でした。

ルスタン・カリモフ(C)ACA

「ハイ。で、試合でいえばピョートル・ヤン、ボリソフ、カリモフの方が面白いんですよ。ただ試合は跳ねないマゴメドフですけど、ボディクラッチからレスリングは抜群に強いです。襷にしなくて、ボディクラッチが。

エスケープを絶対にさせないし、スクランブルを起こさせない。そういう堅実なレスリングが強い。ヤンとかなんでも強いじゃないですか。UFCの選手ってレスリングだけっていうのはもう見られない。ただし、ここまでレスリングが強い選手はいるのか。

一点突破で何でも強い選手とやってどうなるのだろうかっていうぐらいレスリングは強いですね。ロシアのレスリングでいえば、ブラジル人のACAフェザー級王者のフィリッピ・フロレスが計量オーバーして。そのフロレスにKO負けしたマラット・バラエフ……あのユサップ・ライソフに負けている選手かんですけど、バラエフも打撃に特化しているのに相手がノヴァ・ウニオンのストライカーになると、一気に組みに行ったんです。

ああいう試合を見ていると、ロシア人ってフリースタイル・レスリングやサンボが強いから打ち合えるというのを表していると思います。

まあバラエフは45歳だけど、これから肝になるのはヤングイーグル(※ACAの人材育成大会)出身の選手かと。バラつきがあっても、あそこから抜けてくる選手は強いですよ」

──フライ級王者になったアズマット・カレフォフとか、ヤングイーグル出身ですね。

「あの春日井に勝ったヤツですね。ロシアは篩落としができる。ヤングイーグルで鍛えられた人間が勝ち残ると、やはり強いですよ。でも、そんなレスラーで試合は地味なマゴメドフがマトスと戦うとかっていうのは、ビヨン・レブニー時代のようですね」

──最近の兆候でいえば意外なマッチアップでした。

シャミル・ニカエフ(C)BELLATOR

「ウェルター級のシャミル・ニカエフとか、なんか投入していますしね」

──ニカエフは本来はライト級の選手で、ロシア勢は世界中を侵食しています。そのマゴメドフは、アン・アルタチュラ政権に挑むことになりますが、ベラトールのバンタム級戦線は大晦日に復帰する堀口恭司選手も元チャンピオンで強力なタイトルコンテンダーです(※同取材は12月30日に行われた)。

「堀口選手はケージでも大丈夫ですよね。朝倉海選手は、そこは分からない。堀口選手と朝倉選手が同じ相手10人とやるとアベレージで勝率が高いのは堀口選手だと思います。でも、朝倉選手の方が派手な勝ち方はできる。

だからこそ、この2人の試合は完成度の高さでいえば堀口選手だと思っています。マゴメドフと戦うことを考えても、堀口選手はダリオン・コールドウェルに勝ち、UFC時代にはアリ・バガウティノフに勝っていますからね」

──既に超ド級のレスラーとロシアンに勝っていると。

「堀口選手はラウンドマストでも足が使えて打撃があるから、相性は良いと思います。大晦日にケガ明けでどういう試合ができるのかは見る必要がありますが、堀口選手がマゴメドフやアルタチュラと絡むととても面白いでしょうね。

そこはスコット・コーカーのベラトールですけど、マゴメドフなんてビヨン・レブニー時代のベラトールの面白さでもあるし、興味深いですね(笑)」

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Interview ONE ONE Collision Course ONE115 Special ブログ ヨッカイカー・フェアテックス 和田竜光 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番─番外編─ヨッカイカー✖和田竜光─02─「武道、武士道とは」

【写真】1月1日から青木が取り組んでいるモノは、決して武道ではない。青木は武士でも武道家でもなく、競技者だ (C) MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年12月の一番──だが、ここでは本来のピックアップされた3試合からではなく、いきなりの番外編から──12月18日に行われたONE 115で行われたヨッカイカー・フェアテックス✖和田竜光戦について語らう=後編をお届けしたい。

判定に理がない。だから極めろという青木真也の真意は見えてきキーワードを青木は話した。

<青木真也のヨッカイカー・フェアテックス✖和田竜光論Part.01はコチラから>


──それにしても、どう飲み込めば良いのかという判定ですね。

「どう勝つかのっていうのは見えづらいですよね。もうジャッジ次第になって。例えばエリック・ケリー✖田中半蔵はどう思いました?」

──半蔵選手の勝ちです。

「じゃぁ、安藤晃司✖ティモフィ・ナシューヒンは?」

──試合直後は絶対に安藤選手だと思っていました。あの時は大会後にマット・ヒュームとすれ違った時に、『どういうこと?』って尋ねたんですよ。そこでテイクダウンはダメージを与えていないっていう返答があり、『あぁ、そういうことなんだね』と。その後、ONEは裁定基準を公にしましたよね。若松佑弥✖ダニー・キンガド、内藤のび太✖ジョシュア・パシオ戦後に。

「実は分からない判定はかなりあったんです。ただ、それも日本人が絡んでいるから覚えているだけで。きっと僕らが忘れてしまっている外国人同士の試合でも、あるんですよ。

判定勝ちの計算ができないということは、裏を返すと『行け』ってことなんです。だから、武道だろうって(笑)」

──そこで、武道が来ますか(笑)。私には武道って分からないんですよね。武術と違い、武道とされるモノには競技会があるので。

「武道とかって完全に言葉遊びじゃないですか。そもそも曖昧なモノだし。柔術は武道か?とかって話題になることがあるけど、そんなのどっちも良いじゃん(笑)。

嘉納治五郎が柔道を武道って言いだしたのも、社会に受け入れられるためですからね。武術っていうと前時代の野蛮なモノだから戦闘に関わる者を教育に採り入れるときに、武道とした──そういう教育者ですよね」

──と同時にスポーツの開祖かと思います。

「頭が良い人だから、プロモーションに長けていた。だから武道って凄く曖昧な言葉で。武士道とか武道って皆が言うけど……武士道なら葉隠れなの? 新渡戸稲造なの?って話で。君、どっちのことを言っているの? 言っている人によって違うわけじゃないですか」

──とはいえ、和田選手の敗北に関して青木選手が武道という言葉を使うのは、ONEのいうマーシャルアーツという言葉を斜に構えて引用しているということですよね。

「そうですよ(笑)。『だって、武道なんでしょ』って(笑)。で、武道って何? どういう系譜なの?って」

──極めに行くことが武道ということではなくて……。でも、そう書くと極めに行くことが武道かと思う人も出てきてしまいますよね。

「出てくるでしょうね。でもONEだけじゃなくて、武士道って良く使われるじゃないですか。そういう精神性みたいな話を持ち出すと、戦争するしかないですよ。戦争する時に、皆をコントロールするために使った言葉なんだから。

だって普通に生きていると、仇を討つなんてしないですよ。それを圧倒的に人口が少ない武士階級の人間が、自分たちの支配力を強めるために創ったのが武士道ですよ」

──人口比でいえば7パーセントの武士が、8割以上の農民を抑えるために。実は外国人の格闘技関係者と話している時にサムライの子孫とか言われるのですが、たまに『日本の殆どがサムライではなく、ファーマーの子孫なんだよ』って話すと凄く場が白けてしまうんですよね(笑)。

「アハハハ。だって武士道のような規範意識を持っているかと思われるけど、そんなものはないですからね。規範意識がないから、持ち込んだわけで。貞操観念とかも、そうですよね。無いから戦後に持ち込む必要があった」

──それにしても、武道という言葉の解釈は難し過ぎます。明治時代に時代遅れとなった武術に関しては、現代社会においては試合がないモノ。使わないことが一番良いという、技術を磨いている。試合には出ないし、イザコザは避けるというのが私の理解です。

「まぁ護身ですからね」

──ヨーイ、ドン!!で1✖1で戦うということが、もう武術とは違ってきますからね。集団で稽古をしたり。

「武術になると水掛け論ですよね。武術的に誰が一番強いのかっていう話になると、それは米国大統領だろうって。すげぇ下らない話になってくる(笑)」

──その通りだと思います。身も蓋もない話になります。

「守る者がいないヤツが一番強いとかね。だから僕らのやっていることに──美しい精神性とか持ち込まれると、怖くて……」

──ケージで戦う青木真也は武士ではないですしね。

「ハイ。競技者です。だから和田さんの試合に関しては、競技者としてはONEという場では、圧倒的に攻めないとダメだということが可視化されたんです。ずっと格闘技をやり、見てきた俺ですら全く判定基準が分からないんだから。

それと判定は覆らないと言ったんですが、サゲッダーオ(ペットパヤータイ)は勝った試合があとから覆っていましたね。あとから負けにされた(※2018年6月のマー・ジャワン戦)」

──ハイ。ジョルジオ・ペトロシアンとペットモラコット・ペッティンディーアカデミーの試合は、ペトロシアンの負けからノーコンテストになって、再戦でペトロシアン勝利というのもありました。これって身も蓋もないのですが、競技、武道でなく武術っぽくないですか(笑)。

「もう分かんないですよ(笑)。よく分からないから、仕方ねぇなぁ──圧倒しろ、極めろって話なんですよ」

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【Special】月刊、青木真也のこの一番─番外編─ヨッカイカー✖和田竜光「答え合わせができない」なら

【写真】MMAとしてはあり得ないとMMAPLANETでは評した一戦について、青木が深くメスを入れる (C) ONE

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年12月の一番──だが、ここは本来のピックアップされた3試合からではなく、いきなりの番外編から──12月18日に行われたONE 115で行われたヨッカイカー・フェアテックス✖和田竜光戦について語らおう。

青木ならではの視点、全体を俯瞰しつつ、局地的に仰望する興味深い話が聞かれた。


──業界を騒然とさせた和田選手のヨッカイカー・フェアテックス戦の判定負けですが、「青木選手は一本を取らないと。武道は」という感想をツイートしていました。

「ネット上で関係者の人が怒っていたじゃないですか。でも、あの反応はもうこの試合が判定がおかしいからだけでなくて、2020年の状況を色濃く反映していたかのように思います」

──というのは?

「コロナで自粛したり、不条理なことを経験してきて。皆が政府の対応とかに不満を持っている。加えて関係者の人は、今のONEの対応に『なんなんだ』という感情があるから」

──アハハハハ。

「そこに加えて不条理っぽい判定結果になったから、火がついたと思います」

──なるほど。なぜ青木真也の試合が10月に組まれなかったんだ。なぜ、日本人選手の試合は録画枠が多いのか。なんだ、和田の対戦カードの変更は?という感情があるわけですね。

「そうなんです。あの後、試合は2回ぐらい見直したのですが……、おかしいといえばおかしいです。でも平等な範疇ではあります」

──平等ですか?

「平等の範疇です。和田選手も何もしていないといえば、何もしていない」

──1Rにバックマウントを取って殴り、2Rもテイクダウンがあった。

「それを攻勢と採るのかっていう話でいうと微妙ですよ」

──いやヨッカイカーの攻撃との比較論でいえば、バックとパンチはよりフィニッシュにより近いです。ヨッカイカーのローよりも。

「ローを採られてもおかしくないよって話ですよね」

──それはMMAとして見て、ですか。それともONEだから、ですか。

「いや、ONEだからですよ」

──そこなんですよ。ONEだからあり得るという意見が当然になると、じゃぁONEのMMAって何なのっていうことですよね。修斗でチャンピオンになったらONEと契約。でも修斗のチャンピオン、ヨッカイカーの戦い方で勝っていない。なら、あの判定で勝てる選手がONEに行かないと。あくまでもONEのMMAであって、他のMMAとは違ってきます。

「それをいうなら、修斗とONEは同じルールでやらないと。もう、そこからですよ。おかしいのは。この話題とは関係なくありますよね」

──はい。ONEへはユニファイドでなく、ONE判定で勝てる選手が行くべきかと。ONEだと魚井✖田丸は、魚井選手の勝ちです。ならONEへは魚井選手のような選手がいくべきで。

「う~ん、MMAの定義が違いますよね。確かに判定はおかしいですよ。でも、和田さんが文句を言える筋合いじゃない。文句を言っても覆られないんだから。

まぁ勝ちですよ、和田さんの。MMAなら。でも文句をいっても、ジャッジもONEも変わらない。試合をするなら勝つ、そうでないと試合に出ない。出て負けて、文句を言ってもしょうがないから」

──そこで青木選手は極めないといけないというロジックです。

「極めないと負けですよ」

──なら一本、KO決着でなければドローにすべきで。判定決着があるのに、一本、KOでないといけないというのは違うかと思います。判定勝ちがあるなら、判定勝ちをしっかりと裁けるジャッジがいないと。

「そこでいうと判定っていうモノ自体が、決められないモノを決めるという行為で。決着しないモノの勝ち負けを決めている。だから、そもそも判定になった時点で何かされても『仕方ない』ことなんです」

──では青木選手は江藤選手との試合で判定負けになっても納得できる?

「仕方ないです。それも含めて強さ。結局、勝ったヤツが強い。変な話で、あってはいけないけど、ジャッジが非難されるような判定でも勝てば良いわけじゃないですか。

だから判定で負けたということは、相手の方が強かったってことですよ。一本、KOでなくてもヨッカイカーが判定で勝ったということは、あの日はヨッカイカーのほうが強かった」

──う~ん……、MMAとしてONEだからあり得る判定でも──ということですね。

「ハイ。だから競技者として、極めないといけないと思っています。ジャッジをそこまで信用していない。だって分かっていると思えないから。

そしておかしな判定はONEだって、修斗だって、パンクラスだって、UFCだってある。同じです」

──ONEはもともとユニファイドと違う裁定基準ですが、そこをも逸脱した感はぬぐえないです。それ以前の微妙な裁定でなく、あの裁定には理が見えない。

「確かに、理解はできないですよね。内藤のび太✖ジョシュア・パシオの時は内藤がコントールして、パシオは殴っていた。ONE裁定だとパシオだという答え合わせができた。でも、和田✖ヨッカイカーは答え合わせができない」

──答が合わないですからね。だから、ONEならあり得るっていう意見は今回は許容できなかったんです。格闘技って、好きな人間にとって理屈がないと。それがないと、ただ殴った、蹴った、投げたってことで終わりですし。

「ハイ、分かります。理屈があって勝負論が成り立つ。それが、あの試合にはなかった。となると──理屈がないんだから、何されるか分からないって言う気持ちで戦わないと。

それをね、ジャッジを変えろとか、あんな判定あり得ないって選手側が言ってもしょうがないんです。そういうところで戦っているんだから。極めるか、圧倒するしかない。覚悟決めるしかないんです。

アレであり得ないっていっているファイターや関係者はちょっと甘いなって思います。勝負師としてジャッジのせいで負けたとか口にするのは。○○のせいで負けたって言っちゃだめなんです」

──自分は仕事として、そこはやはり納得できないですね。あの判定はありえない。

「いや、それは記者として言い続けてください。報じる立場は好きに言ってください。むしろメディアは自浄作用というか──。浄化する作業が必要だから。そこは重要だと思います。でも、選手は勝敗を他人のせいにしちゃダメです」

<この項、続く>

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Fight&Life Interview JJ Globo Special ブログ 岩崎正寛

【Special】Fight & Life#82より、カルペ芦屋をオープンした岩崎正寛。「柔術の説明ができるようになった」

【写真】ジムのある建物の前を国道二号線が走る (C)MMAPLANET

21日(月)、岩崎正寛が生まれ故郷・神戸の東隣である芦屋市にCarpe Diem芦屋を正式オープンした。

コロナ禍で関西に自らのジムを開くこと決め、半年間知人のサポートによりテンポラリー道場で基礎を固めていた岩﨑のインタビューが、12月23日(水)発売のFight&Life#82に掲載されている。

ここでは誌面で掲載しきれなかった──自らの城を開いたことによって、新たに気付いた岩﨑の柔術観をお伝えしたい。


──自らの道場を出す、青山や三田で柔術の指導をしていた時と柔術そのものへの見方が変わるということありましたか。

「ハイ。ここには柔術というだけで、それが何か理解してもらえる文化はないです。先日、入会した会員さんは全く柔術を知らなくて、そこから始めたんです」

──つまりは、そういうことなんですね。関西でやるべきことは。

「柔術って何かを説明すると良いかというのが、こっちに来て分かるようになってきました。柔術は競技目線で説明すると、わけが分からなくなります。

柔術は競技、スポーツとしてのルーツを辿るとやはり護身術なんです。ルールが護身術に則してできているから、クローズドガードを取って何も攻めていなくても、下の選手が勝つことが多い。

それをどう説明すれば良いのか……こないだ、オンラインでルール講習会があり、それに参加すると『柔術のルールは護身術を元に自分の身を守ることができるかどうかにフォーカスして判定を下す』という話を聞きました。

つまりクローズドガードを取った人は、そこから取れるわけで。相手はそこからエスケープしないといけない。つまり5分、10分とクローズドガードを取り続けることは護身術として成立することになります」

──確かに!!

「柔道家に対して、トップを取って10分間守り切れるかといえば相当に難しいです。でもクローズドガードを取って10分間守り続ける方が圧倒的に簡単です。そういう行為を柔術家同士の試合でも成し遂げたのであれば、クローズドガードを取り続けた選手の勝ちで良い。それが護身術としての見方ですね」

──IBJJFの柔術競技は、スポーツとして稀な守りを評価するルールなのですね。

「その通りだと思います。野球でファインプレーをしても得点にはならないですよね。でも、柔術は防御力を評価する。とともに、そこで勝負を競い合う時での攻めはコントロールに主眼を置いています。一本を極めなくても良い。コントロールすれば勝ちです。護身術だからです。

ポイントが多い順から低い方へ、制圧をしている度合いが違ってきます。だからマウント、バックグラブが4Pで、パスが3P、テイクダウンとスイープは2Pです。このポイント、ルールに則して話すと、柔術って何か簡単に説明できます。

柔術を知らない人が来て、『これはどうすれば勝ちなのですか?』と尋ねられると、制圧したらです──と答えることができます。そこからポイント制度について話をしていけば良くて。

なぜマウントはポイントが高いのか。両手が自由で相手の胴体を制しているから。対してクローズドガードは両手は自由でも、胴体は制されていて相手も何かできる。だから五分です──と説明すると、『だから、ここだと動けて。こっちだと動けないのですね』というのが分かってもらえます」

──東京時代にそういう風に指導したことは?

「無かったです。正直、柔術のことを知って道場にきているんでしょうと思っていました」

──その考えも正論です。ただ、そうでない人がいるかもしれないと芦屋では考えるようになったのですね。

「正直、僕は柔術はマイナー競技だと思っている節がありました。それでも興味を持った人が道場にやってくる、と。でも、そのスタンスではダメです。東京のカルペディエムだったら、それで通用したかもしれないですけど関西でイチからやっていくには。

柔術という底に広がりがある競技でも、入り口が尖っていて狭くては普及もままならないです。そこを広げていくために工夫しないと。柔術入口を広げることを考えると、それがさらなる底辺の広がりにつながると思います。今までそんなこと全く思ったことがなかったのに……。

この間、MMAファイターに組み技の指導をしていた時にサイドバックから、どうやってバックグラブを取りに行けば良いのかっていう話になったんです」

──ハイ。

「そもそも柔術的に考えると、そのポジションを取りに行くことねぇよなって。一本を決めるのが柔術ではなくて……柔術の観点からいえば、一本を取りに行くのは正義ではないです。

自分の身を守ることが第一で。なら、そこに居れば良いんです」

──そういう意味ではいえば、究極の競技柔術家はホジャー・グレイシーでしょうか。

「そうですね。ピンチにならないです。制圧してからの一本勝ちで。結局、その制圧に必要なことを丁寧に指導すると、MMAに使えるというか……MMA選手が理解できる柔術になっていきます。

柔術だから三角絞め、腕十字を取らないといけない。サブミッションを仕掛けないといけないってことがおかしいです。組み技を使ってMMAというゲームで勝てば良い。なら柔術の良いところを抜き取れば良いわけで。そもそも護身術なんだから、良いポジションにいるところにまずフォーカスを当てないと」

──そういう丁寧な指導が、好きな人への指導ではなくて、好きな人を増やすということに通じるという考えでしょうか。

「柔術を知って欲しいですね。好きな人を増やしていって、1人ずつの柔術を見続けたいです。最近、関節の方向や胸の開き方でできる技、できない技があることが分かって来たんです。

自分のことだけでなく、指導をしている人のことで分かるようになった。例えば肩が前に出て、ヒジが柔らかい巻き肩の人はマルセロチンに適している。でも胸が張っている人は背筋力があってマルセロチンは難しく、しぼって取るギロチンの方が良い──とか」

──おぉ!!

「じゃぁ、全員にマルセロチンを指導してどうすんだってことですよね。トップ選手は間違っていない。その選択も。でもトップに行けない人は間違っている。それを指導できる人がいるかどうか。

それが皆が強くなれない理由の1つです。絶対的に人間の体なんだから、強い部分と弱い部分がある。弱い部分を押し出しているから、弱い。でも反転していて、弱い部分の裏には強い部分があるんです」

※カルペディエム芦屋をオープンした岩崎正寛インタビューは、12月23日発売のFight &Life vol.82に掲載されているので、ぜひともご拝読お願いします。

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Fight&Life Interview Special ブログ 朴光哲

【Special】サラバ、カンチョル!! 朴光哲引退インタビュー─02─「人生を変える出会いがマレーシアで」

【写真】デビューの地、北沢タウンホールのロビーで。会場内は何かの会議が行われており、完全に不審者を見るような目で見られるなかでの撮影だった (C)MMAPLANET

19年間のMMAファイターに人生にピリオドを打った朴光哲が、朴光学がキャリアを振り返るインタビューが、12月23日(水)発売のFight&Life#82に掲載されている。

MMAPLANETでは、誌面で掲載しきれなかった横浜文化体育館の乱闘劇について語ってもらったが、最後に人生を変えるといっても過言でない東南アジアでの出会いについて、彼が何よりも熱く語った言葉をお伝えしたい。

<朴光哲、引退インタビュー:横浜文体大乱闘事件についてはコチラから>


──朴光哲のMMAキャリアのハイライトとして、ONE参戦と世界ライト級王座奪取がありました。

「もう悔いはねぇやって。あれだけやり切ったことはなかったです。試合中は本当に地獄でしたけど。でも、そこでバブルがありました。当時はONEも取っ払いでピン札の100ドル紙幣でファイトマネーを控室に戻る前に別室で受け取るんです。勝ったら倍だから、もう東南アジアだと豪遊レベルですよ」

──そしてドリアンに出会った……のですが、誌面が足らなくなるのは目に見ているので、きっと記事には反映できないと思いますが(笑)。

「いや、もうソコを話し始めると終電を逃しますよ(笑)。ホントに人生を変える出会いが──マレーシアでありましたね、ドリアン……。

ONEは試合が決まると、現地に行くのが楽しみで、楽しみでしょうがなくて(笑)」

──試合前はハングリーになる選手に交じって、ドリアンをいくらでも食べることができているからカンチョルは満たされてしまっていて。それが終盤の連敗の原因ですよ。

「また、それ言う……。本気でソレ、試合後に言っていましたよね(笑)。それでも半分勝っていますから、勝った試合は全部KOで。

いや、でも日本が真冬でも向うに行くと南国で、ホテル住まいだし。しまいにはドリアンまである。やっぱしシンガポールとか少し高くて、ジャカルタとかタイとか、ナンボでも食べることができましたからね。マカオだって、良いのが売っていましたよ。

しかもONEはミールマネーをくれるじゃないですか。それは米国や日本基準の額が支給されるので、東南アジアだったら大金なんですよ。全部ドリアンに使っていましたよ(笑)」

──バンコク大会のホテルなど、カンチョルが泊っている階をエレベーターで通過するときに、えげつないほどドリアンの臭いがしていましたからね(笑)。

「そんなことないッスよ(笑)。話がデカくなっているじゃないですか」

──いや、これは本当にホントにです。しかも大抵のホテルではドリアンの持ち込みは禁止としっかりと注意書きがあるというのに……(笑)。

「でも、あのタイのホテルでは罰金を支払わされましたからね(笑)。しっかりと物的証拠がないように皮を外に捨てていたんですけど……」

──完全に確信犯じゃないですか(笑)。

「あの時は、種をバスルームのゴミ箱に捨てたら、写真まで撮られて。完全に証拠が残っちゃって(笑)」

──そりゃあ、あれだけ臭いがしていると徹底的にホテルの人も探しますよ。にかくカンチョルの部屋のフロアはすさまじいドリアン臭がしていましたから。セコンドの一聖とかも食べているからあまり気にしていなかったですけど、インタビューをしに行くともう完全に部屋の臭いはアウトでしたからね。あんな玉ねぎが腐ったみたいな……。

言葉は必要ない。どれだけ──好きなのか……

「いやぁ、アレが本当に美味しくてね。一度、タクシーでゲップしたら運転手に舌打ちされましたけどね(笑)。でもコロナで入国制限がなかったら、今年だってドリアンを食べに定期的にどこかの国に行っていたスよ」

──やはり日本ではなかなか食すことができないですか、ドリアンは?

「最近、○○○が売り出して、まぁ5000円とかッスね」

──う~む、まるで価格が違いますね。

「しかも、そんなに質は良くないですし。向うだと僕はマレーシアのが一番好きだったんですけど、500円とかしないです。でも、その半分とか7割の値段で屋台でご飯が食べられることを考えると、向こうでは高級品だし、観光客目当てで売っているというのもあるとは思うスけどね。

とにかく日本で買えるのとは、質がまるで違います。あぁ、そういえば俺の後輩がシンガポールで仕事をしていたヤツがいて、今はジャカルタかな……。そいつはシンガポールと比較すると、マレーシアは治安が悪いって」

──いやいやいや、ジャカルタの方が危険ですよ。

「それでも東南アジア特有のモノがあるんスかね。それと東南アジアでいえば、俺、8月に青井(人)君に負けた時、ONEで知り合ったとある人から……ミャンマーラウェイに出ませんかって連絡がありましたよ(笑)」

──おお、最後がグローブ無しの立ち技って良いじゃないですか。

「いや、断らせてもらいましたよ(笑)」

──でもカンチョルは東南アジアで良い出会いがありましたね。聞くところによると、ONEも引退発言を受けて公式にメッセージを出そうかって話があったようですね。

「有難いスね。ONEには本当にお世話になったス、稼がせてもらったスね。日本でもらっていたファイトマネーより全然良かったし。取っ払いだし。勝ったら倍、そういうのあんまりないスからね」

※現役生活を振り返り、これからの格闘家人生について語った朴光哲インタビューはは12月23日発売のFight &Life vol.82に掲載されているので、ぜひともご拝読お願いします。

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